(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
[第1の実施形態]
(1.コンクリート基礎40)
まず、本発明の実施形態に係る移動式型枠を用いて構築するコンクリート構造物であるコンクリート基礎について説明する。
【0024】
図1はコンクリート基礎40を示す図である。このコンクリート基礎40は、レール軌道の基礎として設けられ、上部に一対のレール支持柱200が設けられる。各レール支持柱200にはレール300が設置される。
【0025】
コンクリート基礎40の上面において、レール支持柱200の設置箇所の間は窪んでおり、中央溝部42が形成される。また、レール支持柱200の設置箇所の外側も窪んでおり、側溝部43が形成される。
【0026】
コンクリート基礎40の構築は、掘削した地盤表面に均しコンクリート(不図示)を設けて構築面とし、その上で行われる。コンクリート基礎40の構築後には側方が埋め戻され、その上に土間コンクリート100が打設される。
【0027】
図2はコンクリート基礎40の詳細を示す図であり、側方の埋め戻しを行う前の状態を示す。
図2(a)は鉛直方向の断面図であり、
図2(b)は側面、
図2(c)は上面を見た図である。
【0028】
本実施形態では、4つのコンクリート基礎40(40−1〜40−4)を長手方向に連続して構築する。
【0029】
コンクリート基礎40−1、40−2の中央溝部42および側溝部43は長手方向に沿って連続し、コンクリート基礎40−2、40−3の間に向って下方に傾斜する。同じくコンクリート基礎40−3、40−4の中央溝部42および側溝部43も長手方向に沿って連続し、コンクリート基礎40−2、40−3の間に向って下方に傾斜する。
【0030】
コンクリート基礎40−2、40−3の間には、長手方向と直交する幅方向に排水溝46が設けられる。これによって、排水等が中央溝部42、側溝部43を排水溝46へと向かって流れ、排水溝46から側方に流出するようになっている。また、各側溝部43に対応する位置には排水枡43aが設けられる。
【0031】
(2.移動式型枠1)
次に、本発明の実施形態に係る移動式型枠について説明する。
図3は移動式型枠1を示す図であり、
図3(a)は正面、
図3(b)は側面を見た図である。これは後述する
図7、9についても同様である。
【0032】
移動式型枠1は、コンクリートを打設して前記したコンクリート基礎40を構築するため用いるもので、フレーム10と、フレーム10に設けた鋼製型枠21、22、23を有する。
【0033】
移動式型枠1の移動を行うため、コンクリート基礎40の構築予定箇所の両側には、構築予定のコンクリート基礎40の長手方向に沿って一対のレール30が設けられる。
【0034】
なお、レール30の設置個所で他の構造物等による段差が生じる場合などでは、段差に応じた高さのスペーサーを鋼材などで形成し段差を解消したうえでその上にレール30を設置することも可能である。
【0035】
フレーム10は、門型フレーム12、縦断梁12a、12b等で構成される。
【0036】
縦断梁12bは、フレーム幅方向(
図3(a)の横方向に対応する)の両側で、フレーム走行方向(
図3(b)の横方向に対応する)に沿って配置される。縦断梁12bには鋼材等が用いられ、底面には車輪11が設けられる。フレーム10は、車輪11によってレール30上を走行し、移動することができる。
【0037】
門型フレーム12は、鋼材を門型に組んだものであり、両側の縦断梁12b上に架け渡すようにして、フレーム走行方向に間隔を空けて複数設けられる。
【0038】
縦断梁12aは、これらの門型フレーム12のフレーム幅方向の両側の上部で、フレーム走行方向に沿って架け渡される。縦断梁12aには鋼材等が用いられる。
【0039】
各縦断梁12aにはチェーンブロック13が設けられる。これにより、水平吊り部材14を水平に保ちつつ両側から吊り下げる。水平吊り部材14には、取付治具(不図示)を用いて、鋼製型枠21、22、23が取り付けられる。鋼製型枠21、22、23は、個々のコンクリート基礎40−1〜40−4の構築時にコンクリートを打設する際の型枠として用いられる。
【0040】
(3.鋼製型枠21、22、23)
この鋼製型枠21、22、23について
図4を参照して説明する。
図4(a)、(b)、(c)は、それぞれ鋼製型枠21、22、23の正面、側面、上面を示す図である。
【0041】
図4(a)に示す鋼製型枠21は、コンクリート基礎40の上面の中央溝部42を形成するための型枠部分であり、略U字状の鉛直方向断面を有する。その深さ(高さ)は、長手方向の一端から他端にゆくに従って大きくなり、底面には開口211が設けられる。
【0042】
なお、鋼製型枠21の底面では、長手方向と直交する幅方向の中央部から両側へ向って下方に傾斜する勾配を設けることも可能であり、この場合は中央溝部42で同様の勾配が形成されることにより排水等が側方に集められる。
【0043】
図4(b)に示す鋼製型枠22は、側溝部43を形成するための型枠部分であり、鋼製型枠21と同様、略U字状の鉛直方向断面を有する。その深さは、長手方向の一端から他端にゆくに従って大きくなり、底面には開口221が設けられる。なお、鋼製型枠21、22の勾配は、説明のために若干誇張して図示している。
【0044】
図4(c)に示す鋼製型枠23は、コンクリート基礎40の側面を形成するための型枠部分であり、板材の鉛直方向を段状に折り曲げた形状の鉛直方向断面を有する。鋼製型枠23の段状部分の水平面には開口231が設けられる。また、鋼製型枠23は、後述するコンクリート打設時の打設圧に対する補強として、下部側面に端太232を取付けて用いる。端太232は、上下に間隔を空けて鋼製型枠23の長手方向に沿って2列に設けられる。
【0045】
なお、本実施形態では、鋼製型枠21、22の対向する側壁の間にターンバックル31(
図3(a)参照)を取付けて使用する。ターンバックル31は本体両側にネジを螺合させたもので、これらのネジに設けた取付部が、鋼製型枠21、22の両側壁に取り付けられる。
【0046】
ターンバックル31は、鋼製型枠21、22の両側壁の間隔を保持する間隔保持材として用いられ、コンクリートの打設圧による鋼製型枠21、22の変形を防ぐ。また、脱型時においては、両側のネジを回転させることで鋼製型枠21、22の両側壁を内側へ引き寄せることが可能であり、これによりコンクリートからの型枠の脱型が容易になる。
【0047】
鋼製型枠23についても、水平吊り部材14への取付時には、段状部分と水平吊り部材14との間にターンバックル16(
図3(a)参照)を設け、鋼製型枠23の配置を固定する。
【0048】
また、本実施形態では、隣り合うコンクリート基礎40−1、40−2あるいはコンクリート基礎40−3、40−4(
図2(b)、(c)参照)において、長手方向に同じ傾斜で連続する中央溝部42を形成するため、鋼製型枠21として
図5(a)に側面を示す2種類のものを用いる。
【0049】
これらの鋼製型枠21は、底面の長手方向の傾斜角度が同じであるが深さが異なるものであり、左側に示す一方の鋼製型枠21より、右側に示す他方の鋼製型枠21の深さが大きい。また、一方の鋼製型枠21の深さが大きい方の端部と、他方の鋼製型枠21の深さが小さい方の端部で、深さが等しくなっている。なお、以降の説明で、上記した一方の鋼製型枠21を「浅い方の型枠」、他方の鋼製型枠21を「深い方の型枠」と呼ぶことがある。
【0050】
さらに、本実施形態では、
図5(a)の点線部に示すように、各鋼製型枠21を、上下に分割した部材21a、21bを組み合わせ形成するものとする。この際、下部部材21bについて、底面の長手方向の傾斜角度が同じであるが深さが異なる2種類を用意し、これを共通の上部部材21aに対して付け替えることで、上記した2種類の鋼製型枠21とする。
【0051】
加えて、後述する工程では鋼製型枠21の向きを長手方向に反対に入れ替える場合があるが、この際は、
図5(b)に示すように、共通の上部部材21aに対し、下部部材21bの向きを逆にして取り付けることにより、鋼製型枠21の向きを入れ替えることが可能である。
【0052】
以上は側溝部43の形成に用いる鋼製型枠22についても同様とする。
【0053】
(4.コンクリート基礎40の構築方法)
次に、移動式型枠1を用いたコンクリート基礎40の構築方法について説明する。
【0054】
本実施形態では、
図6に示すように、まず前記したレール30を設ける。そして、コンクリート基礎40−1の構築予定箇所で、車輪11をレール30に載せて移動式型枠1を配置する。
【0055】
そして、前記の中央溝部42、側溝部43に対応する位置で鋼製型枠21、22を地組し、これらを水平吊り部材14に取り付ける。前記したターンバックル31も鋼製型枠21、22に取り付けられる。
【0056】
鋼製型枠21、22は、前記した2種類のうち浅い方の型枠とする。鋼製型枠21、22の向きは、フレーム走行方向の前方側(後述する
図7(b)の右側に対応する)に深さが大きい方の端部が来るようにする。
【0057】
次いで、
図7(a)、(b)に示すように、チェーンブロック13を用いて水平吊り部材14を水平に保ちつつ上方に吊り上げる。そして、水平吊り部材14の両側に鋼製型枠23を取り付ける。ターンバックル16も前記したように設ける。図示は省略するが、鋼製型枠21、22、23の内側では必要な配筋も行われる。
【0058】
鋼製型枠21、22、23の取付を行った後、
図8(a)に示すように、門型フレーム12の側柱に支持具17を取付け、これにより水平吊り部材14を所定高さで支持し固定する。また、縦断梁12bにジャッキ等の支圧具60を取り付け、これにより鋼製型枠23を端太232の位置において側方から支持する。
【0059】
以上により、鋼製型枠21、22、23がセットされる。また、フレーム走行方向の両端部に当たる位置では妻枠(不図示)の配置も行われる。
【0060】
なお、図の例では、鋼製型枠23の下端部がコンクリート基礎40−1の構築面に接しているが、必要に応じて構築面の不陸調整を行ったり、下地材として桟木などを設けてその上に下端部を配置してもよい。また、水平吊り部材14のたわみを防止するため、フレーム10の上部から設けた吊りボルトなどで水平吊り部材14のフレーム幅方向の中央部を支持することも可能である。
【0061】
こうして鋼製型枠21、22、23をセットすれば、鋼製型枠21、22、23の間から、
図8(b)に示すように鋼製型枠21、22、23の内側にコンクリートを打設する。本実施形態では鋼製型枠21、22、23の上端部まで打設を行う。鋼製型枠21、22、23の開口211、221、231(
図4(a)、(b)、(c)参照)は、コンクリートの充填状況の確認に用いられる。
【0062】
コンクリートは粘性が高いので、鋼製型枠21、22、23の間から打設した際に開口211、221、231から溢れるようなことはなく、打設後に左官仕上げをすることで開口211、221、231の位置でも勾配が適切に形成できる。鋼製型枠21、22、23の間のコンクリートについても上面を均しておく。
【0063】
打設したコンクリートを養生し、硬化すると、前記した中央溝部42や側溝部43を上面に有するコンクリート基礎40−1が構築される。
【0064】
その後、支圧具60などを取り外し、
図9(a)、(b)に示すようにチェーンブロック13を用いて水平吊り部材14を吊り上げ、鋼製型枠21、22、23を上昇させて脱型する。また、上記した妻枠なども取り外す。前記したように、脱型時にはターンバックル31のネジを回転させ、鋼製型枠21、22の両側壁を内側へ引き寄せることで、コンクリートからの型枠の脱型が容易になる。
【0065】
脱型後、
図10(a)の矢印で示すように、移動式型枠1を次のコンクリート基礎40−2の構築予定箇所まで移動させる。
【0066】
移動式型枠1はレール30上を車輪11によって走行し移動する。移動式型枠1の移動は、例えば各縦断梁12bに取付けたワイヤを電動ウィンチなどにより前方から牽引して行うことができる。ただし、移動方法はこれに限らず、例えばジャッキなどを用いて後方から移動式型枠1を押し出すことも可能である。
【0067】
この後、鋼製型枠21、22を深い方の型枠とし、チェーンブロック13により水平吊り部材14を下降させ、
図10(b)に示すように、鋼製型枠21、22、23を前記と同様にセットする。
【0068】
この時、鋼製型枠21、22の向きは、先程と同様、フレーム走行方向の前方側に深さが大きい方の端部が来るようにし、底面の傾斜をコンクリート基礎40−1の中央溝部42と側溝部43の傾斜に連続させる。また、鋼製型枠21、22、23の内側では、必要な配筋も行われる。
【0069】
また、
図2(c)に示したように、コンクリート基礎40−2のコンクリート基礎40−3側の端部では、排水溝46と排水枡43aの半割部分を形成する。そのため、フレーム走行方向の前端部では、排水溝46と排水枡43aの形状に合わせて下部妻枠24と上部妻枠25が配置される。
【0070】
そして、コンクリート基礎40−2の構築予定箇所にて前記と同様にコンクリートが打設される。コンクリートは、コンクリート基礎40−1の端面に続けて充填される。
【0071】
図11(a)は、上記した下部妻枠24と上部妻枠25を示す図である。本実施形態では、下部妻枠24の位置まで打設されたコンクリートの上部に排水溝46と排水枡43aの半割部分を形成すべく、その平面形状に合わせ、上部妻枠25が下部妻枠24の後方に配置される。下部妻枠24と上部妻枠25は、必要に応じて端太材(不図示)などを固定材として用いて位置固定および打設圧に対する強度確保を行う。
【0072】
なお、本実施形態では、施工性と部材転用性の観点から、下部妻枠24と上部妻枠25を、
図11(b)の点線部で分割した個々の部材から構成し、これらを組み合わせて下部妻枠24と上部妻枠25として用いる。ただし、下部妻枠24と上部妻枠25を一体の部材として形成することも可能である。
【0073】
打設したコンクリートを養生し、硬化すると、中央溝部42や側溝部43を上面に有するコンクリート基礎40−2(
図2(b)、(c)参照)が構築される。この中央溝部42や側溝部43は、先程のコンクリート基礎40−1の中央溝部42や側溝部43と同じ傾斜で連続する。
【0074】
その後、前記と同様、
図10(c)に示すように水平吊り部材14を吊り上げて鋼製型枠21、22、23を上昇させ、脱型する。また、下部妻枠24、上部妻枠25なども取り外す。
【0075】
そして、
図12(a)の矢印に示すように、移動式型枠1を次のコンクリート基礎40−3の構築予定箇所へと移動させる。
【0076】
その後、鋼製型枠21、22の長手方向の向きを前記したように反対に入れ替え、フレーム走行方向の前方側に深さが小さい方の端部が来るようにする。そして、
図12(b)に示すように、チェーンブロック13により水平吊り部材14を下降させ、前記と同様にして鋼製型枠21、22、23のセットを行う。鋼製型枠21、22、23の内側では必要な配筋も行う。さらに、フレーム走行方向の前端部には妻枠(不図示)を配置する。
【0077】
また、
図2(c)に示したように、コンクリート基礎40−3のコンクリート基礎40−2側の端部では、排水溝46と排水枡43aのもう一方の半割部分を形成する。そのため、フレーム走行方向の後端部では、排水溝46と排水枡43aの形状に合わせて上部妻枠25が配置される。
【0078】
この時の上部妻枠25の配置を
図13に示す。本実施形態では、排水溝46と排水枡43aの平面形状にあわせ、上部妻枠25をコンクリート基礎40−2の下部の端面より前方に配置する。
図13のAは、この端面の位置を一部示したものである。
【0079】
その後、コンクリート基礎40−3の構築予定箇所にて前記と同様にコンクリートを打設する。上部型枠25の下方では、コンクリート基礎40−2の下部の端面に続けてコンクリートが充填される。
【0080】
打設したコンクリートを養生し、硬化すると、排水溝46に向かって下方に傾斜する中央溝部42や側溝部43を上面に有するコンクリート基礎40−3(
図2(b)、(c)参照)が構築される。
【0081】
その後、前記と同様、
図12(c)に示すように水平吊り部材14を吊り上げて鋼製型枠21、22、23を上昇させ、脱型する。また、上部妻枠25なども取り外す。
【0082】
そして、
図14(a)の矢印に示すように、移動式型枠1を次のコンクリート基礎40−4の構築予定箇所へと移動させる。
【0083】
その後、鋼製型枠21、22を浅い方の型枠とし、
図14(b)に示すように、チェーンブロック13により水平吊り部材14を下降させ、前記と同様にして鋼製型枠21、22、23のセットを行う。
【0084】
鋼製型枠21、22の向きは、先程と同様、フレーム走行方向の前方側に深さが小さい方の端部が来るようにし、底面の傾斜をコンクリート基礎40−3の中央溝部42と側溝部43の傾斜に連続させる。さらに必要な配筋も行い、フレーム走行方向の前端部に当たる位置では、妻枠(不図示)を配置する。
【0085】
そして、コンクリート基礎40−4の構築予定箇所にて前記と同様にコンクリートを打設する。コンクリートは、先程のコンクリート基礎40−3の端面に続けて充填される。
【0086】
打設したコンクリートを養生し、硬化すると、中央溝部42や側溝部43を上面に有するコンクリート基礎40−4(
図2(b)、(c)参照)が構築される。この中央溝部42や側溝部43は、先程のコンクリート基礎40−3の中央溝部42や側溝部43と同じ傾斜で連続する。
【0087】
その後、前記と同様、
図14(c)に示すように水平吊り部材14を吊り上げて鋼製型枠21、22、23を上昇させ、脱型する。上記の妻枠なども取り外す。
【0088】
そして、移動式型枠1やレール30を撤去すると、
図2で説明したコンクリート基礎40−1〜40−4が構築される。
【0089】
以上説明したように、本実施形態によれば、所定方向に移動するフレーム10と鋼製型枠21、22、23をユニット化した移動式型枠1により、コンクリート基礎40を連続的に構築可能となる。移動式型枠1は、鋼製型枠21、22、23を設けたフレーム10ごと移動させ、フレーム10から吊り下げた鋼製型枠21、22、23を上下に移動させることで型枠のセットと脱型が行われるので、型枠の移動、セット、脱型を行うための機構が簡単であり、作業も省力化できコストもかからず、施工のスピードアップにつながる。
【0090】
また、鋼製型枠21、22、23は、木製型枠などに比べ加工性が高く、構造物の形状に合わせた型枠を適宜製作して用いることで、打設回数の低減などにより作業の効率化につながる。例えば、本実施形態では1回の打設で各コンクリート基礎40−1〜40−4が構築できる。
【0091】
また、移動式型枠1は、構造物の形状に合わせた型枠をフレーム10に設けるだけで、各施工現場で用いることができ汎用性も高い。なお、本実施形態では型枠を鋼製のものとしているが、型枠はコンクリート表面の平坦性確保のための一定の剛性を担保できるものであればよく、例えばアルミニウム合金や合成樹脂なども用いることが可能である。
【0092】
また、本実施形態では、フレーム10に水平吊り部材14を上下移動可能に吊り下げ、鋼製型枠21、22、23をこの水平吊り部材14に取付けるので、型枠の移動時の安定性が高く、型枠を精度よくセットすることができる。また、複数の型枠を一体として移動させることもできる。
【0093】
さらに、フレーム10には、水平吊り部材14を支持し鉛直方向の位置を固定する支持具17が取り付けられるので、水平吊り部材14の位置を固定して鋼製型枠21、22、23のずれを防ぐことにより、コンクリート基礎40の寸法精度を高めることができる。
【0094】
また、フレーム10には、鋼製型枠23を側方から支持する支圧具60が取り付けられるので、型枠に加わるコンクリートの打設圧を側方から支持して型枠の変形や移動を防ぎ、コンクリート基礎40の寸法精度の向上が実現できる。また、型枠内側にセパレータなどを取付ける必要もなく、施工のスピードアップにつながる。なお、本実施形態では支圧具60としてジャッキを挙げたが、支圧具60はこれに限らず、コンクリートの打設圧を側方から支持できるものであればよい。
【0095】
さらに、本実施形態では、型枠として、コンクリート基礎40の上面を形成する鋼製型枠21、22と、側面を形成する鋼製型枠23を用いる。鋼製型枠21、22は、コンクリート基礎40の中央溝部42と側溝部43を形成するために用いられ、コンクリート基礎40の長手方向に沿って高さ、すなわちU字形状の深さが変化する。本実施形態のように排水を行うための溝を設ける場合、その形状に合わせて上記のように型枠を形成することで、連続する溝部を有する構造物が容易に構築できるようになる。
【0096】
なお、本実施形態では鋼製型枠21、22を必要に応じて付け替えて用いたが、同じ断面が連続するようなコンクリート構造物では、同じ形状の型枠をそのまま用いることで付け替えの手間が省略でき、施工のスピードアップが可能になる。
【0097】
また、鋼製型枠21、22では、対向する側壁の間隔を保持する間隔保持材としてターンバックル31が設けられるので、コンクリートの打設圧に対し型枠の形状を保持することができ、コンクリート基礎40の寸法精度の向上が実現できる。
【0098】
なお、間隔保持材はターンバックル31に限ることはない。例えば鋼材の両端を鋼製型枠21、22の両側壁にブルマン(登録商標)等で固定してもよい。ただし、ターンバックル31は、ネジの回転により鋼製型枠21、22の両側壁を内側へ引き寄せることで脱型が容易になる利点がある。
【0099】
また、本実施形態においては、コンクリート基礎40の側面を形成するための型枠として、
図15の鋼製型枠23aに示すように、側面にアクリル板などの透明部233を設けたものを用いることも可能である。これにより側方からコンクリートの充填状況が視認でき、充填管理が容易になる。
【0100】
これは、本実施形態で例示したレール軌道の基礎のように、トンネルの覆工コンクリートやインバートコンクリート、あるいはダムなどとは異なり配筋を密にする必要があるケースでは特に有効である。
【0101】
その他、本実施形態の移動式型枠1は
図1に示したレール軌道のコンクリート基礎40を構築する際に用いるものとして説明したが、これに限ることはなく、例えばコンクリート基礎40における溝部の本数は1本でもよいし、無くてもよい。また、レール軌道のコンクリート基礎40に限らず、コンクリート床版など、様々なコンクリート構造物の構築に適用することが可能である。
【0102】
移動式型枠1におけるフレーム10の形状やコンクリート打設に用いる型枠もこれに限らない。フレーム10の形状は、施工箇所の形状その他に合わせて適宜定めることが可能であり、型枠の形状や数、配置などもコンクリート構造物の形状に合わせて適宜定めることができる。
【0103】
[第2の実施形態]
次に、
図16を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。
図16は第2の実施形態の移動式型枠1aを示す図である。
【0104】
この移動式型枠1aは、フレーム10の平面の外周に沿った面である周面と天井面が被覆材50で被覆される点で第1の実施形態と異なる。被覆材50としては例えばビニールシートなどが用いられる。被覆材50によってフレーム10内部の保温性が向上し、外部環境に関わらずフレーム10内部空間の環境をコンクリート養生に必要な温度となるよう適切に保つことができる。
【0105】
この移動式型枠1aも、第1の実施形態と同様に用いてコンクリート基礎40−1〜40−4を構築することが可能であり、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、フレーム10内部空間の環境をコンクリート養生に必要な温度となるよう適切に保つことができるから、寒冷地などでもコンクリートの保温を好適に行うことができ、コンクリートの硬化の促進、品質向上につながる。
【0106】
なお、被覆材50としては、フレーム10内の温度環境を保つことができればビニールシートに限ることはない。例えば各種のパネル材や断熱シートなどを用いることも可能である。また、場合によっては被覆材51により周面のみを被覆することも可能であり、同様の効果が得られる。
【0107】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。