【実施例】
【0114】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。最初に、スラリー中における粒子の体積平均粒子径の測定方法、単官能ビニル系単量体の重合体のガラス転移温度の計算方法及び測定方法、有機溶剤のSP値の計算方法、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度の測定方法、樹脂粒子溶剤分散体の外観の評価方法、並びに、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径及び粒子径の変動係数の測定方法を説明する。
【0115】
〔スラリー中における粒子の体積平均粒子径及び粒子径の変動係数の測定方法〕
以下の実施例及び比較例における、スラリー中における粒子(種粒子又は樹脂粒子)の体積平均粒子径の測定は、以下のようにして行った。
【0116】
スラリー中における粒子の体積平均粒子径の測定は、レーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「LS 13 320」)及びユニバーサルリキッドサンプルモジュールによって行う。
【0117】
測定には、粒子を含むスラリー0.5gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT−31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア社製、「ULTRASONIC CLEANER VS−150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用する。
【0118】
また、上記のレーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置のソフトウェアにおいて、ミー理論に基づいた評価のために必要となる以下に示す光学的なパラメータを、設定する。
【0119】
<パラメータ>
液体(ノニオン性界面活性剤水溶液)の屈折率B.I.の実部=1.333(水の屈折率)
固体(測定対象の粒子)の屈折率の実部=粒子の屈折率
固体の屈折率の虚部=0
固体の形状因子=1
また、測定条件及び測定手順は、以下の通りとする。
【0120】
<測定条件>
測定時間:60秒
測定回数:1
ポンプ速度:50〜60%
PIDS相対濃度:40〜55%程度
超音波出力:8
<測定手順>
オフセット測定、光軸調整、バックグラウンド測定を行った後、上記した分散液を、スポイトを用いて、上記のレーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置のユニバーサルリキッドサンプルモジュール内へ注入する。上記のユニバーサルリキッドサンプルモジュール内の濃度が上記のPIDS相対濃度に達し、上記のレーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置のソフトウェアが「OK」と表示したら、測定を開始する。なお、測定は、ユニバーサルリキッドサンプルモジュール中でポンプ循環を行うことによって上記粒子を分散させた状態、かつ、超音波ユニット(ULM ULTRASONIC MODULE)を起動させた状態で行う。
【0121】
また、測定は室温で行い、得られたデータから、上記のレーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置のソフトウェアにより、上記の予め設定された光学的なパラメータを用いて、粒子の体積平均粒子径(体積基準の粒度分布における算術平均径)および粒子径の変動係数を算出する。
【0122】
なお、粒子の屈折率については、粒子を構成する重合体の屈折率を入力し測定を実施した。
【0123】
〔単官能ビニル系単量体の重合体のガラス転移温度の計算方法及び測定方法〕
本出願書類において、単官能ビニル系単量体が複数種類の単量体M1〜Mn(nは混合物を構成するモノマーの種類の数を表す)の混合物である場合、単官能ビニル系単量体の重合体(単量体M1〜Mnの共重合体)のガラス転移温度Tg(K)は、次に示すフォックス式
【0124】
【数1】
【0125】
(式中、Tgは単量体M1〜Mnの共重合体について計算されるガラス転移温度(K)であり、W
iは混合物中における第i番目の単量体M
iの重量分率であり、
【0126】
【数2】
【0127】
であり、Tg
iは第i番目の単量体の単独重合体のガラス転移温度(K)である)
により計算されるものとする。単独重合体のガラス転移温度は、例えば、J.Brandrup(ブランドラップ)及びE.H.Immergut(イメルグート)編、「Polymer Handbook(ポリマーハンドブック)」、Interscience Publishers(インターサイエンスパブリシャーズ)に認められうる。また、本明細書では、前記フォックス式により計算されたK単位のガラス転移温度Tg(K)から273.15を減ずることにより、℃単位のガラス転移温度を算出した。
【0128】
〔有機溶剤のSP値の計算方法〕
本出願書類において、有機溶剤のSP値は、Fedorsの方法〔Robert F.Fedors、Polymer Engineering and Science、14、147−154(1974)〕により計算された値であるものとする。SP値δは、置換基の凝集エネルギーEcoh[cal/mol]及びモル分子容V[cm
3/mol]から下記式
δ=[ΣEcoh/ΣV]
1/2
を用いて算出できる。本出願書類では、SP値の単位として、従来慣用的に使用されている単位「(cal/cm
3)
1/2」を用いる。この単位は、以下の式
1(cal/cm
3)
1/2=2.05(MPa)
1/2
によってSI単位「(MPa)
1/2」に換算できる。
【0129】
有機溶剤が2種類以上の成分の混合物である場合、有機溶剤のSP値は、下記式によって定義される。
【0130】
【数3】
【0131】
(上記式中、nは混合物を構成する成分の数を表し、δ
iは第i番目の成分のSP値を表し、φ
iは第i番目の成分の体積分率を表し、V
iは第i番目の成分の体積分率のモル容積を表す)
Fedorsの方法により計算されたヘキサンのSP値は7.3(cal/cm
3)
1/2であり、Fedorsの方法により計算された酢酸ブチルのSP値は8.7(cal/cm
3)
1/2であり、Fedorsの方法により計算されたアセトンのSP値は8.43(cal/cm
3)
1/2であり、Fedorsの方法により計算されたメチルエチルケトンのSP値は9.0(cal/cm
3)
1/2であり、Fedorsの方法により計算されたトルエンのSP値は9.1(cal/cm
3)
1/2であり、Fedorsの方法により計算されたエタノールのSP値は10.97(cal/cm
3)
1/2であり、Fedorsの方法により計算されたイソプロピルアルコールのSP値は11.5(cal/cm
3)
1/2であり、Fedorsの方法により計算されたエチレングリコールのSP値は14.8(cal/cm
3)
1/2であった。
【0132】
〔樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度の測定方法〕
本出願書類における、固形分濃度が20重量%となるように前記有機溶剤の量を調整したときの、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度は、以下のようにして測定されるものとする。
【0133】
まず、樹脂粒子溶剤分散体の固形分濃度が20重量%より少ないか20重量%より多い場合には、樹脂粒子溶剤分散体に含まれるのと同じ有機溶剤を追加又は除去することによって樹脂粒子溶剤分散体の固形分濃度を20重量%に調整し、固形分濃度調整後の樹脂粒子溶剤分散体を試料として用いる。樹脂粒子溶剤分散体の固形分濃度が20重量%の場合には、その樹脂粒子溶剤分散体をそのまま試料として用いる。
【0134】
そして、試料(樹脂粒子溶剤分散体)の見掛け粘度を、JIS K 7117−1:1999の「付属書1(参考)SB形粘度計による粘度の測定方法」に準拠し、ブルックフィールド形回転粘度計(東機産業株式会社製、BM型)を用いて測定する。
【0135】
試料の粘度が90mPa・s未満の場合にはNo.1スピンドルを使用し、試料の粘度が90mPa・s以上450mPa・s未満の場合にはNo.2スピンドルを使用し、試料の粘度が450mPa・s以上1000mPa・s未満の場合にはNo.3スピンドルを使用する。内容量230ml、外径:62mm、高さ:約109mmのガラス瓶M225に、試料温度20℃の試料(樹脂粒子溶剤分散体)を200g採取し、スピンドル回転数60min
-1の条件にてスピンドルの回転を開始し、開始1分後の粘度計指示値(目盛りの指示値)を読み取った。粘度計指示値からJIS K7117−1:1999の「付属書1(参考)SB形粘度計による粘度の測定方法」に記載の下記計算式から見掛け粘度を算出した。
【0136】
η
a=K
n×θ
(ここに、η
a:見掛け粘度[mPa・s]
K
n:スピンドル回転数及びスピンドル番号の組み合わせに基づく換算係数
θ:粘度計指示値)
換算係数K
nは、No.1スピンドルを使用した場合には1mPa・s、No.2スピンドルを使用した場合には5mPa・s、No.3スピンドルを使用した場合には20mPa・sとする。
【0137】
〔樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径及び粒子径の変動係数の測定方法〕
実施例及び比較例における、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径の測定は、以下のようにして行った。
【0138】
樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の体積平均粒子径の測定は、動的光散乱型粒度分布測定装置(大塚電子株式会社製、商品名「FPAR−1000」)を用いて行った。測定対象の試料としては、粘度の測定に使用した固形分濃度20重量%の樹脂粒子溶剤分散体を、樹脂粒子溶剤分散体中の有機溶剤と同じ有機溶剤にて固形分濃度0.02重量%まで希釈させることにより得た分散液を使用した。
【0139】
動的光散乱型粒度分布測定装置のヒストグラム解析に使用するパラメータである有機溶剤の屈折率としては、樹脂粒子溶剤分散体中の有機溶剤がヘキサンである場合にはヘキサンの屈折率=1.375を使用し、樹脂粒子溶剤分散体中の有機溶剤が酢酸ブチルである場合には酢酸ブチルの屈折率=1.394を使用し、樹脂粒子溶剤分散体中の有機溶剤がメチルエチルケトンである場合にはメチルエチルケトンの屈折率=1.379を使用し、樹脂粒子溶剤分散体中の有機溶剤がイソプロピルアルコールである場合にはイソプロピルアルコールの屈折率=1.378を使用し、樹脂粒子溶剤分散体中の有機溶剤がエチレングリコールである場合にはエチレングリコールの屈折率=1.432を使用した。
【0140】
測定は、希薄系プローブを使用し、分散液の温度(試料温度)が20℃の条件で行い、動的光散乱型粒度分布測定装置のヒストグラム解析結果における平均粒子径及び標準偏差の値を採用した。
【0141】
樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は、前記測定により得られた標準偏差と平均粒子径とから下記式
粒子径の変動係数[%]=(標準偏差[μm]/平均粒子径[μm])×100
を用いて算出した。
【0142】
〔製造例1〕(シード重合による、実施例で使用する樹脂粒子の製造)
攪拌機及び温度計を備えた内容量5Lのオートクレーブ内に、水性媒体としての水3200重量部と、反応性アニオン性界面活性剤としてのp−スチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学株式会社製、商品名「スピノマー(登録商標)NaSS」)2.9重量部を供給した。次に、オートクレーブに、予め調製しておいた単官能ビニル系単量体(第1のビニル系単量体)としてのメタクリル酸メチル(三菱レイヨン株式会社製、商品名「アクリエステル(登録商標)M」)800重量部と連鎖移動剤としてのn−オクチルメルカプタン3重量部との混合物を仕込み、オートクレーブの内部を窒素置換しながらオートクレーブの内容物を攪拌下に70℃まで加温した。その後、オートクレーブの内温を70℃に保ち、重合開始剤としての過硫酸カリウム4重量部をオートクレーブの内容物に添加した後、12時間重合を行って、種粒子を含むスラリーを得た。得られた種粒子を含むスラリーは、種粒子の体積平均粒子径が0.28μm、固形分濃度が20重量%であった。
【0143】
攪拌機及び温度計を備えた内容量5Lのオートクレーブ内に、界面活性剤としてのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム(東邦化学工業株式会社製、商品名「フォスファノール(登録商標)LO−529」)26.7重量部を脱イオン水に溶解させることによって予め調製した界面活性剤水溶液2700重量部を入れた。次いで、オートクレーブ内へ、予め調製しておいた単官能ビニル系単量体としてのメタクリル酸tert−ブチル(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルTB」、その単独重合体のガラス転移温度107℃)910重量部と、多官能ビニル系単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート390重量部と、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル6.7重量部との混合液(第2のビニル系単量体)を供給し、前記混合液を界面活性剤水溶液中に分散させて分散液を得た。次いで、分散液を、高速乳化・分散機(商品名「T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型」、プライミクス株式会社製)にて攪拌することにより、前記混合液の液滴径を5μm程度に調整した。
【0144】
さらに、オートクレーブ内の分散液に、種粒子を含むスラリー330重量部を一括投入により加え、オートクレーブの内容物を30℃で1時間攪拌して、種粒子に混合液を吸収させた。次いで、得られた混合物を、窒素気流下で50℃にて2時間にわたって攪拌を続けながら重合した(1次恒温)。続いて、オートクレーブの内温を80℃に保つ処理(2次恒温)を3時間行って樹脂粒子を含むスラリーを得た後、スラリーを室温(約25℃)まで冷却した。冷却後のスラリー中における樹脂粒子の体積平均粒子径を測定した結果、スラリー中における樹脂粒子の体積平均粒子径は0.82μm、スラリー中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は13.4%であった。
【0145】
得られたスラリーを、目開き400μmの篩網に通して分級することにより粗大粒子を除去した後、スプレードライヤーにて給気温度(スプレードライヤーのスラリー入口の温度)180℃、排気温度(スプレードライヤーの粉体出口の温度)60℃で噴霧乾燥させることで、乾燥粉体の樹脂粒子(1)を得た。
【0146】
なお、本製造例では、前記樹脂粒子の製造に使用した原料のうちで重合反応に関与する全ての成分の量に対するメタクリル酸メチルの量の割合(樹脂粒子全体に対するメタクリル酸メチルに由来する構造単位の量の割合に相当)が4.8重量%、前記樹脂粒子の製造に使用した原料のうちで重合反応に関与する全ての成分の量に対するメタクリル酸tert−ブチルの量の割合(樹脂粒子全体に対するメタクリル酸tert−ブチルに由来する構造単位の量の割合に相当)が66.3重量%、前記樹脂粒子の製造に使用した原料のうちで重合反応に関与する全ての成分の量に対するエチレングリコールジメタクリレートの量の割合(樹脂粒子全体に対するエチレングリコールジメタクリレートに由来する構造単位の量の割合に相当)が28.4重量%である。
【0147】
〔製造例2〕(乳化重合による、実施例で使用する樹脂粒子の製造)
攪拌機及び温度計を備えた内容量5Lのオートクレーブ内に、水性媒体としての水3200重量部と、反応性アニオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(第一工業製薬株式会社製、商品名「アクアロン(登録商標)KH−1025」;純分25重量%)2.25重量部(重合性単量体混合物100重量部に対して0.07重量部)とを供給した。次いで、オートクレーブ内へ、予め調製しておいたメタクリル酸tert−ブチル(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルTB」)640重量部と多官能ビニル系単量体としてのメタクリル酸アリル(三菱レイヨン株式会社製、商品名「アクリエステル(登録商標)A」)160重量部との混合液(重合性単量体混合物)を供給した。オートクレーブの内容物を200rpmの攪拌回転数で攪拌しつつ、70℃に加熱した。次に、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム(和光純薬工業株式会社製)8.0重量部を供給した後、70℃にて2時間に亘って攪拌を続けながら乳化重合を行った(1次恒温)。続いて、オートクレーブの内温を80℃に保つ処理(2次恒温)を1時間行って樹脂粒子を含むスラリーを得た後、スラリーを室温(約25℃)まで冷却した。冷却後のスラリー中における樹脂粒子の体積平均粒子径を測定した結果、スラリー中における樹脂粒子の体積平均粒子径は0.31μm、スラリー中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は15.2%であった。
【0148】
得られたスラリーを製造例1と同様にして冷却及び濾過した後、給気温度を110℃に変更する以外は製造例1と同様にして噴霧乾燥することにより、乾燥粉体の樹脂粒子(2)を得た。
【0149】
なお、本製造例では、前記樹脂粒子の製造に使用した原料のうちで重合反応に関与する全ての成分の量に対して、メタクリル酸tert−ブチルの量の割合が79.2重量%、メタクリル酸アリルの量の割合が19.8重量%である。
【0150】
〔製造例3〕(乳化重合による、実施例で使用する樹脂粒子の製造)
攪拌機及び温度計を備えた内容量5Lのオートクレーブ内に、水性媒体としての水3200重量部、重合分散剤としてのヒドロキシエチルセルロース(ダイセルファインケム株式会社製、商品名「HECダイセル(登録商標)SP−200」)0.8重量部及び反応性界面活性剤としてのp−スチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学株式会社製、商品名「スピノマー(登録商標)NaSS」)0.16重量部を供給して攪拌及び溶解した。次いで、オートクレーブ内へ、予め調製しておいたメタクリル酸イソブチル(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルIB」、その単独重合体のガラス転移温度48℃)560重量部と多官能ビニル系単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)240重量部との混合液を供給した。オートクレーブの内容物を200rpmの攪拌回転数で攪拌しつつ、70℃に加熱した。次に、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム(和光純薬工業株式会社製)4.0重量部をオートクレーブ内に供給した後、70℃にて2時間にわたって攪拌を続けながら乳化重合を行った(1次恒温)。続いて、オートクレーブの内温を80℃に保つ処理(2次恒温)を1時間行って樹脂粒子を含むスラリーを得た後、スラリーを室温(約25℃)まで冷却した。冷却後のスラリー中における樹脂粒子の体積平均粒子径を測定した結果、スラリー中における樹脂粒子の体積平均粒子径は0.51μm、スラリー中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は14.1%であった。
【0151】
得られたスラリーを、製造例2と同様にして冷却、濾過、及び噴霧乾燥することにより、乾燥粉体の樹脂粒子(3)を得た。
【0152】
なお、本製造例では、前記樹脂粒子の製造に使用した原料のうちで重合反応に関与する全ての成分の量に対して、メタクリル酸イソブチルの量の割合が69.6重量%、メタクリル酸アリルの量の割合が29.8重量%である。
【0153】
〔製造例4〕(比較例で使用する樹脂粒子の製造)
メタクリル酸tert−ブチル(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルTB」)に代えてメタクリル酸メチル(三菱レイヨン株式会社製、商品名「アクリエステル(登録商標)M」)を用いたこと以外は、製造例2と同様にして、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られたスラリー中における樹脂粒子の体積平均粒子径は0.29μmであり、得られたスラリー中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は15.7%であった。
【0154】
得られたスラリーを、製造例2と同様にして冷却、濾過、及び噴霧乾燥することにより、乾燥粉体の樹脂粒子(4)を得た。
【0155】
なお、本製造例では、前記樹脂粒子の製造に使用した原料のうちで重合反応に関与する全ての成分の量に対して、メタクリル酸メチルの量の割合が79.2重量%、メタクリル酸アリルの量の割合が19.8重量%である。
【0156】
〔製造例5〕(比較例で使用する樹脂粒子の製造)
メタクリル酸tert−ブチル(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルTB」)910重量部に代えてメタクリル酸メチル(三菱レイヨン株式会社製、商品名「アクリエステル(登録商標)M」、その単独重合体のガラス転移温度105℃)780重量部及びメタクリル酸tert−ブチル(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルTB」)130重量部を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られたスラリー中における樹脂粒子の体積平均粒子径は0.81μmであり、得られたスラリー中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は14.1%であった。
【0157】
得られたスラリーを、製造例2と同様にして冷却、濾過、及び噴霧乾燥することにより、乾燥粉体の樹脂粒子(5)を得た。
【0158】
なお、本製造例では、前記樹脂粒子の製造に使用した原料のうちで重合反応に関与する全ての成分の量に対して、メタクリル酸メチルの量の割合が61.6重量%、メタクリル酸tert−ブチルの量の割合が9.5重量%、エチレングリコールジメタクリレートの量の割合が28.4重量%である。また、種粒子に吸収させた混合液(第2のビニル系単量体)中に含まれる単官能ビニル系単量体の重合体のガラス転移温度は、105℃である。
【0159】
〔製造例6〕(比較例で使用する樹脂粒子の製造)
メタクリル酸tert−ブチル(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルTB」)910重量部及びエチレングリコールジメタクリレート390重量部に代えて、メタクリル酸メチル(三菱レイヨン株式会社製、商品名「アクリエステル(登録商標)M」)300重量部、メタクリル酸tert−ブチル(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルTB」)840重量部、及びエチレングリコールジメタクリレート60重量部を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、樹脂粒子を含むスラリーを得た。スラリー中における樹脂粒子の体積平均粒子径を測定した結果、スラリー中における樹脂粒子の体積平均粒子径は0.82μm、スラリー中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は13.7%であった。
【0160】
得られたスラリーを、製造例2と同様にして冷却、濾過、及び噴霧乾燥することにより、乾燥粉体の樹脂粒子(6)を得た。
【0161】
なお、本製造例では、前記樹脂粒子の製造に使用した原料のうちで重合反応に関与する全ての成分の量に対して、メタクリル酸メチルの量の割合が28.7重量%、メタクリル酸tert−ブチルの量の割合が66.0重量%、エチレングリコールジメタクリレートの量の割合が4.7重量%である。また、種粒子に吸収させた混合液(第2のビニル系単量体)中に含まれる単官能ビニル系単量体の重合体のガラス転移温度は、106℃である。
【0162】
〔製造例7〕(比較例で使用する樹脂粒子の製造)
Vパドル型攪拌翼を持つ撹拌機を備えた内容量5Lの反応容器内に、水2700重量部と、ピロリン酸マグネシウム265.2重量部と、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム(東邦化学工業株式会社製、商品名「フォスファノール(登録商標)LO−529」)27.0重量部とを加えた。
【0163】
また、メタクリル酸tert−ブチル(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルTB」)910重量部、多官能ビニル系単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート390重量部、及び重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル10.4重量部を混合して溶解させることにより単量体溶液を得た。
【0164】
次いで、反応容器内に前記単量体溶液を加えて単量体混合物を得た。この単量体混合物を高速乳化・分散機(商品名「T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型」、プライミクス株式会社製)を用いて攪拌回転数10000rpmで20分間攪拌することによって、前記単量体溶液を分散させ5μm程度の液滴にした。前記単量体混合物を、さらにマイクロフルイダイザー(型番「HC−5000」、みづほ工業株式会社製)に100kg/cm
2の圧力下で1回通すことによって、微細化した水系エマルジョンを得た。次いで、得られた水系エマルジョンを窒素気流下で50℃にて2時間にわたって攪拌を続けながら重合した。続いて、反応容器の内温を105℃に保つ処理(2次恒温)を1時間行って樹脂粒子を含むスラリーを得た後、スラリーを室温(約25℃)まで冷却した。
【0165】
冷却後のスラリー中における樹脂粒子の体積平均粒子径は2.2μm、変動係数は14.1%であった。
【0166】
上記スラリーに20重量%濃度の塩酸200重量部を加えピロリン酸マグネシウムを分解した後、水により洗浄を行った。乾燥機にて60℃で15時間真空乾燥した。乾燥後、目開き400メッシュの篩網に通して分級することにより粗大粒子を除去することで、乾燥粉体の樹脂粒子(7)を得た。
【0167】
なお、本製造例では、前記樹脂粒子の製造に使用した原料のうちで重合反応に関与する全ての成分の量に対して、メタクリル酸tert−ブチルの量の割合が68.0重量%、エチレングリコールジメタクリレートの量の割合が29.2重量%である。
【0168】
製造例1〜7で使用した単量体(単官能ビニル系単量体及び多官能ビニル系単量体)の組成及び単官能ビニル系単量体の重合体のガラス転移温度と、製造例1〜7で得られた樹脂粒子のスラリー中における樹脂粒子の体積平均粒子径及び粒子径の変動係数を表1に示す。なお、表1における製造例1、5、及び6(シード重合を用いた製造例)の列では、単官能ビニル系単量体の重合体のガラス転移温度として、種粒子に吸収させた混合液(第2のビニル系単量体)中に含まれる単官能ビニル系単量体の重合体のガラス転移温度を示している。
【0169】
〔製造例8〕(乳化重合による、実施例で使用する樹脂粒子の製造)
攪拌機及び温度計を備えた内容量5Lのオートクレーブ内に、水性媒体としての水3200重量部と、反応性アニオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(第一工業製薬株式会社製、商品名「アクアロン(登録商標)KH−1025」;純分25重量%)4.16重量部(重合性単量体混合物100重量部に対して0.13重量部)とを供給した。次いで、オートクレーブ内へ、予め調製しておいたメタクリル酸tert−ブチル(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルTB」)640重量部と多官能ビニル系単量体としてのメタクリル酸アリル(三菱レイヨン株式会社製、商品名「アクリエステル(登録商標)A」)160重量部との混合液(重合性単量体混合物)を供給した。オートクレーブの内容物を200rpmの攪拌回転数で攪拌しつつ、70℃に加熱した。次に、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム(和光純薬工業株式会社製)8.0重量部を供給した後、70℃にて2時間に亘って攪拌を続けながら乳化重合を行った(1次恒温)。続いて、オートクレーブの内温を80℃に保つ処理(2次恒温)を1時間行って樹脂粒子を含むスラリーを得た後、スラリーを室温(約25℃)まで冷却した。冷却後のスラリー中における樹脂粒子の体積平均粒子径を測定した結果、スラリー中における樹脂粒子の体積平均粒子径は0.19μm、スラリー中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は15.8%であった。
【0170】
【表1】
【0171】
〔実施例1〕(樹脂粒子溶剤分散体の製造)
内容量2リットルのステンレス鋼(SUS)製ビーカーに対して、有機溶剤としての酢酸ブチル960重量部(樹脂粒子溶剤分散体100重量%に対して80重量%)と、製造例1で得られた樹脂粒子(1)240重量部(樹脂粒子溶剤分散体100重量%に対して20重量%)とを供給して予備攪拌し、混合物を得た。その後、得られた混合物を高速乳化・分散機(商品名「T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型」、プライミクス株式会社製)を用いて攪拌回転数6000rpmで約20分間攪拌し、樹脂粒子(1)を有機溶剤中に分散させ、固形分濃度(樹脂粒子の含有率)20重量%の樹脂粒子溶剤分散体を得た。
【0172】
得られた樹脂粒子溶剤分散体は、有機溶剤中で樹脂粒子が凝集したり膨潤したりすることなく良好に分散していた。樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径は0.78μm、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は13.4%、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度は4.0mPa・sであった。
【0173】
〔実施例2〕(樹脂粒子溶剤分散体の製造)
有機溶剤として酢酸ブチルに代えてメチルエチルケトンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度20重量%の樹脂粒子溶剤分散体を得た。
【0174】
得られた樹脂粒子溶剤分散体は、有機溶剤中で樹脂粒子が凝集したり膨潤したりすることなく良好に分散していた。樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径は0.83μm、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は12.9%、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度は3.2mPa・sであった。
【0175】
〔実施例3〕(樹脂粒子溶剤分散体の製造)
有機溶剤として酢酸ブチルに代えてイソプロピルアルコールをこと以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度20重量%の樹脂粒子溶剤分散体を得た。
【0176】
得られた樹脂粒子溶剤分散体は、樹脂粒子が凝集したり膨潤したりすることなく良好に分散していた。樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径は0.81μm、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は14.1%、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度は16.0mPa・sであった。
【0177】
〔実施例4〕(樹脂粒子溶剤分散体の製造)
製造例1で得られた樹脂粒子(1)に代えて、製造例2で得られた樹脂粒子(2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度20重量%の樹脂粒子溶剤分散体を得た。
【0178】
得られた樹脂粒子溶剤分散体は、樹脂粒子が凝集したり膨潤したりすることなく良好に分散していた。樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径は0.35μm、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は10.4%、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度は16.1mPa・sであった。
【0179】
〔実施例5〕(樹脂粒子溶剤分散体の製造)
製造例1で得られた樹脂粒子(1)に代えて、製造例3で得られた樹脂粒子(3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度20重量%の樹脂粒子溶剤分散体を得た。
【0180】
得られた樹脂粒子溶剤分散体は、樹脂粒子が凝集したり膨潤したりすることなく良好に分散していた。樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径は0.55μm、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は14.4%、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度は14.3mPa・sであった。
【0181】
〔実施例6〕(樹脂粒子溶剤分散体の製造)
製造例1で得られた樹脂粒子(1)に代えて、製造例8で得られた樹脂粒子(8)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度20重量%の樹脂粒子溶剤分散体を得た。
【0182】
得られた樹脂粒子溶剤分散体は、樹脂粒子が凝集したり膨潤したりすることなく良好に分散していた。樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径は0.19μm、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は16.8%、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度は5.5mPa・sであった。
【0183】
〔実施例7〕(樹脂粒子溶剤分散体の製造)
有機溶剤として酢酸ブチルに代えてアセトン/エタノール=80/20(体積比)の混合溶剤(SP値8.9(cal/cm
3)
1/2)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、固形分濃度20重量%の樹脂粒子溶剤分散体を得た。
【0184】
得られた樹脂粒子溶剤分散体は、有機溶剤中で樹脂粒子が凝集したり膨潤したりすることなく良好に分散していた。樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径は0.34μm、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は11.0%、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度は14.9mPa・sであった。
【0185】
〔比較例1〕(樹脂粒子溶剤分散体の製造)
有機溶剤として酢酸ブチルに代えてヘキサンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度20重量%の樹脂粒子溶剤分散体を得た。
【0186】
得られた樹脂粒子溶剤分散体は、樹脂粒子が凝集していた。樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径は2.22μm、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は20.2%、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度は225mPa・sであった。
【0187】
〔比較例2〕(樹脂粒子溶剤分散体の製造)
有機溶剤として酢酸ブチルに代えてエチレングリコールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度20重量%の樹脂粒子溶剤分散体を得た。
【0188】
得られた樹脂粒子溶剤分散体は、樹脂粒子が凝集していた。樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径は3.61μm、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は28.2%、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度は480mPa・sであった。
【0189】
〔比較例3〕(樹脂粒子溶剤分散体の製造)
製造例2で得られた樹脂粒子(2)に代えて、製造例4で得られた樹脂粒子(4)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、固形分濃度20重量%の樹脂粒子溶剤分散体を得た。
【0190】
得られた樹脂粒子溶剤分散体は、樹脂粒子が凝集していた。樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径は3.01μm、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は35.5%、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度は345mPa・sであった。
【0191】
〔比較例4〕(樹脂粒子溶剤分散体の製造)
製造例2で得られた樹脂粒子(2)に代えて、製造例5で得られた樹脂粒子(5)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、固形分濃度20重量%の樹脂粒子溶剤分散体を得た。
【0192】
得られた樹脂粒子溶剤分散体は、樹脂粒子が凝集していた。樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径は5.13μm、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は27.3%、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度は132mPa・sであった。
【0193】
〔比較例5〕(樹脂粒子溶剤分散体の製造)
製造例2で得られた樹脂粒子(2)に代えて、製造例6で得られた樹脂粒子(6)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、固形分濃度20重量%の樹脂粒子溶剤分散体を得た。
【0194】
得られた樹脂粒子溶剤分散体は、樹脂粒子が膨潤していた。樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径は1.57μm、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は18.6%、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度は652mPa・sであった。
【0195】
〔比較例6〕(樹脂粒子溶剤分散体の製造)
製造例2で得られた樹脂粒子(2)に代えて、製造例7で得られた樹脂粒子(7)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、固形分濃度20重量%の樹脂粒子溶剤分散体を得た。
【0196】
樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径は2.56μm、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の粒子径の変動係数は30.2%、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度は180mPa・sであった。
【0197】
〔ハードコート層の製造例〕
実施例1〜5及び比較例1〜6で得られた樹脂粒子溶剤分散体のそれぞれを用いて、以下の方法により11種類のハードコート層を作製した。
【0198】
すなわち、光重合性多官能単量体としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(商品名「ライトアクリレートPE−3A」、共栄社化学株式会社製)98.5重量部に、光ラジカル重合開始剤としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン株式会社製)1.5重量部を溶解させて、単量体組成物を作製した。実施例1〜5及び比較例1〜6で得られた樹脂粒子溶剤分散体の何れかを、前記単量体組成物100重量部に対する樹脂粒子の量が0.25重量部となるように混合し、さらにトルエンで固形分濃度30重量%になるように希釈して、塗工液(塗料)を得た。
【0199】
得られた塗工液を、透明基材としてのPETフィルム(厚み125μm)上に、バーコート法で厚み5μmとなるように塗布した。塗布した塗工液を80℃で3分間かけて乾燥させ、塗工層を形成した。次いで、この塗工層に、ハロゲンランプで紫外線を照射することにより塗工層を硬化させて、ハードコート層(塗膜)を形成した。これにより、アンチブロッキング剤として機能しうる樹脂粒子が含まれたハードコート層(厚み5μm)がPETフィルム上に形成された積層フィルムが得られた。
【0200】
〔ハードコート層の耐傷付き性の評価方法〕
実施例1〜5及び比較例1〜6の樹脂粒子溶剤分散体のそれぞれから得られた11種類のハードコート層について、以下の方法で耐傷付き性を評価した。
【0201】
摩擦堅牢度試験機(大栄科学精器製作所社製、型番「RT−200」)を用い、ハードコート層の製造例に用いたものと同じハードコートが施されていないPETフィルムを1枚、試料台の上面に固定し、ハードコート層の製造例で得られた積層フィルムを、樹脂粒子が含まれるハードコート層を下向きにして摩擦子の下面に固定した。さらに、前記積層フィルムの上に500gの分銅(積層フィルムとの接触面積は4cm
2)を乗せて摩擦子を30往復/分の速さでPETフィルムの長手方向と平行に10cmの距離を20回往復させることによって前記積層フィルムのハードコート層でPETフィルムを擦過し、擦過前後のPETフィルムのヘイズ差(ΔH)を測定し、この測定値を耐傷付き性の評価指標とした。ヘイズは、日本電色工業株式会社製のヘーズメーター(型番「NDH 2000」)を使用し、JIS K 7136に準拠して測定した。
【0202】
また、擦過後のPETフィルム表面の傷の度合を肉眼で観察した。肉眼で傷が確認されなかった場合を耐傷付き性(外観)が「○」(良好)、傷が確認された場合を耐傷付き性(外観)が「×」(不良)と判定した。
【0203】
〔ハードコート層の耐ブロッキング性の評価方法〕
実施例1〜5及び比較例1〜6の樹脂粒子溶剤分散体のそれぞれから得られた11種類のハードコート層について、以下の方法で耐ブロッキング性を評価した。
【0204】
ハードコート層の製造例で得られた積層フィルムを、15cm×15cmの正方形に成形し、ハードコート層が同方向を向くように重ね合わせ、2枚のガラス板の間に挟んだ。この2枚のガラス板の間に積層フィルムを挟んだものを、25℃雰囲気下において荷重が50g/cm
2となるよう圧力を掛けながら24時間放置した。その後、ハードコート層がブロッキングするか否かを目視により評価し、ハードコート層がブロッキングしない場合をハードコート層の耐ブロッキング性が「○」(良好)とし、ハードコート層がブロッキングする場合をハードコート層の耐ブロッキング性が「×」(不良)とした。
【0205】
実施例1〜5及び比較例1〜6の樹脂粒子溶剤分散体のそれぞれから得られた11種類のハードコート層の耐傷付き性及び耐ブロッキング性の評価結果を、実施例1〜5及び比較例1〜6の樹脂粒子溶剤分散体の組成及び性状と共に表2に示す。
【0206】
【表2】
【0207】
実施例1〜5と比較例1・2との比較により、有機溶剤の溶解度パラメータを8.0〜12.5の範囲内にすることで、有機溶剤の溶解度パラメータを8.0〜12.5の範囲外である場合と比較して、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度を低くすることができると共に、耐傷付き性を向上させることができることが分かる。
【0208】
実施例2と比較例3・4との比較により、単官能ビニル系単量体としてメタクリル酸イソブチル及び/又はメタクリル酸tert−ブチルを樹脂粒子の全体量に対して60重量%以上使用することで、メタクリル酸イソブチル及びメタクリル酸tert−ブチルより親水性の高い単官能ビニル系単量体(メタクリル酸メチル)のみを使用した場合(比較例3)や、単官能ビニル系単量体としてメタクリル酸tert−ブチルを樹脂粒子の全体量に対して60重量%未満で使用した場合(比較例4)と比較して、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度を低くすることができると共に、耐傷付き性を向上させることができることが分かる。
【0209】
実施例2と比較例5との比較により、多官能ビニル系単量体の量を樹脂粒子の全体量に対して15重量%以上とすることで、多官能ビニル系単量体の量が樹脂粒子の全体量に対して15重量%未満である場合と比較して、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度を低くすることができると共に、耐傷付き性を向上させることができることが分かる。
【0210】
実施例2と比較例6との比較により、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径を1.0μm以下とすることで、樹脂粒子溶剤分散体中における樹脂粒子の平均粒子径を1.0μmを超える場合と比較して、樹脂粒子溶剤分散体の見掛け粘度を低くすることができると共に、耐傷付き性を向上させることができることが分かる。