(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
容器の口部に取り付けるキャップ本体、及びキャップ本体の口径を狭める閉鎖板に形成される貫通孔の貫通方向に対して交差する方向に延長する排出管を有する樹脂製のキャップと、
排出管内において貫通孔の貫通方向に対する交差点よりも片側の密閉空間に収容される円筒状の回転軸、排出管の外部において回転軸を回すハンドル本体、及び回転軸の内部空間をハンドル本体側で閉鎖する底板を有する樹脂製のハンドルと、
回転軸の内部に基端部が収容される弁棒であって排出管内の密閉空間とは反対側の流路に先部が配置される弁棒を有する樹脂製の栓体とを備え、
回転軸を回転可能に支持する軸受部として、排出管の内周面には全周に亘る環状の凹溝を、回転軸の外周面には凹溝に嵌合する環状の凸リングをそれぞれ備え、
弁棒と回転軸の内外周面にはハンドル本体の回転を伝達するネジ部を備え、
ハンドル本体の回転運動を排出管内での弁棒の直線往復運動に変換する変換機構部として、回転軸の軸線方向に対して平行なレールと、レールに沿って移動するスライダーとを、排出管と栓体の弁棒との内外周面に分けて備え、
排出管には流路の出口の内径を狭める弁座部を、栓体の弁棒の先部には弁座部に密接可能な弁部をそれぞれ備え、
軸受部よりも流路側における排出管と回転軸の内外周面には、軸線方向に対して平行な方向に離隔した位置において円周方向全周に亘って密接する複数のシール面部を備え、
排出管は、流路と密閉空間の双方に面する小径部と、密閉空間にのみ面する大径部とを有する段付きの円筒状内周面を備え、
回転軸は、外周面が円柱状の回転軸本体と、回転軸本体の先部のハンドル側において円周方向全周に亘って突出するフランジ部とを備え、
シール面部は、排出管の小径部と回転軸本体の先端部との内外周面が密接する第1のシール面部と、排出管の大径部とフランジ部との内外周面が密接する第2のシール面部とを備えることを特徴とする耐圧コック。
【背景技術】
【0002】
炭酸液等が充填される容器本体を開閉する耐圧コックとしては、金属製のコックが従来から知られている。炭酸の含まれていない単なる液体用のコックとは異なって、耐圧コックは、炭酸の内圧がコックにかかるため、液体が排出される出口だけでなく、出口の反対側であるハンドル側もシール性を確保することが望まれる。そうしないと、ハンドルの付近から内圧により液体が噴出してくるからである。金属製のコックのより具体的な構成の一例としては、ネジ式であって、ハンドルを回転させると、その回転方向に従って弁棒が往動又は復動し、弁棒の先端が出口の周囲の弁座に密接又は離隔することにより、出口を開閉するものが存在する。また弁棒には出口とは反対側(ハンドル側)にOリングが嵌め込まれており、Oリングにより炭酸の内圧に対するシール性を確保していた。
【0003】
しかし金属に比べて剛性が劣るせいか、樹脂製の耐圧コックは、これまで存在しなかったものと思われる。ちなみに樹脂製のコックの一例として、容器本体の口部に取り付ける嵌合板部Aと、嵌合板部Aに連通する筒体部Bと、筒体部Bの外周面に螺合するキャップ状回転部Cと、筒体部Cの内部に嵌挿されたプランジャーDとから構成されるものが公知となっている(特許文献1)。この樹脂製のコックは、回転部Cを操作することにより、回転部Cと一緒にプランジャDが筒体部Bに対して回転しながら直線往復運動し、その際にプランジャDのシャフト部41の外周面と筒体部Bの内周面26とが密接状態で摺動するようになっている。そして筒体部Bの下端のいわゆる出口である開口部23を閉鎖するときは、開口部23とプランジャDの先端部である閉鎖部43との内外周面が密接するようになっている。なおA〜Dや23等の数字は、特許文献1内で用いられた符号である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記した樹脂製のコックは、出口とは反対側におけるシール性が十分とは言い難く、耐圧コックとして用いるには適切では無い。つまり出口とは反対側においては、プランジャDのシャフト部41の外周面が筒体部Bの内周面に広く面で密接しながら出口に対して離隔又は接近する方向へ直線的に摺動するため、シール性が十分とは言い難い。なおプランジャDには炭酸による内圧がかかるので、プランジャDが出口を閉鎖する状態のとき、プランジャDが出口から離れる方向へ移動しないように、ひいては筒体部Bから抜け外れないようにする性能も高いことが樹脂製のコックには望まれる。
【0006】
本発明は、上記実情を考慮したもので、炭酸の内圧に対するシール性を確保することのできる樹脂製の耐圧コックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、容器の口部に取り付けるキャップ本体、及びキャップ本体の口径を狭める閉鎖板に形成される貫通孔の貫通方向に対して交差する方向に延長する排出管を有する樹脂製のキャップと、排出管内において貫通孔の貫通方向に対する交差点よりも片側の密閉空間に収容される円筒状の回転軸、排出管の外部において回転軸を回すハンドル本体、及び回転軸の内部空間をハンドル本体側で閉鎖する底板を有する樹脂製のハンドルと、回転軸の内部に基端部が収容される弁棒であって排出管内の密閉空間とは反対側の流路に先部が配置される弁棒を有する樹脂製の栓体とを備える。そして回転軸を回転可能に支持する軸受部として、排出管の内周面には全周に亘る環状の凹溝を、回転軸の外周面には凹溝に嵌合する環状の凸リングをそれぞれ備える。弁棒と回転軸の内外周面にはハンドル本体の回転を伝達するネジ部を備え、ハンドル本体の回転運動を排出管内での弁棒の直線往復運動に変換する変換機構部として、回転軸の軸線方向に対して平行なレールと、レールに沿って移動するスライダーとを、排出管と栓体の弁棒との内外周面に分けて備える。排出管には流路の出口の内径を狭める弁座部を、栓体の弁棒の先部には弁座部に密接可能な弁部をそれぞれ備える。そして軸受部よりも流路側における排出管と回転軸の内外周面には、軸線方向に対して平行な方向に離隔した位置において円周方向全周に亘って密接する複数のシール面部を備えることを
前提とする。
【0008】
また複数のシール面部は、段の無い単なる真っ直ぐな円筒状内周面を有する排出管と、段の無い単なる真っ直ぐな円柱状外周面を有する回転軸との内外周面にのみ形成しても良い。但しシール面部は、排出管と回転軸とが密接する際に、樹脂同士の弾性によって排出管と回転軸とが微妙に変形している。従ってシール面部を複数設けると、1つのシール面部の変形により、他のシール面部の密接具合に影響を与えるおそれがある。そのおそれをできるだけ減らすには次のようにすることが望ましい。
すなわち排出管は、流路と密閉空間の双方に面する小径部と、密閉空間にのみ面する大径部とを有する段付きの円筒状内周面を備えるものとし、回転軸は、外周面が円柱状の回転軸本体と、回転軸本体の先部のハンドル側において円周方向全周に亘って突出するフランジ部とを備えるものとし、シール面部は、排出管の小径部と回転軸本体の先端部との内外周面が密接する第1のシール面部と、排出管の大径部とフランジ部との内外周面が密接する第2のシール面部とを備えることである。
【0009】
さらに回転軸を成形する際の樹脂のヒケが、第1のシール面部の一部を構成する回転軸本体の先端部の外周面と、第2のシール面部の一部を構成するフランジの外周面とに影響を与えないようにして、シール性を向上させるには次のようにすることが望ましい。
すなわち回転軸本体の先端部の外周面とフランジ部の外周面とが連続する境界面を、フランジ部の外周面側へ向うにつれて徐々に大径となるテーパ形状にしてあることである。
【0010】
また変換機構部としてのレールとスライダーは、一方を排出管の内周面に、他方を栓体の弁棒の外周面に設けてあれば良い。また弁座部と弁部との密接する面積を増やすには、次のようにすることが望ましい。
すなわち変換機構部として、レールを排出管の内周面に、スライダーを栓体の弁棒の外周面にそれぞれ備え、弁部は、弁棒の先部の外周面から円周方向全周に亘って突出すると共に、その外周面にはレールを通す凹部を有することである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハンドルを回しても、互いに嵌合する環状の凹溝と凸リングとの軸受部によって、排出管内の回転軸の軸線方向における位置が一定となり、それに伴って、回転軸と排出管とのシール面部の軸線方向における位置も一定となる。従ってシール面部の軸線方向の位置が移動するものに比べれば、シール性が向上する。また複数のシール面部を備えていることから、一つのシール面部のものよりもシール性が向上する。しかも容器本体の内圧が回転軸にかかっても互いに嵌合する凹溝と凸リングによって軸受部が形成されているので、軸受部が抜け止めの機能を果たし、回転軸が外れることはない。従って本発明は、炭酸の内圧に対するシール性を確保することのできる樹脂製の耐圧コックと言える。
【0013】
また排出管を段付きの円筒状内周面を備えるものとし、排出管の小径部と回転軸本体の先端部との内外周面が密接する第1のシール面部と、排出管の大径部とフランジ部との内外周面が密接する第2のシール面部とを備えるものであれば、第1のシール面部と第2のシール面部との密接具合が互いに影響しづらいので、シール性を向上することができる。
【0014】
さらに転軸本体の先端部の外周面とフランジの外周面とが連続する境界面を、フランジの外周面側へ向うにつれて徐々に大径となるテーパ形状にしてあれば、ハンドルの成形時にシール面部付近において生じる樹脂のヒケを境界面で吸収することができ、シール面部となるフランジ部の外周面の真円度が歪むことを予防でき、シール性を向上することができる。
【0015】
また変換機構部として、レールを排出管の内周面に、スライダーを栓体の弁棒の外周面にそれぞれ備え、レールを通す凹部を弁部の外周面に有するものであれば、凹部のない形状の栓体に比べれば、弁座部に密接する弁部の面積を広く取れるので、シール性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(イ)〜(ホ)図は、容器本体の口部に取り付けられた本発明の第1実施形態の耐圧コックが閉まっている状態を示す平面図、正面図、左側面図、右側面図、下面図である。
【
図2】(イ)(ロ)図は、
図1のA−A線切断部拡大断面図、B−B線切断部拡大断面図である。
【
図3】(イ)(ロ)図は、
図1のC−C線切断部拡大断面図、D−D線切断部拡大断面図である。
【
図4】容器本体の口部に取り付けられた第1実施形態の耐圧コックが開いている状態を示す平面図である。
【
図5】(イ)(ロ)図は、
図4の状態(耐圧コックが開いている状態)における耐圧コックの拡大断面図であって、
図1のA−A線切断部拡大断面図、B−B線切断部拡大断面図に対応する図面である。
【
図6】(イ)〜(ハ)図は、キャップを示す右側面図、A−A線切断部断面図、B−B線切断部断面図である。
【
図7】(イ)〜(ニ)図は、ハンドルを示す正面図、平面図、右側面図、A−A線切断部断面図である。
【
図8】(イ)〜(ヘ)図は、弁棒を示す平面図、正面図、左側面図、A−A線切断部断面図、B−B線切断部拡大断面図、C−C線切断部拡大断面図である。
【
図9】第1実施形態の耐圧コックの組立状態を示す斜視図である。
【
図10】第1実施形態の耐圧コックの分解斜視図である。
【
図11】第1実施形態の耐圧コックを容器本体に取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第一実施形態の耐圧コック1は、
図1〜
図3又は
図10に示すように、3つの部品を組み立てたもので、容器本体9の口部9aに取り付けるキャップ2と、キャップ2により回転可能に支持されるハンドル3と、ハンドル3を回す回転方向に従ってキャップ2の出口26mを開閉する栓体4とを備えている。キャップ2、ハンドル3、栓体4は何れも樹脂(合成樹脂)を原料とする射出成型品であって、例えば硬質樹脂、より具体的に言えばポリプロピレンやポリエチレン等を一例として用いる。なお便宜上、
図1(ロ)を基準として方向性をすることがある。
【0019】
キャップ2は、
図1〜
図3、
図6に示すように、容器本体9の口部9aに取り付けるキャップ本体21と、キャップ本体21の内部に通じる内部空間を備える排出管25とを備えている。
【0020】
キャップ本体21は、筒体として同心円状に半径方向外側及び内側に配置された何れも円筒状の外筒22及び内筒23と、外筒22及び内筒23を互いの長手方向の一端において接続する閉鎖板24とを備えている。外筒22の内周面には雌ネジ22aが形成されており、この雌ネジ22aが容器本体9の口部9aの外周面に形成された雄ネジ9bに螺合する。また閉鎖板24は、外筒22と内筒23とを接続するだけでなく、内筒23の一端の口径を狭めるように塞ぐ円盤であり、円盤にはその厚み方向に貫通する貫通孔24aが形成されている。貫通孔24aは、平面視して長方形状であって、円盤の中央部に対して偏っている。より詳しく言えば貫通孔24aの長方形の一端部が円盤の中央部に位置し、他端部が円盤の外周部に位置するようになっている。
【0021】
排出管25は、貫通孔24aの貫通方向に対して交差する方向(より詳しく言えば直交する方向)に延長する円筒状の管本体26と、管本体26の長手方向の中間部及び閉鎖板24を接合する環状の接合部27と、管本体26の一端部外周面から突出する注ぎ口28と、容器本体9内の炭酸液を注ぎ口28へ向かわせるために管本体26の注ぎ口28側の一端を塞ぐ変向板29とを備えている。
【0022】
接合部27は、上下方向に延長する筒であって、管本体26の内部空間とキャップ本体21の内部空間とを連通する。また注ぎ口28は、上下方向に延長する筒であって、その内部空間は、管本体26の内部空間に連通する。なお変向板29は、円盤であって、管本体26を一端のみ開口端とするものとしている。
【0023】
管本体26は、その外周面であって軸線方向の全長の中間部、いい換えれば貫通孔24aの貫通方向には入口26cを備えている。また入口26cは接合部27の内部空間を介して貫通孔24aに連通している。管本体26が貫通孔24aの貫通方向に対して交差する方向へ延長しているので、管本体26の円柱状の内部空間のうち入口26cの近傍(下側部分)は、貫通孔24aの貫通方向に対する交差点である。
管本体26の内部空間は、入口26cの近傍部分を含む注ぎ口28側の空間、いい換えれば交差点を含む片側の空間である流路26aと、流路26aとは反対側の空間、いい換えれば交差点よりも反対側の密閉空間26b(より詳しく言えば入口26cの近傍部分を含まずに注ぎ口28とは反対側の部分)とに便宜上分けられる。
管本体26の円柱状の内部空間は、より詳しく言えば密閉空間26b側から注ぎ口28側へ向かって段階的に口径が小さくなる段付きの円柱状の空間であって、そのため管本体26は、段付きの円筒状内周面となっている。詳しくは管本体26は、密閉空間26bにのみ面する大径部26hと、流路26aと密閉空間26bの双方、より詳しく言えば流路26aのうち入口26cの近傍部分と密閉空間26bの流路側部分との双方に面する小径部26iと、流路26aのうち注ぎ口28側の最小径部26jとを備えている。ちなみに最小径部26jのうちハンドル3側(小径部26iに対する近傍部分)が流路26aの出口26mであって、最小径部26jと小径部26iとの段差部分が後述の弁座部26nとなる。一方、大径部26hと小径部26iとの段差部分は密閉空間26b側に位置する。そして管本体26の密閉空間26b側の端部にはハンドル3が収容されると共に回転可能に支持される。
【0024】
ハンドル3は、
図1〜
図3、
図7に示すように、密閉空間26bにおいて管本体26に回転可能に支持される回転軸31と、排出管25(管本体26)の外部において回転軸31を回すハンドル本体35と、回転軸31の内部空間を外部空間と仕切る底板34とを備えている。なおより詳しく言えば底板34は、回転軸31の内部空間をハンドル本体35側であって、管本体26よりも外側において閉鎖している。
【0025】
ハンドル本体35は、回転軸本体32の突出部分の外周面であって管本体26の端面を覆うように突出する位置決め鍔36と、回転軸本体32の突出部分の外周面から半径方向外側に交差する状態で突出すると共に位置決め鍔36から軸線方向と平行な方向に延長する摘まみ鍔37とから構成される。なお位置決め鍔36と摘まみ鍔37とはT字状に交差する状態となっている。
【0026】
回転軸31は、円筒状の回転軸本体32を主体として備えている。回転軸本体32は、管本体26の密閉空間26bに収容される部分と、管本体26の外部に突出する部分とを備えている。回転軸本体32の外径は、管本体26の内径よりも小さく形成され、それ故、管本体26と回転軸本体32との互いの対向する内外周面には隙間が形成されている。
【0027】
また回転軸31を回転可能に支持する軸受部5が、管本体26と回転軸31の互いの対向する内外周面(以下、簡略化して「内外周面」と言う。)であってハンドル本体35側に形成されている。軸受部5は、回転軸本体32の外周面においてその円周全周に亘って突出する環状の凸リング5aと、管本体26の内周面においてその円周全周に亘って窪む環状の凹溝5bとから構成される。凸リング5aと凹溝5bとは、互いの円周方向全周に亘って嵌合する。また凸リング5aの外径は、凹溝5bの内径以上であり、それ故凸リング5aと凹溝5bとは樹脂の弾性を利用して円周方向全周に亘って密接する。なお図示の例では軸線方向と平行な方向に間隔をあけて凸リング5aと凹溝5bが2つずつ形成されている。これら凸リング5aと凹溝5bとの円周方向全周に亘る嵌合と密接によって回転軸31は管本体26に回転可能に支持されると共に、容器本体9内の炭酸液より生じる内圧に耐えて回転軸31が排出管25から抜け外れないようにする。なおハンドル3を排出管25に取り付ける場合は、位置決め鍔36が管本体26の端面に衝突するまでハンドル3を排出管25の内部空間へ向かって押し込むことにより、回転軸31を管本体26の内部に圧入し、凸リング5aと凹溝5bとを嵌合させる。
【0028】
また回転軸31と排出管25とを互いの円周方向全周に亘って密接する複数のシール面部6が設けられている。シール面部6は、排出管25と回転軸31の内外周面であって入り口側において軸線方向と平行な方向に間隔をおいた位置に2つ形成されている。シール面部6を形成するため、回転軸31は、外周面が円筒状の回転軸本体32と、回転軸本体32の先端部よりも後側において円周方向全周に亘って突出するフランジ部33とを備えおり、排出管25は、密閉空間26b側において入口26cの近傍部分に小径部26iと大径部26hとの段部を備えている。段部の近傍においては、回転軸本体32の外径は小径部26iの内径以上であり、フランジ部33の外径も大径部26hの内周面以上である。そしてシール面部6は、小径部26iと回転軸本体32の先端部の内外周面が密接する第1のシール面部6aと、大径部26hとフランジ部33の内外周面が密接する第2のシール面部6bとを備えている。第1及び第2のシール面部6a,6bは、いずれも円環状の面同士で密接するものとなっている。
また回転軸本体32の先端部の外周面とフランジ部33の外周面とが連続する境界面33aを、フランジ部33の外周面側へ向うにつれて徐々に大径となるテーパ形状にし、第1と第2のシール面部6a,6bとなる部分の真円度を高精度に保つようにしてある。つまりハンドル3の成形時に樹脂のヒケによって、第1と第2のシール面部6a,6bとなる部分の真円度ができるだけ歪まないようにし、シール性を向上させている。
【0029】
栓体4は、
図1〜
図3、
図8に示すように、流路26a内を軸線方向に沿って直線往復動可能な弁棒41を主体として構成される。弁棒41の一端部であるハンドル3側の部分は、回転軸31の内部空間に収容される部分であり、弁棒41が直線往復運動するストロークは、回転軸31を閉鎖する底板34の位置によって決定される。また弁棒41は、円筒状の弁棒本体41aと、弁棒本体41aの一端部(流路26aに配置される方の端部)を塞ぐ閉塞板41bとを備える。
【0030】
そして栓体4に対してハンドル本体35の回転を伝達するネジ部7が回転軸31と弁棒41の内外周面に備えられている。ネジ部7は、回転軸31の内周面に形成される雌ネジ部7aと、弁棒41の一端部(回転軸31内に収容される方の一端部であって以後「基端部」と称する。)の外周面に形成される雄ネジ部7bとから構成される。
【0031】
またハンドル本体35の回転運動を栓体4の直線往復運動に変換する変換機構部8としてのガイド部が排出管25と栓体4の互いに対向する内外周面に備えられている。ガイド部は、軸線方向と平行な方向に延長するレール8aと、レール8aに沿って移動するスライダー8bとから構成される。
レール8aは管本体26の内周面に円周方向に間隔をあけて2本、より詳しく言えば軸線を中心とする対向箇所に1本ずつ形成されている。
一方、スライダー8bは、弁棒41(弁棒本体41a)の外周面のうち先部(回転軸31から突出している部分)に、より詳しく言えば先部のうち基端部側に形成されている。またスライダー8bは、2つのレール8aに対応させて2つ設けられており、2つのスライダー8b,8bは、弁棒本体41aの円周方向に約180度おきに形成されている。さらに各スライダー8bは、レール8aの両側(軸線を中心とする円周方向両側)から間隙を介して挟む一対の案内片8c,8cから構成されている。つまり一対の案内片8c,8cは、弁棒本体41aの外周面において円周方向に間隔をあけて形成されている。
【0032】
また排出管25は、前述したように小径部26iと最小径部26jとの段差部分の近傍に流路26aの出口26mを備えている。より詳しく言えば流路26aの出口26mは、最小径部26j内周面のうち最も小径部26i側の部分であって、前記した段差部分、すなわち小径部26iと最小径部26jとの段差状に内径を狭める部分が弁座部26nである。この弁座部26nの内周面に密接及び離隔可能な弁部42が弁棒41(弁棒本体41a)の先部に形成されている。
弁部42は、弁棒41の先部の外周面から円周方向全周に亘って突出している。但し弁部42の外径は、小径部26iの内周面よりも小さくしてあり、それ故弁座部26nと弁部42とが密接している状態において、弁座部26nの外周面と小径部26iの内周面との間には僅かな隙間が形成される。但し、弁部42の外周面全周のうち一部に接触片42bが半径方向外側に突出しており、弁棒41の往復動時に接触片42bが干渉する(乗り越える)張出し部26zが小径部26iの内周面うち出口側に形成されている。より詳しく言えば弁部42が弁座部26nに密接している場合の弁部42に対して、ハンドル3側に隣接する位置における小径部26iの内周面には張出し部26zが半径方向内側に突出して形成されている。また弁部42の外周面には軸線方向から見ると、一対のレール8aを通す一対の凹部42a,42aが窪んで形成されており、弁部42がレール8aに干渉しないようにすると共に、弁部42と弁座部26nとの密接面積を広くしてある。
また弁棒41の先端には短い円筒状の栓部43が軸線方向と平行な方向へ突出している。より詳しく言えば、栓部43は、軸線方向を中心にして同心円状に形成されている。そして栓部43の外径は、先部については先端に向かうにつれて先細りとなるように円弧状に丸く面取りされた寸法であり、栓部43の少なくとも根元部(弁部42側)の外径は、最小径部26jの内周面の出口26mの内径以上に形成されている。従って栓部43が出口26mの内側に突入すると、栓部43と出口26mと内外周面が密接する。
従って流路26aの出口26mを開閉する部分としては、出口26mを直に開閉する部分(出口26mと栓部43)と、出口26mを間接的に開閉する部分(弁座部26nと弁部42の互いの対向面(軸線方向に直交する面)の部分)となる。
【0033】
上記した耐圧コック1は、次のようにしてシール性を確保してある。
流路26aの出口26m側に対する反対側のシール性の確保は、流路26aの出口26mを開いているか、閉じているかに関係なく、密閉空間26b側において排出管25とその中に収容されている回転軸31との内外周面において形成される第1のシール面部6aと第2のシール面部6bとの2か所により行われる。ちなみにハンドル3と栓体4とはネジ部7によって螺合する構造上、回転軸31と弁棒41との内外周面に炭酸液が浸入してくる。しかし回転軸31は回転軸本体32の端部が底板34で塞がれているので、ハンドル本体35の外側に炭酸液が漏れ出ることは無い。また栓体4は、弁棒41(弁棒本体41a)の内部に炭酸液が浸入するが、弁棒本体41aの端部が閉塞板41bで塞がれているので、弁棒本体41aの中から外部に炭酸液が漏れ出ることも無い。
一方、流路26aの出口26m側のシール性の確保は、排出管25の出口26mと栓部43との密接、並びに弁座部26nと弁部42との密接によって行われる。
【0034】
また上記した第1実施形態の耐圧コック1は、
図10に示すようにキャップ2、栓体4、ハンドル3の3部品が組み立てられて、
図9に示すように俗にバッグインボックスと言われる容器本体9の口部9aに連結される。ちなみに
図11に示すように容器本体9は、炭酸液を収容するための直方体形状の胴部9cに口部9aが接着又は溶着等されている。
図4、
図5に示すように、出口26mが完全に開いている状態において、ハンドル3を一方向に回すと、栓体4が出口26mに対して接近する方向へ往動する。より詳しく言えば、ハンドル3を一方向に回すと、軸受部5の嵌合によってハンドル3の軸線方向の位置は一定でありながら、回転軸31が一方向に回ることになる。回転軸31(ハンドル3)と栓体4とはネジ部7によって螺合する関係にあるので、回転軸31が一方向に回ると、栓体4も一緒に回転しようとする。しかし変換機構部8によって栓体4は排出管25に対して回転不能に保持されているので、回転軸31のみが一方向に回り、変換機構部8のレール8aに沿ってスライダー8bが移動することにより、栓体4は出口26mへ向かって接近する方向に往動することになる。なお、スライダー8b(一対の案内片8c,8c)は、レール8aを円周方向に間隙のある状態で挟んでいるので、わずかに栓体4は一方向に回転してからその回転をレール8aによって阻止され、出口26mへ向かって往動することになる。このわずかな栓体4の一方向への回転により、動き出しに要する力が軽減され、軽い力で閉めることができる。そして、弁部42の接触片42bが張出し部26zを乗り越えた直後に、弁部42が弁座部26nに密接し、出口26mに栓部43が詰まり、
図1〜3に示すように出口26mが完全に塞がれる。
【0035】
出口26mが完全に塞がれた状態において、ハンドル3を逆方向に回すと、わずかに栓体4は逆方向に回転してからその回転をレール8aによって阻止され、ハンドル3側へ向かって復動することになり、その復動の直後、弁部42の接触片42bが張出し部26zを乗り越える。ハンドル3を最後まで逆方向に回すと、栓体4の弁棒41が回転軸31の中に深く入り込み、排出管25よりも外部に位置しているハンドル3の底板34に弁棒41が衝突し、出口26mが完全に開いた状態となる。この状態では、
図4、
図5に示すように、入口26cが大きく開かれ、炭酸液が大量に排出されることになる。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば弁棒41は、弁棒本体41aが円筒状つまり内部空間を有する中空のものに限らず、円柱状つまり内部空間の無い中実のものであっても良い。また排出管25は、接合部27がなく、管本体26がキャップ本体21の閉鎖板24に直に接合しても良い。また排出管25は、接合部27だけでなく、注ぎ口28や変向板29がなく、管本体26のみで構成されていても良い。さらに栓体4は弁棒41の先に栓部43を突出するものに限らず、栓部43の無いものであっても良く、この場合出口26mを閉鎖する状態は、弁部42と弁座部26nとが軸線方向に密接する状態となる。なお各部品の相対的な関係において樹脂の硬度は、同じでも良いし、差を付けても良く、差をつける場合には、キャップ2よりもハンドル3及び栓体4を軟質に、或いは逆に硬質にしても良い。