特許第6134617号(P6134617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立GEニュークリア・エナジー株式会社の特許一覧

特許6134617原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法
<>
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000002
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000003
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000004
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000005
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000006
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000007
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000008
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000009
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000010
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000011
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000012
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000013
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000014
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000015
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000016
  • 特許6134617-原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134617
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20170515BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   G21F9/28 525B
   G21F9/28 525D
   G21F9/28 521D
   G21F9/12 512B
【請求項の数】14
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-185070(P2013-185070)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-52512(P2015-52512A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石田 一成
(72)【発明者】
【氏名】細川 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】会沢 元浩
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−074887(JP,A)
【文献】 特開2013−064696(JP,A)
【文献】 特開2003−033653(JP,A)
【文献】 特開平09−159798(JP,A)
【文献】 特開昭62−250189(JP,A)
【文献】 特開2013−130565(JP,A)
【文献】 特開2003−057393(JP,A)
【文献】 特開2003−090897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/28
G21F 9/12
C23G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マロン酸及び50ppm〜400ppmの範囲内のシュウ酸を含む還元除染液を原子力プラントの炭素鋼部材の表面に接触させ、前記還元除染液により前記炭素鋼部材の前記表面の還元除染を行うことを特徴とする原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項2】
前記還元除染により前記炭素鋼部材から前記還元除染液に溶出した陽イオンを前記還元除染液から除去する請求項1に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項3】
前記マロン酸及び50ppm〜400ppmの範囲内の前記シュウ酸を含む前記還元除染液に、酸素ガスを注入し、前記炭素鋼部材の前記表面の還元除染は、前記マロン酸及び50ppm〜400ppmの範囲内の前記シュウ酸を含み、前記酸素ガスが注入された前記還元除染液を用いて行われる請求項1に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項4】
前記酸素ガスがマイクロバブル発生装置で発生したマイクロバブルである請求項3に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項5】
前記還元除染液のマロン酸濃度が2100ppm〜19000ppmの範囲内にある請求項1または3に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項6】
前記マロン酸濃度が2100ppm〜7800ppmの範囲内にある請求項5に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項7】
前記原子力プラントから取り外された前記炭素鋼部材を除染容器内に収納し、前記除染容器内に前記還元除染液を供給し、前記炭素鋼部材の前記表面の還元除染は、前記除染容器内において前記還元除染液を前記炭素鋼部材に接触させることにより行われる請求項1または2に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項8】
前記還元除染液の前記マロン酸の濃度が12300ppm〜19000ppmの範囲内にある請求項7に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項9】
原子力プラントの炭素鋼製の第1配管に第2配管を接続し、マロン酸及び50ppm〜400ppmの範囲内のシュウ酸を含む還元除染液を、前記第2配管を通して前記第1配管に供給し、前記還元除染液を前記第1配管の内面に接触させてその内面の還元除染を行うことを特徴とする原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項10】
前記還元除染により前記第1配管から前記還元除染液に溶出した陽イオンを前記還元除染液から除去する請求項9に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項11】
前記第2配管の一端部が前記第1配管に接続されて前記第2配管の他端部が前記第1配管に接続された、ステンレス鋼製の第3配管に接続され、前記第1配管、前記第2配管及び前記第3配管を含む閉ループが形成され、
前記第2配管に接続された酸化除染液注入装置から注入された酸化除染液を第2配管より前記第3配管に供給し、
前記酸化除染液により、前記第3配管の内面の酸化除染を行い、
前記第1配管の内面の還元除染と共に、前記第2配管を通して第3配管に供給される前記還元除染により、前記第3配管の内面の還元除染を行う請求項9に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項12】
前記還元除染液が、前記第2配管に接続されたマロン酸注入装置から前記第2配管に注入されるマロン酸、及び前記第2配管に接続されたシュウ酸注入装置から前記第2配管に注入されるシュウ酸により生成される請求項11に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項13】
マロン酸及びシュウ酸を含む還元除染液に酸素ガスを注入し、前記マロン酸及び前記シュウ酸を含み、前記酸素ガスが注入された前記還元除染液を、原子力プラントの炭素鋼部材の表面に接触させ、前記還元除染液により前記炭素鋼部材の表面の還元除染を行うことを特徴とする原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項14】
前記原子力プラントから取り外された前記炭素鋼部材を除染容器内に収納し、前記除染容器内に前記マロン酸及び前記シュウ酸を含む前記還元除染液を供給し、この還元除染液に、前記除染容器内で前記酸素ガスを注入し、前記炭素鋼部材の前記表面の還元除染は、前記除染容器内において前記マロン酸及び前記シュウ酸を含み、前記酸素ガスが注入された前記還元除染液を前記炭素鋼部材に接触させることにより行われる請求項13に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法に係り、特に、沸騰水型原子力プラントの炭素鋼部材に適用するのに好適な原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、沸騰水型原子力プラント(以下、BWRプラントという)は、原子炉圧力容器(RPVと称する)内に炉心を内蔵した原子炉を有する。再循環ポンプ(またはインターナルポンプ)によって炉心に供給された炉水は、炉心内に装荷された燃料集合体内の核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、RPVからタービンに導かれ、タービンを回転させる。タービンから排出された蒸気は、復水器で凝縮されて水になる。この水は、給水としてRPVに供給される。給水は、RPV内での放射性腐食生成物の発生を抑制するため、給水配管に設けられたろ過脱塩装置で主として金属不純物が除去される。炉水とは、RPV内に存在する冷却水である。
【0003】
また、放射性腐食生成物の元となる腐食生成物は、RPV及び再循環系配管等のBWRプラントの構成部材の炉水と接する表面で発生するため、主要な一次系の構成部材には腐食の少ないステンレス鋼及びニッケル基合金などの不銹鋼が使用されている。また、低合金鋼製のRPVは内面にステンレス鋼の肉盛りが施され、低合金鋼が、直接、炉水と接触することを防いでいる。さらには、炉水の一部を原子炉浄化系のろ過脱塩装置によって浄化し、炉水中に僅かに存在する金属不純物を積極的に除去している。
【0004】
しかし、上述のような腐食対策を講じても、炉水中における極僅かな金属不純物の存在が避けられないため、一部の金属不純物が、金属酸化物として、燃料集合体に含まれる燃料棒の表面に付着する。燃料棒表面に付着した不純物(例えば、金属元素)は、燃料棒内の核燃料物質の核分裂により放出される中性子の照射によって原子核反応を起こし、コバルト60,コバルト58,クロム51,マンガン54等の放射性核種になる。
【0005】
これらの放射性核種は、大部分が酸化物の形態で燃料棒表面に付着したままである。しかしながら、一部の放射性核種は、取り込まれている酸化物の溶解度に応じて炉水中にイオンとして溶出したり、クラッドと呼ばれる不溶性固体として炉水中に再放出されたりする。炉水に含まれる放射性物質は、RPVに連絡された原子炉浄化系によって取り除かれる。原子炉浄化系で除去されなかった放射性物質は炉水とともに再循環系などを循環している間に、原子力プラントの構成部材(例えば、配管)の炉水と接触する表面に蓄積される。その結果、構成部材の表面から放射線が放射され、定検作業時の従事者の放射線被曝の原因となる。
【0006】
その従事者の被曝線量は、各人毎に規定値を超えないように管理されている。近年この規定値が引き下げられ、各人の被曝線量を可能な限り低くする必要が生じている。
【0007】
そこで、定検作業での被曝線量が高いことが予想される場合には、配管に付着した放射性核種を溶解して除去する化学除染が実施される。例えば、特開2000−105295号公報は、シュウ酸及びヒドラジンを含む水溶液(還元除染液)を用いた還元除染、シュウ酸及びヒドラジンの分解、過マンガン酸カリウム水溶液(酸化除染液)を用いた酸化除染を行う化学除染方法を提案している。この化学除染方法は、原子力プラントの配管等を対象に行っている。
【0008】
特開2001−74887号公報は、ステンレス鋼製でRPVに接続される再循環系配管内、及び再循環系配管に接続される、原子炉浄化系の炭素鋼製の浄化系配管内に過マンガン酸カリウム水溶液を供給してそれらの配管の内面に対する酸化除染を実施し、その後、シュウ酸及びヒドラジンを含む水溶液を再循環系配管及び浄化系配管のそれぞれに供給して還元除染を実施し、還元除染後にその水溶液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンの分解を行うことを記載している。
【0009】
また、特開2004-286471号公報及び特開2004-170278号公報は原子力プラントから取り外されたステンレス鋼製の機器及び配管等の除染対象物を除染槽内に収納して化学除染を行う化学除染方法を記載している。この化学除染方法では、除染対象物を除染するために、濃度比で0.9のギ酸及び0.1のシュウ酸を含む混合水溶液を除染槽内に供給し、除染対象物の還元除染を実施している。還元除染終了後、その混合水溶液に過酸化水素(またはオゾン)を供給してギ酸及びシュウ酸を分解する。
【0010】
特開2002-333498号公報は化学除染方法を記載している。この化学除染方法では、有機酸(例えば、ギ酸)及び過酸化水素を含む水溶液(還元除染水溶液)を用いた炭素鋼の化学除染、具体的には還元除染を実施している。更に、特開2003−90897号公報に記載された化学除染方法では、シュウ酸水溶液を用いて炭素鋼部材の還元除染を行い、還元除染後において、その炭素鋼部材に酸溶液(例えば、ギ酸水溶液)を接触させて、シュウ酸水溶液を用いた還元除染時に炭素鋼部材の表面に生成されたシュウ酸鉄を除去している。
【0011】
特開昭62−250189号公報は、マロン酸、シュウ酸及びヒドラジンを含む水溶液を用いてステンレス鋼製の原子炉一次系機器の還元除染を行う化学除染方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−105295号公報
【特許文献2】特開2001−74887号公報
【特許文献3】特開2004-286471号公報
【特許文献4】特開2004-170278号公報
【特許文献5】特開2002−333498号公報
【特許文献6】特開2003−90897号公報
【特許文献7】特開昭62−250189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ステンレス鋼部材を対象にしたシュウ酸水溶液を用いた還元除染では、シュウ酸水溶液中の鉄濃度はシュウ酸鉄(II)が析出するほどには上昇しない。しかし、特開2001−74887号公報に記載されたように、シュウ酸水溶液を用いて炭素鋼部材(例えば、原子炉浄化系の浄化系配管)を対象に還元除染を行う場合には、シュウ酸水溶液に対する炭素鋼部材の比率が高くなると、シュウ酸水溶液中の鉄濃度が上昇し、炭素鋼部材の母材及び酸化皮膜であるマグネタイトの溶解によってシュウ酸水溶液に溶出されるFe2+イオンがシュウ酸と錯体を形成し、シュウ酸鉄(II)として炭素鋼部材のシュウ酸水溶液と接触する表面に析出する。
【0014】
このシュウ酸鉄(II)は、溶解度が低いため、Fe2+イオンの主な発生源である炭素鋼部材の表面に析出する。シュウ酸鉄(II)が炭素鋼部材の表面に形成された酸化皮膜上に析出した場合には、還元除染時において、その酸化皮膜のシュウ酸水溶液による溶解が阻害される。この結果、酸化皮膜に含まれる放射性核種の溶解が抑制され、炭素鋼部材に対する化学除染の効率が低下する。
【0015】
特開2002-333498号公報では、有機酸(例えば、ギ酸)及び過酸化水素を含む水溶液を用いて炭素鋼部材の表面に形成された酸化皮膜の溶解力を向上させている。酸化被膜の溶解によってその水溶液に溶出したFe2+イオン及び放射性核種の陽イオンを除去するために、有機酸、過酸化水素及びFe2+イオンを含むその水溶液を、陽イオン交換樹脂を充填した陽イオン交換樹脂塔に供給する必要がある。しかしながら、過酸化水素が陽イオン交換樹脂塔内の陽イオン交換樹脂を劣化させるため、溶出したFe2+イオン及び放射性核種の陽イオン、有機酸及び過酸化水素を含むその水溶液を陽イオン交換樹脂塔に供給することができないので、水溶液中のFe2+イオン及び放射性核種の陽イオンのそれぞれの濃度を低下させることができない。この結果、炭素鋼部材の化学除染の効率を低下させることになる。
【0016】
特開2003−90897号公報に記載された化学除染方法では、シュウ酸水溶液を用いて炭素鋼部材の還元除染において炭素鋼部材の表面に析出したシュウ酸鉄(II)を、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸を分解した後に、ギ酸水溶液を用いて溶解している。しかしながら、シュウ酸鉄(II)が、シュウ酸水溶液を用いた炭素鋼部材の還元除染が行われている間に、炭素鋼部材表面の酸化皮膜上に析出するため、シュウ酸水溶液による酸化皮膜の溶解が抑制される。また、特開2003−90897号公報に記載された化学除染方法は、シュウ酸水溶液を用いた炭素鋼部材の還元除染工程の後に、ギ酸水溶液を用いたシュウ酸鉄(II)の分解工程を実施しているため、炭素鋼部材の化学除染に要する時間が長くなる。
【0017】
本発明の目的は、炭素鋼部材の還元除染の効率をさらに向上できる原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、マロン酸及び50ppm〜400ppmの範囲内のシュウ酸を含む還元除染液を原子力プラントの炭素鋼部材の表面に接触させ、その還元除染液により炭素鋼部材の表面の還元除染を行うことにある。
【0019】
シュウ酸によって炭素鋼部材の表面に形成された鉄酸化物の皮膜が溶解され、マロン酸によって炭素鋼部材の母材が溶解され、鉄酸化物及び炭素鋼部材の母材に含まれている放射性核種が還元除染液に溶出される。還元除染液に含まれるシュウ酸濃度が0ppm〜400ppmの範囲内にあるため、炭素鋼部材の表面に形成された鉄酸化物皮膜上へのシュウ酸鉄(II)の析出が抑制され、シュウ酸による鉄酸化物皮膜の溶解を効率良く行うことができる。鉄酸化物皮膜の溶解を効率良く行うことができるため、マロン酸による炭素鋼部材の母材の放射性核種を含む部分の溶解も、効率良く行うことができる。このため、炭素鋼部材の還元除染の効率をさらに向上させることができる。
【0020】
上記した目的は、マロン酸及びシュウ酸を含む還元除染液に酸素ガスを注入し、マロン酸及びシュウ酸を含み、酸素ガスが注入された還元除染液を、原子力プラントの炭素鋼部材の表面に接触させ、その還元除染液により炭素鋼部材の表面の還元除染を行うことによっても達成できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、炭素鋼部材の還元除染の効率をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法の処理手順を示すフローチャートである。
図2】実施例1の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法の実施時における、沸騰水型原子力プラントへの化学除染装置の接続状態を示す説明図である。
図3図2に示す化学除染装置の詳細構成図である。
図4】還元除染剤であるシュウ酸、ギ酸及びマロン酸のそれぞれ水溶液のpHに対する炭素鋼製試験片の溶解した厚みの変化を示す特性図である。
図5】シュウ酸、ギ酸及びマロン酸のそれぞれの水溶液を使用した場合における、ヘマタイト(α−Fe23)及びマグネタイト(Fe34)のそれぞれの溶解量を示す説明図である。
図6】マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液のシュウ酸濃度の変化に対する、炭素鋼製試験片の溶解した厚みの変化を示す特性図である。
図7】マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液のシュウ酸濃度の変化に対する、鉄酸化物の溶解量の変化を示す特性図である。
図8】マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液に浸漬された炭素鋼製試験片の溶解した厚みの経時変化を示す特性図である。
図9】マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液の温度に対する、炭素鋼製試験片の溶解した厚みの変化を示す特性図である。
図10】本発明の他の好適な実施例である実施例2の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法の処理手順を示すフローチャートである。
図11】実施例2の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法の実施時における、沸騰水型原子力プラントへの化学除染装置の接続状態を示す説明図である。
図12図11に示す化学除染装置の詳細構成図である。
図13】本発明の他の好適な実施例である実施例3の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法の処理手順を示すフローチャートである。
図14】実施例3の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法において用いられる化学除染装置の構成図である。
図15】実施例3の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法において用いられる、除染対象物を洗浄する洗浄装置の構成図である。
図16図14に示す化学除染装置に用いられた酸素ガス供給装置の他の実施例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明者らは、炭素鋼部材の還元除染の効率をさらに向上できる方法を種々検討した結果、炭素鋼部材の還元除染時において、シュウ酸鉄(II)の析出の抑制、及び還元除染により還元除染液に溶出したFe2+イオン及び放射性核種の陽イオンの継続した除去を達成することが必要であるとの認識に至った。そして、発明者らは、これらを達成できる炭素鋼部材の化学除染方法を見出したのである。発明者らが行った検討の内容及び得られた結果を以下に説明する。
【0024】
発明者らは、まず、化学除染剤、具体的にはシュウ酸、ギ酸及びマロン酸のそれぞれの水溶液(還元除染液)を用いて、炭素鋼製の試験片に対する、化学除染の一種である還元除染の効果を確認する試験を行った。この試験では、シュウ酸水溶液、ギ酸水溶液及びマロン酸水溶液が別々のビーカーに充填され、炭素鋼製の試験片がそれぞれのビーカー内の90℃の水溶液に6時間浸漬された。このようにして、各試験片に対する、各水溶液による還元除染が行われた。この試験で得られた結果を図4に示す。図4は、それぞれの水溶液のpHの変化に対する試験片の溶解した厚みの変化を示している。
【0025】
図4に示す試験結果から、炭素鋼製の試験片の溶解した厚みは、この試験片を浸漬した水溶液によって異なり、(ギ酸水溶液)>(マロン酸水溶液)>(シュウ酸水溶液)となった。ギ酸水溶液に浸漬した試験片の溶解した厚みが最も大きく、シュウ酸水溶液に浸漬した試験片の溶解した厚みが最も小さくなった。シュウ酸水溶液に浸漬した試験片はほとんど溶解しなかった。また、シュウ酸水溶液に浸漬した試験片の表面には、シュウ酸鉄(II)とみられる黄色析出物が付着していた。
【0026】
マロン酸水溶液を用いた試験片の還元除染では、その水溶液のpHが1.7(マロン酸水溶液のマロン酸濃度:19000ppm)から2.0(マロン酸濃度:5200ppm)の範囲において、炭素鋼製試験片を溶解させることができた。更に、マロン酸水溶液のpHが1.8(マロン酸濃度:12000ppm)以下になると、pHが1.9(マロン酸濃度:7800ppm)以上の場合よりも、急速に、炭素鋼製の試験片の溶解が増大する。
【0027】
さらに、シュウ酸水溶液、ギ酸水溶液及びマロン酸水溶液による、鉄酸化物であるヘマタイト(α−Fe23)及びマグネタイト(Fe34)のそれぞれの溶解性を確認する試験を行った。この試験は、シュウ酸水溶液、ギ酸水溶液及びマロン酸水溶液を、それぞれ300ml、別々のビーカー内に充填し、各水溶液の温度を90℃に保持した。各水溶液のpHは2.0である。それぞれのビーカー内に充填された各水溶液に鉄酸化物であるヘマタイトを6時間浸漬させ、それぞれの水溶液によるヘマタイトの溶解性を確認した。そして、別の鉄酸化物であるマグネタイトを、ヘマタイトと同じ条件で、別々のビーカー内に充填された各水溶液に浸漬させ、それそれぞれの水溶液によるマグネタイトの溶解性を確認した。
【0028】
この試験で得られた結果を図5に示す。図5は、還元除染液であるシュウ酸水溶液、ギ酸水溶液及びマロン酸水溶液中のFe2+イオン濃度により、ヘマタイト及びマグネタイトのそれぞれの溶解性を示している。Fe2+イオン濃度が大きくなるほど、ヘマタイト及びマグネタイトのそれぞれの溶解性が大きいことを現している。ヘマタイト及びマグネタイトのそれぞれの溶解性は、(シュウ酸水溶液)>(マロン酸水溶液)>(ギ酸水溶液)となり、シュウ酸水溶液によるヘマタイト及びマグネタイトの溶解が最も大きくなった。また、ギ酸水溶液は、ヘマタイトをほとんど溶解させることができなかった。
【0029】
以上の試験結果によれば、炭素鋼及び鉄酸化物の溶解には、マロン酸が好適であることが分かる。また、マロン酸水溶液にシュウ酸を微量添加することによって、炭素鋼部材の溶解量を維持したまま、炭素鋼部材の表面に形成された酸化皮膜である鉄酸化物の溶解を向上させることができる。
【0030】
発明者らは、マロン酸水溶液にシュウ酸を添加して生成したマロン酸及びシュウ酸を含む水溶液による、炭素鋼の溶解を確認する試験を行った。マロン酸濃度が5200ppmのマロン酸水溶液においてシュウ酸の濃度を0ppmから1200ppmまで変化させ、シュウ酸濃度が異なるマロン酸水溶液を別々のビーカー内に所定量充填し、各マロン酸水溶液の温度を90℃に保持した。炭素鋼製の試験片を、各ビーカー内のシュウ酸濃度が異なるマロン酸水溶液に6時間浸漬させ、各試験片に対して還元除染を行った。この試験では、各ビーカー内のマロン酸水溶液に酸素ガスを注入しなかった。
【0031】
この試験により得られた結果は、図6において、○印(酸素をマロン酸水溶液に注入しない)で示されている。なお、図6には、酸素ガスを注入した、シュウ酸濃度が異なるマロン酸水溶液に、炭素鋼製の試験片を浸漬させて得られた試験結果が、●印で併せて示されている。酸素ガスを注入した、シュウ酸濃度が異なるマロン酸水溶液を用いた試験の条件は、酸素ガスを注入しない、シュウ酸濃度が異なるマロン酸水溶液を用いた試験の条件と同じである。
【0032】
マロン酸水溶液のシュウ酸濃度が50ppmから400ppmの範囲内では、炭素鋼製の試験片の溶解した厚みは、シュウ酸を添加していないマロン酸水溶液による炭素鋼製の試験片の溶解した厚み以上になった。一方、マロン酸水溶液のシュウ酸濃度が500ppm以上になると、炭素鋼製の試験片の溶解した厚みは、シュウ酸を含んでいないマロン酸水溶液によるその試験片の溶解した厚みよりも小さくなった。なお、酸素ガスをシュウ酸濃度が異なるマロン酸水溶液に注入した場合には、50ppmから400ppmのシュウ酸濃度の範囲内でシュウ酸を含むマロン酸水溶液に酸素ガスを注入しない場合よりも、炭素鋼製の試験片の溶解した厚みが増大した。
【0033】
発明者らは、さらに、シュウ酸濃度を0ppm〜200ppmの範囲内で変化させたマロン酸水溶液を用いて鉄酸化物の溶解を確認する試験を行った。本試験で用いたマロン酸水溶液(還元除染液)のマロン酸濃度は、5200ppmである。マロン酸濃度が5200ppmであるマロン酸水溶液において、シュウ酸濃度を0ppm〜200ppmの範囲内において0ppm、50ppm、100pp及び200ppmの4段階に変化させた。このようにシュウ酸濃度が異なっている4種類のマロン酸水溶液を、それぞれの300mlずつ、別々のビーカー内に充填し、各ビーカー内のマロン酸水溶液を90℃に保持した。それぞれのビーカー内のマロン酸水溶液に鉄酸化物(例えば、ヘマタイトまたはマグネタイト)を6時間浸漬させた。得られた試験結果を図7に示す。図7に示された試験結果から、マロン酸水溶液のシュウ酸濃度が増加するほど、Fe2+イオン濃度が増加する、すなわち、鉄酸化物の溶解量が増加することが分かった。
【0034】
発明者らは、マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液により還元除染を行ったとき、炭素鋼製の試験片の溶解した厚みの経時変化を確認するための試験を行った。この試験で得られた結果を図8に示す。図8には、試験片の溶解した厚みの経時変化と共に、マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液(還元除染液)中のFe2+イオン濃度の変化も併せて示されている。その還元除染液中のFe2+イオン濃度が飽和状態になると、炭素鋼製の試験片の溶解した厚みも飽和する傾向にある。
【0035】
試験片である炭素鋼部材からの鉄の溶解速度dM/dtは、バルク水中のFeイオン濃度Cbulk、炭素鋼部材表面のFeイオン濃度Cs、及び炭素鋼部材からの鉄の溶解速度kに基づいて、式(1)で表される。すなわち、バルク水中のFeイオン濃度Cbulkが増加すると、炭素鋼部材からの鉄の溶解速度kは減少する。
【0036】
dM/dt=k×(Cbulk−Cs) …(1)
従って、炭素鋼部材の溶解量を増加させるためには、還元除染液中からの鉄イオンの除去が必要である。
【0037】
発明者らは、マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液の温度が炭素鋼部材の溶解に与える影響を調べる試験を行った。この試験では、マロン酸濃度が5200ppmのマロン酸水溶液(シュウ酸を含んでいない)、及び5200ppmのマロン酸及び100ppmのシュウ酸を含む水溶液を、別々にビーカーに充填し、炭素鋼製の試験片をそれぞれのビーカー内の水溶液に別々に浸漬させた。そして、それぞれの水溶液に温度を60℃から90℃の範囲で変化させ、各温度条件でそれぞれの水溶液に浸漬させた試験片の溶解した厚みを測定した。なお、水溶液が沸騰した場合には、水溶液に溶解した放射性核種が、発生した蒸気に同伴して飛散する可能性があるため、水溶液の温度は沸点以下に保持する。
【0038】
本試験で得られた結果を図9に示す。図9に示された試験結果から、マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液の温度を60℃以上にすることにより、炭素鋼部材を溶解できることが分かった。特に、マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液の温度を80℃以上にすると、炭素鋼部材の溶解量が大きくなる。
【0039】
以上の試験結果に基づいて、シュウ酸鉄(II)の析出の抑制、及び還元除染により還元除染液に溶出したFe2+イオン及び放射性核種の陽イオンの継続した除去を実現し、炭素鋼部材の還元除染の効率をさらに向上させる第1案は、シュウ酸濃度が50ppm〜400ppmの範囲内に存在する、マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液(還元除染液)を用いて炭素鋼部材の還元除染を実施することである。このような水溶液を用いて炭素鋼部材の還元除染を行うことにより、マロン酸による炭素鋼部材の溶解量を維持したまま、炭素鋼部材の還元除染液に接触する表面に形成された鉄酸化物の溶解量を向上させることができ、炭素鋼部材の還元除染の効率をさらに向上させることができる。シュウ酸濃度が50ppm〜400ppmの範囲内に存在する、マロン酸及びシュウ酸を含む還元除染液のマロン酸の濃度は、2100ppm〜19000ppmの範囲内にすることが望ましい。供用中の原子力プラントに用いられている機器の損傷を抑制する観点から、上記の還元除染液のマロン酸濃度を2100ppm〜7800ppmの範囲内にすることがより望ましい。一方、原子力プラントにおいてリプレースにより取り外されて廃棄物となる炭素鋼製の機器及び配管に対する還元除染で用いられる上記の還元除染液(シュウ酸濃度が50ppm〜400ppmの範囲内に存在する、マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液)では、マロン酸濃度を12300ppm〜19000ppmの範囲内にすることより望ましい。この還元除染液の還元除染中における温度は、60℃以上でこの還元除染液の沸点の温度以下の範囲内、好ましくは80℃以上その沸点の温度以下の範囲内にすることが望ましい。
【0040】
シュウ酸鉄(II)の析出の抑制、及び還元除染により還元除染液に溶出したFe2+イオン及び放射性核種の陽イオンの継続した除去を実現し、炭素鋼部材の還元除染の効率をさらに向上させる第2案は、酸素ガスを供給した、マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液を用いて炭素鋼部材の還元除染を実施することである。このような水溶液を用いて炭素鋼部材の還元除染を行うことにより、マロン酸による炭素鋼部材の溶解量を維持したまま、炭素鋼部材の還元除染液に接触する表面に形成された鉄酸化物の溶解量を向上させることができ、炭素鋼部材の還元除染の効率をさらに向上させることができる。
【0041】
上記した検討結果を反映した、本発明の実施例を、以下に説明する。
【実施例1】
【0042】
本本発明の好適な一実施例である実施例1の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を、図1図2及び図3を用いて説明する。本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法は、沸騰水型原子力プラント(以下、BWRプラントという)の炭素鋼製の配管(例えば、浄化系配管)に適用した例である。
【0043】
本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法が適用されるBWRプラントの概略構成を、図2を用いて説明する。BWRプラントは、原子炉1、タービン10、復水器12、再循環系、原子炉浄化系及び給水系等を備えている。原子炉格納容器7内に設置された原子炉1は、炉心3を内蔵する原子炉圧力容器(以下、RPVという)2を有し、RPV2内にジェットポンプ6を設置している。炉心3には、複数の燃料集合体(図示せず)が装荷されている。各燃料集合体は、核燃料物質で製造された複数の燃料ペレットを充填した複数の燃料棒を含んでいる。再循環系は再循環ポンプ5及びステンレス鋼製の再循環系配管4を有し、再循環ポンプ5が再循環系配管4に設置されている。再循環系配管4には、弁9が再循環ポンプ5の上流側に設けられ、弁8が再循環ポンプ5の下流側に設けられる。特に、弁9は、再循環系配管と浄化系配管21の接続点よりも上流に設置されている。給水系は、復水器12とRPV2を連絡する給水配管13に、復水ポンプ14、復水浄化装置15、低圧給水加熱器16、給水ポンプ17及び高圧給水加熱器18をこの順に復水器12からRPV2に向かって設置して構成される。水素注入装置20が、復水ポンプ14の上流で給水配管13に接続されている。原子炉水浄化系は、再循環系配管4と給水配管13を連絡する浄化系配管21に、浄化系ポンプ22,再生熱交換器23,非再生熱交換器24及び炉水浄化装置25をこの順に上流から下流に向かって設置して構成される。浄化系配管21は、再循環ポンプ5の上流で再循環系配管4に接続される。
【0044】
RPV2内の冷却水(以下、炉水という)は、再循環ポンプ5で昇圧され、再循環系配管4を通ってジェットポンプ6のノズル(図示せず)からジェットポンプ6のベルマウス(図示せず)内に噴出される。このノズルの周囲に存在する炉水が、ノズルから噴出される噴出流の作用により、ベルマウス内に吸引される。ジェットポンプ6から吐出された炉水は、炉心3に供給され、燃料棒内の核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱される。加熱された炉水の一部が蒸気になる。この蒸気は、RPV2から主蒸気配管11に排出され、主蒸気配管11を通ってタービン10に導かれ、タービン10を回転させる。タービン10に連結された発電機(図示せず)が回転され、電力が発生する。タービン10から排出された蒸気は、復水器12で凝縮され、水になる。
【0045】
この水は、給水として、給水配管13を通りRPV2内に供給される。給水配管13を流れる給水は、復水ポンプ14で昇圧され、復水浄化装置15で不純物が除去され、給水ポンプ17でさらに昇圧され、低圧給水加熱器16及び高圧給水加熱器18で加熱される。抽気配管19で主蒸気配管11,タービン10から抽気された抽気蒸気が、低圧給水加熱器16及び高圧給水加熱器18にそれぞれ供給され、給水配管13内を流れる給水の加熱源となる。
【0046】
RPV2内の炉水は、炉心3に装荷された燃料集合体に含まれる核燃料物質の核分裂に伴って発生する放射線の照射を受けて放射線分解を起こし、過酸化水素及び酸素などの酸化性化学種を生ずる。この酸化性化学種によって炉水と接触する、BWRプラントの構成部材の腐食電位が上昇する。このため、BWRプラントでは、応力腐食割れに対する環境緩和対策として、水素注入装置20から給水配管13内を流れる給水に水素が注入される。給水に含まれた水素がRPV2内の炉水に注入される。この水素と炉水に含まれる過酸化水素及び酸素などの酸化性化学種を反応させることによって、炉水の酸化性化学種濃度を低減させ、BWRプラントの構成部材の腐食電位が低下される。
【0047】
以上に述べたBWRプラントにおいて、炭素鋼部材である浄化系配管21に対する化学除染は、炉心3に装荷された燃料集合体を交換するために、BWRプラントの運転が停止されているときに行われる。その化学除染は、化学除染装置28の循環配管29の一端部を浄化系配管21に設けられた弁26に接続し、循環配管29の他端部を浄化系配管21に設けられた弁27に接続した除体で行われる。弁26の場合は再循環系配管4側に、弁27の再生熱交換器23側に、化学除染液が流れないように閉止プラグが設置される。
【0048】
化学除染装置28の詳細な構成を、図3を用いて説明する。化学除染装置28は、循環配管(化学除染液配管)29、冷却装置30、サージタンク31、マロン酸注入装置32、シュウ酸注入装置37、陽イオン交換樹脂塔42、混床樹脂塔43、分解装置44、酸化剤供給装置45及び循環ポンプ82,83を備えている。開閉弁48、循環ポンプ82、冷却装置30、弁49,50、サージタンク31、循環ポンプ83及び開閉弁51が、上流よりこの順に循環配管29に設けられている。両端が循環配管29に接続されて、弁49をバイパスする配管52に、弁53、陽イオン交換樹脂が充填された陽イオン交換樹脂塔42、及び弁54が設置される。サージタンク31には、ヒーター61が設けられている。両端が配管52に接続されて、弁53、陽イオン交換樹脂塔42及び弁54をバイパスする配管55に、弁56、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が充填された混床樹脂塔43、及び弁54が設置される。
【0049】
弁59、分解装置44及び弁60が設置された配管58が弁50をバイパスして循環配管29に接続される。分解装置44は、内部に、例えば、ルテニウムを活性炭の表面に添着した活性炭触媒を充填している。
【0050】
酸化剤供給装置45は、酸化剤(例えば、過酸化水素)を充填した薬液タンク46、供給ポンプ47及び酸化剤供給配管48を備える。薬液タンク46は、供給ポンプ47を設けた酸化剤供給配管48により、弁59と分解装置44の間で配管58に接続される。
【0051】
マロン酸注入装置32及びシュウ酸注入装置37が、弁50とサージタンク31の間で循環配管29に接続される。マロン酸注入装置32が、薬液タンク33、注入ポンプ34及び注入配管36を有する。薬液タンク33は、注入ポンプ34及び弁35を有する注入配管36によって循環配管29に接続される。薬液タンク33は、マロン酸水溶液を充填している。
【0052】
シュウ酸注入装置37が、薬液タンク38、注入ポンプ39及び注入配管41を有する。薬液タンク38は、注入ポンプ39及び弁40を有する注入配管41によって循環配管29に接続される。薬液タンク38はシュウ酸水溶液を充填している。
【0053】
化学除染装置28を用いた、本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を、図1に示す手順に基づいて説明する。
【0054】
化学除染装置を、BWRプラントの化学除染を実施する配管系に接続する(ステップS1)。BWRプラントの運転が停止された状態で、化学除染装置28の循環配管29の一端部が、前述したように、浄化系配管21に設けられた弁26に接続され、循環配管29の他端部が、浄化系配管21に設けられた弁27に接続される。化学除染装置28が浄化系配管21に接続された状態では、循環配管29及び浄化系配管21を含む閉ループが形成される。還元除染液が再循環配管4に流れ込まないように、閉止プラグ(図示せず)が、弁26の再循環系配管4側に設置される。さらに、還元除染液が再生熱交換器23に流れ込まないように、閉止プラグ(図示せず)が、再生熱交換器23側に設置される。
【0055】
循環水の温度調節を行う(ステップS2)。弁35及び40を閉じた状態にし、開閉弁48及び51、及び弁49,50,53〜57,59,60を開いて、弁26と弁27の間の浄化系配管21、循環配管29、配管52,55及び58、サージタンク31、陽イオン交換樹脂塔42、混床樹脂塔43、分解装置44及び循環ポンプ82,83内に、イオン交換水を、循環配管29に接続された水供給管(図示せず)を通して供給し、それらの中をイオン交換水で満たす。
【0056】
開閉弁48及び51、及び弁49,50を開けたままにし、弁53〜57,59及び60を閉じて、循環ポンプ82,83を駆動する。循環配管29及びサージタンク31内に存在するイオン交換水が、循環配管29及び浄化系配管21を含む閉ループ内を循環する。ヒーター61に通電され、サージタンク31内のイオン交換水がヒーター61によって加熱される。ヒーター61による加熱によってその閉ループ内を循環する水の温度が設定温度(例えば、90℃)に上昇したとき、ヒーター61による循環する水の加熱が停止される。循環配管29及び浄化系配管21内を循環するイオン交換水の温度が、ヒーター61によって設定温度である90℃に調節される。
【0057】
マロン酸を注入する(ステップS3)。マロン酸水溶液がマロン酸注入装置32から循環配管29に注入される。すなわち、弁35を開いて注入ポンプ34を駆動する、薬液タンク33内のマロン酸水溶液が注入配管36を通して循環配管29内を流れているイオン交換水に注入される。
【0058】
シュウ酸を注入する(ステップS4)。シュウ酸水溶液がシュウ酸注入装置37から循環配管29に注入される。すなわち、弁40を開いて注入ポンプ39を駆動する、薬液タンク38内のシュウ酸水溶液が注入配管41を通して循環配管29内を流れているイオン交換水に注入される。マロン酸注入装置32から注入されたマロン酸水溶液が注入配管41と循環配管29の接続点に達したとき、シュウ酸水溶液の注入が行われる。
【0059】
サージタンク31内の水溶液のマロン酸及びシュウ酸のそれぞれの濃度をイオンクロマトグラフなどで適宜測定する。サージタンク31内の水溶液の測定されたシュウ酸濃度が400ppmになったとき、注入ポンプ39を停止して弁40を閉じる。これにより、シュウ酸水溶液の循環配管29への注入が停止される。シュウ酸水溶液が注入されている間も、マロン酸水溶液が注入されるが、サージタンク31内の水溶液の測定されたマロン酸濃度が5200ppmになったとき、注入ポンプ34を停止して弁35を閉じる。これにより、マロン酸水溶液の循環配管29への注入が停止される。
【0060】
マロン酸水溶液及びシュウ酸水溶液の循環配管29への注入では、マロン酸水溶液の注入の後にシュウ酸水溶液を注入する替りに、シュウ酸水溶液の注入の後にマロン酸水溶液を注入してもよい。この場合には、シュウ酸注入装置37を、マロン酸注入装置32よりも上流に位置するように、循環配管29に接続するとよい。
【0061】
マロン酸水溶液及びシュウ酸水溶液の循環配管29内を流れているイオン交換水への注入により、サージタンク31内で、濃度が5200ppmであるマロン酸及び濃度が例えば400ppmであるシュウ酸を含む90℃の水溶液(還元除染液)が生成される。
【0062】
還元除染を実施する(ステップS5)。90℃で5200ppmのマロン酸及び400ppmのシュウ酸を含む水溶液が、循環ポンプ82,83の駆動により、循環配管29を通して、BWRプラントの炭素鋼部材である浄化系配管21内に供給される。このマロン酸及びシュウ酸を含む水溶液は、浄化系配管21内を流れているときに浄化系配管21の内面に接触する。この水溶液に含まれるシュウ酸の作用によって浄化系配管21の内面に形成された酸化皮膜がより溶解され、マロン酸の作用によって浄化系配管21の母材である炭素鋼の一部が溶解される。このため、酸化皮膜に含まれた放射性核種及び浄化系配管21の内面付近の母材に含まれた放射性核種が、マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液に溶出する。マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液は、酸化皮膜及び浄化系配管21の母材から溶出したFe2+イオン及び放射性核種の陽イオンを含んで、浄化系配管21から循環配管29に排出される。ステップS5において還元除染が開始されたとき(またはマロン酸水溶液を注入したとき)、弁53及び54を開いて開度調節により弁49の開度を低減させ、浄化系配管21から循環配管29に排出されたその水溶液の一部が陽イオン交換樹脂塔42に導かれる。マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液に含まれたFe2+イオン及び放射性核種の陽イオンが、陽イオン交換樹脂塔42内で陽イオン交換樹脂に吸着されて除去される。
【0063】
還元除染が実施されている、浄化系配管21の除染対象箇所付近に放射線検出器(図示せず)を設置し、その浄化系配管21の除染対象箇所から放出される放射線を放射線検出器で測定する。放射線検出器から出力される放射線検出信号に基づいてその還元施工対象箇所の線量率を求める。求められた線量率が設定線量率(例えば、0.1mSv/h)以下になるまで、90℃で5200ppmのマロン酸及び400ppmのシュウ酸を含む水溶液が、循環配管29及び浄化系配管21を循環しながら浄化系配管21の内面の還元除染を実施し、その水溶液に溶出したFe2+イオン及び放射性核種の陽イオンが陽イオン交換樹脂塔42で除去される。
【0064】
浄化系配管21の除染対象箇所の線量率が設定線量率(例えば、0.1mSv/h)以下になったとき、または、浄化系配管21の還元除染が開始されてから所定時間(例えば、6時間から12時間)が経過したとき、浄化系配管21に対する還元除染を終了する。
【0065】
還元除染剤を分解する(ステップS6)。還元除染が終了したとき、弁59及び60を開いて弁50の開度を低減させ、浄化系配管21から循環配管29に排出されたマロン酸及びシュウ酸を含む水溶液の一部を分解装置44に供給する。マロン酸及びシュウ酸は還元除染剤である。供給ポンプ47を駆動することにより、過酸化水素が、薬液タンク46から酸化剤供給配管48を通して分解装置44に供給される。その水溶液に含まれたマロン酸及びシュウ酸が、分解装置44内で過酸化水素及び活性炭触媒の作用により分解される。
【0066】
マロン酸(C344)は式(2)に示される過酸化水素との反応により、シュウ酸(C224)は式(3)に示される過酸化水素との反応により、それぞれ二酸化炭素と水に分解される。
【0067】
344+2H22 = 3CO2+4H2O …(2)
224+H22 = 2CO2+2H2O …(3)
したがって、マロン酸の濃度がCMA、シュウ酸の濃度がCOAであるとき、過酸化水素の反応当量CHPは、式(4)に基づいて計算できる。
【0068】
HP={2・CMA/104+COA/90}×34 …(4)
このため、上記したマロン酸及びシュウ酸を含む水溶液のマロン酸濃度が約5200ppm、シュウ酸が400ppmであるとき、式(4)で算出された、分解装置44内に導かれるその水溶液中の過酸化水素の反応当量は3600ppmとなる。反応当量の1〜2倍程度の濃度になるように分解装置44内のその水溶液中に過酸化水素水を注入することが望ましい。したがって、分解装置44に導かれる、マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液のマロン酸濃度が約5200ppmで、シュウ酸が400ppmであるとき、この水溶液の過酸化水素濃度が3600ppm〜7200ppmとなるように過酸化水素水を注入する。
【0069】
イオンクロマトグラフによって測定された、サージタンク31内の水溶液のたマロン酸及びシュウ酸のそれぞれの濃度が、それぞれの検出限界値(10ppm程度)になるまで、マロン酸及びシュウ酸の分解工程を計蔵して実施する。各濃度がそれぞれの検出限界まで低下したとき、供給ポンプ47の駆動を停止して分解装置44への過酸化水素の供給を停止し、弁50を全開にして弁59,60を閉じる。
【0070】
マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液のマロン酸濃度及びシュウ酸濃度のそれぞれの測定値に基づいて過酸化水素の反応当量CHPを求め、分解装置44に供給する過酸化水素の注入濃度を変えても良い。このような方法を適用することにより、分解装置44に供給する過酸化水素の濃度を所定濃度に保持する場合よりも、分解装置44に供給する過酸化水素の量を低減することができる。
【0071】
浄化工程を実施する(ステップS7)。還元除染剤(マロン酸及びシュウ酸)の分解工程が終了した後、サージタンク31に設けられたヒーター61への通電を停止し、続いて、冷却装置30を起動する。弁56,57を開いて弁53及び54を閉じ、水溶液の陽イオン交換樹脂塔42への供給を停止する。冷却装置30に冷媒が供給され、浄化系配管21から循環配管29に排出された水溶液を冷却装置30内でその冷媒により冷却する。その水溶液は、混床樹脂塔43に供給可能な程度の温度(例えば、室温)になるまで、冷却装置30の冷媒によって冷却される。冷却された水溶液が、混床樹脂塔43に導かれる。水溶液に含まれる陰イオン、及び陽イオン交換樹脂塔42で除去されずに残っている陽イオンが、混床樹脂塔43内の陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂に吸着されて除去される。水溶液は、冷却装置30で冷却されながら循環配管29及び浄化系配管21内を循環しながら、混床樹脂塔43で浄化される。サージタンク31からサンプリングされた水溶液の電気伝導率が100μS/m以下になったとき、弁49を開にし、弁56,57を閉じる。更に循環ポンプ82,83を停止する。
【0072】
化学除染装置を、BWRプラントの化学除染を実施した配管系から取り外す(ステップS8)。循環配管29に接続された水排出管(図示せず)に設けられた弁(図示せず)を開いて、弁26と弁27の間の浄化系配管21、循環配管29、配管52,55及び58、サージタンク31、陽イオン交換樹脂塔42、混床樹脂塔43、分解装置44及び循環ポンプ82,83内に存在する水を、水排出管を通して貯蔵タンク(図示せず)内に排出する。水の排出が終了した後、循環配管29の一端部を浄化系配管21に設けられた弁26から取り外し、循環配管29の他端部が浄化系配管21に設けられた弁27から取り外される。化学除染装置28がBWRプラントの化学除染対象物である浄化系配管21から取り外された後、BWRプラントが再起動される。
【0073】
本実施例によれば、マロン酸(例えば、濃度が5200ppm)、及び濃度が50ppm〜400ppmの範囲内にある400ppmのシュウ酸を含む水溶液(還元除染液)を用いて、炭素鋼製の浄化系配管21の内面の還元除染を実施するので、この水溶液に含まれるシュウ酸の作用によって浄化系配管21の内面に形成された酸化皮膜がより溶解され、マロン酸の作用によって浄化系配管21の母材である炭素鋼が溶解される。その水溶液、すなわち、マロン酸及びシュウ酸を含む還元除染液に含まれるシュウ酸濃度が400ppmと低いので、この還元除染液によって炭素鋼部材である浄化系配管21の内面の還元除染を行うことによって、浄化系配管21の内面に形成された酸化皮膜上へのシュウ酸鉄(II)の析出が抑制され、シュウ酸による酸化皮膜の溶解を効率良く行うことができる。さらに、浄化系配管21の内面付近の母材である炭素鋼をマロン酸により効率良く溶解させることができる。このため、炭素鋼部材である浄化系配管21の内面の還元除染の効率を向上させることができ、浄化系配管21の線量率をより低減することができ、BWRプラントの保守点検を行う従事者の被ばくを低減することができる。
【0074】
マロン酸、及び濃度が50ppm〜400ppmの範囲内にあるュウ酸を含む水溶液を用いて炭素鋼部材の還元除染を行う本実施例は、特開2003−90897号公報に記載された化学除染方法のように、シュウ酸水溶液を用いて炭素鋼部材の還元除染を行った後に、還元除染を行っている間に炭素鋼部材の表面に析出したシュウ酸鉄(II)をギ酸水溶液を用いて分解する必要がないので、本実施例の還元除染に要する時間が、特開2003−90897号公報に記載された化学除染方法よりも短縮することができる。
【実施例2】
【0075】
本発明に好適な他の実施例である実施例2の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を、図10図11及び図12を用いて説明する。本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法は、BWRプラントの炭素鋼部材の一例である炭素鋼製の配管(例えば、浄化系配管)、及びステンレス鋼部材の一例であるステンレス鋼製の配管(例えば、再循環系配管)に適用した例である。
【0076】
本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法に用いられる化学除染装置28Aを、図12を用いて説明する。化学除染装置28Aは、実施例1の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法に用いられる化学除染装置28に酸化除染液注入装置62を追加した構成を有する。酸化除染液注入装置62は、薬液タンク63、注入ポンプ64及び注入配管66を有する。薬液タンク63は、注入ポンプ64及び弁65を有する注入配管66によって循環配管29に接続される。薬液タンク63は、酸化除染液である過マンガン酸カリ水溶液を充填している。酸化除染液として、過マンガン酸カリウム水溶液の替りに過マンガン酸水溶液を用いてもよい。
【0077】
化学除染装置28Aを用いた、本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を、図10に示す手順に基づいて説明する。本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法の手順では、ステップS9〜S11の各工程が、実施例1の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法において実施されるステップS1〜S8の各工程に追加されている。
【0078】
まず、化学除染装置を、BWRプラントの化学除染を実施する配管系に接続する(ステップS1)。BWRプラントの運転が停止された状態で、化学除染装置28Aの循環配管29の一端部(開閉弁51側の端部)が、再循環系配管4に設けられた弁8に接続され、循環配管29の他端部(開閉弁48側の端部)が、浄化系配管21に設けられた弁27に接続される。化学除染装置28Aが再循環系配管4及び浄化系配管21に接続された状態では、循環配管29、再循環系配管4及び浄化系配管21を含む閉ループが形成される。酸化除染液及び還元除染液がRPV2に流れ込まないように、閉止プラグ(図示せず)が、弁8,9のRPV2側に設置される。さらに、酸化除染液及び還元除染液が再生熱交換器23に流れ込まないように、閉止プラグ(図示せず)が、再生熱交換器23側に設置される。
【0079】
実施例1と同様に、循環水の温度調節(ステップS2)が行われる。ステップS2において、実施例1と同様に、循環配管29、弁8と弁9の間の再循環系配管4、及び再循環系配管4と弁26の間の浄化系配管21等の内部にイオン交換水を充填する。本実施例では、マロン酸の注入(ステップS3)及びシュウ酸の注入(ステップS4)の前に、過マンガン酸カリウムの注入(ステップS9)及び酸化除染(ステップS10)が実施される。
【0080】
酸化除染剤を注入する(ステップS9)。本実施例では、酸化除染剤として過マンガン酸カリウムを用いる。過マンガン酸カリウム水溶液(酸化除染液)が酸化除染液注入装置62から循環配管29に注入される。すなわち、弁65を開いて注入ポンプ64を駆動すると、薬液タンク63内の過マンガン酸カリウム水溶液が、注入配管66を通して循環配管29内を流れているイオン交換水に注入される。イオン交換水に注入された過マンガン酸カリウム水溶液は、サージタンク31内でイオン交換水と混合され、酸化除染液になる。過マンガン酸カリウム水溶液とイオン交換水の混合水を、便宜的に、過マンガン酸カリウム水溶液(酸化除染液)と称する。イオン交換水と混合されて生成された過マンガン酸カリウム水溶液の過マンガン酸カリウム濃度が200ppm〜500ppmの範囲内に存在する例えば300ppmになるように、薬液タンク63から循環配管29へ過マンガン酸カリウム水溶液を注入する。酸化除染剤として過マンガン酸を用い、過マンガン酸水溶液を薬液タンク63から循環配管29に注入してもよい。
【0081】
酸化除染を実施する(ステップS9)。90℃で300ppmの過マンガン酸カリウムを含む過マンガン酸カリウム水溶液が、循環ポンプ82,83の駆動により、循環配管29を通して、BWRプラントのステンレス鋼部材である再循環系配管4内に供給される。過マンガン酸カリウム水溶液は、再循環系配管4内を流れているとき、再循環系配管4の内面に接触する。この水溶液に含まれる過マンガン酸カリウムの作用によって再循環系配管4の内面に形成されたクロム酸化物皮膜が溶解される。このため、クロムイオン及びクロム酸化物に含まれた放射性核種の陽イオンが、再循環系配管4内の過マンガン酸カリウム水溶液に溶出する。再循環系配管4内の過マンガン酸カリウム水溶液は、再循環配管4から炭素鋼製の浄化系配管21内に流入し、やがて、循環配管29に排出される。炭素鋼製の浄化系配管21の内面には鉄酸化物皮膜が形成されているが、クロム酸化物皮膜が形成されていない。浄化系配管21内を過マンガン酸カリウム水溶液が流れても、過マンガン酸カリウムは浄化系配管21の内面に形成された鉄酸化物皮膜を溶解しない。過マンガン酸カリウム水溶液は、浄化系配管21の内面の酸化除染を行わずに、浄化系配管21内を流れて循環配管29に排出される。
【0082】
過マンガン酸カリウム水溶液が、循環配管29、再循環系配管4及び浄化系配管21内を所定時間(例えば、4時間から6時間)の間、循環しながら、再循環系配管4の内面の酸化除染を行う。
【0083】
酸化除染剤を分解する(ステップS4)。シュウ酸水溶液が、実施例1のステップS4と同様に、薬液タンク38から循環配管29内を流れている過マンガン酸カリウム水溶液に注入される。シュウ酸水溶液の注入により、過マンガン酸カリウム水溶液に含まれる過マンガン酸カリウム(酸化除染剤)が注入されたシュウ酸により分解される(酸化除染剤分解工程)。過マンガン酸カリウムの分解は、サージタンク31設けたガラス窓を通してサージタンク31内の水溶液の色を監視カメラで監視することによって確認できる。過マンガン酸カリウム水溶液の色は紫色であり、シュウ酸水溶液の注入によってこの紫色が透明になったとき、過マンガン酸カリウムが分解されたと判断する。過マンガン酸カリウムが分解されたとき、シュウ酸水溶液の循環配管29への注入を停止し、さらに、弁53及び54を開いて開度調節により弁49の開度を低減させる。浄化系配管21から循環配管29に排出されたその水溶液の一部が陽イオン交換樹脂塔42に導かれる。
【0084】
ステップS3(マロン酸水溶液の注入)及びステップS4(シュウ酸水溶液の注入)の各工程が、実施例1と同様に実施され、ステップS5の還元除染が実施される。還元除染(ステップS5)は、90℃で5200ppmのマロン酸及び100ppmのシュウ酸を含む水溶液(還元除染液)が、循環配管29から再循環系配管4に供給され、さらに、再循環系配管4から浄化系配管21に導かれることによって行われる。5200ppmのマロン酸及び100ppmのシュウ酸を含む水溶液に接触する再循環系配管4及び浄化系配管21のそれぞれの内面に対して、実施例1のステップS5の還元除染と同様に、マロン酸及びシュウ酸のそれぞれが作用し、還元除染が行われる。
【0085】
シュウ酸注入装置37を、マロン酸注入装置32よりも上流に位置するように、循環配管29に接続し、シュウ酸注入装置37から循環配管29へのシュウ酸水溶液の注入を、酸化除染剤分解工程が終了した後も継続して行い(ステップS4のシュウ酸の注入)、ステップS3のマロン酸の注入を行ってもよい。
【0086】
再循環系配管4内では、シュウ酸の作用によって再循環系配管4の内面に形成された酸化皮膜がより溶解され、マロン酸の作用によって再循環系配管4の母材であるステンレス鋼の一部が溶解される。このため、酸化皮膜に含まれた放射性核種及び再循環系配管4の内面付近の母材に含まれた放射性核種が、マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液に溶出する。このため、再循環系配管4内を流れるマロン酸及びシュウ酸を含む水溶液は、溶出したFe2+イオン及び放射性核種の陽イオンを含んでいる。浄化系配管21においても、マロン酸及びシュウ酸による還元除染により、実施例1と同様に、Fe2+イオン及び放射性核種の陽イオンがその水溶液中に溶出する。
【0087】
Fe2+イオン及び放射性核種の陽イオンを含み、マロン酸及びシュウ酸を含む水溶液が、浄化系配管21から循環配管29に排出され、陽イオン交換樹脂塔42に導かれる。Fe2+イオン及び放射性核種の陽イオンは、陽イオン交換樹脂塔42内で陽イオン交換樹脂に吸着されて除去される。
【0088】
5200ppmのマロン酸及び100ppmのシュウ酸を含む水溶液が、循環配管29、再循環系配管4及び浄化系配管21を含む閉ループ内を循環しながら、再循環系配管4及び浄化系配管21のそれぞれの内面に対して還元除染を実施する。この還元除染で発生したFe2+イオン及び放射性核種の陽イオンは、陽イオン交換樹脂塔42で除去される。
【0089】
再循環系配管4及び浄化系配管21のそれぞれの除染対象箇所の線量率が設定線量率(例えば、0.1mSv/h)以下になったとき、または、還元除染が開始されてから所定時間(例えば、6時間から12時間)が経過したとき、再循環系配管4及び浄化系配管21に対する還元除染を終了する。
【0090】
その後、還元除染剤の分解(ステップS6)、浄化工程(ステップS7)及び化学除染装置の取り外し(ステップS8)が、実施例1と同様に、順次、実施される。化学除染装置28がBWRプラントの化学除染対象物である浄化系配管21から取り外された後、BWRプラントが再起動される。
【0091】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例によれば、ステンレス鋼製の再循環系配管4及び炭素鋼製の浄化系配管21に対して一緒に化学除染を行うことができ、化学除染に要する時間を短縮することができる。化学除染装置28Aを用いて再循環系配管4及び浄化系配管21に対して別々に化学除染を行った場合には、浄化系配管21に対する化学除染装置28の接続及び取り外し、及び、再循環系配管4に対する化学除染装置28Aの接続及び取り外しのそれぞれの作業を行う必要があり、さらに、ステップS2の循環水の温度調節をそれぞれの化学除染装置において行う必要がある。化学除染装置28Aを用いて再循環系配管4及び浄化系配管21に対して一緒に化学除染を行う本実施例では、再循環系配管4及び浄化系配管21に対して別々に化学除染を行う場合において生じる、化学除染装置28の接続及び取り外し等の重複する作業を一つにすることができる。このため、本実施例によれば、化学除染に要する時間を短縮することができる。
【0092】
化学除染装置28Aの循環配管29の一端部(開閉弁51側の端部)を、浄化系配管21に設けられた弁27に接続し、循環配管29の他端部(開閉弁48側の端部)を再循環系配管4に設けられた弁8に接続してもよい。この場合には、ステップS9(酸化除染)において、過マンガン酸カリウム水溶液(酸化除染液)が、循環配管29から浄化系配管21に供給され、浄化系配管21から再循環系配管4に導かれ、再循環系配管4から循環配管29に排出される。また、ステップS5(還元除染)において、90℃で5200ppmのマロン酸及び100ppmのシュウ酸を含む水溶液(還元除染液)も、循環配管29から浄化系配管21に供給され、浄化系配管21から再循環系配管4に導かれ、再循環系配管4から循環配管29に排出される。酸化除染液及び還元除染液の流れ方向が変わっても、再循環系配管4の内面に対する酸化除染、及び再循環系配管4及び浄化系配管21の内面に対する還元除染がそれぞれ行われる。
【実施例3】
【0093】
本発明に好適な他の実施例である実施例3の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を、図13及び図14を用いて説明する。本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法は、交換または廃止措置によりBWRプラントから取り外された炭素鋼部材、例えば、炭素鋼製の配管に適用した例である。
【0094】
本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法に用いられる化学除染装置28Bを、図1を用いて説明する。化学除染装置28Bは、実施例1の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法に用いられる化学除染装置28に酸素ガス供給装置66を追加し、化学除染装置28において循環配管29の一端部をサージタンク31に接続し、さらに、循環配管29の他端部をサージタンク31に接続して循環配管29及びサージタンク31を含む閉ループを形成した構成を有する。酸素ガス供給装置66は、酸素ガスボンベ67及び酸素ガス供給管68を有する。酸素ガス供給管68の一端部が酸素ガスボンベ67に接続され、酸素ガス供給管68の他端部がサージタンク31内に挿入されている。酸素ガス供給管68の他端部には、酸素ガスを噴射する多数の噴射口(図示せず)が形成されている。開閉弁69及び減圧弁70が酸素ガス供給管68に設けられている。化学除染装置28Bの他の構成は化学除染装置28と同じである。なお、化学除染装置28Bは、一台の循環ポンプ82を循環配管29に設置しており、循環ポンプ83を設置していない。
【0095】
化学除染装置28Bを用いた、本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を、図13に示す手順に基づいて説明する。本実施例の化学除染方法では、実施例1の化学除染方法の手順においてステップS1及びS8の各工程の替りにステップS12及びS14の各工程が行われ、さらに、ステップS13の工程が追加された手順が実施される。本実施例の化学除染方法で実施されるステップS2〜S4及びS5〜S7の各工程は、実施例1の化学除染方法で実施されるそれらの工程と同じである。
【0096】
除染槽内に除染対象物を収納する(ステップS12)。サージタンク31は除染槽の機能を有する。新たな炭素鋼製の配管と交換するために、BWRプラントから取り外された、除染対象物である炭素鋼製の配管84が、運搬設備71によってサージタンク31の位置まで搬送され、上端部が開放されているサージタンク31内に収納される。BWRプラントから取り外された配管84以外の炭素鋼製の配管及び炭素鋼製の機器が、運搬設備71によってサージタンク31内に収納される。複数の除染対象物がサージタンク31内に収納された後、サージタンク31に蓋が取り付けられてサージタンク31が密封される。
【0097】
循環水の温度調節(ステップS2)、マロン酸の注入(ステップS3)及びシュウ酸の注入(ステップS4)が、実施例1と同様に、行われる。ステップS3,S4の各工程を実施することにより、90℃で12300ppmのマロン酸及び100ppmのシュウ酸を含む水溶液が、サージタンク31内で生成される。本実施例では、サージタンク31内に収納された配管84等の除染対象物から放射性核種をできるだけ除去することが望ましく、実施例1及び2のように、BWRプラントに設けられている機器の損傷を考慮する必要が無いため、ステップS3におけるマロン酸水溶液の循環配管29への注入においては、サージタンク31内で生成される水溶液のマロン酸濃度は、この水溶液のpHを1.8以下になるようにすることが望ましい。このため、そのマロン酸濃度が、例えば、12300ppmになるように、マロン酸注入装置32からマロン酸水溶液が循環配管29に注入される。水溶液のマロン酸濃度が12300ppmになったとき、マロン酸水溶液の循環配管29への注入が停止される。また、その水溶液のシュウ酸濃度が100ppmになったとき、循環配管29へのシュウ酸水溶液の注入が停止される。
【0098】
酸素ガスを注入する(ステップS13)。開閉弁69を開くことによって酸素ガスボンベ67内の酸素ガスが、酸素ガス供給管68を通して導かれ、酸素ガス供給管68の、サージタンク31内に存在する端部に形成された複数の噴射口から、サージタンク31内の90℃で12300ppmのマロン酸及び100ppmのシュウ酸を含む水溶液中に噴射される。減圧弁70の開度を調節して酸素ガス供給管68の各噴射口から噴射される酸素ガスの圧力が0.1MPaから1.0MPaの範囲になるように調節される。本実施例では、酸素ガスの噴射圧が例えば0.5MPaになるように、減圧弁70の開度が調節される。注入された酸素ガスはマロン酸及びシュウ酸を含む水溶液に溶解される。
【0099】
還元除染(ステップS5)では、90℃で12300ppmのマロン酸、100ppmのシュウ酸及び酸素を含む水溶液が、サージタンク31内で配管84の表面に接触し、配管84の還元除染が行われる。循環ポンプ82が駆動されているため、サージタンク31内のその水溶液は、サージタンク31から循環配管29に排出され、閉ループを形成する循環配管29内を一巡してサージタンク31内に戻される。
【0100】
弁53及び54が開いており、開度調節により弁49の開度が低減されている。サージタンク31から循環配管29に排出されたその水溶液の一部が陽イオン交換樹脂塔42に導かれる。90℃で12300ppmのマロン酸、100ppmのシュウ酸及び酸素を含む水溶液による配管84の還元除染によって、実施例1と同様に、配管84の表面に形成された鉄酸化物が溶解され、配管84の母材である炭素鋼の一部が溶解される。実施例1と同様に、Fe2+イオン及び放射性核種の陽イオンがサージタンク31内のその水溶液中に溶出する。陽イオン交換樹脂塔42に導かれた水溶液に含まれているFe2+イオン及び放射性核種の陽イオンが、陽イオン交換樹脂塔42内で陽イオン交換樹脂に吸着されて除去される。90℃で12300ppmのマロン酸、100ppmのシュウ酸及び酸素を含む水溶液が、サージタンク31及び循環配管29を循環しながら、陽イオン交換樹脂塔42を通過する。循環するその水溶液によって、サージタンク31内の配管84の還元除染が行われる。酸素ガス供給装置66によるサージタンク31内のマロン酸及びシュウ酸を含む水溶液への酸素ガスの注入は、配管84の還元除染が行われている間、継続して行われる。
【0101】
サージタンク31付近に配置された放射線検出器から出力された放射線検出信号に基づいて求められた配管84の線量率が、設定線量率(例えば、0.1mSv/h)以下になったとき、または、還元除染が開始されてから所定時間(例えば、6時間から12時間)が経過したとき、配管84に対する還元除染を終了する。
【0102】
還元除染終了後、還元除染剤の分解(ステップS6)及び浄化工程(ステップS7)が、その水溶液を、サージタンク31及び循環配管29を循環させながら、実施例1と同様に行われる。浄化工程が終了した後、除染槽内から除染対象物を取り出す(ステップS14)。除染槽であるサージタンク31の蓋を開け、運搬設備71を用いてサージタンク31内から還元除染が終了した配管84を取り出す。
【0103】
還元除染が終了した配管84が取り出された後、新たな化学除染対象物に対する還元除染が、ステップS12,S2〜S4,S13,S5〜S7及びS14を繰り返すことによって実施される。
【0104】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、原子力プラントから取り外された炭素鋼製の部材に対しても還元除染を行うことができる。
【0105】
なお、本実施例において、サージタンク31内の、90℃で12300ppmのマロン酸及び100ppmのシュウ酸を含む水溶液中に酸素ガスを注入しないで、酸素ガスが注入されなかったその水溶液を、配管84を収納したサージタンク31及び循環配管29を循環させながら、サージタンク31内の配管84の還元除染を実施してもよい。
【0106】
廃止措置及びBWRプラントの改造等のように、還元除染を行う必要がある炭素鋼部材(例えば、配管84)がたくさん発生する場合には、各炭素鋼部材に対する還元除染が、化学除染装置28Bを用いて以下のように行われる。ステップS12において配管84をサージタンク31内に収納し、ステップS2〜S4,S13及びS5の各工程が、順次、実施される。ステップS5の還元除染工程が終了したとき、除染対象物の取り出し(ステップS14)を実施する。還元除染が終了された複数の配管84が、運搬設備71によってサージタンク31から取り出され、化学除染装置28Bとは別に設置された洗浄装置72(図15参照)まで搬送される。これらの配管84は洗浄装置72によって洗浄される。
【0107】
洗浄装置72の構成を、図15を用いて以下に説明する。洗浄装置72は、洗浄槽73、循環ポンプ74及び混床樹脂塔75を有する。循環配管76の一端部が洗浄槽73に接続され、循環配管76の他端部も洗浄槽73に接続される。洗浄槽73及び循環配管76によって閉ループが形成される。循環ポンプ74及び混床樹脂塔75が循環配管76に設けられる。混床樹脂塔75は、内部に、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を充填している。
【0108】
サージタンク31から取り出されて運搬設備71によって搬送された配管84が、蓋が上端から取り外されて洗浄水が充填されている洗浄槽73内に収納される。還元除染された複数の配管84が洗浄槽73内に収納された後、洗浄槽73の上端に蓋が取り付けられ、洗浄槽73が密封される。循環ポンプ74が駆動され、洗浄槽73内の洗浄水が、循環配管76及び混床樹脂塔75を通って循環される。洗浄槽73内の配管84が循環する洗浄水によって洗浄される。配管84に付着した放射性核種は、配管84から洗浄水に移行し、混床樹脂塔75内のイオン交換樹脂に吸着されて除去される。洗浄槽73内の配管84の線量率が設定線量率(例えば、0.1mSv/h)以下になったとき、洗浄槽73内の配管84に対する洗浄が終了する。洗浄されて設定線量率以下になった配管84が、洗浄73から取り出される。
【0109】
還元除染された配管84が取り出された化学除染装置28Bのサージタンク31内に新たに還元除染される複数の配管84が収納される(ステップS12)。化学除染装置28Bを用いてステップS12,S2〜S4,S13及びS5の各工程が実施され、サージタンク31内のそれらの配管84に対して還元除染が施行される。ステップS5の還元除染が終了した後、前述したように、サージタンク31から還元除染が実施された複数の配管84が取り出される。これらの配管84は洗浄装置72により洗浄される。サージタンク31内に、還元除染すべき新たな複数の配管84が収納され、これらの配管84に対して前述のように、還元除染が実施される。サージタンク31内での還元除染は、還元除染の対象の配管84がなくなるまで、連続して行われる。サージタンク31及び循環配管29内に存在する12300ppmのマロン酸及び100ppmのシュウ酸を含む水溶液(還元除染液)は、サージタンク31内で新たな配管84に対して還元除染を行うときに、再使用される。サージタンク31内で最後の複数の配管84に対する還元除染(ステップS5)が終了した後に、サージタンク31内にそれらの配管84を収納したまま、還元除染剤の分解(ステップS6)及び浄化工程(ステップS7)を順番に実施し、さらに、除染対象物の取り出し(ステップS14)が実施される。
【0110】
サージタンク31から取り出された還元除染済の配管84の洗浄を、洗浄装置72を用いて行うので、還元除染を行う除染対象物が多量にある場合には、サージタンク31内での還元除染が終了するたびに還元除染剤の分解(ステップS6)及び浄化工程(ステップS7)を行う必要が無く、洗浄対象物の還元除染を効率良く行うことができる。このため、還元除染を行う除染対象物が多量にある場合における還元除染に要する時間を短縮することができる。また、還元除染液に含まれるマロン酸及びシュウ酸を還元除染が終了するたびに分解しないので、マロン酸及びシュウ酸を含む還元除染液を再利用することができる。
【0111】
化学除染装置28Bに用いられる酸素ガス供給装置66を、図16に示す酸素ガス供給装置66Aに替えてもよい。酸素ガス供給装置66Aは、循環ポンプ79及びマイクロバブル発生装置78を、サージタンク31の底部に一端部が接続された配管80に設けている。弁81も配管80に設置されている。配管80の他端部は、サージタンク31内に挿入されている。
【0112】
弁81を開いて循環ポンプ79を駆動する。サージタンク31内の90℃で12300ppmのマロン酸及び100ppmのシュウ酸を含む水溶液が、配管80を通ってマイクロバブル発生装置78に供給される。マイクロバブル発生装置78は、その水溶液にミクロンオーダーの酸素含有ガス(例えば、空気)を供給する。ミクロンオーダーの酸素含有ガス(マイクロバブル)を含むその水溶液が、配管80を通ってサージタンク31内の水溶液に注入される。このため、90℃で12300ppmのマロン酸、100ppmのシュウ酸及びミクロンオーダーの酸素含有ガスを含む水溶液が、サージタンク31内で配管84と接触する。ミクロンオーダーの酸素含有ガスは気泡の体積に対する接液面積が大きくなるので、ミクロンオーダーの酸素含有ガスに含まれる酸素がサージタンク31内の上記の水溶液に容易に溶解する。このため、少ない酸素含有ガスの量で還元除染の効果を向上させることができる。
【0113】
酸素ガス供給装置66または66Aは、化学除染装置28及び28Aに適用することができる。このため、実施例1及び2においても、マロン酸、シュウ酸及び酸素を含む水溶液を用いて浄化系配管21及び再循環系配管4に対して還元除染を実施することができる。実施例1〜3のそれぞれにおいて、サージタンク31内で還元除染液であるそれぞれの水に酸素ガスまたはミクロンオーダーの酸素含有ガスを注入しているので、循環配管29内に酸素ガスまたはミクロンオーダーの酸素含有ガスを注入する場合に比べて、酸素の水溶液への溶解が容易に行われる。
【符号の説明】
【0114】
2…原子炉圧力容器、4…再循環系配管、5…再循環ポンプ、10…タービン、13…給水配管、21…浄化系配管、25…炉水浄化装置、28,28A,28B…化学除染装置、31…サージタンク、32…マロン酸注入装置、33,38,46,63…薬液タンク、34,39,64…注入ポンプ、37…シュウ酸注入装置、42…陽イオン交換樹脂塔、43,75…混床樹脂塔、45…酸化剤供給装置、62…酸化除染液注入装置、66,66A…酸素ガス供給装置、78…マイクロバブル発生装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16