(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134624
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】液体噴射ユニット及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20170515BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20170515BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
B41J2/175 121
B41J2/14 603
B41J2/175 143
B41J2/18
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-200158(P2013-200158)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-66689(P2015-66689A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】堂前 美徳
【審査官】
外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−163331(JP,A)
【文献】
特開2012−171320(JP,A)
【文献】
特開2013−144461(JP,A)
【文献】
特開2010−125697(JP,A)
【文献】
特開2011−116089(JP,A)
【文献】
特開2001−293878(JP,A)
【文献】
特開2002−370376(JP,A)
【文献】
特開2013−071296(JP,A)
【文献】
特開2011−110833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの液室を備える循環ユニットと、
液体供給用の供給路が接続し、2つの前記液室に連通する連通流路と、
2つの前記液室それぞれに連通する2つの接続口と、2つの前記接続口を連通する内部流路と、を有するヘッド部と、を備え、
前記循環ユニットは、一方の前記液室の容積増加量と他方の前記液室の容積減少量とが等しい液体噴射ユニット。
【請求項2】
前記供給路は、各前記液室までの流路抵抗が等しくなる前記連通流路の流路地点に接続される請求項1に記載の液体噴射ユニット。
【請求項3】
前記供給路から一方の前記液室を経由して前記ヘッド部に流入する液体の圧力損失と、前記供給路から他方の前記液室を経由して前記ヘッド部に流入する液体の圧力損失とが等しい請求項1又は2に記載の液体噴射ユニット。
【請求項4】
前記循環ユニットは、各前記液室を構成する側壁の一部又は全部が可動壁からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ユニット。
【請求項5】
前記可動壁は、2つの前記液室に共通する側壁からなる請求項4に記載の液体噴射ユニット。
【請求項6】
前記可動壁は、2つの前記液室に共通する側壁と、2つの前記液室に共通しない側壁とを含む請求項4に記載の液体噴射ユニット。
【請求項7】
2つの前記液室に共通する側壁は、可撓性膜からなる請求項5又は6に記載の液体噴射ユニット。
【請求項8】
前記可動壁は、2つの前記液室に共通しない側壁からなる請求項4に記載の液体噴射ユニット。
【請求項9】
2つの前記液室の前記可動壁をなす2つの側壁は連結部材により連結される請求項8に記載の液体噴射ユニット。
【請求項10】
2つの前記液室に共通しない前記可動壁をなす側壁は、蛇腹構造を備える請求項6、8、9のいずれか一項に記載の液体噴射ユニット。
【請求項11】
前記可動壁は、往復運動を行う請求項4〜10のいずれか一項に記載の液体噴射ユニット。
【請求項12】
前記供給路に液体を供給する液体タンクを備える請求項1〜11のいずれか一項に記載の液体噴射ユニット。
【請求項13】
請求項1に記載の液体噴射ユニットと、
前記液体噴射ユニットと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、
前記供給路に液体を供給する液体タンクと、を備える液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に液滴を噴射して記録する液体噴射ユニットに関し、特に液体循環型の液体噴射ユニット及びこれを用いた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出して文字や図形を記録する、或いは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜を形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料などの液体を液体タンクから供給管を介してチャンネルに導き、チャンネルに充填される液体に圧力を印加してチャンネルに連通するノズルから液体を吐出する。液体の吐出の際には、液体噴射ヘッドや被記録媒体を移動させて文字や図形を記録する、或いは所定形状の機能性薄膜を形成する。
【0003】
この種の液体噴射装置では、液体噴射ヘッドに供給する液体を循環させるタイプが普及している。液体を循環させることにより、液体噴射ヘッドに塵埃や気泡が滞留し吐出不良が発生することを防ぐとともに、液体噴射ヘッドに常に新鮮な液体を供給することができるので、液体の増粘による記録品質の低下を防ぐことができる。
【0004】
特許文献1には、記録ヘッドユニットとインクタンクの間にインクが循環する循環系が記載されている。液体タンクと記録ヘッドユニットの間には往路のインクチューブと復路のインクチューブが設置される。往路のインクチューブのインクタンク側にはポンプが設置され、インクタンクのインクを記録ヘッドユニットに圧送すると共に、インクをインクタンクと記録ヘッドユニットの間を循環させる。この構成により、チューブ内や記録ヘッドユニット内に残存する気泡や増粘インクがインクタンクに集められ除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−330073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の循環系では、インクタンクの近くに設置されるポンプから往路のインクチューブを介して記録ヘッドユニットにインクが送液され、記録ヘッドユニットから復路のインクチューブを介してインクタンクにインクが回収される。そのため、インクタンクに対して往路と復路のインクチューブの接続が必要となり、組み立てに手間がかかる。また、往路と復路のインクチューブが長くなると、インクチューブ内の圧力損失が増加すると共に、記録ヘッドユニットが移動する際にインクチューブ内のインクの慣性に伴う圧力変動が発生し、吐出口の圧力制御が難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体噴射ユニットは、2つの液室を備える循環ユニットと、液体供給用の供給路が接続し、2つの前記液室を連通する連通流路と、2つの前記液室それぞれに連通する2つの接続口と、2つの前記接続口を連通する内部流路と、を有するヘッド部と、を備え、前記循環ユニットは、一方の前記液室の容積増加量と他方の前記液室の容積減少量とが等しいこととした。
【0008】
また、前記供給路は、各前記液室までの流路抵抗が等しくなる前記連通流路の流路地点に接続されることとした。
【0009】
また、前記供給路から一方の前記液室を経由して前記ヘッド部に流入する液体の圧力損失と、前記供給路から他方の前記液室を経由して前記ヘッド部に流入する液体の圧力損失とが等しいこととした。
【0010】
また、前記循環ユニットは、各前記液室を構成する側壁の一部又は全部が可動壁からなることとした。
【0011】
また、前記可動壁は、2つの前記液室に共通する側壁からなることとした。
【0012】
また、前記可動壁は、2つの前記液室に共通する側壁と、2つの前記液室に共通しない側壁とを含むこととした。
【0013】
また、2つの前記液室に共通する側壁は、可撓性膜からなることとした。
【0014】
また、前記可動壁は、2つの前記液室共通しない側壁からなることとした。
【0015】
また、2つの前記液室の前記可動壁をなす2つの側壁は連結部材により連結されることとした。
【0016】
また、2つの前記液室に共通しない前記可動壁をなす側壁は、蛇腹構造を備えることとした。
【0017】
また、前記可動壁は往復運動を行うこととした。
【0018】
また、前記連通流路に送液するポンプと、前記ポンプに液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【0019】
本発明の液体噴射装置は、上記いずれかの液体噴射ユニットと、前記液体噴射ユニットと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、前記供給路に液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【発明の効果】
【0020】
本発明による液体噴射ユニットは、2つの液室を備える循環ユニットと、液体が供給される供給路に接続し、2つの液室に連通する連通流路と、2つの液室それぞれに連通する2つの接続口と、2つの接続口を連通する内部流路と、を有するヘッド部と、を備える。これにより、複雑な制御系を伴うことなく簡素な構成によりヘッド部の液体を循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ユニットの模式図である。
【
図2】本発明の液体噴射ユニットにおける可動壁の移動速度と第一及び第二液室及びノズル面の液体の圧力との関係を表す。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ユニットの模式図である。
【
図4】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ユニットの模式図である。
【
図5】本発明の第四実施形態に係る液体噴射ユニットの模式図である。
【
図6】本発明の第五実施形態に係る液体噴射装置の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第一実施形態)
図1は本発明の第一実施形態に係る液体噴射ユニット1の模式図である。
図1を用いて本発明の基本構成を説明する。
【0023】
図1に示すように、液体噴射ユニット1は、第一液室8aと第二液室8bの2つの液室を備える循環ユニット2と、液体供給用の供給路5が接続し、2つの第一及び第二液室8a、8bに連通する連通流路4と、2つの第一及び第二液室8a、8bそれぞれに連通する2つの接続口7a、7bと、2つの接続口7a、7bを連通する内部流路7cと、を有するヘッド部6とを備える。ここで、循環ユニット2は、一方の第一液室8a(又は第二液室8b)の容積増加量と他方の第二液室8b(又は第一液室8a)の容積減少量とが等しい。
【0024】
具体的に説明する。第一液室8aと第二液室8bを仕切る壁は、第一液室8aと第二液室8bに共通する側壁であり、可動壁3からなる。可動壁3が右方に移動すると、第二液室8bから内部流路7cと連通流路4を介して第一液室8aに液体が送り出され、可動壁3が左方に移動すると、第一液室8aから内部流路7cと連通流路4を介して第二液室8bに液体が送り出されて、ヘッド部6を液体が循環する。即ち、図示しない駆動部により可動壁3を往復運動させてヘッド部6の内部流路7cの液体を循環させる。可動壁3は、変形しないで左右に移動するピストン状の板体であってもよいし、外周が固定され中央部が左右に膨張して移動する可撓性膜であってもよい。
【0025】
可動壁3が第一液室8aと第二液室8bに共通する側壁であることから、第一液室8aの容積変化量(例えば容積増加量)と第二液室8bの容積変化量(例えば容積減少量)は等しい。また、供給路5から第一液室8aを経由してヘッド部6に流入する液体の圧力損失と、供給路5から第二液室8bを経由してヘッド部6に流入する液体の圧力損失とを等しくする。そこで、供給路5は、第一及び第二液室8a、8bまでの各流路抵抗が等しくなる連通流路4の流路地点Xに接続する。また、第一液室8aからヘッド部6までの流路抵抗と、第二液室8bからヘッド部6までの流路抵抗とを等しく構成する。
【0026】
可動壁3を移動させて第一液室8aから第二液室8b、又は、第二液室8bから第一液室8aに液体を送り出すときの第一液室8aの液体の圧力(静圧、以下同じ。)をP1、第二液室8bの液体の圧力をP2とし、位置エネルギーに基づく水頭差を無視すると、流路地点X及び内部流路7cに連通するノズル面Nの液体の圧力Pxは、Px=(P1+P2)/2となる。そして、可動壁3の移動に伴う第一液室8aの液体の圧力の変化量と第二液室8bの圧力の変化量とは絶対値が等しく、上記式において相殺される。つまり、流路地点Xや内部流路7cは、可動壁3が移動しても液体の圧力が変動しない。従って、可動壁3の移動は液体の循環のみに寄与し、ヘッド部6から液滴を吐出する際に可動壁3の移動の影響を受けない。そして、ノズル9から液滴が吐出されて内部流路7cの液体が消費されると内部流路7cの圧力が低下し、供給路5から液体が補充される。
【0027】
図2は、本発明の液体噴射ユニット1における可動壁3の移動速度と第一及び第二液室8a、8b及びノズル面Nの液体の圧力との関係を表す。横軸が可動壁3の移動速度であり縦軸が液体の圧力を示す。グラフG1が第一液室8aの圧力P1の変化、グラフG2が第二液室8bの圧力P2の変化、グラフGxがノズル面Nの液体の圧力Pxの変化をそれぞれ表す。可動壁3の移動速度が上昇すると第一液室8aと第二液室8bの圧力の絶対値は次第に大きくなるが、ノズル面Nの液体の圧力を示すグラフGxは可動壁3の移動速度に影響を受けることなく一定圧力、−1kPaを示す。つまり、可動壁3の移動速度が変化してもノズル面Nに形成される液体のメニスカスは影響を受けない。同様に、流路地点Xの液体の圧力も可動壁3の移動速度の影響を受けないので、可動壁3の移動に応じて供給路5から液体を引き込む、或いは供給路5に液体を逆流させることも無い。流路地点Xの液体の圧力とノズル面Nの液体の圧力との間には、実際には位置エネルギーの差に応じた水頭差が生じる。ノズル9から液滴が吐出され内部流路7cが減圧すると、この水頭差が維持されて流路地点Xも減圧し、供給路5から液体が補充される。
【0028】
このように、複雑な制御系を使用せず、簡素な構成によりヘッド部6の液体を循環させることができる。なお、循環ユニット2は、ヘッド部6の記録時には停止し、メンテナンス時に稼働させて使用することができる。例えば、ヘッド部6の記録動作時は可動壁3を停止させ、ヘッド部6に第一液室8aと第二液室8bを経由して液体を供給し、メンテナンス時に稼働壁3を移動させてヘッド部6に液体を循環させ、ノズル抜け等を復帰させる。また、連通流路4と循環ユニット2をヘッド部6とともに一体的に構成すれば、液体タンクから液体噴射ユニット1に一本の液体供給チューブを接続すればよいので組み立てや調整が簡素となり、汎用性のある液体噴射ユニット1を構成することができる。
【0029】
(第二実施形態)
図3は、本発明の第二実施形態に係る液体噴射ユニット1の模式図である。第一実施形態と異なる点は、循環ユニット2の構成であり、その他は第一実施形態と同様である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号をしている。
【0030】
図3に示すように、液体噴射ユニット1は、第一液室8aと第二液室8bの2つの液室8を備える循環ユニット2と、液体供給用の供給路5が接続し、第一液室8aと第二液室8bを連通する連通流路4と、2つの第一及び第二液室8a、8bそれぞれに連通する2つの接続口7a、7bと、2つの接続口7a、7bを連通する内部流路7cと、を有するヘッド部6とを備える。循環ユニット2は、第一液室8a(又は第二液室8b)の容積増加量と第二液室8b(又は第一液室8a)の容積減少量とが等しい。
【0031】
具体的に説明する。第一液室8aは、外壁12aと蛇腹構造の側壁と共通壁11により囲まれる。同様に第二液室8bは、外壁12bと蛇腹構造の側壁と共通壁11により囲まれる。第一液室8aと第二液室8bは蛇腹構造の側壁の内径が等しい。共通壁11は第一液室8aと第二液室8bの共通の側壁を構成する。第一液室8aの外壁12aと第二液室8bの外壁12bは外枠10に固定される。共通壁11を外枠10に対して右方に相対的に移動させると、第二液室8bから内部流路7cと連通流路4を介して第一液室8aに液体が送り出され、共通壁11を外枠10に対して左方に相対的に移動させると、第一液室8aから内部流路7cと連通流路4を介して第二液室8bに液体が送り出され、ヘッド部6を液体が循環する。従って、可動壁が往復運動することによりヘッド部6を液体が循環する。ここで、可動壁は、2つの液室8に共通する側壁と、2つの液室8に共通しない側壁とを含む。具体的には、可動壁は、第一液室8aと第二液室8bに共通する共通壁11からなる側壁と、第一液室8aと第二液室8bに共通しない蛇腹構造の側壁とを含む。
【0032】
このとき、循環ユニット2は、第一液室8aの容積増加量(又は容積減少量)と第二液室8bの容積減少量(又は容積増加量)とが等しい。また、供給路5から第一液室8aを経由してヘッド部6に流入する液体の圧力損失と、供給路5から第二液室8bを経由してヘッド部6に流入する液体の圧力損失とを等しくする。そこで、供給路5は、第一及び第二液室8a、8bまでの各流路抵抗が等しくなる連通流路4の流路地点Xに接続する。更に、第一液室8aからヘッド部6までの流路抵抗と、第二液室8bからヘッド部6までの流路抵抗とを等しく構成する。その結果、共通壁11の移動は液体の循環のみに寄与し、ヘッド部6から液滴を吐出する際に共通壁11の移動の影響を受けない。そして、ノズル9から液滴が吐出されて内部流路7cの液体が消費されると内部流路7cの圧力が低下し、供給路5から液体が補充される。
【0033】
なお、外枠10を固定し共通壁11を可動壁として左右に移動させることに代えて、共通壁11を固定し、外枠10を左右に移動させてもよい。この場合、可動壁は、2つの液室8に共通しない側壁からなる。つまり、可動壁は、2つの液室に共通しない外壁12a、12bと蛇腹構造からなる側壁である。
【0034】
本実施形態においても、複雑な制御系を使用せず、簡素な構成によりヘッド部6の液体を循環させることができる。なお、循環ユニット2は、ヘッド部6の記録時には停止し、メンテナンス時に稼働させて使用することができる。例えば、ヘッド部6の記録動作時は可動壁3を停止させ、ヘッド部6に第一液室8aと第二液室8bを経由して液体を供給し、メンテナンス時に稼働壁3を移動させてヘッド部6に液体を循環させ、ノズル抜け等を復帰させる。また、連通流路4と循環ユニット2をヘッド部6とともに一体的に構成すれば、液体タンクから液体噴射ユニット1に一本の液体供給チューブを接続すればよいので組み立てや調整が簡素となり、汎用性のある液体噴射ユニット1を構成することができる。
【0035】
(第三実施形態)
図4は、本発明の第三実施形態に係る液体噴射ユニット1の模式図である。第一及び第二実施形態と異なる点は、第一液室8aと第二液室8bが物理的に分離され、各液室8に可動壁をなす側壁を備え、各可動壁をなす側壁は連結部材により連結される点である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0036】
図4に示すように、液体噴射ユニット1は、第一液室8aと第二液室8bの2つの液室8を備える循環ユニット2と、液体供給用の供給路5が接続し、第一液室8aと第二液室8bとを連通する連通流路4と、2つの第一及び第二液室8a、8bそれぞれに連通する2つの接続口7a、7bと、2つの接続口7a、7bを連通する内部流路7cと、を有するヘッド部6とを備える。循環ユニット2は、第一液室8a(又は第二液室8b)の容積増加量と第二液室8b(又は第一液室8a)の容積減少量とが等しい。
【0037】
具体的に説明する。ヘッド部6は、吐出溝6dが形成される圧電体基板6bと、圧電体基板6bの上面に接合され、液体を流入又は流出する2つのマニホールド6eを有するカバープレート6aと、圧電体基板6bの下面に接合され、吐出溝6dに連通するノズル9を有するノズルプレート6cと、を備える。ここで、2つのマニホールド6eの上部開口がそれぞれ接続口7a、7bを成し、2つのマニホールド6eと吐出溝6dが内部流路7cを成す。
【0038】
循環ユニット2は、物理的に分離して設置される第一及び第二液室8a、8bと、第一液室8aと第二液室8bの間に設置され、支点Zを中心に回動可能に固定される可動レバー13とを備える。第一液室8aは、可動レバー13の一端に連結する上部壁14aと蛇腹構造の側壁に囲まれ、下部がカバープレート6aの接続口7aに接続される。第一液室8aはカバープレート6aの一方のマニホールド6eに連通する。第二液室8bは、可動レバー13の他端に連結する上部壁14bと蛇腹構造の側壁に囲まれ、下部がカバープレート6aの接続口7bに接続される。第二液室8bはカバープレート6aの他方のマニホールド6eに連通する。従って、第一液室8aと第二液室8bにおいて上部壁14a、14bと蛇腹構造の側壁が可動壁である。換言すると、可動壁は2つの液室8に共通しない側壁からなり、可動レバー13が2つの可動壁からなる側壁を連結する連結部材となる。
【0039】
図示しない駆動部により、支点Zを中心に可動レバー13を時計回りに回動させると、第二液室8bからヘッド部6の吐出溝6dと連通流路4を介して第一液室8aに液体が送り出され、可動レバー13を反時計回りに回動させると、第一液室8aからヘッド部6の吐出溝6dと連通流路4を介して第二液室8bに液体が送り出され、ヘッド部6の液体は循環する。従って、可動壁が往復運動することによりヘッド部6を液体が循環する。
【0040】
第一液室8aと第二液室8bは蛇腹の内径が同じなので、第一液室8aの容積増加量(又は容積減少量)と第二液室8bの容積減少量(又は容積増加量)とが等しい。また、供給路5から第一液室8aを経由してヘッド部6に流入する液体の圧力損失と、供給路5から第二液室8bを経由してヘッド部6に流入する液体の圧力損失とを等しくする。そこで、供給路5は、第一及び第二液室8a、8bまでの各流路抵抗が等しくなる連通流路4の流路地点Xに接続する。更に、第一液室8aからヘッド部6までの流路抵抗と、第二液室8bからヘッド部6までの流路抵抗とを等しく構成する。その結果、上部壁14a、14bの移動は液体の循環のみに寄与し、ヘッド部6から液滴を吐出する際に上部壁14a、14bの移動の影響を受けない。そして、ノズル9から液滴が吐出されて内部流路7cの液体が消費されると内部流路7cの圧力が低下し、供給路5から液体が補充される。ここで、上部壁14a、14bを除去し、第一液室8aと第二液室8bの全体を蛇腹構造の側壁により構成し、蛇腹構造の側壁の上端部に可動レバー13の端部を連結してもよい。この場合は、液室を構成する側壁の全部が可動壁により構成される。
【0041】
(第四実施形態)
図5は、本発明の第四実施形態に係る液体噴射ユニット1の模式図である。第一実施形態と異なる点は、連通流路4の一端が分岐点Yaにおいて付加流路15aとヘッド側流路16aに連通し、連通流路4の他端が分岐点Ybにおいて付加流路15bとヘッド側流路16bに連通する点である。付加流路15a、15bのそれぞれは可動壁3により分割されるシリンダーSの2つの内空間に連通し、ヘッド側流路16a、16bのそれぞれはヘッド部6の接続口7a、7bに連通する。その他の構成は第一実施形態と同様である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0042】
図5に示すように、循環ユニット2は、可動壁3を往復移動可能に収納するシリンダーSと、供給路5が接続される連通流路4と、分岐点Yaにおいて連通流路4の一端に接続する付加流路15a及びヘッド側流路16aと、分岐点Ybにおいて連通流路4の他端に接続する付加流路15b及びヘッド側流路16bと、を備える。可動壁3が右方に移動すると、可動壁3よりも右方のシリンダーSと付加流路15bに充填される液体が、連通流路4と、ヘッド側流路16b、内部流路7c及びヘッド側流路16aを介して付加流路15aと可動壁3よりも左方のシリンダーSに送り出される。可動壁3が左方に移動すると、可動壁3よりも左方のシリンダーSと付加流路15aに充填される液体が、連通流路4と、ヘッド側流路16a、内部流路7c及びヘッド側流路16bを介して付加流路15bと可動壁3よりも右方のシリンダーSに送り出される。
【0043】
ここで、第一液室8aは、破線Ra内に含まれる内空間であり、可動壁3よりも左方のシリンダーSの内空間と、付加流路15aの内空間と、分岐点Ya近傍の内空間との合計からなる。また、第二液室8bは、破線Rb内に含まれる内空間であり、可動壁3よりも右方のシリンダーSの内空間と、付加流路15bの内空間と、分岐点Yb近傍の内空間との合計からなる。可動壁3が第一液室8aと第二液室8bに共通する側壁となるので、第一液室8aの容積変化量と第二液室8bの容積変化量は等しい。また、分岐点Ya、Ybそれぞれの近傍が第一及び第二液室8a、8bなので、連通流路4は両端部において第一及び第二液室8a、8bに連通する。
【0044】
更に、供給路5から分岐点Ya及びヘッド側流路16aを介しヘッド部6に流入する液体の圧力損失と、供給路5から分岐点Yb及びヘッド側流路16bを介しヘッド部6に流入する液体の圧力損失とを等しくする。そこで、供給路5は、分岐点Yaと分岐点Ybまでの各流路抵抗が等しくなる連通流路4の流路地点Xに接続する。また、分岐点Yaからヘッド側流路16aと接続口7aを介し内部流路7cまでの流路抵抗と、分岐点Ybからヘッド側流路16bと接続口7bを介し内部流路7cまでの流路抵抗とを等しく構成する。なお、第一実施形態において説明した第一液室8aの圧力P1と第二液室8bの圧力P2は、本実施形態においては、それぞれ分岐点Yaの圧力と分岐点Ybの圧力となる。また、付加流路15aと付加流路15bは流路長や流路断面積が互いに異なるものであってもよい。
【0045】
その結果、第一実施形態において説明したと同様に動作し、同様の効果を得ることができる。即ち、複雑な制御系を伴うことなく簡素な構成によりヘッド部6の液体を循環させることができる。また、液体タンクから液体噴射ユニット1に一本の液体供給チューブを接続すればよいので組み立てや調整が簡素となり、汎用性のある液体噴射ユニット1を構成することができる。なお、本実施形態における分岐点Ya、Yb、付加流路15a、15b及びヘッド側流路16a、16bは第二実施形態や第三実施形態の液体噴射ユニット1に適用できる。
【0046】
また、第一実施形態から第四実施形態において、液体噴射ユニット1は、供給路5に液体を供給する液体タンクや、液体タンクからの供給路5に液体を送液する液体ポンプを含めることができる。
【0047】
(第五実施形態)
図6は本発明の第五実施形態に係る液体噴射装置30の模式的な斜視図である。液体噴射装置30は、液体噴射ユニット1、1’を往復移動させる移動機構40と、液体噴射ユニット1、1’に液体を供給し、液体噴射ユニット1、1’から液体を排出する流路部35、35’と、流路部35、35’に連通する液体ポンプ33、33’及び液体タンク34、34’とを備えている。液体噴射ユニット1、1’は既に説明した第一〜第四実施形態のいずれかを使用する。
【0048】
液体噴射装置30は、紙等の被記録媒体44を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体44に液体を吐出する液体噴射ユニット1、1’と、液体噴射ユニット1、1’を載置するキャリッジユニット43と、液体タンク34、34’に貯留した液体を流路部35、35’に押圧して供給する液体ポンプ33、33’と、液体噴射ユニット1、1’を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構40とを備えている。図示しない制御部は液体噴射ユニット1、1’、移動機構40、搬送手段41、42を制御して駆動する。
【0049】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体44を主走査方向に搬送する。移動機構40は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット43と、キャリッジユニット43を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト38と、この無端ベルト38を図示しないプーリを介して周回させるモータ39とを備えている。
【0050】
キャリッジユニット43は、複数の液体噴射ユニット1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク34、34’は対応する色の液体を貯留し、液体ポンプ33、33’、流路部35、35’を介して液体噴射ユニット1、1’に供給する。各液体噴射ユニット1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ユニット1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット43を駆動するモータ39の回転及び被記録媒体44の搬送速度を制御することにより、被記録媒体44上に任意のパターンを記録することができる。
【0051】
なお、本実施形態は、移動機構40がキャリッジユニット43と被記録媒体44を移動させて記録する液体噴射装置30であるが、これに代えて、キャリッジユニットを固定し、移動機構が被記録媒体を2次元的に移動させて記録する液体噴射装置であってもよい。つまり、移動機構は液体噴射ユニットと被記録媒体とを相対的に移動させるものであればよい。また、液体タンク34、34’は大気開放とし、液体ポンプ33、33’は記録開始時に液体噴射ユニット1、1’に液体を充填し、その後オープン状態で停止し、液体タンク34、34’と液体噴射ユニット1、1’との間の水頭差により液体を送液してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 液体噴射ユニット
2 循環ユニット
3 可動壁
4 連通流路
5 供給路
6 ヘッド部、6a カバープレート、6b 圧電体基板、6c ノズルプレート、6d 吐出溝、6e マニホールド
7a、7b 接続口、7c 内部流路
8 液室、8a 第一液室、8b 第二液室
9 ノズル
10 外枠
11 共通壁
12a、12b 外壁
13 可動レバー
14a、14b 上部壁
15a、15b 付加流路
16a、16b ヘッド側流路
X 流路地点、N ノズル面、Z 支点、S シリンダー