(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る作業機械の障害物検知装置を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0022】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る障害物検知装置10(
図2参照)は、作業機械、例えば
図1に示すダンプトラック1に設けられる。なお、以下の説明において、車体の周囲の方向を「前」「後」「左」「右」の四方で表しているが、これらの各方向は、後述のキャブ8の運転席に着座した操作者の視点を基準としている。
【0023】
ダンプトラック1は、車体フレーム5と、この車体フレーム5の前部の左右両端に回転可能にそれぞれ一輪ずつ設けられた前輪6と、車体フレーム5の後部の左右両端に回転可能にそれぞれ二輪ずつ設けられた後輪7とを備えている。また、ダンプトラック1は、車体フレーム5上に起伏可能に設けられ、土砂や砕石等の積荷を積載するベッセル2を備えている。
【0024】
具体的には、ダンプトラック1は、車体フレーム5の後部に設けられたヒンジピン(図示せず)と、車体フレーム5のうちヒンジピンよりも前方、すなわち前輪6と後輪7との間に配置され、車体フレーム5とベッセル2とを連結するホイストシリンダ3とを備え、ホイストシリンダ3が伸長することにより、ベッセル2を押し上げて起立させると共に、ホイストシリンダ3が収縮することにより、ベッセル2を支持しながら倒伏させるようになっている。
【0025】
従って、ダンプトラック1は、倒伏状態においてベッセル2に積載された土砂や砕石等の積荷を運搬した後、ベッセル2を倒伏状態から起立状態へ移行させることにより、ベッセル2を傾斜させて積荷を降ろしている。なお、ダンプトラック1は、図示されないが、ホイストシリンダ3へ圧油を供給する油圧ポンプと、この油圧ポンプに供給する作動油を貯蔵する作動油タンクとを備えており、油圧ポンプから供給される圧油によってホイストシリンダ3が伸縮するようになっている。
【0026】
また、ダンプトラック1は、内部に搭載され、車体の動作を制御する車体コントローラ9(
図2参照)と、ベッセル2の前方に配置され、車体フレーム5のうち前輪6側に設けられた前述のキャブ8を備えており、前輪6の大きさはキャブ8の大きさよりも大きくなっている。従って、ダンプトラック1を操作する操作者が前輪6の上方に位置するキャブ8の入口まで上れるように操作者が踏台とするステップ、例えば梯子8aがキャブ8の前側にかけられている。なお、ダンプトラック1には、図示されないが、車体コントローラ9に接続され、車体の速度を検知する車速センサが取り付けられており、キャブ8内には、図示されないが、車体コントローラ9に接続され、車体の走行状態のうち前進(F)、中立(N)、及び後退(R)のいずれかに切替えるシフトレバーと、前輪6の操舵方向を切替えることにより、車体の進行方向を左方向又は右方向へ変更する操作ハンドルと、車体を加速させるアクセルペダルと、後輪7に制動力を付与するブレーキペダルとが設置されている。
【0027】
このように、ダンプトラック1の車体は大型であり、キャブ8内の操作者にとって車体周辺の視界が制限され易いことから、車体に接近する障害物を検知し、車体と障害物との衝突を回避するための車体周辺の監視を行う必要がある。そこで、ダンプトラック1を操作するキャブ8内の操作者の視界を補助するために、本発明の第1実施形態に係る障害物検知装置10は、
図2に示すように車体の周囲の障害物を検知して車体の周囲を監視する周囲監視部11と、この周囲監視部11の検知範囲よりも車体から離れた位置の障害物を検知して車体から離れた遠方を監視する遠方監視部12と、車体の速度に応じて、周囲監視部11による監視
動作と遠方監視部12による監視
動作を切替える監視切替部13と、この監視切替部13によって切替えられた周囲監視部11又は遠方監視部12の監視状態を操作者に報知する報知部14とを備えている。
【0028】
周囲監視部11は、例えば撮影範囲が異なるように車体に設けられ(
図1参照)、車体の周囲を撮影する4台の周囲監視用カメラ(以下、便宜的にカメラと呼ぶ)21a〜21dと、これらのカメラ21a〜21dによって撮影された映像に基づいて、車体の周囲の監視動作を制御する周囲監視コントローラ22とを有している。
【0029】
図1に示すように、カメラ21aは、車体の前部の位置にある梯子8aの上部のフレームに取り付けられ、車体の前方の範囲21A(
図3参照)を撮影し、カメラ21bは、車体フレーム5の後部に取り付けられ、車体の後方の範囲21B(
図3参照)を撮影するものである。また、カメラ21cは、前輪6の上方の位置にある梯子8aからキャブ8への案内通路8bのフレームに取り付けられ、車体の左方の範囲21C(
図3参照)を撮影し、カメラ21dは、キャブ8の右側部に取り付けられ、車体の右方の範囲21D(
図3参照)を撮影するものである。
【0030】
図2に示すように、周囲監視コントローラ22は、カメラ21a〜21dによって撮影された映像を1つの映像に集約する処理を行う映像処理部23と、この映像処理部23によって処理された俯瞰映像から障害物の有無を判定する障害物判定部24と、この障害物判定部24の判定結果及び車体コントローラ9に入力される車体情報(車体の速度、シフトレバーの切替位置、及び操舵方向)IAに基づいて、車体の周囲に障害物が存在する旨の警報(以下、便宜的に周囲監視警報と呼ぶ)を行う必要があるかどうかの判定を行う警報判定部
(第1の警報判定部)25と、この警報判定部25の判定結果及び車体の速度に応じて、周囲監視警報を作動させるかどうかを判定する作動判定部26とを有している。
【0031】
映像処理部23は、カメラ21a〜21dによって撮影された映像を合成し、車体の上方から映した俯瞰映像として処理するようにしている。障害物判定部24は、映像処理部23によって処理された俯瞰映像を用い、例えば近接する2つの時刻の俯瞰映像の差分をとることにより、得られた映像の画素数が所定値以上であるとき、車体の周囲に障害物が存在すると判定し、その俯瞰映像を合成する前のカメラ21a〜21dの生の撮影映像の時間推移からダンプトラック1に対する障害物の相対位置及び相対速度を計測する。一方、障害物判定部24は、得られた映像の画素数が所定値未満であるとき、車体の周囲に障害物が存在しないと判定する。
【0032】
警報判定部25は、障害物判定部24によって車体の周囲に障害物が存在すると判定され、障害物の相対位置、相対速度、車体情報IAの車体の速度、シフトレバーの切替位置及び操舵方向から車体が障害物に衝突する可能性が高いと判断したとき、周囲監視警報を行う必要があると判定し、障害物の相対位置、相対速度、車体情報IAの車体の速度、シフトレバーの切替位置、及び操舵方向から車体が障害物に衝突する可能性が低いと判断したとき、周囲監視警報を行う必要がないと判定する。なお、シフトレバーの切替位置及び操舵方向から車体の進行方向が把握される。このように、警報判定部25による車体と障害物との衝突の可能性の判断に車体情報IAを用いることにより、きめ細かな判定結果が得られる。
【0033】
遠方監視部12は、例えば梯子8aの下部のフレームに取り付けられ、ミリ波帯の電波を車体の前方へ送信し、その反射波を受信して前方の物体を検知する
物体検知部としての遠方監視用ミリ波レーダ装置(以下、便宜的にミリ波レーダ装置と呼ぶ)30と、このミリ波レーダ装置30の検知結果に基づいて、車体から離れた遠方の監視動作を制御する遠方監視コントローラ31とを有している。ミリ波レーダ装置30は、
図3に示すように、カメラ21aの撮影範囲21Aよりも車体から電波が届く距離が長く、前方へ延伸する範囲30Aの物体を検知するものである。
【0034】
図2に示すように、遠方監視コントローラ31は、ミリ波レーダ装置30によって検知された物体が車体の走行を妨げる障害物であるかどうかを判定する障害物判定部32と、この障害物判定部32の判定結果及び車体コントローラ9に入力される車体情報IA(車体の速度、シフトレバーの切替位置、及び操舵方向)に基づいて、車体から離れた遠方に障害物が存在する旨の警報(以下、便宜的に遠方監視警報と呼ぶ)を行う必要があるかどうかを判定する警報判定部
(第2の警報判定部)33と、この警報判定部33の判定結果及び車体の速度に応じて、遠方監視警報を作動させるかどうかを判定する作動判定部34とを有している。
【0035】
障害物判定部32は、例えばミリ波レーダ装置30によって検知された物体の大きさを計測し、その物体の大きさが所定の大きさ以上であるとき、車体から離れた遠方に障害物が存在すると判定する。そして、障害物判定部32は、ダンプトラック1に対する障害物の相対位置及び相対速度を計測する。一方、障害物判定部32は、ミリ波レーダ装置30によって検知された物体の大きさが所定の大きさ未満であるとき、車体から離れた遠方に障害物が存在しないと判定する。
【0036】
警報判定部33は、障害物判定部32によって車体から離れた遠方に障害物が存在すると判定され、障害物の相対位置、相対速度、車体情報IAの車体の速度、シフトレバーの切替位置、及び操舵方向から車体が障害物に衝突する可能性が高いと判断したとき、遠方監視警報を行う必要があると判定し、障害物の相対位置、相対速度、車体情報IAの車体の速度、シフトレバーの切替位置、及び操舵方向から車体が障害物に衝突する可能性が低いと判断したとき、遠方監視警報を行う必要がないと判定する。このように、警報判定部25,33による車体と障害物との衝突の可能性の判断に車体情報IAを用いることにより、きめ細かな判定結果が得られる。
【0037】
そして、周囲監視コントローラ22及び遠方監視コントローラ31の作動判定部26,34は、監視切替部13として機能するものであり、例えば車体が加速して車体の速度が所定の速度(一例として、50m/sの高速)に達したとき、
すなわち、車体の速度が所定の速度以上である第1の車速になったとき、作動判定部26は周囲監視警報を作動させないと判定し、作動判定部34は遠方監視警報を作動させると判定することにより、遠方監視部12による監視
動作に切替えるようにしている。一方、車体が減速して車体の速度が所定の速度よりも低速になったとき、
すなわち、車体の速度が所定の速度よりも小さな第2の車速になったとき、作動判定部26は周囲監視警報を作動させると判定し、作動判定部34は遠方監視警報を作動させないと判定することにより、周囲監視部11による監視
動作に切替えるようにしている。
【0038】
すなわち、
図4に示すように、車体の走行状態が、車体が所定の速度以上で前進する状態(前方高速走行状態)にあるとき、周囲監視部11の監視機能がOFF状態、遠方監視部12の監視機能がON状態となり、車体の走行状態が、車体が所定の速度よりも低速で前進する状態(前方低速走行状態)にあるとき、周囲監視部11の監視機能がON状態、遠方監視部12の監視機能がOFF状態となる。また、車体の走行状態が、車体が停止した状態(停止状態)にあるとき、周囲監視部11の監視機能がON状態、遠方監視部12の監視機能がOFF状態となり、車体の走行状態が、車体が後退する状態(後退状態)にあるとき、周囲監視部11の監視機能がON状態、遠方監視部12の監視機能がOFF状態となる。
【0039】
報知部14は、例えば
図5に示すように、キャブ8内に取付けられたモニタ36と、このモニタ36の右上部に実装され、周囲監視警報及び遠方監視警報を音声で発するスピーカ37とから成っている。モニタ36は、例えば映像処理部23によって処理された俯瞰映像、周囲監視警報、及び遠方監視警報を表示するディスプレイ38と、このディスプレイ38及びスピーカ37の電源をON状態又はOFF状態に切替える電源スイッチ39とを有している。
【0040】
また、モニタ36のディスプレイ38に表示される俯瞰映像は、例えば車体の位置を中央の領域として示す表示領域41と、各カメラ21a〜21dの撮影範囲21A〜21D(
図3参照)に対応した領域を示す表示領域21A1〜21D1と、ミリ波レーダ装置30の検知範囲30Aに対応した領域を簡略化して示す表示領域30A1とから構成されている。
【0041】
モニタ36は、
図6(a)に示すように、作動判定部26が周囲監視警報を作動させると判定したとき、ディスプレイ38に表示された表示領域21A1〜21D1を点灯させる等の強調表示を行い、
図6(b)に示すように、作動判定部34が遠方監視警報を作動させると判定したとき、ディスプレイ38に表示された表示領域30A1を点灯させる等の強調表示を行うようにしている。
【0042】
さらに、モニタ36は、ディスプレイ38に表示された表示領域21A1〜21D1,30A1のうち障害物が存在する領域全体を点滅させる等の強調表示を行ったり、
図6(a)に示すように、車体からの障害物の位置を表すために、ディスプレイ38上で障害物が識別されるマーク42の表示を行うようにしている。なお、モニタ36は、例えば作動判定部26が周囲監視警報を作動させると判定したとき、あるいは作動判定部34が遠方監視警報を作動させると判定したときであっても、車体コントローラ9を介して操作者によるブレーキペダルの操作が確認された場合には、操作者が既に障害物との衝突を回避するための行動を起こしているので、周囲監視警報又は遠方監視警報を解除して報知しないようにしても良い。これにより、操作者に報知する必要がない余分な警報を抑制することができる。
【0043】
次に、本発明の第1実施形態に係る障害物検知装置10の動作を
図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0044】
ダンプトラック1のキャブ8内に搭乗した操作者は、モニタ36の電源スイッチ39をOFF状態からON状態に切替えると、障害物検知装置10が動作し、カメラ21a〜21dが撮影を開始すると共に、ミリ波レーダ装置30が電波を送信して車体の前方に存在する物体の検知を開始する(S100、U300)。なお、操作者によるシフトレバー及び操作ハンドル等の操作信号が車体コントローラ9に入力されると、車体コントローラ9は、車体の速度、シフトレバーの切替位置、及び操舵方向の車体情報IAを警報判定部25,33へ送信する。
【0045】
ここで、最初に障害物検知装置10の周囲監視部11の動作について詳細に説明する。
【0046】
手順S100において、カメラ21a〜21dが撮影を開始すると、映像処理部23は、カメラ21a〜21dによって撮影された映像を俯瞰映像として処理し、処理した俯瞰映像を障害物判定部24及びモニタ36へ出力する(S101)。そして、障害物判定部24は、映像処理部23から俯瞰映像を入力すると、入力した俯瞰映像を用いることにより、車体の周囲に障害物が存在するかどうかを判定する(S102)。
【0047】
このとき、障害物判定部24は、車体の周囲に障害物が存在すると判定すると(S102/YES)、俯瞰映像を合成する前のカメラ21a〜21dの生の撮影映像の時間推移からダンプトラック1に対する障害物の相対位置及び相対速度を計測し、計測結果を警報判定部25へ出力する。一方、手順S102において、障害物判定部24は、車体の周囲に障害物が存在しないと判定すると(S102/NO)、手順S100からの動作が繰り返される。
【0048】
次に、警報判定部25は、障害物判定部24から計測結果を入力すると、車体コントローラ9から車体情報IAを受信し、障害物の相対位置、相対速度、車体情報IAの車体の速度、シフトレバーの切替位置、及び操舵方向から車体が障害物に衝突する可能性を判断し、周囲監視警報を行う必要があるかどうかを判定する(S103)。このとき、警報判定部25は、車体が障害物に衝突する可能性が高いと判断し、周囲監視警報を行う必要があると判定すると(S103/YES)、車体情報IAを作動判定部26へ送信する。一方、警報判定部25は、車体が障害物に衝突する可能性が低いと判断したとき、周囲監視警報を行う必要がないと判定し(S103/NO)、手順S100からの動作が繰り返される。
【0049】
作動判定部26は、警報判定部25から車体情報IAを受信すると、車体情報IAの車体の速度を確認し、周囲監視警報を作動させるかどうかを判定する(S104)。このとき、作動判定部26は、車体の速度が所定の速度以上であることを確認すると、周囲監視警報を作動させないと判定し(S104/NO)、手順S100からの動作が繰り返される。手順S104において、作動判定部26は、車体の速度が所定の速度未満であることを確認すると、周囲監視警報を作動させると判定し、周囲監視警報を行う作動指令をモニタ36へ送信した後(S104/YES)、周囲監視部11の動作を終了する。
【0050】
次に、障害物検知装置10の遠方監視部12の動作について詳細に説明する。
【0051】
手順U300において、ミリ波レーダ装置30が電波を送信して車体の前方に存在する物体の検知を開始すると、障害物判定部32は、ミリ波レーダ装置30によって検知された物体の大きさを確認し、車体から離れた遠方に障害物が存在するかどうかを判定する(U301)。そして、障害物判定部32は、車体から離れた遠方に障害物が存在すると判定すると(U301/YES)、ダンプトラック1に対する障害物の相対位置及び相対速度を計測し、計測結果を警報判定部33へ出力する。手順U301において、障害物判定部32は、車体から離れた遠方に障害物が存在しないと判定すると(U301/NO)、手順U300からの動作が繰り返される。
【0052】
次に、警報判定部33は、障害物判定部32から計測結果を入力すると、車体コントローラ9から車体情報IAを受信し、障害物の相対位置、相対速度、車体情報IAの車体の速度、シフトレバーの切替位置、及び操舵方向から車体が障害物に衝突する可能性を判断し、遠方監視警報を行う必要があるかどうかを判定する(U302)。このとき、警報判定部33は、車体が障害物に衝突する可能性が高いと判断し、遠方監視警報を行う必要があると判定すると(U302/YES)、車体情報IAを作動判定部34へ送信する。一方、警報判定部33は、車体が障害物に衝突する可能性が低いと判断し、遠方監視警報を行う必要がないと判定すると(U302/NO)、手順U300からの動作が繰り返される。
【0053】
作動判定部34は、警報判定部33から車体情報IAを受信すると、車体情報IAの車体の速度を確認し、遠方監視警報を作動させるかどうかを判定する(U303)。このとき、作動判定部34は、車体の速度が所定の速度未満であることを確認すると、遠方監視警報を作動させないと判定し(U303/NO)、手順U300からの動作が繰り返される。手順U304において、作動判定部34は、車体の速度が所定の速度以上であることを確認すると、遠方監視警報を作動させると判定し、遠方監視警報を行う作動指令をモニタ36へ送信した後(S303/YES)、遠方監視部12の動作を終了する。
【0054】
次に、障害物検知装置10のモニタ36の動作について詳細に説明する。
【0055】
周囲監視部11の手順S101の動作が行われた後、モニタ36は、映像処理部23から俯瞰映像を入力すると、この俯瞰映像をディスプレイ38に表示する(T200)。次に、周囲監視部11の手順S104の動作及び遠方監視部12の手順U303の動作が行われた後、モニタ36は、周囲監視部11における作動判定部26から作動指令を受信したかどうかを判断する(T201)。
【0056】
このとき、モニタ36は、周囲監視部11における作動判定部26から作動指令を受信したと判断した場合には(T201/YES)、例えばディスプレイ38に表示された俯瞰映像の撮影領域21A1〜21D1を点灯させると共に、周囲監視警報をスピーカ37から音声で発し(T202)、モニタ36の動作を終了する。一方、モニタ36は、周囲監視部11における作動判定部26から作動指令を受信していないと判断した場合、すなわち遠方監視部12における作動判定部34から作動指令を受信したと判断した場合には(T201/NO)、モニタ36は、例えばディスプレイ38に表示された俯瞰映像の検知領域30A1を点灯させると共に、遠方監視警報をスピーカ37から音声で発し(T203)、モニタ36の動作を終了する。
【0057】
このように構成した本発明の第1実施形態に係る障害物検知装置10によれば、周囲監視部11によるカメラ21a〜21dを用いた車体の周囲の監視、及び遠方監視部12によるミリ波レーダ装置30を用いた車体から離れた遠方の監視のように、2つの異なる監視機能を備えている。そのため、周囲監視コントローラ22及び遠方監視コントローラ31の各作動判定部26,34が、車体の速度に応じて、これらの監視機能のON・OFF状態を適宜切替えることにより、車体の走行状況に適した監視を行うことができる。すなわち、カメラ21a〜21dとミリ波レーダ装置30の全てを用いて同時に監視することがないので、本来、障害物ではない地形上の凹凸を障害物として検知する誤動作が生じたり、あるいは2つの異なる監視機能が作動することに伴って衝突の可能性が低い障害物を検知する不要な動作が生じるのを抑制することができる。これにより、車体の速度に拘わらず、車体に接近する障害物を的確に検知できるので、高い信頼性を得ることができる。
【0058】
また、本発明の第1実施形態に係る障害物検知装置10は、車体の速度が所定の速度以上のときには、
図3に示すように、カメラ21aの撮影範囲21Aよりも車体からの検知範囲30Aが長いミリ波レーダ装置30を用いて車体の前方を監視することにより、対向車両等のダンプトラック1と衝突する可能性が高い障害物を早い段階で把握することができる。そのため、操作者は、遠方監視警報をモニタ36で確認すると、車体の走行に伴って接近する障害物に対して、車体の速度を落としたり、あるいは車体の進行方向を変更する等の対応を余裕を持って行うことができる。
【0059】
一方、車体の速度が所定の速度未満のときには、カメラ21a〜21dを用いて車体の周囲を監視することにより、車体の周囲の障害物の存在を十分に把握することができる。そのため、操作者は、周囲監視警報をモニタ36で確認すると、
図6(a)に示すように、モニタ36のディスプレイ38に表示された俯瞰映像のマーク42から障害物の位置を容易に把握できるので、障害物と接触しないように車体を安全に動かすことができる。特に、操作者は、ダンプトラック1の運転中にモニタ36のディスプレイ38を常に監視し続けることはできないが、周囲監視警報又は遠方監視警報がスピーカ37から音声で伝達されることにより、車体に接近する障害物の存在に容易に気付くことができる。
【0060】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る障害物検知装置50では、上述した第1実施形態の構成に加え、
図8に示すように、周囲監視コントローラ52及び遠方監視コントローラ55の作動判定部53,56は、車体が加速して車体の速度が所定の速度に達し、かつ車体の進行方向が車体の前後左右の所定の方向であるとき、遠方監視部54による監視
動作に切替えると共に、カメラ21a〜21dのうち一部のカメラを作動させて周囲監視部51による一部の監視
動作を維持するようにしている。
【0061】
具体的には、例えば車体が加速して車体の速度が所定の速度に達し、かつ車体の進行方向が前進方向であるとき、作動判定部53は周囲監視警報を作動させないと判定し、作動判定部56は遠方監視警報を作動させると判定することにより、遠方監視部54による監視
動作に切替えると共に、周囲監視部51は、カメラ21a〜21dのうち車体の後方、左方、及び右方を撮影するカメラ21b〜21cを作動させて車体の周囲のうち後方、左方、及び右方に障害物が存在する旨の警報(以下、便宜的に周囲一部監視警報と呼ぶ)を作動させると判定することにより、周囲監視部51による一部の監視
動作を維持するようにしている。
【0062】
すなわち、
図9(a)に示すように、車体の走行状態が、車体が所定の速度で前進する状態(前方高速走行状態)にあるとき、周囲監視部51の監視機能のうち前方に対する監視機能がOFF状態、後方、左方、及び右方に対する監視機能がON状態、遠方監視部54の監視機能がON状態となり、車体の走行状態が、車体が所定の速度よりも低速で前進する状態(前方低速走行状態)にあるとき、周囲監視部51の監視機能がON状態、遠方監視部54の監視機能がOFF状態となる。また、車体の走行状態が、車体が停止した状態(停止状態)にあるとき、周囲監視部51の監視機能がON状態、遠方監視部54の監視機能がOFF状態となり、車体の走行状態が、車体が後退する状態(後退状態)にあるとき、周囲監視部51の監視機能がON状態、遠方監視部54の監視機能がOFF状態となる。
【0063】
また、作動判定部53,56は、例えば車体が加速して車体の速度が所定の速度に達し、かつ車体の進行方向が左方向又は右方向であるとき、作動判定部53は周囲監視警報を作動させないと判定し、作動判定部56は遠方監視警報を作動させると判定することにより、遠方監視部54による監視
動作に切替えると共に、カメラ21a〜21dのうち、車体の後方及び左方、又は後方及び右方を撮影するカメラを作動させて車体の周囲のうち後方及び左方、又は後方及び右方に障害物が存在する旨の警報(以下、便宜的に上述と同様の周囲一部監視警報と呼ぶ)を作動させると判定することにより、周囲監視部51による一部の監視
動作を維持するようにしている。
【0064】
すなわち、
図9(b)に示すように、車体の走行状態が、車体が所定の速度以上で左方向へ走行する状態(左方高速走行状態)にあるとき、周囲監視部51の監視機能のうち前方及び右方に対する監視機能がOFF状態、後方及び左方に対する監視機能がON状態、遠方監視部54の監視機能がON状態となり、車体が所定の速度以上で右方へ走行する状態(右方高速走行状態)にあるとき、周囲監視部51の監視機能のうち前方及び左方に対する監視機能がOFF状態、後方及び右方に対する監視機能がON状態、遠方監視部54の監視機能がON状態となる。障害物検知装置50のその他の構成は、第1実施形態に係る障害物検知装置10の構成と同様であるので、重複する説明を省略し、障害物検知装置10の構成と同一の部分には同一の符号を付している。
【0065】
次に、本発明の第2実施形態に係る障害物検知装置50の動作を
図10のフローチャートに基づいて説明するが、上述した障害物検知装置10の手順S100〜S104、T200〜T203、及びU300〜U303の動作については同様であるので、重複する説明を省略し、障害物検知装置10の動作と異なる部分のみ説明する。
【0066】
まず、障害物検知装置50の周囲監視部51の動作について詳細に説明する。
【0067】
手順S104において、作動判定部53は、周囲監視警報を作動させないと判定すると(S104/NO)、車体情報IAのシフトレバーの切替位置及び操舵方向を確認し、周囲一部監視警報を作動させるかどうかを判定する(S105)。このとき、作動判定部53は、周囲一部監視警報を作動させないと判定すると(S105/NO)、手順S100からの動作が繰り返される。一方、手順S105において、作動判定部53は、周囲一部監視警報を作動させると判定すると、周囲一部監視警報を行う作動指令をモニタ36へ送信した後(S105/YES)、周囲監視部51の動作を終了する。
【0068】
次に、障害物検知装置50のモニタ36の動作について詳細に説明する。
【0069】
手順T201において、モニタ36は、周囲監視部51における作動判定部53から作動指令を受信していないと判断した場合(T201/NO)、周囲監視部51における作動判定部53から周囲一部監視警報の作動指令を受信したかどうかを判断する(T210)。このとき、モニタ36は、作動判定部53から周囲一部監視警報の作動指令を受信していないと判断した場合、すなわち遠方監視部54における作動判定部56から作動指令を受信したと判断した場合には(T210/NO)、手順T203の動作を行い、モニタ36の動作を終了する。
【0070】
一方、モニタ36は、作動判定部53から周囲一部監視警報の作動指令を受信したと判断した場合(T210/YES)、例えばディスプレイ38に表示された俯瞰映像の表示領域21A1〜21D1,30A1のうち監視機能が有効な領域を点灯させると共に、遠方監視警報及び周囲一部監視警報をスピーカ37から音声で発し、モニタ36の動作を終了する。
【0071】
このように構成した本発明の第2実施形態に係る障害物検知装置50によれば、上述した第1実施形態に係る障害物検知装置10と同様の作用効果が得られる他、車体の速度が所定の速度以上であり、さらに車体の進行方向が車体の前進方向であるときには、カメラ21aの撮影範囲21Aよりも車体からの検知範囲30Aが長いミリ波レーダ装置30を用いて車体の前方を監視すると共に、カメラ21b〜21dが車体の進行方向に対して死角となり易い範囲21B〜21Dを撮影して車体の周囲のうち前方以外の方向を監視している。そのため、例えばダンプトラック1の後方から追い越しを図ろうとする車両が存在する場合には、この追い越し車両が撮影範囲21B〜21Dに進入した時点で周囲一部監視警報が行われるので、操作者が車体の前方から接近する障害物だけでなく、追い越し車両の存在にも容易に気付くことができる。
【0072】
また、本発明の第2実施形態に係る障害物検知装置50は、車体の速度が所定の速度以上であり、さらに車体の進行方向が車体の左方向又は右方向であるときには、カメラ21aの撮影範囲21Aよりも車体からの検知範囲30Aが長いミリ波レーダ装置30を用いて車体の前方を監視すると共に、カメラ21b〜21dが車体の進行方向と同じ向きの方向を含む範囲21B〜21Dを撮影して監視している。そのため、操作者が操作ハンドルを操作して車体の進行方向を左方向又は右方向へ変更する際に、操舵を行う操作者に車体の左方又は右方に存在する障害物への注意を喚起することができ、車体と障害物との接触を十分に回避することができる。
【0073】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る障害物検知装置60は、第1実施形態に係る障害物検知装置10の報知部14としてのモニタ36及びスピーカ37の代わりに、例えば
図11に示すように、周囲監視部11及び遠方監視部12の監視結果を外部へ送信する無線機400を備えている。この場合には、無線機400によって送信された監視結果は、ダンプトラック1の状態を遠隔的に監視する管制システム501の無線機500に伝達され、管制システム501内において管理される。障害物検知装置60のその他の構成は、第1実施形態に係る障害物検知装置10の構成と同様であるので、重複する説明を省略し、障害物検知装置10の構成と同一の部分には同一の符号を付している。
【0074】
このように構成した本発明の第3実施形態に係る障害物検知装置60によれば、上述した第1実施形態に係る障害物検知装置10と同様の作用効果が得られる他、管制システム501側からダンプトラック1の操作者に指示を行ったり、あるいはダンプトラック1が無人機として動作する場合には、無線機400,500を介して車体コントローラ9に対して制御指令を行うことにより、車体と障害物との衝突を十分に回避することができる。これにより、車体に接近する障害物に対して、充実した監視体制を図ることができる。
【0075】
また、無線機400によって送信される周囲監視部11及び遠方監視部12の監視結果として、例えば車体の識別番号や障害物の検知結果を用いることにより、送信データ量を抑えることができるので、障害物検知装置60と管制システム501との通信にかかる負担を軽減することができる。なお、障害物検知装置60と管制システム501との通信が確保できる環境であれば、通信方式は、上述した無線機400,500による無線通信に限定されるものではない。
【0076】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る障害物検知装置70は、第1実施形態に係る障害物検知装置10の報知部14としてのモニタ36及びスピーカ37の代わりに、例えば
図12に示すように、周囲監視部11及び遠方監視部12の監視結果を車体コントローラ72へフィードバックするように構成されている。
【0077】
具体的には、ダンプトラック71は、例えば図示されないが、ベッセル2の積載量を計測する積載量計測センサと、車体が走行する路面の勾配を計測する勾配計測センサと、前輪6及び後輪7と路面との路面摩擦を計測する路面摩擦計測センサとを備えている。また、車体コントローラ72は、車体の速度及び操舵方向の他に、車体情報IBとして、積載量計測センサによって計測された積載量、勾配計測センサによって計測された勾配、及び路面摩擦計測センサによって計測された路面摩擦を入力するようにしている。
【0078】
そして、車体コントローラ72は、周囲監視部11及び遠方監視部12の作動判定部26,34の判定結果及び車体情報IBに応じて、車体の動作を制御する車体動作制御部73を備えている。この車体動作制御部73は、例えば作動判定部26が周囲監視警報を作動させると判定したとき、又は作動判定部34が遠方監視警報を作動させると判定したとき、フィードバックされた障害物の相対位置及び相対速度と、入力した車体情報IBの車体の速度、操舵方向、積載量、勾配、及び路面摩擦とに基づいて、ブレーキを強制的に掛けるブレーキ操作信号を出力したり、あるいは後輪7を回転させるモータ(図示せず)へ出力するトルク信号を制御するようにしている。すなわち、積載量、勾配、及び路面摩擦からブレーキの制動性能が把握されるので、ブレーキが掛かったときの制動距離を計測することにより、トルク信号の出力値を適切に設定することができる。
【0079】
このように構成した本発明の第4実施形態に係る障害物検知装置70によれば、上述した第1実施形態に係る障害物検知装置10と同様の作用効果が得られる他、作動判定部26が周囲監視警報を作動させると判定したとき、又は作動判定部34が遠方監視警報を作動させると判定したときに、操作者によるブレーキペダルの操作に拘わらず、車体動作制御部73によって後輪7に制動力を付与することにより、車体を迅速に停止させることができる。このように、ダンプトラック71に対して、障害物との衝突を回避する動作を自動的に実行させることができるので、周囲監視警報又は遠方監視警報が作動してから後輪7にブレーキを掛けるまでの応答性を高めることができる。
【0080】
なお、上述した本発明の第1〜4実施形態に係る障害物検知装置10,50,60,70では、周囲監視部11,51が、車体の周囲を撮影する4台のカメラ21a〜21dを有する場合について説明したが、カメラの台数は、この場合に限らず、適宜変更しても良い。また、車体の周囲に存在する障害物を検知するために、カメラ21a〜21dの代わりとして、例えば近距離用ミリ波レーダ、準ミリ波レーダ、及びレーザ等を用いても良いし、カメラとセンサ等を組み合わせて車体の周囲を監視しても良い。
【0081】
さらに、本発明の第1〜4実施形態に係る障害物検知装置10,50,60,70では、遠方監視部12,54が、車体の前方の物体を検知するミリ波レーダ装置30を有する場合について説明したが、ミリ波レーダ装置30の台数は、この場合に限らず、適宜変更しても良い。例えば、ミリ波レーダ装置30の台数を増加させることにより、遠方監視部12の監視範囲を拡大させることができる。この場合には、ミリ波レーダ装置30の台数に応じて、モニタ36のディスプレイ38上の表示領域が適宜設定される。また、車体から離れた遠方に存在する障害物を検知するために、ミリ波レーダ装置30の代わりとして、例えばカメラやレーザ等を用いても良い。
【0082】
また、本発明の第1〜4実施形態に係る障害物検知装置10,50,60,70では、報知部14は、周囲監視警報及び遠方監視警報を表示するモニタ36と、周囲監視警報及び遠方監視警報を音声で発するスピーカ37とから構成された場合について説明したが、この場合に限らず、報知部14は、スピーカ37やブザー等の音による警報装置のみから構成されても良い。さらに、車体に接近する障害物の位置や車体と障害物との衝突の可能性に応じて、これらの警報装置の音質や音量を変化させることにより、ダンプトラック1,71を操作する操作者に対して段階的な注意喚起が可能となるので、優れた監視性能を得ることができる。