特許第6134729号(P6134729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6134729種々の医学的状態を診断する際の動脈脈波を監視するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134729
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】種々の医学的状態を診断する際の動脈脈波を監視するための装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   A61B5/02 AZDM
   A61B5/02 310N
【請求項の数】25
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-542995(P2014-542995)
(86)(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公表番号】特表2015-501696(P2015-501696A)
(43)【公表日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】IL2012050466
(87)【国際公開番号】WO2013076722
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2015年11月12日
(31)【優先権主張番号】61/563,574
(32)【優先日】2011年11月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502319626
【氏名又は名称】イタマール メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】シュナル, ロバート ピー.
(72)【発明者】
【氏名】シェフィー, ヤコブ
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−515789(JP,A)
【文献】 特開昭61−234841(JP,A)
【文献】 米国特許第05218966(US,A)
【文献】 特表2004−528052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 − 5/01
A61B 5/02 − 5/03
A61B 5/06 − 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の動脈脈波を監視するための装置であって、前記装置は、
前記被験者の肢のプローブ受け入れ指に付与するためのプローブであって、その中の前記動脈脈波からの信号を測定するためのプローブと、
前記プローブに取り付け可能な流体案内供給管と、
前記肢の支持指の上に受け入れ可能である分離リングであって、前記供給管をそこに固定して支持するように構成された分離リングと
を含み、
前記分離リングは、前記プローブ受け入れ指に隣接する少なくとも一つの指から前記プローブを遠ざけて、それらの間の接触を防止するように寸法決定されており、
前記分離リングは、介在隙間を持つ、複数の長手方向に延びる、周囲に間隔を置かれた突起を持って形成されている内部表面を有し、
前記突起は、前記供給管を前記支持指の上に支持するために十分な弾性を有し、かつ静脈及び動脈血液の両方の流れが前記支持指において悪影響されないことを確保するために十分低いレベルの局所化された力を付与するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記プローブは、管状ソケット及び圧力付与器を含み、前記圧力付与器は、静圧場を、前記流体供給管を介して付与して、前記プローブの前記管状ソケット中に受け入れられた、前記プローブ受け入れ指の最外先端を含む前記プローブ受け入れ指の少なくとも末梢指骨を囲み、そして中断された閉塞圧力場を、前記少なくとも末梢指骨に、または前記少なくとも末梢指骨と被験者の心臓の間の領域に付与するように構成されており、前記装置は、前記プローブ受け入れ指を通って流れる動脈脈波から生じる動脈脈波信号を測定するために前記プローブによって少なくとも部分的に担持される測定装置の出力に応答して前記閉塞圧力場及び静圧場を計算するための処理器をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
閉塞カフによって付与されるべき前記中断された閉塞圧力場は、前記最外先端と前記被験者の心臓の間の領域に付与されるべきであり、前記分離リングは、柔軟な材料からなり、かつ前記プローブ受け入れ指に、前記プローブ受け入れ指に隣接する指に、または前記プローブ受け入れ指にまたがる二つの指に付与されるように寸法決定されていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記圧力付与器は、静圧場を、前記プローブ受け入れ指に、及び第二プローブ受け入れ指に取り付け可能な第二プローブに付与するように構成されており、前記指は、前記被験者の別個の肢の上にあることを特徴とする請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記流体案内供給管は、前記供給管を身体表面上に上昇させるように、前記プローブ受け入れ指の背面に面するように構成された前記分離リングの側面上の前記突起の側方に前記分離リングを通して長手方向に形成された孔を貫通することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記分離リングは、流体案内供給管を除去可能に受け入れるための管保持器を除去可能に受け入れる溝を外部壁に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記分離リングは、被験者の身体の指を受け入れるために一方の側または両側に、長手方向に延びる溝を外部表面に形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記処理器は、各閉塞前、各閉塞時、及び各閉塞後の予め決められた期間の間、前記動脈脈波を監視することによって前記閉塞圧力場及び静止圧力場を制御することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項9】
閉塞期間後の予め決められた時間期間の間の動脈脈波の振幅が、閉塞前の予め決められた時間期間の間の動脈脈波の振幅で割られて、閉塞部位比を与え、閉塞期間後の予め決められた時間期間の間の動脈脈波の振幅が、閉塞前の予め決められた時間期間の間の動脈脈波の振幅で割られて、非閉塞部位比を与え、前記閉塞部位比が、前記非閉塞部位比で割られて、修正比を与えること、及び前記修正比が、ベースライン振幅修正係数を掛けられて、ベースライン振幅修正比が与えられ、前記ベースライン振幅修正係数は、閉塞部位の閉塞時間期間の前の動脈脈波の振幅の予め決められた関数であることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記閉塞時間期間の前の閉塞部位の動脈脈波のベースライン振幅が、非閉塞部位の閉塞前の信号振幅で割られた非閉塞部位の閉塞後の信号振幅の比を掛けられて、一時的に調整されたベースライン振幅を与え、前記一時的に調整されたベースライン振幅が、前記ベースライン修正係数関数中に代入されて、一時的に調整されたベースライン修正係数を誘導し、そして前記修正比に掛けるために使用されて、それによって一時的に調整されたベースライン振幅修正比を誘導することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
予め決められた閉塞期間中の閉塞部位の動脈脈波の振幅が、少なくとも末梢指骨の対応する動脈脈波の振幅で、または閉塞部位の閉塞期間の前の動脈脈波の平均振幅で割られて、監視の質を類別して監視結果を修正するために効果的な不完全な動脈閉塞指数を与えることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項12】
予め決められた閉塞期間中の閉塞部位の動脈脈波の絶対的振幅が、監視の質を類別して監視結果を修正するために効果的な不完全な動脈閉塞指数を与えることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記処理器は、前記ベースライン振幅を、基準組織容積で割られたそれぞれの指の組織容積で割って、組織容積で調整されたベースライン振幅を与え、前記組織容積で調整されたベースライン振幅が、前記ベースライン修正係数関数中にさらに代入されて、組織容積で調整されたベースライン修正係数を誘導し、そして前記修正比に掛けるために使用されて、それによって組織容積で調整されたベースライン振幅修正比を誘導することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記処理器は、前記ベースライン振幅、または組織容積で調整されたベースライン振幅を、基準脈圧力値で割られた被験者の脈圧力で割って、脈圧力で調整されたベースライン振幅を与え、前記脈圧力で調整されたベースライン振幅が、前記ベースライン修正係数関数中にさらに代入されて、脈圧力で調整されたベースライン修正係数を誘導し、そして前記修正比に掛けるために使用されて、それによって脈圧力で調整されたベースライン振幅修正比を誘導することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記圧力付与器は、静脈貯留を実質的に防止するためにかつ末梢端を含むそれぞれの指内の動脈の壁緊張を部分的に緩和するが閉塞しないために十分な圧力を付与することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項16】
前記プローブからの信号を受け取って前記動脈脈波信号を示す出力を提供するための前記処理器は、被験者の増加指数を示す出力を提供することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項17】
前記修正比、ベースライン振幅修正比、組織容積で調整されたベースライン振幅修正比、及び脈圧力で調整されたベースライン振幅修正比に対数変換が適用されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記プローブ受け入れ指中の動脈脈波信号を測定するための前記プローブによって担持される前記測定装置の出力が、容積変化測定、光学密度測定、表面反射率測定、パルスオキシメトリー測定、電気抵抗測定、ドップラー超音波測定、レーザードップラー測定、フローメーター装置、分節プレチスモグラフ、周囲歪みゲージ装置、光学プレチスモグラフ、アイソトープ洗い出し装置、熱的洗い出し装置、温度測定、電磁装置、指幾何学形状または赤血球アラインメントまたは拍動容積変化と関連した流束の変化により影響を受けるセンサ、及びホール効果センサからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記流体案内供給管及び少なくとも一つの電気ワイヤーは、前記供給管だけでなく前記少なくとも一つのワイヤーも支持しかつつないで、それらを身体表面上に上昇させるために効果的であるように、前記プローブ受け入れ指の背面に面するように構成された前記分離リングの側面上の前記突起の側方に前記分離リングを通して長手方向に形成された孔に連結されるか、またはそれを貫通することを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記供給管及び少なくとも一つの電気ワイヤーをつないで身体表面上に上昇させることは、測定プローブ上の管またはワイヤーの引きずり、歪、または運動による前記プローブの機械的摂動を減少させるために効果的であることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記処理器は、前記プローブからの信号を受信し、前記信号に基づいて、被験者の末梢動脈緊張度を示す出力を提供するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項22】
被験者の動脈脈波を監視するための方法であって、前記方法は、
二つの管状ソケットプローブのそれぞれの中に、前記被験者のそれぞれのプローブ受け入れ指の少なくとも末梢指骨を、その先端を含めて挿入すること、
少なくとも一つの分離リングを、それぞれの支持指に、前記プローブ受け入れ指のそれぞれが支持指に隣接するように付与すること、ただし、前記付与することは、前記少なくとも一つの分離リングに、前記管状ソケットプローブの一つから通じる流体供給管を取り付けることを含む、
静圧場を、前記少なくとも末梢指骨のそれぞれに付与すること、
中断された閉塞圧力場を、前記プローブ受け入れ指のうちの一つの先端と前記被験者の心臓の間の領域に付与すること、及び
前記プローブ受け入れ指からの前記動脈脈波を測定すること
を含み、
前記少なくとも一つの分離リングは、前記供給管を前記支持指の上に支持するために十分な弾性を有し、かつ静脈及び動脈血液の両方の流れが前記支持指において悪影響されないことを確保するために十分低いレベルの局所化された力を付与するように構成されていることを特徴とする方法。
【請求項23】
前記プローブ受け入れ指は相互に、前記被験者の一つの肢に隣接していないこと、及び前記中断された閉塞圧力場は、前記プローブ受け入れ指の一つの領域に付与されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記プローブ受け入れ指は、前記被験者の対向する肢の上にあることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記動脈脈波の前記測定は、前記管状ソケットプローブによって担持される測定装置の使用を含み、前記測定装置の出力が、容積変化測定、光学密度測定、表面反射率測定、パルスオキシメトリー測定、電気抵抗測定、ドップラー超音波測定、レーザードップラー測定、フローメーター装置、分節プレチスモグラフ、周囲歪みゲージ装置、光学プレチスモグラフ、アイソトープ洗い出し装置、熱的洗い出し装置、温度測定、電磁装置、指幾何学形状または赤血球アラインメントまたは拍動容積変化と関連した流束の変化により影響を受けるセンサ、及びホール効果センサからなる群から選択されることを特徴とする請求項2224のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2011年11月24日に出願された米国特許仮出願第61/563574号の優先権の利益を主張するPCT出願であり、その内容は、参考としてそれらの全体をここに組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、種々の医学的状態を診断する際の動脈脈波を監視するための装置に関する。本発明は、米国特許第6319205号、第6322515号、第6488633号、第6939304号、第7374540号及び第7819811号、及び米国特許出願No.20080077024(全てが参考としてここに組み込まれる)に記載されたような、被験者の末梢動脈緊張度を測定するための方法及び装置に関して特に有用であり、従ってかかる装置及び方法に関して以下に説明されるが、本発明はまた、他の装置及び方法においても有利に使用されることができることは認められるだろう。
【背景技術】
【0003】
上記米国特許及び米国特許出願は、身体部分、例えば被験者の指(手の指または足の指)における拍動性動脈血液量の変化により表わされるように、末梢動脈緊張度の変化を監視することによる、被験者の医学的状態の非侵襲的検出のための種々のプローブ構造を含む装置及び方法を開示する。そこに述べられたようなプローブにより検出された種々の医学的状態は、心筋虚血、睡眠時無呼吸、内皮機能不全(ED)、睡眠障害、睡眠段階、精神ストレス、交感神経系反応性、血圧などを含む。そこに記載された好適な実施態様は、被験者の指における末梢動脈緊張度を監視するために特に有用であり、この目的のために、それらは、最末端の先端を含む被験者の指の末梢端の周りに実質的に均一に静圧場を付与するための加圧手段を含む。圧力場は、静脈血管の拡張、制御されていない静脈逆流、及び指の末梢端中への逆行する衝撃波伝播を実質的に防止するために、かつ心臓の高さまたはそれより低いときの指の末梢端における動脈の壁緊張を部分的に緩和するが閉塞しないために十分な予め定められた大きさのものである。プローブセンサは、動脈緊張度に関連する瞬間血液量における拍動変化によるその容量の変化に関連する被験者の指(手の指または足の指)の末梢端の変化を感知する。
【0004】
かかるプローブの構造、及びそれらが使用されることができる種々の医学的状態に関するさらなる詳細は、上記米国特許及び米国特許出願で入手可能である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、かかる装置及び診断法を次の一つ以上の点で改善することである:装置及び方法の性能及び/または精度、獲得したデータの解釈、及び/または装置を使用する容易性または方法を実施する容易性。
【0006】
おそらく本発明に最も関連しているのは、米国特許第6939304号(以下、‘304特許)であり、それは、一対の上肢、一対の下肢、及び前記肢のそれぞれの上の複数の指を持つ被験者の動脈脈波を監視するための装置に関するものであって、その装置は、以下のものを含む;
一つの肢上に、前記複数の指の最外方先端を含む指の少なくとも末梢指骨に付与するための少なくとも一つの管状ソケットプローブ;
流体案内供給管を介して、静圧場を前記一つの肢内の前記末梢指骨に付与するための圧力付与器;及び
前記一つの肢内の前記少なくとも一つの指の前記末梢指骨を通して流れる動脈脈波からもたらされる動脈脈波信号を測定するための前記管状ソケットプローブによって少なくとも部分的に支持される測定装置。
【0007】
好ましくは、静圧場は、最末梢指骨を囲む端キャップ、及び接触管状カフを含む指ぬき形状のプローブによって付与される。
【0008】
本発明の広い態様によれば、かかる装置は、前記装置が複数の分離リングをさらに含み、それらの少なくとも一つが、前記指の少なくとも一つの上に受け入れ可能であり、前記指に前記流体供給管をつなぐために前記流体供給管を前記指に固定する。前記少なくとも一つの分離リングは、柔軟な材料のもの、中断されていない管状形状のもの、そして分離リングが受け入れられる指の太さにかかわらず前記管状ソケットプローブと隣接指の間の接触を防止するように前記隣接指から付与された管状ソケットプローブを遠ざけることを可能にするのに十分な弾性と厚さを持つものである。
【0009】
特に、圧力付与器は、静圧場を、流体供給管を介して、少なくとも一つの指の前記少なくとも末梢指骨に付与し、そして中断された閉塞圧力場を、前記少なくとも一つの末梢指骨と被験者の心臓の間の領域に付与するように構成されており、この装置はさらに、前記少なくとも一つの測定装置の出力に応答して前記閉塞圧力場及び静圧場を計算するための処理器を含む。
【0010】
本発明の別の態様によれば、中断された閉塞圧力場は、前記一対の肢内の前記肢の一つの上の閉塞カフによって付与されるべきであり、前記分離リングは、前記プローブを受ける指に、または前記プローブを受ける指にまたがる二つの指に付与されるように設計されている。
【0011】
本発明の一つの特徴によれば、各分離リングの内部表面は、前記指の指骨の寸法にかかわらず、それが付与されている指へのまたは指からの血液供給と分離リングとの干渉を減少するために効果的な介在隙間を持つ、複数の長手方向に延びる、周囲に間隔を置かれたリブを持って形成されている。従って、この特徴は、散在した隙間により均一に間隔を置かれた多数のくさび状突起で分離リングを指の周囲に係合させ、あるレベルの局所化された力を付与して、
a)静脈及び動脈血液の両方の流れが悪影響されないことを確保し、
b)指の周囲に渡る身体表面への均一に間隔を置かれた連結を確保し、
c)指に不都合な圧力を付与することなく、母集団の正常な解剖学的範囲をカバーする指寸法の範囲にそれを適合し、かつ
d)指への安定かつ丈夫な連結を容易にする。
【0012】
本発明の別の特徴によれば、流体案内供給管は、供給管を支持しかつつなぐだけでなく、それを身体表面上に上昇させるように、末梢プローブが付与される指の外部背面に面する前記分離リングの側面上の、長手方向に延びる、周囲に間隔を置かれたリブの側方に各分離リングを通して前記長手方向に形成された孔に連結されるか、またはそれを貫通する。
【0013】
さらなる特徴によれば、前記装置は、流体案内供給管と管状ソケットプローブの間に安定であるが可逆的な気密シールを形成するようにそれぞれの管状ソケットプローブに取り外し可能に取り付けられるように設計された流体案内供給管のための取り付け部材、及び前記要素を安定な態様で固定及びロックするように相互作用するロック要素をさらに含む。
【0014】
さらに別の特徴によれば、装置は、前記一つの肢を支持するためのかつその指への付与時に管状プローブを一時的に支持するための少なくとも一つの肢支持体をさらに含む。
【0015】
別の特徴によれば、処理器は、各閉塞前、各閉塞時、及び各閉塞後の予め決められた期間の間、前記動脈脈波を監視することによって前記閉塞圧力場及び静止圧力場を制御する。
【0016】
別の特徴によれば、処理器は、測定装置から受け取った信号をそれぞれの指の組織容積に対して正規化する。
【0017】
別の特徴によれば、処理器は、非閉塞部位から同時に記録された信号で閉塞部位から受け取った信号を正規化し、かつ応答比を決定する。
【0018】
さらに別の特徴によれば、処理器は、閉塞前の信号振幅に従って応答比を修正する。
【0019】
本発明は、圧力付与器が静脈貯留を実質的に防止するためにかつ末梢端を含むそれぞれの指内の動脈の壁緊張を部分的に緩和する(しかし閉塞しない)ために十分な圧力を付与する場合、特にそれが被験者の増加指数を示す出力を提供する場合に特に有用であるが、それらに限定されない。
【0020】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の記述から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本明細書では、添付図面を参照して本発明を単なる例示で説明する。
【0022】
図1図1は、本発明による改善を示す装置の変形例を示す。
【0023】
図2図2は、本発明による改善を示す装置の変形例を示す。
【0024】
図3図3は、本発明による改善を示す装置の変形例を示す。
【0025】
図4図4は、図1〜3の装置のさらなる変形例を示す。
【0026】
図5図5は、図1〜3の装置のさらなる変形例を示す。
【0027】
図6図6は、図1〜3の装置のさらなる変形例を示す。
【0028】
図7図7は、図1〜3の装置のさらなる変形例を示す。
【0029】
図8図8は、図1〜7の装置で使用するための本発明により構成された分離リングの形を示す。
【0030】
図9図9は、図1〜7の装置で使用するための本発明により構成された分離リングの形を示す。
【0031】
図10図10は、本発明による分離リングのさらなる構成を示す。
【0032】
図11図11は、本発明により構成された別の変形例を示し、プローブを示す。
【0033】
図12図12は、本発明により構成された別の変形例を示し、管保持器を示す。
【0034】
図13図13は、本発明により構成された別の変形例を示し、プローブと管保持器の組み立て体を示す。
【0035】
図14図14は、本発明により構成された別の変形例を示し、プローブと管保持器の組み立て体、及び分離リングを示す。
【0036】
図15図15は、本発明による指プローブのための取り付けを含む腕支持体を示す。
【0037】
図16図16は、本発明による血液の測定部位への供給を一時的に閉塞するための別の手段を示す。
【0038】
図17図17は、本発明によるベースライン修正を行う改善された態様を示す。
【0039】
図18図18は、図17の変形例に関連した相関図を示す。
【0040】
図19図19は、図17の変形例に関連した相関図を示す。
【0041】
図20図20は、本発明によるベースライン修正を提供するために組織容積を測定するための改善された装置に含まれることができる指寸法測定装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
上記図面及び以下の記述は、主に、本発明の概念的な側面、及び好ましい実施態様であると現在考えられているものを含むその可能な実施態様の理解の容易のために与えられていることは理解されるべきである。明確さ及び簡潔さのため、当業者がありふれた技術及び設計を使用して記述された本発明を理解して実施可能にするのに必要である以上に詳細な説明を与える試みはなされていない。さらに、記述された実施態様が例示のみを目的としており、本発明がここに記述する以外の他の形態及び応用において具体化されることができることが理解されるべきである。
【0043】
図1〜4は、本発明による改善を示す被験者の動脈脈波を監視するための従来技術の装置の一つの形での四つの変形例を概略的に示す。かかる従来技術の装置は、例えば、上で引用された米国特許第6939304号(以下、‘304特許)に記載され、かかる変形例の最初の三つが特にその特許の図3〜5に示されている。
【0044】
簡単に言うと、図1に示された従来技術の装置は、一般的に10で示された圧力付与器を含み、それは、被験者の身体の肢13の指12の末梢指骨を受けるための管状ソケットプローブ11;及び供給管15の分岐15aを介して、一般的に管状ソケットプローブ内に受けられたとき、指12の末梢先端を含む、少なくとも末梢指骨の周りに静圧場を付与し、かつ少なくとも末梢指骨と被験者の心臓との間の領域に、または前記圧力付与器10自体内に中断された閉塞圧場を付与するための圧力源14を持つ。管状ソケットプローブ11はさらに、少なくとも末梢指骨において動脈血液脈波からもたらされる脈波信号を測定するための、16で概略的に示された脈波測定装置、及び測定装置からの信号を受け、閉塞場及び静圧場を制御するための処理器17を含む。中断された閉塞場は、図1の18で示された閉塞カフによって作られる。
【0045】
上で引用された米国特許に記述されたように、かかるプローブは、幅広い種類の医学的状態を検出するのに有用であり、かつ光学密度または表面反射率装置、パルスオキシメーター、電気抵抗装置、ドップラー超音波装置、レーザードップラー装置または他のフローメーター装置、分節プレチスモグラフ、周方向歪みゲージ装置、光学プレチスモグラフ、アイソトープ洗い出し装置、熱的洗い出し装置、電磁装置、及び指幾何学形状または赤血球アラインメントまたは拍動容積変化と関連した流束の変化により影響を受けるいかなる他のセンサ、ホール効果センサなどの容積変化測定以外の多くのタイプの血液脈センサを利用することができる。
【0046】
図1〜3は、分離リング20を与えることにおける本発明の一つの改善を示し、この分離リング20は、少なくとも一つの流体圧供給管の分岐または複数の分岐15a/15bをそれに解放可能にまたは永続的に固定し、測定装置16を指12に、そしてプローブ10につなぐ。分離リング20は、柔軟な材料のもの、中断されていない管状形状のもの、そして隣接指の末梢指骨から異なる厚さの末梢指骨を遠ざけることを可能にするのに十分な弾性と厚さのものである。
【0047】
図1は、動脈閉塞の予め定められた期間に対して動脈応答を決定するための装置を示す。図1に示された装置では、プローブ11は、腕13または脚のそれぞれ右及び左側の指に付与されている。試験時に、一方の側のみが、カフ18を介して付与された超収縮期圧力場の付与によって影響を受ける動脈閉塞の期間に被験されるが、反対の側は、閉塞されていない対照として作用し、それぞれのプローブから誘導された同時に記録されたデータは、図17に関して以下に記述された態様で処理される。
【0048】
図2は、上述の装置の変形例を示し、カフ18によって付与されている閉塞圧力場の代わりに、それは、圧力供給管15を介してプローブ11の一つによって少なくとも末梢指骨に直接付与される。この場合、15a/15bとして示された圧力管は、閉塞の期間中、図1でカフ18によって付与されたものに等しい超収縮期圧力場がプローブ内に付与されるように閉塞圧力を導き、一方、試験の休みの時には、同じ閉塞していない静圧力場が両プローブに付与される。
【0049】
図3は、この場合、同じ肢の指がそれぞれ閉塞部位及び非閉塞部位として作用することを除いて、図2に示された構成と同一のさらなる構成を示す。
【0050】
図4は、動脈閉塞の予め定められた期間に対する動脈応答を決定するためのさらなる装置を示す。図4に示されたこの装置では、プローブ11は、被験者の一つの腕13の指12(例えば人指し指)に付与され、中断された閉塞圧力場は、カフ18によって腕13の上端に付与される。静圧力場は、プローブ11によって付与され、分離リング20は、プローブを受ける指に隣接した指12(例えば手の指)上に受けられるように設計されている。
【0051】
図5及び6は、図5では、分離リング20がプローブ11の近くに間隔を置かれており、かつ図6では、分離リングがプローブに対して付与されていることを除いて、図4の装置と同様の装置を示す。
【0052】
図7は、二つの分離リングがプローブ11を持つ指をまたいで二つの指に付与されている、さらなる装置を示す。
【0053】
図8に示されたように、分離リング20は、長方形断面20を持つトーラスの形のものであることができる。それは、被験者の身体の指(例えば手の指)を受けるための内部内腔21を規定する中空管状構成のものであり、かつ管状プローブ10に加圧空気を供給する管(図1)を受けるための通路を規定する複数の穴22を形成されている。図8はまた、指の周囲に渡って身体表面への均一に間隔を置いた結合を提供しながら、静脈及び動脈血液の両方の流れが悪影響を受けないことを確保するために効果的な、均一に間隔を置かれた多数のくさび状突起23を規定する、長手方向に延びる、周囲に間隔を置かれたリブを示す。分離リングは、母集団の標準解剖学的範囲にある寸法の範囲の指に付与可能である。
【0054】
図9は、変更例を示し、そこでは一般的に120で示された分離リングが長方形断面を持つトーラスの形のものであり、かつ図8の要素21,22及び23のそれぞれに対応する同じ要素121,122及び123を持って形成されているが、さらに図4〜7に示されるように、隣接する手の指(単数または複数)(または足の指(単数または複数))12を収容するために、隣接する手の指(単数または複数)に面する一方の側または両方の側のその外表面上に溝124を形成されている。かかる溝は、隣接する指(単数または複数)を安定化するのを助け、従って指の潜在的動きをさらに減少し、信号安定性を改善する。
【0055】
図8または図9の分離リングは、プローブ11が上に置かれている指に隣接した指の基部指骨上に、またはプローブ11が指の末梢指骨を覆って置かれながら、プローブに対してある距離で、またはそれに直接接触してのいずれかで同じ指上に置かれることができる。また、見ることができるように、プローブに供給する管15は、分離リングによって支持され、身体表面の上に上昇される。管は、プローブと分離リングの間に弧を形成することができるか、または示されたように直線経路に従う。
【0056】
従って、空気管つなぎ機能は米国特許第6319205号に記述されているが、そこの図8に示されたように、この目的を達成するために記述された手段が、器具を取り付けた指の真上の場所に管を保持していることがわかるだろう。本出願では、この機能は好ましくは新規な指分離器120と一体化された態様で達成され、そこでは管つなぎ機能は指分離器と一体化され、さらに管を組織の上に上昇する役割を有し、それにより身体との接触による管の望ましくない摂動を避ける。これは、図8及び9に示された指分離器の母体内に形成された管穴を使用することによって達成されることができる。
【0057】
図10は、一般的に220で示された分離リングが指(手の指または足の指)上に受けられた管状プローブと一体化されている構成の変更例を示す。一体化された指プローブ/分離リング220はまた、221で示されたように中空内部を含み、かつ図8及び図9の突起23及び123に相当するくさび突起223を持って形成されている。
【0058】
図10では、流体管(図1の15)は、管状プローブ/分離リング220に取り付けられた保持器224上に支持され、かつ保持器224の上面に形成された長手方向に延びる溝222を含む。
【0059】
上に述べた構成の全てにおいて、管は、つなぎ手段によってしっかりと保持され、従ってつなぎ部位から遠い管の機械的摂動がプローブに伝導されるのを防止される。同様に、上述の構成の全ては、図4〜7に示されたプローブ支持指に対していずれかの場所で付与されたとき、隣接する指と、プローブが取り付けられている測定される指上の管状ソケットプローブの間の直接接触、またはそれぞれ隣接する指のいずれかの部分の間の直接接触が避けられるように隣接する指(単数または複数)を物理的に分離しかつ遠ざける役割を有する。プローブを取り付けた指と隣接指(手の指(単数または複数))の間の可能な接触の回避は、測定された信号の品質をひどく低下することがあり得るプローブの機械的摂動を排除する役割を有する。
【0060】
測定プローブの性能及び使用の容易さを改善するために設計された別の特徴は、システムの加圧流体供給管の指プローブへの迅速な可逆連結のための特別な手段である。この機能は、安定かつ気密的な連結を確保しながら、最少のオペレーター努力または技術熟練しか必要としない態様で迅速かつ容易に実行される加圧流体管連結を可能にする。この管連結手段のさらなる特徴は、それが固定され、秩序づけられ、かつ安定な配置で管の端部を固定すること、及びそれが身体表面の上に上昇することである。
【0061】
図11〜14は、加圧流体管15を取り付けるための二つの主要構成要素、すなわち図11に一般的に310で示された管状ソケットプローブ、及び図12に一般的に320で示された管保持器を含む、かかる構成を示す。管状ソケットプローブ310は、被験者の手の指または足の指を受けるための中空内部311、及び加圧流体(例えば空気)をプローブの内部区画中に案内するための入口312で終了する流体案内通路を形成されている。前述に加えて、プローブ310は、その上面上に、概略的に315で示されたラッチを一端に持ち、概略的に316で示されたロック要素を反対端に持って形成された取り付け部材314を持つ。
【0062】
図11〜14に示された装置は、電気ヒーター、光学プレチスモグラフ、温度センサなどの電気装置をさらに含むときに特に有用である。かかる場合には、プローブ310は、電気装置のための概略的に317で示された電気接点を含むだろう。同様に、管保持器320はまた、管保持器が一体化リングに付与されるときに電気接点317と係合するために概略的に327で示された電気接点を含むだろう。電気接点327が連結されている電気伝導体は、図12に概略的に321で示されている(図1〜7を含めて19で示されている)。図12はまた、一体化されたリング310内の口312に結合される加圧流体口322、一体化されたリングのラッチ315と共働するラッチング要素325、及び一体化されたリングのロック要素316と係合するロック要素326を概略的に示す。
【0063】
図11は、空気入口312が硬いわずかに溝付きの突起の形のものであるときのプローブ310を示す。内部凹所内のラッチ315、及び一体化されたリングの反対端のロック要素316は、図12に示された取り外し可能な管取り付け部材320内のそれらの対の片方325及び326とそれぞれ相互作用する。空気入口322は、気密シールを形成するためにプローブ310上の対応する空気入口312に付与されると圧縮されるように設計された弾性材料からなることが好ましく、一方前述のラッチ及びロック要素は、相互作用して、図13に示されるように安定な態様であるが解放可能な態様で二つの部分を固定及びロックする。二つの部分の連結配置のさらなる利点は、流体案内管と同様の電気伝導ワイヤー321が身体表面の上で上昇したような固定されかつ安定な配置で取り付け部材320の端部に固定されることである。
【0064】
図11〜13に示された構成は、最少のオペレーター努力または技術熟練しか必要としない態様で迅速かつ容易に実行される流体案内管及び電気接続を可能にすることがわかるだろう。それはまた、安定かつ気密的な連結を確保し、かつプローブと電気装置の間の電気連通を可能にする電気接続体を提供する。従って、接続は、例えば、上述のように、光学プレチスモグラフの要素に、温度感知手段に、またはプローブ内の加熱コイルになされることができる。同様に、電気接続は、プローブを識別する目的のためにプローブ自体に取り付けられた電子識別装置に対してなされることができる。
【0065】
管とワイヤー取り付け手段の有利な組み合わせは図12及び13に示され、指分離及び管つなぎ手段(例えば図8では20として、図9では120として、図10では220として示される)は図14に示されている。管保持器要素320の末梢端からの身体表面の上への案内管及びワイヤーの複合体の上昇は図12及び13に示されている。
【0066】
例えば、管保持器要素320の末梢端と分離リング420の管保持手段の間の管及びワイヤーの約180°の弧の形成によって、図14で420で示された分離リング420及びプローブが相互作用することができる多数の方法がある。同様に、プローブ分離リング420は、管及びワイヤーの機械的歪、引きずり、または運動によるプローブの機械的摂動のための潜在能力を低下するために、簡単に上述されたように図5及び図6で示された方法で相互作用することができる。
【0067】
図15は、本発明の監視装置のさらなる改善を示し、それは、監視される被験者の身体の指の肢を支持するための肢支持体で具体化されることができる。図15の例示実施態様では、肢支持体は、測定全体を通して被験者の手の前腕及び付け根を支持及び安定化し、かつ肢支持体の前方に指を快適かつ安定的に位置させることを可能にし、それにより患者の動き及び関連した機械的摂動を、従って監視される指が被験者の手の一つ以上の指である場合の外的ノイズを減少するために、一般的に500で示された腕支持体である。
【0068】
図15に示された前腕支持体は、一般的に上で引用した米国特許第4270235号(それは参考としてここに組み込まれる)に記述されたものと類似しているが、プローブを患者の指に付与する工程時に、図1〜3に対して上述した圧力付与器10を支持するためのプローブ支持凹所510を与えることによって変更されている。従って、図15に示された変更された前腕支持体は、指をプローブ内腔中に挿入してプローブを膨張させて、すなわち加圧する工程時に、指に対して適切な配向で患者の指上への圧力付与器の適切かつ安定な配置を容易にする。
【0069】
かかる改善された前腕支持体を図1〜14に対して上述した他の装置と組み合わせて使用することは、個々の装置のいずれかの単独使用より高いレベルのノイズ抑制を提供する。
【0070】
図16は、一般的に600で示されている閉塞カフの別の形を示す。それは、圧力付与器10を担持する指に、それに対して基部側に、すなわち被験者の心臓に面する側に、付与される。この場合、圧力付与器10自体はまた、カフ18(図1)の代りに、閉塞器として作用することができる。
【0071】
血流を完全に閉塞することは通常可能であるけれども、我々は、それでもなお、ほんの一部の場合において、患者の収縮期の血圧よりかなり高いことがありうる極めて高いレベルの閉塞圧であっても、血流を完全に閉塞するためには不十分であることを発見した。これは、血管構造及び組織組成の機能的特性に関連しているかもしれない。かかる場合、残留拍動血液量信号の振幅は、付与された閉塞圧のレベルをさらに高めることによって影響を受けないことが多い。
【0072】
かかる環境下では、かかる不完全な閉塞の発生を、残留動脈拍動容積の絶対的及び/または相対的大きさ、及び規定された閉塞期間中のこの不完全閉塞の絶対的及び/または相対的期間の両方に関して、識別及び定量することが重要である。
【0073】
かかる情報は、試験の有効性のレベルを決定するために非常に重要である。なぜなら乏しい閉塞量は、実際には企図した閉塞によって作られた生理学的刺激度に悪影響を及ぼしうるからである。従って、付与されたカフ圧力の最大許容レベルにもかかわらず、存在する残留拍動信号の大きさを検知して定量する能力は、本願のさらなる改善である。残留検知信号の大きさを決定することは、例えば試験の質を類別し、かつ試験結果を修正するために有用である情報を提供することができる。それはまた、圧力を増加することにより残留動脈脈波度のさらなる減少がない場合でも、閉塞手段によって付与される圧力を限定するために有用であるフィードバックを提供する。上記収縮期圧力レベルの付与にもかかわらず不完全な閉塞の存在は、本質的に有意な診断上の特徴を表わすことができる。かかる装置では、監視プローブは、それぞれの指を通る動脈脈波がないときを示すためにそれぞれの指を通る動脈脈波を監視するために、または完全な閉塞が成し遂げられない場合に、閉塞除去後に得られる信号に付与されるべき、残留信号の大きさに基づく修正係数を作り、従って試験結果を調整するために、効果的である。
【0074】
不完全な動脈閉塞の定量分析は、図17の700で示されたように検知された動脈脈信号の絶対的振幅を測定することによって、または閉塞時に図17の705で示されたように検知された動脈脈信号の振幅を、706で示されたように対応する動脈脈信号で、もしくは例えば701または704で示されたように閉塞側のベースライン動脈脈信号の振幅の平均振幅で、割ることによって決定されることができる。従って、得られる比は、それらの値が予め定められた閾値を越えるとき、不完全な動脈閉塞の相対的指数を提供することができる。
【0075】
同様に、705での動脈脈信号の絶対値は、不完全な動脈閉塞の前記絶対指数の値が予め定められた閾値を越えるときに不完全な動脈閉塞の絶対指数を識別するために使用されることができる。さらに、不完全な動脈閉塞の前記絶対または相対指数は、試験の質を類別するために、かつ試験結果を修正するために使用されることができる。
【0076】
米国特許第6939304号の図16は、閉塞前の動脈脈波信号振幅を血流閉塞の標準期間後の続く相対信号振幅の変化と結合する著しく強力な関係を記載している。この関係は、大きな研究母集団で一貫して観察されており、重要なことに、それは、所定の個々の被験者内の多数の試験を考えるときに一貫して観察され、そこでは閉塞前の信号振幅の著しい変動性が観察されることができ、かかる変動性は生理学的に正常であることを示唆する。図18に示されたように、閉塞後の相対信号振幅の変化は、刺激前の信号振幅に関して指数関数的に反比例することが見出されており、かつ続いてn>1000の多くの試料中で約0.8の著しく高い相関係数を持つことが見出された。本質的に、これは、より低い振幅の閉塞前信号が閉塞の解放後により大きな相対的な増加と関連していることを意味し、逆もまた真である。刺激前の信号振幅は、個人内であっても、正常な生理学的因子によって広く変動することができるので、結果として生じる閉塞後の相対的な信号振幅の変化の変動性はまた、生理学的に正常であると考えられることができる。閉塞後の相対的な信号振幅の変化は内皮機能を示すので、閉塞前のベースライン振幅の生理学的に正常な変動性に関連したその潜在的な不安定性が問題を起こす。なぜなら個人の内皮機能は、少なくとも短期間では安定していると考えられるからである。この問題は、閉塞後応答のこの固有のベースライン振幅依存性に対して修正するために付与される経験的に誘導された相関係数を使用することによって解決されることができる。
【0077】
かかるベースライン信号振幅に関連した修正係数は米国特許第6939304号に記載されている。それは、ベースライン信号振幅と閉塞後信号振幅変化の間の相関関数に対する本質的に逆関数である。それは、所定のベースライン信号振幅に適用されて修正係数を生じ、基本形:修正係数=alogベースライン振幅+bであり、ここでベースライン値は、閉塞前信号振幅である。
【0078】
本願は、一時的な調整、組織容積、及び修正係数を決定する際に使用された閉塞前ベースライン振幅の修正に関連した血圧に基づく、この修正係数への多数の改善を記載する。
【0079】
手の指及び足の指の動脈は、特に自律神経系活動に反応する。これは、それ自体、一般的に経時的な自発的変化にさらされ、かつ血流閉塞の期間のような有害な刺激に高度に反応する。図18は、同一圧力場が反対側の指上のプローブ内に付与されている間に一つの側上に閉塞圧力場を付与するためにカフが使用されたときの図7に記載された704/701に対応する同時に測定された反応指標を比較する研究の結果を示す。この研究は、40人の被験者からなり、図13に示されるように、801で示された閉塞の終了後の時間の連続30秒の変位に渡る相関関係は一貫して極めて高かった。全ての40人の被験者の主観的印象は、指付与閉塞がカフ付与閉塞より不快さがかなり少ないことであった。従って、プローブ自体内で閉塞を達成することは有利でありうるが、動脈閉塞を作る両手段は効果的かつ臨床的に容認できると考えられる。図19は、手の指容積とベースライン振幅を比較する研究の結果を示し、そこでは男性と女性の関係を示す線901及び902は高度に相関関係があり、直線形でありかつ平行である。
【0080】
従って、閉塞前と閉塞後の期間を比較するとき、この刺激が手の指及び足の指の血管緊張度、従って測定されたベースライン振幅を一時的に変えると期待することは合理的であるだろう。不幸にも、閉塞自体がその余波で閉塞部位に局部的変化を誘発し、信号に大きく影響を及ぼすので、閉塞後の閉塞部位の信号振幅を正確に測定することは不可能である。米国特許第6939304号は、実際の信号振幅が閉塞事象と組み合わされた正常自律神経系関連因子により実質的に影響を受けるという可能性にもかかわらず、修正のための根拠として閉塞された側の未調整閉塞前期間のベースライン振幅を使用することを記載する。
【0081】
図17は、特に、閉塞部位のベースライン信号振幅を適切に補償するために、非閉塞部位の(制御)信号の閉塞前に対する閉塞後の変化の比を用いることに基づいて、上述の自律神経媒介変化を評価するためのかかる修正が間接的になされることができる方法を示す。
【0082】
この方法は以下に説明される:
第一に、図17に一般的に700として示された典型的な試験研究の全体的な時間推移を考えるとき、閉塞部位の応答比は、測定された閉塞後信号振幅704をそのベースライン信号振幅701で割ることによって決定されることができる。同様に、非閉塞部位の応答比は、測定された閉塞後信号振幅703をそのベースライン信号振幅702で割ることによって決定されることができる。閉塞部位の比がその対応するかつ同時に記録された非閉塞部位の応答比で割られるとき、これは図17にAで示される修正比を生じる。
【0083】
この修正比に一般形alog701+b(ここでaとbは定数)の上述のベースライン振幅修正係数を掛けると、図17にBで示されるベースライン振幅修正比を生じる。
【0084】
ベースライン振幅修正係数に対して一時的な修正を実現するために、701として示された閉塞部位の閉塞前期間中の関心領域内のベースライン振幅は、一時的に修正されたベースライン振幅を決定するために、制御部位の閉塞前信号振幅(702)で割られた、閉塞されていない(制御)部位の閉塞後信号振幅(703)の比を掛けられることによって、そしてこの値を、一時的に調整されたベースライン修正係数を誘導するためにベースライン修正係数関数中に代入することによって修正されることができる。従って、ベースライン修正係数関数中に代入し(701(703/702))、そして修正比を掛けると、図17のCに示される一時的に調整されたベースライン振幅修正比を生じる。
【0085】
これに代えて、同じ種類の修正が、修正された閉塞側のベースラインが関心時の選ばれた領域の直前の調整された信号振幅を表わすように、関心領域の時間の直前の制御側の閉塞後信号振幅を使用してなされることができる。被験者の群732のための測定された閉塞前の閉塞部位のベースラインデータに対してかかる修正を適用することは、続く閉塞後血管応答に対するその修正を増加した。
【0086】
例えば、閉塞前の閉塞部位のベースライン振幅701の対数、及び修正比すなわち(704/701)/(703/702)間の線形回帰相関係数は、0.755であり、一方803/802の比を掛けられることによって修正された後の閉塞側の閉塞前振幅(701)に対する相関は、0.848であることが見出された。
【0087】
米国特許第6939304号に記載されたベースライン振幅修正係数のさらなる欠点は、それが誘導される手の指の実際の組織容積を考慮に入れていないことである。これは、信号振幅/閉塞後の応答関係を考えるときに重要である。従って、重要であるのは、信号のサイズ自体よりむしろ、刺激が付与される血管緊張度のレベルである。血管緊張度は、血管抵抗の相対的度合によって決定され、それは、信号振幅が誘導される組織容積に対して正規化された信号振幅に関連する。手の指の寸法は、人ごとに実質的に変わり、かつ同じ手の指間で(例えば親指対小指)さえ変わり、これは、上述したベースライン振幅修正関数の精度に影響すると予想される。図19は、実際の手の指の周囲の測定に基づいた手の指の容積の末梢指骨の推定された容積の所定の間隔範囲と関連した平均ベースライン振幅の値を示し、901は男性母集団を表わし、902は女性母集団を表わし、それぞれの線の最良適合(最小自乗法)及びそれぞれの線形回帰係数と共に表わす。プロットは、手の指寸法に対する信号ベースライン振幅の直線性(図17の701に対応する)並びに推定された容積間隔によって群分けされた1959人の男性と1266人の女性の母集団に基づいた、手の指の寸法の範囲の両方を証明する。また、所定の手の指容積の女性に比べて男性がより大きな振幅を持つという性関連の片寄りがあるように見える。それは、生理学的因子または解剖学的因子に関連するかもしれない。
【0088】
ベースライン信号振幅が、上に規定される一時的遅延のために修正されたとき、及び基準組織容積値で割られた測定された組織容積自体でベースライン信号振幅を割ることによってさらに正規化されたとき、修正比すなわち(704/701)/(703/702)に対するその続く相関関係は0.8550に高められた。
【0089】
上述の組織容積に基づいた不正確な源に対して指の組織容積を決定することは、測定された信号を実際の手の指寸法に対して正規化することによって解決されることができた。組織容積を定量的に決定するための自動化法は米国特許第7819811号に記載されている。しかし、この測定を実施するためのその方法は、装置に対する主要な変化を要求する。図18は、同一圧力場が反対側の指上のプローブ内に付与されている間に一つの側上に閉塞圧力場を付与するためにカフが使用されたときの図17に記載された704/701に対応する同時に測定された反応指標を比較する研究の結果を示す。この研究は、40人の被験者からなり、図18に示されるように、711で示された閉塞の終了後の時間の連続30秒の変位に渡る相関関係は一貫して極めて高かった。全ての40人の被験者の主観的印象は、指付与閉塞がカフ付与閉塞より不快さがかなり少ないことであった。従って、プローブ自体内で閉塞を達成することは有利でありうるが、動脈閉塞を作る両手段は効果的かつ臨床的に容認できると考えられる。
【0090】
図20は、指の末梢端の容積に基づいて修正されたベースライン修正係数を生成するために指の末梢端の寸法を測定するための、一般的に800で示された指寸法測定装置を示す。図20に示されるように、装置800は、指を受け入れるための開口802を形成された指受け入れ部材801を含む。部材801は、側部表面804および805を含む別の部材803に沿ってスライドすることができ、前記側部表面804および805は、鋭角で交差し、部材801内に受け入れられる指の外側表面によって係合される。部材803は、表面804に沿って目盛りをさらに形成されている。目盛り806は、指が部材803に沿って指の外側表面が部材803の両表面804および805と接触するまで移動されたときに、指の寸法、およびそれによって指の容積を示すように設定されている。目盛りは、部材801の側壁中に形成された窓807を通して見られることができる。
【0091】
図20に示されている設計は、手の指の末端先端に関して手の指の長さの所定の領域で手の指の寸法を測定するための一つの簡単な手段を示す役割を有するにすぎない。他の多数の手段がこの目的のために使用されることができる。これらは、巻尺を使用した指の周囲長さの直接測定や、指領域が入ることのできる最小寸法を決定するための変化する寸法の一連の穴を含むが、これらに限定されない。
【0092】
ベースライン信号振幅を調整するための別の代替的なアプローチは、信号振幅を被験者の身体表面面積(BSA)に対して正規化することである。被験者のBSAはそれ自体、基準BSA値で割られ、基準BSA値は、周知の公式を使用して被験者の身長および体重から誘導されることができる。これは、手の指の組織容積と有意に相関するので、図17のDに示される態様でベースライン信号振幅の正規化を助けるために容積の代用として使用されることができる。
【0093】
例示的なものにすぎない上述の例は、我々の米国特許第7819811号に記載の容積の正確な決定とは対照的に手の指の寸法の代用指標を与えるだろうが、簡単に適用できるという利点を有するだろう。
【0094】
組織容積に基づく信号振幅の修正と同様に、患者の脈圧力の範囲(これは、収縮期の全身血圧と拡張期の全身血圧との差である)に関してベースライン信号振幅を修正することも有利でありうる。脈圧力は、生じる信号振幅を決定するために有効動脈抵抗のレベルと協調して作用する。
【0095】
脈圧力の大きさについて信号振幅を修正することが有利である理由は、初期信号振幅と閉塞後応答との間の相互作用を考慮すると、本当に重要なことは、信号の寸法それ自体よりもむしろ、刺激が付与されている血管の緊張度のレベルであるからである。被験者の脈圧力の大きさは、心臓の作用と全身抵抗全体との組み合わせから誘導されるので、それは、考慮されている特定の測定部位の局所的血管抵抗から大きな程度で独立している。従って、局所化された血管緊張度の所定のレベルでの脈圧力の変動は、信号振幅の実質的な変動を生じることができ、これは、ベースライン振幅の決定精度に影響を与えると予測されることができる。従って、大きな脈圧力を有する被験者は、低レベルの動脈緊張度を示すと予測され、従って、同じ信号振幅を有するが小さな脈圧力を有する被験者と比較して、血管拡張について大きな能力を示すと予測されるだろう。
【0096】
従って、ベースライン信号振幅を正規化する方法は、図17のEに示されるように基準脈圧力値に対する患者の脈圧力の比によって、測定されたベースライン信号振幅を修正することに基づくだろう。
【0097】
診断能力を改良するために有用であることが予測せぬことに見出された別の分析特徴は、図17のA,B,C,D及びEに記載される応答指数に対して対数変換を適用するものである。応答指数の対数を使用することは、患者と非選択母集団との間で、対応する従来の指数よりも良好な分離を与えることが経験的に証明されている。それは、非対称性の少ない頻度分布プロフィールを与えるため、統計学的にも好適な変化であるように見えるだろう。
【0098】
「増加指数」は、動脈の剛さの一般的なレベルを反映するパラメータを与えるために、非侵襲的に測定された脈波形を使用する周知の指数であり、その増大は、とりわけ、動脈の老化および動脈硬化の結果である。脈波形は、入射中央動脈圧力が脈波の波反射とのその合計によって変化される度合いによって影響を受ける。老化および疾患過程による動脈壁の変性は、動脈壁の硬化および脈波速度の増大を生じ、これらは、入射波および反射波が合計される態様に影響を与える。
【0099】
PATプローブは、この指数を測定するために特異的に有利な測定環境を与える。これは、測定を静脈血混合なしに動脈脈波のみに限定しながら、測定部位が反射血管変化を誘導しうる誘導静脈貯留によって影響を受けないことをさらに確保するPATプローブの能力によるものである。それはさらに、例えば米国特許第6319205号にかなり詳細に記述されているように、最適な経壁圧力の状態が測定のために適用されて動脈壁の緊張を最適に緩和し、それによって最適な範囲の血管の動きおよび信号の線形性を与えることを確保する。従って、PAT装置および方法を使用することは、増加指数の正確で一貫した測定を容易にする。
【0100】
本発明の多くの他の変形、変更及び適用は、当業者には明らかであるだろう。
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