【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様では、被験者の鼻炎を検出するための装置が提供され、装置は:第1の状態で、被験者の鼻腔の中に導入可能であるように構成された膨張可能要素(member)と;膨張可能要素が鼻腔の組織に対して当接するように、鼻腔内で、膨張可能要素を拡大された第2の状態へと拡大するように構成された拡大要素と;鼻腔の組織により膨張可能要素に対して加えられた圧力を測定するように構成された圧力感知要素とを備える。拡大要素は、前記膨張可能要素内で自由に配置される端部と、膨張可能要素と流体連通するための少なくとも1つの開口部とを備える管状構造を備えることができる。
【0010】
被験者の鼻腔の中に膨張可能要素を導入し、拡大することにより、圧力が組織に加えられる。健康な被験者と、ある形態の鼻炎にかかっている被験者は共に、加えられた圧力に反応する。加えられた圧力に対する反応は、ある期間にわたり組織により膨張可能要素に加えられた圧力の変化として圧力感知要素により監視される。健康な被験者と、鼻炎にかかっている被験者では共に、測定された圧力において最初に急激な減少が観察される。その後、飽和圧力に達するまで、すべての被験者で急な圧力減少が観察される。圧力減少部の間には、ほぼ一定圧力の期間がある。これらの圧力減少は、括約筋が開くことに対応しており、その結果、鼻粘膜の血液充填の対応する減少が生じていると考えられる。上記で述べた飽和圧力に達したとき、加えられた圧力は減少しているはずである。これにより、測定された圧力は、第2の飽和圧力へと滑らかに回復する。これは血管の再充填、および括約筋の機能が再開したことに対応すると考えられる。
【0011】
経時的な鼻腔における組織反応圧力は、健康な被験者と鼻炎にかかっている被験者とでは異なることが本発明者らにより見出された。本発明の第1の態様による装置を用いて、経時的な組織反応圧力を測定することにより、結果として、鼻炎を検出することができる。さらに、装置は、前に実施した鼻炎治療の有効性を評価するために、すなわち、患者がその鼻炎から治癒したかどうか、または症状が軽減したかどうかを評価するために使用することができる。装置はさらに、計画した鼻炎治療の有効性を予測するために、すなわち、例えば、ある患者が治療に反応する可能性を予測するために使用することができる。
【0012】
上記で述べたように検出し、評価し、かつ予測するために、経時的に測定された組織反応圧力における変化を反映する測定された組織反応圧力曲線を作成し、その測定圧力曲線を、例えば、健康な被験者の鼻腔における経時的な組織反応圧力の変化を反映する基準圧力曲線と比較することが有用でありうる。
【0013】
例えば、上記で述べた膨張可能要素に加えられたものなど、印加静圧に対する組織反応を、本明細書では、概して、測定された圧力または組織反応圧力と呼ぶ。したがって、経時的に測定された組織反応圧力の変化を反映する曲線は、本明細書では、概して、測定圧力曲線と呼ばれる。膨張可能要素に対して組織により加えられる圧力は、膨張可能要素の円周が内側チャンバを画成する実施形態において、膨張可能要素内の圧力として測定することができる。このような圧力は、膨張可能要素の内圧と呼ばれる。
【0014】
第1の態様の他の実施形態では、第2の状態にある前記膨張可能要素が、約100と180mbarの間の圧力で、鼻腔の組織に当接するように構成された装置が提供される。この圧力は、組織に対して最初に加えられる圧力を表す。上記で論じたように、鼻腔内の組織に対して特定の圧力を加えることは、圧力感知要素により測定される組織反応圧力として反映される特有の方法により鼻の組織に影響を与える。最初に加えられる圧力は、130から150mbarなど、120から160mbarの範囲に存在することができる。いくつかの場合では、加えられる圧力は、140mbarとすることができる。
【0015】
圧力感知要素は、例えば、膨張可能要素内に配置することができ、したがって、膨張可能要素は、圧力感知要素の少なくとも一部を備える。このような圧力感知要素は、例えば、膨張可能要素の表面に位置することができる。
【0016】
装置は、圧力感知要素により測定された圧力を、すなわち、組織反応圧力を表示するように構成された表示要素をさらに備えることができる。LCDパネルなどの表示要素は、操作者による組織反応圧力の監視を容易にする。このようなディスプレイは、組織反応圧力の現在値だけを示すことができるが、代替的にまたはさらに、組織反応圧力が、時間経過と共にどのように進展するかを示すことができる。言い換えると、表示要素は、一実施形態では、圧力感知要素により測定された圧力を、時間の関数として表示するように構成される。表示要素は、デジタルまたはアナログとすることができる。表示要素が、組織反応圧力の現在の値を示すだけである場合、操作者は、鼻の病状に関する何らかの結論を引き出すことができるように、信号の時間的な展開を監視する必要がある。例えば、コンピュータ画面上で、またはXYプロッタ上で、組織反応圧力の進展が経時的に示された場合、操作者は鼻の病状の評価を容易に行うことができる。しかし、どちらの場合も、経験および/または訓練に基づいて患者の健康に関する結論を引き出すのは操作者である。
【0017】
第1の態様の他の実施形態では、拡大要素は、膨張可能要素内で圧力を高めるための圧力発生器と、閉鎖弁とを備える。閉鎖弁は、所望の圧力が加えられたとき、膨張可能要素の閉じた系と、拡大要素の少なくとも一部とを形成するために使用される。さらに圧力感知要素は、閉じた系内で内部の空気圧を測定するように構成されているが、例えば、拡大要素と一体化されるように刺激要素の外部に、かつ/またはそれとは別個に配置することができる。
【0018】
第1の態様の他の実施形態では、膨張可能要素は、振動が鼻腔の組織に付与されるように膨張可能要素を振動させるべく構成された振動発生要素に連結可能である。振動は、様々な目的で鼻の組織に付与することができる。鼻粘膜の治療のためだけではなく、組織のコンプライアンスを調べるためにも振動を加えることができる。鼻腔内の振動刺激中に測定された組織圧の変化を監視することは、振動治療の進行、およびおそらく鼻組織の回復、ならびに組織のコンプライアンスの推定を示すことができる。
【0019】
本発明の他の態様では、鼻炎を検出するためのシステムが提供され、システムは:被験者の鼻腔の組織反応圧力を反映する入力信号を得るように構成されたデータ収集モジュールと;ある期間にわたる信号中の平坦域および減少を識別するために、前記入力信号を解析するように構成された圧力解析モジュールと;経時的に信号中の前記平坦域および減少を少なくとも1つの所定の境界条件と比較することにより、鼻炎を検出するように構成された鼻炎検出モジュールとを備える。
【0020】
第2の態様の鼻炎検出システムは、被験者の鼻炎を検出するために使用することができ、上記で定義した装置と同様に、計画した鼻炎治療の有効性を予測するために、ならびに前に行われた鼻炎治療の有効性を評価するために有用でありうる。
【0021】
データ収集モジュールは、組織反応圧力を反映する入力信号を取得するように、かつ経時的に入力信号の個々の値を収集するように配置される。圧力解析モジュールは、変化を識別するために信号を解析する。このような変化は、圧力平坦域および減少であるが、圧力平坦域は、装置態様に関連して論じたように、圧力減少部の間のほぼ一定圧力の期間に相当する。被験者の収集された組織反応圧力は、問題とする被験者の健康状態に関する特性である圧力平坦域および減少を示している。したがって、鼻炎にかかっている特定の患者に対応する圧力平坦域および減少は、健康な被験者のものとは異なっている。このことは、特定の被験者の平坦域および減少を、境界条件と比較することにより鼻炎の検出を可能にする。
【0022】
境界条件は、例えば、計算値、または組織反応圧力のいくつかの測定から得られた平均値に対応することができる。鼻炎の検出に有用な境界条件の非限定的な例は、特に、最終的な飽和平坦域に相当する組織反応圧力、組織反応圧力における特定の減少の傾斜、特定の組織反応平坦域の長さ、所定期間の後に得られた組織反応圧力、所定の圧力平坦域に達するための期間、飽和圧力に達する前の圧力減少の数、および飽和圧力に達する前の平坦域の数である。一例では、本発明によるシステムは、少なくとも1つの基準圧力曲線から、少なくとも1つの境界条件を求めるように構成された境界決定モジュールをさらに備えることができる。
【0023】
他の実施形態では、圧力解析モジュールは、振幅、変化率、および頻度(frequency)から選択された少なくとも1つの曲線特性により、信号の前記平坦域および減少を特徴付けるように構成される。本明細書における振幅とは、圧力単位または時間で表現される圧力減少の長さのことを指す。変化率とは減少の傾斜であり、頻度とは、時間単位当たりの減少数を指す。このような特有の曲線特性を定義することにより、鼻炎の検出を容易にすることができる。健康な被験者の組織反応圧力曲線は、通常、最終的な飽和圧力に達する前に、特徴的な数の減少および平坦域を示すが、様々な形態の鼻炎にかかっている被験者の組織反応圧力曲線は、通常、より高い数の減少および平坦域、またはより低い数の減少および平坦域を示す。したがって、健康な被験者の組織反応圧力曲線の曲線特性は、鼻炎にかかっている患者の組織反応圧力曲線の曲線特性とは識別することができる。その結果、測定された組織反応圧力曲線の曲線特性を、鼻炎検出のための特有の境界条件と比較することができる。曲線特性の振幅、変化率、および頻度に特有の境界条件の非限定的な例は、特有の曲線特性に対する閾値
maxと、特有の曲線特性に対する閾値
minである。したがって、他の実施形態では、鼻炎検出モジュールは、鼻炎の第1のサブタイプを検出するために、その特有の曲線特性に対する所定の閾値
maxを超える個々の値を有する少なくとも1つの曲線特性の一部分を見出すことにより、かつ鼻炎の第2のサブタイプを検出するために、その特有の曲線特性に対する所定の閾値
min未満の個々の値を有する少なくとも1つの曲線特性の一部分を見出すことにより、鼻炎の第1および第2のサブタイプを検出するように構成される。
【0024】
圧力解析モジュールは、したがって、入力信号の上記で述べた特徴を検出する能力を有する。さらに圧力解析モジュールは、モジュールが曲線パターンを認識し、かつ比較できるようにする処理能力をさらに有することができる。
【0025】
さらに他の実施形態では、圧力解析モジュールは、入力信号中のくしゃみに相当するピークを検出するようにさらに構成される。鼻腔に振動を与えることは、くしゃみを誘発する可能性がある。このようなくしゃみは、測定された組織反応圧力におけるピークとして登録される。くしゃみの頻度は、問題とする被験者の健康状態のさらなる指示を与えることができる。
【0026】
被験者の鼻腔の組織反応圧力を反映する入力信号は、他の実施形態では、本発明の第1の態様に関する定義による装置に対して鼻腔の組織により加えられた圧力に相当する。より具体的には、組織反応圧力は、振動発生要素に連結可能な装置に対して加えられた圧力に相当することができる。したがって、入力信号は、振動する膨張可能要素に対して加えられた振動により影響を受けた組織圧を反映する。このような例示的なシステムは、付与された振動に対する組織のコンプライアンスを求めるように構成されたコンプライアンス測定モジュールをさらに備えることができる。本明細書で使用される場合、コンプライアンスという用語は、例えば、膨張可能要素を除去したとき、その元の寸法に向けて戻ることに抗する鼻腔の傾向の尺度を指し、「エラスタンス」の逆数である。
【0027】
システム態様のさらに他の実施形態では、システムは、本発明の装置態様に関して定義された装置を備える。
【0028】
組織反応圧力を反映する入力信号が、振動する膨張可能要素に加えられた圧力に相当する実施形態では、圧力曲線中にいくつかのピークを観察することができる。これらのピークは、前に論じたように、被験者のくしゃみに対応しており、また通常、鼻炎にかかった被験者で観察することができる。したがって、ピークの数は、被験者の健康状態をさらに特定するために使用することができる。システムの圧力解析モジュールは、例えば、ピークの頻度が、所定のピーク閾値を超えているかどうかを判定するように構成することができる。本発明の装置態様による装置を備える場合、システムは、前記ピーク閾値を超えたとき、振動刺激および圧力測定を終了するように構成された制御要素をさらに備えることができる。
【0029】
システムはさらに、例えば、境界条件、閾値、および基準曲線などを記憶するように構成された記憶モジュールを備える。患者のフォローアップを容易にするために、このような記憶モジュールはさらに、特定の被験者に対する組織反応圧力曲線、および導出された曲線特性を記憶できるようにする。
【0030】
本発明の特定の態様に関して述べられた諸実施形態および諸例は、適用可能な場合、本発明の他の態様に対しても等しく関連性があることを理解されたい。
【0031】
本発明の他の態様では、組織反応圧力を解析するための方法が提供され、方法は:ある期間にわたる被験者の鼻腔の組織反応圧力を反映する組織反応圧力曲線を提供すること;ある基準期間にわたる鼻腔の基準組織反応圧力を反映する基準圧力曲線を提供すること;および前記組織反応圧力曲線と基準圧力曲線との間の対応関係を評価するために、前記組織反応圧力曲線を前記基準圧力曲線と比較することを含む。本発明のこの態様は、本発明の第1の方法態様と呼ばれる。
【0032】
組織反応圧力曲線と基準曲線との間の対応関係を評価することにより、基準曲線により表された被験者の特定の状態からの偏差を特定することもできる。解析方法は、被験者の状態を実際に求める前に、偏差を識別するための予備的方法として機能することができる。したがって、特定の患者に対する望ましい評価に応じて、適切な基準曲線を提供することができる。経時的な組織反応圧力の進展を基準曲線と比較することにより、1つまたは2つの組織反応圧力値が抽出されるだけの場合と比較して、被験者の健康状態に関する多くの情報を導くことができる可能性がある。鼻炎は複雑な病気であり、正しい診断を可能にするには、多くの情報が必要になりうる。
【0033】
一実施形態では、方法は:鼻炎にかかっている可能性のある被験者から得られた組織反応圧力曲線を、前記基準圧力曲線と比較することにより鼻炎を検出すること;鼻炎治療の前に被験者から得られた組織反応圧力曲線を、前記基準圧力曲線と比較することにより鼻炎治療の有効性を予測すること、または鼻炎治療を前に受けた被験者から得られた組織反応圧力曲線を、前記基準圧力曲線と比較することにより、前に行われた鼻炎治療の有効性を評価することのうちの1つをさらに含む。基準圧力曲線は、判定の目的に応じて異なる可能性のあることを理解されたい。比較が、鼻炎を検出するために行われる場合、基準圧力曲線は、健康な状態を表すことができる。比較が、何らかの計画された治療法の結果を予測するために行われる場合、基準圧力曲線は、問題とする計画された治療によく反応することが知られた健康状態を表すことができる。他方で、比較が、何らかの前に行われた鼻炎治療の有効性を評価するために行われる場合、基準圧力曲線はまた、健康な状態を表す、または前記治療の前に得られた圧力反応曲線に相当することができる。本方法は、何らかの前の鼻炎治療、または計画された鼻炎治療の有効性を評価する、または予測するのに有用でありうることに留意されたい。
【0034】
前述の方法が、被験者が鼻炎にかかっていること、または前の鼻炎治療が鼻炎を効果的に治療していないことを見出した場合、鼻炎治療が推奨されうる。したがって、このような鼻炎治療は本発明の方法とは別個に実施され、例えば、参照によって本明細書に組み入れる、鼻炎を治療するために体腔の中でも特に鼻孔の振動刺激を含むWO2008/138997で述べられた方法に従って行うことができる。
【0035】
本発明による方法は、したがって、総称的に鼻炎と呼ばれる様々な症状の客観的な定量的尺度を提供する。これは今日の臨床実務で欠けていることである。正しい診断を見出すことが可能になることにより、患者が、効果のない薬剤を用いることを控える、または停止することもありうる。さらに、経時的に症状の進展を追跡し、それにより、特定の治療が有効であるかどうかを判定することが可能になる。
【0036】
第1の方法態様の他の実施形態では、前記基準圧力曲線は、前に得られた組織反応圧力曲線;少なくとも2つの前に得られた組織反応圧力曲線の平均;少なくとも1つの測定された組織反応圧力曲線に対するモデルの一致状態(fit)、および理論的に計算された基準圧力曲線から選択される。基準圧力曲線は、したがって、所定の基準圧力曲線から選択されるが、いくつかの場合は、上記で列挙した曲線またはモデルのいずれかから、本方法を実行しながら作成することもできる。前に得られた組織反応圧力曲線は、状況に応じて、同じ被験者から、または他の被験者から導出できることをさらに理解されたい。さらに、理論的に計算される基準圧力曲線は、測定された組織反応圧力を直接利用することなく計算され、したがって、それは、例えば、いずれかの知られた圧力曲線から計算することもできる。測定データにフィッティングすることのできるモデルは、組織反応圧力曲線の予想される概略的な形状のパラメータ化した表現である。このようなモデルを使用することは、曲線からノイズをなくし、したがって、曲線の特性をより明確にすることができる。
【0037】
他の実施形態では、方法の比較工程は:組織反応圧力曲線が、前記基準圧力曲線に対応している、または所定の許容間隔内にあると判定すること;組織反応圧力曲線の少なくとも一部が前記許容間隔を超えていると判定すること、および組織反応圧力曲線の少なくとも一部が前記許容間隔未満にあると判定することのうちの少なくとも1つを含む。組織反応圧力曲線が健康な状態の規定された許容間隔の外にある場合、例えば、被験者が鼻炎にかかっている、または被験者の鼻炎に対して効果的に治療が行われていないと結論付けることができる。許容間隔を少なくとも部分的に超える組織反応圧力曲線は、鼻炎のサブタイプを示すことができ、少なくとも部分的に許容間隔未満である組織反応圧力曲線は、鼻炎の他のサブタイプを示している可能性がある。この場合、許容間隔は、特定の健康状態付近における正規分布を反映することができる。
【0038】
方法の他の実施形態では、組織反応圧力曲線を前記提供することが、時間と組織反応圧力値の対を取得すること、および個々の値にモデルをフィッティングすることから選択される。個々の値をモデルにフィッティングすることにより、基準曲線が同様にして作成された場合は特に、基準曲線との比較を実行することが容易になりうる。これはさらに、信号からノイズを除くために効率的な方法になりうる。
【0039】
さらなる実施形態では、組織反応圧力曲線は、ある期間にわたる被験者の鼻腔の組織反応圧力を反映する入力信号を収集することにより作成される。
【0040】
本発明の関連する態様では、鼻炎を検出するための方法が提供され、方法は:被験者の鼻腔の中に膨張可能要素を導入すること;膨張可能要素が鼻腔の組織に対して当接するように、膨張可能要素を鼻腔内で拡大すること;測定圧力曲線を作成するために、ある期間にわたり、鼻腔の組織により膨張可能要素に対して加えられた圧力を測定すること;および鼻炎を検出するために測定圧力曲線を解析することを含む。本発明のこの態様は、第2の方法態様と呼ばれる。この方法を用いることにより、医師は、鼻の病状を測定することができ、かつ鼻炎の様々な形態の間を客観的な方法で識別することができる。患者の健康状態における長期間の変化を検出するために、特定の患者に対する経時的な進展を追跡することも可能になる。
【0041】
本発明の他の関連する態様では、前に行われた鼻炎治療の有効性を評価するための方法が提供され、方法は:被験者の鼻腔の中に膨張可能要素を導入すること;膨張可能要素が鼻腔の組織に対して当接するように、鼻腔内で膨張可能要素を拡大すること;測定圧力曲線を作成するために、ある期間にわたり鼻腔の組織により膨張可能要素に対して加えられた圧力を測定すること;および前の鼻炎治療の有効性を評価するために、測定圧力曲線を解析することを含む。本発明のこの態様は、第3の方法態様と呼ぶ。この方法を用いることにより、行われた治療が望ましい効果を有するかどうかを判定することができるが、効果を有しない場合、治療を変更する、置き換える、または中止することができる。このようにして、薬を過度に使用する危険を低減することができる。
【0042】
本発明のさらに他の関連する方法態様では、鼻炎治療の有効性を予測するための方法が提供され、方法は:被験者の鼻腔の中に膨張可能要素を導入すること;膨張可能要素が鼻腔の組織に対して当接するように、鼻腔内で膨張可能要素を拡大すること;測定圧力曲線を作成するために、ある期間にわたり鼻腔の組織により膨張可能要素に対して加えられた圧力を測定すること;および鼻炎治療の有効性を予測するために、測定圧力曲線を解析することを含む。本発明のこの態様を、本発明の第4の方法態様と呼ぶ。この方法は、特定の鼻炎治療の効果を予測するために、したがって、特定の被験者に対する最も適切な治療を選択するために有用でありうる。
【0043】
以下では、第4の方法態様のいくつかの実施形態を述べるものとする。
【0044】
一実施形態では、好ましくは第2、第3、および第4の方法態様に関連して、前記解析することは、前記測定圧力曲線における平坦域および減少を識別すること、および前記平坦域および減少を、少なくとも1つの所定の境界条件と比較することを含む。したがって、システム態様に関連して前に論じたように、被験者から収集された組織反応圧力は、問題とする被験者の健康状態に関する特性である圧力の平坦域および減少を示す。このように、鼻炎の検出は、特定の被験者の平坦域および減少を、境界条件と比較することにより可能になる。境界条件は、前に論じたように、計算された値、または組織反応圧力のいくつかの測定から得られた平均値に対応することができる。鼻炎検出に関係する境界条件の非限定的ないくつかの例は、上記に列挙されている。しかし、これらの境界条件の例は、計画された鼻炎治療の有効性を予測するために、かつ前に行われた鼻炎治療の有効性を評価するために等しく関連性がある。方法は、少なくとも1つの基準圧力曲線から、少なくとも1つの境界条件を求めることをさらに含むことができる。
【0045】
方法態様の他の実施形態では、方法は、振幅、変化率、および頻度から選択された少なくとも1つの曲線特性により、前記平坦域および減少を特徴付けることを含むことができる。こうすることにより、上記で述べたシステム態様の圧力解析に従って被験者の健康状態を、代替的に、おそらくより正確に求めることが可能になる。したがって、他の実施形態では、鼻炎のサブタイプが、曲線特性のうちのいずれか1つの個々の値のどれかが、その特有の曲線特性に対する所定の閾値
maxを超えているかどうかを判定することにより検出される。同様に、他の実施形態では、鼻炎のサブタイプが、曲線特性のうちのいずれか1つの個々の値のどれかが、その特有の曲線特性に対する所定の閾値
min未満になっているかどうかを判定することにより検出される。
【0046】
上記で述べた解析することの一部として、基準圧力曲線を提供することができ、また測定圧力曲線を、基準圧力曲線と比較することができる。基準圧力曲線は、第1の方法態様に関連した記述によれば、前に得られた測定圧力曲線;少なくとも2つの前に得られた測定圧力曲線の平均;少なくとも1つの測定圧力曲線に対するモデルの一致状態、または理論的に計算された基準圧力曲線から選択することができる。測定圧力曲線と基準圧力曲線の間の比較は、測定圧力曲線が、基準圧力曲線に対応しているか、もしくは所定の許容間隔内にあるかどうかを判定する;測定圧力曲線の少なくとも一部が、許容間隔を超えているかどうかを判定する、または測定圧力曲線の少なくとも一部が、許容間隔未満であるかどうかを判定するために行うことができる。
【0047】
他の実施形態では、測定圧力曲線を前記作成することは、時間および圧力値の対を記憶すること、または時間および圧力値の対にモデルをフィッティングすることを含む。
【0048】
測定圧力曲線は、したがって、被験者の鼻腔内で行われた圧力測定から得ることができる。鼻腔内で行われる圧力測定に加えて、方法は、膨張可能要素を介して鼻腔内の組織に振動を付与することをさらに含む。膨張可能要素に対して組織により加えられる圧力が測定されるのと同時に鼻腔内に振動刺激を行うことにより、測定された圧力は、被験者の健康状態に関する情報だけではなく、付与された振動に対する組織のコンプライアンスに関する情報も提供することになる。したがって、方法態様の他の実施形態では、方法は、付与された振動に対する組織のコンプライアンスを求めることを含む。
【0049】
さらに他の実施形態では、方法は、組織反応圧力曲線において、または膨張可能要素に対して加えられた圧力で、くしゃみに相当するピークを検出することを含む。前に論じたように、ピークの頻度が所定のピーク閾値を超える場合、これは、被験者の特定の健康状態を示すものでありうる。
【0050】
鼻腔内で拡大したとき、膨張可能要素は、約100と180mbarの間、例えば、130から150mbarなどの120から160mbarの圧力で鼻腔の組織に対して当接することができる。これは、鼻腔内で圧力測定を開始するときに加えられる圧力に相当する。
【0051】
圧力測定は、約1分と10分の間の期間中に鼻腔内で行うことができるので便利である。
【0052】
方法態様の特定の実施形態では、膨張可能要素は、本発明の装置およびシステム態様で定義される装置またはシステム内に備えることができる。
【0053】
本発明の可用性のさらなる範囲は、以下で与えられる詳細な記述から明らかになろう。しかし、当業者であれば、この詳細な記述から、本発明の趣旨および範囲に含まれる様々な変更および修正が明らかになるので、本発明の好ましい実施形態を示している詳細な記述および特定の例は、例示のために与えられているに過ぎないことを理解されたい。
【0054】
本発明は、例示のために与えられているに過ぎず本発明を限定することのない、以下で示した詳細な記述および添付図面からさらに完全に理解することができよう。