特許第6134735号(P6134735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134735
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ANS刺激
(51)【国際特許分類】
   A61H 21/00 20060101AFI20170515BHJP
   A61H 23/02 20060101ALI20170515BHJP
   A61H 23/04 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   A61H21/00
   A61H23/02 332
   A61H23/02 370
   A61H23/04
【請求項の数】14
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2014-546554(P2014-546554)
(86)(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公表番号】特表2015-500114(P2015-500114A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2012075653
(87)【国際公開番号】WO2013087895
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年12月3日
(31)【優先権主張番号】61/576,832
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509315412
【氏名又は名称】コーデイト・メディカル・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】Chordate Medical AB
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(72)【発明者】
【氏名】ヤン−エリック・ジュウト
(72)【発明者】
【氏名】フレドリック・ジュウト
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ホルム
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター・クローネステット
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−526621(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0005713(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/130488(WO,A2)
【文献】 特表2004−508847(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/044880(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 21/00−23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動治療によって被験者の自律神経系(ANS)に影響を及ぼすシステムであって:
該被験者の少なくとも1つの治療部位に対応する体組織に、治療サイクルに従って振動を与えるように構成された少なくとも1つの振動刺激デバイスと;
操作者、該被験者、およびデータベースの少なくとも1つから受けられた病気のタイプに関係する入力情報を送受信するように構成されたユーザ・インターフェースと;
該被験者の該ANS内の活動の測定値を反映する入力データを送受信するように構成された監視部材と;
制御ユニットとを備え、該制御ユニットは:
該ユーザ・インターフェースによって伝送される該入力情報を受け;
該監視部材によって伝送される該入力データを受け;
該受けられた入力情報および該入力データに基づいて、10〜100Hzの範囲内の周波数、20〜120ミリバールの範囲内に含まれる該振動刺激デバイスと該組織との間の時間平均治療圧、および該ANSの神経節または神経である治療標的に関連する少なくとも1つの治療部位を含む少なくとも1つの治療サイクルを画成し;
該画成された少なくとも1つの治療部位を、該ユーザ・インターフェースへ返し、該ユーザ・インターフェースは、該返される少なくとも1つの治療部位を表示するようにさらに構成され;
該治療サイクルに従って該振動刺激デバイスを動作させ;
活動の測定値と所望の活動レベルとの間の差の絶対値を閾値と比較し、前記絶対値が該閾値より低い場合は該振動治療を中止し;
前記絶対値を前記閾値と比較し、前記絶対値が該閾値を超過する場合は該振動治療を延長するように構成される、上記システム。
【請求項2】
病気のタイプは、偏頭痛、過敏性腸症候群(IBS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、鼻炎、および高血圧症の少なくとも1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
入力情報は、年齢、性別、人種、体重、身長、および識別情報の少なくとも1つをさらに含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
被験者の異なる治療部位上の振動治療向けに構成された複数の異なるタイプの振動刺激デバイスをさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも1つの治療部位は鼻腔であり、振動刺激デバイスは、身体開口部を介して該鼻腔内へ該振動刺激デバイスを導入できる第1の状態と、該振動刺激デバイスが該鼻腔内の組織に当接する体積まで該振動刺激デバイスを拡大させた第2の状態とに配置できるタイプのものである、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
ヘッドバンド、顔マスク、および眼鏡を含む群から選択され、振動刺激デバイスが被験者の組織に当接するように、振動刺激デバイスを被験者に係留するように構成された係留部材をさらに備える、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも1つの治療部位は、腹部または頸部の上で、僧帽筋と胸鎖乳突筋(後頭三角)との間で中心に位置し、振動刺激デバイスのタイプは、バルーン、バッグ、ポーチ、またはメンブレンの形状である、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
振動刺激デバイスが被験者の組織に当接するように、振動刺激デバイスを被験者に係留するように構成された膨張性のカフまたは膨張性のベルトである係留部材をさらに備える、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
少なくとも1つの治療部位は腸であり、振動刺激デバイスは、身体開口部を介して該腸内へ該振動刺激デバイスを導入できる第1の状態と、該振動刺激デバイスが該腸内の組織に当接する体積まで該振動刺激デバイスを拡大させた第2の状態とに配置できるタイプのものである、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
治療サイクルは、刺激部材のタイプ、治療の継続時間、閾値、振動パターン、および振動の振幅の少なくとも1つをさらに含む、
請求項1〜のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
入力データは:
組織と振動刺激デバイスとの間の圧力の測定値;
該組織の導電性の測定値;
該組織上のコンプライアンスの測定値;
被験者の瞳孔の寸法の測定値;
該被験者から導出された脳波(EEG)信号;
該被験者から導出された筋電図(EMG)信号;
該被験者から導出された心電図(ECG)信号;
光電脈波信号;
心拍数;
心拍数変動;
該被験者の血圧の測定値;および
該被験者の体温の測定値
からなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
被験者内/上で治療標的を局所化するように構成された局所化部材をさらに備える、請求項1〜11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
ユーザ・インターフェースは、治療サイクルを示す図形オブジェクトを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
制御ユニットは、振動刺激デバイスが被験者の組織に当接するように配置されるように、少なくとも1つの治療部位に振動刺激デバイスを確実に位置決めすることを有効にする係留部材をどのように適用するかに関する命令を含む情報を画成および伝送するようにさらに構成され、ユーザ・インターフェースは、該命令を受けて表示するようにさらに構成される、請求項1〜13のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の組織に低周波振動を与えて被験者の自律神経系に影響を及ぼし、たとえば被験者の自律神経系に関係する疾患を治療するデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
神経系は、中枢神経系(CNS)、すなわち脳および脊髄と、末梢神経系、すなわち脳および脊髄以外の神経および神経節とを含む。末梢神経系は、体性神経系と自律神経系(ANS)とに分割される。通常、体性神経系は、骨格筋などの臓器の自発的な制御に関連し、自律神経系は主として、内部臓器および恒常性の無意識の制御に関連する。
【0003】
内臓神経系とも呼ばれるANSは、たとえば心臓の心拍数および収縮力、血管の狭窄および拡張、呼吸数、消化、胃、腸、および結腸の収縮および拡張、瞳孔の直径、排尿、発汗、性的興奮、外分泌腺および内分泌腺からの分泌など、体内の複数の生活機能を制御する。
【0004】
この制御は、内部臓器との間にフィードバック・ループを形成する感覚(求心性)ニューロンおよび運動(遠心性)ニューロン系によって実現される。感覚ニューロンは、環境および内部臓器の状態、たとえば血液中の二酸化炭素および酸素濃度、消化管の化学物質含有量、血圧などに関する情報を、CNSへ伝達する。一方、運動ニューロンは、CNSからの情報を標的臓器へ伝達して、それらの臓器の活動を調節または修正する。このフィードバック・ループを通じて、感覚情報により、ANSの運動ニューロンの活動、したがって内部臓器の活動が常に無意識に調整される。
【0005】
運動ニューロンは、「自律神経節」と呼ばれる群内に位置する。ANSの遠心性(運動)の経路は常に、2つのニューロン、すなわち;無髄節後ニューロン上へシナプスを形成する有髄節前ニューロン(myelinated preganglionic neuron)、標的臓器に神経を分布させる節後ニューロンを伴う。神経節は、節前ニューロンと節後ニューロンとの間の1群のシナプスであり、神経細胞体および樹枝状結晶を含む。感覚ニューロンはまた、類似の神経節内にも組織される。
【0006】
内部臓器および身体の恒常性の調節および制御はまた、ANSの2つの下部組織、すなわち;副交感神経系と交感神経系との間の均衡を通じて実現される。大部分の臓器は、これらの神経系の両方による影響を受ける。これらの神経系は、臓器に対して相反するまたはむしろ相補型の影響を有することが多い。交感神経系は、興奮、エネルギー、活動の増大、および消化の低減に関連するのに対して、副交感神経系は、休息、活動の低減、および消化の促進に関連する。
【0007】
いくつかの医学的状態は、遺伝性自律神経症、すなわちANSの機能障害に関係する。これらの中には、交感神経系と副交感神経系との間の不均衡によるものと、他の原因を有するものとがある。症候は、軽いストレス感、疲労、頭痛、便秘、および速い心拍から、より強い不安感およびめまいまでの範囲に及ぶことがある。より深刻な疾病および症候群には、体位性起立性頻脈症候群(POTS)、不適切洞性頻脈(IST)、血管迷走神経性失神、僧帽弁逸脱遺伝性自律神経症、自律神経失調症、神経心臓性失神(NCS)、神経調節性低血圧症(NMH)、直立性高血圧、自律神経不安定症、および中枢性塩類喪失症候群などの複数のあまり知られていない疾患が含まれる。ANS機能不全に関連する他の疾患には、偏頭痛、群発性頭痛、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、メニエール病、過敏性腸症候群(IBS)、クローン病、動脈硬化症、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、シェーグレン症候群、斜頸、筋緊張性ジストロフィー、真性糖尿病、潰瘍性大腸炎、原発性硬化性胆管炎、喘息、遠位結腸の炎症症状、線維筋痛症、腰痛、および慢性関節リウマチが含まれる。
【0008】
症状、症候、および疾病の管理は、症候の重大度および根源的な原因に依存する。症候の中には、特別な食餌療法を採用することによって管理できるものもあれば、薬物療法を必要とするものもある。薬物の組合せが必要とされることが多く、一般に、望ましくない副作用に関連する。また、ANSに関係する症状を治療するための薬物に基づかない非侵襲性の方法を提供するために、いくつかの知られているデバイスが開発されてきた。これらのデバイスは、たとえば電気的な刺激、音による刺激、および超音波による刺激に基づくものである。
【0009】
機械的な振動によって体腔内または体表上の組織に影響を及ぼすデバイスが知られている。特許文献1では、基幹脳の活動を増大させるシステムが開示されている。開示のシステムは、第1および第2の振動印加デバイスを備え、第1の振動印加デバイスは、可聴範囲内の周波数成分を有する振動を、生体の聴覚系に印加する。第2の振動印加デバイスは、可聴範囲を超過する超高周波成分を有する振動を、聴覚系とは別の身体の領域に印加する。第2の振動の超高周波成分は、脳基幹部内の血流を増大させ、可聴音の認識を高めて患者の心身の状態を改善する影響を有する。
【0010】
特許文献2では、不穏下肢症候群を治療するデバイスが開示されている。このデバイスは、患者の腕または脚を取り囲むスリーブと、スリーブにカップリングされた1つまたはそれ以上の振動デバイスとを備える。患者が腕または脚を動かす感覚に気付く前に振動刺激を開始するために、たとえば加速度計、脳波記録装置、または筋電図記録装置の形態の運動感知装置を使用して、腕または脚が動こうとしているかどうかを監視する。
【0011】
特許文献3は、局所的に印加される音響振動を使用して異なる疾病および症状を治療する方法およびデバイスを開示している。成人の幹細胞の生成を刺激するために、低周波振動が皮膚に印加される。
【0012】
特許文献4では、呼吸系機能を直接制御する目的で、たとえば耳の中の前庭神経の様々な機械的刺激技法が図示および記載されている。この刺激は、たとえば、膨張性のバルーンが隣接組織に静圧を及ぼすことによって生じさせることができる。圧力を変動させることによって、特定の感覚を誘発することができる。さらに、神経を機械的に刺激する別のデバイスが図示および記載されており、このデバイスは、特定の周波数で振動している本体を備える。
【0013】
特許文献5は、視覚または音声の刺激によってANSに影響を及ぼす方法およびデバイスを開示している。患者を監視することによって副交感神経系および/または交感神経系に関する情報を得て、この情報を使用し、得られた情報に従って、刺激を連続して変える。
【0014】
特許文献6は、被験者の副交感神経活動/交感神経活動比を増大させることによって、ANSの異常に関係する症状を治療する方法を開示している。電気刺激デバイスを使用して、副交感神経系内の領域を刺激し、かつ/または交感神経系内の活動を低減させる。電気刺激前、電気刺激中、または電気刺激後に、ANSの1つまたはそれ以上の態様に関係する情報が監視され、その情報を使用して、刺激をトリガまたは調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0281238号
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0249637(A1)号
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0005713(A1)号
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0072781(A1)号
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0230252(A1)号
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0021092(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、被験者の自律神経系に影響を及ぼす新規なデバイスおよび方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、ANS機能障害に関係する症状および疾病を治療する新規なデバイスおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様では、被験者の自律神経系に影響を及ぼすシステムが提供され、前記システムは、被験者の治療部位に対応する体組織に、治療サイクルに従って振動を与えるように構成された少なくとも1つの振動刺激デバイスを備える。このシステムはまた、操作者、被験者、およびデータベースの少なくとも1つから受けられた病気のタイプに関係する入力情報を送受信するように構成されたユーザ・インターフェース、たとえばグラフィカル・ユーザ・インターフェースを備える。さらに、このシステムは、ユーザ・インターフェースによって伝送される入力情報を受け、受けられた入力情報に基づいて、10〜100Hzの範囲内の周波数、20〜120ミリバールの範囲内に含まれる刺激デバイスと組織との間の時間平均治療圧(time average treatment pressure)、およびANSの神経節または神経である治療標的に関連する治療部位を含む少なくとも1つの治療サイクルを生成するように構成された制御ユニットを備える。制御ユニットはまた、生成された治療部位を、返される治療部位を表示するように構成されたユーザ・インターフェースへ返し、治療サイクルに従って振動刺激デバイスを動作させるように構成される。
【0019】
一実施形態によれば、病気のタイプは、偏頭痛、過敏性腸症候群(IBS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、鼻炎、および高血圧症の少なくとも1つである。
【0020】
一実施形態では、病気のタイプは鼻炎である。治療部位は、たとえば鼻腔とすることができる。治療サイクルは、50〜70Hzの範囲内の周波数と、たとえば50〜80ミリバールの範囲内の時間平均治療圧とを含むことができる。入力情報は、鼻詰り、かゆみ、分泌、およびくしゃみなどの病気の症候を含むことができる。
【0021】
一実施形態では、病気のタイプは偏頭痛である。そのような病気タイプの場合、治療部位は鼻腔とすることができる。治療サイクルは、60〜70Hzの範囲内の周波数と、たとえば90〜105ミリバールの範囲内の時間平均治療圧とを含むことができる。入力情報は、たとえば体験した疼痛のレベル、疼痛の場所、および偏頭痛発作が始まってからの経過時間に関係する病気の症候を含むことができる。
【0022】
一実施形態では、病気のタイプは高血圧症である。高血圧症に対する治療部位は、鼻腔とすることができる。治療サイクルは、60〜70Hzの範囲内の周波数と、たとえば90〜105ミリバールの範囲内の時間平均治療圧とを含むことができる。入力情報は、たとえば血圧の測定値などの病気の症候を含むことができる。
【0023】
一実施形態では、病気のタイプは過敏性腸症候群(IBS)である。治療部位は、腹部の上、好ましくは臍部の上で中心に位置することができる。治療サイクルの周波数は、30〜50Hzの範囲内に含むことができ、時間平均治療圧は、20〜30ミリバールの範囲など、20〜60ミリバールの範囲内に含むことができる。入力情報は、膨満感、便秘、下痢、体験した疼痛のレベル、および疼痛の場所などの病気の症候を含むことができる。
【0024】
病気のタイプがIBSであるさらなる実施形態では、治療部位は、腹腔神経叢の上の皮膚上に配置することができる。治療サイクルの周波数は、30〜50Hzの範囲内に含むことができ、時間平均治療圧は、40〜60ミリバールの範囲内に含むことができる。入力情報は、膨満感、便秘、下痢、体験した疼痛のレベル、および疼痛の場所などの病気の症候を含むことができる。
【0025】
病気のタイプがIBSであるさらに別の実施形態では、2つの治療部位、たとえば上記の臍部および腹腔神経叢を画成することができる。治療は、同じまたは異なる刺激部材によって、2つの部位に順次投与することができる。
【0026】
一実施形態では、病気のタイプはIBSであり、治療部位は鼻腔である。治療サイクルは、50〜90Hzの範囲内の周波数と、たとえば70〜110ミリバールの範囲内の時間平均治療圧とを含むことができる。入力情報は、膨満感、便秘、下痢、体験した疼痛のレベル、および疼痛の場所などの病気の症候を含むことができる。
【0027】
一実施形態では、病気のタイプはIBSであり、治療部位は腸である。治療サイクルは、10〜70Hzの範囲内の周波数と、たとえば20〜50ミリバールの範囲内の時間平均治療圧とを含むことができる。入力情報は、膨満感、便秘、下痢、体験した疼痛のレベル、および疼痛の場所などの病気の症候を含むことができる。
【0028】
一実施形態では、病気のタイプは筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。治療部位は、鼻腔とすることができる。治療サイクルは、60〜70Hzの範囲内の周波数と、たとえば90〜105ミリバールの範囲内の時間平均治療圧とを含むことができる。入力情報は、嚥下困難、呼吸困難、脚の筋力低下、頻発線維束性収縮(fasciculation frequency)、および腕の筋力低下などの病気の症候を含むことができる。
【0029】
一実施形態では、病気のタイプはALSであり、治療部位は頸部、好ましくは僧帽筋と胸鎖乳突筋(後頭三角)との間である。治療サイクルは、30〜50Hzの範囲内の周波数と、たとえば40〜60ミリバールの範囲内の時間平均治療圧とを含むことができる。入力情報は、嚥下困難、呼吸困難、脚の筋力低下、および腕の筋力低下などの病気の症候を含むことができる。
【0030】
一実施形態では、入力情報は、年齢、性別、人種、体重、身長、および識別情報の少なくとも1つをさらに含む。
【0031】
一実施形態では、システムは、被験者の異なる治療部位上の振動治療向けに構成された複数の異なるタイプの振動刺激デバイスを備える。
【0032】
一実施形態では、制御ユニットは、治療部位に基づいて、および/または場合により病気のタイプに基づいて、どのタイプ(複数可)の振動刺激デバイス(複数可)が振動治療に使用される予定であるかを判定し、判定されたタイプ(複数可)の振動刺激デバイス(複数可)に関する情報を伝送するように構成される。
【0033】
一実施形態では、治療部位は鼻腔であり、振動刺激デバイスは、身体開口部を介して鼻腔内へ刺激デバイスを導入できる第1の状態と、刺激デバイスが鼻腔内の組織に当接する体積まで刺激デバイスを拡大させた第2の状態とに配置できるタイプのものである。
【0034】
一実施形態では、治療部位は、腹部または頸部の上で、好ましくは僧帽筋と胸鎖乳突筋(後頭三角)との間で中心に位置し、振動刺激デバイスのタイプは、バルーン、バッグ、ポーチ、またはメンブレンの形状を有する。
【0035】
一実施形態では、治療部位は腸であり、振動刺激デバイスは、身体開口部を介して腸内へ刺激デバイスを導入できる第1の状態と、刺激デバイスが腸内の組織に当接する体積まで刺激デバイスを拡大させた第2の状態とに配置できるタイプのものである。
【0036】
一実施形態では、治療サイクルは、刺激デバイスのタイプ、治療の継続時間、閾値(または標的値)、振動パターン、および振動の振幅の少なくとも1つをさらに含む。治療サイクルは、たとえば、以前に実施された振動治療、患者に関連する識別情報、または所定の治療サイクルに基づくことができる。
【0037】
一実施形態では、システムは、被験者のANS内の活動の測定値を反映する入力データを送受信するように構成された監視部材をさらに備える。制御ユニットは、入力データを受け、入力データに基づいて少なくとも1つの治療サイクルを調整すること、入力データを所定の標的値と比較し、標的値に到達した場合は振動治療を中止すること、または入力データを所定の標的値と比較し、標的値に到達した場合は振動治療を所定の時間間隔で延長することの1つを実行するようにさらに構成される。好ましくは、制御ユニットは、監視部材によって受けられた入力データに応じて、たとえば振動が前記測定値に与える影響が最大になるように、治療サイクルを調整するように構成される。制御部材は、たとえば、入力データに応じて治療サイクルの振動パラメータの調整を制御するように構成されたアルゴリズムを実施するソフトウェアを備えることができる。そのようなアルゴリズムは、グリッド検索アルゴリズム、勾配検索アルゴリズム、および発見的検索アルゴリズムを含むことができる。
【0038】
したがって、第1の態様によるデバイスを用いて視床下部またはANSの他の神経もしくは神経線維に対して、ANSの神経節近傍に位置しまたはANSの神経節に連結された組織に振動刺激を与えることで、ANS活動に影響を及ぼす。ANS内の活動は、異なる定性的および/または定量的な方法によって直接的または間接的に測定することができる。具体的には、たとえば血圧、瞳孔の寸法、神経の活動、筋肉の活動、および心拍数などの生理学的パラメータの変化を、ANS活動レベルの変化に相関させる。したがって、そのような生理学的パラメータは、ANS活動の測定値として使用することができる。いくつかの測定値は、機能性神経画像検査などによって、直接的に監視することができ;いくつかの測定値は、異なる身体反応、たとえば瞳孔の寸法および心臓の活動などによって、間接的に監視することができる。
【0039】
監視の目的は、治療が効果的であることを確認することである。監視部材は、治療がANSの活動に与える影響に関する情報を入手し、その情報を使用して必要に応じて治療を調整する方法を提供する。治療の目的に応じて、たとえば疾病を治すため、症候を緩和するため、または単に被験者を落ち着かせ、もしくは興奮させるために、治療の目標は、ANSおよび関係する特定の神経節の活動を増大または低減させることである。場合によっては、活動の増大と低減の両方が望ましいこともある。治療は、治療サイクルの振動刺激パラメータ、たとえば振動周波数、振動の振幅、振動の継続時間、および/または刺激部材と刺激される組織との間の圧力を変化させることによって調整することができる。調整は、たとえば制御ユニットによって、手動または自動で実施することができる。
【0040】
一実施形態では、監視部材によって受けられる入力データは、前記組織と前記振動刺激デバイスとの間の圧力、前記組織の導電性、前記組織内のコンプライアンス、被験者の瞳孔の寸法、被験者から導出された脳波(EEG)信号、被験者から導出された筋電図(EMG)信号、被験者から導出された心電図(ECG)信号、血流に関係する光電脈波信号、血液量、心拍数、心拍数変動、血液量パルスおよび/もしくは血中酸素濃度、被験者の血圧、ならびに/または前記被験者の体温に関係する。
【0041】
一実施形態では、システムは、ANS内の活動の測定値を反映する入力データを記憶するように構成された記憶ユニットを備える。
【0042】
一実施形態では、制御ユニットは、受けられた入力データを、以前に実施された治療からの記憶された入力データと比較することによって、ANS内の活動の最小値を表す値を判定するようにさらに構成される。
【0043】
一実施形態では、標的値は、初期入力データを表す値のごく一部に設定される。
【0044】
一実施形態では、監視部材は、振動刺激デバイス内へ少なくとも部分的に一体化される。
【0045】
本発明のシステムは、振動刺激デバイスが前記被験者の組織に好ましくは所望の圧力で当接するように、振動刺激デバイスを被験者に係留するように構成された係留部材をさらに備えることができる。係留部材は、たとえばヘッドバンド、顔マスク、眼鏡、ベルト、カフ、ベスト、接着パッチ、膨張性のカフ、または膨張性のベルトである。
【0046】
さらに、監視部材は、係留部材内へ少なくとも部分的に一体化することができ、または振動刺激デバイス内へ少なくとも部分的に一体化することができる。
【0047】
さらに別の実施形態では、システムは、被験者内で振動刺激のための標的部位を局所化する局所化部材をさらに備える。標的部位は、ANSの標的神経節、標的神経、または標的神経線維である。そのような標的部位は、たとえば、超音波スキャナ、機能性磁気共鳴画像(fMRI)スキャナ、および/または陽電子放出断層撮影(PET)スキャナによって局所化することができる。
【0048】
一実施形態では、局所化部材は、治療標的部位を制御ユニットに伝送するようにさらに構成され、制御ユニットは、受けられた治療標的場所、受けられた病気のタイプ、またはこれらの組合せに基づいて、少なくとも1つの治療サイクルを生成するように構成される。
【0049】
一実施形態では、ユーザ・インターフェースは、治療部位における振動刺激デバイスの位置を確認する位置入力を操作者または被験者から受け、その位置入力を制御ユニットへ伝送するようにさらに構成される。
【0050】
一実施形態では、制御ユニットは、係留部材をどのように適用するかに関する命令を含む情報を生成および伝送するようにさらに構成される。ユーザ・インターフェースは、それらの命令を受けて表示するようにさらに構成することができる。ユーザ・インターフェースはまた、たとえば治療の継続時間を示すプログレス・バーなど、治療サイクルまたは治療に関係するパラメータを表す図形オブジェクトを表示するように構成することができる。
【0051】
第2の態様では、被験者の自律神経系に影響を及ぼす方法が提供され、この方法は、被験者の治療部位に対応する体組織に、治療サイクルに従って振動を与えるように構成された振動刺激デバイスを設ける工程と、病気のタイプを含む入力情報を提供する工程とを含む。この方法は、提供された病気のタイプに基づいて、10〜100Hzの範囲内に含まれる周波数、20〜120ミリバールの範囲内に含まれる刺激デバイスと組織との間の圧力、およびANSの神経節または神経である治療標的に関連する治療部位を有する少なくとも1つの治療サイクルを生成する工程をさらに含む。
【0052】
この方法はまた、前記被験者の治療部位を選択する工程と、前記治療部位に当接するように振動刺激デバイスを係留する工程と、前記振動刺激デバイスから前記治療部位へ、10〜100Hzの周波数を有する振動を伝送する工程とを含むことができる。
【0053】
一実施形態では、病気のタイプは、偏頭痛、IBS、ALS、および鼻炎の少なくとも1つである。
【0054】
一実施形態では、少なくとも1つの治療サイクルを生成する工程は、ルックアップ・テーブルを使用してその病気のタイプに対する治療サイクルを発見することを含む。
【0055】
一実施形態では、この方法は、被験者のANS内の活動の測定値を反映する、以前に実施された振動治療中に監視部材によって収集された入力データを受ける工程と、入力データに基づいて、グリッド検索アルゴリズム、勾配検索アルゴリズム、および発見的検索アルゴリズムから選択できる自動化されたアルゴリズムに従って、少なくとも1つの治療サイクルを調整する工程とをさらに含む。
【0056】
一実施形態では、入力データは、振動治療中の被験者のANS内の活動の測定値を反映する。
【0057】
別の実施形態では、入力データは、振動治療前の被験者のANS内の活動の測定値を反映する。
【0058】
一実施形態では、監視される測定値は、前記組織と前記振動刺激デバイスとの間の圧力、前記組織の導電性、前記組織内のコンプライアンス、被験者の瞳孔の寸法、被験者から導出された脳波(EEG)信号、被験者から導出された筋電図(EMG)信号、被験者から導出された心電図(ECG)信号、血流、血液量、血液量パルス、および/もしくは血中酸素濃度に関係する光電脈波信号、被験者の血圧、ならびに/または前記被験者の体温から選択されるパラメータに関係する。
【0059】
一実施形態では、この方法は、治療部位を選択する工程の前に、治療標的を局所化する工程をさらに含み、前記標的は、自律神経系の神経節、神経、または神経線維である。標的神経節、神経、または神経線維は、たとえば、自律神経系内の疾患が発現した神経節、神経、または神経線維とすることができる。次いで治療部位は、選択された治療標的で影響を実現するように選択される。治療標的は、たとえば、超音波スキャナ、機能性磁気共鳴画像(fMRI)スキャナ、および/または陽電子放出断層撮影(PET)スキャナを使用して局所化することができる。
【0060】
一実施形態では、被験者は、偏頭痛、鼻炎、高血圧症、ALS、およびIBSから選択される病気を患っている。
【0061】
第3の態様では、被験者の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療する方法が提供され、この方法は、第1の振動刺激部材を被験者の第1の鼻腔の後部内へ導入する工程と、第1の振動刺激部材を用いて、60〜70Hzの範囲内の周波数で第1の鼻腔の後部に振動を与える工程と、被験者の頸部の第1の側で僧帽筋と胸鎖乳突筋との間に第2の振動シミュレーション(simulation)部材を配置する工程と、第2の振動刺激部材を用いて、30〜50Hzの範囲内の周波数で頸部の第1の側に振動を与える工程とを含む。
【0062】
一実施形態では、第1の刺激部材を用いて振動を与える工程は、第2の刺激部材を用いて振動を与える工程の前に実施される。別の実施形態では、第1の刺激部材を用いて振動を与える工程は、第2の刺激部材を用いて振動を与える工程と同時に実施される。
【0063】
配置する工程は、第2の振動刺激部材および被験者の頸部の周りにカラーを適用する工程をさらに含むことができる。
【0064】
一実施形態では、第1の振動刺激部材を用いて振動を与える間の第1の振動刺激部材内の時間平均圧力は、90〜105ミリバールの範囲内である。
【0065】
一実施形態では、第2の振動刺激部材を用いて振動を与える間の第2の振動刺激部材内の時間平均圧力は、40〜60ミリバールの範囲内である。
【0066】
導入する工程は、ヘッドバンド、顔マスク、眼鏡、およびヘルメットの少なくとも1つを用いて第1の振動刺激部材を被験者の頭部に係留する工程をさらに含むことができる。
【0067】
一実施形態では、第2の振動刺激部材は、約50〜約100mmの範囲内の直径を有する。
【0068】
導入する工程は、第1の振動刺激部材を本質的には拡大していない状態で鼻腔内へ導入する工程と、第1の振動刺激部材が鼻腔組織に当接するように、第1の振動刺激部材を鼻腔内で拡大させる工程とを含むことができる。
【0069】
本発明の第3の態様の一実施形態では、この方法は、第1の振動刺激部材を第2の鼻腔内へ導入する工程と、第1の振動刺激部材を用いて、60〜70Hzの範囲内の周波数で第2の鼻腔の後部に振動を与える工程とをさらに含む。
【0070】
一実施形態では、この方法は、被験者の頸部の第2の側で僧帽筋と胸鎖乳突筋との間に第2の振動刺激部材を配置する工程と、第2の振動刺激部材を用いて、30〜50Hzの範囲内の周波数で頸部の第2の側に振動を与える工程とをさらに含む。
【0071】
一実施形態では、鼻腔および/または頸部に振動を与える継続時間は、10〜20分の範囲内である。
【0072】
第4の態様では、被験者内のALSを治療する方法が提供され、この方法は、振動刺激部材を用いて、被験者が脚に影響を及ぼす筋力低下の症候を示した場合、被験者の鼻腔に振動を与える工程、および/または被験者が発話もしくは嚥下に困難を有する症候を示した場合、被験者の頸部上の場所に振動を与える工程、および/または被験者が腕に影響を及ぼす筋力低下を患っている場合、被験者の上腕に振動を与える工程を含む。
【0073】
振動が鼻腔に与えられる一実施形態では、この方法は、本質的には拡大していない第1の振動刺激部材を被験者の鼻腔内へ導入する工程と、第1の振動刺激部材が鼻腔の後部内の組織に当接するように、第1の振動刺激部材を鼻腔内で拡大させる工程と、第1の振動刺激部材を用いて、60〜70Hzの範囲内の周波数で鼻腔の後部に振動を与える工程とをさらに含むことができる。
【0074】
振動が頸部に与えられる一実施形態では、この方法は、被験者の頸部のうち、僧帽筋と胸鎖乳突筋との間の位置上に、第2の振動刺激部材を配置する工程と、第2の振動刺激部材を用いて、30〜50Hzの範囲内の周波数で頸部の位置に振動を与える工程とをさらに含むことができる。
【0075】
一実施形態では、振動を与える間の第1の振動刺激部材内の時間平均圧力は、90〜105ミリバールの範囲内である。
【0076】
一実施形態では、第1の振動刺激部材は拡大可能であり、約50〜約100mmの範囲内の横方向の延長を有する。
【0077】
一実施形態では、振動を与える間の第2の振動刺激部材内の時間平均圧力は、40〜60ミリバールの範囲内である。
【0078】
振動が上腕に与えられる一実施形態では、この方法は、第3の振動刺激部材をカフの形態で設ける工程と、第3の振動刺激部材を被験者の上腕の周りに配置する工程と、第3の振動刺激部材を用いて、30〜50Hzの範囲内の周波数で上腕に振動を与える工程とをさらに含むことができる。
【0079】
一実施形態では、振動を与える間の第3の振動刺激部材内の時間平均圧力は、20〜50ミリバールの範囲内である。
【0080】
第5の態様では、胃腸内の疾病を治療する方法が提供され、この方法は、振動刺激部材を用いて、被験者が便秘の症候のみを示した場合、鼻腔に振動を与える工程、および/または被験者が膨満感、腹痛、下痢、便秘、もしくはしぶりの1つもしくはそれ以上の症候を示した場合、腹部に振動を与える工程、および/または被験者が炎症症状の症候を示した場合、腸に振動を与える工程を含む。
【0081】
振動が腹部に与えられる第5の態様の一実施形態では、この方法は、第1の振動刺激部材を設ける工程と、第1の振動刺激部材を用いて、30〜50Hzの範囲内の周波数で被験者の腹腔神経叢の領域内の皮膚に振動を与える工程と、第2の刺激部材を設ける工程と、第2の振動刺激部材を用いて、30〜50Hzの範囲内の周波数で被験者の臍部の皮膚に振動を与える工程とをさらに含むことができる。
【0082】
一実施形態では、それぞれ第1の振動刺激部材および第2の振動刺激部材上に重りが配置され、その結果、これらの部材は、被験者の皮膚に圧力を与える。重りは、たとえば、約1〜約3kgの範囲内の質量を有することができる。
【0083】
一実施形態では、第1の振動刺激部材を用いて振動を与える間の第1の振動刺激部材内の時間平均圧力は、40〜60ミリバールの範囲内である。
【0084】
一実施形態では、第2の振動刺激部材を用いて振動を与える間の第2の振動刺激部材内の時間平均圧力は、20〜30ミリバールの範囲内である。
【0085】
一実施形態では、第1の振動刺激部材は、約50〜約100mmの範囲内の直径を有する。
【0086】
一実施形態では、第2の振動刺激部材は、約150〜約250mmの範囲内の直径を有する。
【0087】
振動が鼻腔に与えられる第5の態様の一実施形態では、この方法は、拡大性の刺激部材を鼻腔内へ導入する工程と、刺激部材を膨張させて鼻腔内の組織に当接させる工程と、60〜70Hzの範囲内の周波数で拡大性の刺激部材を用いて鼻腔内の組織に振動を与える工程とをさらに含むことができる。
【0088】
一実施形態では、振動を与える間の拡大性の刺激部材内の時間平均圧力は、70〜120ミリバールの範囲内である。
【0089】
別の実施形態では、振動を与える間の拡大性の刺激部材内の時間平均圧力は、90〜105ミリバールの範囲内である。
【0090】
振動が腸に与えられる第5の態様の一実施形態では、この方法は、直腸を介して腸内に拡大性の刺激部材を導入する工程と、刺激部材を膨張させて腸内の組織に当接させる工程と、10〜70Hzの範囲内の周波数で拡大性の刺激部材を用いて腸内の組織に振動を与える工程とをさらに含む。
【0091】
一実施形態では、振動を与える間の拡大性の刺激部材内の時間平均圧力は、20〜50ミリバールの範囲内である。
【0092】
一実施形態では、胃腸内の疾病は過敏性腸症候群(IBS)である。別の実施形態では、胃腸内の疾病は、胃炎、膵炎、胃のダンピング症候群、糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、硬化性胆管炎、または炎症性腸疾患(IBD)の少なくとも1つである。
【0093】
第6の態様では、被験者の胃腸内の疾病を治療する方法が提供され、この方法は、第1の振動刺激部材を設ける工程と、第1の振動刺激部材を用いて、30〜50Hzの範囲内の周波数で被験者の腹腔神経叢の領域内の皮膚に振動を与える工程と、第2の刺激部材を設ける工程と、第2の振動刺激部材を用いて、30〜50Hzの範囲内の周波数で被験者の臍部の皮膚に振動を与える工程とを含む。
【0094】
第6の態様の一実施形態では、第1の振動刺激部材を用いて振動を与える間の第1の振動刺激部材内の時間平均圧力は、40〜60ミリバールの範囲内である。
【0095】
第6の態様の一実施形態では、第2の振動刺激部材を用いて振動を与える間の第2の振動刺激部材内の時間平均圧力は、20〜30ミリバールの範囲内である。
【0096】
本発明のシステム態様に関連して記載する実施形態および例は、本発明の方法態様に適宜等しく関係し、また逆も同様であることを理解されたい。
【0097】
例示的な実施形態である図を次に参照する。同じ要素には、同様の符号を付与する:
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】それぞれ本発明による振動刺激デバイスの一例を示す概略図である。
図2】それぞれ本発明による振動刺激デバイスの一例を示す概略図である。
図3】それぞれ本発明による振動刺激デバイスの一例を示す概略図である。
図4-1】それぞれ本発明による係留部材の一例を示す概略図である。
図4-2】それぞれ本発明による係留部材の一例を示す概略図である。
図5】本発明で使用できる連結部材の一例を示す概略図である。
図6-1】それぞれ本発明による係留部材の一例を示す概略図である。
図6-2】それぞれ本発明による係留部材の一例を示す概略図である。
図7】それぞれ本発明による係留部材の一例を示す概略図である。
図8-1】それぞれ本発明による係留部材の一例を示す概略図である。
図8-2】それぞれ本発明による係留部材の一例を示す概略図である。
図9】それぞれ本発明による係留部材の一例を示す概略図である。
図10】それぞれ本発明による係留部材の一例を示す概略図である。
図11】それぞれ本発明による係留部材の一例を示す概略図である。
図12】それぞれ本発明による係留部材の一例を示す概略図である。
図13】本発明のシステム態様によるシステムの一例を概略的に示すブロック図である。
図14】本発明のシステム態様によるシステムの使用の一例を示す概略図である。
図15】本発明によるANSを刺激する方法の一実施形態に含まれる工程を示す流れ図である。
図16A】本発明のシステムおよび方法態様による治療処置の例を示す流れ図である。
図16B】本発明のシステムおよび方法態様による治療処置の例を示す流れ図である。
図16C】本発明のシステムおよび方法態様による治療処置の例を示す流れ図である。
図16D】本発明のシステムおよび方法態様による治療処置の例を示す流れ図である。
図17】本発明のシステム態様によるシステムのグラフィカル・ユーザ・インターフェースの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
ANS
本発明は、ANSの神経節、神経、神経線維、または視床下部に連結されまたは近接する組織上へ与えられる低周波(10〜100Hz)の機械的振動が、その神経節、神経、神経線維、または視床下部の活動に影響を及ぼすという発見に関する。ANSの神経節、視床下部、またはANSの他の神経もしくは神経線維に近接しまたは連結される組織の機械的振動刺激は、ANS内の活動を増大または低減させることができる。本発明は、疾病もしくは症状を治療するか、それとも所望される場合、単にANSの性能を調整するかどうかにかかわらず、被験者のANSに影響を及ぼすことを対象とする。本発明は、治療部位、すなわちANSに連結された組織上へ機械的振動を与えることと;監視部材を使用して、刺激の結果としてANS内の活動の測定値または情報を得ることと;場合により、測定値または情報を使用して、所望、最適、または最大の影響を実現するように振動刺激を調整することとを伴うデバイスおよび方法に関する。
【0100】
本発明の目的のため、ANSとは、交感神経系および副交感神経系、ならびに腸神経系を含むことを意味する。
【0101】
振動刺激の標的は、ANSの1つもしくはそれ以上の神経節、神経、もしくは神経線維、または視床下部である。しかし、これらの振動は、選択された標的神経節または視床下部上へ直接与えられるのではなく、選択された標的神経節または視床下部に連結された組織の治療部位上へ与えられる。したがって、振動は、未知の機構によって、場合によっては治療部位と標的神経節または視床下部との間に位置する組織を通じた振動の機械的な伝達によって、標的神経節または視床下部に間接的に影響を及ぼす。
【0102】
振動で刺激される治療部位と神経節または視床下部との間の通信経路は、完全には理解されていない。しかし、人体は、機械的な影響を検出して通信するための異なる細胞タイプ、いわゆる機械受容器を有する。人体内には、4つの主なタイプの機械受容器、すなわち:パチニ小体、マイスナー小体、メルケル盤、およびルフィニ小体がある。パチニ小体(層板小体としても知られている)は、急速な振動(200〜300Hz)を検出する。マイスナー小体(触小体としても知られている)は、質感の変化(50Hz前後の振動)を検出し、迅速に適応する。メルケル盤(メルケル神経終末としても知られている)は、持続する接触および圧力を検出し、ゆっくりと適応する。ルフィニ小体(ルフィニ終末器官、球状小体、およびルフィニ終末としても知られている)は、皮膚深部の張力を検出し、ゆっくりと適応する受容体である。機械受容器に関する知識の大部分は、皮膚上で実行された研究に由来する。これらの受容体が鼻粘膜内でどのように反応するか、またはこれらの受容体がいつ頭蓋骨に取り付けられるか、もしくは身体の他の部位に存在するかに関しては、あまり知られていない。
【0103】
振動刺激の周波数成分は、所望の治療効果を得るために機械受容器のいくつかの反応に整合するように調整されるべきであると考えられる。周波数を変動させると患者の反応に明らかな変化が見られることから、この仮説には間接的な証拠がある。これは、体内の共鳴の励起と解釈することができる。
【0104】
本発明によれば、ANSのすべての神経節を振動刺激に対する標的とすることができる。例として、蝶形骨口蓋神経節、太陽神経叢の神経節、および脊椎傍神経節について、より詳細に論じる。
【0105】
蝶形骨口蓋神経節(翼口蓋神経節、メッケル神経節、または鼻神経節という名でも呼ばれる)は、頭部および頸部内に見られる4つの副交感神経節の1つである。蝶形骨口蓋神経節は、頭蓋の翼口蓋窩内に位置する。蝶形骨口蓋神経節は、鼻粘膜への血液の流れを調節し、鼻の中の空気を加熱または冷却する。蝶形骨口蓋神経節は、鼻腔の振動刺激による影響を受けることができる。
【0106】
太陽神経叢(腹腔神経叢または腹腔神経叢とも呼ばれる)は、腹部内で胃と横隔膜との間に位置する複雑な神経網である。太陽神経叢は、腹腔神経節および大動脈腎動脈神経節、ならびに他の神経網、たとえば内臓神経および右迷走神経の一部分、ならびに他の相互に連結する線維を含む。2つの腹腔神経節(腹腔神経節、半月状神経節、または太陽神経節とも呼ばれる)は、腹部の上部領域内に位置しており、交感神経系の一部である。これらの神経節の無髄節後軸索(unmyelinated postganglionic axon)は、消化管の大部分、たとえば胃、肝臓、胆嚢、脾臓、腎臓、小腸、結腸、および卵巣に神経を分布させる。大動脈腎動脈神経節は、腹腔神経節に密接して位置しており、これらと部分的に融合していることがある。太陽神経叢の神経節ならびに内臓神経、迷走神経、および他の神経線維は、胴の前部の選択された部位の振動刺激による影響を受けることができる。
【0107】
脊椎傍神経節(交感神経幹の神経節とも呼ばれる)は、頭蓋のベースから尾骨まで脊椎の長さに沿って位置する。脊椎傍神経節は、3つの頚神経節、12個の胸神経節、5つの腰神経節、および4つの仙骨神経節に分割される。これらの神経節は、胸部および腹部の異なる内部臓器に神経を分布させる神経細胞を含む。脊椎傍神経節およびそれらの神経線維叢は、脊椎の長さに沿って、胴の後部、すなわち背中の選択された部位の振動刺激による影響を受けることができる。
【0108】
IBS
過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛、腹部不快感、および排便障害を特徴とする一般的な機能性胃腸疾患である。この疾病は、2つの部分群、すなわち;主に下痢を生じるIBSと、主に便秘を生じるIBSとに分割することができる。現在、複合症候群全体に対する何らかの効果的な治療が存在するとは考えられず、治療の選択は、既存の症候に基づく。IBSに伴う病態生理学的機構(複数可)は、知られていないままであると考えられるが、病態生理学は多因性である可能性が最も高い。いくつかの仮説では、いくつかの例だけを挙げると、たとえば異常なGI運動機能、内臓過敏症、自律神経機能障害、およびマイクロバイオトム(microbiotome)の変容が提案されてきた。さらに、IBSの病態生理学にはセロトニンの不平衡が伴うことを示唆する証拠がある。しかし、IBSの原因は曖昧なままであると考えられる。
【0109】
ALS
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方に影響を及ぼす致命的な神経変性疾患である。この疾病は、進行性の脱力、筋萎縮、線維束性収縮、痙縮、構音障害、および呼吸コンプライズ(comprise)を特徴とする。しかし、この疾病は異質性であり、発症時点ならびに生存時間は個人間で異なる。既存の治療はないと考えられており、生活の質を改善する対症療法が、主な治療手法の役割を果たしている。病態生理学的機構(複数可)は、その大部分が未知のままである。しかし、この疾病は、多因性であり、遺伝的性質ならびに細胞経路に関連すると考えられる。ALSに関連する仮説の他の例には;ウイルス感染によって引き起こされる運動系の発達障害、神経栄養因子の放出不足、グルタメート受容体の発現の変化、およびTDP−43の生成がある。さらに、自律神経系機能障害が関わることもある。脊髄(前角を含む)の3分の2は、前脊髄動脈のみによって供給される。したがって、この血管または関係する循環がわずかに変化することで、人間の運動系の大部分が影響を受ける可能性がある。この事実はまだ、ALSの発達に結び付けられていない。しかし、この仮説は調査されるべきである。
【0110】
高血圧症
高血圧症に伴う病態生理学的機構(複数可)は、完全には理解されていない。しかし、この症状の確立には、いくつかの相関する要因が伴う可能性が最も高い。レニン−アンギオテンシン系(血圧調節に伴う最も重要な内分泌系であると提案される)、内皮機能障害、および神経性の機構は、この過程で不可欠な役割を担うと仮定されるいくつかの領域である。交感神経系は、血圧調節にとって重要なものであり、交感神経の過度の活動は、高血圧症に伴うものであると提案されてきた。さらに、人間および動物のデータでは、自律神経の変調および血圧の増大が、脳の心臓血管領域における炎症過程に結び付けられる。全体として、高血圧症の病態生理学の背景にある機構(複数可)は、大部分が未知のままであるが、いくつかの証拠のラインは、この過程にはいくつかの相関する要因が伴うことを示唆することがある。
【0111】
振動刺激デバイス
本発明の振動刺激デバイスは、振動し、治療される予定の患者または被験者の組織上へその振動を与え、または伝達するように構成される。振動刺激デバイスは、たとえば振動周波数および振幅、治療圧、治療の継続時間などを含む治療サイクルに従って動作されるように構成することができる。治療される予定の患者または被験者は、人間、哺乳動物、または脊椎動物、すなわち四肢動物とすることができる。振動刺激デバイスは、患者の組織に当接するように構成された刺激部材と、刺激部材を振動させる振動部材とを備える。いくつかの実施形態では、刺激部材は振動部材から分離されるが、他の実施形態では、振動部材は刺激部材としても機能し、振動を被験者の組織上へ直接与える。刺激部材は、10〜100Hzの範囲内の周波数、またはその部分間隔(下記参照)で振動することが可能であり、かつそれらの周波数を被験者の組織へ伝達することが可能な材料から作られる。
【0112】
振動刺激デバイスの一例を、図1Aに示す。図示の振動刺激デバイス1は、鼻または腸内の空胴などの体腔内に位置する組織上へ振動を与えるように配置される。振動刺激デバイス1は、体腔内へ導入されて体腔の組織に当接するように配置された拡大性の刺激部材2を備える。刺激部材2は、流体を受ける内側チャンバを有する。図示の例では、刺激部材2は、バルーンの形状である。チャネル4を有する拡大部材3が、刺激部材2へ流体を供給するように構成される。拡大部材3を介して刺激部材2へ流体を供給することで、刺激部材の体積および拡大の程度に影響を与える。
【0113】
流体、たとえば気体または液体の供給は、拡大部材を介して外部装置によって制御することができる。そのような外部装置は、可動のプランジャを有する円筒を備えることができ、プランジャは、前後に動くことによって、円筒内の流体の量を調節し、それによって拡大部材内の流体の量を調節することができる。
【0114】
図1Aに示すタイプの振動刺激デバイスは、参照によって本明細書に組み入れるWO2008/138997にさらに記載されている。
【0115】
図1Bに、鼻腔の後部に振動を与えることによってたとえば視床下部の活動を刺激するために使用できるデバイスの一例を示す。デバイス1は、少なくとも部分的に拡大した状態で示す拡大性の刺激部材2を備える。刺激部材2の内部23は、刺激部材を拡大させるように配置された拡大部材3と流動的に連通している。拡大部材3は管状構造24を備え、管状構造24は、少なくとも部分的に刺激部材内に配置することができる。管状構造24は、刺激部材2の内部23と流動的に連通するように配置された複数の開口部25を備える。拡大部材3は、管状構造24を介して刺激部材の内部23と流動的に連通して配置された細長い構造26をさらに備える。細長い構造は、本質的に刺激部材2の外側に、または部分的に刺激部材2の内側に配置することができる。細長い構造は、管状構造24の一部を密閉することができる。管状構造24の各端部部分は、刺激部材の内部23および細長い構造26と流動的に連通している開口部を備えることができる。流動的連通は、チャネル4を通じて実現することができる。管状構造24は、本質的に刺激部材2の長さ全体にわたって延びることができる。一実施形態では、管状構造は、管状構造の端部から刺激部材の内壁まで5mmの距離をあける。しかし、管状構造24の端部部分の円周面は、刺激部材の内壁から距離をあける。
【0116】
刺激部材に隣接して配置された、または刺激部材内に配置された、細長い構造の端部部分27は、デバイスが被験者の鼻腔内へ挿入されたときに保持部分として機能することができる。細長い構造26のそのような端部部分27は、被験者の鼻孔内へ挿入することができる。
【0117】
管状構造は、場合によっては不規則な形状の鼻腔内で挿入および位置決めを可能にするのに十分な弾性を有する。これは、刺激部材が前庭を通って垂直に屈曲した部分内へ進まなければならないため、矢状面内の動きにとって特に重要である。同時に、管状構造は、鼻腔の後部内への導入中に偶発的な屈曲を回避するのに十分な剛性を提供しなければならない。管状構造は、刺激部材に到達する前に振動の減衰を引き起こすこともある流れ抵抗を回避するのに十分な内径を有する。さらに、管状構造は、複数の開口部と組み合わせて適した剛性を実現する壁の厚さを有することができる。他の材料および機械特性もまた、管状構造の剛性に影響を与えることができる。
【0118】
刺激部材内に配置された管状構造の端部部分は、鼻腔内へ導入されるときにデバイスが動けなくなるのを防止し、患者の不快感を最小にするため、丸くすることができ、または面取りすることができる。
【0119】
複数の開口部を備える管状構造は、その長さ全体に沿って刺激部材の拡大を有効にすることができる。鼻腔の壁は個人間で変動し、場合によっては通路が狭くなるため、複数の開口部により、流体を刺激部材に入れ、刺激部材をその長さ全体に沿って拡大させることが可能になる。図1Bに示す実施形態では、開口部は、異方性の剛性が十分になることを確実にするために、管状構造の両側に交互に配置されている。
【0120】
本発明のシステムは、2つ以上の振動刺激デバイス1または2つ以上の刺激部材2をさらに有することができる。2重の振動刺激デバイス1を有するデバイスの一例を、図2Aに示す。2つ以上の振動刺激デバイス1または刺激部材2を有するデバイスは、組織の異なる部分を刺激するために、たとえばより大きい面積の組織に振動を提供するために、または異なる組織、すなわちANSの異なる部分に振動を提供するために、使用することができる。したがって、振動刺激デバイス1または刺激部材2は、デバイス内で密接して位置することができ、またはより大きい距離をあけて位置することができる。加えて、または別法として、2つ以上の振動刺激デバイス1または刺激部材2は、異なる周波数を組織の異なる部分へ提供するために使用することもできる。さらに、2つ以上の振動刺激デバイス1または刺激部材2は、互いに密接して位置することができ、もしくは振幅調整をもたらすように異なる周波数で振動させることができ、または同時刺激を提供するように身体の異なる部分に配置することができる。刺激部材2は、前の例の刺激部材2とは異なり、それぞれの拡大部材3を備え、または刺激部材2へ流体を提供する共用の拡大部材3を備える。各刺激部材2はまた、上記のように、共用の振動部材またはそれぞれの振動部材に連結される。
【0121】
図2Bでは、本発明によるデバイスのさらに別の特有の例について説明する。図2Bのデバイス1は、2つの刺激部材2aおよび2bを備えることから、図2Aに示す実施形態に類似している。各刺激部材は、刺激部材2aおよび2bを拡大させる拡大部材3aおよび3bに連結される。しかし、後部の刺激部材2bに連結された拡大部材3bは管状構造24bを備え、管状構造24bは、少なくとも部分的に刺激部材2b内に配置することができる。管状構造24bは、刺激部材2bの内部28bと流動的に連通するように配置された複数の開口部25bを備える。管状構造24bは、拡大部材3aとともに、共通のハウジング7内に密閉することができる。一実施形態では、管状構造24bは、管状構造の端部から刺激部材2bの内壁まで5mmの距離をあける。管状構造24bの端部部分は、刺激部材2bの内壁から距離をあける。
【0122】
振動刺激デバイス1のさらに別の例を、図3に示す。図示の振動刺激デバイスは、必ずしも体腔内に位置するとは限らない組織、典型的には体腔の組織より平坦で露出された組織上へ振動を与えるように配置される。例には、手術中の胴もしくは四肢上の皮膚または内部臓器の表面上の領域が含まれる。たとえば、振動刺激デバイスは、胴にもしくは胴の周りに、背中に、または腕もしくは脚の周りに取り付ける予定のベルト、カフ、ベスト、接着パッチ、または類似の係留部材10の一部として配置することができる。図8〜10を参照されたい。図示の実施形態では、ポーチ、バッグ、バルーン、またはメンブレンの形態の刺激部材2が、係留部材10に取り付けられており、刺激される予定の組織に当接するように配置され、また振動することが可能であり、かつ組織上へ振動を与えることも可能である。そのような実施形態では、刺激部材2の材料は、係留部材10の材料とは異なることもでき、刺激部材2は、組織上へ振動を与えるのに適した材料から作られ、係留部材10は、身体に取り付けるのに適した材料から作られる。刺激部材2は、刺激部材を振動させるように配置された振動部材に連結される。一実施形態では、刺激部材2は、たとえばバッグ、ポーチ、もしくはバルーンとすることによって、または係留部材10とともにチャンバを形成するメンブレンとすることによって、流体を受けるチャンバを形成する。刺激部材2は、係留部材10と下層組織との間に形成されたチャンバとしてさらに配置することもでき、すなわちメンブレン、バルーン、または類似の手段を含まない。次いで、チャンバ内の流体、たとえば空気は、組織上へ振動を直接与える。これには、流体がチャンバからまったくまたはほとんど逃げないように、係留部材10が組織に対して液密封止を形成する必要がある。チャネル4を有する拡大部材3は、刺激部材2と連結されており、チャンバへ流体を供給するように構成される。振動部材は、図1A〜Bに関連して上述した配置と同様に、チャンバ内に含まれる流体へ振動を供給するように配置される。
【0123】
別の実施形態では、振動部材は刺激部材2である。すなわち、振動は、振動部材によって組織上へ直接与えられる。
【0124】
一実施形態では、振動刺激デバイス1は、係留部材10と一体化される。たとえば、振動刺激デバイス1は、膨張性のカフまたはベルトと一体化することができ、膨張性のカフまたはベルトには、液体または気体の形態の流体が供給される。
【0125】
別の実施形態では、刺激部材2は、係留部材10と同じ材料から作られており、係留部材10の一体部材である。たとえば、刺激部材2は、振動を伝達してその振動を組織上へ与えることができる材料から作られたカフまたはベルトとして配置することができる。たとえば、図8〜9を参照されたい。カフまたはベルトは、たとえば膨張性を有することができ、したがって、液体または気体の形態の流体を供給することができる。次いで、振動部材は、カフまたはベルト内の流体へ振動を供給し、カフまたはベルトの材料を振動させ、したがって振動を下層組織上へ与えるように配置することができる。
【0126】
非限定的な例を通じて上述したように、刺激部材2は、バルーン、バッグ、ポーチ、またはメンブレンの形状とすることができる。刺激部材2の他の例は、バブルおよび発泡デバイスを含む。刺激部材2の材料は、10〜100Hzの範囲内の振動またはその部分間隔を伝達することが可能であり(下記参照)、それらの振動を組織上へ与える。材料は、可撓性を有することができ、刺激部材2に弾性を提供することができる。したがって、刺激部材2の寸法および体積は、内圧によって変動することができる。代替実施形態では、刺激部材2は、弾性はないが可撓性の材料から構成され、または部分的に弾性の特性を有する。
【0127】
刺激部材2は、接触するいかなる体組織にも化学的または生物学的な影響を及ぼさない材料から作ることができる。たとえば、刺激部材2は、局所的な影響を体組織に与えないようにすることができる。材料の非限定的な例には、プラスチック材料またはゴム材料がある。いくつかの例では、刺激部材2はラテックスから作られる。
【0128】
別の実施形態では、刺激部材2は、接触する体組織上で化学的または生物学的な活動を有する材料から作られ、またはそのような材料で被覆される。
【0129】
別の実施形態では、刺激部材2は、医薬品またはCOなどの治療用の気体を分散させる手段を備えることができる。そのような一実施形態では、組合せ治療を実現して、本発明の治療の適用可能性をさらに増大させることができる。
【0130】
刺激部材2は、特に体腔内への導入向けに配置されるとき、体腔内への導入中に刺激部材2と周辺組織との間の摩擦を最小にする外面をさらに備えることができる。刺激部材2は、たとえば、平滑な外面を提供する材料から構築することができ、またはたとえばパラフィン溶液などの潤滑剤で被覆することができる。
【0131】
刺激部材2の形状および寸法は、刺激される予定のANSの部分および関連する組織に依存する。成人の鼻の刺激の場合、刺激部材の長さは、40〜60mmなど、約3〜100mmであり、幅は、10〜20mmなど、約1〜40mmである。新生児または動物で使用するために製造されたとき、刺激部材2の寸法は、それに応じて調整しなければならない。さらに、鼻以外の身体の場所で使用するための刺激部材2の寸法は、さらに大きく変動することがある。いくつかの実施形態では、システムは、複数の振動刺激デバイス1または振動刺激部材2を備え、そのような振動刺激デバイス1または振動刺激部材2もまた、異なる幾何形状および寸法を有することができる。個々の刺激部材2は、長さおよび幅に関して異なってもよく、ANSのそれぞれの神経節または部分の適切な刺激を容易にするために、異なる横方向に湾曲および屈曲した形態を示すことができる。異なる形状および寸法の2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の刺激部材2を備えるキットを設けることもできる。
【0132】
振動刺激デバイス1が刺激部材2を振動させるように配置された振動部材を備える実施形態では、振動部材は、たとえば、制御ユニットから供給される印加電圧によって制御される振動生成器を備えることができる。そのような例では、振動部材は、刺激部材2内に配置することができる。
【0133】
別の例では、振動部材は外部に配置される。そのような外部振動源、たとえば変換器は、刺激部材2内に含まれる流体へ振動を供給するように配置することができる。
【0134】
振動はさらに、刺激部材2内に含まれる流体を介して組織へ与えることができる。したがって、振動部材は、流体へ振動を提供することができ、流体は、拡大部材3を介して刺激部材2へ振動を伝達する媒体として機能する。
【0135】
組織上の振動刺激は、10〜100Hzの周波数で実施することができる。他の周波数も考えられる。選択された周波数は、治療される予定のANSの選択された部分、たとえば選択された神経節に適合されるべきである。さらに、周波数は、治療中に時間とともに変化させることができる。周波数はまた、センサおよび監視手段または監視部材の使用によって判定されるように、治療がANSに与える影響に反応して変化させることもできる。これについて、さらに後述する。
【0136】
本発明による刺激部材2はまた、適用分野に応じて様々な波パターンで振動させることができる。刺激部材2は、たとえば、振動を正弦波または方形波として説明できるように振動させることができる。
【0137】
組織に印加される振動の振幅は、約0.3mm〜約5mmなど、約0.05mm〜約20mmの範囲内であるが、他の振幅も考えられる。自律神経系の特定のレベルの刺激に必要な振幅は、影響を与える予定の神経節の性質、その神経節を取り囲む組織、および当該患者の感度によって管理されることを理解されたい。
【0138】
刺激部材は、刺激される予定の組織およびANSの特定の神経節または部分に応じた圧力で、組織に当接するように配置される。視床下部の刺激の場合、鼻腔の後部の組織を介して、刺激部材2は、たとえば、75〜100ミリバールなど、約70〜120ミリバールの圧力で組織に当接するように配置される。蝶形骨口蓋神経節の鼻の刺激の場合、刺激部材2は、たとえば、約20〜40ミリバールの圧力で組織に当接するように配置される。腸の刺激の場合、20〜50ミリバールの圧力を使用することができる。
【0139】
係留部材
本発明のシステムは、係留部材を備えることができる。係留部材は、振動刺激デバイス1を定位置で保ち、刺激中にデバイスが意図せず動くのを防止する。当業者には理解されるように、係留部材は、多数の異なる方法で、異なる材料によって配置することができる。係留部材は、治療される予定の身体の部分に適合されるべきである。係留部材は、たとえば、ヘッドバンド、顔マスク、眼鏡、ヘルメット、ベルト、カフ、ベスト、または接着パッチの形態で設けることができる。ヘッドバンド、顔マスク、眼鏡、およびヘルメットは、鼻腔ならびに頭部および頸部の一部を刺激するための振動刺激デバイスを係留するのに特に適している。ベルトは、胴の刺激のために振動刺激デバイスを係留するのに適しており、カフは、四肢、すなわち腕または脚の刺激のために振動刺激デバイスを係留するのに適している。
【0140】
係留部材10は、ANS内の活動の測定値を反映するデータの収集を有効にする検出部材18を備えることができ、または後述するように、センサもしくは監視部材75の少なくとも一部を備えることができる。本開示では、検出部材18は、それ自体では受動の部材、たとえばEEG、EMG、またはECG電極として理解され、センサまたは監視部材75は、データ収集を実行し、かつ/または収集されたデータを受けるように構成される。
【0141】
異なる係留部材の例を、図4〜11に示す。
【0142】
図4Aは、鼻腔内の振動刺激に使用される振動刺激デバイス1を係留するためのヘッドバンド11および支持アーム12を備える係留部材10の側面図を示す。鼻腔を介して治療できる疾患には、偏頭痛、群発性頭痛、ALS、およびメニエール病が含まれる。ヘッドバンドは、被験者の頭部に密接に嵌るように、好ましくは弾性を有する。別の例では、ヘッドバンドは、少なくとも部分的に非弾性であり、ヘッドバンドは、調整部材を使用して被験者の頭部の周りに調整することができる。支持アーム12は、鼻梁上に載置することができる。鼻の刺激に使用される任意の係留部材に対する所望の特性は、振動刺激デバイス1を一方の鼻孔から他方の鼻孔へ動かすための容易な方法を提供することである。したがって、支持アームは、好ましくはまた、ヘッドバンド11の長さに沿って横方向に可動となるように構成される。代替手段として、支持アームは、ヘッドバンドに対して固定されており、調整可能な端部部分を備え、この調整可能な端部部分に刺激デバイスが取り付けられる。ヘッドバンド11および顔に対する支持アーム12の角度は、たとえばヒンジの形態の角度調整部材16を介して調整することができる。支持アーム12は、振動刺激デバイス1の取付け、場合により解放可能な取付けのための取付け部材14を備える。取付け部材14はまた、支持アーム12と振動刺激デバイス1との間の角度の調整を有効にする手段、たとえば連結ジョイント19で構成することができる。図4Bは、各鼻孔に対して1つずつ、2つの振動刺激デバイス1を有する2重の刺激向けに適合された類似の係留部材10の正面図を示す。したがって、取付け部材14は、2つの振動刺激デバイス1を収容するように構成される。図4Cは、ヘッドバンド11を有する係留部材10のさらに別の変形形態を示す。この変形形態では、支持アーム12は、ヘッドバンド11の側面に取り付けられる。これは患者にとってより快適であり、頭部の各側に1つの支持アームを有することによって、2つの振動刺激デバイス1の収容を容易にするという利点も有する。また、1つの振動刺激デバイス1のみで使用することもできる。図4Dは、支持アーム12が側面に取り付けられ、振動刺激デバイス1が2重の刺激部材2を有する、ヘッドバンド11の正面図を示す。
【0143】
ヘッドバンドはまた、たとえば、EEG測定を有効にする電極の形態で、または耳たぶへ取り付けるための光電脈波センサの形態で、1つまたはそれ以上の検出部材18を備えることができる。
【0144】
図5は、支持アーム12を振動刺激デバイス1と連結するために使用できる連結ジョイント19の概略例を示す。連結ジョイント19は、自立型のユニットとすることができ、支持アーム12と振動刺激デバイス1の両方に解放可能に取り付けることができる。別法として、連結ジョイント19は、たとえば拡大部材3を介して、振動刺激デバイス1に恒久的に取り付けることができる。連結ジョイント19は、第1の連結ユニット20および第2の連結ユニット21を備える。第1の連結ユニット20は、振動刺激デバイス1に、たとえばその拡大部材3に連結されるように配置される。第1の連結ユニット20は、たとえば、拡大部材3の形状に整合する形状を有することができ、その結果、第1の連結ユニット20と拡大ユニット3は、スナップ嵌めを通じて取り付けることができる。第2の連結ユニット21は、支持アーム12に連結されるように配置される。図示の例では、支持アーム12は、ソケットの形態の取付け部材14を備え、連結ジョイントの第2の連結ユニット21は、対応するボールとして成形される。したがって、取付け部材14と第2の連結ユニット21は、玉継手を形成することができる。当業者には理解されるように、代わりに、連結ジョイント19がソケットを備え、支持アーム12がボールを備えることもできる。支持アーム12と連結ジョイントとの間の他の解放可能な締結部材も考えられる。好ましくは、締結部材は、支持アーム12と連結ジョイント19との間の角度の回転および/または調整を有効にする。
【0145】
連結ジョイント19の利点は、鼻腔内への刺激部材2の挿入を容易にすることである。連結ジョイント19は、鼻腔内への刺激部材2の挿入前に、振動刺激デバイス1に取り付けることができる。刺激部材2が定位置について初めて、連結ジョイント19が支持アーム12に取り付けられる。このようにして、鼻腔内への刺激部材2の挿入中に支持アーム12の干渉を回避することができる。
【0146】
図6A〜Dは、同じく鼻腔内の振動刺激に適合された振動刺激デバイス1とともに使用される、ヘッド・ストラップ31を有する顔マスク30を備える係留部材10の例を示す。顔マスク30は、好ましくは、被験者の頭部寸法の変動への適合を可能にするために弾性を有する。一例では、顔マスク30は、鼻33および口34に対する孔を有する。別の例では、マスク30は、好ましくは、刺激中の呼吸を可能にするために空気に対する透過性を有する。マスク30は、2つのストラップ31、好ましくは弾性のストラップを使用して、顔上へ固定することができる。さらに、マスクは、刺激中に刺激部材を固定の位置で保持するための少なくとも1つのロッキング部材35を備えることができる。図6Cは、そのようなロッキング部材35の一実施形態の概略図を示す。顔マスク30に取り付けられたロッキング・ユニット36は、スナップ嵌め機構によって、振動刺激ユニットの拡大部材を定位置で保持する。図6Dは、2つの振動刺激デバイス1を並列に取り付けるための2つのロッキング部材35a、35bを備える顔マスクの一例を示し、振動刺激デバイス1は、たとえば被験者の各々の鼻孔内で使用され、または1つの刺激部材が、左右の鼻孔内で順次使用される。
【0147】
マスクはまた、たとえば耳たぶに取り付けるための光電脈波センサの形態で、1つまたはそれ以上の検出部材18を備えることができる。
【0148】
本発明の係留部材はさらに、図7に示すように、眼鏡40の形態とすることができる。図7Aは、振動刺激デバイス1を単一の刺激部材2に係留する眼鏡を示す。図7Bは、振動刺激デバイス1と2重の刺激部材2の係留を示す。眼鏡40は、ヘッドバンドの場合と同じ原理に従って、支持アーム12を備え、場合により、角度調整部材16、取付け部材14、および/または連結ジョイント19を備える。眼鏡40は、刺激中に被験者の目に光が入らないように、暗いガラスとともに配置することができ、または少なくとも部分的にしか光を伝達しないようにすることができる。これは、たとえば、光を感じやすい被験者、たとえば頭痛発作中に体験した羞明を治療するときに有利である。
【0149】
眼鏡40はまた、たとえば瞳孔の寸法の手動または自動測定デバイスの形態で、1つまたはそれ以上の検出部材18を備えることができる。
【0150】
図8Aは、ベルト50の形態の係留部材10の一例を示す。図示のベルトは、たとえば図3に示すタイプの振動刺激デバイス1を備える。他の実施形態では、ベルト50はまた、2つ以上の振動刺激デバイス1または刺激部材2を備えることができる。ベルト50は、たとえば、腹腔神経叢または腹腔神経叢としても知られている太陽神経叢で治療に使用することができる。太陽神経叢を介して治療できる疾患には、過敏性腸症候群(IBS)およびクローン病が含まれる。好ましくは、ベルト50は膨張性を有し、その結果、ベルト50と下層組織との間の圧力を調整することができる。このようにして、ベルトが充填されていないときには、ベルトの位置決めを容易に調整することができ、その結果、刺激に対して所望の位置に刺激部材2を配置することができる。ベルト50が所望の位置にあるとき、ベルトを膨張させ、それによって、ベルトと身体との間の圧力が増大するにつれて刺激部材2を正しい位置でしっかりと係留する。膨張性のベルトの別の利点は、実施される予定の特有の治療に対して、刺激部材2と下層組織との間の圧力を調整および最適化できることである。
【0151】
図8Aに示すように、刺激部材2は、ベルト自体とは別の材料のポーチ、バッグ、バルーン、またはメンブレンとして配置することができ、すなわち刺激部材は、ベルトとは別個であるが一体化される。別の実施形態では、ベルト50と刺激部材2は完全に一体化されており、すなわちベルト50は刺激部材2として機能する。そのような実施形態では、ベルト50は、刺激される予定の下層組織上へ振動を与えることが可能な材料から作られる。そのような場合、振動刺激は、多かれ少なかれ、患者の身体のはっきり画成された領域を覆う。さらに別の実施形態では、ベルトの一部のみが、振動を与えて刺激部材として機能できる材料から作られる。
【0152】
振動は、一体化された振動部材または外部の振動部材によって、たとえば振動している流体(液体もしくは気体)を介して、または他の手段、たとえば圧電変換器、拡声器、もしくはボイス・コイル・モータによって、刺激部材2に与えることができる。
【0153】
ベルト50はまた、たとえばECGもしくはEMG測定のための電極、または皮膚の導電率もしくは圧力を測定するセンサの形態で、1つまたはそれ以上の検出部材18を備えることができる。
【0154】
図8Bは、図8Aの係留部材10の一例を示し、刺激部材2は、75mmの直径を有することができる。図8Cは、直径200mmのより大きい刺激部材2を有する係留部材10の別の例を示す。
【0155】
振動を患者の身体へ伝送することを有効にするために、図8Dに示すように、たとえば2kgの釣り合い重り20を刺激部材2の上に適用することができる。刺激部材2(点線で示す)から空気を出し入れすることで、患者と刺激部材2との間の接触領域に影響を及ぼすことができ、したがって接触圧を修正することができる。
【0156】
図9Aは、カフ55の形態の係留部材10の一例を示す。カフ55は、たとえば、腕または脚の治療に使用することができる。カフは、ベルトに関して上述した原理と同じ原理に従って配置することができる。カフは、たとえば、膨張性を有することができ、たとえば図3に示すタイプの少なくとも1つの振動刺激デバイス1もしくは刺激部材2を備えることができ、またはカフ自体を介して振動を与えることができる。カフはまた、血圧カフとして配置することができ、その結果、振動を提供し、ならびに患者の血圧を監視することが可能な2重の機能を有する。カフ55はまた、たとえばEMG測定のための電極、または皮膚の導電率もしくは圧力を測定するセノー(senor)の形態で、1つまたはそれ以上の他の検出部材18を備えることができる。腕または脚カフによって与えられる振動を使用して治療できる疾患には、動脈硬化症および慢性関節リウマチが含まれる。
【0157】
図9Bは、カラー57の形態の係留部材10の一例を示す。カラーは、頸部に投与される治療中に振動刺激デバイス1を定位置で、好ましくは僧帽筋と胸鎖乳突筋(後頭三角)との間で保つように配置される。刺激デバイス1は、円形として示されている(カラーによって隠れる輪郭を破線で示す)。カラー57は、振動が組織に影響を確実に及ぼすように、剛性を有することができる。患者の快適性を増大させるために、カラー57の縁部の周囲に何らかの当て物を設けることができる。カラー57によって定位置で保たれる振動刺激デバイス1によって頸部に与えられる振動を使用して治療できる疾患には、たとえばALSを含むことができる。
【0158】
図10は、ベスト60の形態の係留部材10の一例を示す。図示の例では、ベストは、2つの振動刺激デバイス1または刺激部材2を備える。しかし、1つ、2つ、またはそれ以上の振動刺激デバイス1または刺激部材2の使用が考えられる。少なくとも1つの振動刺激デバイス1は、好ましくは、図3に関連して説明した種類のものである。ベスト60は、振動刺激に適した圧力で背中の組織に当接するように刺激部材2を配置できるように構成される。好ましくは、ベストは弾性を有しており、適した圧力を実現するのに適した剛性を有する。ベスト60は、たとえば、脊椎傍神経節の刺激に使用することができる。ベスト60はまた、たとえばECGもしくはEMG活動を測定する電極、または皮膚の導電率もしくは圧力を測定するセンサの形態で、検出部材18を備えることができる。
【0159】
図11は、接着パッチ65の形態の係留部材の一例を示す。パッチ65は、少なくとも1つの振動刺激デバイス1または刺激部材2を備えており、治療部位として選択された身体の部分に取り付けられる予定の接着面を有する。振動刺激デバイス1は、好ましくは、図3に関連して説明した種類のものである。接着パッチはまた、たとえばEEG、EMG、もしくはECG活動を測定する電極、または皮膚の導電率もしくは圧力を測定するセンサの形態で、検出部材18を備えることができる。
【0160】
図12は、気管内チューブ70用のカフの形態の係留部材10を示す。これらは、たとえば手術中の通気に使用される。喉頭内で特定のタイプの手術を実行するとき、特定の時間内でチューブを除去しなければならず、そうでなければ喉頭を損傷することが知られている(Hermes C.Grillo、「Surgery of the trachea and bronchi」(2004)、302〜307頁、ISBN 1550090585、PMPH−USA)。これに対する説明は、完全には明らかでないが、喉頭内の神経が適切に刺激された場合、損傷を回避できると考えられる。カフ70を介して振動の形態の刺激を投与することができ、膨張性の部材は、チューブを定位置で保つことを意味する。振動によってカフを長手方向に動かさないように、注意を払わなければならない。1つの方法は、この方向に高い摩擦を与えるように構造化された面を、カフに設けることである。
【0161】
別の実施形態は、食道の内側に振動を与えることである。経鼻胃の挿管は、薬物を送達および投与するためのよく知られている技法である。この場合、そのようなチューブは、振動刺激部材を装備しているはずである。身体のこの部分を治療する目的は、たとえば、部分的に食道に近接している迷走神経を刺激することである可能性がある。
【0162】
監視部材
本発明のシステムは、被験者のANS内の活動の測定値を反映する入力データを受ける監視部材75を備える。そのようなデータは、振動刺激を継続するべきか、調整するべきか、それとも終了できるかを判定するための身体反応の測定値として使用することができる。監視部材75は、ANS活動に関係するパラメータの直接的な測定値を収集するセンサであり、または別法として、センサもしくは検出部材18によって事前に収集されたデータを受けるデータ受取り部材(data receiving member)である。監視部材75がデータ受取り部材である場合、受けるデータは、一実施形態では、検出部材18から直接受ける生データである。別の実施形態では、受けるデータは、検出部材18によって収集された後で監視部材75へ入力される前に処理されたデータである。
【0163】
入力データは、ANS内の活動に関係する少なくとも1つのパラメータの測定値である。パラメータは、ANS内の交感神経と副交感神経のいずれかまたは両方の活動に関係することができる。監視部材75は、ANS内の活動の間接的または直接的な測定値を反映する入力データを受けることができる。
【0164】
監視部材75は、本発明の振動刺激デバイス1と一体化することができ、または振動刺激デバイス1にカップリングできる別個のデバイスとして設けることができる。
【0165】
本発明で使用できる監視部材75には、振動刺激デバイスと下層組織との間の圧力を測定する圧力センサ、被験者の瞳孔の寸法を測定する手段、被験者の血圧を測定する手段、被験者の体温を測定する手段、脳波(EEG)記録器、筋電図(EMG)記録器、たとえば筋電計、心電図(ECG)記録器、すなわち心電計、および光電脈波センサが含まれる。
【0166】
加えて、または別法として、監視部材75は、前記組織と前記振動刺激デバイスとの間の圧力の測定値、前記組織の導電性の測定値、前記組織内のコンプライアンスの測定値、被験者の瞳孔の寸法の測定値、被験者から導出された脳波(EEG)信号、被験者から導出された筋電図(EMG)信号、被験者から導出された心電図(ECG)信号、光電脈波信号、被験者の血圧の測定値、または前記被験者の体温の測定値を反映する入力データを受ける手段を含むことができる。
【0167】
一実施形態では、ANS活動の測定値は、機能性神経画像検査によって得られる。これは、したがって監視部材によって受けられた入力データが、機能性神経画像検査によって測定されるANS活動を反映することを意味する。より具体的には、ANS活動の測定値を反映する入力データは、機能性磁気共鳴画像(fMRI)によって測定される酸素消費量と;陽電子放出断層撮影(PET)によって測定される代謝活動と;脳磁図検査(MEG)によって測定される磁気信号、および脳電図検査(EEG)によって測定される電気信号とからなる群から選択することができる。そのような測定値および監視方法は、ANS活動の直接的な測定値の例である。機能性神経画像検査の分野では、新しい改善された方法およびデバイスが開発され、これらは本発明の態様で使用することが可能であることが予想される。
【0168】
監視部材75は、少なくとも部分的に刺激部材2と一体化することができる。加えて、または別法として、係留部材10を備える本発明の実施形態では、監視部材75を係留部材10と一体化することができる。刺激部材2との少なくとも部材的な一体化に適した監視部材75には、圧力センサ、組織のコンプライアンスを判定する際に使用するセンサ、ならびに組織の導電性および/または電気インピーダンスを判定する際に使用するセンサが含まれる。係留部材との少なくとも部分的な一体化に適した監視部材75には、被験者の瞳孔の寸法を測定する手段、被験者の血圧を測定する手段、被験者の体温を測定する手段、組織の伝導性を判定する際に使用するためのセンサ、脳波(EEG)記録器、筋電図(EMG)記録器、心電図(ECG)記録器、および光電脈波センサが含まれる。EEG、EMG、およびECG記録器の場合、そのような記録器に対する電極部材は、係留部材10と適切に一体化される。
【0169】
係留部材10は、たとえば、EEG、EMG、またはECG記録器を部分的に備えることができ、すなわちそのような記録器の電極部材を備えることができる。図4Aおよび図4Cは、一体化されたEEG電極を有するヘッドバンド11を備える係留部材10を示す。図8は、運動ニューロン活動および心臓鼓動または心拍数変動をそれぞれ測定する一体化されたEMGまたはECG電極を有するベルトを示す。図9は、一体化されたEMG電極を有する腕カフを示す。別の実施形態では、係留部材10は、血流、血液量パルス、および/または血液中の酸素濃度を測定する光電脈波センサを備えることができる。光電脈波センサを有する係留部材の一例は、図6Bに示されている。顔マスク30のストラップ31の1つは、耳で使用するための光電脈波センサを備える。
【0170】
被験者の瞳孔の寸法は、図7A〜Bに示すように、眼鏡、たとえば係留部材10としても使用される眼鏡40を使用して測定することができる。たとえば、刺激前および/または刺激中の瞳孔の寸法の測定を簡略化するために、眼鏡の表面上にスケールを挿入することができる。分解能を増大させるために、眼鏡は、適した焦点距離のレンズを備えることができる。別法として、瞳孔の寸法を測定する瞳孔計などの自動瞳孔反応モニタまたはセンサを、眼鏡と一体化することもできる。そのような瞳孔測定は、たとえば米国特許出願公開第2008/0198330号に開示されている。瞳孔の寸法は、ストレスおよび注意力のレベルなどの身体反応の測定値として使用することができる。
【0171】
本発明のシステムは、監視部材75によって収集された入力データからの関連情報を抽出および分析する信号処理部材および/またはデータ分析部材をさらに備えることができる。測定されたパラメータの絶対値に関連して、ANS活動を分析および評価することができる。別法として、ANS活動は、測定されたパラメータの変化率または周波数スペクトルから評価することができる。
【0172】
振動刺激治療システム
ANSの活動に与える影響を監視する目的は、治療が効果的であり、所望の結果を与えることを確認することである。監視部材75は、治療がANSの活動に与える影響に関する情報を入手し、その情報を使用して必要に応じて治療を調整する方法を提供する。治療の目的に応じて、たとえば疾病を治すため、症候を緩和するため、または単に被験者を落ち着かせ、もしくは興奮させるために、治療の目標は、ANSおよび関係する特定の神経節の活動を増大または低減させることである。場合によっては、活動の増大と低減の両方が望ましいこともある。治療は、振動刺激パラメータ、たとえば振動周波数、振動の振幅、振動の継続時間、および/または刺激部材2と刺激される組織との間の圧力を変化させることによって調整することができる。調整は、手動または自動で実施することができる。
【0173】
本発明の一態様によるシステムを、図13に概略的に示す。このシステムは、振動刺激デバイス1と、上記の監視部材75と、制御ユニット80と、振動生成ユニット90と、治療標的を局所化する局所化部材95と、情報を送受信するユーザ・インターフェース85とを備える。たとえばモニタおよび/またはキーボードを有するユーザ・インターフェース85は、たとえば偏頭痛、過敏性腸症候群(IBS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、鼻炎、および高血圧症など、様々なタイプの病気のリストを表示する。使用者は、たとえば所望のタイプの上をクリックまたはタップすることによって、表示された病気の1つまたはいくつかを選択することができ、モニタは、選択された病気のタイプに応じて、特有の病気の症候に対する入力を要求することができる。たとえば使用者が病気のタイプとして「偏頭痛」を選択した場合、モニタは、体験した疼痛のレベルおよび疼痛の場所を質問することができ、使用者はそれらを追加することができる。ユーザ・インターフェース85はまた、たとえば被験者の年齢、性別、人種、体重、身長、および識別情報などの他の情報を質問し、かつ/またはそれらの情報を受けるように構成することができる。これらすべてのパラメータ、すなわち病気のタイプ、症候、年齢および性別などの被験者情報などを「入力情報」と呼ぶことができ、入力情報は制御ユニット80へ伝送される。制御ユニット80は、入力情報を受けるように構成され、入力情報に基づいて、振動刺激デバイス1の動作を制御するために、治療サイクルを生成し、または制御信号を出力する。治療サイクルは、たとえば、周波数、治療圧、治療の継続時間、治療部位、刺激デバイス(または部材)1のタイプ、ANS内の活動の測定値を反映するデータに対する標的値、振動パターン、および振動の振幅を含むことができる。治療サイクルの周波数は、たとえば、10〜100Hzの間隔内に含むことができ、治療圧、すなわち振動刺激中の振動刺激デバイス1と組織との間の時間平均圧力は、20〜120ミリバールの間隔内に含むことができる。制御ユニット80は、治療サイクルに従って、たとえば振動生成ユニット90を用いて、振動刺激デバイス1を動作させるようにさらに構成される。制御ユニット80はまた、生成された治療部位をモニタへ返すように構成され、使用者は、振動刺激デバイス1を患者100の上または中でどこにかつどのように位置決めするかに関する命令を、モニタから受けることができる。振動刺激デバイス1が治療部位に位置するとき、使用者は、ユーザ・インターフェース85を介して配置を確認することができる。確認は、制御ユニット80へ伝送され、次いで制御ユニット80は、生成された治療サイクルに従って、治療を開始する。
【0174】
治療中、振動刺激デバイス1は、初期周波数および振幅を有する振動を、被験者100の組織に対して初期圧力で提供する。振動治療の影響は、被験者100のANS内の活動の測定値を反映する入力データを収集する監視部材75によって連続的、周期的、または断続的に監視される。監視部材75はまた、当技術分野では一般に知られている信号処理方法に従って、最初に監視されたデータをフィルタリングおよび処理する信号処理モジュールを備えることができる。別法として、監視部材75は、別個の信号処理モジュールに連結することができ、または制御ユニット80は、信号処理モジュールを備える。したがって、制御ユニット80は、被験者100内のANSの活動を反映する生データまたは処理済みデータを、監視部材75から受けることができる。
【0175】
制御ユニット80は、監視部材75によって受けられたデータを記憶し、かつ/または制御ユニット80によってさらに処理されたデータなどの他のデータを記憶するメモリまたは記憶ユニットを備えることができる。制御ユニット80はまた、生データを処理し、かつ/または精製されたデータをさらに処理する信号および/またはデータ処理モジュール、ならびに中央処理装置(CPU)を備えることができる。一実施形態では、制御ユニット80は、ソフトウェアの実行、たとえば入力データの分析に適した周辺入出力特性を備えるマイクロプロセッサである。他のタイプのハードウェア、たとえばパーソナル・コンピュータを、制御ユニット80に使用することもできる。
【0176】
制御ユニット80は、振動周波数、振動の振幅、振動の継続時間、および/または刺激部材2と刺激される組織との間の治療圧などの1つまたはそれ以上の治療サイクル・パラメータを制御および/または調整するように構成されることが重要である。一実施形態では、制御ユニット80は、入力データから独立して、たとえば事前にプログラムされた振動方式を用いて、1つまたはそれ以上の振動刺激パラメータを制御および/または調整する。より好ましい実施形態では、図13に例示するように、制御ユニット80は、監視部材75から受けられた入力データ(すなわち、生または精製済みの入力データ)に応じて、1つまたはそれ以上の振動刺激パラメータを制御および/または調整する。この目的のため、制御ユニット80は、監視部材75からの入力データに応じて、治療サイクルを調整して振動刺激デバイス1の動作を制御するように配置された振動制御ソフトウェアを備える。治療サイクルの調整は、たとえば、調整された周波数、振幅、治療圧、または継続時間を含むことができる。制御ユニット80は、たとえば、監視部材から受けられた入力データを所定の標的値と比較して、標的値に到達した場合は振動治療を中止または延長するように適合することができる。標的値は、治療の開始時に収集された初期入力データを表す値のごく一部に設定することができる。制御ユニット80はまた、入力データ内に含まれる測定値の1つの最小値を判定するように構成することができ、これはANS内の活動の最小値を表す。最小値は、たとえば、以前の治療サイクルと比較した最小値を表すことができ、これを記憶ユニット内に記憶することができる。
【0177】
制御ユニット80または振動制御ソフトウェアは、監視部材75からの入力データに応じて、治療サイクルを調整してANS内でよりよい、最適化された、または最大の影響を実現することができる。ソフトウェアは、たとえば、グリッド型のアルゴリズムを備えることができ、グリッド型のアルゴリズムは、所与の境界内の振動パラメータの組合せを無作為または系統的に試験し、これらのうち最良のものを使用するはずである。派生的検索アルゴリズム(derivative search algorithm)は、多次元パラメータ空間内で、活動が大部分を変化させる方向を識別し、この方向に沿って新しいパラメータ・セットを試験するはずである。発見的検索は、以前に蓄積および体系化された知識を使用するはずである。発見的方法は、たとえば、パワーが同じになるように周波数が上昇した場合は振幅が低下するという規則とすることができる。異なる組合せの検索アルゴリズムも可能である。
【0178】
局所化部材
本発明の特定の実施形態では、システムはまた、標的部位、すなわち刺激される予定のANSの標的神経節、神経、または神経線維を局所化する局所化部材95を備える。そのような局所化部材95は、たとえば、超音波スキャナ、機能性磁気共鳴画像(fMRI)スキャナ、および/または陽電子放出断層撮影(PET)スキャナから選択することができ、治療標的または標的部位を制御ユニット80へ伝送するように構成することができ、制御ユニット80によって、治療サイクル内に含まれる治療部位に変換することができる。
【0179】
ANSの活動に影響を及ぼす振動刺激
図14は、本発明によるシステムを用いた患者のANS標的部位の振動刺激を実証する。特有の例は、患者の鼻腔内の振動刺激を実証する。振動刺激デバイス1は、ヘッドバンド10によって、患者の治療部位で、刺激される予定の神経節、神経、または他の神経線維に近接して位置する。刺激部材2は、選択された神経節および実現される予定の影響にほぼ適した圧力で、標的部位で組織に当接するように配置される。ANS内の活動に関係するパラメータを監視する監視部材75が、被験者にカップリングされる。標的部位に振動を与えたとき、監視部材75によってANS活動が監視される。監視部材75は、上述したように、EEGによって測定される脳の活動、EMGによって測定される運動ニューロンの活動、または血圧など、ANS活動に相関する直接的または間接的な測定値のリアルタイムの監視を提供することができる。制御ユニット80は、ANS活動を反映する入力信号を、ライン21を介して監視部材75から受ける。
【0180】
制御ユニット80は、信号を得るためのデータ収集モジュールを備えることができる。制御ユニット内には、信号処理モジュール、データ処理モジュール、およびデータ分析モジュールをさらに設けることができる。制御ユニット80はまた、振動パラメータに関する情報を、ライン22を介して振動刺激デバイス1から受けることができる。制御ユニットは、同じライン22を介して、振動刺激デバイス1を制御するための命令、すなわち治療サイクルを出力することができる。そのような命令は、監視デバイスから得られた入力信号および病気および/または患者に関する入力情報の分析に基づくことができ、圧力、振動周波数、または振幅のパラメータのいずれか1つを調整することを目的とする。
【0181】
神経節または他のANS神経もしくは神経線維に近接している治療部位の振動刺激によってANSを刺激する振動治療方式を確立する方法を、図15を参照して以下に例示する。
【0182】
たとえばユーザ・インターフェース85が、所定の病気タイプのリストから病気を選択する(151)ことを使用者に要求することによって、病気のタイプを含む入力情報が提供され(151)、そのリストは、ユーザ・インターフェース85上に表示される。選択された病気のタイプに基づいて、たとえばルックアップ・テーブルを使用することによって、振動周波数、治療圧、および治療部位を含む治療サイクルが生成される(152)。治療部位に振動を与えるように構成された振動刺激デバイス1が設けられる(150)。振動刺激のための治療部位は、治療または治療が実現することが所望される影響に基づいて、生成することができる(152)。特定の症状に対して、治療部位は知られており、被験者の身体で容易に特定することができる。たとえば、偏頭痛または群発性頭痛の治療が所望されるとき、選択される予定の治療部位を鼻腔とすることができる。他の症状の場合、標的部位、すなわちANSの標的神経節、神経、または神経線維を第1に選択しなければならず、次いで標的部位に密接した治療部位を選択しなければならない。たとえば、IBSまたはクローン病の治療が所望されるとき、太陽神経叢内の神経節の1つを標的神経節および標的部位とすることができる。対応する治療部位を選択するために、第1に、被験者内で特有の標的神経節を特定することが必要となることがある。これは、たとえば、超音波スキャナ、機能性磁気共鳴画像(fMRI)スキャナ、および/または陽電子放出断層撮影(PET)スキャナなどの局所化部材95を使用することによって行うことができる。標的部位、すなわち標的神経節が特定された後、被験者の身体の上または中で振動刺激のための治療部位がユーザ・インターフェース85によって選択および表示される。
【0183】
刺激デバイス1は、選択された治療部位、すなわち治療部位に位置する組織の表面に、適した圧力で当接するように係留される。その後、刺激デバイス1の配置は、使用者によって、たとえばユーザ・インターフェース85上の「位置決め確認」ボタンをクリックすることによって確認することができる。次いで、刺激デバイス1は、ANSの標的神経節、神経、もしくは神経線維、または視床下部を刺激するように動作または振動させることができる。いくつかの例では、刺激部材は、刺激を開始するときに比較的高い圧力で組織の表面に適宜当接する。刺激の初期段階後、組織の表面上に及ぼされる圧力を低下させることができる。この比較的低い圧力は、ANS活動の測定値が所望のとおり変化する場合、残りの刺激期間にわたって使用することができる。
【0184】
振動刺激中、監視部材75を使用して、ANS内の活動に相関するパラメータまたは入力データを受け(153)、かつ/またはそのようなパラメータの入力データを収集する。パラメータは、たとえば、治療部位に位置する組織と振動刺激デバイス1との間の圧力、組織の導電性、組織のコンプライアンス、被験者の瞳孔の寸法、被験者から導出された脳波(EEG)信号、被験者から導出された筋電図(EMG)信号、被験者から導出された心電図(ECG)信号、光電脈波センサによって測定される被験者の血流、血液量パルス、および/もしくは血液中の酸素濃度、被験者の血圧、ならびに/または被験者の体温に関係することができる。入力データはまた、振動治療前に収集することができる。
【0185】
場合により、好ましくは、監視されるパラメータに応じて、治療サイクルの動作パラメータ、すなわち振動周波数、振動の振幅、振動の継続時間、および組織と刺激部材2との間の圧力の少なくとも1つが、調節または調整される(154)。たとえば、ANSに対する所望の影響が実現されない場合、または所望される程度より小さいもしくは大きい程度で実現された場合、所望の影響を実現するために、治療サイクルの動作パラメータのいずれかを調整することができる。監視の目的は、治療が効果的であることを確認することである。その目標は、ANSの活動の変化に影響を及ぼすことであり、すなわち活動の増大と低減の両方を治療の目的とすることができる。
【0186】
したがって、一実施形態では、監視および調整する第1の工程は、振動刺激が開始される前にANS内の活動レベルを監視することである。第2の工程では、振動刺激は、1組の初期振動パラメータによって印加される。第3の工程では、活動の変化が監視される。変化が小さすぎると見なされる場合、新しいパラメータ・セットが試行される。数回繰り返した後、適したパラメータ・セットに到達し、または治療は可能でないと結論される。デバイスが活動レベルを変化させることが可能である場合、所与の時間にわたって、または活動レベルの変化が閾値を超えない限り、治療は継続される。代替のケースでは、病理学がよりよく知られており、活動測定値は、知られている良好な(または正常の)値、たとえば高血圧症または心臓の不整脈を有する。そのような場合、治療は、絶対値が達成されたときに停止することができる。よりよい影響を実現するためにパラメータを変化させる多くの方法がある。すなわち;グリッド型のアルゴリズムは、所与の境界内で(無作為または系統的に)組合せを試験し、これらのうち最良のものを使用するはずであり、派生的検索アルゴリズムは、多次元パラメータ空間内で、活動が大部分を変化させる方向を識別し、この方向に沿って新しいパラメータ・セットを試験するはずである;発見的検索は、以前に蓄積および体系化された知識を使用するはずである。発見的方法は、たとえば、パワーが同じになるように周波数が上昇した場合は振幅が低下するという規則とすることができる。異なる組合せの検索アルゴリズムも可能である。
【0187】
ANS活動に対する所望の影響が実現されたとき、刺激は適切に終了される。
【0188】
被験者の少なくとも第1の治療部位に位置する少なくとも1つの刺激部材によって、ANS刺激を実行できることが企図される。たとえば、1つの治療部位における単一の刺激のみに対して、または2つの治療部位における順次刺激に対して、第1の態様による1つのシステムを使用することができる。別の例では、2つ以上の治療部位における同時振動刺激に対して、2つ以上の振動刺激デバイスを使用することができる。2つ以上の治療部位における順次および/または同時刺激に対して、圧力および振動周波数は同じであってもまたは異なってもよいことを理解されたい。同時刺激中は、干渉効果を実現するために、位相および/または振幅差を有する2つの異なる振動周波数を印加することができる。
【0189】
刺激の前に、この方法は、治療部位および被験者の物理的属性に応じて、個々に異なる幾何形状を有する刺激部材を含む複数の振動刺激デバイス1から選択することを伴うことができる。
【0190】
さらに、当該患者に適した治療の継続時間は、振動刺激を開始する前に選択することができる。そのような選択は、少なくとも合計で5分など、標準的な刺激に対して最小継続時間を選択することを含むことができる。別法として、治療の継続時間は、ANS活動の測定値が所定の要件を満たした後の治療期間として画成することができる。第1の閾値または標的値に到達した後など、さらにもう2〜5分にわたって刺激を継続させることができる。他の治療方式は、第1および/または第2の治療部位における治療の継続時間を選択することを伴う。
【0191】
刺激デバイスのタイプおよび治療の継続時間の選択は、たとえば、受けられた入力情報に基づいて、制御ユニットによって実行することができる。
【0192】
図16A〜Dを参照して、本発明のシステムおよび方法態様による特有の例の刺激処置について論じる。図16A〜Dは、刺激をどのように実施および制御できるかに関する例を表す。
【0193】
図16Aを参照すると、刺激を開始した後、ANS活動の測定値(a)を反映する入力信号が収集される。活動測定値(a)と所望の活動(a)との間の差の絶対値、すなわち|a−a|が大きく、したがって第1の閾値(tol)を超過したとき、活動測定値(a)の計算された時間導関数(a’)の絶対値が、第2の閾値(tol)と比較される。計算された時間導関数(a’)の絶対値が第2の閾値(tol)を超過する場合、刺激を継続することができ、最大刺激時間に到達しなかった場合、新しい活動測定値の収集によって次のサイクルが開始される。最大刺激時間(tmax)に到達したとき、現在の活動測定値にかかわらず、刺激は終了される。
【0194】
活動測定値(a)と所望の活動(a)との間の差の絶対値が第1の閾値(tol)を超過しないとき、ANS活動は事実上、所望のレベルに到達している。刺激時間が最小刺激時間(tmin1)を超過した場合、刺激を終了させることができる。刺激時間が最小刺激時間(tmin1)を超過しない場合、最小刺激時間に到達するまで、同じパラメータ・セットで刺激が継続される。
【0195】
計算された時間導関数(a’)の絶対値が、第2の閾値(tol)を超過しなくなったとき、すなわち測定値がそれほど変化していないとき、刺激を継続するが、パラメータ・セットを調整することができる。刺激時間が第2の最小刺激時間(tmin2)を超過しない場合、周波数、振幅、および圧力などのパラメータの調整が行われる。第2の最小刺激時間(tmin2)に到達した場合、第2の治療部位で刺激を継続することができ、クロックはリセットされるべきである。
【0196】
図16Bは、ANS刺激をどのように系統的に実行できるかに関する別の例を表す。図16Aと同様に、刺激を開始した後、視床下部の活動の測定値(a)を反映する入力信号が収集される。活動測定値(a)と所望の活動(a)との間の差の絶対値が大きく、したがって第1の閾値(tol)を超過したとき、活動測定値(a)と所望の活動(a)との間の差の同じ絶対値が、第2の閾値(tol)と比較される。絶対値|a−a|も第2の閾値(tol)を超過した場合、第3の比較が行われる。同じ絶対値は、前の活動(aprev)の測定値と所望の活動レベル(a)との間の差の絶対値に、定数(C)を掛けた値(C*|aprev−a|)と比較される。絶対値|a−a|がC*|aprev−a|より小さい場合、活動測定値は所望の方向に変化している。これは、現在の活動測定値が前の測定値より所望の活動に近いことを意味する。最大刺激時間(tmax)に到達しなかった場合、サイクルはもう一度繰り返される。次のサイクルの開始前に、現在の活動測定値がaprevとして記憶される。他方では、tmaxに到達した場合、刺激は終了される。
【0197】
他方では、活動測定値(a)が所望の活動(a)に近接しまたは同じである場合、すなわち|a−a|が第1の閾値より小さいとき、刺激は終了される。同様に、|a−a|が第2の閾値より小さい場合、刺激は、第1の治療部位で終了され、第2の治療部位で継続される。したがって、同じ方式に従って新しいサイクルを開始することができ、クロックがリセットされる。
【0198】
他方では、活動測定値と所望の活動との間の差の絶対値が、前の活動測定値との対応する差、すなわちC*|aprev−a|より大きい場合、ANS活動は所望どおり変化していない。定数Cは、本明細書で画成される閾値公差の一例を構成する。したがって、パラメータ・セットは次のサイクルの開始前に調整され、現在の活動測定値はaprevとして記憶され、刺激時間はtmaxと比較される。
【0199】
刺激処置のさらなる例を、図16Cに示す。図16Aおよび図16Bと同様に、刺激を開始した後、ANS活動の測定値(a)を反映する入力信号が収集される。活動測定値(a)と所望の活動(a)との間の差の絶対値は、第1の閾値(tol)と比較され、この絶対値がtolを超過しない場合は、第1の最小刺激時間(tmin1)に到達した場合、刺激が終了される。この絶対値がtolを超過し、かつ第2の最小刺激時間(tmin2)に到達しなかった場合、新しいサイクルが開始される。しかし、第2の最小刺激時間に到達した場合、第1の治療部位における刺激は終了され、第2の治療部位における刺激は継続される。これは、クロックをリセットすることなく行われる。このとき、所望の活動レベルまたは最大刺激時間(tmax)に到達するまで、刺激は継続される。
【0200】
図16Dに、刺激処置の別の例を示す。ANS活動の測定値(a)を反映する入力信号が収集され、その時間導関数(a’)が計算される。図16Cの処置と同様に、活動測定値(a)と所望の活動(a)との間の差の絶対値は、第1の閾値(tol)と比較され、この絶対値がtolを超過しなかった場合には、第1の最小刺激時間(tmin1)に到達しなかった場合、刺激が終了される。この絶対値がtolを超過しなかった場合、活動測定値(a)の計算された時間導関数(a’)の絶対値は、第2の閾値(tol)と比較される。計算された時間導関数(a’)の絶対値が第2の閾値(tol)を超過せず、かつ第2の最小刺激時間(tmin1)に到達した場合、刺激は、第1の治療部位では終了され、第2の治療部位ではクロックをリセットして継続される。そうでない場合、絶対値|a−a|は、前の活動(aprev)の測定値と所望の活動レベル(a)との間の差の絶対値に定数Cを掛けた値(C*|aprev−a|)と比較される。絶対値|a−a|がC*|aprev−a|より大きい場合、活動測定値が誤った方向に変化しているため、刺激パラメータを調整するべきである。絶対値|a−a|がC*|aprev−a|より小さい場合、活動測定値は所望の方向に変化しており、現在と前の活動測定値の時間導関数が比較される。定数Cは、本明細書に画成される閾値公差の一例を構成する。Dを定数として、|a’|がD*|aprev’|以下であるとき、活動測定値が十分な速さで変化していないため、刺激パラメータを調整するべきである。|a’|が|aprev’|より大きいとき、別の刺激サイクルを開始することができる。しかし、次のサイクルを開始する前に、現在の活動測定値、ならびにその導関数は、前の活動測定値、ならびにその誘導体に取って代わる。さらに、別のサイクルは、最大刺激時間に到達しなかった場合にのみ継続することができる。最大刺激時間に到達した場合、刺激は終了される。
【0201】
図17A〜Bには、情報を受けかつ表示するように適合できる複数の図形オブジェクトを備えるグラフィカル・ユーザ・インターフェースによって、ユーザ・インターフェース85の一例を示す。図17Aに示すように、患者または任意の他の使用者は、疼痛の場所が影付き領域で示される3つのオブジェクト170のうちの1つを選択することによって、疼痛の場所に関係する情報をグラフィカル・ユーザ・インターフェースに提供することができる。選択は、たとえばマウス・ポインタでクリックすることによって、またはスクリーン上をタップすることによって、実行することができる。たとえば患者の識別情報、治療の識別情報、または他の適した情報に関係する情報を、テキスト・フィールド171によって表示することができる。図示のユーザ・インターフェースはまた、確認ボタン172と、アプリケーションを退出する停止ボタン173とを備えることができる。
【0202】
図17Bに、グラフィカル・ユーザ・インターフェース85の別の例を示す。この例では、振動デバイス1および係留部材10をどのように配置するかに関する使用者に対する命令が、図示の絵177によって提供される。振動デバイス1の現在の位置もまた、枠内のオブジェクト176によって示されている。オブジェクト176および178は、今回の治療で患者に投与される予定の治療サイクルおよび対応する治療部位を示す。枠内のオブジェクト176は、患者に投与されている現在の治療サイクルを示す。したがって、オブジェクト178は、現在の治療サイクルの終了後に続く治療サイクルを示す。治療サイクルの進行は、治療の総継続時間および治療の進行を表すプログレス・バー175によって示すことができる。治療はまた、停止ボタン173をクリックすることによって中止することができ、または一時停止ボタン174をクリックすることによって一時停止することができる。
【0203】
振動刺激デバイスの使用
本発明のデバイスは、被験者のANSに影響を及ぼすために使用することができる。このデバイスは、単に健康な被験者のANSの活動を調整するために、たとえばストレスを低減させ、または興奮を引き起こすために使用することができる。このデバイスはまた、ANSに関連する症状または疾病を治療するために使用することができる。そのような症状には、頭痛、便秘、速い心拍、不安感、めまい、偏頭痛、および群発性頭痛が含まれる。治療できる疾病には、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、メニエール病、過敏性腸症候群(IBS)、胃炎、膵炎、胃のダンピング症候群、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、動脈硬化症、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、斜頸、筋緊張性ジストロフィー、真性糖尿病、潰瘍性大腸炎、原発性硬化性胆管炎、喘息、遠位結腸の炎症症状、線維筋痛症、腰痛、気管気管支軟化症、および慢性関節リウマチが含まれる。デバイスを使用できる他の疾病および症候群には、体位性起立性頻脈症候群(POTS)、不適切洞性頻脈(IST)、血管迷走神経性失神、僧帽弁逸脱遺伝性自律神経症、自律神経失調症、神経心臓性失神(NCS)、神経調節性低血圧症(NMH)、直立性高血圧、自律神経不安定症、および中枢性塩類喪失症候群などの複数のあまり知られていない疾患が含まれる。遺伝性自律神経症はまた、ライム病、原発性胆汁性肝硬変、多系統萎縮症(シャイ−ドレーガ症候群)、エーレルス−ダンロー症候群(EDS)、およびマルファン症候群に関連する。
【0204】
鼻腔を介して治療できる疾患には、偏頭痛、群発性頭痛、鼻炎、ALS、IBS、シェーグレン症候群、斜頸、筋緊張性ジストロフィー、真性糖尿病タイプ2、およびメニエール病が含まれる。
【0205】
たとえば鼻炎は、本発明によるシステムを使用して鼻腔を介して治療することができ、このシステムは、振動刺激デバイス、たとえば図1A〜Bによるデバイスを有し、このデバイスは、鼻孔を介して鼻腔内へ導入できる第1の状態と、振動刺激デバイスが鼻腔内の組織に当接する体積まで振動刺激デバイスを拡大させた第2の状態とに配置することができる。治療サイクルは、50〜70Hzの範囲内、好ましくは68Hzの振動周波数と、50〜80ミリバールの範囲内、好ましくは65ミリバールの時間平均治療圧とを含むことができる。振動刺激は、7〜10分間、好ましくは9分間実行することができる。振動刺激は、それぞれ左右の鼻腔に投与することができる。鼻炎の場合、入力情報は、鼻詰り、かゆみ、分泌、およびくしゃみという病気の症候を含むことができる。
【0206】
偏頭痛、ALS、IBS、および高血圧症もまた、鼻炎の治療を参照して説明したシステムおよび振動刺激デバイスによって、鼻腔を介して治療することができる。そのような治療の場合、治療サイクルは、60〜70Hzの範囲内、好ましくは68Hzの振動周波数と、90〜105ミリバールの範囲内、好ましくは95ミリバールの時間平均治療圧とを含むことができる。振動刺激は、10〜20分間、好ましくは15分間実行することができ、それぞれ左右の鼻腔に投与することができる。偏頭痛の場合、病気の症候は、たとえば体験した疼痛のレベルおよび疼痛の場所を含むことができる。脚の筋力低下および機能低下は、ALSに対する症候の例である。IBSの場合、病気の症候は、たとえば便秘を含むことができる。高血圧症は、高い血圧を伴う。しかし、上記の治療はまた、低い血圧を含む症候にも適用可能とすることができることが理解されよう。
【0207】
ALSはまた、バルーン、バッグ、ポーチ、またはメンブレンの形状と、75mmの直径とを有する刺激デバイスを備えるシステム、たとえば図9Bによるシステムを使用して、好ましくは僧帽筋と胸鎖乳突筋(後頭三角)との間の頸部の振動刺激によって治療することができる。治療サイクルは、30〜50Hz、好ましくは40Hzの周波数と、40〜60ミリバールの治療圧とを含むことができる。治療の継続時間は、10〜20分とすることができ、治療は、頸部の両側に投与することができる。この治療は、嚥下困難などの病気の症候に関係することができる。
【0208】
太陽神経叢を介して治療できる疾患には、潰瘍性大腸炎、IBS、真性糖尿病タイプ1、原発性硬化性胆管炎、およびクローン病が含まれる。
【0209】
IBSは、腹部、好ましくは臍部上の中心に位置する治療部位、または腹腔神経叢より上に位置する治療部位と、バルーン、バッグ、ポーチ、またはメンブレンの形状を有する振動刺激デバイスを有する本発明によるシステム、たとえば図8A〜Dによるシステムとを使用することによって、腹部を介して治療することができる。このシステムは、振動刺激デバイスを治療部位に係留するように構成された膨張性のカフまたはベルトである係留部材に取り付けることができ、別法として刺激デバイスの上に重りを設けることができる。たとえば便秘および下痢の症候の場合、腹腔神経叢の上に位置する75mmの直径を有する刺激デバイスを使用することができ、治療サイクルは、30〜50Hzの範囲内、好ましくは40Hzの振動周波数と、40〜60ミリバールの範囲内の時間平均治療圧と、20分の治療の継続時間とを含む。たとえば膨満感の症候の場合、臍部の上で中心に配置された200mmの直径を有するより大きい振動刺激デバイスを使用することができ、治療サイクルは、30〜50Hz、好ましくは40Hzの周波数と、20〜30ミリバールの治療圧と、10分の治療の継続時間とを含む。
【0210】
IBSはまた、本発明の一実施形態によるシステムを使用する腸の振動刺激によって治療することができる。そのような治療の場合、10〜70Hzの範囲内の周波数と、20〜50ミリバールの治療圧とを含む治療サイクルを使用することができる。
【0211】
背中を介して治療できる疾患には、強直性脊椎炎、喘息、遠位結腸の炎症症状、線維筋痛症、および腰痛が含まれる。
【0212】
腕または脚の振動刺激を介して治療できる疾患には、ALS、動脈硬化症、および慢性関節リウマチが含まれる。
【0213】
本発明のデバイスは、たとえば喉頭の手術中に、気管内チューブでさらに使用することができる。
【0214】
ALSの治療
本明細書に開示されるように、筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、振動刺激で治療することができる。上記では、このタイプの治療は、身体機能の劣化を停止させることができ、場合によっては、損なわれた機能性を回復させることもできる。この機構は完全には理解されていないが、仮説では、酸素および栄養素を神経へ運ぶ改善された血流が、劣化を停止させることができると考えられる。異なる治療部位を使用して、身体の異なる部分を治療することもできる。
【0215】
鼻腔へ与えられる振動は、脚の機能が低下した患者にとって効果的であることが証明されている。患者は、各鼻腔内で、70〜120ミリバールの範囲内の平均圧力において68Hzで15分間にわたって治療される。刺激は、偏頭痛を治療するときと本質的に同じである。最初、患者は、治療からのいかなる影響も知覚しない傾向があるが、約2週間後には、機能性の改善が報告される。この改善は、数か月にわたって続いた後、再び劣化が開始すると考えられる。これは、別の回の治療によって緩和することができる。
【0216】
鼻腔を介する治療は、食べる能力を改善するとは考えられない。脚に対してより良好な制御を得るという意味で助けられている患者は、食事の問題が変化しない、または増大すると報告している。しかし、振動が頸部に、特に僧帽筋と胸鎖乳突筋、すなわち後頭三角と呼ばれることのある解剖学的組織の一部との間に投与される場合、この症状を改善することができる。この概念は、とりわけ嚥下時に使用される筋肉の制御を担う迷走神経を刺激することである。この目的で、刺激部材は、ピローで形成された直径約75mmの膨張性のゴム・バルーンからなることができる。刺激部材は、非弾性の包帯の助けを借り、寸法調整のためにVelcro(登録商標)を用いて、定位置で保つことができる。使用される周波数は、約40Hzである。より高い周波数が試験されたが、これは、皮膚がひりひりする感覚をもたらすと考えられる。頸部の各側で、10〜15分間にわたって治療が投与される。治療中の刺激部材内の平均圧力は、40〜60ミリバールである。
【0217】
IBSの治療
IBSを治療するために、鼻腔、腹部、および/または腸へ振動刺激を投与できることが分かった。治療部位の選択は、医学的状態がどれだけ進行しているかに依存する。それほど深刻でない症状は、鼻腔内の組織を刺激することによって治療することができる。炎症が進行している場合、腸の直接的な刺激を介して治療を行うことがよりよい。IBSは、詳細に診断するのが困難なことが多く、患者は、複数の症候を示すことが多い。
【0218】
腹腔神経叢、具体的には腹腔神経節を刺激するために、より小さい刺激部材(直径75mm)を利用した。この刺激部材に使用される周波数は、40Hzに設定した。これは、周波数掃引に基づいており、この周波数の場合、振動が身体全体を通って伝搬し、患者によって背中で感じられることが分かった。これは、共鳴現象と解釈することができ;その印象では、共鳴ピークがむしろ鈍く、たとえば30〜50Hzである。より小さい刺激部材による治療は、便秘および下痢の症候を緩和した。膨満感を治療するために、より大きい(直径200mm)外部の刺激部材が開発された。この刺激部材は、腹部の大部分に振動を投与する。振動周波数は、40Hzに設定された。より高い周波数を試験したが、患者によれば、この場合は主に皮膚で刺激が感じられた。
【0219】
この治療は、異なる症候を報告する患者が、同じ治療法から助けられるという点で、身体機能の再正規化を与えると考えられる。便秘を患っている患者は、下痢を患っている患者とは異なる何らかの他の機能障害を有すると可能性が高いと考えられるが、これらの患者は同じ治療によって助けられる。振動刺激は、自律神経系に影響を及ぼすと考えられる。鼻腔内の治療からの経験では、治療によって自律神経系の2つの分岐内および/または分岐間で所望の均衡が回復することを示すと考えられるはずである。ニューロンの不均衡が疾病に寄与する要因である場合、類似の機構によってIBSを防ぐこともできる。鼻腔の治療は、IBSに有益であるため、そのような不均衡の補正が肯定的な影響を与えるといういくつかの間接的な証拠が存在する。
【0220】
治療中の刺激部材内の平均圧力は、約20〜約60ミリバールの範囲内である。治療中、患者は横たわっている。振動が患者の身体へ確実に伝送されるように、刺激部材の上に重り(約2kg)が適用される。刺激部材から空気を出し入れすることで、1次近似として、刺激部材と患者との間の接触領域の変化が生じる。患者が感じる全体的な力は同じであるが、接触領域が変化するにつれて圧力が変化する。
【0221】
刺激部材を定位置で保持するために、腰帯を使用することができる。その場合、釣り合い重りは腰帯の上に適用される。刺激部材は、典型的には定位置に配置され、一度に1つずつ起動される。
【0222】
典型的な治療サイクルは、以下の工程からなることができる:
1.腹腔神経叢の近似場所が識別される
2.識別された場所で、より小さい刺激部材が適用される
3.刺激部材の上に重りが適用される
4.刺激部材は、40〜60ミリバールの範囲内の圧力まで膨張される
5.約20分間にわたって40Hzの振動が印加される
6.より小さい刺激部材が除去され、より大きい刺激部材が胃の上で中心に適用される
7.刺激部材の上に重りが適用される
8.刺激部材は、約20ミリバールまで膨張される
9.約10分間にわたって40Hzの振動が印加される
【0223】
いくつかの観察は、刺激部材内の圧力を測定することによって、腸内の活動を監視することが可能であることを示す。
【0224】
このタイプの治療によって助けられうる他の病気には、胃炎、膵炎、胃のダンピング症候群、糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、硬化性胆管炎が含まれる。
【0225】
臨床結果
偏頭痛を患っている1人の患者の振動刺激
治療前、患者は嘔吐し、羞明および吐き気を感じていた。患者は、疼痛のレベルがVASスケールで10であると報告した。疼痛は、頭部の右部分に特定された。
【0226】
血中酸素濃度に依存する機能性磁気共鳴画像(fMRI)を登録しながら、治療が実行された。患者は、0〜10のビジュアル・アナログ・スケール(VAS)上で、刺激前、刺激中、および刺激後の疼痛を推定した。ここで0は疼痛なしに対応し、10は最大の疼痛に対応する。
【0227】
患者は、水平の位置で治療された。振動治療は、右側の鼻腔から85〜100ミリバールの圧力で開始された。周波数は、68Hzに設定された。10分間の治療後、疼痛のレベルは6まで下がり、吐き気はなくなった。その時点で、バルーンは左側の鼻腔へ動かされ、さらに8分間にわたって治療が継続された。この時点で、患者は、疼痛のレベルが2であると報告した。5分間の中断後、治療は右側の鼻腔内で再び開始される。約8分後、疼痛のレベルは1まで下がり、治療が終了された。
【0228】
治療から6か月後、患者は、偏頭痛発作が起こらなかったと報告した。したがって、刺激の影響は長続きした。
【0229】
fMRIデータの分析は、視床下部内の酸素消費量が最初は異常に高いが、治療中、消費量は周辺の脳組織と同様のレベルまで低下したことを示した。
【0230】
メニエール病を患っている1人の患者の振動刺激
患者は、約5年間にわたって左耳に影響を及ぼすメニエール病を患ってきた。薬理学的な治療に失敗し、その苦痛は、左耳が聞こえないと分類される程度に到達した。患者は、破壊的な手術に回された。第1の治療前、左耳に対して70dBの平均値を示す聴力図が登録された。
【0231】
第1の治療中、74Hzの周波数の振動が約11分間にわたって左側の鼻腔に投与され、次いでほぼ同じ時間にわたって右側の鼻腔に投与された。右側の鼻腔の治療中、周波数は68Hzまで下げられた。最後に、約11分間にわたって68Hzで左側の鼻腔が治療された。圧力は、90〜100ミリバールの範囲内であった。第1の治療から数日後、別の聴力図測定が実行され、左側の聴力が60dBの平均値まで改善したことを示した。患者はまた、他の疾患、耳の中が詰まっている感覚、および耳鳴りが低減されたと報告した。
【0232】
第1の治療から1週間後、第2の治療が投与された。最初の12分間は右側に、次いで24分間は左側に投与された。圧力は、90〜100ミリバールの範囲内であり、周波数は68Hzに設定された。後の治療段階中は、患者の反応のあらゆる変化を調査するため、圧力は手動で調整された。数日後、患者の聴力を再び評価し、この時点で、左耳に対する平均値は53dBであった。
【0233】
心臓不整脈を患っている1人の患者の振動刺激
最も一般的な形態の心臓不整脈、すなわち心房細動を2年間患っている1人の患者は、7回にわたって医薬品および電気ショック療法による治療を受けてきたが、成功しなかった。このため患者は、切除、すなわち部分的な破壊的処置に回された。この患者は、間に2、6、および15週間を挟んで、4回にわたって振動療法による治療を受けた。最後の間隔中、患者は、2年間で初めて運動をすることが可能になった。治療パラメータは、90〜100ミリバールの範囲内の圧力、68Hzの周波数であり、治療は、各鼻腔内に10〜12分間にわたって投与された。
【0234】
ALSを患っている患者の振動刺激
ALSを患っている2人の患者が、振動療法による治療を受けた。治療パラメータは、他の症状の場合と同じであり、すなわち68Hz、90〜100ミリバール、各鼻腔内で10〜12分間の治療であった。どちらの場合も、患者は、症状の改善を報告した。一方の場合、数回の治療後、患者は再びくしゃみをすることが可能になった。これは疾病のため数か月にわたってできなかったことである。他方の場合、患者は、日中の筋収縮(線維束性収縮)の低減を報告した。治療から3週間後、患者は、今では以前よりはるかに遠くまで歩くことが可能であり、脚のしびれの間隔が低減したとさらに報告した。同じ患者は、嚥下困難および関連する体重の減少を訴えた。1回の治療が実行され、直径75mmの刺激部材が、頸部上において、約50ミリバールの平均圧力および40Hzの周波数で、頸部の各側で約15分間にわたって使用された。治療から2週間後、患者は、嚥下がはるかに容易になり、減少した体重が回復しつつあると報告した。ALSを治し、またはさらに遅らせるための知られている方法はないため、これらの結果は注目に値する。
【0235】
偏頭痛を患っている患者の振動治療
患者は、偏頭痛発作を患っており、報告された疼痛のレベルはスケールで8であった。ここで0は疼痛なしを意味し、10は最大の疼痛を意味する。疼痛は、頭部の右側に特定された。振動治療は、右側の鼻腔に投与された。使用された周波数は、68Hzであった。圧力は、最初、80〜100ミリバールに設定された。200秒後、圧力は42ミリバールまで下げられた。患者は、疼痛レベルの増大を感知した。さらに50秒後、圧力は80〜100ミリバールの範囲に戻された。350秒後、患者は非常に疲れたと感じ始めた。450秒の治療後、激しい縮瞳(瞳孔の狭窄)が観察された。600秒の治療後、圧力は再び約40ミリバールまで下げられた。700秒後、患者は、疼痛が4〜5まで下がったと報告した。疼痛は、875秒で3まで、そして1000秒で2〜3までさらに低下した。1050秒後、圧力は再び約90ミリバールまで上げられた。1140秒後、疼痛は3〜4までわずかに増大した。1200秒後、圧力は再び約40ミリバールまで低減された。1250秒後、疼痛のレベルは2になった。1375秒後、疼痛のレベルは1〜2になった。約1400秒の治療後、圧力は約20ミリバールまでさらに下げられた。1475秒後、疼痛のレベルは1になった。1500秒後、振動は停止された。1515秒後、疼痛はなくなった。治療の開始から1600秒後、振動は68Hzで再開され、圧力はやはり約20ミリバールであった。さらに700秒後、治療は終了された。その後、患者は頭痛を感じなかった。また、治療前に体験した頸部の疼痛もなくなった。治療中に体験した疲労もなくなった。
【0236】
実施形態の一覧
1)被験者の自律神経系に影響を及ぼすシステムであって:
a)10〜100Hzの周波数で前記被験者の組織に振動を与えるように構成された振動刺激デバイスと;
b)被験者の自律神経系内の活動の測定値を反映する入力データを受ける監視部材とを
備える上記システム。
【0237】
2)前記入力データは:
前記組織と前記振動刺激デバイスとの間の圧力の測定値;
前記組織の導電性の測定値;
前記組織内のコンプライアンスの測定値;
被験者の瞳孔の寸法の測定値;
被験者から導出された脳波(EEG)信号;
被験者から導出された筋電図(EMG)信号;
被験者から導出された心電図(ECG)信号;
光電脈波信号;
被験者の血圧の測定値;および
前記被験者の体温の測定値
を含む群から選択される、実施形態1に記載のシステム。
【0238】
3)振動刺激デバイスが前記被験者の組織に当接するように、振動刺激デバイスを被験者に係留するように構成された係留部材をさらに備える、実施形態1〜2のいずれかに記載のシステム。
【0239】
4)係留部材は、ヘッドバンド、顔マスク、眼鏡、ベルト、カフ、ベスト、および接着パッチを含む群から選択される、実施形態3に記載のシステム。
【0240】
5)前記監視部材は、前記係留部材内へ少なくとも部分的に一体化される、実施形態3〜4のいずれかに記載のシステム。
【0241】
6)前記監視部材75は、前記振動刺激デバイス内へ少なくとも部分的に一体化される、実施形態3〜4のいずれかに記載のシステム。
【0242】
7)少なくとも1つの振動パラメータを制御するように構成された制御部材をさらに備え、振動パラメータは、振動周波数、振動の振幅、振動の継続時間、および前記振動刺激デバイスと前記組織との間の圧力から選択される、実施形態1〜6のいずれかに記載のシステム。
【0243】
8)前記制御部材は、前記入力データに応じて前記少なくとも1つの振動パラメータを調整するように構成される、実施形態7に記載のシステム。
【0244】
9)前記制御部材は、振動が前記測定値に与える影響を最大にするように、前記少なくとも1つの振動パラメータを調整するように構成される、実施形態8に記載のシステム。
【0245】
10)前記制御部材は、前記入力データに応じて前記少なくとも1つの振動パラメータの前記調整を制御するように構成されたアルゴリズムを実施するソフトウェアを備える、実施形態8〜9のいずれかに記載のシステム。
【0246】
11)前記アルゴリズムは:
グリッド検索アルゴリズム;
勾配検索アルゴリズム;および
発見的検索アルゴリズム
から選択される、実施形態10に記載のシステム。
【0247】
12)前記被験者内で振動刺激に対する標的部位を局所化する局所化部材をさらに備える、実施形態1〜11のいずれかに記載のシステム。
【0248】
13)局所化部材は、超音波スキャナ、機能性磁気共鳴画像(fMRI)スキャナ、および/または陽電子放出断層撮影(PET)スキャナから選択される、実施形態12に記載のシステム。
【0249】
14)被験者の自律神経系に影響を及ぼす方法であって:
前記被験者の治療部位を選択する工程と;
前記治療部位に当接するように振動刺激デバイスを係留する工程と;
前記振動刺激デバイスから前記治療部位へ、10〜100Hzの周波数を有する振動を伝送する工程と;
被験者の自律神経系内の活動に相関するパラメータの測定値を監視する工程とを含む方法。
【0250】
15)前記測定値は:
前記組織と前記振動刺激デバイスとの間の圧力の測定値;
前記組織の導電性の測定値;
前記組織内のコンプライアンスの測定値;
被験者の瞳孔の寸法の測定値;
被験者から導出された脳波(EEG)信号;
被験者から導出された筋電図(EMG)信号;
被験者から導出された心電図(ECG)信号;
光電脈波信号;
被験者の血圧の測定値;および
前記被験者の体温の測定値
を含む群から選択される、実施形態14に記載の方法。
【0251】
16)振動周波数、振動の振幅、振動の継続時間、および前記振動刺激デバイスと前記組織との間の圧力を含む群から選択された少なくとも1つの振動パラメータを制御する工程をさらに含み、制御する工程は、前記監視された測定値に応じる、
実施形態14〜15のいずれかに記載の方法。
【0252】
17)制御する工程は、自動化されたアルゴリズムに基づく、実施形態16に記載の方法。
【0253】
18)自動化されたアルゴリズムは、:
グリッド検索アルゴリズム;
勾配検索アルゴリズム;および
発見的検索アルゴリズム
から選択される、実施形態17に記載の方法。
【0254】
19)治療部位を選択する工程の前に、治療標的を局所化する工程をさらに含み、前記標的は、自律神経系の神経節、神経、または神経線維である、実施形態14〜18のいずれかに記載の方法。
【0255】
20)前記神経節は、自律神経系内に疾患が発現した神経節である、実施形態19に記載の方法。
【0256】
21)前記治療部位は、前記治療標的で影響を実現するように選択される、実施形態19〜20のいずれかに記載の方法。
【0257】
22)局所化する前記工程は、超音波スキャナ、機能性磁気共鳴画像(fMRI)スキャナ、および/または陽電子放出断層撮影(PET)スキャナを使用して行われる、実施形態19〜21のいずれかに記載の方法。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図17