(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134745
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ばねホルダリングを有する自動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 15/08 20060101AFI20170515BHJP
F04B 39/10 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
F16K15/08
F04B39/10 L
F04B39/10 B
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-560362(P2014-560362)
(86)(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公表番号】特表2015-510994(P2015-510994A)
(43)【公表日】2015年4月13日
(86)【国際出願番号】EP2013054535
(87)【国際公開番号】WO2013131976
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】513243790
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】NUOVO PIGNONE S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】バッビーニ,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】バガリ,リカルド
(72)【発明者】
【氏名】プラテッリ,グイド
【審査官】
加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0230733(US,A1)
【文献】
特開平08−049775(JP,A)
【文献】
特開平02−049979(JP,A)
【文献】
実開昭54−121346(JP,U)
【文献】
特開昭63−227974(JP,A)
【文献】
実開昭57−180178(JP,U)
【文献】
米国特許第01433094(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/08−15/12
F04B 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動弁であって、
第1のガス流路が貫通して延在する弁座と、
第2のガス流路が貫通して延在する弁押えと、
前記弁押えと前記弁座との間で移動可能に配置された少なくとも1つのシャッタ部材と、
ばね部材の少なくとも1つのセットであって、前記弁座と密閉係合状態の閉鎖位置に向かって前記少なくとも1つのシャッタ部材を付勢して、前記第1のガス流路を閉鎖する、ばね部材の少なくとも1つのセットと、
複数のばね保持座を備える少なくとも1つのばねホルダリングと、
前記少なくとも1つのばねホルダリングと前記少なくとも1つのシャッタ部材との間に配置される2次ばね部材と、
を備え、
ばね部材の前記セットの各ばね部材は、前記弁押え内で形成され、それぞれのばね保持座内に保持されるそれぞれのばねポケット内に部分的に収容される、
弁。
【請求項2】
前記少なくとも1つのばねホルダリングは、前記弁座に面し、前記少なくとも1つのシャッタ部材に接触する表面を備える、請求項1に記載の弁。
【請求項3】
各ばねホルダリングは、前記弁押え内に設けられたそれぞれの環状スロット内で摺動可能に係合する。請求項1または2に記載の弁。
【請求項4】
複数の前記ばねホルダリングおよびばね部材の複数のセットを備え、
ばね部材の各セットのばね部材は、前記複数のばねホルダリングの対応するばねホルダリングのばね保持座内に部分的に配置される、
請求項1から3のいずれかに記載の弁。
【請求項5】
前記少なくとも1つのシャッタ部材はシャッタプレートからなる、請求項1から4のいずれかに記載の弁。
【請求項6】
複数のシャッタ部材を備え、
各シャッタ部材はシャッタリングを備え、
各シャッタリングは、前記複数のばねホルダリングの対応するばねホルダリングと結合される、
請求項1から5のいずれかに項記載の弁。
【請求項7】
前記ばね部材は圧縮コイルばねである、請求項1から6のいずれかに記載の弁。
【請求項8】
各ばね部材は、第1の端部および第2の端部を有し、
前記第1の端部は、前記ばねポケットの対応するばねポケット内に収容され、
前記第2の端部は、前記それぞれのばねホルダリングの前記ばね保持座の対応するばね保持座内に保持される、
請求項1から7のいずれかに記載の弁。
【請求項9】
各ばねホルダリングは複数の2次ばね保持座を備え、
前記2次ばね部材は、それぞれの前記2次ばね保持座内に配置され、
前記少なくとも1つのシャッタ部材に弾性的に接触する
請求項1から8のいずれかに項記載の弁。
【請求項10】
それぞれの前記ばねホルダリングは衝撃減少材料で作られる、請求項1から9のいずれかに記載の弁。
【請求項11】
それぞれの前記ばねホルダリングは複合材料で作られる、請求項1から10のいずれかに記載の弁。
【請求項12】
前記ばねホルダリングは強化熱可塑性材料で作られる請求項1から11のいずれかに記載の弁。
【請求項13】
前記熱可塑性材料は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、またはその組合せからなる群から選択される繊維によって強化される、請求項12に記載の弁。
【請求項14】
自動弁であって、
第1のガス流路が貫通して延在する弁座と、
第2のガス流路が貫通して延在する弁押えと、
前記弁押えと前記弁座との間に配置された複数のシャッタリングと、
各シャッタリングについて、ばね部材のセットであって、前記弁座と密閉係合状態の閉鎖位置に向かって前記それぞれのシャッタリングを付勢して、前記第1のガス流路を閉鎖する、ばね部材のセットと、
各シャッタリングについて、複数のばね保持座を備える対応するばねホルダリングと、
前記少なくとも1つのばねホルダリングと前記少なくとも1つのシャッタ部材との間に配置される2次ばね部材と、
を備え、
ばね部材の前記それぞれのセットの各ばね部材は、前記弁押え内で形成され、前記ばねホルダリングのそれぞれのばね保持座内に保持されるそれぞれのばねポケット内に部分的に配置される、
弁。
【請求項15】
各ばねホルダリングは複数の2次ばね保持座を備え、
前記2次ばね部材は、それぞれの前記2次ばね保持座内に配置され、前記対応するシャッタリングに弾性的に接触する、
請求項14に記載の弁。
【請求項16】
前記ばねホルダリングは互いに独立に移動可能である、請求項14または15に記載の弁。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の少なくとも1つの弁を備える、往復圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リング弁などの自動弁に関する。本明細書で開示される主題のいくつかの実施形態は、特に、往復圧縮機用の自動リング弁に関する。さらなる態様によれば、本開示は往復圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動弁は、たとえば往復圧縮機において一般に使用される。自動弁は、圧縮機の吸引側ならびに放出側の両方に配置されて、圧縮機シリンダ内部の圧力制御下で圧縮機の吸引ポートおよび放出ポートを自動的に開閉する。
【0003】
従来技術の自動リング弁の例示的な実施形態が
図1に示される。自動リング弁1は、弁座2および弁押え3を備える。弁座は、弁座2を貫通して延在する、円周方向に配置されたガス流路4を備える。弁押え3は、次にガス流路5を備える。中央ねじ6は、弁座2および弁押え3を互いに接続し、両者の間に空間7を残す。複数の同心的に配置されたシャッタリング8は、弁座2と弁押え3との間に設けられる。各シャッタリング8は、弁座2の対応する環状に配置されたガス流路4のセットに沿って配置される。複数の圧縮ばね9は、シャッタリング8を閉鎖位置に付勢するために各シャッタリング8のために設けられ、シャッタリング8は、ガス流路4の対応する密閉表面4Aに密閉接触することによってガス流路4のそれぞれのセットを閉鎖する。圧縮ばね9は、弁押え3内に設けられるそれぞれのばねポケット10内に収容される。
【0004】
弁1の前後の差圧は、弁の自動開閉を引起す。
図2は、圧縮機の吸引ポートおよび放出ポート上に配置され、1A、1B、1C、1Dと表示される4つの自動リング弁1を使用する往復圧縮機のヘッド11を示す。
【0005】
より詳細には、圧縮機ヘッド11は、圧縮機シリンダ13を画定し、ピストン14は往復式に移動可能である。ピストン14のロッド15は、2重矢印f14に従ってピストン14を往復式に移動させるクランク(図示せず)に接続される。ピストン14は、シリンダ13を、2つの別個の圧縮チャンバ13A、13Bに分割する。
【0006】
圧縮機ヘッド11は、第1の自動リング弁1Aを通して第1の圧縮チャンバ13Aと流体連通状態の第1の吸引ポート17を備える。第2の吸引ポート19は、第2の自動リング弁1Bを通して第2の圧縮チャンバ13Bと流体連通状態にある。第1の放出ポート21は、第3の自動リング弁1Cを通して第1の圧縮チャンバ13Aと流体連通状態にあり、第2の放出ポート23は、第4の自動リング弁1Dを通して第2の圧縮チャンバ13Bと流体連通状態にある。
【0007】
ピストン14の往復運動は、第1の圧縮チャンバ13A内へのガスの吸引および第2の圧縮チャンバ13Bからの圧縮ガスの放出を選択的に引起す、また、その逆も同様である。自動リング弁1A、1B、1C、および1Dは、第1のガス流路4内の圧力がばね9の弾性力を超えると、選択的に開口する。
【0008】
往復圧縮機のクランクシャフトは、たとえば100〜1200rpm、通常、200と1000rpmとの間の範囲の回転速度で回転しうる。したがって、シャッタリング8は、高速の開口および閉鎖の繰返しストロークを受ける。シャッタリング8は、その質量、したがって慣性を減少させるために、繊維強化合成樹脂などの複合材料で一般に作られる。弁座2および弁押え3は、通常、金属で作られる。
【0009】
往復圧縮機用の自動弁などの自動弁が開示され、弁のシャッタ部材に作用する圧縮ばね部材が、ばね部材とシャッタ部材との間に挿入されるばねホルダリングによって接続されて、ばね部材の誘導およびシャッタ部材に対するより均一な付勢作用を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許第747987号公報
【発明の概要】
【0011】
いくつかの実施形態によれば、自動弁が提供され、自動弁は、第1のガス流路が貫通して延在する弁座と、第2のガス流路が貫通して延在する弁押えと、前記弁押えと前記弁座との間で移動可能に配置された少なくとも1つのシャッタ部材と、ばね部材の少なくとも1つのセットであって、前記弁座と密閉係合状態の閉鎖位置に向かって前記少なくとも1つのシャッタ部材を付勢して、前記第1のガス流路を閉鎖する、ばね部材の少なくとも1つのセットと、複数のばね保持座を備える少なくとも1つのばねホルダリングとを組合せて備える。ばねホルダリングは、有利には、弁押えとシャッタ部材との間に配置される。ばね部材の前記セットの各ばね部材は、前記弁押え内で形成され、前記ばね保持座のそれぞれのばね保持座内に保持されるそれぞれのばねポケット内に部分的に収容される。
【0012】
いくつかの実施形態では、シャッタ部材は複数のリングシャッタからなる。それぞれのばねホルダリングは、各シャッタリングと組合され、同じリングシャッタに作用するばね部材を保持する。
【0013】
いくつかの実施形態では、ばねホルダリングは、前記少なくとも1つのシャッタ部材に接触する弁座に面する表面を備える。
【0014】
いくつかの実施形態では、ばね部材の1つのセットだけが、各シャッタ部材または各シャッタリングのために設けられる。他の実施形態では、ばねホルダリングとそれぞれのシャッタ部材との間に配置される2次ばね部材がさらに設けられうる。こうした配置構成では、シャッタ部材またはシャッタリングは、直列に配置されたばね部材の2つのセットによって付勢される。
【0015】
一実施形態では、ばねホルダリングは、弁押え内に設けられるそれぞれの環状スロット内に摺動可能に係合される。
【0016】
弁は、複数のばねホルダリングおよびばね部材の複数のセットからなることができ、ばね部材の各セットのばね部材は、前記複数のばねホルダリングの対応するばねホルダリングのばね保持座内に部分的に配置される。各ばねホルダリングは、対応するシャッタリングと同時に作用することができる。
【0017】
シャッタ部材は、シャッタプレートまたは複数のシャッタプレートからなることができる。いくつかの実施形態では、シャッタ部材は、複数の同心的に配置されたシャッタリングを備える。シャッタリングは、たとえば可撓性接続部材によって互いに接続されうる、または、機械的に互いに独立でありうる。
【0018】
ばね部材は圧縮コイルばねであるとすることができる。各ばね部材は、第1の端部および第2の端部を有し、第1の端部は、前記ばねポケットの対応するばねポケット内に収容され、第2の端部は、それぞれのばねホルダリングの前記ばね保持座の対応するばね保持座内に保持される。
【0019】
いくつかの実施形態では、各ばねホルダリングは複数の2次ばね保持座を備える。2次ばね部材は、それぞれの前記2次ばね保持座内に配置され、前記少なくとも1つのシャッタ部材に弾性的に接触することができる。
【0020】
有利には、ばねホルダリングは衝撃減少材料で作られることができる。たとえば、前記ばねホルダリングは複合材料で作られうる。いくつかの実施形態では、ばねホルダリングは強化熱可塑性材料で作られる。熱可塑性材料は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、またはその組合せからなる群から選択される繊維によって強化されることができる。
【0021】
さらなる態様によれば、本開示は、自動弁に言及し、自動弁は、第1のガス流路が貫通して延在する弁座と、第2のガス流路が貫通して延在する弁押えと、前記弁押えと前記弁座との間に配置された複数のシャッタリングと、各シャッタリングについて、ばね部材のセットであって、前記弁座と密閉係合状態の閉鎖位置に向かってそれぞれのシャッタリングを付勢して、前記第1のガス流路を閉鎖する、ばね部材のセットと、各シャッタリングについて、複数のばね保持座を備える対応するばねホルダリングとを備え、ばね部材のそれぞれのセットの各ばね部材は、前記弁押え内で形成され、前記ばねホルダリングのそれぞれのばね保持座内に保持されるそれぞれのばねポケット内に部分的に配置される。
【0022】
特徴および実施形態は、以下の本明細書で開示され、本説明の一体部分を形成する添付特許請求の範囲においてさらに述べられる。上記簡潔な説明は、以下に続く詳細な説明がよりよく理解されることができるように、また、当技術分野に対する本発明の寄与がよりよく理解されることができるように本発明の種々の実施形態の特徴を述べる。もちろん、以降で述べられ、また、添付特許請求の範囲で述べられることになる本発明の他の特徴が存在する。この点に関して、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の実施形態が、その用途において、構造の詳細および以下の説明に述べられまたは図面に示されるコンポーネントの配置構成に限定されないことが理解される。本発明は、他の実施形態が可能であり、種々の方法で実践され実施されることが可能である。同様に、本明細書において使用されるフレーズおよび用語が、説明のためのものであり、制限的であるとみなされるべきでないことが理解される。
【0023】
したがって、本開示がそれに基づく概念が、本発明のいくつかの目的を実施するための他の構造、方法、および/またはシステムを設計するための基礎として容易に利用されることができることを当業者は認識するであろう。したがって、こうした等価な構造が本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、特許請求項がこうした等価な構造を含むものとみなされることが重要である。
【0024】
本発明の開示される実施形態および本発明の付随する利点の多くのより完全な認識が容易に得られることになる。その理由は、こうした認識が、添付図面に関連して考えられると、以下の詳細な説明を参照してよりよく理解されるからである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来技術の自動リング弁の縦平面による縦断面図である。
【
図2】自動リング弁を使用する往復圧縮機のヘッドの縦断面図である。
【
図3】本明細書で開示される主題によるリング弁の斜視断面図である。
【
図7】
図3〜
図6の弁のばねホルダリングの斜視および断面図である。
【
図8】リング弁のさらなる実施形態の断面図である。
【
図10】
図8および
図9の弁のばねホルダリングの斜視および断面図である。
【
図11】リング弁のさらなる実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
例示的な実施形態の以下の詳細な説明は添付図面を参照する。異なる図面内の同じ参照数字は、同じまたは同様な要素を特定する。さらに、図面は、必ずしも一定比例尺に従って描かれない。同様に、以下の詳細な説明は本発明を制限しない。代わりに、本発明の範囲は添付特許請求の範囲によって規定される。
【0027】
「一実施形態(one embodiment)」または「ある実施形態(an embodiment)」または「いくつかの実施形態(some embodiments)」に対する本明細書全体を通した参照は、ある実施形態に関連して述べる特定の特徴、構造、または特性が、開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。そのため、本明細書全体を通した種々の場所でのフレーズ「一実施形態において(in one embodiment)」または「ある実施形態において(in an embodiment)」または「いくつかの実施形態において(in some embodiments)」の出現は、必ずしも同じ実施形態(複数可)を参照しない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適した方法で組合されることができる。
【0028】
以下でより詳細に述べられ図面において示される実施形態は、自動リング弁、すなわち、複数の同心的に配置されたシャッタリングを備える自動弁を具体的に参照する。図示しない他の実施形態では、単一シャッタ部材を形成するために互いに拘束される1つまたは複数のコンポーネントで作られるシャッタプレートが、同心的に配置されるシャッタリングの代わりに設けられうる。
【0029】
図3〜
図7は、本明細書で開示される主題による自動リング弁の例示的な実施形態を示す。自動リング弁は全体的に50で示される。弁50は、弁座52および弁押え54を備える。弁座52および弁押え54は、ねじ配置構成56によって互いに接続される。以下でより詳細に述べるように、移動可能シャッタリングが配置される空間が弁座52と弁押え54との間に残される。
【0030】
弁座52は、第1のガス流路58のセットを備える。いくつかの実施形態では、ガス流路58は、細長い湾曲した穴またはアパーチャの形状を有する。いくつかの実施形態では、ガス流路58は、同心的に配設された円周に沿って配置される。他の実施形態では、ガス流路58は、細長いのではなく、円形断面を有しうる。円周方向に配置されるガス流路58の各セットは、前記移動可能シャッタリングのそれぞれのシャッタリングによって密閉閉鎖される。
【0031】
図面で示す実施形態では、シャッタリング60のセットは、弁座52と弁押え54との間に配置される。いくつかの実施形態では、シャッタリング60は、他のシャッタリングから独立したシャッタリングである。すなわち、シャッタリング60は、互いに拘束されない。他の実施形態では、シャッタリング60は、拘束部材によって互いに拘束されて、内部に貫通アパーチャを有する単一ユニットを形成することができ、ガスが貫通アパーチャを流れることを可能にする。いくつかの実施形態では、シャッタリング60は、互いに接続されることができ、弁板の形態の単一移動可能シャッタ部材を形成する。そのため、弁板は、前記弁板の一方の面上にリング突出部を備えることになり、弁板は、次に、弁板を通るガスの通過を可能にするなどのためにアパーチャ形成されることになる。
【0032】
図面において、同じ円周に沿って配置されるガス流路58の各セットは、前記同心的に配置されるシャッタリング60のそれぞれのシャッタリング60によって互いに同時に作用する密閉表面によって閉鎖される。
【0033】
弁押え54は、第2のガス流路61のセットを備える。第1のガス流路58と同様に、第2のガス流路61も、同心的に延在する円周に沿って配置され、細長い湾曲したアパーチャまたは穴の形態でありうる。他の実施形態では、第2のガス流路61は、細長い断面ではなく、円形断面を有しうる。第1のガス流路58および第2のガス流路61は、半径方向にオフセットするため、シャッタリング60が開口位置にあるとき、ガスは弁50を通って流れうる。
【0034】
いくつかの例示的な実施形態では、各シャッタリング60は、ばね部材のセットによって弁座52に向かって弾性的に付勢される。ばね部材は、圧縮コイルばね62を備えうる。各圧縮ばね62は、弁押え54内に設けられたそれぞれのばねポケット64内に部分的に収容されうる。
【0035】
各圧縮ばね62は、第1の端部62Aおよび第2の端部62Bを有する。第1の端部62Aは、対応するばねポケット64内に完全に収容され、一方、第2の端部Bは、ばねホルダリング68内に形成されたそれぞれの保持座66内に収容される。
図3〜
図6に示す実施形態では、リング弁50は、5つのシャッタリング60からなり、シャッタリング60のそれぞれは、圧縮ばね62の対応するセットによって弾性的に付勢され、圧縮ばね62はそれぞれ、それぞれのばねポケット64内に収容される。各シャッタリング60は、それぞれのばねホルダリング68と結合され、ばねホルダリング68は、対応するばね保持座66内に圧縮ばね62の端部62Bを収容することによって圧縮ばね62を保持する。
【0036】
各ばねホルダリング68は、弁押え54内に機械加工されたそれぞれの環状スロット70内に摺動可能に収容される。同じシャッタリング60に作用するばね62を収容するばねポケット64は、対応する環状スロット70内で開口し、その環状スロット70内で、ばねホルダリング68は摺動可能に配置される。
【0037】
図3〜
図6に示す実施形態では、各ばねホルダリング68は、2次ばね保持座72をさらに備え、2次ばね保持座72は、ばね保持座66が配置される表面と対向するばねホルダリング68の平坦表面上に形成される。各ばねホルダリング68の各2次ばね保持座72は、それぞれの2次ばね部材74を収容する。
図1から
図6に示す実施形態では、2次ばね部材74は、圧縮ばね、より具体的には、圧縮ばね62と同様であるが、寸法が小さい圧縮コイルばねによって形成される。
【0038】
1つのばねホルダリング68の2次ばね保持座72内に配置された2次ばね部材74は全て、それぞれのシャッタリング60に作用する。したがって、各シャッタリング60は、圧縮コイルばね62のセットと圧縮コイルばね74のセットの結合作用によって閉鎖位置(たとえば
図4および
図5参照)に向かって付勢される。第1のガス流路58と第2のガス流路61との間の圧力差によって各シャッタリング60に加わる力が、圧縮ばね62、74によって生成される力を超えると、シャッタリング60は開口し、ガスが弁を横切って流れることを可能にする。いくつかの実施形態では、圧縮ばね74は、圧縮ばね62より剛性が小さく、その結果、シャッタリング60は、圧力差が圧縮ばね74の付勢力を克服するのに十分になると、開口し始めることになる。
【0039】
シャッタリング60の開口および閉鎖移動中、圧縮ばね62は、ばねホルダリング60およびばねポケット64によって誘導されホールドされる。2次ばね74は、2次ばね保持座72内で誘導される。ばね62および74の誘導は、弁の動作のスムーズさを増加させ、個々のばね62によってシャッタリング60に加えられる曲げ応力を防止する。同じシャッタリング60に作用するばね62が全て、1つでかつ同じばねホルダリング68によって誘導されるため、シャッタリング60に対するより均一な付勢作用が達成される。
【0040】
圧縮ばね62および74の2つのセットの使用は、シャッタリング60のよりスムーズな開口および閉鎖をもたらす。第1のガス流路58内の圧力が、弁を自動的に開口させる値を超えて増加すると、より小さい2次ばね74が、最初に圧縮され、シャッタリング60は、弁座52に面する対応するばねホルダリング68の前面68Aに接触することになる。第1のガス流路58内の圧力のさらなる増加は、圧縮ばね62の圧縮、したがって、環状スロット70に沿うばねホルダリング68の摺動を引起すことになり、ついには、弁の完全な開口であって、ばねホルダリング68がそれぞれの環状スロット70内で内側ストロークを終了すると達成されることになる、弁の完全な開口がもたらされる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ばねホルダリング68は、プラスチック材料などの制振材料で作られる。適した材料は、熱可塑性樹脂、好ましくは、強化熱可塑性樹脂でありうる。適した強化熱可塑性樹脂は、アラミド繊維(Kevlar(登録商標))、炭素繊維、ガラス繊維、および同様なものなどの強化繊維を埋め込みうる。制振材料を使用することは、シャッタリング60の開口移動によって引起される弁に対する機械的力学的応力を減少させるという利点を有する。その理由は、運動エネルギーが、ばねホルダリング68の制振材料によって少なくとも部分的に吸収または消散されるからである。
【0042】
圧縮ばね62、74の2重配置構成の使用は、同様にシャッタリング60の閉鎖移動中に弁の挙動を改善する。ばねホルダリング68の製造のために制振材料を使用することは、同様にシャッタリング60の閉鎖移動中に弁に対する衝撃応力を減少させる。
【0043】
図8、
図9、および
図10は、本開示によるリング弁のさらなる実施形態を示す。同じ参照数字は、
図1〜
図7に示すのと同じかまたは同等の部品を指定するために使用される。
【0044】
リング弁は、全体として60で指定され、ばね配置構成56によって互いに接続された、弁座52および弁押え54を備える。第1のガス流路58は弁座52内に設けられ、第2のガス流路61は弁押え54内に設けられる。弁座52と弁押え54との間の空間内に、シャッタリング60が配置され、シャッタリング60は、ガス流路58を選択的に開口し閉鎖するために、2重矢印f60に従って移動可能である。
【0045】
シャッタリング60は、この実施形態では圧縮コイルばね62の形態であるそれぞれのばね部材によって
図8〜10に示す閉鎖位置に維持される。各シャッタリング60は、圧縮ばね62の対応するセットによって付勢され、圧縮ばね62は、対応するシャッタリング60の環状伸長部に沿って均一に分布する。各圧縮ばね62は、弁押え54内に形成された対応するばねポケット64内に少なくとも部分的に収容される。各圧縮ばね62の第1の端部62Aは、ばねポケット64の底部に当接する。各圧縮ばね62の対向する端部62Bは、ばねホルダリング68内に形成された対応するばね保持座66内に収容される。1つのばねホルダリング68が、各シャッタリング60について設けられるため、同じシャッタリング60に作用する圧縮ばね62は全て、同じばねホルダリング68によって保持されホールドされる。ばねホルダリング68は、弁押え54内に形成された環状スロット70内に摺動可能に収容される。同じシャッタリング60に作用する圧縮ばね62を収容するばねポケット64は、対応するばねホルダリング68が摺動可能に誘導される環状スロット70内で開口する。
【0046】
この実施形態では、各シャッタリング60は、どんな2次ばねも挿入することなく、対応するばねホルダリング68の表面に直接接触する。
【0047】
同様に、この実施形態では、ばねホルダリング68は、樹脂、強化樹脂、たとえば繊維強化樹脂、特に繊維強化熱可塑性樹脂などの制振材料で作られることができる。
【0048】
弁50の動作は、この実施形態では、
図3〜
図7に関して先に開示したものと実質的に同じである。しかし、この場合、弁の開口および閉鎖は、
図3〜
図7に関して先に開示したように2つのばねセットを直列に配置することによるのではなく、各シャッタリング60用のばね62の1つのセットによって制御されるだけである。
【0049】
図8および
図10において特に見られるように、ばねホルダリング68の外径は、ばねホルダリング68の環状展開部全体に沿って一定である。
【0050】
図11〜
図13は、本明細書で開示する主題によるリング弁のさらなる実施形態を示す。
図8〜
図10と同じ参照数字は、やはり詳細には述べられない弁の同じかまたは同等の要素を指定する。
【0051】
図8〜
図10のリング弁と
図11〜
図13のリング弁との主要な差は、
図11〜
図13のリング弁では、ばねホルダリング68が可変断面を有することである。各ばねホルダリング68は、ばね保持座66が配置されるエリアにおいてより大きな断面を有し、一方、
図13において68Aで示す連続する保持座66の各対間に延在する部分はより狭い断面を有する。これは、圧縮ばねの径を減少させる必要なしで、ばねホルダリング68の半径方向寸法を減少させることを可能にする。実際には、たとえば、
図8と
図11の断面の左手部分を比較することによって認識されるように、
図11、
図12、および
図13の実施形態では、シャッタリング60の開口および閉鎖移動中に各ばねホルダリング68が誘導される環状スロット70が、ばねホルダリング68の環状展開部全体の周りに延びる実質的に連続するスロットであることが理解されるであろう。
【0052】
図11、
図12、および
図13の実施形態は、それぞれの環状スロット70におけるばねホルダリング68のよりよい誘導作用をもたらすことができる。
【0053】
図11〜
図13に示す可変断面を有するばねホルダリング68が、直列接続の圧縮ばね62、74の2重のセットが各シャッタリング60のために使用される
図3〜
図7の実施形態で同様に使用されうることが理解されるものとする。
【0054】
本明細書で述べる主題の開示される実施形態は、図面において示され、いくつかの例示的な実施形態に関連して特殊性および詳細に関して完全に上述されたが、新規な教示、本明細書で述べる原理および概念、および添付特許請求の範囲に述べられる主題の利点から実質的に逸脱することなく、多くの修正、変更、および省略が可能であることが当業者に明らかになるであろう。したがって、開示される技術革新の適切な範囲は、全てのこうした修正、変更、および省略を包含するために添付特許請求の範囲の最も幅広い解釈によってだけ決定されるべきである。
【符号の説明】
【0055】
52 弁座
54 弁押え
58 第1のガス流路
60 シャッタリング
61 第2のガス流路
68 圧縮コイルばね
64 ばねポケット
66 ばね保持座
68 ばねホルダリング