特許第6134779号(P6134779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6134779原油を処理する、統合された、水素化処理及び流動接触分解
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134779
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】原油を処理する、統合された、水素化処理及び流動接触分解
(51)【国際特許分類】
   C10G 69/04 20060101AFI20170515BHJP
   C10G 11/18 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   C10G69/04
   C10G11/18
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-501872(P2015-501872)
(86)(22)【出願日】2013年3月20日
(65)【公表番号】特表2015-510969(P2015-510969A)
(43)【公表日】2015年4月13日
(86)【国際出願番号】US2013033083
(87)【国際公開番号】WO2013142563
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2015年10月14日
(31)【優先権主張番号】61/789,871
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/613,228
(32)【優先日】2012年3月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511304464
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100197572
【弁理士】
【氏名又は名称】尼崎 匡
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒム・エイ・アバ
(72)【発明者】
【氏名】ラヒール・シャフィ
(72)【発明者】
【氏名】アブデヌール・ブラーヌ
(72)【発明者】
【氏名】エッサム・サイード
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−543899(JP,A)
【文献】 特表2002−534559(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0025291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原油を直接処理してオレフィン及び芳香族の石油化学製品を生成させる、統合された、水素化処理、及び流動接触分解処理方法であって:
a. 原油及び水素を水素化処理ゾーンに充填し、前記水素化処理ゾーンは、減少した汚染物質の含有量、増加したパラフィン度、増加した米国石油協会比重(American Petroleum Institute gravity)を有する水素化処理したエフルエントを生成させるのに有効な条件下で、運転すること;
b. 前記水素化処理したエフルエントを、低沸点留分と高沸点留分に分離すること;
c. 前記低沸点留分を、流動接触分解ユニットの第1の下降流反応器において、所定の触媒の存在中で分解して、分解された生成物と使用済みの触媒を生成させること;
d. 前記高沸点留分を、前記流動接触分解ユニットの第2の下降流反応器において、所定の触媒の存在中で分解して、分解された生成物と使用済みの触媒を生成させること;
e. 前記第1及び第2の下降流反応器の両方からの使用済み触媒を、共通の再生ゾーン中で再生して、再生した触媒を前記第1及び第2の下降流反応器に戻して再循環させること;及び
f. 第1及び第2の分解された生成物流を回収すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記低沸点留分を処理する前記下降流反応器における触媒−油比が、10:1〜40:1の範囲にある、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記高沸点留分を処理する前記下降流反応器における触媒−油比が、20:1〜60:1の範囲にある、請求項1に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2012年3月20日に出願された米国仮特許出願第61/613,228号、及び2013年3月15日に出願された同第61/789,871号の優先権の利益を主張し、それらは、本出願において参照により援用される。
【0002】
背景技術
発明の分野
本発明は、石油化学製品、例えばオレフィン及び芳香族を、原油を含む原料から生成させる、統合された、水素化処理、及び流動接触分解処理に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の記載
天然の石油すなわち原油の組成は、多くの要因、主に地理的な起源に基づいて顕著に変動し、特定の地域内でさえも、組成物は変動しうる。原油は精製されて、輸送燃料や石油化学製品原料が生成される。典型的には、輸送用燃料は、原油からの分留留分の処理及び混合により、特定の最終用途の仕様に合致するように生成される。最初の常圧及び/又は真空蒸留の後、留分は、様々な触媒及び非触媒処理により生成物に転換される。
【0004】
炭化水素原料の触媒処理は概して、水素の有無を基にして分類される。水素を含む処理はしばしば、ひろく水素化処理と称されており、例えば、主に脱硫及び脱窒素を行う水素化処理、及びより重質な化合物を、特定の生成物仕様向けにさらに好適なより軽質の化合物に転換する水素化分解を含む。水素化処理の典型的な実施例は、添加された水素を用いて、約540℃未満の反応転換温度で、触媒の固定床を含む反応ゾーンを用いて行う炭化水素原料の触媒転換である。固定床の水素化分解処理は、市場性の面で石油精製施設に受け入れられてきたものの、この処理はいくつかの欠点がある。例えば、長期稼動、及び操業中の高い信頼性を達成するために、固定床水素化分解器には、触媒安定性を達成するために、触媒の在庫量が高いこと、及び比較的高圧、すなわち150kg/cm以上が必要でありうる。加えて、触媒の固定床上の反応物質の二相流がしばしば、反応ゾーン中での不均一分布を生じ、同時に触媒の使用が不十分になり、反応物質の転換が不完全となる。瞬時の運転ミス又は電源故障もまた、重度の触媒コーキングを生じ、コーキングは処理触媒再生又は交換のため処理の停止が必要となることがある。
【0005】
特定の炭化水素留分向けの別のタイプの処理は、水素を添加しない触媒転換である。このタイプの最も広く使用されている処理は、流動化接触分解(FCC)処理である。FCC処理では、原料は、典型的には約480〜550℃の範囲で循環触媒流を用いて運転する転換ゾーンに導入され、よって「流動化」と呼ばれる。このモードは、比較的低圧、すなわち50psig以下で実行されるという利点を有する。しかしながら、FCC処理の特定の欠点には、比較的低い水素化と比較的高い反応温度が挙げられ、この温度は、触媒上でのコークス形成を加速する傾向があり、絶え間ない再生を必要とするものである。
【0006】
FCC処理では、供給物は、流動化した酸性触媒床上で接触分解される。そのような処理からの主要生成物は従来、ガソリンであったが、その他の生成物、例えば液化石油ガス及び分解されたガス油もまた少量生成される。触媒上に堆積したコークスは、再生ゾーン中、比較的高温で空気の存在中、燃焼されてから、反応ゾーンに再循環して戻される。
【0007】
それぞれ個別の水素化処理、及びFCC処理は、原油全体を効率的に転換して高収量で高品質の石油化学製品、例えばオレフィン及び芳香族を生成するという必要性は依然として残されているものの、大いに進歩しており、それらの意図した目的に好適である。
【発明の概要】
【0008】
本明細書のシステム及び処理は、FCCゾーンと統合された水素化処理ゾーンを提供し、これにより、原油原料を直接処理して、オレフィン及び芳香族を含む石油化学製品を生成させることを可能とするものである。
【0009】
原油を直接処理してオレフィン及び芳香族の石油化学製品を生成させる、統合された、水素化処理、及び流動接触分解処理を提供する。原油及び水素を、減少した汚染物質の含有量、増加したパラフィン度、減少した鉱山局相関指標、そして増加した米国石油協会比重(American Petroleum Institute gravity)を有する水素化処理されたエフルエントを生成する条件下で運転する水素化処理ゾーンに充填する。水素化処理されたエフルエントを、低沸点留分と高沸点留分に分離する。低沸点留分を、流動接触分解ユニットの第1の下降流反応器中で、所定量の触媒の存在下、分解し、分解された生成物と使用済みの触媒を生成させる。高沸点留分を、流動接触分解ユニットの第2の下降流反応器中で、所定の量の触媒の存在中、分解し、分解された生成物と使用済みの触媒を生成させる。第1の及び第2の下降流反応器の両方からの使用済みの触媒は、共通の再生ゾーン中で再生し、第1の及び第2の分解された生成物流は回収する。
【0010】
本明細書で使用する場合、「原油」という用語は、従来の源から得られた原油全体を含み、これは、何等かの前処理を経たものも含むと理解されるものとする。「原油」という用語はまた、水油分離;及び/又はガス油分離;及び/又は脱塩;及び/又は安定化を行ったものを含むと理解されるものとする。
【0011】
本発明の処理の、その他の態様、実施形態、及び利点を、以下に詳細に考察する。さらに、前述の情報及び以下の詳細な記載は、様々な態様及び実施形態をただ例示するだけの例であり、特許請求された特徴及び実施形態の本質並びに性質を理解するための要約及び枠組みを提供することを意図していると理解されるものとする。付随の図面は例示するものであり、本発明の処理の様々な態様及び実施形態をさらに理解するために提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明を、以下にさらに詳細に、そして添付図面を参照して記載するが、ここで:
図1】本明細書に記載した、水素化処理ゾーン及びFCCゾーンの統合処理の処理フロー概略図であり;そして
図2】本明細書に記載の統合処理において使用され得るFCCゾーンの詳細な処理フロー概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の詳細な記載
統合された、水素化処理、及びFCC処理、並びにシステムを含む処理フロー概略図を、図1に示す。統合システム100は概して、水素化処理ゾーン110、フラッシュカラム120、二つの下降流反応器130及び140を有する高過酷度FCCゾーン、並びに再生器150を含む。
【0014】
水素化処理ゾーン110には概して、原油供給物及び水素の混合物を受け入れる吸入口109、並びに水素化処理したエフルエントを排出する排出口111を含む。
【0015】
水素化処理反応器(複数可)からの反応器エフルエント111は、熱交換器(図示せず)中で冷却し、高圧分離器112に送る。分離器の頂部115は、アミンユニット(amine unit)116中で洗浄し、結果として得られた水素に富んだガス流117は、再生圧縮器118に受け渡し、再循環ガス119として水素化処理反応器で使用する。高圧分離器112からのボトム流113は、実質的に液相であり、これを冷却し低圧低温分離器114に導入し、そこで、ガス流122と液体流121に分離する。低圧冷分離器からのガスは、水素、HS、NH、及びC〜C炭化水素等のいかなる軽質炭化水素も含む。典型的にはこれらのガスを送って、さらなる処理、例えばフレア処理、又は燃料ガス処理を行う。
【0016】
フラッシュカラム120には、低圧冷分離器の排出口121と流体連結する吸入口124、低沸点留分を排出する排出口123、及び高沸点留分を排出する排出口125が含まれる。
【0017】
下降流反応器130には、低沸点留分を受け入れる、フラッシュカラム120の排出口123と流体連結した吸入口131、再生した触媒を受け入れる吸入口133が含まれる。下降流反応器130にはまた、分解された生成物を排出する排出口135、及び使用済みの触媒を排出する排出口137が含まれる。
【0018】
下降流反応器140には、高沸点留分を受け入れる、フラッシュカラム120の排出口125と流体連結した吸入口141、再生した触媒を受け入れる吸入口143が含まれる。下降流反応器140にはまた、分解された生成物を排出する排出口145、及び使用済みの触媒排出する排出口147が含まれる。排出口135及び145から排出した、分解された生成物は、排出口159を通じて回収する。
【0019】
下降流タイプの反応器にはそれぞれ、それに伴う、混合ゾーン、分離器、及び触媒ストリッピングゾーンが含まれ、それらは、図2に関して示され記載されているとおりである。
【0020】
再生器150は、下降流反応器130、140に共有され、使用済みの触媒を受け入れる、下降流反応器130の排出口137と流体連結した吸入口151、及び、使用済みの触媒を受け入れる、下降流反応器140の排出口147と流体連結した吸入口153を含む。再生器150はまた、再生した触媒を排出する、下降流反応器130の吸入口133と流体連結した出口155、及び再生した触媒を排出する、下降流反応器140の入口143と流体連結した排出口157を含む。
【0021】
本明細書に記載の統合プロセスにおいて使用されるFCC系の詳細な概略図を、図2に示す。FCC系には、二つの混合ゾーン70a及び70b、二つの反応ゾーン10a及び10b、二つの分離ゾーン20a及び20b、二つのストリッピングゾーン30a及び30b、再生ゾーン40、ライザータイプの再生器50、並びに触媒ホッパー60が含まれる。
【0022】
混合ゾーン70aは、低沸点留分を受け入れる吸入口2a、再生した触媒を受け入れる吸入口1a、及び炭化水素/触媒混合物を排出する排出口を有する。反応ゾーン10aは、炭化水素/触媒混合物を受け入れる、混合ゾーン70aの排出口と流体連結した吸入口、及び、分解された生成物と使用済みの触媒の混合物を排出する排出口を有する。分離ゾーン20aには、分解された生成物と使用済みの触媒の混合物を受け入れる、反応ゾーン10aの排出口と流体連結した吸入口、分離した分解された生成物を排出する排出口3a、及び使用済みの触媒を、残留する炭化水素とともに排出する排出口が含まれる。ストリッピングゾーン30aには、使用済みの触媒を、残留する炭化水素とともに受け入れる、分離ゾーン20aの出口と流体連結した吸入口、及びストリッピング水蒸気を受け入れる吸入口4aが含まれる。ストリッピングゾーン30aにはまた、回収した生成物を排出する排出口5a、及び使用済みの触媒を排出する排出口6aが含まれる。
【0023】
混合ゾーン70bは、高沸点留分を受け入れる吸入口2b、再生した触媒を受け入れる吸入口1b、及び炭化水素/触媒混合物を排出する排出口を有する。反応ゾーン10bは、炭化水素/触媒混合物を受け入れる、混合ゾーン70bの排出口と流体連結した吸入口、及び分解された生成物と使用済みの触媒の混合物を排出する排出口を有する。分離ゾーン20bには、分解された生成物と使用済みの触媒の混合物を受け入れる、反応ゾーン10bの排出口と流体連結した吸入口、分離された分解生成物を排出する排出口3b、及び、使用済みの触媒を残留する炭化水素とともに排出する排出口が含まれる。ストリッピングゾーン30bには、使用済みの触媒を、残留する炭化水素とともに受け入れる、分離ゾーン20bの排出口と流体連結した吸入口、及びストリッピング水蒸気を受け入れる吸入口4bが含まれる。ストリッピングゾーン30bにはまた、回収した生成物を排出する排出口5b、及び使用済みの触媒を排出する排出口6bが含まれる。
【0024】
再生ゾーン40には、燃焼ガスを受け入れる吸入口5、使用済みの触媒を受け入れる、ストリッピングゾーン30aの排出口6aに流体連結した吸入口、使用済みの触媒を受け入れる、ストリッピングゾーン30bの排出口6bと流体連結した吸入口、及び高温の再生した触媒を排出する排出口が含まれる。
【0025】
ライザータイプの再生器50には、高温の再生した触媒を受け入れる、再生ゾーン40の出口と流体連結した吸入口、及び、中程度に冷却した再生した触媒を排出する排出口が含まれる。
【0026】
触媒ホッパー60には、冷却した再生した触媒を受け入れる、ライザータイプ再生器50の排出口と流体連結した吸入口が含まれる。さらに、燃料ガスを排出する排出口6を、再生した触媒を排出する、混合ゾーンの吸入口と流体連結した排出口とともに提供し、混合ゾーン70aの吸入口1a、混合ゾーン70bの吸入口1bとして図に示す。
【0027】
図1に示す配置を適用する処理では、原油原料を、有効量の水素と混合し、混合物を、300℃〜450℃の範囲の温度で、水素化処理ゾーン110の吸入口109に充填する。特定の実施形態では、水素化処理ゾーン110は、一つ又は複数のユニット運転を含み、これらは、同一所有者の米国特許公開第2011/0083996号、及びPCT特許公開国際公開第2010/009077号、国際公開第2010/009082号、国際公開第2010/009089号、及び国際公開第2009/073436号に記載されているものであり、これらの文献は、参照によりそれらの全体が本明細書において援用される。例えば、水素化処理ゾーンは、有効量の水素化脱金属触媒を含む一つ又は複数の床、及び、水素化脱芳香族、水素化脱窒素、水素化脱硫及び/又は水素化分解の機能を有する有効量の水素化処理触媒を含む一つ又は複数の床を含んでいてもよい。さらなる実施形態では、水素化処理ゾーン110は、二つより多い触媒床を含む。さらなる実施形態では、水素化処理ゾーン110は、複数の反応容器を含み、それぞれが触媒床を含み、触媒床は、例えば異なる機能のものである。
【0028】
水素化処理ゾーン110の運転は、原油原料を水素化脱金属させる、水素化脱芳香族させる、水素化脱窒素させる、水素化脱硫させる、及び/又は水素化分解するのに有効なパラメータの下で行う。特定の実施形態では、水素化処理は、以下の条件:300℃〜450℃の範囲の運転温度;30バール〜180バールの範囲の運転圧力;0.1h−1〜10h−1の範囲の、単位時間当たりの液体空間速度(LHSV)、を用いて実行する。とりわけ、水素化処理ゾーン110中で原料として原油を用いる場合には、例えば、同一の水素化処理ユニットの運転を常圧残油に適用するのと比較した長所が示されている。例えば、約1℃/月の失活速度で、370℃〜375℃の範囲の開始又は運転温度である。対照的に、もし残油を処理することになる場合では、失活速度は、約3℃/月〜4℃/月に近いものとなるであろう。常圧残油の処理は典型的には、およそ200バールの圧力を適用する一方で、原油を処理する本処理は、圧力100バールという低い圧力で運転することが可能である。更に、供給物の水素含有量を高めるのに必要とされる高いレベルの飽和を達成するには、本処理は、常圧残油と比較して高スループットで運転することが可能である。LHSVは、0.5という高い値が可能である一方で、常圧残油については、典型的には0.25という値である。予想外の発見は、原油を処理する際の失活速度は、通常観測されるのとは逆方向に向かっていることである。低スループット(0.25hr−1)での失活は、4.2℃/月であり、さらに高いスループット(0.5hr−1)での失活は、2.0℃/月である。工業的に検討されるすべての供給物を用いて、逆のことが観測されている。これは、触媒の洗浄効果が原因であるとすることができる。参照により本明細書に援用される国際公開第2010/009077号を見られたい。
【0029】
水素化処理ゾーン110からの水素化処理されたエフルエント(例えば、高圧分離器中の軽質構成成分を除去後のもの、この成分は図示せず、随意に不純物除去して水素化処理ゾーン110に再循環させるか、又は別の精製処理において使用することができる)は、減少した汚染物質(すなわち、金属、硫黄及び窒素)の含有量、増加したパラフィン度、減少した鉱山局相関指標(Bureau of Mines Correlation Index)(BMCI)、増加した米国石油協会比重(American Petroleum Institute gravity)(API)を有する。水素化処理されたエフルエント111を高圧分離器112に通し、液体ボトム113を低圧力冷分離器114に通す。低圧冷分離器114の液体ボトム121はその後、フラッシュカラム120に搬送し、排出口123から排出される低沸点留分と、排出口125から排出される高沸点留分に分離する。高沸点留分は、15重量%未満のコンラドソン炭素と20ppm未満の金属総量を含んでいる。両留分をその後、以下に記載のとおりにFCCユニットのそれぞれの部分に送る。
【0030】
図2を以下に参照して、低沸点留分を、吸入口2aを通じて混合ゾーン70a中に導入し、吸入口1aを通じて混合ゾーン70aに搬送された、再生した触媒と混合する。混合物を、反応ゾーン10aに受け渡し、以下の条件下で分解する:532〜704℃の範囲の温度;10:1〜40:1の範囲の触媒−油比;0.2〜2秒の範囲の滞留時間。分解された生成物と使用済みの触媒の混合物を、分離ゾーン20aに受け渡し、排出口3aを通じて排出される分解された生成物と、ストリッピングゾーン30aに搬送される使用済みの触媒とに分離する。分解された生成物は、エチレン、プロピレン、ブチレン、ガソリン(これから芳香族、例えばベンゼン、トルエン、及びキシレンが得られる)、及び、分解反応からのその他の副生成物を含む。分解された生成物は、分離された回収区域(示さず)で個別に回収する、又は一つにして排出口159を通じてさらに分別及び最終的に回収することができる。使用済みの触媒を、ストリッピングゾーン30a中で、吸入口4aを通じて導入したストリッピング水蒸気を用いて洗浄する。残留する炭化水素ガスはサイクロン分離器(示さず)を通過させ、排出口5aを通じて回収し、清浄化された使用済みの触媒は、排出口6aを通じて再生ゾーン40に搬送する。
【0031】
高沸点留分を、吸入口2bを通じて混合ゾーン70bの中に導入し、吸入口1bを通じて混合ゾーン70bに搬送された再生した触媒と混合する。混合物を反応ゾーン10bに受け渡し、以下の条件下で分解する:532〜704℃の範囲の温度;20:1〜60:1の範囲の触媒−油比;0.2〜2秒の範囲の滞留時間。分解された生成物と使用済みの触媒の混合物を、分離ゾーン20bに受け渡し、排出口3bを通じて排出される分解生成物と、ストリッピングゾーン30bに搬送される使用済みの触媒に分離する。分解された生成物は、エチレン、プロピレン、ブチレン、ガソリン、及び、分解反応からのその他の副生成物を含む。分解された生成物は、個別の回収区域(示さず)で個別に回収する、又は一つにして排出口159を通じてさらに分別及び最終的に回収することができる。使用済みの触媒を、ストリッピングゾーン30b中で、吸入口4bを通じて導入したストリッピング水蒸気を用いて洗浄する。残留する炭化水素ガスはサイクロン分離器(示さず)を通し、排出口5bを通じて回収し、清浄化された使用済みの触媒は、排出口6bを通じて再生ゾーン40に搬送する。
【0032】
再生ゾーン40では、使用済みの触媒を、吸入口5を通じて導入した燃焼ガス、例えば圧搾空気の存在下で、制御された燃焼を通じて再生する。再生した触媒をライザータイプの再生器50を通して上昇させて、反応ゾーン10a及び10bにおける吸熱性分解反応のための熱を供給する。中程度に冷却した再生した触媒を触媒ホッパー60に移動させ、触媒ホッパーは、ガス−固体分離器として機能し、コークス燃焼の副生成物を含む燃料ガスを、排出口6を通じて除去する。再生した触媒を、混合ゾーン70a及び70bに再循環させる。
【0033】
特定の実施形態では、水素化処理は、芳香族、特に多環芳香族の飽和の後、軽度の水素化分解により、原料のパラフィン含有量を増加させる(又はBMCIを減少させる)ことができる。原油を水素処理する際、汚染物質、例えば金属、硫黄、及び窒素を、脱金属、脱硫、及び/又は脱窒素の触媒機能を実行する一連の積層触媒に原料を通すことによって、除去することができる。
【0034】
一実施形態では、水素化脱金属(HDM)と水素化脱硫(HDS)を実行する一連の触
媒は以下のとおり:
a. HDM区域での触媒は概して、約140〜240m/gの表面積を有するガ
ンマアルミナの担持体をベースにしたものである。この触媒は、非常に高い細孔体積、例
えば、1cm/g超を有するものとして最も良く言い表される。細孔サイズそのものは
典型的には、圧倒的にマクロ多孔性である。このことが要求されるのは、触媒表面上に金
属、そして随意にドーパントを取り込むために大容量を提供するためである。典型的には
触媒表面上で活性な金属は、ニッケルとモリブデンの硫化物であって、そのが比Ni/N
i+Mo<0.15となるものである。ニッケルの濃度は、HDM触媒上ではその他の触
媒よりも低く、これは、幾分かのニッケルとバナジウムが、除去の間に原料それ自体から
堆積し、触媒として作用すると予想されるからである。使用するドーパントは、リン(例
えば、参照により本明細書において援用される、米国特許公開第2005/021160
3号を参照されたい)、ホウ素、ケイ素、及びハロゲンの一つ又は複数が可能である。触
媒は、アルミナ押し出し物又はアルミナビーズの形態であってもよい。特定の実施形態で
は、金属の取り込みが床の頂部で30%〜100%の間で変化するであろうことから、ア
ルミナビーズを使用すると反応器中での触媒HDM床の非担持が容易になる。
b. 中間触媒を使用して、HDM及びHDSの機能間の移行を行うこともできる。
それは、中間金属の担持、及び細孔サイズ分布を有する。HDM/HDS反応器中のこの
触媒は、実質的にアルミナをベースにした担持体であり、これは押し出し物の形態をとり
、随意にVI族(例えば、モリブデン及び/又はタングステン)の少なくとも一つの触媒
金属、及び/又はVIII族(例えば、ニッケル及び/又はコバルト)の少なくとも一つ
の触媒金属である。触媒はまた、ホウ素、リン、ハロゲン及びケイ素から選択される随意
に少なくとも一つのドーパントを含有する。物理的特性には、約140〜200m/g
の表面積、少なくとも0.6cm/gの細孔体積、及び細孔12〜50nmの範囲のメ
ソ細孔性の細孔が挙げられる。
c. HDS区域中の触媒は、ガンマアルミナをベースにした担持物質を有するもの
を含んでいてもよく、その典型的な表面積は、HDM範囲の高い方の端に近い、例えば約
180〜240m/gの範囲である。これは、HDSのために高い表面積を要求し、結果として、比較的小さい細孔体積、例えば1cm/g未満が得られる。触媒は、VI族の元素の少なくとも一つ、例えば、モリブデンと、VIII族の元素の少なくとも一つ、例えばニッケルとを含有する。触媒はまた、ホウ素、リン、ケイ素及びハロゲンから選択される少なくともの一つのドーパントを含む。特定の実施形態では、コバルトを使用して、比較的高いレベルの脱硫を行う。活性相のための金属担持は、要求される活性が高いほど高く、Ni/Ni+Moのモル比が0.1〜0.3の範囲であり、(Co+Ni)/Moのモル比が0.25〜0.85の範囲にある。
d. 最終触媒(随意に第2の及び第3の触媒と置き換わり得る)は、原料の水素化
(HDSの主機能ではなく)を実行するように設計され、例えば、Appl.Catal
.AGeneral、204(2000)251に記載のとおりである。触媒はまた、N
iにより促進されることになり、担持体は、細孔の大きいガンマアルミナである。物理的
特性には、HDMの範囲の高い方の端に近い表面積、例えば、180〜240m/gが
挙げられる。これは、HDSのために高い表面積を要求し、その結果、比較的小さい細孔
体積、例えば、1cm/g未満が得られる。
【0035】
FCC処理用の触媒は、従来、FCC処理に使用されてきたどんな触媒でもよく、例えばゼオライト、シリカ−アルミナ、一酸化炭素燃焼促進剤添加剤、ボトム分解添加剤、及び軽質オレフィン生成添加剤であってもよい。好ましい分解ゼオライトは、ゼオライトY、REY、USY、及びRE−USYである。下降流反応器における原油の分解を最大限にそして最適化するためには、FCC処理において典型的に使用される選択的触媒添加剤、すなわち、ZSM−5ゼオライト結晶又はその他のペンタシル(pentasil)タイプの触媒を、分解触媒と混合して、システムに加えることができる。
【実施例】
【0036】
実施例として、アラビアンライト原油を、以下の表1の条件に従って水素化処理した:
表1:水素化処理条件
【0037】
【表1】
【0038】
初期供給物及び水素化処理生成物の特性を、以下の表2に報告する。水素化処理した供給物を二つの留分に350℃で分別し、両留分をその後、二つのダウナーHS−FCCユニットに送る。350℃+留分の特性もまた、表2に報告する。
表2: アラビアンライト、及び高品質化アラビアンライトとその350℃+留分の特性
【0039】
【表2】
【0040】
本発明の方法及びシステムを、上に、そして添付図面中に記載したが、しかし、修正は当技術者には明らかになるであろうし、本発明の保護の範囲は、以下の請求項において定義されるものとする。
図1
図2