(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の作動部材では、押し引き部材をプーリに巻き付けて配置し、当該押し引き部材を押し引きする動作方向を直線方向から円周方向に変換することで湾曲可能な構成を採用しているため、押し引き部材には比較的剛性の小さなワイヤ等が使用される。このため、このワイヤを介して長尺状の部材へ押し引き力を良好に伝達することができない虞がある。
また、ワイヤをプーリに追従よく巻き付ける必要があるため、プーリが大型なものとなり、ひいては器具全体の大型化が招かれるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために発明されたものであり、押し引き部材の進退移動を長尺部材に効率よく伝達することができ、かつ、医療器具全体の小型化を図ることが可能な作動部材、および当該作動部材が備えられた医療器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記(1)〜(11)に記載のいずれかの発明により達成される。
(
1)
可撓性を備える医療用の長尺部材に所定の動作を行わせるための作動部材であって、前記長尺部材の軸方向の基端側に配置され、前記長尺部材の軸方向に沿って相対的に移動可能に設けられた第1移動部および第2移動部、前記第1移動部から前記長尺部材の軸方向の先端側へ延伸された第1延伸部、および前記第2移動部から前記長尺部材の軸方向の先端側へ延伸された第2延伸部、を備え、前記第1移動部および前記第2移動部の移動に伴い前記長尺部材の軸方向に押し引きされる押し引き部材と、前記第1移動部および前記第2移動部の移動を操作するための操作部材と、端部に向かうに従って次第に狭幅する狭幅部を備え、前記操作部材の操作に伴い前記狭幅部が前記第1移動部および前記第2移動部間に進入して前記第1移動部および前記第2移動部を移動させる進入部材と、を有し、前記進入部材は、前記軸方向と交差する方向に進退可能に設けられ、当該進入部材を進退させることで前記狭幅部が進退し、前記第1移動部および前記第2移動部を軸方向に沿う逆向きにそれぞれ移動させることが可能に構成されており、前記操作部材は、薄肉部と、前記薄肉部よりも肉厚の厚肉部と、を有する管状の部材によって構成されるとともに、内部に前記進入部材を収容可能に設けられ、当該操作部材を回転させることによって前記進入部材を進退させ
、前記押し引き部材は、前記進入部材による前記第1移動部および前記第2移動部の移動を前記長尺部材へ伝達することによって前記長尺部材に湾曲動作を行わせることが可能な作動部材。
(
2)
可撓性を備える医療用の長尺部材に所定の動作を行わせるための作動部材であって、前記長尺部材の軸方向の基端側に配置され、前記長尺部材の軸方向に沿って相対的に移動可能に設けられた第1移動部および第2移動部、前記第1移動部から前記長尺部材の軸方向の先端側へ延伸された第1延伸部、および前記第2移動部から前記長尺部材の軸方向の先端側へ延伸された第2延伸部、を備え、前記第1移動部および前記第2移動部の移動に伴い前記長尺部材の軸方向に押し引きされる押し引き部材と、前記第1移動部および前記第2移動部の移動を操作するための操作部材と、端部に向かうに従って次第に狭幅する狭幅部を備え、前記操作部材の操作に伴い前記狭幅部が前記第1移動部および前記第2移動部間に進入して前記第1移動部および前記第2移動部を移動させる進入部材と、を有し、前記進入部材は、前記長尺部材の周方向に回転可能に設けられ、当該進入部材を回転させることによって前記狭幅部が進退
し、前記第1移動部および前記第2移動部を軸方向に沿う逆向きにそれぞれ移動させることが可能に構成されており、前記押し引き部材は、前記進入部材による前記第1移動部および前記第2移動部の移動を前記長尺部材へ伝達することによって前記長尺部材に湾曲動作を行わせることが可能な作動部材。
(
3)前記操作部材は、前記進入部材が内周面に周方向に形成された管状の部材によって構成され、当該操作部材を回転させることによって前記進入部材を回転させる、上記(
2)に記載の作動部材。
(
4)
可撓性を備える医療用の長尺部材に所定の動作を行わせるための作動部材であって、前記長尺部材の軸方向の基端側に配置され、前記長尺部材の軸方向に沿って相対的に移動可能に設けられた第1移動部および第2移動部、前記第1移動部から前記長尺部材の軸方向の先端側へ延伸された第1延伸部、および前記第2移動部から前記長尺部材の軸方向の先端側へ延伸された第2延伸部、を備え、前記第1移動部および前記第2移動部の移動に伴い前記長尺部材の軸方向に押し引きされる押し引き部材と、前記第1移動部および前記第2移動部の移動を操作するための操作部材と、端部に向かうに従って次第に狭幅する狭幅部を備え、前記操作部材の操作に伴い前記狭幅部が前記第1移動部および前記第2移動部間に進入して前記第1移動部および前記第2移動部を移動させる進入部材と、を有し、前記進入部材は、
前記軸方向と交差する方向に進退可能に設けられ、当該進入部材を進退させることで前記狭幅部が進退し、前記第1移動部および前記第2移動部を前記軸方向に沿う同一方向にそれぞれ異なる移動量で移動させることが可能に構成されており、
前記操作部材は、薄肉部と、前記薄肉部よりも肉厚の厚肉部と、を有する管状の部材によって構成されるとともに、内部に前記進入部材を収容可能に設けられ、当該操作部材を回転させることによって前記進入部材を進退させ、前記押し引き部材は、前記進入部材による前記第1移動部および前記第2移動部の移動を前記長尺部材へ伝達することによって前記長尺部材に湾曲動作を行わせることが可能な作動部材。
(
5)
可撓性を備える医療用の長尺部材に所定の動作を行わせるための作動部材であって、前記長尺部材の軸方向の基端側に配置され、前記長尺部材の軸方向に沿って相対的に移動可能に設けられた第1移動部および第2移動部、前記第1移動部から前記長尺部材の軸方向の先端側へ延伸された第1延伸部、および前記第2移動部から前記長尺部材の軸方向の先端側へ延伸された第2延伸部、を備え、前記第1移動部および前記第2移動部の移動に伴い前記長尺部材の軸方向に押し引きされる押し引き部材と、前記第1移動部および前記第2移動部の移動を操作するための操作部材と、端部に向かうに従って次第に狭幅する狭幅部を備え、前記操作部材の操作に伴い前記狭幅部が前記第1移動部および前記第2移動部間に進入して前記第1移動部および前記第2移動部を移動させる進入部材と、を有し、前記進入部材は、前記長尺部材の周方向に回転可能に設けられ、当該進入部材を回転させることによって前記狭幅部が進退
し、前記第1移動部および前記第2移動部を前記軸方向に沿う同一方向にそれぞれ異なる移動量で移動させることが可能に構成されており、前記押し引き部材は、前記進入部材による前記第1移動部および前記第2移動部の移動を前記長尺部材へ伝達することによって前記長尺部材に湾曲動作を行わせることが可能な作動部材。
(
6)前記操作部材は、前記進入部材が内周面に螺旋状に形成された管状の部材によって構成され、当該操作部材を回転させることによって前記進入部材を回転させる、上記(
5)に記載の作動部材。
(
7)前記長尺部材の進退量および湾曲量のうちの少なくとも湾曲量を視認によって確認することを可能にする視認部をさらに有する上記(1)〜(
6)のいずれか1つに記載の作動部材。
(
8)上記(1)〜(
7)のいずれか1つに記載の作動部材と、前記作動部材によって進退動作および湾曲動作の少なくとも一方の動作が行われる可撓性を備える長尺部材と、を備える医療器具。
【0007】
上記(1)に記載の発明によれば、押し引き部材が動作方向を変換されることなく長尺部材の軸方向に押し引きされることによって、長尺部材に進退動作または湾曲動作を行わせるため、押し引き部材の進退移動を長尺部材に効率よく伝達することができる。また、押し引き部材を操作部材に巻き付ける必要がないため、医療器具全体の小型化を図ることができる。
また、第1移動部および第2移動部を逆方向に移動させることで長尺部材の湾曲動作が行われるため、長尺部材を第1移動部および第2移動部のより少ない移動量で湾曲させることができ、作動部材の操作性が向上する。
また、進入部材を進退させることによって狭幅部が進退するため、簡易な構成により狭幅部を第1移動部および第2移動部間に進入させて長尺部材を湾曲させることができ、医療器具をより小型化することができる。
また、薄肉部と厚肉部とを有する管状の部材により操作部材を構成したため、操作部材を回転させることによって進入部材を進退させることができ、作動部材の操作性をより向上させることができる。
上記(
2)に記載の発明によれば、進入部材を周方向に回転させることによって狭幅部が進退するため、簡易な構成により狭幅部を第1移動部および第2移動部間に進入させて長尺部材を湾曲させることができ、医療器具をより小型化することができる。
上記(
3)に記載の発明によれば、進入部材が内周面に周方向に形成された管状の部材により操作部材を構成したため、操作部材を回転させることによって進入部材を進退させることができ、作動部材の操作性をより向上させることができる。
上記(
4)に記載の発明によれば、第1移動部および第2移動部を同一方向に移動させることで長尺部材の湾曲動作が行われるため、長尺部材を進退動作させながら湾曲動作させることができ、より高性能な作動部材を提供することができる。
上記(
5)に記載の発明によれば、進入部材を周方向に回転させることによって狭幅部が進退するため、簡易な構成により狭幅部を第1移動部および第2移動部間に進入させて長尺部材を湾曲させることができ、医療器具をより小型化することができる。
上記(
6)に記載の発明によれば、進入部材が内周面に螺旋状に形成された管状の部材により操作部材を構成したため、操作部材を回転させることによって進入部材を進退させることができ、作動部材の操作性をより向上させることができる。
上記(
7)に記載の発明によれば、視認部によって長尺部材の進退量および湾曲量のうちの少なくとも湾曲量を確認できるため、作動部材の操作性が向上する。
上記(
8)に記載の発明によれば、押し引き部材の進退移動を長尺部材に効率よく伝達することができ、かつ、器具全体の小型化を図ることができる作動部材が備えられた医療器具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、以下の説明において、本発明の各実施形態に係る医療器具の手元操作側を「基端側」、生体管腔内へ挿通される側を「先端側」と称する。
【0010】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る医療器具1の構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る医療器具1を示す概略構成図である。
図2は、第1実施形態に係る医療器具1を示す側面断面図である。
本発明の第1実施形態に係る医療器具1は、概説すると、
図1に示すように、可撓性を備える医療用の長尺部材10と、当該長尺部材10に所定の動作を行わせるための作動部材5と、を備える。作動部材5は、長尺部材10の軸方向の基端側に配置され、長尺部材10の軸方向に沿って相対的に移動可能に設けられた第1移動部31および第2移動部32、第1移動部31から長尺部材10の軸方向の先端側へ延伸された第1延伸部33、および第2移動部32から長尺部材10の軸方向の先端側へ延伸された第2延伸部34、を備え、第1移動部31および第2移動部32の移動に伴い長尺部材10の軸方向に押し引きされる押し引き部材30と、を有する。また、作動部材5は、第1移動部31および第2移動部32の移動を操作するための操作部材40と、端部に向かうに従って次第に狭幅する狭幅部71を備え、操作部材40の操作に伴い狭幅部71が第1移動部31および第2移動部32間に進入して第1移動部31および第2移動部32を移動させる進入部材70と、をさらに有している。押し引き部材30は、進入部材70による第1移動部31および第2移動部32の移動を長尺部材10へ伝達することによって、長尺部材10に湾曲動作を行わせることが可能である。以下、詳述する。
【0011】
作動部材5は、
図2に示すように、第1移動部31および第2移動部32の移動に伴い、長尺部材10の軸方向に押し引きされる押し引き部材30と、第1移動部31および第2移動部32の移動を操作するための操作部材40と、操作部材40の操作に伴い狭幅部71が第1移動部31および第2移動部32間に進入可能に設けられた進入部材70と、押し引き部材30の外周に設けられ、押し引き部材30内を流れる流体を封止する封止部50と、封止部50の基端側の外周に設けられ、押し引き部材30および操作部材40を支持するベース部60と、長尺部材10の湾曲量(湾曲角度)を視認によって確認することを可能にする視認部45と、を有する。
【0012】
図3は、押し引き部材30を示す斜視図である。
押し引き部材30は、
図3にも示すように、周方向に分割されて管状構造を形成する複数の分割部38と、各分割部38の軸方向の先端を接続する環状の接続部39とを備え、第1移動部31および第2移動部32の移動に伴い分割部38が長尺部材10の軸方向に押し引きされることによって、長尺部材10に湾曲動作を行わせる。
分割部38は、長尺部材10の軸方向の基端側に配置され、長尺部材10の軸方向に沿って相対的に移動可能に設けられた第1移動部31および第2移動部32と、第1移動部31から長尺部材10の軸方向の先端側へ延伸された第1延伸部33と、第2移動部32から長尺部材10の軸方向の先端側へ延伸された第2延伸部34と、第1延伸部33および第2延伸部34の先端側に設けられ、第1延伸部33および第2延伸部34を相対的に押し引きすることで湾曲する湾曲部35と、を有する。なお、押し引き部材30は、長尺部材10の先端側を押し引き可能な構成であればよく、例えば牽引ワイヤ、板状のベルト部材等であってもよい。
第1移動部31は、進入部材70が摺接する第1摺接部36を有している。第1摺接部36は、第1移動部31および第2移動部32を周方向に囲んで設けられるとともに、第1移動部31の周面に固定され、第2移動部32を進退自在に保持している。第1摺接部36は、進入部材70よりも基端側に設けられ、把持部62に支持された第1コイルばね21により進入部材70に向けて付勢されている。第1摺接部36には、長尺部材10の軸方向に直交する直交面CSに対して傾斜した第1傾斜面が設けられ、当該第1傾斜面に狭幅部71が摺接する。
第2移動部32は、進入部材70が摺接する第2摺接部37を有している。第2摺接部37は、第1移動部31および第2移動部32を周方向に囲んで設けられるとともに、第2移動部32の周面に固定され、第1移動部31を進退自在に保持している。第2摺接部37は、進入部材70よりも先端側に設けられ、支持部61に支持された第2コイルばね22により進入部材70に向けて付勢されている。第2摺接部37には、直交面CSに対して第1摺接部36の傾斜面とは反対側に傾斜した第2傾斜面が設けられ、当該第2傾斜面に狭幅部71が摺接する。
第1延伸部33は、第1移動部31の移動を湾曲部35に伝達する。
第2延伸部34は、第2移動部32の移動を湾曲部35に伝達する。
湾曲部35は、分割部38の先端側における周方向の端縁が切り欠かれた部分であり、第1延伸部33および第2延伸部34よりも幅狭に形成されている。
押し引き部材30は上記の構成を有するため、上述した移動によって第1延伸部33が第2延伸部34よりも先端側に配置されたとき、湾曲部35は上向きに湾曲され、逆に第1延伸部33が第2延伸部34よりも基端側に配置されたとき、湾曲部35は下向きに湾曲される。
【0013】
操作部材40は、
図2に示すように、薄肉部41と、薄肉部41よりも肉厚の厚肉部42と、を有する管状の部材によって構成されるとともに、内部に第1移動部31、第2移動部32、および進入部材70を収容可能に設けられ、操作部材40を回転させることによって進入部材70を進退させ、第1移動部31および第2移動部32の移動が操作可能に設けられている。また、操作部材40は、回転に伴い、第1移動部31および第2移動部32を相対的に接近移動させて、長尺部材10を湾曲させる。また、操作部材40は、外周面に図示しない凹凸が施されているため、術者が指で回転可能な形状を有している。
【0014】
進入部材70は、第1移動部31および第2移動部32を軸方向に沿う逆向きにそれぞれ移動させることが可能に構成されており、第1移動部31および第2移動部32を移動させることによって長尺部材10の湾曲動作が行われる。進入部材70は、狭幅部71を備えたくさび状に形成されるとともに、長尺部材10の軸方向と交差する方向に進退可能に設けられ、当該進入部材70を進退させることによって、狭幅部71が進退する。進入部材70は、狭幅部71が第1摺接部36と第2摺接部37とに挟まれて操作部材40に収容され、狭幅部71を挟んだ一方側の端部72および他方側の端部73が操作部材40の内面に摺接可能に設けられている。
【0015】
封止部50は、押し引き部材30内を流れる流体を封止する。封止部50は押し引き部材30の外周に密着して固定される。固定方法は、特に限定されず、例えば接着剤、ろう付け、融着等により固定することができる。封止部50を構成する材料は、例えば、生体適合性に優れた、ETFE(テトラフルオロ 4 エチレンエチレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂である。なお、封止部50は、押し引き部材30の内側に配置されてもよい。
【0016】
ベース部60は、長尺部材10、押し引き部材30、および操作部材40を支持する。ベース部60は、操作部材40よりも先端側に配置され、長尺部材10、押し引き部材30、および操作部材40を支持する支持部61と、操作部材40よりも基端側に配置され、押し引き部材30および操作部材40を支持し、かつ術者が手技を行う際に把持する把持部62と、を有する。ベース部60は、例えば硬質の樹脂材料によって構成される。
支持部61は、長尺部材10、押し引き部材30、および操作部材40を支持する。支持部61は、基端側に設けられ、操作部材40を収容する窪み部61Aと、先端側に設けられ、長尺部材10が挿入される開口部61Bと、を有する。
把持部62は、押し引き部材30および操作部材40を支持し、かつ術者が手技を行う際に把持される。把持部62は、先端側に設けられ、操作部材40を収容する窪み部62Aを有する。
【0017】
視認部45は、操作部材40の外周面に設けられ、第1移動部31および第2移動部32の移動に伴う長尺部材10の湾曲量を視認によって確認することを可能にする。視認部45は、例えばマーカーであるが、これに限られずスケール等であってもよい。
【0018】
長尺部材10は、基端側が開口部61Bに挿入され、湾曲部35が湾曲されることによって、先端側が湾曲される。長尺部材10は、先端側に容易に湾曲可能な剛性脆弱部11を有する。本実施形態で剛性脆弱部11は、内視鏡等に用いられるステンレス鋼等の金属の管状部材を組み合わせた構成とされている。剛性脆弱部11は、上下方向の2箇所に設けられているが、少なくとも一方に設けられていればよい。なお、長尺部材10を、例えば、生体適合性に優れた、ETFE(テトラフルオロ 4 エチレンエチレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂で構成してもよい。この場合、剛性脆弱部11は例えばスリットであるが、これに限られず、剛性脆弱部11に他の部分よりも剛性の低い材料を用いても良い。
【0019】
次に、
図4を参照して、本発明の第1実施形態に係る作動部材5によって長尺部材10を湾曲させる方法を説明する。
図4は、長尺部材10の先端側を下向きに湾曲させたときの医療器具1を示す側面断面図である。
術者は、
図4に示すように、操作部材40をR1方向に回転させると、進入部材70が操作部材40の厚肉部42により薄肉部41側に押され、狭幅部71が第1摺接部36および第2摺接部37間に摺接しながら進入する。すると、第1移動部31は、第1摺接部36が狭幅部71に軸方向に押されることにより基端側に移動し、第2移動部32は、第2摺接部37が狭幅部71に軸方向に押されることにより先端側に移動する。これにより、第1延伸部33は基端側に移動され、第2延伸部34は先端側に移動される。第1延伸部33が基端側に移動され、第2延伸部34が先端側に移動されると、湾曲部35は下向きに湾曲される。湾曲部35が下向きに湾曲されると、長尺部材10の先端側が下向きに湾曲される。
【0020】
以上のように、本発明の第1実施形態によれば、押し引き部材30が動作方向を変換されることなく長尺部材10の軸方向に押し引きされることによって、長尺部材10に湾曲動作を行わせるため、押し引き部材30の進退移動を長尺部材10に効率よく伝達することができる。また、押し引き部材30を操作部材40に巻き付ける必要がないため、医療器具1全体の小型化を図ることができる。
また、操作部材40は、第1移動部31および第2移動部32を軸方向に沿う逆向きにそれぞれ移動させることが可能に構成されており、第1移動部31および第2移動部32を移動させることによって長尺部材10の湾曲動作が行われる。このため、長尺部材10を第1移動部31および第2移動部32のより少ない移動量で湾曲させることができ、作動部材5の操作性が向上する。
また、進入部材70を進退させることによって狭幅部71が進退するため、簡易な構成により狭幅部71を第1移動部31および第2移動部32間に進入させて長尺部材10を湾曲させることができ、医療器具1をより小型化することができる。
また、薄肉部41と厚肉部42とを有する管状の部材により操作部材40を構成したため、操作部材40を回転させることによって進入部材70を進退させることができ、作動部材5の操作性をより向上させることができる。
また、長尺部材10の湾曲量を視認によって確認することを可能にする視認部45をさらに有する。このため、視認部45によって長尺部材10の湾曲量を確認でき、作動部材5の操作性が向上する。
また、押し引き部材30の進退移動を長尺部材10に効率よく伝達することができ、かつ、器具全体の小型化を図ることができる作動部材5が備えられた医療器具1を提供することができる。
【0021】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態と共通する部分は説明を省略し、第2実施形態のみに特徴のある箇所について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る医療器具2を示す側面断面図である。
本発明の第2実施形態に係る医療器具2は、
図5に示すように、作動部材6を有し、当該作動部材6は、第1移動部31および第2移動部32の移動を操作するための操作部材90と、端部に向かうに従って次第に狭幅する狭幅部81を備え、操作部材90の操作に伴い狭幅部81が第1移動部31および第2移動部32間に進入可能に設けられた進入部材80と、長尺部材10の進退量および湾曲量(湾曲角度)を視認によって確認することを可能にする視認部45と、を有する。なお、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0022】
進入部材80は、第1移動部31および第2移動部32を軸方向に沿う同一方向にそれぞれ異なる移動量で移動させることが可能に構成されており、第1移動部31および第2移動部32を移動させることによって長尺部材10の進退動作および湾曲動作が行われる。進入部材80は、長尺部材10の周方向に回転可能に設けられ、当該進入部材80を進退させることによって、狭幅部81が進退する。進入部材80は、螺旋状に設けられるとともに、螺旋方向に向かうに従って次第に狭幅するくさび状に形成されている。
【0023】
操作部材90は、周方向にわたって均一の肉厚とされた管状の部材によって構成されるとともに、内部に第1移動部31、第2移動部32、および進入部材80を収容可能に設けられ、操作部材90を回転させることによって進入部材80を進退させ、第1移動部31および第2移動部32の移動が操作可能に設けられている。操作部材90は、進入部材80が内周面に螺旋状に形成された管状の部材によって構成され、当該操作部材90を回転させることによって進入部材80を回転させる。
【0024】
次に、
図6を参照して、本発明の第2実施形態に係る作動部材6によって長尺部材10の先端側を湾曲させる方法を説明する。
図6は、長尺部材10の先端側を下向きに湾曲させたときの医療器具2を示す側面断面図である。
術者は、
図6に示すように、操作部材90をR1方向に回転させる。すると、第1移動部31は、第1コイルばね21によって狭幅部81に押し付けられながら先端側に移動し、第2移動部32も狭幅部81に押されて先端側に移動する。このとき、進入部材80が螺旋状に設けられているため、第1移動部31および第2移動部32は、ともに先端側に移動しながら、第2移動部32が第1移動部31よりも先端側に移動する。このため、湾曲部35は先端側に移動されつつ、下向きに湾曲される。湾曲部35が先端側に移動されつつ下向きに湾曲されると、長尺部材10は先端側に移動されつつ、長尺部材10の先端側が下向きに湾曲される。
【0025】
以上のように、本発明の第2実施形態によれば、押し引き部材30が動作方向を変換されることなく長尺部材10の軸方向に押し引きされることによって、長尺部材10に進退動作かつ湾曲動作を行わせるため、押し引き部材30の進退移動を長尺部材10に効率よく伝達することができる。また、押し引き部材30を操作部材90に巻き付ける必要がないため、医療器具2全体の小型化を図ることができる。
また、操作部材90は、第1移動部31および第2移動部32を軸方向に沿う同一方向にそれぞれ異なる移動量で移動させることが可能に構成されており、第1移動部31および第2移動部32を移動させることによって長尺部材10の進退動作および湾曲動作が行われる。このため、より高性能な作動部材6を提供することができる。
また、進入部材80を周方向に回転させることによって狭幅部81が進退するため、簡易な構成により狭幅部81を第1移動部31および第2移動部32間に進入させて長尺部材10を湾曲させることができ、医療器具2をより小型化することができる。
また、進入部材80が内周面に螺旋状に形成された管状の部材により操作部材90を構成したため、操作部材90を回転させることによって進入部材80を進退させることができ、作動部材6の操作性をより向上させることができる。
【0026】
以下、上述した実施形態の改変例を例示する。
図7(A)〜
図10(C)は、(改変例1)〜(改変例6)に係る医療器具の作動部材5A〜5Fを示す側面断面図である。なお、
図7(A)〜
図9(B)では、作動部材5A〜5C以外の構成や封止部50を省略し、
図10(A)〜
図10(C)では、操作部材40D〜40Fおよび進入部材70、70E以外の構成は省略している。
【0027】
(改変例1)
図7Aに示す作動部材5Aは、操作部材40Aと、進入部材70Aと、を有する点が、第1実施形態と相違する。
進入部材70Aは、周方向に延設されるとともに、周方向に向かうに従って次第に狭幅するくさび状に形成されている。進入部材70Aは、長尺部材10の周方向に回転可能に設けられ、当該進入部材70Aを回転させることによって狭幅部71Aが進退する。
操作部材40Aは、周方向にわたって均一の肉厚を有するとともに、進入部材70Aが内周面に周方向に形成された管状の部材によって構成され、当該操作部材40Aを回転させることによって進入部材70Aを回転させる。
この構成によれば、長尺部材10は、操作部材40Aを回転させたときに、第1実施形態の場合と同様に湾曲する。すなわち、操作部材40AをR1方向に回転させたときに、
図7Bに示すように、第1移動部31が狭幅部71Aに押されて基端側に移動し、第2移動部32が狭幅部71Aに押されて先端側に移動する。これにより、湾曲部35が下向きに湾曲し、長尺部材10の先端側が下向きに湾曲する。
【0028】
(改変例2)
図8Aに示す作動部材5Bは、操作部材40Bと、進入部材70Bと、を有する点が、第1実施形態と相違する。
操作部材40Bは、円盤状の部材によって構成され、長尺部材10の軸線と交差する方向の軸を回転中心RCとして回転可能に設けられている。
進入部材70Bは、操作部材40Bの盤面に一体に形成されている。進入部材70Bは、操作部材40Bの回転中心RCの周囲に延設されるとともに、回転方向に向かうに従って次第に狭幅するくさび状に形成されている。
この構成によれば、操作部材40BをR3方向に回転させたときに、
図8Bに示すように、第1移動部31が狭幅部71Bに押されて基端側に移動し、第2移動部32が狭幅部71Bに押されて先端側に移動する。これにより、湾曲部35が下向きに湾曲し、長尺部材10の先端側が下向きに湾曲する。
【0029】
(改変例3)
図9Aに示す作動部材5Cは、押し引き部材30Cと、2つの進入部材70と、を有する点が、第1実施形態と相違する。
各進入部材70は、狭幅部71が互いに反対方向を向いた互い違いの配置で操作部材40に収容されている。
押し引き部材30Cは、第1移動部31Cと、第2移動部32Cと、を有する。なお、その他の構成は、押し引き部材30と同様である。
第1移動部31Cは、先端側および基端側の各進入部材70が摺接する第1摺接部36Cを有している。第1摺接部36Cは、第1移動部31Cおよび第2移動部32Cを周方向に囲んで設けられるとともに、第1移動部31Cの周面に固定され、第2移動部32Cを進退自在に保持している。第1摺接部36Cには、直交面CSに対して互いに同じ方向かつ平行に傾斜した第1傾斜面が軸方向の両側に設けられ、当該第1傾斜面に各進入部材70の狭幅部71が摺接する。
第2移動部32Cは、先端側の進入部材70が摺接する第2摺接部37Cと、基端側の進入部材70が摺接する第3摺接部37Dと、を有している。第2および第3摺接部37C、37Dは、第1移動部31Cおよび第2移動部32Cを周方向に囲んで設けられるとともに、第2移動部32Cの周面に固定され、第1移動部31Cを進退自在に保持している。第2摺接部37Cは、2つの進入部材70よりも先端側に設けられている。第2摺接部37Cには、直交面CSに対して第1摺接部36Cの傾斜面とは反対側に傾斜した第2傾斜面が設けられ、当該第2傾斜面に先端側の進入部材70の狭幅部71が摺接する。第3摺接部37Dは、2つの進入部材70よりも基端側に設けられている。第3摺接部37Dには、直交面CSに対して第1摺接部36Cの傾斜面とは反対側(第2摺接部37Cの傾斜面と同じ側)に傾斜した第3傾斜面が設けられ、当該第3傾斜面に基端側の進入部材70の狭幅部71が摺接する。
この構成によれば、操作部材40をR1方向に回転させると、
図9Bに示すように、先端側の進入部材70が操作部材40の厚肉部42により薄肉部41側に押され、その狭幅部71が第1摺接部36Cおよび第2摺接部37C間に進入する。一方、基端側の進入部材70も操作部材40の厚肉部42により薄肉部41側に押され、その狭幅部71が第1摺接部36Cおよび第3摺接部37D間を後退する。これにより、第2摺接部37Cおよび第3摺接部37Dが先端側に移動し、第1摺接部36Cが基端側に移動することで、第1移動部31Cが基端側に移動し、第2移動部32Cが先端側に移動する。このため、湾曲部35が下向きに湾曲し、長尺部材10の先端側が下向きに湾曲する。
【0030】
(改変例4)
図10Aに示す作動部材5Dは、操作部材40Dを有する点が、第1実施形態と相違する。
操作部材40Dは、曲率半径が次第に大きくなる外周面を有する円盤状に形成されている。
この構成によれば、操作部材40DをR4方向に回転させると、第1実施形態と同様に、狭幅部71が第1摺接部36および第2摺接部37間に進入し、長尺部材10の先端側が下向きに湾曲する。
【0031】
(改変例5)
図10Bに示す作動部材5Eは、操作部材40Eと、進入部材70Eと、を有する点が、第1実施形態と相違する。
進入部材70Eは、基端側の端面が水平方向に対して傾斜して形成されている。
操作部材40Eは、進入部材70Eの基端側の傾斜面に対応して傾斜した傾斜面を備え、長尺部材10の軸方向にスライド可能に設けられている。
この構成によれば、操作部材40Eを基端側にスライドさせたときに、第1実施形態と同様に、狭幅部71Eが第1摺接部36および第2摺接部37間に進入して、長尺部材10の先端側が下向きに湾曲する。
【0032】
(改変例6)
図10Cに示す作動部材5Fは、操作部材40Fを有する点が、第1実施形態と相違する。
操作部材40Fは、一端を回転中心として揺動可能に設けられている。
この構成によれば、操作部材40Fの他端を押し下げると、第1実施形態と同様に、狭幅部71が第1摺接部36および第2摺接部37間に進入して、長尺部材10の先端側が下向きに湾曲する。
【0033】
なお、本発明は前述の実施形態や改変例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、第1移動部31、31Cに第2摺接部を設け、第1移動部32、32Cに第1摺接部を設けてもよい。
また、第1摺接部36、36C、第2摺接部37、37C、および第3摺接部37Dにおいて、第1傾斜面、第2傾斜面、および第3傾斜面は必須ではなく、狭幅部71、71A、71B、71E、81が第1摺接部36、36Cおよび第2摺接部37、37C間または第1摺接部36、36Cおよび第3摺接部37D間に進入可能であれば、各傾斜面を設けなくてもよい。
また、第1摺接部36、36C、第2摺接部37、37C、および第3摺接部37Dは、付加部材を介して各移動部31、31C、32、32Cに設けてもよい。
【0034】
狭幅部71、71A、71B、71E、81は、第1移動部31、31Cと第2移動部32、32Cとを長尺部材10の軸方向に沿って相対的に移動可能であれば任意の形状を採用できる。例えば、狭幅部71を円錐状に形成するとともに、第1摺接部36および第2摺接部37を狭幅部に対応した形状としてもよい。この際、狭幅部の軸線まわりに、狭幅部と各摺接部とを螺合させたり、狭幅部の軸線方向の端部とベース部60とを螺合させたりして、進入部材を進退可能に構成してもよい。この構成によれば、狭幅部の軸線を回転中心として進入部材を回転させると、狭幅部が第1摺接部と第2摺接部との間にねじ込まれ、第1移動部および第2移動部が長尺部材10の軸方向に移動する。
さらに、狭幅部71、71A、71B、71E、81の形状により操作部材40、40A、40B、40D、40E、40F、90の回転に対する各移動部31、31C、32、32Cの移動特性を任意に設定することができ、各移動部31、31C、32、32Cの移動特性を細かく設定することができる。
【0035】
押し引き部材30、30Cは、接続部39を備えなくてもよい。この場合、例えば、長尺部材10に湾曲部35の長尺部材10の軸方向の先端側端部を接続すれば、当該長尺部材10を湾曲させることができる。
また、長尺部材10は、湾曲可能な任意の構成を採用することができる。
【0036】
押し引き部材30、30Cは、封止部50を備えなくてもよい。これにより、押し引き部材30、30Cにより形成される内腔を通じて、ベース部60の基端側から処置具を挿通することができ、体腔内において接続部39よりも先端側を処置することが可能となる。