(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アリールアミン系化合物は、NPB(N,N’−bis(naphthyl)−N,N’−bis(phenyl)benzidine)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の有機電界発光素子。
前記光散乱層内において、前記アリールアミン系化合物の含有量に対する前記多環縮合環化合物の含有量の重量比は、1/7〜5/7であることを特徴とする、請求項10に記載の有機電界発光素子。
前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位と前記第1n型有機物層のLUMOエネルギー準位との差は、2eV以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
前記カソードまたは前記アノードの有機物層が備えられた面の反対面に備えられた基板をさらに備え、前記カソードもしくは前記アノードと前記基板との間に、または前記基板の前記アノードもしくは前記カソードが備えられた面の反対面に備えられた光抽出層をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本明細書に例示した実施態様について詳細に説明する。
【0014】
本明細書において、n型とは、n型半導体特性を意味する。つまり、n型有機物層は、LUMOエネルギー準位で電子の注入を受けたり輸送したりする特性を有する有機物層であり、これは、電子の移動度が正孔の移動度より大きい特性を有する有機物層である。逆に、p型とは、p型半導体特性を意味する。つまり、p型有機物層とは、HOMO(highest occupied molecular orbital)エネルギー準位で正孔の注入を受けたり輸送したりする特性を有する有機物層であり、これは、正孔の移動度が電子の移動度より大きい特性を有する有機物層である。本明細書において、「HOMOエネルギー準位で電荷を輸送する有機物層」とp型有機物層は、互いに同じ意味で使用できる。また、「LUMOエネルギー準位で電荷を輸送する有機物層」とn型有機物層は、互いに同じ意味で使用できる。
【0015】
本明細書において、エネルギー準位は、エネルギーの大きさを意味するものである。したがって、真空準位からマイナス(−)方向にエネルギー準位が表示される場合にも、エネルギー準位は、当該エネルギー値の絶対値を意味すると解釈される。例えば、HOMOエネルギー準位とは、真空準位から最高占有分子オービタル(highest occupied molecular orbital)までの距離を意味する。また、LUMOエネルギー準位とは、真空準位から最低非占有分子オービタル(lowest unoccupied molecular orbital)までの距離を意味する。
【0016】
本明細書において、電荷とは、電子または正孔を意味する。
【0017】
本明細書において、「電荷輸送経路」とは、電子または正孔が輸送される経路を意味する。前記経路は、層間の界面で行われてもよく、追加の層を介して行われてもよい。例えば、ある実施態様では、第1電荷輸送経路は、第1p型有機物層と、第1n型有機物層とを含む。また、ある実施態様において、第2電荷輸送経路は、アノードと発光層との界面のみを含むこともでき、アノードと発光層との間に追加的に備えられた層を含むこともできる。
【0018】
本明細書において、「非ドーピングされた」とは、有機物層を構成する有機物が異なる性質を有する物質によってドーピングされなかったことを意味する。例えば、「非ドーピングされた」有機物層がp型物質であれば、n−型物質がドーピングされないことを意味することができる。また、p型有機物に、有機物でない無機物がドーピングされないことを意味することができる。同じ性質を有する、例えば、p型特性を有する有機物は、その性質が類似するため、2種以上を混合して使用してもよい。非ドーピングされた有機物層は、その性質が同種の特性を有する物質のみからなる場合を意味する。
【0019】
本明細書の一実施態様によれば、アノード;カソード;および前記アノードとカソードとの間に備えられた発光層を含み、前記発光層と前記カソードとの間に光散乱層を含む、有機電界発光素子が提供される。本明細書の一実施態様にかかる有機電界発光素子における、層の積層構造を、
図1に例示した。
図1によれば、基板上に、アノード、発光層、光散乱層、およびカソードが積層される。
【0020】
前記光散乱層は、層内または層表面に備えられた光散乱構造を含むことができる。
【0021】
本明細書の一実施態様によれば、前記光散乱構造は、前記光散乱層内に含まれた物質の分子がクラスタをなして形成された粒子構造によって形成されてよい。ここで、粒子構造とは、分子がクラスタをなして形成された個別の粒子または該粒子がかたまって形成された構造を含む。ここで、粒子がかたまって形成された構造とは、粒子それぞれの少なくとも一部の表面または骨格がかたまる前の形態を維持する場合を意味する。したがって、個別の粒子の構造または粒子がかたまる前の少なくとも一部の表面または骨格の形態を維持しながらかたまっている構造によって、光散乱層の層内または層表面に粗さが生じる。
【0022】
例えば、前記光散乱層内に含まれた物質の分子がクラスタをなして形成された粒子構造による粗さの程度は、2〜50nmであってよい。ここで、粗さの程度は、AFM(atomic force microscope)データにおけるRa値である。ここで、Raは、粗さを有する表面における表面高低差の平均値で計算される。
【0023】
前記実施態様によれば、カソードと発光層との間に、前記のような粒子構造による粗さを有する光散乱層が備えられることにより、光散乱による光抽出効率を極大化することができる。具体的には、表面プラズマ(surface plasma)による光吸収を最小化することにより、発光効率を極大化することができる。また、前記光散乱層がカソードに接し、光散乱層と発光層との間に1層以上の有機物層が備えられる場合には、発光層または発光層に接する有機物層に光散乱構造を含む場合に比べて、有機物層の厚さの均一性を達成することができ、素子効率の低下を防止することができる。
【0024】
本明細書の一実施態様によれば、前記光散乱層内に含まれた物質は、有機物である。つまり、有機物の分子がクラスタをなして形成された粒子構造による粗さによって、光散乱機能を付与することができる。
【0025】
特定種類の有機物は、蒸着によって層として形成されるだけで、前述のような粗さを有する粒子構造を有することができる。
【0026】
前記粒子構造は、2種以上の物質が共に特定成分比で蒸着されることにより形成されてもよく、1種の物質でも物質固有の物性によって蒸着だけで前記のような粗さを有する粒子構造を形成することもできる。
【0027】
前記光散乱層内に含まれた物質の種類に応じて、光散乱層の形成時、物質の分子がクラスタをなして形成された粒子の大きさ(grain size)が異なり得る。例えば、光散乱層に含まれた物質の分子がクラスタをなして形成された粒子の粒径は、数ミクロンであってよく、例えば、0.5〜30マイクロメートル、具体的には1〜10ミクロンの範囲内であってよい。前記粒子の粒径に応じて、前述の粗さが調整可能である。前記粒子の粒径を調整するために、光散乱層を形成するための物質の種類、物質の組み合わせまたは組み合わせ比率を選択することができる。
【0028】
前記光散乱層の厚さに応じても、光散乱層内に含まれた物質の分子がクラスタをなして形成された粒子の大きさまたは粗さが異なり得る。光散乱層の厚さは、物質の種類や工程条件に応じて選択可能であり、例えば、20〜500nm、具体的には50〜200nmに形成されてよい。
【0029】
本明細書のもう一つの実施態様によれば、前記光散乱層は、カソードと物理的に接して備えられる。この時、前記カソードの光散乱層と接する面は、前記光散乱層のカソードと接する面上の粗さを有する粒子構造の形態を有することができる。一例によれば、前記カソードの光散乱層と接する面の反対面にも、前記光散乱層のカソードと接する面上の粗さを有する粒子構造の形態を有することができる。
【0030】
本発明のもう一つの実施態様によれば、前記有機電界発光素子は、前記発光層と前記カソードとの間に備えられた第1電荷輸送経路(passage);および前記発光層と前記アノードとの間に備えられた第2電荷輸送経路を含み、前記第1電荷輸送経路は、前記カソードに隣接した(associated)第1p型有機物層;および前記第1p型有機物層と前記発光層との間に備えられた第1n型有機物層を含み、前記光散乱層は、前記第1p型有機物層であるか、前記光散乱層が前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層との間に備えられる。
【0031】
本明細書のもう一つの実施態様によれば、前記有機電界発光素子は、前記発光層と前記カソードとの間に備えられたバッファ層を含み、前記バッファ層は、前記カソードに隣接し、第1p型有機物層;および前記第1p型有機物層と前記発光層との間に備えられた第1n型有機物層を含み、前記光散乱層は、前記第1p型有機物層であるか、前記光散乱層が前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層との間に備えられる。
【0032】
本明細書のもう一つの実施態様によれば、前記有機電界発光素子は、前記発光層と前記カソードとの間に備えられ、第1p型有機物層;および前記発光層と前記第1p型有機物層との間に備えられた第1n型有機物層を含み、前記光散乱層は、前記第1p型有機物層であるか、前記光散乱層が前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層との間に備えられる。
【0033】
前記光散乱層が前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層との間に備えられる場合、前記光散乱層および前記第1p型有機物層による後述の効果を同時に示すだけでなく、第1p型有機物層が光散乱層とカソードとの間で接合特性を改善することができる。このような効果を示す有機電界発光素子の一例を、
図2に示した。
【0034】
図2によれば、基板上に、アノード、発光層、第1n型有機物層、光散乱層、第1p型有機物層、およびカソードが順次に積層される。
図2では、基板上にアノードが備えられた例を示すが、基板上にカソードが備えられる場合も本実施態様の範囲に含まれる。例えば、本明細書の一実施態様にかかる有機電界発光素子は、基板上に、カソード、第1p型有機物層、光散乱層、第1n型有機物層、発光層、およびアノードが順次に積層された構造を有することができる。
【0035】
前記光散乱層が第1p型有機物層の場合、1層の導入によって、第1p型有機物層の導入による効果だけでなく、光散乱層による効果を同時に示すことができる。このような効果を示す有機電界発光素子の一例を、
図3に示した。
【0036】
一つの例として、前記光散乱層は、多環縮合環化合物およびアリールアミン系化合物を含むことができる。多環縮合環化合物およびアリールアミン系化合物を含む光散乱層は、前記第1p型有機物層であるか、前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層との間に備えられてよい。
【0037】
前記アリールアミン系化合物の一例は、下記の化学式1の化合物を含む。
【0039】
前記化学式1において、Ar
1、Ar
2およびAr
3は、それぞれ独立して、水素または炭化水素基である。この時、Ar
1、Ar
2およびAr
3のうちの少なくとも1つは、芳香族ヒドロカーボン(aromatic hydrocarbon)置換体を含むことができ、各置換体は、同一のものであってもよく、それぞれ異なる置換体で構成されてもよい。Ar
1、Ar
2およびAr
3のうち、芳香族ヒドロカーボンでないものは、水素;直鎖、分枝鎖または環状脂肪族炭化水素;N、O、SまたはSeを含むヘテロ環基であってよい。
【0040】
前記Ar
1〜Ar
3は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアリールアミンで置換もしくは非置換であってよい。前記アルキルは、C
1〜C
20の直鎖もしくは分枝鎖アルキルを含む。前記アリールは、C
6〜C
60の単環もしくは多環のアリールを含む。前記ヘテロアリールは、ヘテロ原子としてS、OまたはSeを含む単環もしくは多環のヘテロアリールを含む。前記アリールアミンは、C
6〜C
60の単環もしくは多環のアリール1または2個で置換されたアミン基を含む。
【0041】
前記化学式1の化合物の例としては、下記の化学式1−1または1−2の化合物がある。
【0043】
化学式1−1において、
Ar
1〜Ar
4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリールであり、これらは、隣接する基と互いに結合して単環もしくは多環の芳香族、脂肪族またはヘテロ環を形成することができ、
Ar
5は、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリーレンである。
【0044】
一つの実施態様によれば、前記化学式1−1において、Ar
1〜Ar
4は、互いに同一または異なり、、それぞれ独立して、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フルオレニル、またはこれらがメチルのようなアルキルで置換された基である。
【0045】
一つの実施態様によれば、前記化学式1−1において、A
5は、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ターフェニレン、フルオレニレン、またはこれらがメチルのようなアルキル、フェニルのようなアリールまたはアリールアミン基で置換された基である。
【0047】
化学式1−2において、
Ar
9〜Ar
14は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリールであり、これらは、隣接する基と互いに結合して単環もしくは多環の芳香族、脂肪族またはヘテロ環を形成することができ、
Ar
6〜Ar
8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリーレンである。
【0048】
一つの実施態様によれば、前記化学式1−2において、Ar
9〜Ar
14は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フルオレニル、またはこれらがメチルのようなアルキルで置換された基である。
【0049】
一つの実施態様によれば、前記化学式1−2において、Ar
6〜Ar
8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ターフェニレン、フルオレニレン、またはこれらがメチルのようなアルキル、フェニルのようなアリールまたはアリールアミン基で置換された基である。
【0050】
前記化学式1の具体例として下記の化学式があるが、本発明の範囲が必ずしもこれらにのみ限定されるものではない。
【0052】
前記アリールアミン系化合物の一つの具体例は、NPB(N,N’−bis(naphthyl)−N,N’−bis(phenyl)benzidine)を含む。
【0053】
前記多環縮合環化合物の一例は、下記の化学式2の化合物を含む。
【0055】
前記化学式2において、R
1b〜R
6bは、それぞれ水素、ハロゲン原子、ニトリル(−CN)、ニトロ(−NO
2)、スルホニル(−SO
2R)、スルホキシド(−SOR)、スルホンアミド(−SO
2NR)、スルホネート(−SO
3R)、トリフルオロメチル(−CF
3)、エステル(−COOR)、アミド(−CONHRまたは−CONRR’)、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分枝鎖のC
1−C
12のアルコキシ、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分枝鎖のC
1−C
12のアルキル、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分枝鎖のC
2−C
12のアルケニル、置換もしくは非置換の芳香族または非芳香族のヘテロ環、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のモノ−またはジ−アリールアミン、または置換もしくは非置換のアラルキルアミンであり、前記RおよびR’は、それぞれ置換もしくは非置換のC
1−C
60のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換の5−7員ヘテロ環である。
【0056】
前記化学式2の例としては、下記の化学式2−1〜2−6がある。
【0057】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0058】
前記例において、前記光散乱層内において、前記アリールアミン系化合物の含有量に対する前記多環縮合化合物の含有量の重量比は、1/7〜5/7の範囲内であってよい。前記範囲内で適切な粗さが形成できる。
【0059】
もう一つの例として、前記光散乱層は、下記の化学式3の化合物を含むことができる。下記の化学式3の化合物を含む光散乱層は、前記第1p型有機物層であるか、前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層との間に備えられてよい。特に、下記の化学式3の化合物は、
図3のp型有機物層の効果と光散乱層による効果を同時に示す物質として使用できる。しかし、本発明の範囲を下記の物質に限定するものではない。
【0061】
前記化学式3において、
R
1c〜R
6cは、互いに同一または異なっていてよく、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、C
1〜C
30のアルキル基、C
2〜C
30のアルケニル基、C
1〜C
30のアルコキシ基、C
3〜C
30のシクロアルキル基、C
2〜C
30のヘテロシクロアルキル基、C
6〜C
30のアリール基、およびC
2〜C
30のヘテロアリール基からなる群より選択された1つ以上の基で置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキル基;ハロゲン原子、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、C
1〜C
30のアルキル基、C
2〜C
30のアルケニル基、C
1〜C
30のアルコキシ基、C
3〜C
30のシクロアルキル基、C
3〜C
30のヘテロシクロアルキル基、C
6〜C
30のアリール基、およびC
2〜C
30のヘテロアリール基からなる群より選択された1つ以上の基で置換もしくは非置換のC
3〜C
30のシクロアルキル基;ハロゲン原子、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、C
1〜C
30のアルキル基、C
2〜C
30のアルケニル基、C
1〜C
30のアルコキシ基、C
3〜C
30のシクロアルキル基、C
3〜C
30のヘテロシクロアルキル基、C
6〜C
30のアリール基、およびC
2〜C
30のヘテロアリール基からなる群より選択された1つ以上の基で置換もしくは非置換のC
6〜C
30のアリール基;またはハロゲン原子、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、C
1〜C
30のアルキル基、C
2〜C
30のアルケニル基、C
1〜C
30のアルコキシ基、C
3〜C
30のシクロアルキル基、C
3〜C
30のヘテロシクロアルキル基、C
6〜C
30のアリール基、およびC
2〜C
30のヘテロアリール基からなる群より選択された1つ以上の基で置換もしくは非置換のC
2〜C
30のヘテロアリール基であり、互いに隣接する基と脂肪族、芳香族、脂肪族ヘテロまたは芳香族ヘテロの縮合環を形成するかスピロ結合をなすことができ、nおよびmは、それぞれ0〜4の整数である。
【0062】
前記化学式3の例としては、下記の化学式3aがある。
【0064】
R
1c〜R
4cは、前述の通りである。
【0065】
一つの実施態様によれば、前記化学式3または3aにおいて、前記R
1cおよびR
2cは、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分枝鎖のC
1〜C
30のアルキル基、またはC
3〜C
30のシクロアルキル基であってよい。
【0066】
もう一つの実施態様によれば、前記化学式3または3aにおいて、前記R
1cおよびR
2cは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシルであってよい。
【0067】
一つの実施態様によれば、前記化学式3または3aにおいて、前記R
3cおよびR
4cは、置換もしくは非置換の単環もしくは多環のC
6〜C
30のアリール基であってよい。
【0068】
もう一つの実施態様によれば、前記化学式3または3aにおいて、前記R
3cおよびR
4cは、フェニル、またはナフチルであってよい。
【0069】
前記化学式3の例としては、下記の化学式3−1〜3−5の化合物がある。
【0070】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【0071】
一実施態様によれば、前記光散乱層は、1種の有機物を含み、それはp型有機物である。例えば、前記化学式3の化合物は、p型有機物として使用できる。
【0072】
もう一つの実施態様によれば、前記光散乱層は、2種の有機物を含み、いずれか1種はn型有機物であり、残りの1種はp型有機物である。この時、前記n型有機物が、前記p型有機物に対してp型ドーパントの役割を果たすこともできる。例えば、前記n型有機物は、前記化学式2の化合物であり、前記p型有機物は、前記化学式1の化合物であってよい。
【0073】
図1〜
図3には、発光層とアノードとが直接接する構造が示されている。しかし、前記発光層と前記アノードとの間に追加的に有機物層が備えられてよい。前記発光層と前記アノードとの間に備えられる有機物層は、p型有機物層であってよい。前記発光層と前記アノードとの間のp型有機物層の例としては、正孔注入層、正孔輸送層などがある。
【0074】
図2または
図3による実施態様において、カソードに隣接した有機物層として第1p型有機物層が配置され、前記第1p型有機物層と発光層との間に備えられた有機物層として第1n型有機物層が配置される。本明細書において、「カソードに隣接した有機物層」とは、発光層を基準として、アノードよりはカソードに近く配置された有機物層を意味する。この時、カソードに隣接した有機物層は、カソードに物理的に接する場合を含むことができる。しかし、前記実施態様において、カソードに隣接した有機物層とカソードとの間に追加の層が備えられた場合を完全に排除するものではない。
【0075】
一般的に、有機電界発光素子では、カソードから発光層に電子が注入および輸送され、アノードから発光層に正孔が注入および輸送される。したがって、従来の有機電界発光素子では、カソードと発光層との間に、LUMOエネルギー準位を介して電子の注入を受けたり輸送したりするn型有機物層が配置される。
【0076】
カソードに隣接した有機物層としてp型有機物層を配置することは、これまで有機電界発光素子分野において考えられていた技術とは相反する。しかし、前記実施態様では、カソードに隣接した有機物層として第1p型有機物層を配置する。また、前記実施態様では、第1p型有機物層と発光層との間に第1n型有機物層を配置する。ここで、第1p型有機物層と第1n型有機物層との間で電荷が発生できる。前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層との間で発生した電荷のうち、正孔は、第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位を介してカソード側に移動する。前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位を介して移動した正孔は、カソード方向に抜ける。また、前記第1p型有機物層と第1n型有機物層との間で発生した電荷のうち、電子は、第1n型有機物層のLUMOエネルギー準位を介して発光層側に移動する。
【0077】
以下、カソードとカソードに隣接した有機物層との間の電荷注入方式をより具体的に説明する。
【0078】
従来の有機電界発光素子は、カソードに隣接した有機物層としてn型有機物層を含んでいた。したがって、カソードから電子を注入するための障壁(barrier)は、カソードの仕事関数とn型有機物層のLUMOエネルギー準位との差であった。したがって、従来の有機電界発光素子の構造では、電子注入障壁を低下させるために、LiF層のような電子注入層を導入したり、電子輸送層にアルカリ金属またはアルカリ土類金属をドーピングしたり、カソード材料として低い仕事関数の金属を用いた。
【0079】
しかし、前記実施態様によれば、前述の第1p型有機物層と第1n型有機物層との間で電荷が発生し、発生した電荷のうち、正孔が第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位を介してカソード側に移動する。前記実施態様にかかる有機電界発光素子、例えば、
図2または
図3に示した有機電界発光素子において、カソードと第1p型有機物層との間での電荷移動の模式図を、
図4に例示した。
図4によれば、第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位に輸送された正孔は、カソードの電子と会って消滅する。したがって、カソードと第1p型有機物層との間では電子注入障壁が存在しない。そのため、本発明にかかる実施態様では、カソードから有機物層への電子注入障壁を低下させるための努力が要求されない。
【0080】
これによって、本願に係る発明では、多様な仕事関数を有する材料の中からカソード材料を選択することができる。また、電子注入障壁を低下させるために、電子注入層を導入したり、カソードに隣接した有機物層を金属物質でドーピングしたりする必要がない。
【0081】
一方、有機電界発光素子において、発光特性は、素子の重要な特性の一つである。有機電界発光素子において発光が効率的に行われるためには、発光領域における電荷の均衡(charge balance)が行われることが重要である。このためには、カソードから輸送される電子とアノードから輸送される正孔が量的に均衡をなす必要があるだけでなく、電子と正孔とが会って共にエキシトン(exiton)を形成する地点が発光領域内である必要がある。
【0082】
一方、有機電界発光素子では、発光効率を増加させる方法の一つとして、発光色に応じて素子のキャビティ(cavity)を調整する方法を利用することができる。発光色の波長に適合するように素子のキャビティを調整することにより、発光効率をより増加させることができる。ここで、素子のキャビティとは、素子内で光が共振可能な長さを意味する。一つの例において、上部電極が透明電極、下部電極が反射電極の場合、上部電極の上面から下部電極の上面までの長さを意味することができる。
【0083】
また、有機電界発光素子において、発光層からカソードまでの距離は、表面プラズモン(surface plasmon)、金属、導波管(waveguide)モード、基板モード、アウト−カップルドモード(out−coupled mode)などによる光損失にも影響を及ぼすことがある。したがって、発光層からカソードまでの距離の調整が必要であり得る。
【0084】
前記のように、素子のキャビティまたは発光層とカソードとの間の距離を調整するために、従来の有機電界発光素子の構造において、カソードに隣接したn型有機物層、例えば、電子輸送層の厚さを増加させる場合、電荷の不均衡をもたらすことがある。しかし、本明細書の前記実施態様にかかる有機電界発光素子では、カソードに隣接した第1p型有機物層の厚さを調整することができる。すなわち、前記第1p型有機物層の厚さを調整することは、素子のキャビティまたは発光層とカソードとの間の距離を調整するのに使用できる。本願に係る発明において、発光層に到達する電子は、カソードから輸送されず、第1p型有機物層と第1n型有機物層との間で発生したものである。したがって、前記第1p型有機物層の厚さを調整することは、発光層における電荷均衡に影響を及ぼさない。また、本明細書の前記実施態様では、第1p型有機物層の厚さを調整する場合、従来の構造における、n型有機物層である電子輸送層の厚さの増加による駆動電圧上昇の問題を最小化することができる。
【0085】
従来の構造において、カソードから発光層までの距離Dを調整する場合、発光層における電荷均衡に影響を与えることがある。その理由は、n型有機物層、例えば、電子注入層または電子輸送層の厚さを調整する場合、発光層に到達する電子の量が変化するからである。
図5は、
図2または
図3に示しているような有機電界発光素子の構造の、カソードから発光層までの構造を例示したものである。前記のような構造において、カソードに隣接した第1p型有機物層の厚さDhを調整する場合、素子のキャビティに関連する距離として、発光層中の発光地点からカソードまでの距離Dの調整には影響を与えることがあるが、電子の量に関連する長さDeには影響を与えないので、電荷均衡に影響を及ぼさない。ここで、発光層中の発光地点とは、電子と正孔の均衡(balance)によって実際に発光する地点を意味する。発光地点は、発光層の材料に応じて異なり得る。当技術分野では、便宜上、発光層の中間地点、または発光層と他の層との界面を発光地点に設定したりする。
【0086】
例えば、カソードが反射板として作用する場合、発光層中の発光地点からカソードまでの距離Dは、[有機物層の屈折率*λ/4]の整数倍に調整することができる。この時、λは、発光層から放出される光の波長である。色(color)の異なる光は互いに異なる波長を有するため、発光層から放出される光の色に応じて、発光層中の発光地点からカソードまでの距離Dは異なって調整可能である。さらに、有機物層の屈折率に応じて、発光層中の発光地点からカソードまでの距離Dは異なって調整可能である。この時、有機物層が2層以上の場合、有機物層の屈折率は、各層の屈折率を求めた後、その合計を求めることにより計算することができる。
【0087】
また、カソード側に進行した光がカソードの表面に到達して反射する時、カソード物質の種類に応じて、光の浸透深さ(penetration depth)が異なる。したがって、カソード物質の種類は、カソードの表面から反射した光の位相(phase)に変化を与える。この時、変化する位相差を考慮して、発光層中の発光地点からカソードまでの距離Dを調整する必要がある。したがって、カソードの物質も、発光層からカソードまでの距離に影響を与えることがある。
【0088】
前記発光層からカソードに進行する光とカソードから反射する光との相マッチング(phase matching)が起こると、補強干渉が生じて明るい光の実現が可能になり、逆に、前記光間の相ミスマッチング(phase mismatching)が起こると、相殺干渉が生じて光の一部が消滅する。このような相マッチングおよび相ミスマッチングの現象によって、発光色の明るさは、発光層からカソードまでの距離に応じて正弦(sine)曲線の形態で現れる。
【0089】
本明細書の一実施態様によれば、発光層からカソードまでの距離に応じた、素子の発光色の明るさを示す正弦曲線において、光の明るさが最大となる地点のx軸の値を、発光層からカソードまでの距離に設定することができる。
【0090】
本明細書の一実施態様によれば、前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層との境界面、または光散乱層と第1n型有機物層との境界面から前記発光層までの距離、および前記アノードから前記発光層までの距離が、前記発光層内の正孔の量と電子の量が均衡をなすように制御できる。ここで、正孔の量と電子の量が均衡をなすとは、発光層に注入された正孔と電子とが発光層内で再結合して発光のためのエキシトン(exciton)を効果的に形成されるようにするもので、エキシトンの形成に関与する正孔および電子の損失を最小化することを意味する。例えば、素子内の正孔の量が電子の量より多くなる場合、正孔過剰によって、エキシトンに関与する正孔以外にも非発光消滅する正孔が発生し、これは、素子の量子効率の損失をもたらす。逆に、電子の量が正孔の量より多くなる場合、電子の損失をもたらすことがある。したがって、注入された正孔と電子の量的均衡をなすことで、発光に寄与せずに消滅する正孔および電子の量を減少させようとするものである。
【0091】
例えば、正孔と電子が発光層内で量的均衡をなすようにするための手段として、正孔および電子の移動速度を制御することも重要である。発光層内に正孔過剰の場合、電子の注入速度を高めることにより、発光層内の正孔と電子の均衡をなすようにすることができる。一般的に、アノードと発光層との間、すなわち、第2電荷輸送経路に備えられて正孔を輸送する物質の正孔移動度は、カソードと発光層との間、すなわち、第1電荷輸送経路に備えられて電子を輸送する物質の電子移動度に比べて、速い特性を示す。例えば、NPBの正孔移動度は8.8×10
−4cm
2/Vsであるのに対し、Alq
3の電子移動度は6.7×10
−5cm
2/Vs程度の水準である。
【0092】
したがって、素子の発光効率を高める上で、電子の移動度を高めることが重要であり、カソードから発光層までの距離を増加させて使用するにあたり、第1n型有機物層の厚さを増加させるより、第1p型有機物層の厚さを増加させることが効果的であり得る。
【0093】
したがって、一つの例によれば、前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層との境界面、または光散乱層と第1n型有機物層との境界面から前記発光層までの距離が、前記アノードから前記発光層までの距離より短く構成されてよい。具体例として、前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層との境界面、または光散乱層と第1n型有機物層との境界面から前記発光層までの距離は、100〜500Åからなってよい。もう一つの具体例として、前記アノードから前記発光層までの距離は、500〜5,000Åからなってよい。ただし、発光層の特性によって、または使用者によって、具体的な数値は異なって調整可能である。
【0094】
本明細書の一つの実施態様によれば、素子の安定性のために、第1p型有機物層の厚さを調整することができる。第1p型有機物層の厚さを厚く調整する場合、素子内の電荷均衡または電圧上昇には影響を与えることなく、素子の安定性をより向上させることができる。
【0095】
ここで、素子の安定性とは、素子の厚さが薄い場合に生じ得るアノードとカソードとの間の接触によるショート現象を防止可能な程度を意味する。一般的に、カソードと発光層との間に備えられたn型有機物層の厚さを厚く調整する場合には、素子の安定性を向上させることはできるが、駆動電圧が急激に上昇して電力効率(power efficiency)を減少させる。従来は、このような問題を解決するために、カソードと発光層との間に備えられたn型有機物層の厚さを厚く調整すると同時に、金属をドーピングする試みがなされていたが、これは、光吸収率の増加および寿命の低下が発生し、工程が複雑になる問題があった。
【0096】
しかし、本願に係る発明によれば、カソードおよび発光層に備えられたn型有機物層の厚さを調整するのではなく、電荷均衡または電圧上昇に影響を及ぼさない第1p型有機物層の厚さを調整することで、発光層とカソードとの間の距離を増加させることができる。これによって、素子の安定性は向上する一方、駆動電圧の上昇は最小化されて電力効率は増加する。
【0097】
一つの例によれば、素子の安定性を考慮して、前記カソードから前記発光層までの距離が、前記アノードから前記発光層までの距離より長く構成されてよい。このように構成する場合にも、従来技術とは異なり、電荷均衡または電圧上昇には影響を及ぼさない。一つの具体例において、前記第1p型有機物層の厚さは5nm以上に調整可能であり、厚さは厚いほど、素子の安定性を高めることができる。前記第1p型有機物層の厚さの上限は特に限定されておらず、当業者によって決定可能である。例えば、工程の容易性を考慮して、前記第1p型有機物層の厚さは、500nm以下で選択可能である。
【0098】
本明細書のもう一つの実施態様によれば、前記有機電界発光素子のキャビティ(cavity)の長さが、前記発光層から放出される光の波長の整数倍となるように、前記第1p型有機物層の厚さが制御できる。このように光の波長の整数倍となるようにすることにより、光の補強干渉による光放出効率を向上させることができる。
【0099】
本明細書のもう一つの実施態様によれば、前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層との境界面、または光散乱層と第1n型有機物層との境界面から前記発光層までの距離、および前記アノードから前記発光層までの距離が、前記発光層内の正孔の量と電子の量が均衡をなすように制御されると同時に、前記有機電界発光素子のキャビティ(cavity)の長さが、前記発光層から放出される光の波長の整数倍となるように、前記第1p型有機物層の厚さを制御できる。
【0100】
本明細書のもう一つの実施態様によれば、前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層との境界面、または光散乱層と第1n型有機物層との境界面から前記発光層までの電子の移動時間と、前記アノードから前記発光層までの正孔の移動時間を、素子の正孔と電子が発光層内で量的均衡可能に制御すると同時に、前記有機電界発光素子のキャビティ(cavity)の長さが、前記発光層から放出される光の波長の整数倍となるように、前記第1p型有機物層の厚さが制御できる。
【0101】
本明細書のもう一つの実施態様によれば、前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位と前記第1n型有機物層のLUMOエネルギー準位との差は、2eV以下である。本明細書の一実施態様によれば、前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位と前記第1n型有機物層のLUMOエネルギー準位との差は、0eV超過2eV以下であってよく、あるいは0eV超過0.5eV以下であってよい。本明細書の他の実施態様によれば、前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層の材料は、前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位と前記第1n型有機物層のLUMOエネルギー準位との差が0.01eV以上2eV以下となるように選択可能である。
【0102】
前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位と前記第1n型有機物層のLUMOエネルギー準位とのエネルギー差が2eV以下の場合、前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層とが接する時、これらの間にNP接合が容易に発生できる。この場合、電子注入のための駆動電圧を低下させることができる。
【0103】
前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層とは接することができる。この場合、前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層との間にはNP接合が形成される。NP接合が形成された場合、第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位と第1n型有機物層のLUMOエネルギー準位との間の差が減少する。したがって、外部電圧が印加される場合、NP接合から正孔および電子が容易に形成される。
【0104】
本明細書の一実施態様によれば、前記第1p型有機物層は「非ドーピング」される。前記第1p型有機物層が非ドーピングされた場合、ドーパントとホストとの間の電荷輸送複合体(Charge transfer complex)の形成によって、予想せぬ可視光線の吸収を防止可能なため、発光効率の減少を防止することができる。前記第1p型有機物層が非ドーピングされた場合、これは、従来の、有機物にp型ドーパントをドーピングさせることによりp型半導体特性を有する層とは区分される。前記第1p型有機物層は、p型ドーパントによってp型半導体特性を示すのではなく、それ自体がp型半導体特性を有する有機物を含む。p型半導体特性を有する有機物であれば、2種以上の有機物が前記第1p型有機物層に含まれてもよい。
【0105】
本明細書の一実施態様によれば、前記カソードの仕事関数は、前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位以下の値を有することができる。
【0106】
前記カソードの仕事関数が前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位以下の値を有する場合、カソードから電子が第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位に注入される時、注入障壁(injection barrier)が存在しなくなる。
【0107】
本明細書の一実施態様によれば、前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位と前記第1n型有機物層のLUMOエネルギー準位との差は、2eV以下であってよい。本明細書の他の実施態様によれば、前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位と前記第1n型有機物層のLUMOエネルギー準位との差は、0eV超過2eV以下であってよく、あるいは0eV超過0.5eV以下であってよい。本明細書の他の実施態様によれば、前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層の材料は、前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位と前記第1n型有機物層のLUMOエネルギー準位との差が0.01eV以上2eV以下となるように選択可能である。
【0108】
前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位と前記第1n型有機物層のLUMOエネルギー準位とのエネルギー差が約2eV以下の場合、前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層とが接する時、これらの間にNP接合が容易に発生できる。この場合、電子注入のための駆動電圧を低下させることができる。
【0109】
前記カソードと前記第1p型有機物層とは接することができる。前記カソードと第1p型有機物層とが接し、カソードの仕事関数が第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位と等しいかそれより大きい値を有する場合、前記カソードの仕事関数と前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位との差が大きくても、カソードから第1p型有機物層のHOMO準位に電子の注入が容易に行われる。これは、第1p型有機物層と第1n型有機物層との間のNP接合で生成された正孔が、第1p型有機物層に沿ってカソード側に移動するからである。一般的に、電子はエネルギー準位の低い所から高い所に移動する時、障壁がない。また、正孔はエネルギー準位の高い所から低い所に移動する時、障壁が生じない。したがって、エネルギー障壁なしに、カソードから第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位への電子の移動が可能になるのである。
【0110】
前記カソードと前記第1p型有機物層との間に追加の層が追加的に備えられてよい。この場合、前記追加の層のHOMOエネルギー準位が、前記カソードの仕事関数または前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位と等しいか、前記カソードの仕事関数または前記第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位の間であってよい。
【0111】
前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層とは接することができる。この場合、前記第1p型有機物層と前記第1n型有機物層との間にはNP接合が形成される。NP接合が形成された場合、第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位と第1n型有機物層のLUMOエネルギー準位との間の差が減少する。したがって、外部電圧が印加される場合、NP接合から正孔および電子が容易に形成される。
【0112】
前記第1p型有機物層の材料としては、p型半導体特性を有する有機物を使用することができる。例えば、アリールアミン系化合物(aryl amine compound)を使用することができる。アリールアミン系化合物の一例としては、前記化学式1の化合物がある。
【0113】
前記第1n型有機物層は、単一物質からなることに限定されず、n型半導体特性を有する化合物1種または2種以上からなってよい。また、前記第1n型有機物層は、単一層からなってもよいが、2層または3層以上を含むこともできる。この時、2層以上の各層は、互いに同一の材料からなってもよいが、互いに異なる材料からなってもよい。必要に応じて、前記第1n型有機物層を構成する層のうちの少なくとも1層は、n型ドーパントによってドーピングされてよい。
【0114】
前記第1n型有機物層は、前述のように、第1p型有機物層と発光層との間でLUMOエネルギー準位を介して電荷を移動可能な材料であれば特に限定されない。例えば、前記化学式2の化合物が使用できる。
【0115】
前記化学式2の他の例や、合成方法および多様な特徴は、米国特許出願第2002−0158242号、米国特許第6,436,559号、および米国特許第4,780,536号に記載されており、これら文献の内容はすべて本明細書に組み込まれる。
【0116】
また、前記第1n型有機物層は、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、フッ素置換された3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、シアノ置換された3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、フッ素置換されたナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、およびシアノ置換されたナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)の中から選択される1以上の化合物を含むことができる。
【0117】
それ以外にも、前記第1n型有機物層の材料としては、当技術分野で知られている電子注入または輸送材料として使用される、n型半導体特性を有する有機物が使用できる。具体的には、下記のような材料が使用できるが、これらにのみ限定されるものではない。例えば、第1n型有機物層材料の例として、イミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、キノリン、およびフェナントロリン基から選択される官能基を有する化合物を使用することができる。
【0118】
前記イミダゾール基、オキサゾール基、およびチアゾール基から選択される官能基を有する化合物の具体例としては、下記の化学式4または5の化合物がある。
【0120】
前記化学式4において、R
1〜R
4は、互いに同一または異なっていてよく、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、C
1〜C
30のアルキル基、C
2〜C
30のアルケニル基、C
1〜C
30のアルコキシ基、C
3〜C
30のシクロアルキル基、C
3〜C
30のヘテロシクロアルキル基、C
6〜C
30のアリール基、およびC
2〜C
30のヘテロアリール基からなる群より選択された1つ以上の基で置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキル基;ハロゲン原子、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、C
1〜C
30のアルキル基、C
2〜C
30のアルケニル基、C
1〜C
30のアルコキシ基、C
3〜C
30のシクロアルキル基、C
3〜C
30のヘテロシクロアルキル基、C
6〜C
30のアリール基、およびC
2〜C
30のヘテロアリール基からなる群より選択された1つ以上の基で置換もしくは非置換のC
3〜C
30のシクロアルキル基;ハロゲン原子、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、C
1〜C
30のアルキル基、C
2〜C
30のアルケニル基、C
1〜C
30のアルコキシ基、C
3〜C
30のシクロアルキル基、C
3〜C
30のヘテロシクロアルキル基、C
6〜C
30のアリール基、およびC
2〜C
30のヘテロアリール基からなる群より選択された1つ以上の基で置換もしくは非置換のC
5〜C
30のアリール基;またはハロゲン原子、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、C
1〜C
30のアルキル基、C
2〜C
30のアルケニル基、C
1〜C
30のアルコキシ基、C
3〜C
30のシクロアルキル基、C
3〜C
30のヘテロシクロアルキル基、C
6〜C
30のアリール基、およびC
2〜C
30のヘテロアリール基からなる群より選択された1つ以上の基で置換もしくは非置換のC
2〜C
30のヘテロアリール基であり、互いに隣接する基と脂肪族、芳香族、脂肪族ヘテロまたは芳香族ヘテロの縮合環を形成するかスピロ結合をなすことができ;Ar
1は、水素原子、置換もしくは非置換の芳香族環、または置換もしくは非置換の芳香族ヘテロ環であり;Xは、O、SまたはNR
aであり;R
aは、水素、C
1〜C
7の脂肪族炭化水素、芳香族環または芳香族ヘテロ環であってよい。
【0122】
前記化学式5において、Xは、O、S、NR
b、またはC
1〜C
7の2価の炭化水素基であり;A、DおよびR
bは、それぞれ水素原子、ニトリル基(−CN)、ニトロ基(−NO
2)、C
1〜C
24のアルキル、C
5−C
20の芳香族環またはヘテロ原子を含む置換された芳香族環、ハロゲン、または隣接する環と融合環を形成可能なアルキレンまたはヘテロ原子を含むアルキレンであり;AとDは、連結されて芳香族またはヘテロ芳香族環を形成することができ;Bは、nが2以上の場合、連結ユニットとして多数のヘテロ環を共役または非共役となるように連結する置換もしくは非置換のアルキレンまたはアリーレンであり、nが1の場合、置換もしくは非置換のアルキルまたはアリールであり;nは、1〜8の整数である。
【0123】
前記化学式5の化合物の例としては、韓国特許公開第2003−0067773号に公知されている化合物を含み、前記化学式5の化合物の例としては、米国特許第5,645,948号に記載の化合物と、国際公開第05/097756号に記載の化合物を含む。前記文献は、その内容のすべてが本明細書に組み込まれる。
【0124】
具体的には、前記化学式4の化合物には、下記の化学式6の化合物も含まれる。
【0126】
前記化学式6において、R
5〜R
7は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素原子、C
1〜C
20の脂肪族炭化水素、芳香族環、芳香族ヘテロ環、または脂肪族または芳香族縮合環であり;Arは、直接結合、芳香族環または芳香族ヘテロ環であり;Xは、O、SまたはNR
aであり;R
aは、水素原子、C
1〜C
7の脂肪族炭化水素、芳香族環または芳香族ヘテロ環であり;ただし、R
5およびR
6が同時に水素の場合は除外する。
【0127】
また、前記化学式5の化合物には、下記の化学式7の化合物も含まれる。
【0129】
前記化学式7において、Zは、O、SまたはNR
bであり;R
8およびR
bは、水素原子、C
1〜C
24のアルキル、C
5−C
20の芳香族環またはヘテロ原子を含む置換された芳香族環、ハロゲン、またはベンザゾール環と融合環を形成可能なアルキレンまたはヘテロ原子を含むアルキレンであり;Bは、nが2以上の場合、連結ユニットとして多数のベンザゾールを共役または非共役となるように連結するアルキレン、アリーレン、置換されたアルキレン、または置換されたアリーレンであり、nが1の場合、置換もしくは非置換のアルキルまたはアリールであり;nは、1〜8の整数である。
【0130】
例えば、下記の構造を有するイミダゾール化合物が使用できる。
【0132】
前記キノリン基を有する化合物の例としては、下記の化学式8〜14の化合物がある。
【0133】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【0134】
前記化学式8〜14において、
nは、0〜9の整数であり、mは、2以上の整数であり、
R
9は、水素、メチル基、エチル基などのアルキル基、シクロヘキシル、ノルボルニルなどのシクロアルキル基、ベンジル基などのアラルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などのシクロアルケニル基、メトキシ基などのアルコキシ基、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたアルキルチオ基、フェノキシ基などのアリールエーテル基、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたアリールチオエーテル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などのアリール基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、ピリジル基、キノリル基、カルバゾリル基などの複素環基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基などのシリル基、エーテル結合を介してケイ素を有する基であるシロキサニル基、隣接する置換基との間の環構造から選択され;前記置換基は、非置換もしくは置換されていてよく、nが2以上の場合、置換基は、互いに同一または異なっていてよく、
Yは、前記R
9の基の2価以上の基である。
【0135】
前記化学式8〜14の化合物は、韓国公開特許第2007−0118711号に記載されており、この文献のすべては本明細書に参照として組み込まれる。
【0136】
前記フェナントロリン基を有する化合物の例としては、下記の化学式15〜25の化合物があるが、これらの例にのみ限定されるものではない。
【0137】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【0138】
前記化学式15〜18において、
mは、1以上の整数であり、nおよびpは、整数であり、n+pは、8以下であり、
mが1の場合、R
10およびR
11は、水素、メチル基、エチル基などのアルキル基、シクロヘキシル、ノルボルニルなどのシクロアルキル基、ベンジル基などのアラルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などのシクロアルケニル基、メトキシ基などのアルコキシ基、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたアルキルチオ基、フェノキシ基などのアリールエーテル基、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたアリールチオエーテル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などのアリール基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、ピリジル基、キノリル基、カルバゾリル基などの複素環基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基などのシリル基、エーテル結合を介してケイ素を有する基のシロキサニル基、隣接する置換基との間の環構造から選択され;
mが2以上の場合、R
10は、直接結合または前述の基の2価以上の基であり、R
11は、mが1の場合と同じであり、
前記置換基は、非置換もしくは置換されていてよく、nまたはpが2以上の場合、置換基は、互いに同一または異なっていてよい。
【0139】
前記化学式15〜18の化合物は、韓国公開特許第2007−0052764号および韓国公開特許第2007−0118711号に記載されており、これら文献のすべては本明細書に参照として組み込まれる。
【0140】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【0141】
前記化学式19〜22において、R
1a〜R
8aおよびR
1b〜R
10bは、それぞれ水素原子、置換もしくは非置換の核原子数5〜60のアリール基、置換もしくは非置換のピリジル基、置換もしくは非置換のキノリル基、置換もしくは非置換の1〜50のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の核原子数6−50のアラルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは非置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは非置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換の核原子数5〜50のアリール基で置換されたアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基であり、これらは、互いに結合して芳香族環を形成することができ、Lは、置換もしくは非置換の炭素数6〜60のアリーレン基、置換もしくは非置換のピリジニレン基、置換もしくは非置換のキノリニレン基、または置換もしくは非置換のフルオレニレン基である。前記化学式19〜22の化合物は、日本国特許公開第2007−39405号公報に記載されており、この文献のすべては本明細書に参照として組み込まれる。
【0143】
前記化学式23および24において、d
1、d
3〜d
10およびg
1は、それぞれ水素、または芳香族または脂肪族炭化水素基であり、mおよびnは、0〜2の整数であり、pは、0〜3の整数である。前記化学式23および24の化合物は、米国特許公開第2007/0122656号に記載されており、この文献のすべては本明細書に参照として組み込まれる。
【0145】
前記化学式25において、R
1c〜R
6cは、それぞれ水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアラルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換の複素環基またはハロゲン原子であり、Ar
1cおよびAr
2cは、それぞれ下記の構造式から選択される。
【0147】
前記構造式において、R
17〜R
23は、それぞれ水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアラルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換の複素環基、またはハロゲン原子である。前記化学式25の化合物は、日本国特許公開第2004−107263号公報に記載されており、この文献のすべては本明細書に参照として組み込まれる。
【0148】
前記第1n型有機物層と前記発光層との間には、少なくとも1つの有機物層をさらに含むことができる。前記第1n型有機物層と前記発光層との間には、1層または2層以上の電子輸送層、正孔遮断層などが備えられてよい。
【0149】
以下、本明細書の実施態様にかかる有機電界発光素子を構成する各層について具体的に説明する。以下に説明する各層の物質は、単一物質または2以上の物質の混合物であってよい。
【0150】
[アノード]
アノードは、金属、金属酸化物、または導電性ポリマーを含む。前記導電性ポリマーは、電気伝導性ポリマーを含むことができる。例えば、前記アノードは、約3.5〜5.5eVの仕事関数値を有することができる。例示的な導電性物質の例は、炭素、アルミニウム、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、銀、金、その他の金属、およびこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、スズ酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物、およびその他これと類似の金属酸化物;ZnO:AlおよびSnO
2:Sbのような酸化物と金属との混合物などがある。アノード材料としては、透明物質が使用されてもよく、不透明物質が使用されてもよい。アノード方向に発光する構造の場合、アノードは透明に形成されてよい。ここで、透明とは、有機物層で発光した光が透過可能であればよく、光の透過度は特に限定されない。
【0151】
例えば、本発明にかかる有機電界発光素子が前面発光型であり、アノードが有機物層およびカソードの形成前に基板上に形成される場合には、アノード材料として、透明物質だけでなく、光反射率に優れた不透明物質も使用できる。例えば、本発明にかかる有機電界発光素子が後面発光型であり、アノードが有機物層およびカソードの形成前に基板上に形成される場合には、アノード材料として透明物質が使用されるか、不透明物質が透明になる程度の薄膜に形成されなければならない。
【0152】
本明細書の記載による有機電界発光素子において、第2電荷輸送経路が形成される発光層とアノードとの間に、第2p型有機物層が含まれてよい。
図8に、第2p型有機物層が備えられる場合のエネルギーの流れを例示した。第2p型有機物層は、正孔注入層(HIL)または正孔輸送層(HTL)であってよい。第2p型有機物層の材料としては、前述の第1p型有機物層の材料として言及した材料が使用できる。
【0153】
前記第2p型有機物層と前記アノードとの間には、第4n型有機物層が備えられてもよい。ここで、前記第2p型有機物層のHOMOエネルギー準位と前記第4n型有機物層のLUMOエネルギー準位との差は、2eV以下あるいは1eV以下、例えば、約0.5eVであってよい。前記第2p型有機物層と前記第4n型有機物層とは接することができる。これによって、前記第2p型有機物層と前記第4n型有機物層とはNP接合を形成することができる。
図9に、第4n型有機物層を備える場合のエネルギーの流れを例示した。
【0154】
前記第4n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記アノードの仕事関数との差は、4eV以下であってよい。前記第4n型有機物層と前記アノードとは接することができる。
【0155】
前記第4n型有機物層は、約4〜7eVのLUMOエネルギー準位、および約10
−8cm
2/Vs〜1cm
2/Vs、または約10
−6cm
2/Vs〜10
−2cm
2/Vsの電子移動度を有することができる。前記電子移動度の範囲内であることが、正孔の効率的な注入に有利である。
【0156】
前記第4n型有機物層は、真空蒸着可能な物質または溶液プロセス(solution process)によって薄膜成形可能な物質で形成されてもよい。前記第4n型有機物の具体例は、これに限定されないが、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、フッ素置換された3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、シアノ置換されたPTCDA、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、フッ素置換されたNTCDA、シアノ置換されたNTCDA、またはヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(HAT)を含む。
【0157】
前記第4n型有機物層と前記第2p型有機物層とがNP接合を形成する場合、NP接合で形成された正孔は、前記第2p型有機物層を介して発光層に輸送される。
【0158】
前記第2p型有機物層は、アリールアミン系化合物、導電性ポリマー、または共役部分と非共役部分が共にあるブロック共重合体などを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0159】
[発光層(EML)]
発光層では、正孔伝達と電子伝達が同時に起こるので、発光層は、n型特性とp型特性をすべて有することができる。便宜上、電子輸送が正孔輸送に比べて速い場合にn型発光層、正孔輸送が電子輸送に比べて速い場合にp型発光層と定義することができる。
【0160】
n型発光層はこれに限定されないが、アルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノリン)(Alq
3);8−ヒドロキシキノリンベリリウム(BAlq);ベンズオキサゾール系化合物、ベンズチアゾール系化合物、またはベンズイミダゾール系化合物;ポリフルオレン系化合物;シラシクロペンタジエン(silole)系化合物などを含む。
【0161】
p型発光層はこれに限定されるものではないが、カルバゾール系化合物;アントラセン系化合物;ポリフェニレンビニレン(PPV)系ポリマー;またはスピロ(spiro)化合物などを含む。
【0162】
[電子輸送層(ETL)]
本明細書において、第1n型有機物層が電子輸送層として形成されてもよく、第1n型有機物層と発光層との間に追加の第2n型有機物層が備えられてもよい。
図6に、第2n型有機物層が備えられる場合のエネルギーの流れを例示した。第2n型有機物層は、電子輸送層または正孔遮断層の役割を果たすこともできる。第2n型有機物層の材料としては、電子をきちんと輸送できるように、電子移動度(electron mobility)の大きい物質が好ましい。第2n型有機物層と発光層との間に第3n型有機物層が備えられてもよい。第3n型有機物層も、電子輸送層または正孔遮断層の役割を果たすこともできる。
図7に、第3n型有機物層が備えられる場合のエネルギーの流れを例示した。
【0163】
前記第1n型有機物層は、前述のように、LUMOエネルギー準位が第1p型有機物層のHOMOエネルギー準位と2eV以下の材料で構成されることが好ましい。一例によれば、前記第1n型有機物層は、LUMOエネルギー準位が5eV〜7eVであってよい。
【0164】
前記第2n型有機物層は、LUMOエネルギー準位が前記第1n型有機物層のLUMOエネルギー準位より小さいことが好ましい。一例によれば、前記第2n型有機物層は、LUMOエネルギー準位が2eV〜3eVであってよい。一例によれば、前記第2n型有機物層は、HOMOエネルギー準位が5eV〜6eV、具体的には5.8eV〜6eVであってよい。
【0165】
前記第2または第3n型有機物層はこれに限定されないが、アルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノリン)(Alq
3);Alq
3構造を含む有機化合物;ヒドロキシフラボン−金属錯化合物またはシラシクロペンタジエン(silole)系化合物などを含むことができる。第2または第3n型有機物層の材料は、前述の第1n型有機物層の材料が使用されてもよい。第2または第3n型有機物層は、n型ドーパントによってドーピングされてよい。一実施態様によれば、第2n型有機物層および第3n型有機物層のうちのいずれか1つがn型ドーパントによってドーピングされる場合、ドーピングされた層のホスト材料とドーピングされていない層の材料とは同一であってよい。
【0166】
n型ドーパントとしては、有機物または無機物であってよい。n型ドーパントが無機物の場合、アルカリ金属、例えば、Li、Na、K、Rb、CsまたはFr;アルカリ土類金属、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、BaまたはRa;希土類金属、例えば、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Th、Dy、Ho、Er、Em、Gd、Yb、Lu、YまたはMn;または前記金属のうちの1以上の金属を含む金属化合物を含むことができる。あるいは、n型ドーパントは、シクロペンタジエン、シクロヘプタトリエン、6員ヘテロ環、またはこれらの環が含まれた縮合環を含む物質であってもよい。この時、ドーピング濃度は、0.01〜50重量%、または1〜10重量%であってよい。
【0167】
具体的な一例として、有機電界発光素子は、第1〜第3n型有機物層を含み、第1n型有機物層は、前記化学式1の化合物を含み、第2n型有機物層は、n型ドーパントによってドーピングされてよい。この時、第2n型有機物層と第3n型有機物層は、前記化学式5の化合物をホスト材料として含むことができる。
【0168】
[カソード]
前述のように、本明細書では、前述の第1p型有機物層および第1n型有機物層を備えることにより、カソード物質を多様な仕事関数を有する材料から選択することができる。カソード物質としては、通常、電子注入が容易に行われるように、仕事関数の小さい物質が好ましい。しかし、本明細書では、仕事関数の大きい物質も適用可能である。具体的には、本明細書では、前述の第1p型有機物層のHOMO以上の仕事関数を有する物質をカソード材料として使用することができる。例えば、本明細書では、カソード材料として、仕事関数2eV〜5eVの物質が使用できる。前記カソードはこれに限定されないが、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属、またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO
2/Alのような多層構造の物質などを含む。
【0169】
カソード材料としてAlを使用する場合、単独またはLiFやLiqと共に使用することにより、効率的に動作が可能な素子を提供することができる。特に、カソード材料としてAgを使用する場合、従来技術による素子では、Ag単独またはLiFやLiqと共に使用する時によく動作しないことから、カソードに隣接した有機物層として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属などの金属からなる層や金属をドーピングした有機物層を用いなければならない。しかし、本明細書に記載の実施態様では、前記のように金属層や金属をドーピングした有機物層なくても、カソード材料として、Agのような仕事関数の大きい材料を用いることができる。また、本明細書に記載の実施態様では、カソード材料として、IZO(仕事関数4.8〜5.2eV)のように仕事関数の高い透明伝導性酸化物を使用してもよい。
【0170】
本明細書の一実施態様によれば、前記カソードは、有機物層と物理的に接するように備えられてよい。前記カソードと接する有機物層は、前述の第1p型有機物層であってもよく、追加の有機物層であってよい。ここで、カソードと接する有機物層は非ドーピングされてよい。
【0171】
従来の有機電界発光素子では、AlまたはAgのような仕事関数の大きい材料のカソードを使用する場合には、有機物層とカソードとの間にLiF層のような無機物層や有機物層に金属をドーピングすることが必要であった。従来は、前記のような無機物層や金属ドーピングされた有機物層を使用せず、カソードと有機物層とが接するようにする場合、カソード材料としては、仕事関数が2eV以上3.5eV未満の材料しか使用することができなかった。しかし、本発明にかかる有機電界発光素子では、カソードが有機物層と接する場合にも、前記第1p型有機物層と第1n型有機物層によって、仕事関数が3.5eV以上の材料を用いてカソードを構成することができる。
【0172】
本明細書の一実施態様によれば、カソードは、有機物層と物理的に接するように備えられ、カソードは、仕事関数が3.5eV以上の材料で構成される。
【0173】
本発明の一実施態様によれば、カソードは、有機物層と物理的に接するように備えられ、カソードは、仕事関数が4eV以上の材料で構成される。
【0174】
本明細書の一実施態様によれば、カソードは、有機物層と物理的に接するように備えられ、カソードは、仕事関数が4.5eV以上の材料で構成される。
【0175】
前記カソードを構成する材料の仕事関数の上限は特に制限されないが、材料選択の観点から、5.5eV以下の材料を使用することができる。
【0176】
前記カソードは、前記アノードと同一の物質で形成されてよい。この場合、前記カソードとしては、先にアノードの材料として例示した材料で形成されてよい。あるいは、カソードまたはアノードは、透明物質を含むことができる。
【0177】
本明細書に記載の有機物層、例えば、第1〜第2p型有機物層、第1〜第4n型有機物層、光散乱層、カソード、アノードの厚さや形状またはパターンの形態は、物質の種類または素子で要求される役割に応じて当業者によって選択可能である。
【0178】
本発明の一実施態様にかかる有機電界発光素子は、光抽出構造を含む素子であってよい。
【0179】
本発明の一実施態様において、前記有機電界発光素子は、前記アノードまたはカソードの有機物層が備えられる面に対向する面に基板をさらに含み、前記基板とアノードまたはカソードとの間に、または前記基板のアノードまたはカソードが備えられる面に対向する面に光抽出層をさらに含む。
【0180】
つまり、前記アノードまたはカソードの有機物層が備えられる面に対向する面に備えられた基板とアノードまたはカソードとの間に、内部光抽出層をさらに含むことができる。もう一つの実施態様において、前記基板において、アノードまたはカソードが備えられた面の反対面に外部光抽出層が追加的に備えられてよい。
【0181】
本明細書において、前記内部光抽出層または外部光抽出層は、光散乱を誘導して、素子の光抽出効率を向上させることができる構造であれば特に制限しない。一つの実施態様において、前記光抽出層は、バインダー内に散乱粒子が分散した構造を有するか、凹凸を有するフィルムを用いて形成されてよい。
【0182】
また、前記光抽出層は、基板上に、スピンコーティング、バーコーティング、スリットコーティングなどの方法によって直接形成されるか、フィルム形態で作製して付着する方式によって形成されてよい。
【0183】
本発明の一実施態様において、前記有機電界発光素子は、フレキシブル(flexible)有機電界発光素子である。この場合、前記基板はフレキシブル材料を含む。例えば、撓み可能な薄膜形態のガラス、プラスチックまたはフィルム形態の基板を使用することができる。
【0184】
前記プラスチック基板の材料は特に限定しないが、一般的に、PET、PENおよびPIなどのフィルムを単層または複層の形態で使用することができる。
【0185】
本発明の一実施態様において、前記有機電界発光素子を含むディスプレイ装置を提供する。
【0186】
本発明の一実施態様において、前記有機電界発光素子を含む照明装置を提供する。
【0187】
以下、上述の実施態様の具体的な実験例を記載する。しかし、下記の実験例は例示に過ぎず、上記実施態様の範囲を限定しようとするものではない。
【0188】
<実験例1>
基板上に、IZOのスパッタリング方法で1,000Åの厚さのアノードを形成し、その上に、下記の化学式のm−MTDATAを熱真空蒸着して、厚さが500Åのp型正孔注入層を形成した。次に、その上に、下記の化学式のNPBを真空蒸着して、厚さが400Åのp型正孔輸送層を形成した。
【0189】
次に、下記の化学式のCBPに下記の化学式Ir(ppy)
3を10重量%ドーピングして、厚さ300Åの発光層を形成した。その上に、下記の化学式のBCPを用いて50Åの厚さの正孔遮断層を形成した。
【0190】
その上に、下記の化学式の電子輸送材料を用いて100Åの厚さの有機物層を形成し、その上に、下記の化学式の電子輸送材料にCaを10重量%ドーピングして、50Åの厚さの電子輸送層を形成した。
【0191】
その上に、n型有機物である下記の化学式のHATを用いて300Åの厚さの第1n型有機物層を形成した。その上に、下記の表1に記載のA〜Fの中から選択された材料をそれぞれ用いて光散乱層を形成した。次に、p型有機物としてNPBを用いて50Åの厚さの第1p型有機物層を形成した。
【0193】
最後に、カソードとしてAgを2,000Åの厚さに形成して、有機電界発光素子を作製した。
【0195】
前記過程において、有機物の蒸着速度は0.5〜1Å/secに維持し、蒸着時の真空度は2×10
−7〜2×10
−8torr程度に維持した。
【0196】
前記表に記載の材料を用いて形成された有機物層の表面を撮影したSEM写真を、
図10A〜
図10Fに示した。
図10A、
図10C、
図10Eおよび
図10Fの場合、粗さが大きくなった。特に、
図10Eにおいて、層を形成する物質の形成した粒子の粗さが最も多くなり、この場合、素子内部で発生した光の経路の変更によって、光抽出効率が素子B対比約20%増加する効果を示した。
【0198】
<実験例2>
基板上に、IZOのスパッタリング方法で1,000Åの厚さのアノードを形成し、その上に、前記化学式のm−MTDATAを熱真空蒸着して、厚さが500Åのp型正孔注入層を形成した。次に、その上に、前記化学式のNPBを真空蒸着して、厚さが400Åのp型正孔輸送層を形成した。
【0199】
次に、前記化学式のCBPに前記化学式のIr(ppy)
3を10重量%ドーピングして、厚さ300Åの発光層を形成した。その上に、前記化学式のBCPを用いて50Åの厚さの正孔遮断層を形成した。
【0200】
その上に、前記化学式の電子輸送材料を用いて100Åの厚さの有機物層を形成し、その上に、前記化学式の電子輸送材料にCaを10重量%ドーピングして、50Åの厚さの電子輸送層を形成した。
【0201】
その上に、n型有機物である前記化学式のHATを用いて300Åの厚さの第1n型有機物層を形成した。その上に、第1p型有機物層、および散乱層の機能を果たすことができる層である下記の化学式3−1の化合物をそれぞれ500Å、5,000Åの厚さに形成し、比較例として、NPBをそれぞれ500Å、5,000Åの厚さに形成した素子とその特性を比較した。
【0202】
最後に、カソードとしてAgを2,000Åの厚さに形成して、有機電界発光素子を作製した。
【0204】
製造された素子の特性を、下記の表3に示した。
【0206】
表3において、カソードの界面に散乱層の位置した素子が、そうでない素子に比べて、実験例1と同様に、光抽出効率が約20%増加する結果を示した。
【0207】
光散乱層に使用できるかの可能性を検討するために、ガラス基板の表面特性、ガラス基板上にITO層を形成した後の表面特性、およびガラス基板上のITO層上に化学式3−1の化合物層を形成した後の表面特性を各層の厚さごとにSEM写真で撮影して、
図11A〜
図11Cに示した。化学式3−1の化合物は、厚さに応じて、本明細書に記載の光散乱層の材料として使用できることが分かる。
図11A〜
図11Cにおいて、厚さは、最上層の厚さを意味する。