(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施形態は、ポンプ駆動中の同期電動機において、ポンプ2次側圧力の変化により異常(脱調)を検出するものである。
【0012】
ポンプ2次側圧力を確認し、その変化量が所定値を超えた場合には一度ポンプを停止させ、再起動した後、再度ポンプ2次側圧力を確認し、2次側圧力が所定値に達した場合には脱調していたと判断する。
【0013】
まず、
図1には本発明のポンプシステムの全体構成が示されている。
図1においてポンプケーシング内に羽根車が設けられたポンプ10は電動機20で駆動されている。電動機20は磁極位置センサを備えない同期電動機である。さらに電動機20にはインバータ30が接続されていて、インバータ30が出力電流の周波数を変化させることで、電動機20の回転数を変化させ駆動する。ポンプ10の二次側配管に圧力検出手段11を設け、ポンプ吐出側圧力を検出する。
【0014】
図2にはインバータ30の内部構成が示されている。インバータ30に供給される電源を受ける受電部に交流−直流変換部31が接続され、受電した交流電源は直流電圧に変換される。この直流電圧を直流−交流変換部32で、演算処理部34により指示された周波数の交流電源に再変換する。負荷の回転数を変更する場合には信号入力部33に信号を入力する。入力した信号に応じて演算処理部34で出力する周波数を決定し、直流−交流変換部32にその周波数の交流電源を生成するよう指示を出す。演算処理部34で行なう演算に必要な制御パラメータを記憶部35に予め記憶しておき、演算処理部34は必要に応じて記憶部35のメモリ内容の読み出し、書き込みを行なう。
【0015】
図3には揮発性メモリと不揮発性メモリで構成される記憶部35に記憶される内容を示す。尚、インバータ30の内部に記憶部を持たず、インバータ外部に記憶装置を取り付けて代用しても差し支えない。
【0016】
揮発性メモリの1000番地には異常判定を開始する際の回転数(電動機への指令周波数)HzNを記録する。1001番地には異常判定を開始する際のポンプ2次側の圧力(吐出側圧力)HNを記録する。1002番地の制御パラメータは第1の実施形態では使用しない。1003番地には異常判定処理を行なう周期を設定するタイマの残り時間TN1を記憶し、1004番地には異常の発生頻度を確認するためのタイマの残り時間TN2を記憶する。1005番地には異常判定を行なった結果、再始動を実施した回数CNを記憶する。1006番地から1009番地の制御パラメータは本発明の第1の実施形態では使用しない。1010番地には、当初のポンプ2次側の圧力(吐出側圧力)Hmを記憶する。1011番地には、ポンプの再始動時(1回目)の周波数の増加率D1、1012番地には、ポンプの再始動時(2回目以降)の周波数の増加率D2を記憶する。
【0017】
不揮発性メモリの2001番地には異常判定処理において判定に使用するポンプ2次側の圧力基準値HDGを予め記憶しておく。2002番地の制御パラメータは本発明の第1の実施形態では使用しない。2008番地には異常判定処理を行なう周期TM1を予め記憶しておく。2009番地には異常の発生頻度を確認するためのタイマの設定時間TM2を予め記憶しておく。
【0018】
2010番地には異常判定機能の実行有無を選択するパラメータSLDを予め記憶しておく。ユーザがSLDを0に設定した場合には異常判定処理を行なわず、ユーザがSLDを1に設定した場合には条件が成立した時点で異常判定処理を実行する。3100番地から3215番地の制御パラメータは第1の実施形態では使用しない。
【0019】
7001番地には、再始動実施回数が、予め7002番地に記憶された回数ALEに達した場合に故障信号を出力するか否かを選択するパラメータSLAを予め記憶しておく。8001番地には、異常判定処理にて異常と判断された場合に電動機の再始動を許可するか否かを選択するパラメータSLRを予め記憶しておく。8002番地には自動再始動の許可上限回数RSEを予め記憶しておき、再始動実施回数CNがRSEを超える場合には電動機の再始動を許可せず、電動機を停止させたままとする。
【0020】
本実施形態の場合、7001番地のSLAを1に、7002番地のALEを2に、8001番地のSLRを1に、8002番地のRSEを1に設定するのが良い。偶発的な脱調による羽根車の回転停止に起因する圧力低下の際には、圧力低下が1回だけ起きる。この時は故障信号を発することなくポンプを再始動させ、給水を継続することが出来る。脱調以外の要因、例えば吐出側配管の破損などで吐出側圧力が低下している場合や、ポンプが落水している場合には複数回の圧力低下が起きる。この時は故障信号を出力し、異常を知らせ、ポンプを再始動させることなく停止させることで、ポンプや関連設備の保護を行なうことができる。
【0021】
但し、例えば、異物による脱調等の場合は、脱調であっても繰り返し起こることがある。このような場合も、上記の脱調以外の要因の場合と同様に、ポンプや関連設備の保護を行うために、必要以上にポンプを再始動させることなく停止させる。
【0022】
9001番地には自動給水装置で給水圧力一定となるよう自動運転する場合において、目標とする給水圧力値HSを予め記憶しておき、ポンプ10の二次側配管に設けた圧力検出手段11の検出値がHSと一致するよう回転数を自動制御する。
【0023】
図4にはポンプを一定の速度(一定の回転数、一定周波数)で運転する場合の本発明の第1の実施形態の制御フローが示されている。
【0024】
101ステップにおいて運転を開始した後、102ステップで指定した速度に到達した速度に到達し、その時点の吐出側圧力値Hmを揮発性メモリ1010番地に記憶する。(103ステップ)104ステップで脱調判定機能の選択確認処理を行なう。脱調判定機能が選択されている場合は以下のステップを行う。105ステップで不揮発性メモリ2008番地に予め記憶しておいた異常判定の周期用タイマTM1の設定値を、揮発性メモリ1003番地のタイマ1の残り時間TN1に記憶し、TN1のカウントダウンを開始する。109ステップでタイマTN1のカウントが終了していない場合はタイマTN1のカウント終了を待ち109ステップに戻り、タイマTN1のカウントが終了している場合は、134ステップで現在の吐出側圧力を揮発性メモリ1001番地にHNとして記憶する。140ステップでHmとHNの差が不揮発性メモリ2001番地に予め記憶しておいたHDG未満であるか否か判断する。
【0025】
HmとHNの差がHDG未満である場合は、160ステップで正常と判断して、165ステップで揮発性メモリ1005番地の再始動実施回数CNを0にする。181ステップでタイマのカウントを再開して、109ステップに戻る。
【0026】
HmとHNの差が、HDG以上の場合には脱調の可能性があるので異常と判断し、170ステップの異常時処理を行ない、再始動処理が行なわれた後に、180ステップでポンプを再始動させ、181ステップでタイマのカウントを再開して、109ステップに戻る。
図4ではHmは不変としているが、ステップ181の時点で、Hmの値にHNの値をコピーすることで更新してもよい。
【0027】
図12の通り、ポンプがある一定の回転数で運転している状態で脱調が発生すると、ポンプが揚水する能力が失われるため、ポンプの吐出側圧力は大きく低下する。圧力がどの程度まで低下するかはポンプの吸い込み条件(1次側の状態)によって変化するため、吸い込み条件を考慮して吐出側圧力の判断基準値HDGを決めると良い。
【0028】
本発明では、ポンプの吐出側圧力が大きく低下した場合に、ポンプを停止させ再始動を行う。1回目の再始動で正常な状態とならずに吐出側圧力が低下する場合は2回目以降の再始動を行う。ここで、1回目の再始動における同期電動機の回転数を示す指令周波数の増加率は、2回目以降の再始動における指令周波数の増加率よりも小さく設定している。これは、発生した異常が偶発的な脱調である場合は、1回目の再始動で緩やかに指令周波数を増加させることで正常な状態に復帰させることが容易であるからである。1回目の再始動で正常状態に戻った場合は、吐出側圧力は大きく低下した原因は脱調であったと判断できる。図示はしないが、圧力の変化の原因は脱調であるとして、その情報を外部へ出力或いは表示してもよい。
【0029】
一方、1回目の再始動で正常状態に戻らない場合は、空気溜り等が原因の異常である場合があり、この場合は、2回目以降の再始動で指令周波数の増加率を大きくし、再始動を繰り返すことで異物を除くことができる場合がある。
【0030】
図12の例では、1回目の再始動における指令周波数の増加率を2回目の再始動における指令周波数の増加率よりも小さくしたが、2回目の再始動における周波数の増加率を1回目の再始動における周波数の増加率よりも小さくすることも可能である。例えば、偶発的な脱調が原因であっても、周波数の増加率が大きい再始動とすることで、早く正常状態に戻すことができる。2回目以降は、偶発的な脱調について1回目の再始動での正常状態への復帰が失敗したときのために、予備的に緩やかな指令周波数の増加率としておくことも考えられる。
【0031】
図5には170ステップの異常時処理の詳細が示されている。300ステップで異常と判断した後、301ステップで現在の再始動実施回数を更新し、揮発性メモリ1005番地の記憶値に1を加え、302ステップでポンプを停止させる。303ステップで不揮発性メモリ7001番地に予め記憶しておいた故障信号の出力有無を選択するパラメータSLAを確認し、SLAが0に設定されている場合には306ステップで故障信号の出力なしとして306ステップに進む。SLAが1に設定されている場合には、304ステップで不揮発性メモリ7002番地に予め記憶しておいた故障信号を出力開始する異常検出回数ALEと、揮発性メモリ1005番地に記憶されている現在の再始動実施回数CNを比較し、ALEがCN以上である場合には305ステップで故障信号を出力する。ALEがCN未満である場合には306ステップで故障信号の出力なしとして307ステップに進む。
【0032】
307ステップで再始動の許可を確認する。再始動許可の条件は再始動実施回数や頻度、或いは機器の特性や使用用途によって変えるのが望ましい。不揮発性メモリ8001番地に予め記憶しておいた自動再始動の許可を選択するパラメータSLRを確認し、再始動を許可する場合は308ステップに進み、許可しない場合には309ステップに進みリセット指示の入力を待つ。308ステップで、異常の検出回数が1回以下の場合は、310ステップで不揮発性メモリ1011番地に予め記憶しておいた再始動時の指令周波数の増加率をD1に設定する。異常の検出回数が2回以上の場合は、311ステップで不揮発性メモリ1012番地に予め記憶しておいた再始動時の指令周波数の増加率をD2に設定する。
【0033】
また、
図5には記載しないが、自動再始動の許可上限回数RSEと、揮発性メモリ1005番地に記憶されている現在の再始動実施回数CNを比較し、RSEがCNを超過する場合には手動操作にてリセット指示してもよい。
【0034】
再始動許可の条件に頻度を加える場合には、異常を検出した時点で不揮発性メモリ2009番地に予め記憶しておいた異常頻度の確認用タイマTM2の設定値を、揮発性メモリ1004番地のタイマ2残り時間TN2に記憶し、TN2をカウントダウンする。TN2が0になる前に、再び異常を検出した場合には再起動を許可しないという条件を加えれば良い。例えばTN2を1時間と設定すれば、1時間以内に2回異常を検出した場合は、その原因は、偶発的な脱調ではなく、外部要因によるものと推定することができる。
【0035】
図6には自動給水装置で給水圧力一定となるよう自動運転する場合の本発明の制御フローが示されている。
【0036】
100ステップにおいて吐出側圧力の低下を検出すると101ステップにおいて運転を開始した後、102ステップで指定した速度に到達する。104ステップで脱調判定機能の選択確認処理を行なう。脱調判定機能の選択が確認された場合は、130ステップで現在の吐出側圧力が不揮発性メモリ9001番地に予め記憶しておいた目標圧力HSより高いか判断する。現在の吐出側圧力が目標圧力HSより高い場合には131ステップで減速の指示を行なう。減速の指示が行なわれると132ステップで出力周波数を変更する。逆に現在の吐出側圧力が目標圧力HSより低い場合には133ステップで加速の指示を行なう。加速の指示が行なわれると、135ステップで出力周波数を変更する。
【0037】
次に、105ステップで不揮発性メモリ2008番地に予め記憶しておいた脱調判定の周期用タイマTM1の設定値を、揮発性メモリ1003番地のタイマ1残り時間TN1に記憶し、TN1のカウントダウンを開始する。109ステップでTN1のカウントダウンの終了を確認した後に、134ステップで現在の吐出側圧力HNを保存し、142ステップでHNと目標圧力HSの差がHDG未満であるか否か判断する。
【0038】
吐出側圧力HNとHSの差がHDG未満である場合は、160ステップで正常と判断して、165ステップで揮発性メモリ1005番地の再起動実施回数CNを0にする。そして130ステップに戻る。
【0039】
吐出側圧力とHSの差が、HDG以上の場合には脱調の可能性ありと判断し、170ステップの異常時処理を行ない、再始動処理が行なわれた後に、180ステップでポンプを再始動させ、130ステップに戻る。
【0040】
170ステップの異常時処理はポンプを一定の速度(一定の回転数、一定周波数)で運転する場合と同様の制御フロー(
図5)となるため、説明を割愛する。
【0041】
本発明の第2の実施形態は、ポンプ駆動中の同期電動機において、ポンプ2次側圧力の変化と負荷電流値の変化により脱調を検出するものである。
【0042】
ポンプ2次側圧力が低下した場合に、ポンプ負荷電流値が一定値を超えない場合には脱調している可能性があると判断し、電動機を再起動することで再び正常な運転を開始する。構造は第1の実施形態と同じく
図1、
図2の構成となる。
【0043】
図3には記憶部に記憶する、揮発性メモリの内容と不揮発性メモリの内容を示す。 メモリの内容は第1の実施形態と同様であるが、本実施形態においては、1002番地には脱調判定を開始する際のポンプ2次側の負荷電流値ANを記録する。
【0044】
図7にはポンプを一定の速度(一定の回転数、一定周波数)で運転する場合の本実施形態の制御フローが示されている。
【0045】
101ステップにおいて運転を開始する。102ステップで指定した速度に到達した後、103ステップで当初の吐出側圧力Hmを揮発性メモリの1010番地に保存する。104ステップで脱調判定機能の選択確認処理を行なう。脱調判定機能が選択されている場合は、105ステップでタイマのカウントを開始する。109ステップでタイマカウントが終了したことを確認し、ステップ106で現在の吐出側圧力を揮発性メモリ1001番地にHNとして記憶する。さらに107ステップで現在の負荷電流値を揮発性メモリ1002番地にANとして記憶する。
【0046】
図13に示すように、脱調している状態においても電動機には誘起電圧分の電流が流れ、正常回転状態での値とほぼ同等の電流が流れる。脱調が発生すると、ポンプが揚水する能力が失われるため、ポンプの吐出側圧力は大きく低下するが、負荷電流値は大きく変わらない。
【0047】
図14に一般的なポンプ特性が示されている。ある任意の周波数HzNで運転している場合、吐き出し流量Qaにおいて吐出側圧力はHaとなり、負荷電流値はAaとなる。ここで、吐き出し流量がQaからQbに増加した場合、吐出側圧力はHbに減り、負荷電流値はAbに増加する。吐出側圧力が減少すると、負荷電流値は増加するという関係が読み取れる。
【0048】
よって、143ステップでHN−HmがHDG以上である場合、160ステップで正常と判断して、105ステップに戻る。
【0049】
HN−HmがHDG未満である場合は、144ステップで現在の負荷電流値がAN+ADG以上であるか判断し、AN+ADG以上である場合には161ステップで正常と判断して、105ステップに戻る。
【0050】
AN+ADG未満である場合には脱調と判断し、170ステップの異常時処理を行ない、再始動処理が行なわれた後に、180ステップでポンプを再始動させ、105ステップに戻る。
図13の状態において、脱調であることを早く検出し、再始動を早く行うことで、圧力が大きく低下する前に、正常な状態へ復帰することができる。これにより、脱調による給水への影響を最小限にすることができる。170ステップの異常時処理は、第1の実施形態と同様であり
図5に示される。
【0051】
図8には自動給水装置で給水圧力一定となるよう自動運転する場合の本発明の制御フローが示されている。
【0052】
100ステップにおいて吐出側圧力の低下を検出すると101ステップにおいて運転を開始する。103ステップで指定した速度に到達した後、104ステップで脱調判定機能の選択確認処理を行なう。脱調判定機能の選択確認処理の後、107ステップで現在の負荷電流値を揮発性メモリ1002番地にANとして記憶する。130ステップで吐出側圧力が不揮発性メモリ9001番地に予め記憶しておいた目標圧力HSより高いか判断する。吐出側圧力が目標圧力HSより高い場合には131ステップで減速の指示を行なう。減速の指示が行なわれると132ステップで出力周波数を変更する。逆に吐出側圧力が目標圧力HSより低い場合には133ステップで加速の指示を行なう。加速の指示が行なわれると、134ステップで現在の吐出側圧力を揮発性メモリ1001番地にHNとして記憶した後、135ステップで出力周波数を変更する。
【0053】
指示した速度に到達した場合は、143ステップに進む。以下、143ステップ以降は、ポンプを一定の速度(一定の回転数、一定周波数)で運転する場合(
図7)と同様の制御フローとなるため、説明を割愛する。
【0054】
第2の実施形態では、吐出側圧力と負荷電流値を組み合せることによって、より正確に脱調の検出が可能となる。
【0055】
次に本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、ポンプの特性データを記憶部に記憶しておき、ポンプ運転中の運転周波数(指令周波数)における吐出側圧力、または負荷電流値が、特性データより算出された値と一致するか否かを比較することにより脱調を検出するものである。
【0056】
ポンプの特性データより算出された吐出側圧力と検出された吐出側圧力、またはポンプの特性データより算出された負荷電流値と検出された負荷電流値の差が判定基準値を超過する場合には異常と判断し、電動機を再始動することで再び正常な運転を開始する。
【0057】
まず、構造は第1の実施形態と同じく
図1、
図2の構成となる。
図3には記憶部に記憶する、揮発性メモリの内容と不揮発性メモリの内容を示す。
【0058】
揮発性メモリの1006番地にはポンプ特性計算処理によって求めた計算上の吐出側圧力HCを記憶する。同じように1007番地にはポンプ特性計算処理によって求めた計算上の負荷電流値ACを記憶する。1008番地にはポンプ特性計算処理によって求めた計算上の流量QCを記憶する。1009番地にはポンプ特性計算処理で求めた結果と実際の検出値の差が判定基準値以内であるか否かを判断して結果を記憶する。算出値と検出値が一致する場合は0を記憶し、算出値と検出値が一致しない場合には1を記憶する。
【0059】
不揮発性メモリの3100番地から3215番地にはポンプ特性データを記録する。ポンプのある任意の周波数(3115番地に記録)での運転における測定点1における揚程(3100番地に記録)、流量(3101番地に記録)、電流(3102番地に記録)、測定点2における揚程(3103番地に記録)、流量(3104番地に記録)、電流(3105番地に記録)、と同様に測定点3、測定点4における揚程、流量、電流、測定点5における揚程(3112番地に記録)、流量(3113番地に記録)、電流(3114番地に記録)、を予め不揮発性メモリに記憶する。3100番地から3215番地に記憶するポンプ特性データの関係を図に示すと
図15の通りとなる。
【0060】
ポンプ特性データは1組でも良いが、ポンプ特性計算処理において現在の周波数と予め記録されたポンプ特性データの周波数は近い方が良いため、他の周波数(3215番地に記録)での測定点1〜5における揚程、流量、電流を記憶するとより良い。周波数は2つではなく、3つ以上の周波数とそれに対応するデータを保存するとさらに良いことは言うまでもない。
【0061】
その他の使用する揮発性メモリ、不揮発性メモリの内容は第1、第2の実施形態と同様であるため、説明を割愛する。
【0062】
図9には自動給水装置で給水圧力一定となるよう自動運転する場合の本発明の制御フローが示されている。
【0063】
100ステップにおいて吐出側圧力の低下を検出すると101ステップにおいて運転を開始する。103ステップで指定した速度に到達した後、104ステップで脱調判定機能の選択確認処理を行なう。その後、130ステップで吐出側圧力が不揮発性メモリ9001番地に予め記憶しておいた目標圧力HSより高いか判断する。吐出側圧力が目標圧力HSより高い場合には131ステップで減速の指示を行なう。減速の指示が行なわれると132ステップで出力周波数を変更する。逆に吐出側圧力が目標圧力HSより低い場合には133ステップで加速の指示を行なう。加速の指示が行なわれると135ステップで出力周波数を変更する。
【0064】
151ステップで現在の吐出側圧力を揮発性メモリ1001番地にHNとして記憶した後、152ステップで現在の負荷電流値を揮発性メモリ1002番地にANとして記憶する。153ステップで現在の指令周波数を揮発性メモリ1000番地にHzNとして記憶した後、154ステップでポンプ特性計算処理を行なう。
【0065】
155ステップで現在の出力(検出値)と計算結果(算出値)が一致するか判断する。一致する場合(揮発性メモリ1009番地に記憶された値CSが0である場合)は160ステップで正常と判断して、103ステップに戻る。現在の出力(検出値)と計算結果(算出値)が一致しない場合(CSが1である場合)は、脱調と判断し、170ステップの異常時処理を行ない、再始動処理が行なわれた後に、180ステップでポンプを再始動させ、103ステップに戻る。
【0066】
170ステップの異常時処理はこれまでと同様であるため、説明を割愛する。
【0067】
図10には154ステップのポンプ特性計算処理の詳細(例1)が示されている。
【0068】
400ステップで揮発性メモリ1000番地からHzNを、1001番地からHNを、1002番地からANを読み出す。
【0069】
詳細は後に記述するが、401ステップでHzNと不揮発性メモリ3100番地から3215番地に予め記録されている特性データから、現在の指令周波数HzNにおけるポンプ特性カーブを算出する。
【0070】
411ステップで算出したポンプ特性カーブと現在の吐出側圧力HNから、現在の流量QCを算出する。412ステップで算出した流量QCと現在の指令周波数HzNから、その流量QCにおける計算上の負荷電流値ACを求める。413ステップで、現在の負荷電流値ANと、計算上の負荷電流値ACの差が、不揮発性メモリ2002番地に予め保存したADGより小さいか確認し、ANとACの差がADG以内である場合には431ステップで現在の出力は計算結果と一致しているとし、揮発性メモリ1009番地の計算結果との比較CSに0を記憶する。ANとACの差がADGを超える場合には、432ステップで現在の出力と計算結果は不一致であるとし、CSに1を記憶する。処理終了後に155ステップに進む。
【0071】
図11には154ステップのポンプ特性計算処理の他の例(例2)が示されている。
図10(例1)では411ステップで吐出側圧力から流量QCを算出し、412ステップで負荷電流値ACを算出し、413ステップで現在の負荷電流値ANと、計算上の負荷電流値ACを比較する。
それに対し、
図11(例2)では421ステップで負荷電流値から流量QCを算出し、422ステップで吐出側圧力HCを算出し、413ステップで現在の吐出側圧力HNと、計算上の吐出側圧力HCを比較する。
【0072】
ポンプ特性計算処理について、さらに詳しく説明する。記憶部に予め記録された各々の周波数における流量と吐出側圧力、負荷電流値と現在の吐出側圧力HNまたは負荷電流値ANから現在のポンプ運転状態を計算する。
【0073】
まず、現在の指令周波数HzNと一致する周波数のポンプ特性データが存在するか確認する。存在しない場合には指令周波数HzNに最も近い周波数における性能データよりポンプ性能の近似計算を行なう(
図10または
図11の400ステップに該当)。ポンプ性能は周波数に対して流量は1次関数で比例し、吐出側圧力は2次関数で比例し、電流値は3次関数で比例する。これより指令周波数HzNに近い予め記憶された周波数のポンプ特性の各データより相似則で現在の指令周波数HzNにおける運転時のポンプ特性データを算出する。
【0074】
まず式1、式2、式3より相似則計算に用いる係数FC1、FC2、FC3を
FC1=(F1÷FC) ・・・式1
FC2=(F1÷FC)
2 ・・・式2
FC3=(F1÷FC)
3 ・・・式3
と求める。
【0075】
例えば現在の指令周波数HzNに対して最も近い周波数データが3115番地に記録されたHz1であれば、周波数Hz1で測定した揚程に関する性能データH11、H12、H13、H14、H15(3100、3103、…、3112番地に記録されている)に、それぞれFC1を乗じてHC1、HC2、HC3、HC4、HC5とする。同様に、流量に関する性能データQ11、Q12、Q13、Q14、Q15(3101、3104、…、3113番地に記録されている)に、それぞれFC2を乗じてQC1、QC2、QC3、QC4、QC5とする。さらに、電流に関する性能データA11、A12、A13、A14、A15(3102、3105、…、3114番地に記録されている)に、それぞれFC3を乗じてAC1、AC2、AC3、AC4、AC5とする。
【0076】
近似は、例えばニュートンの補完法や、ラグランジュの補完多項式より求められる。ニュートンの補間法を用いた場合、吐き出し流量に対する吐出側圧力の特性曲線:QHカーブ(Hi(Qi))は、
C0 = HC1
C1 =(HC2 − HC1)÷(QC2−QC1)
C2’ =(HC3 − HC1)÷(QC3−QC1)
C2 =(C2’ − HC2)÷(QC3−QC2)
C3’’ =(HC4 − HC1)÷(QC4−QC1)
C3’ =(C3’’− HC2)÷(QC4−QC2)
C3 =(C3’ − HC3)÷(QC4−QC3)
C4’’’=(HC5 − HC1)÷(QC5−QC1)
C4’’ =(C4’’’−HC2)÷(QC5−QC2)
C4’ =(C4’’− HC3)÷(QC5−QC3)
C4 =(C4’ − HC4)÷(QC5−QC4)
とすると、
Hi(Qi)
=C0
+C1×(Qi−QC1)
+C2×(Qi−QC1)×(Qi−QN2)
+C3×(Qi−QC1)×(Qi−QN2)×(Qi−QC3)
+C4×(Qi−QC1)×(Qi−QC2)×(Qi−QC3)×(Qi−QC4)
・・・式4
と求められる。
【0077】
同様に吐き出し流量に対する負荷電流値の特性曲線:QAカーブ(Ai(Qi))は、
C5 = AC1
C6 =(AC2 − AC1)÷(QC2−QC1)
C7’ =(AC3 − AC1)÷(QC3−QC1)
C7 =(C7’ − AC2)÷(QC3−QC2)
C8’’ =(AC4 − AC1)÷(QC4−QC1)
C8’ =(C8’’− AC2)÷(QC4−QC2)
C8 =(C8’ − AC3)÷(QC4−QC3)
C9’’’=(AC5 − AC1)÷(QC5−QC1)
C9’’ =(C9’’’−AC2)÷(QC5−QC2)
C9’ =(C9’’− AC3)÷(QC5−QC3)
C9 =(C9’ − AC4)÷(QC5−QC4)
とすると、
Ai(Qi)
=C5
+C6×(Qi−QC1)
+C7×(Qi−QC1)×(Qi−QN2)
+C8×(Qi−QC1)×(Qi−QN2)×(Qi−QC3)
+C9×(Qi−QC1)×(Qi−QC2)×(Qi−QC3)×(Qi−QC4)
・・・式5
と求められる(式4が
図10の401ステップ、式5が
図11の401ステップに該当する)。QHカーブ(Hi(Qi))と、QAカーブ(Ai(Qi))を図に示すと
図16のようになる。
【0078】
4次式の解法は困難である為、例えば代入法を用い、式5より指令周波数HzNにおいて負荷電流値がACである場合の流量QCが求められ(
図11の421ステップに該当する)、また、式4より指令周波数HzNにおいて流量がQCである場合の吐出側圧力HCを得られる(
図11の422ステップに該当する)。
【0079】
このように指令周波数HzNに最も近いポンプ特性データよりQHカーブ、QAカーブを近似で求めることから、予め測定し、記憶しておくポンプ特性データは周波数毎に5点ほどある事が望ましい。
【0080】
前述の通り、予め測定し、記憶しておくポンプ特性データの周波数は1つであっても構わないが、QHカーブ、QAカーブはポンプの相似則に完全には一致しないため、複数の運転周波数における特性データを保存し、その特性データの中から現在の運転周波数に最も近いデータを選択し、前述の特性データ計算処理を行なうことで、QHカーブ、QAカーブをより正確に求め、結果として現在のポンプ運転状態を正確に把握することができる。
【0081】
第1及び第2の実施形態では、予めポンプ特性データを記憶する必要がないため簡易であり、運転中での変化に基づいて脱調判定を行なうため、経年劣化によるポンプの特性の変化にも影響されることがない点で優れているが、第3の実施形態では、上記のように予め測定し、記憶したポンプ特性データと実際の運転状態を比較することにより、正確に短時間で異常を検出することができる点で優れている。