(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0020】
以下図面を用いて本願について説明する。なお、各図における共通の構成については同一の参照番号を付してある。また、本願は図示例に限定されるものではない。
【0021】
本願による電力変換装置の実施例1における形態を以下に図を用いて説明する。
【0022】
図1は、本実施例における電力変換装置13の概略構成図である。
【0023】
任意の入力電源として交流電源を用いる場合を想定しており、1は交流電力を直流電力に変換する順変換器、2は直流中間回路にある平滑用コンデンサ、3は直流電力を任意の周波数の交流電力に変換する逆変換器、4は誘導電動機である。
【0024】
6は順変換器及び逆変換器内のパワーモジュールを冷却するための冷却ファン、7は電力変換装置の各種制御データを設定、変更、異常状態及びモニタ表示が行えるデジタル操作パネルである。
【0025】
5は逆変換器のスイッチング素子を制御すると共に、電力変換装置全体の制御を司る働きをするもので、マイコン(制御演算装置)が搭載された制御回路であり、デジタル操作パネル7から入力される各種の制御データに応じて必要な制御処理が行なえるように構成する。
【0026】
CTは電流検出器であり、誘導電動機のU相、W相の線電流を検出する。V相の線電流は、交流条件(iu+iv+iw=0)から、iv=−(iu+iw)として求められる。
【0027】
もちろん、CTを3個使用し、各U相、V相、W相の線電流を検出してもよい。
【0028】
制御回路5は、デジタル操作パネル7によって入力される各種の制御データに基づいて逆変換器3のスイッチング素子を制御する他、装置全体に必要な制御処理を行う。
【0029】
内部構成は省略するが、各種の制御データが格納された記憶部の記憶データからの情報に基づいて演算を行うマイコン(制御演算装置)が搭載されている。
【0030】
8は逆変換器のスイッチング素子を駆動し、スイッチング素子に異常があれば、デジタル操作パネル7にその異常を表示する。
【0031】
また、ゲートドライブ回路8内にはスイッチングレギュレータ回路(DC/DCコンバータ)が搭載されており、電力変換装置の運転に必要な各直流電圧を生成し、これらを各構成に対して供給する。
【0032】
9は有効電流成分検出回路と有効電流比較回路とで構成され、10は電流検出回路、11は有効電流成分・無効電流成分検出回路と力率演算・比較回路で構成され、12はベクトル制御回路である。13は順変換器及び逆変換器などから構成された電力変換装置である。逆変換器3内には、代表的なワイドバンドギャップ半導体素子としてのSiC−MOSFETが搭載されている。
【0033】
電力変換装置の各種制御データは、操作パネル7から設定及び変更が可能である。操作パネル7には異常表示が可能な表示部が設けられており、電力変換装置における異常が検出されると当該表示部に表示される。
【0034】
本実施例の操作パネル7としては、特に種類が限られるものではないが、デジタル操作パネルとして装置使用者の操作性を考慮して表示部の表示を見ながら操作が行えるように構成する。
【0035】
なお、表示部は必ずしも操作パネル7と一体に構成する必要はないが、操作パネル7の操作者が、表示を見ながら操作できるように一体構成とすることが望ましい。
【0036】
操作パネル7から入力された電力変換装置の各種制御データは図示しない記憶部に格納される。
【0037】
また、入力電源として、交流電源ではなく、直流電源を供給する場合には、直流端子P(+)側に直流電源の(+)側を接続し、直流端子N(−)側に直流電源の−側を接続すればよい。さらには、交流端子RとSとTを接続し、この接続点に直流電源の(+)側を接続し、直流端子N(−)側に直流電源の(−)側を接続してもよいし、逆に、直流端子P(+)側に直流電源の(+)側を接続し、交流端子RとSとTを接続し、この接続点に直流電源の(−)側を接続してもよい。
【実施例2】
【0038】
図2(a)は、本願に係る電力変換装置のセンサレスベクトル制御のブロック図(第一の形態)である。(a)における電流検出回路とゲートドライブ回路は、
図1に示した電流検出回路10とゲートドライブ回路8に対応しており、
図2のその他の各構成は
図1の制御回路5内におけるベクトル制御回路12の詳細構成である。
【0039】
センサレスベクトル制御は、誘導電動機の直流機化制御と称されるものであり、誘導電動機における一次側抵抗などの電気定数値はセンサレスベクトル制御を実行する上で必須の電気定数値であるため、一般的には、電力変換装置内部のメモリー(図示せず)に前もって格納されている。また、オートチューニング機能により、誘導電動機における一次側抵抗などの電気定数値を実測してもよい。
【0040】
つまり、電力変換装置内部のメモリーに前もって格納されている値を使用するか、あるいは、オートチューニング機能で実測した値を使用するかは電力変換装置のユーザが決めればよい。
電流検出器CTで誘導電動機の線電流を検出し、dq軸変換部で検出した電流を直交したdq軸に変換し、励磁電流成分Idとトルク電流成分Iqに分解する。
【0041】
dq軸変換部は、
図2(c)に示したように、検出した電流(一次電流)i1を励磁電流成分Idとそれに直交したトルク電流成分Iqにベクトル分解(i1=Id+jIq)する。
【0042】
この場合、誘導電動機において、トルク電流成分Iqが正(Iq>0)の場合を電動モードとすれば、トルク電流成分Iqが負(Iq<0)の場合は、回生モードであることがわかる。すなわち、トルク電流成分Iqの符号で、誘導電動機が電動状態(電動機)か、回生状態(発電機)か、を判断することができる。
【0043】
IqがIqrより小さい場合には、交流機が無負荷状態に近いと判断してゲートドライブ回路のゲート抵抗を大きくし、IqがIqrより大きい場合には、交流機が負荷状態と判断してゲートドライブ回路のゲート抵抗を小さくする。
【0044】
もちろん、検出したトルク電流成分Iqの代わりにトルク電流指令Iq
*を使用してもよい。
【0045】
もちろん、直交したdq軸は仮想軸であるため、dq軸の名前(d軸、q軸)を限定するものではなく、αβ軸であっても、各々の軸が直交したものであればよい。すなわち、励磁電流成分Idとトルク電流成分Iqを、励磁電流成分Iαとトルク電流成分Iβとしても本願の意図は変わらない。
【実施例3】
【0046】
図2(b)は、本願に係る電力変換装置のセンサ付ベクトル制御のブロック図(第二の形態)である。
【0047】
(a)と共通の構成および同一の機能については、同一の参照番号を付してある。
(a)と異なる点は、誘導電動機の速度を検出する手段として、速度推定器を用いないで、速度検出器SSにより実速度frを検出する点である。
【0048】
(a)と(b)において、トルク電流比較回路は、検出されたトルク電流成分Iqと予め設定されたトルク電流基準値Iqrを比較する。IqがIqrより小さい場合には、交流機が無負荷状態に近いと判断してゲートドライブ回路のゲート抵抗を大きくし、IqがIqrより大きい場合には、交流機が負荷状態と判断してゲートドライブ回路のゲート抵抗を小さくする。
【0049】
もちろん、検出したトルク電流成分Iqの代わりにトルク電流指令Iq
*を使用してもよい。
【0050】
図3は、誘導電動機の有効電流を検出するタイミング図である。
【0051】
誘導電動機の一次側に流れる一次電流i1は、下記のように表される。
【0052】
i1=I1(r)+j{I1(i)}
すなわち、一次電流i1は有効電流成分I1(r)と無効電流成分I1(i)のベクトル和で表される。
【0053】
ここで、
図3において、例えば、一次側の相電圧Vuと一次側のu相電流iuの力率角がΦであり、
tanΦ=I1(i)/I1(r) ----------------------- 数(1)
あるいは
cosΦ=I1(r)/I1 ---------------------------- 数(2)
あるいは
cosΦ=I1(r)/[{I1(r)}
2+{I1(i)}
2]
1/2 - 数(3)
で表される。
【0054】
この場合、誘導電動機において、有効電流成分I1(r)が正{I1(r)>0}の場合を電動モードとすれば、有効電流成分I1(r)が負{I1(r)<0}の場合は、回生モードであることがわかる。すなわち、有効電流成分I1(r)の符号で、誘導電動機が電動状態(電動機)か、回生状態(発電機)か、を判断することもできる。
【0055】
あるいは、力率角Φが0°〜90°の場合は電動モードであり、力率角Φが90°〜180°の場合は回生モードである。すなわち、力率角Φにより、誘導電動機が電動状態(電動機)か、回生状態(発電機)か、を判断することができる。
【0056】
一次側のu相電流iuにおいて、その有効電流成分Iu(r)は、当然相電圧Vuと同相であり、その無効電流成分Iu(i)は、当然相電圧Vuに対しπ/2(90°)遅れた位相状態になる。この関係は、誘導電動機の負荷の状態によらない。つまり、誘導電動機あるいは誘導発電機が無負荷の状態であろうと有負荷の状態であろうと、この関係は常に成立している。
【0057】
すなわち、相電圧Vuを基準に、π/2(90°)と3π/2(270°)の時点の電流が有効電流成分Iu(r)の±のピーク値であり、0(0°)とπ(180°)の時点の電流が無効電流成分Iu(i)の±のピーク値を示している。
【0058】
すなわち、相電圧Vuを基準にして、下記位相のサンプリング時点は、各々u相の有効電流成分とu相の無効電流成分を表している。
【0059】
・π/2と3π/2時点:Iu(i)=0→u相の有効電流成分Iu(r)
・0とπの時点:Iu(r)=0→u相の無効電流成分Iu(i)
各々の位相差が120°である三相交流の場合、v相電流ivは、u相電流iuに対し2π/3(120°)位相が遅れた状態であり、w相電流iwは、u相電流iuに対し4π/3(240°)位相が遅れた状態にある。このため、相電圧Vuを基準に考えれば、下記位相のサンプリング時点は、各々v相の有効電流成分とv相の無効電流成分を表している。
【0060】
・π/6と7π/6時点:Iv(i)=0→v相の有効電流成分Iv(r)
・2π/3と5π/3の時点:Iv(r)=0→v相の無効電流成分Iv(i)
さらに、相電圧Vuを基準に考えれば、下記位相のサンプリング時点は、各々w相の有効電流成分とw相の無効電流成分を表している。
【0061】
・5π/6と11π/6時点:Iw(i)=0→w相の有効電流成分Iw(r)
・π/3と4π/3の時点:Iw(r)=0→w相の無効電流成分Iw(i)
すなわち、相電圧Vuを基準に、0(0°)とπ(180°)の時点θuiにおける一次側のu相電流をサンプリング検出すれば、u相の無効電流成分Iu(i)を検出でき、2π/3(120°)と5π/3(300°)の時点θviにおける一次側のv相電流をサンプリング検出すればv相の無効電流成分Iv(i)を検出でき、π/3(60°)と4π/3(240°)の時点θwiにおける一次側のw相電流をサンプリング検出すればw相の無効電流成分Iw(i)を検出できることは明らかである。
【0062】
このように、u相の相電圧Vuを基準に特定の位相における電流を検出すれば無効電流成分が検出可能であることの原理について説明したが、もちろん、v相の相電圧Vvを基準にしても、w相の相電圧Vwを基準にしてもよい。
【0063】
また、相電圧Vuと相電圧Vvと相電圧Vwを基準にしても、基準とする相電圧によりサンプリングする特定の位相が異なるのみで、サンプリングする特定の位相点を間違わなければ、無効電流成分の±のピーク値は同じ値となることは自明である。
【0064】
すなわち、u相の相電圧Vuを基準に特定の位相(θui、θvi、θwi)の近傍における電動機電流を検出すれば、無効電流成分I1(i)を検出することができる。もちろん、全ての特定の位相点であるθuiとθviとθwiの近傍における電動機電流の検出に限定されるものではなく、特定の位相θuiの近傍のみの時点、あるいは、特定の位相θviの近傍のみの時点、あるいは、特定の位相θwiの近傍のみの時点における電動機電流である無効電流成分I1(i)を検出してもよい。
【0065】
さらには、位相点であるθui、θvi、θwiの内、特定の2つの位相時点(例えば、θuiとθvi)の近傍における電動機電流である無効電流成分I1(i)を検出してもよい。
【0066】
また同様に、相電圧Vuを基準に、π/2(90°)と3π/2(270°)の時点θurにおける一次側のu相電流をサンプリング検出すれば、u相の有効電流成分Iu(r)を検出でき、5π/6(150°)と11π/6(330°)の時点θvrにおける一次側のv相電流をサンプリング検出すればv相の有効電流成分Iv(r)を検出でき、π/6(30°)と7π/6(210°)の時点θwrにおける一次側のw相電流をサンプリング検出すればw相の有効電流成分Iw(r)を検出できる。
【0067】
このように、u相の相電圧Vuを基準に特定の位相における電流を検出すれば有効電流成分が検出可能であることの原理について説明したが、もちろん、v相の相電圧Vvを基準にしても、w相の相電圧Vwを基準にしてもよい。
【0068】
また、相電圧Vuと相電圧Vvと相電圧Vwを基準にしても、基準とする相電圧によりサンプリングする特定の位相が異なるのみで、サンプリングする特定の位相点を間違わなければ、有効電流成分の±のピーク値は同じ値となる。
【0069】
すなわち、u相の相電圧Vuを基準に特定の位相(θur、θvr、θwr)の近傍における電動機電流を検出すれば、有効電流成分I1(r)を検出することができる。もちろん、全ての特定の位相点であるθurとθvrとθwrの近傍における電動機電流の検出に限定されるものではなく、特定の位相θurの近傍のみの時点、あるいは、特定の位相θvrの近傍のみの時点、あるいは、特定の位相θwrの近傍のみの時点における電動機電流である有効電流成分I1(r)を検出してもよい。
【0070】
さらには、位相点であるθur、θvr、θwrの内、特定の2つの位相時点(例えば、θurとθvr)の近傍における電動機電流である有効電流成分I1(r)を検出してもよい。
【実施例4】
【0071】
図4は、本願に係る電力変換装置の有効電流比較回路(第三の形態)である。
【0072】
図4(a)は、交流機の相電流から有効電流成分検出回路で有効電流成分値を検出し、有効電流比較回路で有効電流成分値に基づいてゲート抵抗を変化させるブロック構成図である。回路9は、有効電流成分検出回路と有効電流比較回路とで構成される。
【0073】
電力変換装置に入力された出力周波数指令f1と出力周波数指令に対する出力電圧V
*を電圧演算回路で三相出力相電圧Vu
*、Vv
*、Vw
*を求め、PWM演算結果に従い誘導電動機を速度制御する。
【0074】
すなわち、PWM演算回路における各相の変調波としての交流電圧は下式で表される。
【0075】
・Vu=Vu
*・sin(ω1・t)
・Vv=Vv
*・sin(ω1・t−2π/3)
・Vw=Vw
*・sin(ω1・t−4π/3)
ここで、ω1=2π・f1である。
【0076】
有効電流成分検出回路は、相電流検出回路の検出信号に対し、PWM演算回路のu相の相電圧Vuを基準にした特定の位相(θur、θvr、θwr)の近傍における電動機相電流から、有効電流成分I1(r)を検出する。有効電流比較回路は、検出された有効電流成分値I1(r)と予め設定された有効電流基準値I1rを比較する。
【0077】
I1(r)がI1rより小さい場合には、交流機が無負荷状態に近いと判断してゲートドライブ回路のゲート抵抗を大きくし、I1(r)がI1rより大きい場合には、交流機が負荷状態と判断してゲートドライブ回路のゲート抵抗を小さくする。
【0078】
図4(b)は、交流機の相電流から有効電流成分・無効電流成分検出回路で有効電流成分値と無効電流成分値を検出し、力率演算・比較回路で力率値に基づいてゲート抵抗を変化させるブロック構成図である。(a)に記載したV/fパターン回路と電圧演算回路を図示していないが、同様の構成である。
【0079】
回路11は、有効電流成分・無効電流成分検出回路と力率演算・比較回路で構成する。
【0080】
有効電流成分・無効電流成分検出回路は、相電流検出回路の検出信号に対し、PWM演算回路のu相の相電圧Vuを基準にした特定の位相(θur、θvr、θwr)の近傍における電動機相電流から、有効電流成分I1(r)を検出し、PWM演算回路のu相の相電圧Vuを基準にした特定の位相(θui、θvi、θwi)の近傍における電動機相電流から、無効電流成分I1(i)を検出する。力率演算・比較回路は、検出された有効電流成分値I1(r)と無効電流成分I1(i)と相電流I1から力率cosΦを演算し、予め設定された力率基準値cosΦrを比較する。
【0081】
cosΦがcosΦrより小さい場合には、交流機が無負荷状態に近いと判断してゲートドライブ回路のゲート抵抗を大きくし、cosΦがcosΦrより大きい場合には、交流機が負荷状態と判断してゲートドライブ回路のゲート抵抗を小さくする。すなわち、負荷率に応じてゲート抵抗を可変する。
【0082】
ここで、力率cosΦは、数(1)あるいは数(2)あるいは数(3)で求められる。
【実施例5】
【0083】
図5は、本発明に係る電力変換装置の制御回路とゲートドライブ回路の構成例(第四の形態)である。
【0084】
図1と共通の構成および同一の機能については、やはり同一の参照番号を付してある。
【0085】
制御回路5内の回路9により、検出した有効電流成分値に基づいて、ゲートドライブ回路8にゲート抵抗を変える信号、U相にはUPF、UNF、UPR、UNR、V相にはVPF、VNF、VPR、VNR、W相にはWPF、WNF、WPR、WNRを指令し、各相のスイッチング素子UP、UN、VP、VN、WP、WNを駆動する構成とする。
【実施例6】
【0086】
図6は、本願に係る電力変換装置のゲートドライブ回路(第五の形態)である。
【0087】
図1と共通の構成および同一の機能については、やはり同一の参照番号を付してある。
【0088】
U相上下アームを構成するスイッチング素子としてワイドバンドギャップ半導体素子SiC−MOSFETのUPとUNについて説明する。
【0089】
8UPはU相上アームのゲートドライブ回路、8UNはU相下アームのゲートドライブ回路である。DICは、ドライブ用ICである。Q1はSiC−MOSFETのUP、UNをオンする(以下、順バイアスと呼ぶ)トランジスタで、R1は順バイアス用抵抗である。Q2はSiC−MOSFETのUP、UNをオフする(以下、逆バイアスと呼ぶ)トランジスタで、R2は逆バイアス用抵抗である。ここで、R2は順バイアス時にも逆バイアス時にも導通する抵抗である。
【0090】
PWMUPは相上アームへのPWM信号、PWMUNはU相下アームへのPWM信号、UPFはU相上アームの抵抗可変回路への信号、UNFはU相下アームの抵抗可変回路への信号である。
【0091】
図2(a)、(b)で説明したIqがIqrより小さい場合には、交流機が無負荷状態に近いと判断して、UPFとUNFは抵抗可変回路をオフして、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を大きくし、IqがIqrより大きい場合には、交流機が負荷状態と判断して、UPFとUNFは抵抗可変回路をオンして、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を小さくするように構成する。
【0092】
また同様に、
図4(a)で説明したI1(r)がI1rより小さい場合には、交流機が無負荷状態に近いと判断して、UPFとUNFは抵抗可変回路をオフして、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を大きくし、I1(r)がI1rより大きい場合には、交流機が負荷状態と判断して、UPFとUNFは抵抗可変回路をオンして、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を小さくするように構成する。抵抗可変回路は、例えば、スイッチSWと抵抗RSを直列接続した構成する。このため、UPFが抵抗可変回路をオンするとは、スイッチSWをオンすることであり、オンすれば、図示していない直列抵抗RSと順バイアス抵抗R1が並列接続されるため、合成抵抗RtはR1より小さくなる{Rt=R1*RS/(R1+RS)< R1)。
【0093】
もちろん、スイッチSWの個数と直列抵抗RSの個数を限定するものではなく、また、直列抵抗RSを順バイアス抵抗R1に直列に接続される構成でも本願の意図は変わらない。
【0094】
本例は、I1(r)に基づいて、ゲートドライブ回路8UPと8UNの順バイアス回路のみのゲート抵抗を可変する実施例である。
【0095】
当然、V相とW相にもU相同様に動作する回路構成が施されている。
【実施例7】
【0096】
図7は、本願に係る電力変換装置のゲートドライブ回路(第六の形態)である。
【0097】
図6と共通の構成および同一の機能については、やはり同一の参照番号を付してある。
【0098】
Q1はSiC−MOSFETのUP、UNの順バイアス用トランジスタで、R2は順バイアス用抵抗である。Q2はSiC−MOSFETのUP、UNの逆バイアス用トランジスタで、R3は逆バイアス用抵抗である。ここで、R2は順バイアス時にも逆バイアス時にも導通する抵抗である。
【0099】
図2(a)、(b)で説明したIqがIqrより小さい場合には、交流機が無負荷状態に近いと判断して、UPRとUNRは抵抗可変回路をオフして、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を大きくし、IqがIqrより大きい場合には、交流機が負荷状態と判断して、UPRとUNRは抵抗可変回路をオンして、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を小さくするように構成する。
【0100】
また同様に、
図4(a)で説明したI1(r)がI1rより小さい場合には、交流機が無負荷状態に近いと判断して、UPRとUNRは抵抗可変回路をオフして、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を大きくし、I1(r)がI1rより大きい場合には、交流機が負荷状態と判断して、UPRとUNRは抵抗可変回路をオンして、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を小さくするように構成する。抵抗可変回路は、例えば、スイッチSWと抵抗RSを直列接続した構成する。このため、UPRが抵抗可変回路をオンするとは、スイッチSWをオンすることであり、オンすれば、図示していない直列抵抗RSと順バイアス抵抗R3が並列接続されるため、合成抵抗RtはR3より小さくなる{Rt=R3*RS/(R3+RS)< R3)。
【0101】
もちろん、スイッチSWの個数と直列抵抗RSの個数を限定するものではなく、また、直列抵抗RSを順バイアス抵抗R3に直列に接続される構成でも本願の意図は変わらない。
【0102】
本例は、I1(r)に基づいて、ゲートドライブ回路8UPと8UNの逆バイアス回路のみのゲート抵抗を可変する実施例である。
【0103】
当然、V相とW相にもU相同様に動作する回路構成が施されている。
【実施例8】
【0104】
図8は、本願に係る電力変換装置のゲートドライブ回路(第七の形態)である。
【0105】
図6と共通の構成および同一の機能については、やはり同一の参照番号を付してある。
【0106】
図2(a)、(b)で説明したIqがIqrより小さい場合には、交流機が無負荷状態に近いと判断して、UPFとUNFとUPRとUNRは抵抗可変回路をオフして、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を大きくし、IqがIqrより大きい場合には、交流機が負荷状態と判断して、UPFとUNFとUPRとUNRは抵抗可変回路をオンして、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を小さくするように構成する。
【0107】
また同様に、
図4(a)で説明したI1(r)がI1rより小さい場合には、交流機が無負荷状態に近いと判断して、UPFとUNFとUPRとUNRは抵抗可変回路をオフして、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を大きくし、I1(r)がI1rより大きい場合には、交流機が負荷状態と判断して、UPFとUNFとUPRとUNRは抵抗可変回路をオンして、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を小さくするように構成する。抵抗可変回路は、例えば、スイッチSWと抵抗RSを直列接続した構成する。このため例えば、UPFが抵抗可変回路をオンするとは、スイッチSWをオンすることであり、オンすれば、図示していない直列抵抗RSと順バイアス抵抗R1が並列接続されるため、合成抵抗RtはR1より小さくなる{Rt=R1*RS/(R1+RS)< R1)。また例えば、UNFが抵抗可変回路をオンするとは、スイッチSWをオンすることであり、オンすれば、図示していない直列抵抗RSと順バイアス抵抗R1が並列接続されるため、合成抵抗RtはR3より小さくなる{Rt=R3*RS/(R3+RS)< R3)。
【0108】
もちろん、スイッチSWの個数と直列抵抗RSの個数を限定するものではなく、また、直列抵抗RSを順バイアス抵抗R1に直列に接続される構成でも本願の意図は変わらない。
【0109】
本例は、IqまたはI1(r)またはcosΦに基づいて、ゲートドライブ回路8UPと8UNの順バイアス回路と逆バイアス回路の両ゲート抵抗を可変する実施例である。
【0110】
当然、V相とW相にもU相同様に動作する回路構成が施されている。
【0111】
図9は、本願におけるワイドバンドギャップ半導体素子のdV
DS/dtの波形図である。
【0112】
(a)は、例えば、IqまたはI1(r)またはcosΦに基づいて、ゲートドライブ回路8UPと8UNの順バイアス回路と逆バイアス回路の両ゲート抵抗を可変した実施例であり、UPFとUNFが抵抗可変回路をオンして順バイアス用と逆バイアス用のゲート抵抗を小さくした場合のワイドバンドギャップ半導体素子のdV
DS/dtの波形図である。
【0113】
(b)は、例えば、IqまたはI1(r)またはcosΦに基づいて、ゲートドライブ回路8UPと8UNの順バイアス回路と逆バイアス回路の両ゲート抵抗を可変しない実施例であり、UPFとUNFが抵抗可変回路をオフして順バイアス用と逆バイアス用のゲート抵抗を大きくした場合のワイドバンドギャップ半導体素子のdV
DS/dtの波形図である。
【実施例9】
【0114】
図10は、本願における電力変換装置の他の主回路構成図である。
【0115】
図1と共通の構成および同一の機能については、やはり同一の参照番号を付してある。
【0116】
図1と異なるのは、電流検出器の検出位置である。
【0117】
SH1、SHi、SHdは電流検出用のシャント抵抗器であり、SH1は直流中間回路のN側の電流を検出し、SHiは、逆変換器3を構成する下アームの各スイッチング素子であるU相とV相とW相のIGBTに接続され、SHdは、各スイッチング素子であるIGBTに並列に接続されたダイオードに接続されている。
【0118】
すなわち、電力変換装置の直流母線側に設けられたシャント抵抗器SHiは、各IGBTに流れる合成電流を検出する電流検出器であり、シャント抵抗器SHdは、各IGBTに並列に接続されたダイオードに流れる合成電流を検出する電流検出器である。
【0119】
シャント抵抗SHi、SHdは、U相を構成する下アームのIGBTとダイオードに接続されているが、U相を構成する上アームのIGBTとダイオードに接続して電流を検出してもよい。SH1かSHi、SHdのシャント抵抗器の電圧を検出することにより、電動機の各線電流を間接的に検出することができる。
【0120】
このため、電流検出回路の検出信号に対し、ベクトル制御回路12により求めたIqやPWM演算回路のu相の相電圧Vuを基準にした特定の位相の近傍における電流から、有効電流成分I1(r)と無効電流成分I1(i)を検出し、上記実施例と同様にゲート抵抗を可変できることは自明である。
【実施例10】
【0121】
図11はPMモータの簡易等価回路である。
【0122】
電機子抵抗Ra、電機子インダクタンスLa、電機子電流Ia、速度起電力Eaで構成される。
【0123】
図12は電力変換装置でPMモータを制御する場合のベクトル図である。
【0124】
(a)は磁束一定制御の場合、(b)は弱め界磁制御の場合である。
【0125】
電力変換装置でPMモータを駆動する制御として、装着された磁石により生成された磁束Φmの方向をd軸とし、d軸に直交するq軸(電気的にθ=90°)に電機子電流Iaが流れるように電流のベクトルを制御する。
【0126】
d軸を設定するため磁石により生成された磁束方向を磁極位置センサを使用せずに制御アルゴリズムで推定する。
【0127】
発生トルクは、直流機、交流機を問わず、磁束と電流の外積で表される(T=Φm*I*sinθ)。この場合、T=Φm*I*sin90°=Φm*Iaとなる。
【0128】
この場合においては、電気子電流Iaが
図2で説明したトルク電流成分Iqに相当する。
【0129】
このため、実施例2で説明したと同様に電気子電流成分に基づいて、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を可変する。
【0130】
図13は、本願に係る電力変換装置のPMモータの制御ブロック図(第八の形態)である。
【0131】
図12で説明したように、装着された磁石により生成された磁束Φmの方向をd軸とし、d軸に直交するq軸(電気的にθ=90°)に流れる電流のベクトルを制御する。
【0132】
電流検出器CTでPMモータの線電流を検出し、dq軸変換部で検出した電流を直交したdq軸に変換し、励磁電流成分Idとトルク電流成分Iqに分解する。
磁束Φmの方向に流れるd軸電流指令Id
*=0に設定し、検出した励磁電流成分Idが常に0となるようにd軸電流制御の回路が動作する(
図12(a)のベクトル図に相当)。このように制御すれば、PMモータに流れる電気子電流Iaはトルク電流成分Iqとしてq軸電流制御の回路が動作し制御される。すなわち、PMモータに流れる電気子電流Iaを、モータの発生トルクに比例するトルク電流成分として動作させることができる。
【0133】
弱め界磁領域では、d軸電流指令Id
*<0に設定し、装着された磁石により生成された磁束Φmを減少(Φd=Φm−k*Id)させる(
図12(b)のベクトル図に相当)。磁束Φmを減少させるためには、PMモータに流れる電気子電流Iaの位相を90°以上(θ>90°)に制御すればよい。
【0134】
すなわち、
図2(a)、(b)で説明したIqと同様に、Iaが予め設定されたIarより小さい場合には、交流機が無負荷状態に近いと判断して、UPFとUNFは抵抗可変回路をオフして、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を大きくし、IaがIarより大きい場合には、交流機が負荷状態と判断して、UPFとUNFは抵抗可変回路をオンして、ゲートドライブ回路のゲート抵抗を小さくするように構成する。
【0135】
もちろん、検出した電機子電流Iaの代わりにトルク電流指令Iq
*を使用してもよい。
【0136】
当然、電気子電流成分に基づいて、実施例6で説明したゲートドライブ回路8UPと8UNの順バイアス回路のみのゲート抵抗を可変しても、実施例7で説明したゲートドライブ回路8UPと8UNの逆バイアス回路のみのゲート抵抗を可変しても、実施例8で説明したゲートドライブ回路8UPと8UNの順バイアス回路と逆バイアス回路の両ゲート抵抗を可変してもよい。当然、V相とW相にもU相同様に動作する回路構成が施されている。
【0137】
以上の実施例では、予め設定されたIqr、I1(r)、Iar、cosΦr値が交流機の無負荷に近い状態(負荷率≒0)のレベルで説明したが、交流機の負荷率が例えば70%以下としても本願の意図と効果は同様である。すなわち、予め決定した負荷率に応じてIqr、I1r、Iar、cosΦr値を設定しておけばよい。
【0138】
予め決定したIqr、I1r、Iar、cosΦr値は、事前に温度試験を実施し、Iq値とスイッチング素子の温度上昇値の相関データ、I1(r)値とスイッチング素子の温度上昇値の相関データ、Ia値とスイッチング素子の温度上昇値の相関データ、cosΦ値とスイッチング素子の温度上昇値の相関データから求めておけばよい。例えば、事前の温度試験でIq値が定格トルク電流値Iqrrの70%を超えるとスイッチング素子の温度上昇値が規定値を超える場合には、Iqr=70%と予め決定しておけばよい。I1r、Iar、cosΦr値についても同様に事前の温度試験から予め決定しておけばよい。
【実施例11】
【0139】
図14はトルク電流基準設定値(絶対値)とゲート合成抵抗の相関データ表の一例(第九の形態)である。
【0140】
事前の温度試験で得られたIq値とスイッチング素子の温度上昇値の相関データから、トルク電流基準設定値(絶対値)IA(=Iq/Iqrr)とそれに対応したゲート合成抵抗Rtが予め不揮発性メモリに格納してある。
【0141】
図1に示したデジタル操作パネル7からトルク電流基準設定値(絶対値)IAをユーザが設定する。この設定値IAに対応したゲート合成抵抗Rtを不揮発性メモリから読み出し、当該ゲート合成抵抗値に対応した直列抵抗値RSを選択する。
【0142】
(a)は、個々の設定値IAに対応した個々のゲート合成抵抗Rtを不揮発性メモリに格納した例であり、(b)は、範囲が決められた設定値IAに対応したゲート合成抵抗Rtを不揮発性メモリに格納した例である。
【0143】
電動機の負荷率はユーザが設備との見合いで選定するものであり、必ずしも負荷率100%で運転されるものではない。このため、ユーザが設備の負荷率に応じてゲート抵抗値を自由に選定できることは、まさしくEMC(電磁環境両立性)の観点から有効な方法である。
【0144】
もちろん、事前の温度試験で得られたI1(r)値とスイッチング素子の温度上昇値の相関データから、基準設定値とそれに対応したゲート合成抵抗Rtを予め不揮発性メモリに格納し、デジタル操作パネル7によって基準設定値をユーザが設定することにより、設定値に対応したゲート合成抵抗Rtを不揮発性メモリから読み出し、当該ゲート合成抵抗値に対応した直列抵抗値RSを選択する構成であっても、Ia値とスイッチング素子の温度上昇値の相関データから、基準設定値とそれに対応したゲート合成抵抗Rtを予め不揮発性メモリに格納し、デジタル操作パネル7によって基準設定値をユーザが設定することにより、設定値に対応したゲート合成抵抗Rtを不揮発性メモリから読み出し、当該ゲート合成抵抗値に対応した直列抵抗値RSを選択する構成であっても、cosΦ値とスイッチング素子の温度上昇値の相関データから、基準設定値とそれに対応したゲート合成抵抗Rtを予め不揮発性メモリに格納し、デジタル操作パネル7によって基準設定値をユーザが設定することにより、設定値に対応したゲート合成抵抗Rtを不揮発性メモリから読み出し、当該ゲート合成抵抗値に対応した直列抵抗値RSを選択する構成であっても本願の意図は変わらない。
【0145】
パワー半導体スイッチング素子は、素子に流れる電流が大きくなるに従い同じゲート抵抗値でもそのスイッチングスピードは遅くなる傾向にあり、素子に流れる電流が小さい方がスイッチングスピードは速くノイズレベルは大きいといえる。
【0146】
このため、有効電流またはトルク電流または力率に基づけば電動機が過励磁状態か負荷状態かを適切に判断でき、判断速度も極めて速いため、検出した有効電流またはトルク電流または力率が小さい場合、半導体スイッチング素子のゲートドライブ回路のゲート駆動抵抗値を大きくすることによりスイッチングスピード遅くし、ノイズレベルを低減することができる。
【0147】
以上の実施例で示したように、スイッチングスピードの速いワイドバンドギャップ半導体スイッチング素子を用いて構成した電力変換装置において、電流検出回路で検出したトルク電流成分または有効電流成分に基づいた負荷率に応じて、ゲートドライブ回路のゲート駆動抵抗値を変えてワイドバンドギャップ半導体スイッチング素子のスピードを制御することにより、dV/dtに起因した漏洩電流の抑制およびノイズによる電力変換装置周辺に存在する流量計、圧力計、センサ類の誤動作誘発を防止することができるという効果がある。