(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属製のシート状基材と、前記シート状基材の表面に当該シート状基材の端部が露出するように設けられた表面ゴム層と、当該表面ゴム層と反対側の前記シート状基材の裏面に当該シート状基材を挟んで当該表面ゴム層と対向もしくは略対向するように設けられたプラスチック層とを備え、
前記シート状基材と反対側の前記プラスチック層の表面は、算術平均粗さRaが2.0μm〜20μmの粗さの粗面で、
前記粗面は、梨地模様を有することを特徴とする印刷用ゴムブランケット。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷では、版胴上に作られた印刷画像を版胴からブランケットに転写し、さらにブランケットから被印刷体に転写して印刷する。
【0003】
ブランケットは、例えば基材である金属板と、この基材表面に設けられた樹脂層または表面ゴム層を備えた構造を有する(特許文献1)。また、金属板の裏面にさらにプラスチックシートを設けたブランケットも知られている(特許文献2)。このようなブランケットは、基材である金属板をブランケット胴に巻き込み装着することにより当該ブランケット胴に取り付けられている。
【0004】
このようなブランケットをブランケット胴に装着する際、金属板とブランケット胴との間にプラスチックシートが介在され、金属板がブランケット胴に直接に接触しない構造にできる。このため、金属板およびブランケット胴の傷の発生と、金属板とブランケット胴の間の異種金属接触による錆の発生を抑制することができる。
【0005】
また、前記ブランケットをブランケット胴に巻き込み装着する際、プラスチックシートがブランケット胴に直接に接触し、ブランケットの金属板をブランケット胴に直接に接触させる場合に比べて摩擦係数が上昇し、ブランケットをブランケット胴に正確に装着できないことがある。その結果、使用中にブランケットがずれ、場合によっては、ブランケットが破損すること、またはブランケット胴から引き剥がされるおそれがある。
【0006】
このようなことから、例えばプラスチックシートにタルクまたは潤滑剤で処理してプラスチックシートとブランケット胴との間の摩擦係数を減少させて装着し易くする方法などがある。しかしながら、このような方法は作業の手間が増えるおそれがある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る印刷用ゴムブランケットを詳細に説明する。
【0012】
実施形態に係る印刷用ゴムブランケットは、金属製のシート状基材を備えている。表面ゴム層は、シート状基材の表面に当該シート状基材の端部が露出するように設けられている。プラスチック層は、表面ゴム層と反対側のシート状基材の裏面に当該シート状基材を挟んで当該表面ゴム層と対向もしくは略対向するように設けられている。すなわち、表面ゴム層とプラスチック層はシート状基材の端部を除く領域を挟んで互いに対向もしくは略対向するようにしてシート状基材に設けられている。シート状基材と反対側のプラスチック層の表面は、算術平均粗さRaが2.0μm〜20μmの粗さの粗面であり、当該粗面は梨地模様を有する。
【0013】
金属製のシート状基材は、例えばステンレス鋼(例えばSUS)から作られる。シート状基材は、例えば0.1mm〜0.3mmの厚さであり得る。
【0014】
表面ゴム層とプラスチック層から露出する(突出する)シート状基材の端部は、表面ゴム層とプラスチック層の一側面側に位置する一端部でも、ゴム層とプラスチック層の両側面側に位置する両端部でもよい。シート状基材の端部は、印刷用ゴムブランケットをブランケット胴に固定するために使用される。
【0015】
実施形態において、シート状基材は両端部がゴム層とプラスチック層の両側面から突出している。
【0016】
表面ゴム層は、例えばそれ自身公知の何れかのオフセット印刷用ゴムブランケットの表面ゴム層であり得る。表面ゴム層は、例えば天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレン、ブチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、シリコーンゴムまたはフッ素ゴムなどであり得るが、これに限定されるものではない。また表面ゴム層はエラストマー配合物であってもよく、当該配合物にはそれ自身公知の何れかの繊維質を含んでもよい。表面ゴム層は、例えば、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、補強剤、充填剤、可塑剤などの添加剤を含んでもよい。
【0017】
表面ゴム層は、例えば0.1mm〜1.0mmの厚さを有すればよい。
【0018】
表面ゴム層は、シート状基材に直接に、もしくは一層以上の基布層、一層以上の接着層、一層以上の圧縮層を間に挟んで設けることができる。
【0019】
表面ゴム層、基布層、圧縮層および接着層は、接着剤または接着テープを用いてシート状基材に接着して設けることができる。接着剤または接着テープは、例えば熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル重合体、熱硬化性ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、フェノール樹脂、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリアクリル酸系接着剤またはアクリルPSAなどを挙げることができる。
【0020】
表面ゴム層とシート状基材の間に基布層を含む形態の印刷用ゴムブランケットは、接着剤、基布層および表面ゴム層を含む積層体の外周側面にシール部を設けることによって、印刷用ゴムブランケットの洗浄時に、洗浄液がしみ込んで印刷用ゴムブランケットを膨潤させることを防ぐことが好ましい。
【0021】
基布層としては、例えば織布、不織布を使用することができる。構成材料としては、例えば、綿、毛、麻、絹、レーヨン、キュプラ、アセテート、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、アクリル、アクリレート、ポリイミド、炭素繊維、アラミド繊維、金属繊維またはガラス繊維から選ばれる単一材料または2種類以上の材料を使用することができる。
【0022】
圧縮層と接着層は、例えば、ゴム配合物のシートを加硫させることにより得られる。ゴム配合物に含まれるゴムには、例えば、アクリルニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンゴムまたはブチルゴムなどの非極性ポリマーを用いることができる。ゴム配合物には、ゴム材料の他に、ゴム弾性体を得るための添加剤を含有させても良い。添加剤としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、補強剤、充填剤、可塑剤などを挙げることができる。
【0023】
圧縮層は、スポンジのような多孔質構造か、ソリッド構造にすることができる。多孔質構造の形成方法としては、例えばマイクロカプセルの添加、含侵紙を使う方法、塩の溶出法、発泡剤法などを採用することができる。
【0024】
圧縮層の厚さは、例えば、0.1mm〜1.2mmの厚さにすればよい。
【0025】
シール部は、例えばアクリルニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴムなどから形成することができる。シール部は、例えば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、補強剤、充填剤、可塑剤などの配合剤を含んで良い。
【0026】
プラスチック層は、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、フェノール化合物、ナイロンポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル若しくはポリ酢酸ビニルを含む共重合体、またはエチレン−アクリル酸、エチレン−メタクリル酸共重合体を用いることができる。プラスチック層は、さらにアイオノマー、酸変性ポリマーまたは無水物変性ポリマーを用いることができる。
【0027】
プラスチック層は、約0.02mm〜約0.5mmの厚さを有することが好ましい。
【0028】
表面ゴム層とプラスチック層の位置関係において、略対向とは、表面ゴム層の一側面に対して、対応するプラスチック層の一側面を当該プラスチック層の長手方向に10mm延出または後退して位置することを意味する。
【0029】
プラスチック層のシート状基材と反対側の表面は、算術平均粗さRaが2.0μm〜20μmの粗さの粗面であり、当該粗面は梨地模様を有する。
【0030】
プラスチック層の梨地模様を有する粗面は、例えば砂粒の噴射による研磨加工、エンボス加工などにより形成することができる。
【0031】
梨地模様とは、不規則に並んだ微細な凹凸を無数に有する模様である。
【0032】
プラスチック層の粗面のRa値が20μmを超えると、プラスチック層自身の表面の凹凸形状が印刷面に反映され、印刷不良になるおそれがある。Ra値を2.0μm未満にすると、印刷用ゴムブランケットのプラスチック層をブランケット胴に装着する際、プラスチック層とブランケット胴との間に十分な潤滑性を付与することが困難になり、ブランケット胴への印刷用ゴムブランケットの円滑な装着に支障になるおそれがある。より好ましい算術平均粗さRaは、2.0μm〜10μmである。
【0033】
プラスチック層は、シート状基材に例えば前述した接着剤または接着テープを用いて接着して設けることができる。
【0034】
シート状基材と前記接着剤または接着テープとの間、またはプラスチック層と前記接着剤または接着テープとの間、または両者の間、にプライマーを介しても良い。
【0035】
前記プライマーには、それ自身公知の何れかのプライマーを用いることができる。
【0036】
次に、実施形態に係る印刷用ゴムブランケットを
図1を参照して具体的に説明する。
図1の(a)は、印刷用ゴムブランケットの平面図、
図1の(b)は、
図1の(a)のb−b線に沿う断面図である。
【0037】
印刷用ゴムブランケット1は、例えば長方形の金属製のシート状基材2を備える。表面ゴム層3は、シート状基材2の表面に当該シート状基材2の例えば両端部、すなわち第1の端部2aおよび第2の端部2b、が露出するように接着剤を用いて接着して設けられている。プラスチック層4は、表面ゴム層3と反対側のシート状基材2の裏面に当該シート状基材2の第1の端部2aおよび第2の端部2bが露出するように接着剤を用いて接着して設けられている。すなわち、表面ゴム層3とプラスチック層4は、シート状基材2の第1の端部2aおよび第2の端部2bを除く領域を挟んで互いに対向してシート状基材2に設けられている。つまり、シート状基材2の第1の端部2aおよび第2の端部2bは表面ゴム層3およびプラスチック層4の両側面から水平方向に突出している。当該シート状基材2の突出した第1の端部2aおよび第2の端部2bは、印刷用ゴムブランケット1をブランケット胴に固定するために使用される。
【0038】
シート状基材2の突出した第1の端部2aおよび第2の端部2bを使用して印刷用ゴムブランケット1をブランケット胴の周面に巻き込み装着する際の手順などについて説明するが、これらは何れも1つの例示であり、本発明を制限するものではない。
【0039】
図2(a)は、ブランケットを装着した状態のブランケット胴の1例の正面図である。
図2(b)は、
図2(a)のブランケットにブランケットを装着するときの様子を拡大して示すc−c線に沿う断面図である。
図2(c)は、
図2(b)の状態を経てブランケットが固定された状態を拡大して示すc−c線に沿う断面図である。
【0040】
ブランケット胴100は、有底の円柱形状の胴本体101および胴本体101の端部102a,102bから延出する軸部110a,110bを備える。胴本体101の周面には、胴本体軸に平行して一端から他端の方向に延びるギャップ103が胴本体101内部に向けて開口している(
図2(a))。このギャップ103から胴本体101内部には、ブランケット固定機構130が配置されている。ブランケット固定機構130は、胴本体軸に平行して胴本体101の一端から他端の方向に延び、胴本体101の少なくとも一方の端部で底部を貫通している2本の固定軸120a,120bを備える。胴本体101から露出した固定軸120a,120bは、これらをそれぞれの軸を中心に回転させる把持部を備え得る(図示せず)。
【0041】
印刷用ゴムブランケット1の胴本体101への固定は次の通りに行う。まず印刷用ゴムブランケット1におけるシート状基材2の第1の端部2aをギャップ103内に差し入れて固定部121にセットする。その後、表面ゴム層3のある面が表側となるようにシート状基材2の第2の端部2bを胴本体101の周面上を渡してギャップ103内に差し入れ、固定部122にセットする。この例では、第1の端部2aがリーディングエッジ(咥え側端部)であり、第2の端部2bがトレーリングエッジ(咥え尻側端部)である。
【0042】
固定部121,122は、固定軸120a,120bに備えられ、それぞれの軸に沿って胴本体101の一端から他端の方向に延びている。固定部121,122が配置される領域は、印刷用ゴムブランケット1を固定するために十分な長さ、例えば、胴本体長さと同程度の長さまたは胴本体長さよりも短い長さであり得る。固定部121および122は、共にそれぞれの端部を固定するための挟み込み部であり得る。
【0043】
印刷用ゴムブランケット1の第1の端部2aおよび第2の端部2bを固定部121,122にセットする際には、
図2(b)に示すように、固定部122がギャップ103側に向くように把持部を操作することによって固定軸120bを回転させて調整する。この状態で固定部121と、これを支持している固定軸基部125との間にまず一端(第1の端部2a)をセットし、続いて固定部122の2本の先端部の間に他端(第2の端部2b)をセットする。その後、固定軸120bを軸を中心に回転させて固定部122の先端を固定部121の側面に押さえ付ける(
図2(c))。固定部121は、固定部122の先端の抑え部としての役割も有している。固定部122の先端部を固定部121の側面に押し当てられることにより、印刷用ゴムブランケット1は、固定軸120bにより胴本体101内部に巻き込まれる。これによって印刷用ゴムブランケット1は胴本体101に固定される。
【0044】
シート状基材2と反対側のプラスチック層4の表面4aは、算術平均粗さRaが2.0μm〜20μmの粗さの粗面であり、当該粗面は梨地模様を有する。
【0045】
実施形態に係る印刷用ゴムブランケット1は、例えばオフセット印刷のブランケットとして使用することができ、前述した
図2に示す手順でブランケット胴100に固定する。使用時には、印刷用ゴムブランケット1の表面ゴム層3で版胴からインキを受け取り、それを被印刷体に送って目的の印刷画像が被印刷体に転写する。
【0046】
以上説明した実施形態に係る印刷用ゴムブランケット1によれば、前述した
図2に示すように印刷用ゴムブランケット1をブランケット胴100に巻き込み装着して固定する。この巻き込み装着時に金属製のシート状基材2はブランケット胴100の周面に直接に接触せず、シート状基材2裏面のプラスチック層4がブランケット胴100とシート状基材2の間に介在される。その結果、金属製のシート状基材2がブランケット胴100に直接に接触することに伴う金属製のシート状基材2およびブランケット胴100の傷の発生と、金属製のシート状基材2とブランケット胴100の間の異種金属接触による錆の発生を抑制することができる。
【0047】
しかしながら、印刷用ゴムブランケット1をブランケット胴100に巻き込み装着する際、背景技術で述べたようにプラスチック層4がブランケット胴100に直接に接触し、ブランケットの金属製のシート状基材2をブランケット胴100に直接に接触させる場合に比べて摩擦係数が上昇し、印刷用ゴムブランケット1をブランケット胴100に正確に装着できないことが起こる。
【0048】
実施形態によれば、プラスチック層4のシート状基材2と反対側の表面は、算術平均粗さRaが2.0μm〜20μmの粗さの粗面であり、さらに当該粗面は梨地模様を有するため、印刷用ゴムブランケット1をブランケット胴100の周面に巻き込み装着する際、プラスチック層4とブランケット胴100との間の摩擦係数を軽減することができる。その結果、ブランケット胴に対する印刷用ゴムブランケット1の装着が容易になり、ハンドリング性が向上するため、ブランケット胴100に印刷用ゴムブランケット1を正確に位置決めでき、使用中に印刷用ゴムブランケット1がずれることを防止できる。
【0050】
<例1>
プラスチック層として幅20mm、長さ200mm、厚さ0.10mmのポリアミドフィルムを用意した。このポリアミドフィルムに粗面加工を施さずに(Ra値0.14μm)、試料に供した。
【0051】
<例2>
プラスチック層として幅20mm、長さ200mm、厚さ0.10mmのポリアミドフィルムを用意した。このポリアミドフィルムの表面にL形ドット形状の加工を施し、Ra値が4.60μmの粗面とした。
【0052】
<例3>
プラスチック層として幅20mm、長さ200mm、厚さ0.10mmのポリアミドフィルムを用意した。このポリアミドフィルムの表面に菱形格子形状の加工を施し、Ra値が4.39μmの粗面とした。
【0053】
<例4>
プラスチック層として幅20mm、長さ200mm、厚さ0.10mmのポリアミドフィルムを用意した。このポリアミドフィルムの表面に梨地形状の加工を施し、Ra値が3.66μmの粗面とした。
【0054】
<例5>
プラスチック層として幅20mm、長さ200mm、厚さ0.10mmのポリアミドフィルムを用意した。このポリアミドフィルムの表面に梨地形状の加工を施し、Ra値が5.99μmの粗面とした。
【0055】
[評価1]
直径38mmのステンレス鋼(SUS304)からなるシリンダー、0.5kgの錘および荷重計であるオリエンテック製のテンシロン(型式:RTC-1250A)を準備した。続いて、例1〜5のフィルムの長辺に沿う一端には錘を固定し、他端には荷重計を固定し、重りと荷重計の間に位置するフィルム部分を前記支持軸に懸架した。その後、荷重計を5.0mm/分の速度で下方向に引張り、静摩擦力(N)を計測した。これを3回実施して、中央値を記録とした。
【0056】
評価1の結果を下記表1に示す。
【表1】
【0057】
前記表1から明らかなように、表面をL形ドット、菱形格子で加工して粗面としたフィルム(例2,3)は、例1の粗面加工無しのフィルムに比べて、摩擦係数に関与する静摩擦力が小さくなることがわかる。
【0058】
また、表面を梨地形状に加工して粗面としたフィルム(例4,5)は、例2,3のフィルムに比べて、さらに静摩擦力が小さくなることがわかる。
【0059】
[評価2]
本発明の効果をさらに確認するために、上述の例1〜5のフィルムをプラスチック層として含む印刷用ゴムブランケットをそれぞれ作製し、その印刷用ゴムブランケットをブランケット胴へ装着したときの装着性および印刷適性を評価した。
【0060】
最初に、
図1に示すSUS製のシート状基材2の表面にNBRからなる表面ゴム層3をシート状基材2の左端部2aが露出するように設けた。表面ゴム層3を含む全体の厚さは、1.75mmである。
【0061】
<例6>
前記シート状基材2の表面ゴム層3と反対側の裏面に例1のフィルム(厚さ:0.125mm)を粘着剤(0.035mm)を用いて張り合わせ、厚さ1.91mmの印刷用ゴムブランケットを得た。
【0062】
<例7>〜<例10>
前記シート状基材2の表面ゴム層3と反対側の裏面に例2〜例5のフィルム(厚さ:0.025mm)を両面粘着テープ(0.15mm)を用いてそれぞれ張り合わせ、厚さ1.925mmの印刷用ゴムブランケットを得た。
【0063】
装着性の評価として例6〜10の印刷用ゴムブランケットをそれぞれブランケット胴に装着して、装着性を確認した。装着性は、例えば装着者のハンドリング性を次に示すように“1”,“2”および“3”の3段階で官能評価した。すなわち、1は装着時に摩擦力が低減された。2は装着時に比較的大きな摩擦力が加わった。3は2の評価よりさらに大きな摩擦力が加わった。
【0064】
さらに、印刷適性の評価として例6〜10の印刷用ゴムブランケットを用いて更紙全面に印刷して、印刷適性を確認した。印刷適性は、例えば更紙に対して濃度が約1.0になるようインキを印圧0.15mmで全面に塗り、プラスチック層の凹凸形状が印刷面に反映されるか否かおよび白抜けなどの異常がないかを確認した。印刷面に反映される、または異常がある場合を“不適切”、印刷面に反映されず、異常も無い場合を“良好”と評価した。
【0065】
評価2の結果を下記表2に示す。
【表2】
【0066】
前記表2から明らかなように、印刷適性は例6〜10の印刷用ゴムブランケット全てにおいて良好だった。
【0067】
例2,3の表面をL形ドット、菱形格子で加工して粗面としたポリアミドフィルムを備える印刷用ゴムブランケット(例7,8)は、例1の粗面加工無しのポリアミドフィルムを備える印刷用ゴムブランケット(例6)と比べてブランケット胴への装着時の摩擦力が低減された。
【0068】
例4,5の表面を梨地形状に加工して粗面としたポリアミドフィルムを有する印刷用ゴムブランケット(例9,10)は、例7,8の印刷用ゴムブランケットと比べてさらに装着時の摩擦力が低減された。
【0069】
従って、例9,10の印刷用ゴムブランケットは、ブランケット胴に装着する際のハンドリング性を向上できる。
【課題】本発明は、ブランケット胴に対する装着が容易で、ハンドリング性を向上してブランケット胴への正確な位置決めを可能にする印刷用ゴムブランケットを提供することを目的とする。
【解決手段】実施形態に係る印刷用ゴムブランケットは、金属製のシート状基材と、前記シート状基材の表面に当該シート状基材の端部が露出するように設けられた表面ゴム層と、当該表面ゴム層と反対側の前記シート状基材の裏面に当該シート状基材を挟んで当該表面ゴム層と対向もしくは略対向するように設けられたプラスチック層とを備え、前記シート状基材と反対側の前記プラスチック層の表面は、算術平均粗さRaが2.0μm〜20μmの粗さの粗面で、前記粗面は、梨地模様を有する。