【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度 経済産業省「産業技術研究開発(三次元造形技術を核としたものづくり革命プログラム(次世代型産業用3Dプリンタ技術開発及び超精密三次元造形システム技術開発))」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動方向の変化に追従して前記光学スポットの形状を変化させるため、前記光源からの光の光軸と直角をなす平面内で前記第1光学素子を回動させる回動手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光加工ヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、二次光源が必要であり、装置が大型化していた。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る光加工ヘッドは、
光源からの光を集光させることにより形成された光学スポットを加工面上において所定の移動方向に移動させつつ加工する光加工ヘッドであって、
前記光源からの光を集光させて、前記移動方向に伸長した形状の前記光学スポットを生成する第1光学素子
と、
前記第1光学素子よりも前記光源側に配置され、前記第1光学素子に入射する前記光源からの光を透過させる透明板と、
前記光源からの光を屈折させるため、前記光源からの光と前記透明板とのなす角度を変化させる傾斜手段と、
を備え、
前記光学スポットの一部を加工領域とし、
前記加工領域の移動方向前方および/または後方をプレヒート領域および/またはポストヒート領域として、その領域における加工前および/または加工後の加工対象物を加熱することを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る光加工装置は、
上記光加工ヘッドと、光源と、光源から射出された光を前記光加工ヘッドに伝送する光伝送部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る光加工ヘッドの制御方法は、
光源からの光を集光させて形成された光学スポットを加工面上において移動させつつ加工する光加工ヘッドの制御方法であって、
前記光加工ヘッドは、
前記光源からの光を集光させて、一方向に伸長した形状の前記光学スポットを生成する光学素子
と、
前記光学素子よりも前記光源側に配置され、前記光学素子に入射する前記光源からの光を透過させる透明板と、
前記光源からの光を屈折させるため、前記光源からの光と前記透明板とのなす角度を変化させる傾斜手段と、
を備え、
前記光学スポットの一部を加工領域とし、前記加工領域の移動方向前方および/または後方をプレヒート領域および/またはポストヒート領域として、その領域の加工前および/または加工後の加工対象物を加熱するため、前記光学スポットの移動方向に応じて、前記光学素子を回動させる回動ステップ
と、
前記光学スポットを形成する位置に応じて、前記光源からの光と前記透明板とのなす角度を変化させる傾斜ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る光加工ヘッドの制御プログラムは、
光源からの光を集光させることにより形成された光学スポットを加工面上において移動させつつ加工する光加工ヘッドの制御プログラムであって、
前記光加工ヘッドは、前記光源からの光を集光させて、一方向に伸長した形状の前記光学スポットを生成する光学素子
と、
前記光学素子よりも前記光源側に配置され、前記光学素子に入射する前記光源からの光を透過させる透明板と、
前記光源からの光を屈折させるため、前記光源からの光と前記透明板とのなす角度を変化させる傾斜手段と、
を備え、
前記光学スポットの一部を加工領域とし、前記加工領域の移動方向前方または後方をプレヒート領域またはポストヒート領域として加工前または加工後の加工対象物を加熱するため、前記光学スポットの移動方向に応じて、前記光学素子を回動させる回動ステップ
と、
前記光学スポットを形成する位置に応じて、前記光源からの光と前記透明板とのなす角度を変化させる傾斜ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光加工の精度を高めつつ、装置を小型化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、本明細書中、「シリンドリカルレンズ」とは、円柱側面を有するレンズをいう。また、「トーリックレンズ」とは、直円柱を曲げた円柱、つまり、屈曲した中心軸を有する円柱としての曲円柱の側面を有するレンズをいう。
【0013】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての光加工ヘッド(Optical Processing Head)について、
図1を用いて説明する。この光加工ヘッドは、光源からの光を集光させることにより形成された光学スポットを加工面上において、加工面と光加工ヘッドを相対的に所定の移動方向に移動させつつ加工する光加工ヘッド100であり、光学素子(Optical Element)101を含む。
【0014】
光学素子101は、光源からの光110を集光させて、移動方向120に伸長した形状の光学スポット130を生成する。
【0015】
そして光学スポット130の一部を加工領域131とし、加工領域131の移動方向前方および/または後方をプレヒート領域132および/またはポストヒート領域133として、その領域における加工前および/または加工後の加工対象物140を加熱する。
【0016】
以上の構成によれば、プレヒートあるいはポストヒート用に新たに2次レーザを用いなくてよい。プレヒートあるいはポストヒートは、加工対象物の熱応力および残留応力を低減する手段として知られているが、本構成により、光加工の精度を高めつつ、装置を小型化することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態としての光加工ヘッド200について、
図2を用いて説明する。
図2は、光加工ヘッド200の内部構成を示すための図であり、
図2に示すとおり、光加工ヘッド200は、集光光学系装置201と観察装置202とノズル203とを含む。
【0017】
不図示の光源から光伝送部220を経て入射端212から光加工ヘッド200に導かれた光線205は、光加工ヘッド200内部を通過して、加工面260に対して射出される。
【0018】
集光光学系装置201は、また、不図示の材料供給装置およびガス供給装置から、材料供給部250およびガス供給部240を介して、加工材料およびガスの供給を受け、ガスに混合された材料を、ノズル203から加工面260に対して射出する。材料は例えば、金属粉末、あるいは樹脂粉末でよい。粒径は例えば0.001〜1mmである。材料は、加工領域231に向けて収束するように射出される。このとき、加工面260における材料の収束領域を粉体スポットと呼ぶ。
【0019】
光加工ヘッド200は、加工面260上に射出された光が吸収されて熱化することにより溶融プールを形成し、それに向けてノズル203から材料を射出して、材料を盛り付ける。加工領域231は、材料が溶融プールに着弾する領域、つまり粉体スポットである。
【0020】
そして光加工ヘッド200を移動させることにより、あるいは、加工対象物を移動させることにより、加工面260上で加工領域231の位置を移動させて所望の形状の加工を行なう。加工領域231を中心として考えたとき、移動方向前方が、プレヒート領域232となり、移動方向後方がポストヒート領域233となる。プレヒートは、加工領域を事前に昇温し、加工領域の急激な昇温を抑える。これにより、急激な昇温によって引き起こされる熱応力を低減し、加工時の反りや変形を低減でき、加工精度を向上させることができる。
【0021】
一方、ポストヒートは加工領域を加工後に温め、急激な冷却を抑える。これにより、急激な降温によって引き起こされる熱応力を低減し、加工時の反りや変形を低減でき、加工精度を向上させることができる。
【0022】
観察装置202は、集光光学系装置201による加工状況を観測するための装置であり、CCDやCMOSなどの撮像素子を含む撮像装置221を含む。集光光学系装置201の内部に設けられた半透過ミラー(half mirror)222により、加工面260からの光が撮像装置221に導かれる。このように観測した加工状況に応じて、加工パラメータをフィードバック制御することにより加工精度を向上させることができる。
【0023】
《レンズ構成》
光源からの光205は、光加工ヘッド201内に設けられたレンズ206によって平行光210に変換される。ただし、レンズに限らず、平行光210に変換する光学素子ならば何でもよい。例えば、放物線ミラーなどでもよい。光加工ヘッド200は、平行光210を集光させて、移動方向220に伸長した形状の光学スポット230を生成する光学素子の一例としてシリンドリカルレンズ211を備えている。レンズは、他の種類の光学素子に比べてロスが小さく、エネルギー効率がよい。また、レンズの両面に反射防止膜を塗布することにより、光の反射ロスを数%以下に低減でき、さらにエネルギー効率を向上させることもできる。さらに、レンズは吸収ロスが少ないので昇温しにくく、昇温による熱レンズ効果(熱によるレンズの屈折率変化、レンズ形状の変化)および光加工ヘッド200全体の劣化を防ぐことができる。このように、光学素子211に平行光210が入射されることにより、集光性能を高めることができ、高精細な加工が可能となる。エタンデュの理論により、集光スポットの集光方向の幅をAとし、平行光210の光軸からの僅かな傾き(つまり平行からのずれ)をδとすると、
【数1】
となる。つまり、δが小さいほどAも細くなる。これより、光学素子211に入射される光線が平行光であればあるほど、集光性能が高まるという効果がある。
【0024】
シリンドリカルレンズ211は、平行光210を加工面260において楕円状の光学スポット230に変換する。ここで、光学スポット230は楕円に限らず、加工領域の移動方向に沿って伸びた形状(伸長形状)ならばどのような形状でもよい。
【0025】
シリンドリカルレンズ211の代わりにトーリックレンズを用いてもよく、その場合は集光領域内で光の強度に差異を設けることができるため、プレヒート温度あるいはポストヒート温度が独立に調整できる。
【0026】
図3は、シリンドリカルレンズ211の周辺構造およびその作用を詳しく説明するため、シリンドリカルレンズユニット300だけを取り出した図である。シリンドリカルレンズユニット300は光加工ヘッド200に組み込まれている。
【0027】
シリンドリカルレンズユニット300は、シリンドリカルレンズ211を、2つのガイド302、303によって狭持し、さらに、それらのガイド302、303を、円筒部301に固定している。シリンドリカルレンズ211を透過した平行光210は、右図のように、シリンドリカルレンズ211の中心線304を通り平行光210に平行な平面に向かって屈折し、その平面上で、伸長形状の像(光学スポット)を結ぶ。特に平行光210が断面円形であれば、その光学スポットは楕円形状となる。すなわち、加工面上の光学スポットの移動方向に中心軸304を向けることにより、光学スポット230は、移動方向に長軸を有する楕円形状となる。
【0028】
図4は、シリンドリカルレンズ211の回動について説明するための図である。シリンドリカルレンズユニット300は、光軸401を中心に矢印402方向に回動する。加工面上で、加工領域231を様々な方向に移動させる必要がある場合、例えば、円周に沿って積層加工を行なおうとする場合には、移動方向の変化に合わせて、シリンドリカルレンズユニット300を回動させる。すなわち、平行光210の光軸401と直角をなす平面内でシリンドリカルレンズ211を回動させることにより、移動方向の変化に追従して光学スポット230の向きを変化させることができる。つまり、プレヒート領域232およびポストヒート領域233の位置を、移動方向に追従させることができる。なお、回動手段は図示されていないが、例えばモータおよび歯車を用いることでシリンドリカルレンズユニット300を回動することができる。
【0029】
以上、本実施形態によれば、プレヒートまたはポストヒート用の2次レーザを設ける必要がないため、装置全体の小型化を図ることができる。また、小型化により部品点数の削減、コストダウン、および装置製造のリードタイムを短縮できる。さらに、加工面上での加工領域の移動方向に合わせてプレヒート、ポストヒートの位置も変化させることができ、高品質な加工を実現することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、光学素子の一例としてシリンドリカルレンズ211を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、トーリックレンズを代わりに用いることもできる。トーリックレンズを用いることで、加工領域231とプレヒート領域232およびポストヒート領域233との熱分布を調整することができる。例えば、加工領域231に対して熱をより大きく発生させることが可能となる。
【0031】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係る光加工ヘッド500について、
図5および
図6を用いて説明する。
図5は、本実施形態に係る光加工ヘッド500の内部構成を説明するための透過斜視図である
図6は、本実施形態に係るシリンドリカルレンズユニット600の構成とその作用を説明するための拡大斜視図である。本実施形態に係る光加工ヘッド500は、上記第2実施形態と比べると、シリンドリカルレンズ511よりも光源側に配置され、シリンドリカルレンズ511に入射する平行光210を透過させる透明板505と、平行光210を屈折させるため、平行光210と透明板505とのなす角度を変化させる不図示の傾斜部とを有する点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0032】
透明板505は、その両面に平行光210に対する反射防止膜を備えている。
図5に示すように透明板505の透過面の法線方向と平行光210の方向を一致させるように透明板505を配置することが可能である。この場合、透明板505による反射ロスは1〜2%あるものの、光学スポットは影響を受けない。
【0033】
透明板505は、シリンドリカルレンズ511の中心線604および平行光210の光軸401を含む平面に対して垂直な回動軸651を有し、その回動軸651を中心に回動する。
【0034】
図5に示すように透明板505が平行光210に直交する位置にあるとき、つまり、光軸方向と透過面の法線方向が一致するとき、光学スポット531は、粉体スポットつまり加工領域231をその中心に含む。このとき、プレヒート領域232およびポストヒート領域233を同時に発生させることができる。
【0035】
一方、
図6に実線で示すように、透明板505が回動軸651を中心に図中半時計回りに回動して、移動方向前方が上方にくる位置(
図5の状態と所定の角度(例えば10度)をなす位置)にあるとき、光学スポット632は、粉体スポットつまり加工領域231をその後端に含む。このとき、プレヒート領域232のみを大きく設けることができる。
【0036】
逆に、
図6に点線で示すように、透明板505が回動軸651を中心に図中時計回りに回動して、移動方向後方が上方にくる位置(
図5の状態と所定の角度(例えば−10度)をなす位置)にあるとき、光学スポット633は、粉体スポットつまり加工領域231をその前端に含む。このとき、ポストヒート領域233のみを大きく設けることができる。
【0037】
[第4実施形態]
次に本発明の第4実施形態に係る光加工ヘッドについて、
図7および
図8を用いて説明する。
図7は、本実施形態に係るシリンドリカルレンズユニット700の構成とその作用を説明するための拡大斜視図である。
図8は、シリンドリカルレンズユニット700の動作を説明するための模式図である。本実施形態に係る光加工ヘッドは、上記第2実施形態と比べると、シリンドリカルレンズ711よりも光源側に、シリンドリカルレンズ711に入射する平行光210を透過させる透明板705を有する点で異なる。さらに、本実施形態では、平行光210を屈折させるため、平行光210と透明板705とのなす角度を変化させる不図示の傾斜部も有している。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0038】
本実施形態の透明板705も、第3実施形態の透明板505と同様に回動するが、その方向が異なる。本実施形態では、透明板705はシリンドリカルレンズ711の中心線704と平行な回動軸751を中心に回動する。
【0039】
図7に実線で示すように、透明板705が回動軸751を中心に回動して、移動方向右側(図中手前側)が上方にくる位置(
図5の状態と所定の角度(例えば10度)をなす位置)にあるとき、光学スポット731は、移動方向220と直角をなす方向721、つまり図中手前側に移動する。
【0040】
一方、
図7に点線で示すように、透明板705が回動軸751を中心に回動して、移動方向左方(図中奥側)が上方にくる位置(
図5の状態と所定の角度(例えば−10度)をなす位置)にあるとき、光学スポット731は、移動方向220と直角をなす方向722、つまり図中奥側に移動する。
【0041】
つまり、加工領域の位置を、移動方向220と直交する方向に微調整することができる。特に、加工領域がカーブを描いて移動する場合、カーブの内側よりで加工するか、外側よりで加工するかを選択することができる。
【0042】
図7に示したように、透明板705を傾斜させる場合、光軸位置が奥手前方向にずれてしまう。そこで、
図8に示すように、シリンドリカルレンズ711を、透明板705の角度変化に応じて、移動方向に直交する方向801にスライドさせる。つまり、
図7に示したガイド702、703は、シリンドリカルレンズ711をスライド可能に支持する。
【0043】
以上により、加工中にプレヒートまたはポストヒート、あるいはそれらを同時に行うことができ、さらに、加工領域の位置を移動方向とは別に微調整することができる。これにより、加工品質および精度が向上する。
【0044】
[第5実施形態]
次に本発明の第5実施形態に係る光加工ヘッドについて、
図9Aおよび
図9Bを用いて説明する。
図9Aは、本実施形態に係る光加工ヘッド900の構成を説明するための透過斜視図である。
図9Bは、シリンドリカルレンズユニットの交換を実現する構成を説明するための上面図である。
【0045】
本実施形態に係る光加工ヘッド900は、上記第2実施形態と比べると、異なる種類のシリンドリカルレンズユニットを複数有し、それらのシリンドリカルレンズユニットを交換する機構を有している。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0046】
シリンドリカルレンズ901は、第2〜第4実施形態のシリンドリカルレンズ211、511、711と同様の構成を有し、光加工ヘッド900内に設けられている。一方、シリンドリカルレンズ902は、回転機構905で、光加工ヘッド900の外側に移動可能である。シリンドリカルレンズ903も、同じ回転機構905に固定されており、シリンドリカルレンズ902、903は、交換可能となっている。さらに、シリンドリカルレンズが設けられていない円筒部940が回転機構905に固定されている。つまり、シリンドリカルレンズ902、903が設けられたシリンドリカルレンズユニット920、930は、シリンドリカルレンズが設けられていない円筒部940とも交換可能となっている。
【0047】
回転機構905が回転することにより、光軸上にシリンドリカルレンズ901のみの構成、光軸上にシリンドリカルレンズ901、902を有する構成、光軸上にシリンドリカルレンズ901、903を有する構成の3つの態様をとることができる。
【0048】
上述したように、シリンドリカルレンズ901は、平行光を加工面において楕円状の光学スポットに変換するが、異なる方向の中心線を有するシリンドリカルレンズ902と組み合わせることにより、楕円のアスペクト比を小さくすることができる。さらに、曲率の異なるシリンドリカルレンズ903を組み合わせることにより、アスペクト比の縮小率は調整可能である。アスペクト比の最小は1であり、このとき、光学スポットは円になる。
【0049】
第3、第4実施形態と同様に、シリンドリカルレンズ901の上流に透明板を設けてもよい。透明板を傾斜機構で保持し、傾斜機構を回動機構によって保持すれば、第3、第4実施形態と同様に、光学スポットの位置や、プレヒートとポストヒートの割合を自在に調整することが可能となる。
【0050】
以上より、本実施形態によれば、光学スポットは円状にも楕円状にも変更でき、光学スポットを加工に合わせて選択的できる。この選択性により、加工の最適化が可能となり、加工精度が向上するという効果がある。
【0051】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態としての光加工装置(Optical Machining apparatus)1000について、
図10を用いて説明する。光加工装置1000は、上述の実施形態で説明した光加工ヘッド100、200、500、900のいずれかを含み、集光した光が生み出す熱で材料を溶融することにより三次元的な造形物(あるいは肉盛溶接)を生成する装置である。ここでは一例として、光加工ヘッド200を備えた光加工装置1000について説明する。
【0052】
《装置構成》
光加工装置1000は、光加工ヘッド200以外に光源1001、光伝送部215、冷媒供給装置1003、冷媒供給部1004、ステージ1005、材料収容装置1006、材料供給部250、ガス供給装置1008、およびガス供給部240を備えている。
【0053】
光源1001としては、例えば、レーザ光源、LED、ハロゲンランプ、キセノンランプを用いることができる。レーザ光源の場合、光線の波長は例えば1060nmであるが、これに限るものではなく、光は加工面260に吸収されるものならば何でもよい。
【0054】
光伝送部215は、例えばコア径がφ0.01〜1mの光ファイバであり、光源1001で発生した光を光加工ヘッド200に導く。光伝送部215のコア径が入射端212の直径となる。冷媒供給装置1003は、冷媒として例えば水を貯蔵し、ポンプで、冷媒を冷媒供給部1004に供給する。
【0055】
冷媒供給部1004は内径φ2から6の樹脂あるいは金属のホースである。冷媒を光加工ヘッド200内に供給し、その内部で循環させ、冷媒供給装置1003に戻すことにより、光加工ヘッド200の昇温を抑えている。冷媒の供給量は例えば1〜10L/minである。
【0056】
ステージ1005は、Xステージ、あるいはXYステージ、あるいはXYZステージである。XYXの各軸は駆動することが可能である。材料収容装置1006は、光加工ヘッド200に対し、材料供給部230を介して材料を含むキャリアガスを供給する。例えば、材料は金属粒子、樹脂粒子などの粒子である。キャリアガスは、不活性ガスであり、例えばアルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス、でよい。
【0057】
材料供給部250は例えば樹脂あるいは金属のホースであり、キャリアガスに材料を混入させた粉体流を光加工ヘッドへと導く。ただし、材料が線材の場合は、キャリアガスは不要となる。
【0058】
ガス供給装置1008は、ガス供給部240を介して光加工ヘッド200にパージガスを供給する。パージガスは例えば窒素、またはアルゴン、またはヘリウム、である。しかし、パージガスはこれに限定されるものではなく、不活性ガスならば他のガスでもよい。光加工ヘッド200に供給されたパージガスは、上記で述べた光線に沿ってノズル203先端から射出される。
【0059】
また図示はしていないが、光加工装置1000は、光加工ヘッド200の姿勢および位置を制御する姿勢制御機構および位置制御機構を備えてもよく、その場合、光加工ヘッド200の姿勢および位置を変えて、加工面上の加工領域を移動させる。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、光加工ヘッド200を固定しつつ、ステージ1005の姿勢および位置を変えて、加工面上の加工領域を移動させてもよい。
【0060】
《装置動作》
次に、光加工装置1000の動作について説明する。造形物1010は、ステージ1005の上で作成される。光加工ヘッド200から射出される射出光は、造形物1010上の加工面260において集光される。加工面260は、集光によって昇温され、溶融され、一部に溶融プールを形成する。
【0061】
材料はノズル203から加工面260の溶融プールへと射出される。そして、溶融プールに材料が溶け込む。その後、溶融プールが冷却され、固化することで加工面260に材料が堆積され、3次元造形が実現する。
【0062】
パージガスはノズル203から加工面260へと射出される。そのため、溶融プールの周辺環境はパージガスによってパージされる。パージガスとして酸素を含まない不活性ガスを選ぶことにより、加工面260の酸化を防ぐことができる。
【0063】
光加工ヘッド200は、冷媒供給装置1003から冷媒供給部1004を介して供給された冷媒によって冷却され、加工中の昇温が抑えられる。
【0064】
以上の一連の動作と同時に、光加工ヘッド200を加工面260に沿って移動することにより、材料を堆積させながら所望の造形を行うことができる。つまり、本装置によって肉盛溶接あるいは三次元造形を作成できる。
【0065】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範疇で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する制御プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。