【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度 経済産業省「産業技術研究開発(三次元造形技術を核としたものづくり革命プログラム(次世代型産業用3Dプリンタ技術開発及び超精密三次元造形システム技術開発))」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1平行光を入射した前記第2光学素子の虚像焦点と前記第2平行光を入射した前記第3光学素子の焦点とが一致するように、前記第2光学素子および前記第3光学素子を配置した請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光加工ヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての光加工ヘッド(Optical Processing Head)100について、
図1を用いて説明する。
図1は、光加工ヘッド100の光学系(Optical System)を抽出した図であり、
図1に示すとおり、光加工ヘッド100は、光学素子(Optical Element)101〜104を備えている。
【0014】
光学素子101(第1光学素子)は、光源からの射出光111を平行光112(第1平行光)に変換する。光学素子102(第2光学素子)は、光学素子101の下流側に配置され、平行光112を発散光113(第1発散光)に変換する。光学素子103(第3光学素子)は、光学素子102の下流側に配置され、発散光113を平行光114(第2平行光)に変換する。光学素子104(第4光学素子)は、光学素子103の下流側に配置され、加工面120に向けて集光する収束光115に平行光114を変換する。
【0015】
このような光学系を用いて行なわれる光加工としては、肉盛溶接や、三次元造形などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、光学素子101〜104の相対配置は、
図1の配置に限定されることはなく、光学素子の種類(レンズ、ミラーなどの組合せ)に応じた配置をとることができる。光学素子101〜104は、レンズ、回折素子、またはミラーでもよいが、これらに限定されるものではない。特にレンズは、平凸レンズでもよいし、両凸レンズでもよいし、非球面レンズでもよいし、他のレンズでもよい。
【0016】
上記の構成により、光加工ヘッドの内部に集光点を作ることなく、光源からの射出光を加工面において集光させることができるため、光加工のエネルギーロスを小さくすることができる。
【0017】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態としての光加工ヘッド200について、
図2を用いて説明する。
図2は、光加工ヘッド200の内部構成を示すための図であり、
図2に示すとおり、光加工ヘッド200は、集光光学系装置201と観察装置202とノズル203とを含む。
【0018】
不図示の光源から光伝送部210を経て入射端212から光加工ヘッド200に導かれた光線205は、光加工ヘッド200内部を通過して、加工面260に対して射出される。
【0019】
集光光学系装置201は、また、不図示の材料供給装置およびガス供給装置から、材料供給部230およびガス供給部240を介して、加工材料およびガスの供給を受け、加工ガスに混合された材料250を、ノズル203から加工面260に対して射出する。
【0020】
観察装置202は、集光光学系装置201による加工状況を光軸に沿った視点から観測するための装置であり、CCDやCMOSなどの撮像素子を含む撮像装置221を含む。集光光学系装置201の内部に設けられた半透過ミラー(half mirror)222により、加工面260からの光が撮像装置221に導かれる。このように観測した加工状況に応じて、加工パラメータをフィードバック制御することにより加工精度を向上させることができる。
【0021】
《レンズ構成》
図3は、光加工ヘッド200内部の光学系300のレンズ構成を表わす図である。光加工ヘッド200の光学系300は、光学素子としてレンズ301〜304を備えている。レンズは、他の種類の光学素子に比べて吸収ロスが小さく、エネルギー効率がよい。また、レンズに反射防止膜を塗布することにより、光の反射ロスを数%以下に低減でき、さらにエネルギー効率を向上させることもできる。さらに、吸収ロスが少ないことにより、昇温しにくく、昇温による熱レンズ効果(熱によるレンズ形状の変形、屈折率変化によるレンズ特性の劣化)および光加工ヘッド200全体の劣化を防ぐことができる。
【0022】
光学系300の4つのレンズのうち、平凸レンズ301は、下流側に凸面を有する球面レンズであり、入射端212から入射した射出光311を平行光312に変換する。
【0023】
また、平凹レンズ302は、下流側に凹面を有する球面レンズであり、平凸レンズ301の下流側に配置され、平行光312を発散光313に変換する。平凹レンズ302は、他の3つのレンズによって生み出される収差をキャンセルするように作用する。つまり光学系300全体の収差を低減することができる。
【0024】
さらに、平凸レンズ303は、下流側に凸面を有する球面レンズであり、平凹レンズ302の下流側に配置され、発散光313を平行光312よりも径大の平行光314に変換する。これにより、光線の密度を下げ、凸レンズ303および凸レンズ304の、平行光314を吸収することによる昇温を低減することができる。平凸レンズ304は、上流側に凸面を有する球面レンズであり、平凸レンズ303の下流側に配置され、平行光314を、加工面260に向けて集光する収束光315に変換する。つまり、平凸レンズ303の存在により、光線314の光線方向と光軸との成す角が発散光313の発散角以下になる。
【0025】
平凸レンズ303と平凸レンズ304の間には、上述した半透過ミラー222が設けられている。半透過ミラー222は光軸に対して、例えば45度傾いて配置され、光源からの光を透過しつつ、加工面260で反射された可視光成分の光を撮像装置に向けて反射するように表面処理される。これにより、光源からの光が途中で遮られることなく、加工面を観察することが可能となる。
【0026】
ここで、平凸レンズとは、対向する2面のうち一方が平面でもう一方が凸面のレンズであり、平凹レンズとは、対向する2面のうち一方が平面でもう一方が凹面のレンズである。また、球面レンズとは、凸面あるいは凹面が単一球面に沿う形状になっているものである。
【0027】
一般的に、レンズの表面を球面にするよりも平面にするほうが表面粗さの加工精度がよく、作製が容易であり、コストが低い。また、
図4に示すように、平凹レンズ302は、レンズホルダ401に収容されている。レンズホルダ401はメスホルダ412とオスホルダ413から構成され、両者にはねじ切り加工が施されており、ねじによって固定される。平凹レンズ302は圧着によって固定されるが、平凹レンズ302の凹面側のエッジ322はオスホルダ413に僅かに接触するだけである。つまり、この接触部の界面熱抵抗は大きい。一方、平凹レンズ302の平面321側はメスホルダ412の内側平面411と面接触しており、凹面側よりも界面熱抵抗は小さい。平凸レンズについても同様に、平面を有することにより界面熱抵抗が下がり、光の吸収によって発生した熱を放熱する性能が高くなり、熱レンズ効果(熱によるレンズ形状の変形、屈折率変化によるレンズ特性の劣化)による収差の増大を抑えることができる。
【0028】
さらに、平面321と、レンズホルダ401の内側平面411とが面接触するので、平凹レンズ302をレンズホルダ401へ組み込む際の位置ずれが少ない。これにより、平凹レンズ302の位置決め精度が高くなり、集光スポットにおける収差が低減する。
【0029】
《焦点距離》
平凸レンズ301の焦点距離をf1とし、平凹レンズ302の焦点距離をf2とし、平凸レンズ303の焦点距離をf3とし、平凸レンズ304の焦点距離をf4とし、光学系300全体の拡大倍率をmとする。
【0030】
高精細な加工を行なうためには、集光スポット径を小さくする必要がある。集光スポット径を小さくするためには、収差(光線の集光点におけるばらつき)をできるだけ小さくする必要がある。集光スポット径の最小値はベストフォーカススポット径と呼ばれる。ベストフォーカススポット径は、入射端212の直径に光学系300全体の拡大倍率mを掛けたものとして算出される。フォーカス時において、収差(光線の集光点におけるばらつき)が小さいほど集光スポットが小さくなり、高精細な加工が可能となる。
【0031】
光学系300に半透過ミラー222を設けると、光線がそれを通る際に乱れ、収差が大きくなる。光線の乱れをできるだけ小さくするためには、半透過ミラー222を通る光線をなるべく平行光に近づければよい。半透過ミラー222は、平凸レンズ303および平凸レンズ304の間に設けられている。そこで、ベストフォーカス時に半透過ミラー222を通る光線314が平行光となるように平凹レンズ302を配置すれば、ベストフォーカススポット径を最小にすることが可能となる。これを実現するために、具体的には、焦点距離を平凸レンズ303の焦点距離以下の平凹レンズ302を選択し、平凹レンズ302の上流側虚像焦点と、平凸レンズ303の上流側焦点とが一致するように配置する。つまり、平凹レンズ302の虚像焦点位置(平凹レンズ302から上流側にf2離れた位置)と、平凸レンズ303に下流側から平行光を入射させたときの焦点位置(平凸レンズ303から上流側にf3離れた位置)が一致する必要がある。光線は上流側から下流側へと進むので、上記で述べた平凸レンズ303に対する焦点位置は虚像焦点位置である。
【0032】
以上より明らかなように、平凹レンズ302の焦点距離f2と、平凸レンズ303の焦点距離f3とは、下記の条件を満たす必要がある。
f2/f3≦1・・・(1)
つまり、f2≦f3となるように、平凹レンズ302および平凸レンズ303を選択することにより、平凹レンズ302の虚像集光点の位置と平凸レンズ303の焦点位置とを一致させることができる。これにより、実際に装置内に集光点を設ける必要がなくエネルギーロスを抑えることができる。また、本構成は、虚像集光点が平凹レンズ302の上流側に位置し、リアルな集光点を作る必要がないため、光学系の全長を短くできるという効果もある。
【0033】
また、上述したように、ベストフォーカス時のベストフォーカススポット径を最小にするためには、収差が最小になる必要がある。収差にはいくつか成分があるが、球面収差が最も主要な成分である。そこで、球面収差の縦成分(球面収差の光軸方向の成分)が最小になるような条件を考える。
【0034】
平凸レンズ301のF値をf1#とし、平凹レンズ302のF値をf2#とし、平凸レンズ303のF値をf3#とし、平凸レンズ304のF値をf4#とすると、本光学系300の球面収差δは、次の式(2)のように書ける。
【数1】
この式の第2項が負の値になっていることに注意されたい。これは、凹レンズの特性であり、この項があることにより、全体の値を小さくできる。もし、凹レンズの代わりに凸レンズを用いると、第2項が正になるため、全体の収差が大きくなる。つまり、本実施形態では、2つめの光学素子として凹レンズを用いたことによって収差を最小にすることができる。
【0035】
平凹レンズ302は、下流側に凹面を有する球面レンズであり、平凸レンズ301の下流側に配置され、平行光312を発散光313に変換する。平凹レンズ302は、下流側に凹面を有するため、第2項の絶対値は最大になる。つまり、他の項をキャンセルする効果が最も大きくなる。これにより、収差を最小にできるという効果がある。
【0036】
入射端212からの入射NA(Numerical Aperture)をαとし、平凸レンズ304からの射出NAをβとし、拡大倍率をmとし、αとβに対してヘルムホルツ・ラグランジュの保存側を用いると、下記の式(3)が成立する。
【数2】
これより、収差が最小のとき、つまりδが0のとき、次の関係を導くことができる。
【数3】
この式(4)と式(1)より、下記の関係を導くことができる。
【数4】
この式(5)は変形すると、以下のようになる。
【数5】
以上より、式(6)を満たせば収差は最小にすることが可能となる。
【0037】
上式(6)の関係を
図5に示す。横軸501がf1/f4であり、縦軸502がf3/f4である。
図5においては、拡大倍率が0.5の場合のf1/f4とf3/f4との関係を曲線503で示している。また、拡大倍率が1の場合のf1/f4とf3/f4との関係を曲線504で示している。さらに、拡大倍率が2の場合のf1/f4とf3/f4との関係を曲線505で示している。上式(6)によれば、プロットした線よりも下側(縦軸の負方向)であれば収差を最小にできる。
【0038】
図5からわかるように、拡大倍率が小さいほど、曲線が上方に位置するため、曲線の下側の面積が広くなる。つまり、設計パラメータの範囲が増大する。それゆえ本実施形態にかかる光学系は、拡大倍率が小さく高精細な加工装置を設計しやすいという効果がある。
【0039】
以上で述べた構成は、全て球面と平面を同時に有するレンズに対するものである。このような平凸球面レンズあるいは平凹球面レンズは、非球面に比べてコストが安い。また、全てのレンズが平面を有していることにより、位置ずれによる収差や、熱レンズ効果による収差が発生しにくいという効果がある。
【0040】
《スライド機構》
図6に示すように、平凹レンズ302は、光軸に沿って移動可能に設けられている。例えば平凹レンズ302は、スライド機構607に沿ってスライド可能である。すなわち、スライド機構607は、平凹レンズ302を光軸に沿ってスライド可能に支持している。平凹レンズ302のスライドは、手動で行なってもよいし、モータなどの駆動機構を用いて行なってもよい。デフォーカス値に応じて不図示の制御部が平凹レンズ302の位置を自動制御してもよい。
【0041】
高精細な加工を行なう際には、
図6の601に示すとおり、平凹レンズ302を上流側にスライドさせて集光スポット径を小さくする。この際、収差が少ないほど集光スポットが小さくなり、高精細になる。
【0042】
そこで、平凹レンズ302の虚像焦点位置(凹レンズから上流側にf2離れた位置)と、平凸レンズ303に下流側から平行光を入射させたときの焦点位置(第2の凸レンズからf3離れた位置)とが一致するように、平凹レンズ302を移動させる。
【0043】
一方、
図6の602、603に示すとおり、平凹レンズ302を徐々に下流側にスライドすることにより、デフォーカスする(加工面260における集光スポット径を大きくする)ことが可能である。デフォーカスによって加工中に加工幅を最適化すれば、加工精度および加工速度を向上させることができる。
【0044】
平凹レンズ302の差動距離(フォーカス時を基準としたときの平凹レンズ302の移動距離)が10mmのとき、集光スポット径は、フォーカス時の約15倍にできる(例えば、フォーカス時の集光スポット径が0.2 mmのとき、3 mmとなる)。603において、フォーカス時には平行光314だった光線が、発散光614となることがわかる。このとき、平凸レンズ304の外径は、光線が外れないように大きくする。デフォーカス時において、平凸レンズ304より射出される集束光315のF♯(Fナンバー)は約4.5以上の範囲内で収まる。
【0045】
以上の通り、コンパクトなレンズ外径でも十分なデフォースをかけることができる。なお、ここでは平凹レンズ302を移動させたが、本発明はこれに限定されるものではなく、平凸レンズ303を移動させてもよい。つまり、平凹レンズ302と平凸レンズ303との光軸上の距離を変更できればよい。
【0046】
図7は、デフォーカスを行なう際の凹レンズ302の移動制御について説明するフローチャートである。移動制御は、制御装置(図示せず)を用いて行う。
【0047】
まずステップS701において、集光スポット径(これをデフォーカス値とする)を制御装置に入力すると、ステップS702において、入力した集光スポット径が現状の集光スポット径より大きいか否かつまり、デフォーカス値を増大させるべきか否かを判定する。デフォーカス値を増大させる場合には、平凹レンズ302を下流側に移動する(S703)。一方、デフォーカス値を増加させない場合には、ステップS704に進み、入力したデフォーカス値が現在値より小さいか否かつまり、デフォーカス値を減少させるべきか否かを判定する。デフォーカス値を減少させる場合には、平凹レンズ302を上流側に移動する(S705)。デフォーカス値を変化させない場合には、そのまま処理を終了する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、単純な光学的構成により、エネルギーロスの少ない光学加工ヘッドを提供することができる。また、光学加工ヘッドを小型化することも可能になる。さらに、非常に容易にデフォーカスを実現することができる。
【0049】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係る光学加工ヘッド800について、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態に係る光学加工ヘッド800の光学系を説明するための図である。本実施形態に係る光学加工ヘッド800は、上記第2実施形態と比べると、平凸レンズ301、303、304を放物線ミラー801、803、804に置き換え、その光路に応じて全体のレイアウトを変更した点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0050】
放物線ミラー801は、入射端212に焦点を持つ放物線ミラーであり、入射端212から入射した射出光811を平行光812に変換する。
【0051】
また、平凹レンズ802は、放物線ミラー801の下流側に配置され、平行光812を発散光813に変換する。平凹レンズ802は、光学加工ヘッド800の光学系全体の収差について、マイナスに作用する。つまり光学系全体の収差を小さくすることができる。平凹レンズ802は、光軸(図中に示す矢印方向)に沿って、デフォーカス値に応じた位置にスライド可能である。すなわち、図示はしていないが、光学加工ヘッド800は、平凹レンズ802をスライド可能に支持する支持部を有している。
【0052】
さらに、放物線ミラー803は、平凹レンズ802の下流側に配置され、発散光813を平行光814に変換する。また、放物線ミラー803は、所定位置に配置された平凹レンズ802の虚像焦点位置と同じ位置に焦点を有する放物線ミラーである。つまり、放物線ミラー803の焦点距離は、平凹レンズ802の焦点距離よりも大きい。
【0053】
放物線ミラー804は、加工面上に焦点を有する放物線ミラーであり、放物線ミラー803の下流側に配置され、平行光814を、加工面260側で集光する収束光815に変換する。
【0054】
図示はしていないが、放物線ミラー803と放物線ミラー804との間に、上述した半透過ミラー222を設けることが好適である。半透過ミラー222を光軸に対して、例えば45度傾けて配置し、光源からの光を透過しつつ、加工面260で反射されさらに放物線ミラー804で反射された可視光成分の光を不図示の撮像装置に向けて反射すればよい。これにより、加工面260を観察することが可能となる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、放物線ミラー801、803、804、ならびに平凹レンズ802からなる光学系を用いて、光加工ヘッドを構成することができ、第2実施形態に比べて、直線上の光軸に全ての光学素子(放物線ミラー)を配置する必要がないため、レイアウトの自由度を大きくすることができる。なお、本実施形態では、平凹レンズ802を用いているが、それに置き換えて、虚像焦点を有する凸面鏡を用いることも可能である。
【0056】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態としての光加工装置(Optical Machining apparatus)900について、
図9を用いて説明する。光加工装置900は、上述の実施形態で説明した光加工ヘッド100、200、800のいずれかを含み、集光した光が生み出す熱で材料を溶融することにより三次元的な造形物(あるいは肉盛溶接)を生成する装置である。ここでは一例として、光加工ヘッド200を備えた光加工装置900について説明する。
【0057】
《装置構成》
光加工装置900は、光加工ヘッド200以外に、光源901、光伝送部210、冷媒供給装置903、冷媒供給部904、ステージ905、材料供給装置906、材料供給部230、ガス供給装置908およびガス供給部240を備えている。
【0058】
光源901は、レーザー、LED、ハロゲンランプ、キセノンランプ、白熱球などでよい。光線の波長は例えば1060nmであるが、これに限るものではない。
【0059】
光伝送部210は、例えばコア径がφ0.01〜1mmの光ファイバであり、光源901で発生した光を光加工ヘッド200に導く。光伝送部210のコア径が入射端212の直径となる。
【0060】
冷媒供給装置903は、冷媒として例えば水を貯蔵し、ポンプで、冷媒を冷媒供給部904に供給する。
【0061】
冷媒供給部904は内径φ2〜6の樹脂あるいは金属のホースである。冷媒を光加工ヘッド200内に供給し、その内部で循環させ、冷媒供給装置903に戻すことにより、光加工ヘッド200の昇温を抑えることができる。冷媒の供給量は例えば1〜10L/minである。
【0062】
ステージ905は、例えばXステージ、あるいはXYステージ、あるいはXYZステージであり、各軸(X、Y、Z)を稼動させることが可能である。材料供給装置906は、材料供給部230を介してノズル203に材料を供給する。例えば、材料は金属粒子、樹脂粒子、金属線材、樹脂線材、である。材料供給装置906は、キャリアガスも同時に供給できる。
【0063】
材料供給部230は例えば樹脂あるいは金属のホースであり、キャリアガスに材料を混入させた粉体流をノズル203へと導く。ただし、材料が線材の場合、キャリアガスは不要となる。ノズル203は、加工面260に向けて材料を射出する。
【0064】
ガス供給装置908は、ガス供給部240を介して光加工ヘッド200にパージガスを供給する。パージガスは例えば窒素、またはアルゴン、またはヘリウム、である。しかし、パージガスはこれに限定されるものではなく、不活性ガスならば他のガスでもよい。光加工ヘッド200に供給されたパージガスは、上記で述べた光線に沿ってノズル203から射出される。
【0065】
また図示はしていないが、光加工装置900は、光加工ヘッド200の姿勢および位置を制御する、姿勢制御機構および位置制御機構を備えている。
【0066】
《装置動作》
次に、光加工装置900の動作について説明する。造形物910は、ステージ905の上で作成される。
【0067】
光加工ヘッド200から射出される射出光315は、造形物910上の加工面260において集光される。加工面260は、集光によって昇温され、溶融される。この溶融された部位を溶融プールと呼ぶ。
【0068】
材料250はノズル203から加工面260の溶融プールへと射出される。そして、溶融プールに材料250が溶け込む。その後、溶融プールが冷却され、固化することで加工面260に材料が堆積され、3次元造形が実現する。
【0069】
パージガスはノズル203から加工面260へと射出される。そのため、溶融プールの周辺環境はパージガスによってパージされる。パージガスとして酸素を含まない不活性ガスを選ぶことにより、加工面260の酸化を防ぐことができる。
【0070】
光加工ヘッド200は、冷媒供給装置903から冷媒供給部904を介して供給された冷媒によって冷却され、加工中の昇温が抑えられる。
【0071】
以上の一連の動作と同時に、光加工ヘッド200を加工面260に沿って走査することにより、材料を堆積させながら所望の造形を行うことができる。つまり、本装置によって肉盛溶接あるいは三次元造形を作成できる。
【0072】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術思想内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0073】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する制御プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。