特許第6134886号(P6134886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6134886使用済みタイルカーペットの再生処理方法並びにその装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134886
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】使用済みタイルカーペットの再生処理方法並びにその装置
(51)【国際特許分類】
   A47G 27/02 20060101AFI20170522BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   A47G27/02 Z
   B29B17/00ZAB
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-289404(P2012-289404)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-121507(P2014-121507A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】507140117
【氏名又は名称】株式会社資源化研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100070530
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 泰之
(72)【発明者】
【氏名】真野 洋
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−297626(JP,A)
【文献】 特開2008−272043(JP,A)
【文献】 特開2005−144076(JP,A)
【文献】 特開2002−34779(JP,A)
【文献】 特開昭61−266664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 27/00−27/06
B29B 17/00−17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともループパイル糸からなるカーペット層と基布層と裏打ち層の3層からなるタイルカーペットを当該ループパイル糸のステッチ方向に引き伸ばして該裏打ち層と基布層の一部を破断せしめると同時に当該カーペット層を構成する当該ループパイル糸を当該ループが解消する様に引き伸ばしながら当該基布層若しくは該裏打ち層から剥離させることによって、当該ループパイル糸を当該基布層若しくは当該裏打ち層から個別に分離するに際し、当該タイルカーペットを、当該タイルカーペットの一つの端部を機械的に把持する第1の把持手段と当該タイルカーペットの他方の端部を機械的に把持する第2の把持手段とで把持し、当該第1の把持手段と当該第2の把持手段の間のタイルカーペットを上下動する押圧部材で押圧する事により当該タイルカーペットをステッチ方向に引き伸ばして当該裏打ち層と当該基布層の一部を破断せしめると同時に当該カーペット層を構成する該ループパイル糸を当該ループが解消する様に引き伸ばして当該基布層から分離させる様に構成された、ループパイル糸を有するタフテッドタイプのタイルカーペットの各構成材料を分離回収する方法に於いて、当該押圧部材を回転可能な円筒体で構成すると共に、当該円筒体の外表面に複数個の突起部材を配置せしめ、当該押圧部材が当該タイルカーペットを押圧する際に、当該突起部材が、当該基布層を構成する、当該タイルカーペット1の当該パイル糸の配列方向と同じ方向に配列されている糸条である経糸の一部を部分的に切断する様に構成する事を特徴とする使用済みタイルカーペットの再生処理方法。
【請求項2】
当該突起部材は、金属材料、合成樹脂材料等の材料で構成された、所定の面積を有する平面形状を有し、当該円筒体の外周表面の適宜の部位に分散して配置されている事を特徴とする請求項1に記載の使用済みタイルカーペットの再生処理方法。
【請求項3】
当該の突起部材のそれぞれは、当該円筒体の表面に、当該円筒体と一体的に形成配置されているか、適宜の接合手段を介して、当該円筒体の表面に当接配置されている事を特徴とする請求項1又は2に記載の使用済みタイルカーペットの再生処理方法。
【請求項4】
当該突起部材の当該タイルカーペットと接触する外表面部は、当該基布層の少なくとも一部の領域部分と接触して、当該領域部分を局所的に押圧する機能を有するものである事を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の使用済みタイルカーペットの再生処理方法。
【請求項5】
当該突起部材の平面形状に於ける当該円筒体の回転軸に平行な長手方向の長さは、当該タイルカーペットの当該円筒体の回転軸に平行な長手方向の長さより短く設定されており、且つ当該の突起部材の平面形状に於ける当該円筒体の回転軸と直交する方向の長さは、
当該タイルカーペットの当該円筒体の回転軸と直交する方向の長さより短く設定されている事を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の使用済みタイルカーペットの再生処理方法。
【請求項6】
当該突起部材の高さは、少なくとも当該再生処理されるタイルカーペットの厚さよりも高くなるように設定されている事を特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の使用済みタイルカーペットの再生処理方法。
【請求項7】
当該突起部材の当該円筒体の回転軸の方向から見た断面形状は、少なくとも当該突起部材が当該再生処理されるタイルカーペットと当接する外表面部が、湾曲状、山形状、平坦状、台形状を呈している事を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の使用済みタイルカーペットの再生処理方法。
【請求項8】
当該複数個の突起部材のそれぞれは、互いに、当該基布層の異なる部位に個別に当接する様に当該円筒体上に配置されている事を特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の使用済みタイルカーペットの再生処理方法。
【請求項9】
当該円筒体が、当該第1の把持手段と当該第2の把持手段の間に固定把持されている当該タイルカーペットを押圧する為に上昇運動或は下降運動を実行する間、予め定められた所定の角度を以て、間欠的に回転する様に構成されており、且つ当該複数個の突起部材のそれぞれは、当該円筒体一の間欠回転により、当該複数個の突起部材の内の一部の当該突起部材が、当該基布層の一部の領域部と当接する様に構成されている事を特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の使用済みタイルカーペットの再生処理方法。
【請求項10】
当該円筒体が、当該第1の把持手段と当該第2の把持手段の間に固定把持されている当該タイルカーペットを押圧する為に上昇運動或は下降運動を実行する間、予め定められた所定の角度を以て、間欠的に回転する様に構成されており、且つ当該複数個の突起部材のそれぞれは、当該円筒体の当該回転運動に応答して、時系列的に当該基布層の相互に異なる領域部分と個別に当接する様に構成されている事を特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の使用済みタイルカーペットの再生処理方法。
【請求項11】
当該円筒体の上昇運動或は下降運動は、間欠的に実行される様に構成されており、当該円筒体の一の間欠的昇運動或は下降運動に応答して、当該円筒体は、一の間欠的な回転運動が実行される様に構成されている事を特徴とする請求項9又は10に記載の使用済みタイルカーペットの再生処理方法。
【請求項12】
少なくともループパイル糸からなるカーペット層と基布層と裏打ち層の3層からなるタイルカーペットを当該ループパイル糸のステッチ方向に引き伸ばして該裏打ち層と基布層の一部を破断せしめると同時に当該カーペット層を構成する当該ループパイル糸を当該ループが解消する様に引き伸ばしながら当該基布層若しくは該裏打ち層から剥離させることによって、当該ループパイル糸を当該基布層若しくは当該裏打ち層から個別に分離する装置であって、当該タイルカーペットを、当該タイルカーペットの一つの端部を機械的に把持する第1の把持手段と当該タイルカーペットの他方の端部を機械的に把持する第2の把持手段とを有し、且つ、当該第1の把持手段と当該第2の把持手段の間に把持された当該タイルカーペットを押圧し、当該タイルカーペットをステッチ方向に引き伸ばして当該裏打ち層と当該基布層の一部を破断せしめると同時に当該カーペット層を構成する該ループパイル糸を当該ループが解消する様に引き伸ばして当該基布層から分離させる機能を有する上下動可能な押圧部材とから構成された使用済みタイルカーペットの各構成材料を分離回収する装置に於いて、当該押圧部材を回転可能な円筒体で構成すると共に、当該円筒体の外表面に複数個の突起部材を配置せしめ、当該押圧部材が当該タイルカーペットを押圧する際に、当該突起部材が、当該基布層を構成する、当該タイルカーペット1の当該パイル糸の配列方向と同じ方向に配列されている糸条である経糸の一部を、部分的に切断する様に構成する事を特徴とする使用済みタイルカーペットの再生処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくともループパイル糸からなるカーペット層と裏打ち層とからなる使用済みタイルカーペットから、当該カーペット層を構成する当該ループパイル糸と当該裏打ち層を個別に分離回収し、当該タイルカーペットから分離された当該裏打ち層を、当該裏打ち層再生加工処理領域に搬送すると共に、当該タイルカーペットから分離されたループパイル糸を容易に再生加工処理工程に提供する事が可能な使用済みタイルカーペットの再生処理方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイルカーペットが広く使われるようになって既に30数年が経過し、それら大量の使用済みタイルカーペットが、更新の時期を迎えており、それらの張替えに伴う更新処理に際して発生する大量の使用済みタイルカーペットの廃棄処理が、行政側も含めて大きな社会問題となってきている。
即ち、係る使用済みタイルカーペットは、一般的には産業廃棄物として取り扱われるものであり、これまでは、当該使用済みタイルカーペットは、燃やすか、粉砕するか或いはそのまま地中に埋設するなどの方法が取られてきている。
【0003】
然しながら、その一方で、環境に対する負荷の増大を抑制し、環境汚染の発生を極力防止する必要性が近年、顕著に高まってきていることから、当該使用済みタイルカーペットの廃棄に関しては、その廃棄方法やその廃棄規則が厳格に設定されて来ていることから、それら廃棄物の処理は年々困難になってきており、又、廃棄処理に係る費用も莫大なものとなってきているので、行政側も生産者側も、その負担の増大に頭を痛めているのが現状である。
【0004】
処で、タイルカーペットは、一般的には、500mm×500mmの四角形に形成されており、基本的には、主として塩化ビニル樹脂系材料で構成されている裏打ち層(バッキング層)と主としてナイロン系合成繊維からなるパイル糸が多数密に植設されて形成されたカーペット層(繊維層)が積層・複合されて形成されているものである。
そして、仮に当該使用済みタイルカーペットを、焼却手段を利用して廃棄処理をしようとすると、当該裏打ち層に含まれている塩化ビニル樹脂系材料成分からダイオキシンが発生するという問題を伴うので、焼却手段を使用した廃棄処理方法は、一層困難となってきており、当該燃焼処理時の燃焼温度をかなり高温に設定すれば、ある程度の廃棄処理が可能ではあるが、コストの増大と言う、大きな問題が発生する。
【0005】
以上の背景から、回収した使用済みのタイルカーペットの廃棄処理方法が完全に確立していない現状から、当該回収した使用済みのタイルカーペットを廃棄せずに、再利用しようとするコンセプトが社会的課題となってきている。
然しながら、当該使用済みのタイルカーペットを有効に再生して同一の商品として、或いは全く異なった新商品として使用するための、所謂、リサイクル技術に関しては、現段階では、確実な技術が開発されていないのが現状である。
【0006】
係る問題の解決の為に、行政側としても、使用済みのタイルカーペットの廃棄処理技術やそのリサイクル技術の開発をサポートする為に、補助金の供給を含めた種々の支援施策を提供しているが、現段階では、未だ当該使用済みのタイルカーペットのリサイクル技術に関し、革新的な技術開発が見出されていない。
【0007】
此処で、行政側が定義するリサイクル技術としては、当該タイルカーペットを構成する全ての構成材料の略100%が回収されて、同一若しくは異なる製品として再生の為に利用されているか、若しくは、限りなく100%に近い当該タイルカーペットを構成する全ての構成材料が、同一若しくは異なる製品として再生の為に利用されている事が、必要となっている。
従って、当該使用済みタイルカーペットが産業廃棄物の指定を免れる為には、少なくとも、当該裏打ち層を構成する塩化ビニル樹脂系材料の略全量と当該カーペット層を構成するナイロン系繊維の略全量が再生製品として利用される状況を形成する必要がある。
【0008】
処で、通常のタイルカーペットは、その一個の総重量の約65%は、当該裏打ち層を構成する塩化ビニル系樹脂材料が占め、残りの約35%は、当該カーペット層を構成するパイル糸であるナイロン系合成繊維を主体とする繊維材料と、当該パイル糸が植設されている、主にポリエステル系合成繊維等から構成されている基布及び当該パイル糸を当該基布に一時的に仮止めしている塩化ビニル系樹脂材料の接着剤とで占められているが、当該基布及び当該接着剤の総重量は、当該パイル糸の繊維重量に対しては、高々5%程度であるので、これ等は、後工程で適宜分離し、焼却するか、他の素材に混ぜ合わせて使用する事が可能である。
【0009】
従って、タイルカーペットのリサイクルを考える場合には、当該裏打ち層と当該カーペット層との双方を効率的に分離させ、それぞれの層を構成する材料・素材を100%乃至は、限りなく100%に近い状態で再生処理するシステムを構築する事が重要である。
処で、塩化ビニル系樹脂材料は、その熔融・成型の繰り返しが極めて容易な樹脂成分である事は周知の事実であり、従って、当該裏打ち層を純粋な形で、当該タイルカーペットから分離出来れば、当該裏打ち層を集めて再熔融処理を行い、再度成型加工することにより、新たなタイルカーペット用裏打ち層が得られる。
一方、一般的には、ナイロン系合成繊維を使用して構成される商品分野は広く、産業資材分野も含めて多種多様な商品或いは資材に利用されている。
【0010】
然しながら、当該タイルカーペットの当該カーペット層を構成するナイロン系合成繊維は、仮に当該裏打ち層から分離されたとしても、上記した様な樹脂が多数付着していて不純物が含まれている事、或いは、各繊維が極度に短い繊維長を有し、且つ直線性を維持しておらず、屈折していたり、湾曲していたりしていることから、ナイロン系合成繊維を使用する用途は多いにも拘わらず、当該素材の搬送或いは加工処理上で多くの問題点が存在する為、再生製品として当該ナイロン系合成繊維を使用する事は困難な状況にあった。
【0011】
従って、仮に、当該タイルカーペットから分離されたナイロン系合成繊維が当該不純物を含まず、略純粋なナイロン系合成繊維が得られると共に、当該ナイロン系合成繊維を使用して再生製品を加工、製造する工程で効率よく使用することが可能な形態で当該ナイロン系合成繊維が供給されるならば、当該タイルカーペットから分離され他ナイロン系合成繊維の100%若しくはそれに近い再生率の下で、リサイクル処理するシステムを完成することが可能である。
係る観点から、従来の開発技術をレビューしてみると、かなり古い技術としては、例えば、米国などでは、使用済みのタイルカーペットを洗浄して、その表面のカーペット層を再度染色して模様を施し、再利用しているが、一度汚れたカーペット層の汚れを充分に落とすことは難しく、染色の色合いは必然的に濃い色に限定されてくるのが実情である。
【0012】
一方、従来に於けるタイルカーペットの再利用技術としては、例えば、特許文献1〜2記載の技術がある。
これらの技術は、カーペット層をバリカン等の切断装置を使用して、実質的に刈り取って除去することにより得られた廃材の表面または裏面に表面化粧樹脂層を形成するものである。
カーペット層を実質的に刈り取って除去する理由は、カーペット層が存在すると、その面に接着剤や粘着材が適用できないからである。そのため、これらの技術においてはカーペット層を実質的に刈り取ってしまう必要があったのである。
【0013】
しかし、カーペット層の刈り取り工程が必要となるためコストアップの原因となる他、バリカン等では、当該カーペット層を刈り取る事は実際には不可能な事が判明している。
また、特許文献3〜5に記載されている回収タイルカーペットを微細に粉砕し、比重分離法等によりカーペット層と塩化ビニル裏打ち層を分離する方法も一般に行われているが、常温で柔らかいタイルカーペットを粉砕するには多くのエネルギーを必要とし、粉砕時の騒音も大きい。
然も、当該粉砕した塊状物は、単に焼却処理する事が予定されているに過ぎず、係る塊状物をどの様に再生製品の一部の素材、原料として使用するかという技術思想に関しては、開示も示唆もない。
【0014】
更に、特許文献6には、マイナス30℃以下に冷凍することにより容易に破砕出来る裏打ち層を用いたタイルカーペットを作ろうということも提案されているが、既に市場に出回っている軟質塩化ビニルを裏打ち層とするタイルカーペットに適用するには冷凍温度を極度に低くする必要がある。
然しながら、特許文献6には、カーペット層を如何に処理して再生可能な原料にするかに関しては、何らの開示も示唆もない。
【0015】
これらの技術はいずれもタイルカーペットの塩化ビニル裏打ち層は、混ざり物が少ない状態で回収できれば再利用できると言う発想に基づいている。従って、ループパイル糸を主として構成するナイロン繊維は取り除いて廃棄するか、もしくは焼却すると言うことが前提であり、刈り取ったり、微粉砕してでもタイルカーペットから除去すると言う考え方であった。しかし、これらの方法では粉砕されたタイルカーペットの毛屑を完全に除去するには至らず、回収された塩化ビニール裏打ち層に混入して、その品質を低下させる原因となっている。
【0016】
繊維屑は衣類の屑が再利用できずに大量に滞貨になっているので、今更タイルカーペットからの回収繊維を利用しようと言うのは無理なこととも考えられるが、素材がナイロンに限定されており、微粉砕されておらずに繊維としてのある程度の長さを保持しているものが回収できれば、再利用の道が開けてくるものと考える。
これらの問題を解決するために、本発明者等は先に特許文献7の技術を特許出願した。
この技術は塩化ビニル裏打ち層を効率良く回収して再利用することには成功したが、塩化ビニル裏打ち層以外の部分は、塩化ビニルコンパウンドがこびりついたカーペット層と基布層が一体になっており、この基布層を構成する例えば、ポリエステル系繊維及びループパイル糸を構成する例えばナイロン繊維糸とを個別に再利用するには更にカーペット層と基布層繊維とを分離回収する必要があった。
【0017】
また、タイルカーペットの製造時には、耳バリが大量に発生するが、この耳バリは、形状が特異であるために特許文献7でも解決は難しかった。
この耳バリは、タイルカーペットの寸法精度を上げるために、一旦カーペット層と塩化ビニル裏打ち層を貼り合せた広幅長尺のシートを作り、タイルカーペットの形状のパンチで打ち抜く時に発生する生産工程上に大量に発生する副生物である。
【0018】
一方、特許文献10は、使用済みタイルカーペットの再利用方法として、当該使用済みタイルカーペットを当該カーペット層と裏打ち層とに分離することはせずに、当該使用済みタイルカーペットを細かく裁断して粒状の塊状物となし、これを新規に用意した裏打ち層形成用の塩ビ系合成樹脂に混入させ、それを新規のタイルカーペットの裏打ち層として使用する技術が示されている。
係る技術は、使用済みのタイルカーペットから完全にカーペット層と裏打ち層とを分離する技術が不可能であるという前提に立って開発された技術であり、確かに、使用済みタイルカーペットを完全リサイクルの形で再生タイルカーペットを製造すると言う意味では、その目的は達成されたものと観られるが、係る方法では、一世代のみの再生に終わるものであり、第2世代更には第3世代のタイルカーペットの再生には全く通用しない技術であるに過ぎないのである。
【0019】
つまり、上記技術で製造した再生タイルカーペットの裏打ち層は塩ビ系合成樹脂にパイル糸と裏付け層の樹脂との混在する粒状物が大量に含まれているので、その分離に余計な費用が掛る事は明白である。
【0020】
又、本願出願人は、特許文献11及び特許文献12に示す様に、使用済みタイルカーペットを再生タイルカーペットの裏打ち層として利用する為、使用済みタイルカーペットや新規のカーペット原反の裏に当該使用済みのタイルカーペットを積層配置させる技術を開示したが、係る技術も第3世代までは再生使用が可能であるが、それ以上の世代となると当該裏打ち層の厚みが増大してしまうので、実用に耐えられなくなるという問題がある。
一方、上記した通り、使用済みのタイルカーペットからカーペット層と裏打ち層とを完全に且つ容易に分離する事が不可能とされていた過去の技術思想に挑戦する方法として本願出願人は、特許文献8及び特許文献9を提案している。
【0021】
係る技術に於いては、作業環境を悪化させる事なく、低エネルギーの下で、効率的に使用済みのタイルカーペットからカーペット層と裏打ち層とを完全に且つ容易に分離する事が可能となり、業界では、画期的な技術であると評価されている。
然しながら、係る新規な技術でも、当該裏打ち層の再生処理は問題ないとしても、当該カーペット層から分離されたパイル糸を、下流工程である、当該繊維の再生処理工程に適切な形態或いは適切な長さで供給出来る手段が開発されていなかったため、実用化が遅れていた。
つまり、従来から、当該タイルカーペット1からパイル糸3を分離して再利用しようとする考えは存在してはいたが、仮に、当該パイル糸3を当該タイルカーペット1から分離した場合、それが、一定の繊維長を有するものであっても、張力を除くとパイルとしてのループ状の形態がくせとして残っている為、縮が発生し、繊維同士が絡み合って塊状となるので、繊維相互の整然性が完全に失われてしまうことから、後工程での再利用は、実質的に不可能であった。
換言するならば、当該タイルカーペット1を再利用可能な完全リサイクルシステムを構築するとすれば、当該カーペット層を構成するパイル糸が、長繊維の状態のまま、複数本のパイル糸が相互に平行に配列された状態の繊維シート状或は繊維束状の形態で、当該繊維製品の再生処理工程に供給されることが必要で、当該繊維の再生処理工程側で、処理し易い、再処理加工が容易であるとの便宜性を有するものである必要があり、更に、当該再生処理用に供給される繊維製品は、コストが安くなくてはならず、その為には、当該分離処理工程は、単純で、操作が容易で、処理操作時間が短く、電力等のエネルギー費用が安価で出なければならないという、厳しい条件が要求されているのが現実である。
従って、当該タイルカーペット1から分離回収された当該パイル糸3を、後工程での効率的、経済的な再利用を可能とするためには、当該タイルカーペット1から分離回収された当該パイル糸3が、後工程に於ける取り扱い性を良くするためには、当該タイルカーペットから分離されたパイル糸群の各繊維間の整然性が維持されて、繊維原材料として搬送並びに後加工に於いて取り扱い性に優れた形態にすることが望まれていた。更には、当該パイル糸群が、張力が除去された状態に於いても、繊維間の整然性が維持されている形態にすることも望まれていた。
【0022】
係る問題点を解消する為に、本願発明者は、特に、特許文献9(特許第4357939号)に開示されているタイルカーペットのリサイクル方法に注目し、その中で、当該特許文献の図6及び図7に示された当該タイルカーペットから、当該タイルカーペットを構成する裏打ち層、基布層及びカーペット層を形成しているループパイル糸とを効果的に個別に分離する為の方法が、効果的な技術であると確信し、当該タイルカーペットの分離手段として使用しながら、上記した技術的問題点の解消の為に種々の実験を繰り返してきた。
然しながら、上記した方法に於いても、当該使用済みのタイルカーペット(500mm×500mm)を、本願明細書の図3に示す様に、当該押圧部材70を上昇或は下降させる事により当該タイルカーペット1を引き延ばして、当該裏打ち層2と当該基布層5を細かく分断し、且つ当該ループパイル糸を引き延ばすための操作を実行する為には、当該押圧部材70には、約2t(トン)の荷重を掛ける事が必要であり、又、当該第1の把持部21及び第2の把持部21’にもかなりの荷重を掛ける必要があり、その結果、全体の装置が大型化、高重量化、強靭化する必要が出てきため、材料費が高騰し、又、駆動の為の電力も増大し、エネルギーコストが高騰した他、操作が複雑で、各工程での操作速度も低下する等の問題が発生した事から、作業効率が低下し、その分作業コストも増加するなどの原因から、理想とした、低コストの再生処理工程向けの繊維材料を製造することが不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】 特開2000−220281号公報
【特許文献2】 特開2000−220282号公報
【特許文献3】 実開昭59−132581号公報 1頁
【特許文献4】 実開昭59−132582号公報 1頁
【特許文献5】 特開平8−312117号公報 2頁 段落0005
【特許文献6】 特開平9−073197号公報 3頁 段落0018
【特許文献7】 特願2002−320421号(特開2005−144076)
【特許文献8】 特許第4126340号公報
【特許文献9】 特許第4357939号公報
【特許文献10】 特開2006−037274号公報
【特許文献11】 特開2006−116298号公報
【特許文献12】 特開2005−282348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従って、本発明の目的は、上記した従来技術に於ける問題点を解消し、使用済みのタイルカーペットから、タイルカーペットを含む完全リサイクル製品を製造する為に、当該使用済みのタイルカーペットから当該カーペット層及び当該裏打ち層とを完全に分離すると同時に、当該分離されたカーペット層から、当該カーペット層を構成していた複数本のパイル糸群が相互に並列状に配列された繊維束或は繊維シートとして後工程に提供できる、簡易な装置で実行出来、処理操作が簡便で、処理速度が速く、消費エネルギーが少なくて済む、全体として再生処理用の繊維製品の低コスト化が実現出来る使用済みタイルカーペットの再生処理方法並びに当該使用済みタイルカーペットの再生処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は上記した目的を達成するため、基本的に以下に記載されたような技術構成を採用するものである。
即ち、本発明に於ける第1の態様としては、少なくともループパイル糸からなるカーペット層と基布層と裏打ち層の3層からなるタイルカーペットを当該ループパイル糸のステッチ方向に引き伸ばして該裏打ち層と基布層の一部を破断せしめると同時に当該カーペット層を構成する当該ループパイル糸を当該ループが解消する様に引き伸ばしながら当該基布層若しくは該裏打ち層から剥離させることによって、当該ループパイル糸を当該基布層若しくは当該裏打ち層から個別に分離するに際し、当該タイルカーペットを、当該タイルカーペットの一つの端部を機械的に把持する第1の把持手段と当該タイルカーペットの他方の端部を機械的に把持する第2の把持手段とで把持し、当該第1の把持手段と当該第2の把持手段の間のタイルカーペットを上下動する押圧部材で押圧する事により当該タイルカーペットをステッチ方向に引き伸ばして当該裏打ち層と当該基布層の一部を破断せしめると同時に当該カーペット層を構成する該ループパイル糸を当該ループが解消する様に引き伸ばして当該基布層から分離させる様に構成された、ループパイル糸を有するタフテッドタイプのタイルカーペットの各構成材料を分離回収する方法に於いて、当該押圧部材を回転可能な円筒体で構成すると共に、当該円筒体の外表面に複数個の突起部材を配置せしめ、当該押圧部材が当該タイルカーペット押圧する際に、当該突起部材が、当該基布層を構成する経糸の一部を部分的に切断する様に構成する事を特徴とする使用済みタイルカーペットの再生処理方法であり、又、本発明に於ける第2の態様としては、基本的には、少なくともループパイル糸からなるカーペット層と基布層と裏打ち層の3層からなるタイルカーペットを当該ループパイル糸のステッチ方向に引き伸ばして該裏打ち層と基布層の一部を破断せしめると同時に当該カーペット層を構成する当該ループパイル糸を当該ループが解消する様に引き伸ばしながら当該基布層若しくは該裏打ち層から剥離させることによって、当該ループパイル糸を当該基布層若しくは当該裏打ち層から個別に分離する装置であって、当該タイルカーペットを、当該タイルカーペットの一つの端部を機械的に把持する第1の把持手段と当該タイルカーペットの他方の端部を機械的に把持する第2の把持手段とを有し、且つ、当該第1の把持手段と当該第2の把持手段の間に把持された当該タイルカーペットを押圧し、当該タイルカーペットをステッチ方向に引き伸ばして当該裏打ち層と当該基布層の一部を破断せしめると同時に当該カーペット層を構成する該ループパイル糸を当該ループが解消する様に引き伸ばして当該基布層から分離させる機能を有する上下動可能な押圧部材とから構成された使用済みタイルカーペットの各構成材料を分離回収する装置に於いて、当該押圧部材を回転可能な円筒体で構成すると共に、当該円筒体の外表面に複数個の突起部材を配置せしめ、当該押圧部材が当該タイルカーペット押圧する際に、当該突起部材が、当該基布層を構成する経糸の一部を部分的に切断する様に構成する事を特徴とする使用済みタイルカーペットの再生処理装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、基本的には上記した様な技術構成を採用しているので、使用済みのタイルカーペットから、タイルカーペットを含む完全リサイクル製品を製造する為に、当該使用済みのタイルカーペットから当該カーペット層及び当該裏打ち層とを完全に分離すると同時に、当該分離されたカーペット層から、当該カーペット層を構成していた複数本のパイル糸群が相互に並列状に配列された繊維束或は繊維シートとして取り出し、当該繊維束或は繊維シートを下流の繊維再生処理工程に供給する様に構成された完全リサイクルシステムを完成させる事が出来ると共に、簡易な装置で実行出来、処理操作が簡便で、処理速度が速く、消費エネルギーが少なくて済む、全体として再生処理用の繊維製品の低コスト化が実現出来る使用済みタイルカーペットの再生処理方法並びに当該使用済みタイルカーペットの再生処理装置を提供する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明に係る使用済みタイルカーペットの再生処理システムの一具体例の構成を示す図である。
図2図2は、本発明に係る使用済みタイルカーペットの一具体例を示す概略図である。
図3図3は、本発明に係る使用済みタイルカーペットの再生処理方法の原理を説明する図である。
図4図4は、本発明に係る使用済みタイルカーペットの再生処理方法の原理を説明する図である。
図5図5は、本発明に係る突起部材の具体例の構成を説明する図である。
図6図6は、本発明に係る突起部材の具体例の構成を説明する図である。
図7図7は、本発明に係る円筒体の構成の一具体例を説明する図である。
図8図8は、本発明に係る円筒体の構成の一具体例を説明する図である。
図9図9は、本発明に係る使用済みタイルカーペットの再生処理装置の動作の一具体例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明に係る使用済みタイルカーペットの再生処理方法及びその装置に関する一具体例に於ける構成の例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
即ち、図1は本発明の第1の態様である当該使用済みタイルカーペットの再生処理方法の一具体例の構成の例を示す図であって、図中、少なくともループパイル糸3からなるカーペット層4と基布層5と裏打ち層2の3層からなるタイルカーペット1を当該ループパイル糸3のステッチ方向に引き伸ばして該裏打ち層2と基布層5の一部を破断せしめると同時に当該カーペット層4を構成する当該ループパイル糸3を当該ループが解消する様に引き伸ばしながら当該基布層5及び又は該裏打ち層2から剥離させることによって、当該ループパイル糸3を当該基布層5及び又は当該裏打ち層2から個別に分離するに際し、当該タイルカーペット1を、当該タイルカーペット1の一つの端部を機械的に把持する第1の把持手段21と当該タイルカーペット1の他方の端部を機械的に把持する第2の把持手段21’とで把持し、当該第1の把持手段21と当該第2の把持手段21’の間のタイルカーペット1を上下動する押圧部材70で押圧する事により当該タイルカーペット1をステッチ方向に引き伸ばして当該裏打ち層2と当該基布層5の一部を破断せしめると同時に当該カーペット層を構成する当該ループパイル糸3を当該ループが解消する様に引き伸ばして当該基布層5から分離させる様に構成された、ループパイル糸3を有するタフテッドタイプのタイルカーペット1の各構成材料を分離回収する方法に於いて、当該押圧部材70を回転可能な円筒体71で構成すると共に、当該円筒体71の外表面に複数個の突起部材72を配置せしめ、当該押圧部材72が当該タイルカーペット1を押圧する際に、当該突起部材72が、当該基布層5を構成する経糸73の一部を部分的に切断する様に構成する事を特徴とする使用済みタイルカーペットの再生処理方法が示されている。
【0029】
即ち、本発明の基本的な技術思想は、上記した従来技術の説明の際にも説明した様に、当該従来技術の問題点を改良する事にある。
即ち、従来技術に於いては、当該使用済みタイルカーペット1を再生処理するに際し、当該タイルカーペット1の当該パイル糸の配列方向に引張張力を印加して、当該タイルカーペット1を当該パイル糸の配列方向に引き延ばして、当該ループパイル糸3を当該裏打ち層2や当該基布層5から分離させる場合には、当該基布層5の中の、当該タイルカーペット1の当該パイル糸の配列方向と同じ方向に配列されている糸条73(これを縦糸と称する事にする)が多数本相互に平行して配列しており、係る縦糸73の全部を同時に且つ短時間の操作で切断する必要があるが、その為には、一時的に過大な張力を当該基布層5に印加して、当該基布層5の当該縦糸73を切断する必要があるが、その為には、当該タイルカーペット1を引張り押圧する為の装置全体が、大型で、頑丈に構成される必要があり、又張力印加手段も大型で、強力な加圧力を発揮する様に構成される必要があり、そうでなければ、通常、概して一つのタイルカーペット1を押圧分離するのに約2トンの荷重を印加する事が要求され、それによって、場合により、当該押圧部材そのものが湾曲したり、変形したり、破損したりする危険性があった。
【0030】
その為、従来の当該タイルカーペットの再生処理装置に於いては、材料費から見て、その製造コストが大幅に高騰したものであると共に、それぞれの処理操作が複雑で処理時間も掛るため、作業効率が低く、更には消費するエネルギーの量も増大することから、生産効率が低く、従って、生産コストの高騰が避けられなかった。
従って、本発明の基本的な技術思想は、当該再生処理を実行するに際し、当該タイルカーペット1の当該基布層5の当該縦糸73群を部分的に、予め少ないエネルギーを使用して、切断しておくか、切断し易い様な状態にしておき、当該縦糸73の全て或いはその大部分が、その一部で切断されたか、その一部に切断され易い様な状態が付与された後に、当該基布層5の全体に所定の張力を印加して、一気に、当該基布層5の縦糸群73を切断75する様にしたものである。
【0031】
この様に、当該基布層5の当該縦糸73群の一部を切断処理するか、当該縦糸73群の一部に切断され易い様な状態を付与するには、それほど大きな張力を当該基布層5に印加する必要はなく、実験によれば、当該基布層5に於ける、当該縦糸73群の中で、幅が約5cm程度の領域内に含まれる当該縦糸群73をその一部で切断させる為には、約200kg程度の張力を印加することで十分である事が判明しているので、係る比較的に低い張力の下で、当該操作を複数回繰り返して、当該タイルカーペット1の幅方向、即ち、当該円筒体71の回転軸方向に配列されている全ての或いは略全部の縦糸73を切断した後、当該タイルカーペット1の当該幅方向に、それまでに使用した張力よりも若干高めの張力を印加することにより、当該基布層5を初め当該裏打ち層2も同時に破断させる事が可能となる。
【0032】
つまり、本発明によれば、従来技術で必要とされていた2トン以上の張力を掛ける必要なく、その約5乃至10分の一の張力で、当該使用済みのタイルカーペット1から当該ループパイル糸3を完全に且つ確実に、当該ループパイル糸3を途中で切断する事無く、分離する事が可能となるのである。
その結果、本発明に於いて使用される使用済みタイルカーペットの再生処理装置は、小型化、軽量化が可能となり、又、分離処理に要するエネルギーの量も節約が可能であり、更には、それぞれの処理操作が簡易化、単純化され、処理速度の向上と作業効率の向上と併せて、総合的な製造コストが大幅に低減化させる事が可能となる。
更に、本発明に於いては、当該タイルカーペット1の当該ループパイル糸3を切断、破断させる事無く、当該基布層5の一部の縦糸の一部に局所的にその周辺に印加される圧力よりも高い圧力を印加する様に構成されているので、比較的小さな張力で当該基布層5の当該縦糸73を切断する事が可能となるのである。
【0033】
尚、当該基布層5の当該縦糸73と直交する方向に配列されている糸条74は、緯糸と称することにするが、本発明では、当該緯糸74は、当該ループパイル糸3の分離引き離し処理操作には、殆ど影響がないので、当該緯糸74を敢えて切断する操作は必要としていない。
その為、後述するように、当該突起部材72には、特別に当該縦糸73を切断する様な刃体を設ける必要はなく、当該突起部材72に適宜の刃物、刃体を設ける事は、当該ループパイル糸3を切断する事につながるので、避けるべきである。
【0034】
又、本発明では、使用済みのタイルカーペット1を再生処理して同一若しくは異なる商品の原材料として再利用を可能とし、それによって実質的なリサイクルシステムを完成させるものであって、従来、焼却処分か埋設処理しか手立てのなかった、当該使用済みタイルカーペットから分離されたパイル糸群を、不純物を含まない、純粋化された所定の長さに切り揃えられた当該パイル糸を構成する原料繊維からなる繊維束として再生させると共に、後工程に於ける当該繊維の再生処理工程で使用し易く又処理し易すい形態に加工して供給出来る様に構成したものである。
従って、本発明のシステムによって、使用済みタイルカーペットから分離された当該カーペット層を構成するパイル糸を利用して新たな製品に加工する為の多くの工程に対して容易に供給出来、且つ当該工程に於いて、容易に且つ効率的に必要な所定の加工処理に供することが可能であるので、利用価値及び使用に対する利便性が顕著に優れており、再生処理分野の拡大が可能となり、それによって完全リサイクルシステムの適用範囲が著しく拡大する事が可能となるのである。
【0035】
以下に、本発明に於ける当該再生処理システムの更に詳細な具体例について、図面を参照しながら詳述する。
先ず、本発明に係る当該システムに於いては、先ず、使用済みタイルカーペット1を用意する。
本発明に於いて使用される当該使用済みタイルカーペット1は、図2(A)及び図2(B)に示す様に、主として塩化ビニル系合成樹脂で構成された裏打ち層2と、合成繊維、主にナイロン繊維で構成されたパイル糸3群から構成されているカーペット層4とが積層接合されて構成されたものであり、当該パイル糸3群は、主にポリエステル系合成繊維等で構成された基布5に、適宜の接着剤6を介して仮止めされている。
【0036】
処で、一般的には、当該タイルカーペット1の当該パイル糸3は、主にナイロン繊維で構成されたものが多いが、中には、ポリプロピレン系合成繊維やポリエステル系合成繊維或いはその他の繊維で構成されたもの、或いは、ナイロン繊維と他の合成繊維とを混紡させたパイル糸或いはその両者を混繊させたパイル糸を使用したものも一部に見られる。
一方、繊維製品の多くは、ナイロン繊維を原料とする製品が多く、従って、リサイクル製品の対象となる製品としても、ナイロン繊維を使用した製品が多く見られるのは必然的である。
従って、本発明に於いては、完全リサイクルシステムを実行する機会を拡大させる必要から、本発明に於いて使用される当該使用済みタイルカーペット1としては、ナイロン繊維のみで構成されたパイル糸3を使用してカーペット層4を形成しているタイルカーペットを使用する事が望ましい。
従って、本発明に於いては、本発明に係るリサイクル処理システムを開始する以前に、当該システムに投入する使用済みタイルカーペット1のパイル糸3がナイロン繊維のみで構成されているか否かを事前に検査し、当該パイル糸3がナイロン繊維以外の繊維で構成されているタイルカーペット1及び当該パイル糸3がナイロン繊維とナイロン繊維以外の繊維特にポリプロピレン繊維との混紡或いは混繊させたものである場合は、当該タイルカーペット或いはその関連のロット全てを本発明のシステムから排除する事が望ましい。
【0037】
本発明に於ける当該使用済みタイルカーペットの再生処理方法では、基本的には、使用が決定された当該使用済みタイルカーペット1を、図3(A)及び図3(B)に示す様に、当該タイルカーペット1に於ける、当該ループパイル糸3が配列されている方向Pに沿って相互に対向して位置する両端縁部7、8のそれぞれを、個別の適宜の把持機能を有する第1の把持手段21と第2の把持手段21’により強固に把持固定する。
次いで、本発明に於いては、図3(C)及び図3(D)に示す様に、当該第1の把持手段21と第2の把持手段21’により、所定の張力を当該タイルカーペット1に印加しながら、所定の移動速度の下に、当該ループパイル糸3が配列されている方向Pに沿って相互に離反するように左右方向に、適宜の駆動手段を使用して、それぞれ移動させる。
【0038】
係る操作により、当該タイルカーペット1の当該裏打ち層2及び当該基布層5は、適宜の部位に於いて、ランダムに順次破断して、小片形状9,10を呈して、下方に落下するか、その一部は、当該第1の把持手段21及び当該第2の把持手段、21’の近傍部に、引っ掛かった状態の破断片11で保持される。
係る小片形状9,10は、当該牽伸装置の下方に設置された適宜の捕集容器12等に収納させる事が可能であり、又、当該破断片11は、適宜の手段を使用して、自動的或いはマニュアル操作により払い落して回収する事が可能である。
一方、上記牽伸操作が継続される間、当該タイルカーペット1のパイル糸3は、当該裏打ち層2が破断、分離されていく間に、当該裏打ち層2から、所定の張力の下に、逐次引き抜かれ、略直線状の糸条として当該第1及び第2の把持手段21、21’間に張設される形をとる。
【0039】
本発明に於ける当該第1と第2の把持手段21、21’による牽伸操作により当該パイル糸3に印加される張力は、特に限定されるものではないが、少なくとも、当該それぞれのパイル糸の少なくとも一部が切断されない状態とする様な張力である事が望ましい。
又、本発明に於いては、上記した当該タイルカーペット1を伸長処理するに際し、当該伸長操作をスムースに且つより低い張力で実行する必要がある場合には、当該裏打ち層2を予め加熱処理しておき、当該裏打ち層2を構成している塩化ビニル樹脂を軟化させておく事も好ましい具体例である。
その為に加熱温度は塩化ビニル樹脂の軟化温度である摂氏160度より高く、ナイロン繊維の軟化点である摂氏220度より低い事が望ましい。特に、ポリプロピレン繊維の軟化点より高く、ナイロン繊維の軟化点である摂氏220度より低く加熱温度をコントロールできれば牽伸操作時にポリプロピレン繊維がプツプツ切れてくるのでリサイクルの適否を容易に判別できる。
【0040】
本発明に於いては、上記の牽伸操作が終了すると、当該ループパイル糸3は、当該タイルカーペット1から分離された当該複数本のパイル糸による有限長の連続した繊維からなる連続状繊維シート或いは連続状繊維束が得られるのである。
係る状態では、当該第1と第2の把持手段21、21’間に張設された当該パイル糸3の長さは、約7m前後となる。
【0041】
此処で、本発明に係る当該使用済みタイルカーペットの再生処理方法に直接使用される使用済みタイルカーペットの再生処理装置36の具体例の構成を図4乃至図9参照しながら詳細に説明する。
即ち、図1にもその構成の概要を示しているが、本発明に於ける当該使用済みタイルカーペットの再生処理装置36の基本的な技術構成は、前記した通り、特許第4357939号公報(特許文献9)に開示された構成を基礎とするものであり、更に詳細については、図4に示す通りであって、当該使用済みタイルカーペット1の両端縁部をそれぞれ、上下一対の加圧式把持手段21からなる2組の加圧式把持手段21、21’で固定・把持すると共に、当該2組の加圧式把持手段(第1及び第2の把持手段)21、21’の間に固定保持されている当該タイルカーペット1の略中央部に、当該タイルカーペット1の当該パイル糸3の配列方向Pと直交する方向に配列された、適宜の形状を有する、略直状の押圧棒状体70或いは湾曲状を有する押圧棒状体70を押し当てて、当該タイルカーペット1の表面に直交する方向で、下方に向けて下降させるか、上方に向けて上昇させることにより、当該使用済みタイルカーペット1を引き延ばしながら、当該カーペット層4と当該裏打ち層2とを分離し、且つ当該パイル糸3を直線状に引き延ばす様に構成された牽伸手段151を使用するものである。
【0042】
次に、上記した本発明に於ける当該牽伸・分離手段36に係る具体例について、更にその具体的な構成例を詳細に説明するならば、図4(A)及び図4(B)に示す様に、当該タイルカーペット1の一つの端部8を機械的に把持する一方の第1の把持手段21と、当該カーペット1の他方の端部7を機械的に把持する他方の第2の把持手段21’とにより当該タイルカーペット1を把持し、当該一対の第1と第2の把持手段21、21’との間に延展されている当該タイルカーペット1を、適宜の駆動手段によって上下動する押圧部材70で図示の様に当該タイルカーペット1を、図4(B)に示す様に、押圧しながら下方向に押し下げて、当該タイルカーペット1を折り畳み状に伸長させる事により当該カーペット1を当該パイル糸3のステッチ方向Pに引き伸ばして当該裏打ち層2と基布層5を破断せしめると同時に当該カーペット層4を構成する当該ループパイル糸3を当該ループが解消する様に引き伸ばして該基布層5から分離させる様にした構成を採用している。
【0043】
即ち、図4(A)は、当該一方の第1の把持手段21と当該他方の第2の把持手段21’の間に上下動可能な押圧部材70として先端が鋭利に形成された楔状或いは鉞状の突起部を有する部材が使用されるものであり、当該押圧部材70の断面図は、図示されてはいないが、例えば、角柱型の断面形状を有する角柱型棒状体71であっても良く、或いは、円形の断面形状を有している円筒体71であっても良い。
本具体例では、図4(B)に示す様に、当該押圧部材70を適宜の駆動手段を利用して当該一対の第1と第2の把持手段21、21’の間に延展されている当該タイルカーペット1を押圧しながら下方に移動させる(上方に上昇させることでも良い)事により、当該カーペット1に所定の張力を印加しながらV字状或いはU字状に折りたたむように伸長させる事により当該タイルカーペット1をステッチ方向に引き伸ばして当該裏打ち層2と基布層5を破断せしめると同時に該カーペット層4を構成する当該ループパイル糸3がそのパイル形状を解消されて略直線状の糸として、分離される。
【0044】
上記した本発明に於ける当該使用済みタイルカーペットの再生処理方法或いはその装置100の基本的な技術構成は、上記した通りであるが、既に説明している通り、係る技術構成そのものであれば、前記した様な多くの問題点が発生することから、本発明の更なる特徴的な技術構成は、当該タイルカーペット1を本発明に於ける上記した牽伸処理工程に於いて、当該タイルカーペット1を構成する当該基布層5に含まれる多数の縦糸群73の少なくとも一部の複数本の縦糸(例えば、幅5cm間隔内に存在している縦糸群73)を比較的低い張力を印加することによって切断する操作を複数回繰り返した後に、全ての当該ループパイル糸3を当該裏打ち層2と当該基布層5から比較的低い張力を印加することによって分離させる様に構成されている。
【0045】
当該本発明に於ける技術構成を更に詳細に説明するならば、当該本発明に於ける技術構成の特徴は、前記した様な構成と機構を有するループパイル糸3を有するタフテッドタイプのタイルカーペット1の各構成材料を分離回収する装置100に於いて、当該押圧部材70を回転可能な円筒体71で構成すると共に、当該円筒体71の外表面76に複数個の突起部材72を配置せしめ、当該押圧部材72が当該タイルカーペット1を押圧する際に、当該突起部材72が、当該基布層5を構成する経糸73の一部を部分的に切断75する様に構成されている。
処で、本発明に於いて使用される当該突起部材72は、金属材料、合成樹脂材料等の材料で構成されたものである事が望ましく、且つ、当咳突起部材72は、所定の面積を有する平面形状を有し、当該円筒体71の外周表面76の適宜の部位に分散して配置されている事が好ましい具体例である。
即ち、当該突起部材72は、図5に示されている通り、その平面形状は特に限定されるものではないが、例えば矩形、円形、楕円形等の形状を有しており、当該突起部材72の当該円筒体71の回転軸方向と平行する方向である長手方向の長さLは、当該突起部材72の当該回転軸方向と直交する方向の幅Wは、何れも特に限定されるものではないが、すくなくとも当該長手方向の長さLが当該幅Wよりも長くなる様に設定されている事が好ましいが、円形を有するものであれば、その制約はない。
また、当該長手方向の長さLは、処理される使用済みタイルカーペット1の一辺の長さ500mmよりも短い事が望ましく、具体例としては、例えば、50mmに設定する事も可能である。その場合、当該突起部材72の幅Wは、10乃至30mm程度に設定する事が可能である。
係る当該突起部材72の長さLは、後述する様に、当該タイルカーペットIに対して、何回の間歇切断処理を実行させるかにより決定される事が望ましい。
又、当該突起部材72の高さも特に限定されるものではないが、少なくとも当該再生処理されるタイルカーペット1の厚さよりも高くなるように設定されている事が望ましく、例えば、20乃至50mmに設定されるものであっても良い。
一方、当該の突起部材72の当該タイルカーペット1と接触する外表面部78は、当該基布層5の少なくとも一部の領域部分77と接触して、当該領域部分77を局所的に押圧する機能を有するものである事が好ましく、その為に、当該突起部材72の当該円筒体71の回転軸の方向から見た断面形状は、図6に示す様に、少なくとも当該突起部材72が当該再生処理されるタイルカーペット1と当接する外表面部78が、湾曲状、山形状、平坦状、台形状を呈している事が望ましい具体例である。
尚、当該突起部材72は、多角錐型、円錐型、戴頭円錐(円錐台)等の形状を有するものであっても良い。
更に、本発明に係る当該突起部材72は、図5(C)に示されている様に、当該突起部材72の長手方向の両端部80、81に、当該突起部材72の外表面部78から上方に吐出した鍔部82が設けられている事も好ましい具体例である。
係る鍔部82は、当該裏打ち層2や当該基布層5を切断する様な刃物としての機能は有しておらず、単に、所定幅内に、当該カーペット層4の当該ループパイル糸3が確実に保持される様に機能するものであって、仮に当該鍔部82に刃物としての機能を付与すると、当該牽伸操作中に当該ループパイル糸3を切断してしまうと言う問題が発生するので好ましくない。
一方、本発明に於いては、当該突起部材72のそれぞれは、当該円筒体71の表面76に、当該円筒体71と一体的に形成配置されているか、適宜の接合手段、例えば、接着剤、溶接手段、ボルト、ネジ等を介して、当該円筒体71の表面76に当接配置されているものである。
即ち、本発明に係る当該突起部材72の当該タイルカーペット1と接触する外表面部78は、当該基布層5の少なくとも一部の領域部分77と接触して、当該領域部分77を局所的に押圧する機能を有するものであり、それによって、該基布層5の少なくとも一部の領域部分77の当該縦糸73の配列方向の一部を、少ない張力の下で、予め切断しておくか、当該切断が容易に発生し易くなる様な構成を当該縦糸73に付与する事が可能となる。
次に、本発明に於ける当該使用済みタイルカーペットの再生処理方法或いはその装置100においては、当該基布層5の当該縦糸73を、当該タイルカーペット1の幅方向、つまり当該円筒体71の回転軸方向に沿って、特定の緯糸74の近傍部にある全ての縦糸73を一度に切断処理するものではなく、複数回の工程に分割して、部分的にそれぞれの部位に配列されている各当該縦糸73を、順次に且つ間歇的に切断操作を行って、最終的に、当該タイルカーペット1の当該全ての縦糸73を予め切断する様に操作するものである。
その為、本発明に於いては、当該複数個の突起部材72のそれぞれは、互いに、当該基布層5の異なる部位に個別に当接する様に、当該円筒体71の外周表面部76上に分散して配置されている事を特徴とするものである。
即ち、具体的には、図7及び図8に示されている通り、当該押圧部材70である当該円筒体71の外表面76上に、適宜の寸法に形成された複数個の当該突起部材72が相互に配列部位を異ならせて、配置されている。
具体的には、当該突起部材72のそれぞれが長手方向長さLを50mmに設定した場合、当該タイルカーペット1の長さは500mmであるので、10個の突起部材72を用意して、当該円筒体71を所定の角度回転させる毎に、当該タイルカーペット1の当該基布層5に於ける、所定の緯糸74の近傍にある相互に異なる領域部分77の範囲内にある当該縦糸73と接触して当該縦糸73を切断する様に構成されるものであり、図7の具体例では、先ず2個の当該突起部材72(第1の突起部材72−1と第2の突起部材72−2)が、当該タイルカーペット1の当該基布層5に於ける、略中央部分の約100mm幅にある特定領域で、所定の部位にある当該緯糸74が共通する特定領域75に同時に当接する様に配置されており、当該第3と第4の当該突起部材72(72−3と72−4)とが、当該第1と第2の突起部材72−1と72−2の両側で、当該3と第4の当該突起部材72(72−3と72−4)の長手方向中心軸線202が、当該第1と第2の突起部材72−1と72−2の長手方向中心軸線201と所定の距離だけずらせて配置されている。
次いで、当該第5と第6の当該突起部材72(72−5と72−6)とが、当該第3と第4の突起部材72−3と72−4のそれぞれの外側で、当該第5と第6の当該突起部材72(72−5と72−6)の長手方向中心軸線203が、当該第3と第4の突起部材72−3と72−4の長手方向中心軸線202と所定の距離だけずらせて配置されている。
更に、同様にして、当該第7と第8の当該突起部材72(72−7と72−8)とが、当該第5と第6の突起部材72−5と72−6のそれぞれの外側で、当該第7と第8の当該突起部材72(72−7と72−8)の長手方向中心軸線204が、当該第5と第6の突起部材72−5と72−6の長手方向中心軸線203と所定の距離だけずらせて配置されており、最後の当該第9と第10の当該突起部材72(72−9と72−10)とが、図示されてはいないが、当該第7と第8の突起部材72−7と72−8のそれぞれの外側で、当該第9と第10の当該突起部材72(72−9と72−10)の長手方向中心軸線205が、当該第7と第8の突起部材72−7と72−8の長手方向中心軸線204と所定の距離だけずらせて配置されている。
本具体例で、それぞれの当該突起部材72の組の長手方向中心軸線が相互にずれて配置される当該ずれの大きさは、任意であるが、少なくとも相互に隣接するそれぞれの突起部材72の相互に対応する長手方向の縁部が重複しない様な長さに設定されることが望ましく、且つ図8に示す様に、当該円筒体71の回転に応答して、特定の当該の突起部材72が、所定の部位に移動するように構成する為に、例えば、当該円筒体71の回転角度が60度となる当該円筒体71の外表面位置76に均等間隔で配置することが望ましい。
尚、当該円筒体71は、適宜の昇降手段と回転手段を介して、間欠的に上昇或は下降し、当該上下移動の都度、所定の角度だけ回転する様に構成されている。
つまり、本発明に於いては、当該円筒体71が所定角度で間欠的に回転する毎に、異なる当該の突起部材71が当該押圧部材70の頂部に配置され、当該新しく配置された当該の突起部材72が、当該基布層5の異なる領域部77に当接し、当該領域部77に含まれる当該経糸73を切断するか、切断が後工程で容易に行われる様に当該経糸73を加工処理する。
実験によれば、当該領域部77に於ける当該突起部材71に当接する当該経糸72の内、当該突起部材71の長手方向の一方の縁部若しくは両縁部近傍75に位置する当該経糸73の部分が良く切断されることが確認されている。
尚、本発明に於ける当該特定の緯糸74は、当該円筒体71の頂点部に接触している当該タイルカーペット1の当該基布層5の複数本の緯糸が相当する。
上記した通り、本発明に於ける当該使用済みタイルカーペットの再生処理方法若しくはその装置の構成は、当該円筒体71が、当該第1の把持手段21と当該第2の把持手段21’の間に固定把持されている当該タイルカーペット1を押圧する為に上昇運動或は下降運動を実行する間、予め定められた所定の角度を以て、間欠的に回転する様に構成されており、且つ当該複数個の突起部材72のそれぞれは、当該円筒体72の一の間欠回転により、当該複数個の突起部材72の内の一部の当該突起部材72が、当該基布層5の一部の領域部77と当接する様に構成されている事を特徴とするものである。
そして、次の、当該円筒体72の他の間欠回転により、当該複数個の突起部材72の内の他の当該突起部材72が、当該基布層5の他の領域部77と当接する様に構成されるものである。
本発明に於ける当該使用済みタイルカーペットの再生処理方法及び当該使用済みタイルカーペットの再生処理装置100の動作の詳細を図9を参照しながら説明する。
即ち、本発明に於ける、使用済みタイルカーペットの再生処理方法及び当該使用済みタイルカーペットの再生処理装置100の基本的な動作としては、当該円筒体71が、当該第1の把持手段21と当該第2の把持手段21’の間に固定把持されている当該タイルカーペット1を押圧する為に上昇運動或は下降運動を実行する間、予め定められた所定の角度を以て、間欠的に回転する様に構成されており、且つ当該複数個の突起部材72のそれぞれは、当該回転体71の当該回転運動に応答して、時系列的に当該基布層5の相互に異なる領域部分77と個別に当接する様に構成されている事を特徴とするものであり、より詳しくは、当該円筒体71の上昇運動或は下降運動は、間欠的に実行される様に構成されており、当該円筒体71の一の間欠的昇運動或は下降運動に応答して、当該円筒体71は、一の間欠的に回転運動が実行される様に構成されているものである。
即ち、図9(A)に示す通り、最初のステップ0(S0)では、当該第1の把持手段21と当該第2の把持手段21’の間に固定把持されている当該タイルカーペット1の下方部に当該円筒体71が配置されており、ステップ1(S1)では、当該タイルカーペット1を押圧する為に約25cmから30cm程度上昇し、当該円筒体71を当該タイルカーペット1の略中央部を強く押圧する。
このステップS1では、当該円筒体71の頂点部には、第1及び第2の当該の突起部材71−1と72−2が配置される様に固定されて配置されており、従って、当該円筒体71は所定の角度の回転はせずに、上昇し、当該基布層5の第1の領域部77−1を強く押圧し、その結果、図9(B)で示されている様に、当該基布層5の第1の領域部77−1内に於ける当該第1及び第2の当該の突起部材71−1と72−2の一方の長手方向縁部若しくはその両方の長手方向縁部の近傍部75に位置する当該経糸73が切断されることになる。
この際の、当該円筒体71に印加される張力は、約200kg程度である。
係る張力は、従来の同様のシステムで使用される印加張力の約10分の1である。
次に、ステップ2(S2)では、当該円筒体71は、当該ステップS1の位置から約10cm乃至30cm程度上昇しつつ、60度回転し、第3と第4の当該の突起部材72−3と72−4とを当該円筒体71の頂点部に配置させる。
係る操作により、当該円筒体71の当該第3と第4の突起部材72−3と72−4とが、当該基布層5の第2の領域部77−2及び第3の領域部77−3を強く押圧し、それによって、当該各領域部77−2、77−3内に於ける当該第3及び第4の当該の突起部材71−3と72−4の一方の長手方向縁部若しくはその両方の長手方向縁部の近傍部75に位置する当該経糸73が切断されることになる。
この際の印加される張力は、上記と同様の約200kg程度である。
同様に、ステップ3(S3)では、当該円筒体71は、当該ステップS2の位置から約10cm乃至30cm程度上昇しつつ、更に同一方向に60度回転し、第5と第6の当該の突起部材72−5と72−6とを当該円筒体71の頂点部に配置させる。
係る操作により、当該円筒体71の当該第5と第6の突起部材72−5と72−6とが、当該基布層5の第4の領域部77−4及び第5の領域部77−5を強く押圧し、それによって、当該各領域部77−5、77−6内に於ける当該第5及び第6の当該の突起部材71−5と72−6の一方の長手方向縁部若しくはその両方の長手方向縁部の近傍部75に位置する当該経糸73が切断されることになる。
この際の印加される張力は、上記と同様の約200kg程度である。
係る操作が繰り返されてステップ5(S5)に至ると、当該基布層5の経糸73は、当該タイルカーペット1の幅方向では、殆どが切断され、或は切断されやすい構成に変更されており、その後、最後のステップ(SL)では、当該円筒体71を一気に5m乃至7mまで上昇させる事によって、当該タイルカーペット1に含まれていた当該ループパイル糸3を、僅かな張力、例えば約200kg程度の張力で、完全に、且つ短時間で、容易に当該裏打ち層2及び当該基布層5から分離させる事が可能である。
尚、本発明に於ける上記した各ステップに於ける各操作に要する所要時間は、数秒以内に設定することが望ましい。
本発明に於ける当該使用済みタイルカーペットの再生処理装置100は、従って、小型化、軽量化が可能であるので、消費エネルギーの低減化ともあわせて、製造コストが大幅に低減させる事も可能である。
以上説明した通り、本発明に係る当該使用済みタイルカーペットの再生処理装置100の基本的構成は、以下の通りである。
即ち、少なくともループパイル糸3からなるカーペット層4と基布層5と裏打ち層2の3層からなるタイルカーペット1を当該ループパイル糸3のステッチ方向Pに引き伸ばして該裏打ち層2と基布層5の一部を破断せしめると同時に当該カーペット層4を構成する当該ループパイル糸3を当該ループが解消する様に引き伸ばしながら当該基布層5若しくは該裏打ち層2から剥離させることによって、当該ループパイル糸3を当該基布層5若しくは当該裏打ち層2から個別に分離する装置100であって、当該タイルカーペット1を、当該タイルカーペット1の一つの端部を機械的に把持する第1の把持手段21と当該タイルカーペットの他方の端部を機械的に把持する第2の把持手段21’とを有し、且つ、当該第1の把持手段21と当該第2の把持手段21’の間に把持された当該タイルカーペット1を押圧し、当該タイルカーペット1をステッチ方向Pに引き伸ばして当該裏打ち層2と当該基布層5の一部を破断せしめると同時に当該カーペット層4を構成する該ループパイル糸3を当該ループが解消する様に引き伸ばして当該基布層5から分離させる機能を有する上下動可能な押圧部材70とから構成された使用済みタイルカーペット1の各構成材料を分離回収する装置100に於いて、当該押圧部材70を回転可能な円筒体71で構成すると共に、当該円筒体71の外表面に複数個の突起部材72を配置せしめ、当該押圧部材70が当該タイルカーペット1を押圧する際に、当該突起部材72が、当該基布層5を構成する経糸73の一部を部分的に切断する様に構成されているものである。
【符号の説明】
【0114】
1:タイルカーペット
2:裏打ち層
3:パイル糸
4:カーペット層
5:基布
6:接着剤
7、8:両端縁部
9、10:小片形状
11:破断片
14:分離されていないタイルカーペットの端部
21:第1の把持手段
21’:第2の把持手段
36:牽伸・分離手段
70:押圧部材
100:使用済みタイルカーペットの再生処理装置
151:牽伸駆動手段
71:円筒体
72:突起部材
73:経糸
74:緯糸
75:経糸切断部領域
76:円筒体外部表面
77:基布層が突起部材と当接する領域部
78:突起部材外部表面
201〜205:突起部材の長手方向中心軸線
80、81:突起部材の長手方向端部
82:鍔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9