【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
〈現像剤の製造例〉
[一成分系現像剤(ブラック色)の製造例]
下記成分を乾式混合した後、二軸混練機で混練した。
・スチレン−ブチルアクリレート樹脂(Mw=5万、Tg=60℃) 100質量部
・カーボンブラック(平均粒径=40nm) 5質量部
・サリチル酸誘導体のアルミニウム化合物(オリエント化学工業社製) 1質量部
・エステルワックス(DSCの最大吸熱ピークのピーク温度=70℃) 5質量部
【0084】
得られた混練物を冷却し、大凡1mm以下に粗粉砕した後、更に機械式粉砕機を用いて微粉砕し、得られた微粉砕物を分級して、分級粒子とした。
【0085】
次いで、上記で得られた分級粒子100質量部を下記の成分と共に乾式混合装置中に投入して、低回転速度で予備混合を行った後、更に高回転速度で5分間の乾式混合を行った。
・疎水化処理シリカ微粒子(個数平均粒子径=0.1μm) 0.5質量部
・疎水化処理シリカ微粒子(個数平均粒子径=0.02μm) 1.0質量部
・疎水化処理チタニア微粒子(個数平均粒子径=0.02μm) 1.0質量部
【0086】
乾式混合の後、篩掛けにより粗大粒子を除去し、ブラック色の一成分系現像剤を得た。
【0087】
[一成分系現像剤(イエロー色)の製造例]
カーボンブラックに替えて、「C.I.Pigment Yellow 180」7質量部を用いる以外は、上記「一成分系現像剤(ブラック色)の製造例」と同様にして、イエロー色の一成分系現像剤を得た。
【0088】
[一成分系現像剤(マゼンダ色)の製造例]
カーボンブラックに替えて、「C.I.Pigment Red 180」7質量部を用いる以外は、上記「一成分系現像剤(ブラック色)の製造例」と同様にして、マゼンダ色の一成分系現像剤を得た。
【0089】
[一成分系現像剤(シアン色)の製造例]
カーボンブラックに替えて、「C.I.Pigment Blue 15:3」5質量部を用いる以外は、上記「一成分系現像剤(ブラック色)の製造例」と同様にして、シアン色の一成分系現像剤を得た。
【0090】
本発明において、一成分系現像剤の重量平均粒径(D4)や個数基準の粒径頻度分布における3μm以下のトナーの粒子数は、例えば、精密粒度分布測定装置「Multisizer 3」(ベックマン・コールター社製)を用い、前記測定装置の操作マニュアルに従い、ベックマン・コールター社のインターネットのホームページに記載されている「トナー粒子径分布の測定方法(http://www.beckmancoulter.co.jp/product/product03/toner/04.html)等を参考にして測定することが出来る。
【0091】
具体的な測定方法としては、懸濁液作成用ビーカーに電解液「ISOTONE II PC」(ベックマン・コールター社製)100mlを用意し、ここに分散剤としての界面活性剤(好ましくはLAS;直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.1gを加えた後、測定試料(トナー粒子又は一成分系現像剤)5mgを加え、トナー懸濁液とする。次いで、前記トナー懸濁液中の測定試料の分散性を高める為に、超音波バス等を用いて外部からの超音波照射処理を2分間行い、測定サンプルを調製する。アパーチャーチューブには50μmの開口径を有するものを用い、測定試料の体積及び個数を、チャンネル毎に測定して、測定試料の体積分布と個数分布を算出する。算出された分布から測定試料の重量平均粒径(D4)を求める。
【0092】
上記の製造例で得られた各色の一成分系現像剤は、何れも重量平均粒径(D4)が6.5μmで、個数基準の粒径頻度分布における3μm以下の現像剤の粒子数が10個数%となるように製造した。
【0093】
〈現像剤担持体の製造例〉
[現像剤担持体の製造例1]
直径16mmの炭素鋼鋼管からなる円柱状のローラ基材の外周面(以下「円筒面」と称す)をセンターレス研磨機により研磨した後、円筒面上に交差する2本の溝(
図5の(b)の矢印A,Bで示される方向の溝)を形成するために、それぞれの溝に対応する凸条が形成されている第1及び第2のダイスを具備した転造装置にローラ基材を設置した。そして、それぞれのダイスとローラ基材とを一定速度で回転させながら、ローラ基材を送り出しつつ、ダイスを押圧し、第1及び第2の溝をローラ基材に転造した。
【0094】
その結果、円筒面には、規則的に配置された複数の凸部及び前記凸部を取り囲む凹部をその表面に有し、前記凸部の表面が互いに同一の円筒面の一部を成した転造ローラを得た。
【0095】
得られた転造ローラの円筒面を再度、センターレス研磨機により研磨し、前記凸部と凹部との高低差を調整した後、加温した脱脂液に浸漬して脱脂処理を行った。
【0096】
更に、脱脂した転造ローラを加温したNi-Pめっき浴に浸漬し、円筒面に無電解めっきを施した後、これを洗浄、乾燥して、
図5の(b)に示す表面構造を呈する現像剤担持面(
図5の(a)参照)を有する現像ローラ「現像剤担持体T−1」を製造した。
【0097】
得られた「現像剤担持体T−1」の円筒面に形成された凸部と凹部の高低差は12μmで、凸部頂面の面積率は11%であり、現像ローラ表面のビッカース硬度は700Hvであった。
【0098】
[現像剤担持体の製造例2〜5]
転造ローラの製造条件と研磨による凸部と凹部の高低差の調整条件を変更すると共に、無電解めっき時のP成分の含有量と加熱処理条件を変更する以外は、前記「現像剤担持体の製造例1」と同様にして、凸部と凹部の高低差、凸部頂面の面積率及び表面硬度が異なる現像ローラ「現像剤担持体T−2〜5」を製造した。
【0099】
[現像剤担持体の製造例6及び7]
円筒面をエッチングにより加工すると共に、無電解めっき時のP成分の含有量と加熱処理条件を変更する以外は、前記「現像剤担持体の製造例1」と同様にして、凸部と凹部の高低差、凸部頂面の面積率及び表面硬度が異なる現像ローラ「現像剤担持体E−1及びE−2」を製造した。
【0100】
[比較用現像剤担持体の製造例1〜3]
転造ローラの製造条件と研磨による凸部と凹部の高低差の調整条件を変更すると共に、無電解めっき時のP成分の含有量と加熱処理条件を変更する以外は、前記「現像剤担持体の製造例1」と同様にして、凸部と凹部の高低差、凸部頂面の面積率及び表面硬度が異なる比較用現像ローラ「現像剤担持体t−6〜8」を製造した。
【0101】
[比較用現像剤担持体の製造例4]
円筒面をエッチングにより加工すると共に、無電解めっき時のP成分の含有量と加熱処理条件を変更する以外は、前記「現像剤担持体の製造例1」と同様にして、凸部と凹部の高低差、凸部頂面の面積率及び表面硬度が異なる比較用現像ローラ「現像剤担持体e‐3」を製造した。
【0102】
上記現像剤担持体の製造例1〜7及び比較用現像剤担持体の製造例1〜4で得られた現像ローラ及び比較用現像ローラの内容を、以下の表1にまとめて示す。
【0103】
【表1】
【0104】
〈実施例1〉
画像形成装置として、A3サイズ紙対応のカラー複合機である“SAMSUNG MultiXpress CLX-9301NA(サムスン電子社製)”の現像器ユニットを、
図4に記載の「一成分系現像ユニット−A1」に交換し、画像形成が可能であるように改造/調整したものを用いた。
【0105】
上記画像形成装置のブラック色の現像ユニットの現像剤担持体には、「現像剤担持体の製造例1」で得られた「現像剤担持体T−1」を使用し、現像剤規制部材の弾性当接体には、ステンレス鋼の薄板(板厚=80μm、ビッカース硬度=350Hv)を用いた。また、上記「一成分系現像剤(ブラック色)の製造例」で得られたブラック色の一成分系現像剤を150g投入した。
【0106】
従って、この時の「現像剤担持体T−1」の凸部と凹部との高低差Hは、ブラック色の一成分系現像剤の重量平均粒径の1.9倍となり、また、現像剤担持体の表面硬度に対する現像剤規制部材の当接部分の表面硬度比は0.50であった。
【0107】
[現像剤規制部材の突出し量に対する現像担持体表面の現像剤規制量の評価]
現像剤規制部材の突出し量(以下、「突出し量」と称す)に対する現像剤担持体表面の現像剤規制量(以下「規制量」と称す)の評価を行う為に、常温常湿環境下(23℃/50%Rh)で、任意の突出し量に対する規制量を測定した。
【0108】
先ず、専用治具により突出し量を調整した現像剤量規制部材を現像ユニットに取り付け、ソリッド画像をプリントした後、現像剤を未消費の状態で15秒間、現像ユニットを稼働させ、現像剤担持体表面の現像剤規制状態を安定化させた後、規制量を測定した。尚、規制量の測定には、吸引式帯電量測定装置を用いた。
【0109】
この時の現像剤規制部材の突出し量に対する現像担持体表面の現像剤規制量の測定結果を
図11に示す。
【0110】
現像剤規制部材の突出し量に対する現像剤担持体上の現像剤規制量は、突出し量の増加と共に一様に規制量が増加した後、屈曲点Aを生じる。更に突出し量を増加させると、突出し量が0.83mm時に再度、屈曲点Bを生じた。この時の現像剤担持体表面の現像剤規制量は0.34mg/cm
2で、現像剤担持体表面の凸部の頂面を観察すると、現像剤粒子が一層以下に規制されていたが、更に、突出し量を増加させると現像剤担持体表面の現像剤粒子が凸部を全て埋め尽くし、現像剤粒子が一層を超えて担持された状態に変化した。
【0111】
現像剤担持体表面の現像剤規制量を0.30mg/cm
2とした場合、現像剤量規制部材の突出し量は0.53mmであり、現像剤規制量の許容変動量を±0.02mg/cm
2とした際の突出し量の寸法公差は0.32mm(上限:0.69mm、下限:0.37mm)と確保されており、大量生産時でも非常に容易に対応出来る組立性を示した。
【0112】
[画質評価]
常温常湿環境下(23℃/55%Rh)において、現像剤担持体表面の現像剤規制量を0.30mg/cm
2に調整した後、現像剤を補給しながら、単色モードによりブラック色の画像30,000枚分をプリントアウトし、プリント開始直後と終了時に得られた画像の画質評価を実施した。なお、転写材には、富士ゼロックス社製フルカラー複写機用紙C2(70g/cm
2、A4サイズ)を使用した。
【0113】
その結果、得られた画像は、プリント開始直後から終了時まで、優れた画像濃度と小ポイント文字画像の再現性を維持すると共に、非画像領域のトナー汚れが抑制されており、現像剤担持体表面の現像剤の規制ムラに起因する縦縞状の画像濃淡ムラも発生しなかった。
【0114】
評価終了後、現像剤担持体表面の数か所の現像剤規制量を確認したところ、0.30mg/cm
2±0.02mg/cm
2の範囲内で保持されていた。また、現像剤担持体表面には現像剤のフィルミングや固着等は見られず、良好な状態が維持されていた。
【0115】
〈比較例1〉
現像担持体表面の現像剤規制量を0.43mg/cm
2(現像剤担持体表面の現像剤粒子が凸部を全て埋め尽くし、現像剤粒子が一層を超えて担持された状態)に調整した以外は、「実施例1」と同様に評価テストを実施した。
【0116】
その結果、現像剤規制量が過剰である為、現像剤の帯電状態が不十分となり、得られた画像は、プリント開始直後こそ十分な画像濃度を示したものの、小ポイント文字画像は線幅が太ることで不鮮明になり、非画像領域のトナー汚れが発生した。その状態でプリントアウトを継続すると、30,000枚終了時には、画像濃度が低下し、非画像領域のトナー汚れは更に悪化した。また、現像剤担持体表面の現像剤の規制ムラに起因する縦縞状の画像濃淡ムラも発生しており、現像剤担持体表面の現像剤規制量を確認したところ、現像剤担持体の軸方向での規制量に大きなバラつきを生じていた。
【0117】
〈比較例2〉
「一成分系現像ユニット−A1」に代えて、
図8の(a)に記載の「一成分系現像ユニット−A2;現像剤供給体の回転方向を、現像剤担持体との当接位置において同方向に移動するように回転する構造を有する」を用いる以外は、「実施例1」と同様にして、評価テストを実施した。
【0118】
その結果、現像剤供給体の回転方向を当接位置において現像剤担持体と同方向に移動するように変更した為、規制部材の突出し量に対する現像剤担持体表面の現像剤規制量は、突出し量の増加と共に規制量も急激に増加し、突出し量が0.55mmとなる時点に屈曲点Bを生じた(
図12参照)。
【0119】
現像剤担持体表面の現像剤規制量を0.30mg/cm
2とした場合、現像剤規制部材の突出し量は0.45mmであり、現像剤規制量の許容変動量を±0.02mg/cm
2とした際の突出し量の寸法公差は0.08mm(上限:0.49mm、下限:0.41mm)しか確保出来ず、大量生産時の組立性に問題を生じていることが判明した。
【0120】
次いで、「実施例1」と同様に画質評価を実施したところ、現像剤供給体の回転方向が現像剤担持体と同方向である為、現像剤担持体表面の新旧の現像剤の入れ替え効率が低下するだけでなく、現像剤担持体表面の凹部に現像剤粒子がパッキングされ、現像剤粒子の転動に伴う摩擦帯電を阻害するので、プリント開始直後から画像濃度が低く、非画像領域にトナー汚れが発生した。また、現像剤担持体表面の現像剤の規制ムラに起因する縦縞状の画像濃淡ムラが複数発生しており、これらの現象はプリントアウトの進行に伴い、悪化した。
【0121】
更に、評価終了後、現像剤担持体表面の現像剤規制量を確認したところ、現像剤担持体の軸方向での規制量に大きなバラつきを生じていた。
【0122】
〈比較例3〉
「一成分系現像ユニット−A1」に代えて、
図8の(b)に記載の「一成分系現像ユニット−A3;現像剤収容室と現像室を区画する区画壁の一部を取り除き、現像剤規制部材により規制された余剰現像剤を直接、現像剤収容室に回収出来る構造を有するもの」を用いる以外は、「実施例1」と同様にして、評価テストを実施した。
【0123】
その結果、現像剤収容室と現像室を区画する区画壁の一部を取り除き、現像剤規制部材により規制された余剰現像剤を直接、現像剤収容室に回収出来る構造に変更した為、現像剤規制部材の突出し量に対する現像剤担持体表面の現像剤規制量は、突出し量の増加と共に規制量も急激に増加し、突出し量が1.10mm時に屈曲点Bを生じた。
【0124】
現像剤担持体表面の現像剤規制量を0.30mg/cm
2とした場合、現像剤規制部材の突出し量は0.81mmであり、現像剤規制量の許容変動量を±0.02mg/cm
2とした際の突出し量の寸法公差は0.05mmしか確保出来ず、大量生産時の組立性に問題を生じていることが判明した。
【0125】
次いで、「実施例1」と同様に画質評価を実施したところ、現像剤収容室と現像室を区画する区画壁の一部を取り除き、規制部材により規制された余剰現像剤を直接、現像剤収容室に回収する構造とした為、現像剤担持体表面への現像剤供給量が不安定となり、プリント開始直後から画像濃度が低く、小ポイント文字画像の再現性に問題を生じた。また、現像剤担持体表面の現像剤の規制ムラに起因する縦縞状の画像濃淡ムラが複数発生しており、これらの現象はプリントアウトの進行に伴い、悪化した。
【0126】
更に、評価終了後、現像剤担持体表面の現像剤規制量を確認したところ、現像剤担持体の軸方向での規制量に大きなバラつきを生じていた。
【0127】
〈比較例4〉
画像形成装置として、A3サイズ紙対応のカラープリンタである“Color Laser Jet 5550(ヒューレット・パッカード社製)”のトナーカートリッジの現像剤担持体を「現像剤担持体の製造例1」で得られた「現像剤担持体T−1」、又、現像剤規制部材の弾性当接体をステンレス鋼の薄板(板厚=80μm、ビッカース硬度=350Hv)に交換すると共に、現像剤担持体と静電潜像担持体との空隙が200μmとなる様に改造/調整し(
図9に記載の「一成分系現像ユニット−B;現像剤担持体と現像剤規制部材の当接位置が、現像剤担持体と現像剤供給体の当接位置より上方に設けられており、現像剤規制部材により規制された余剰の現像剤を現像室に直接回収する構造を有するもの」に相当)、上記「一成分系の現像剤(ブラック色)の製造例」で得られたブラック色の一成分系現像剤280gを投入した以外は、「実施例1」と同様に評価テストを実施した。
【0128】
その結果、現像剤担持体と現像剤規制部材の当接位置が、現像剤担持体と現像剤供給体の当接位置より上方に設けられており、規制部材により規制された余剰の現像剤を現像室に直接回収する構造とした為、現像剤規制部材の突出し量に対する現像剤担持体表面の現像剤規制量は、突出し量の増加と共に規制量も急激に増加し、突出し量が0.90mm時に屈曲点Bを生じた。
【0129】
現像剤担持体表面の現像剤規制量を0.30mg/cm
2とした場合、規制部材の突出し量は0.61mmであり、現像剤規制量の許容変動量を±0.02mg/cm
2とした際の突出し量の寸法公差は0.04mmしか確保出来ず、大量生産時の組立性に問題を生じていることが判明した。
【0130】
次いで、「実施例1」と同様に画質評価を実施したところ、現像剤担持体と現像剤規制部材の当接位置が、現像剤担持体と現像剤供給体の当接位置より上方に設けられており、規制部材により規制された余剰現像剤を現像室に直接回収する構造とした為、得られた画像は、プリント開始直後こそ十分な画像濃度を示したものの、非画像領域にトナー汚れが発生していた。その状態でプリントを継続すると、一時的に非画像領域のトナー汚れは良化したものの、現像剤補給時に再び非画像領域のトナー汚れが悪化し、最終的には30,000枚分のプリントアウト終了時には、画像濃度も低下した。また、現像剤担持体表面の現像剤の規制ムラに起因する縦縞状の画像濃淡ムラも発生した。
【0131】
〈比較例5〉
現像ユニットとして、
図10に記載の「一成分系現像ユニット−C;現像剤供給体の回転方向を現像剤担持体と同方向に移動するように回転させると共に、現像剤規制部材により規制された余剰の現像剤を、現像室の上部の現像剤貯留部に回収する構造を有するもの」が使用出来るように改造/調整した以外は、「比較例4」と同様に評価テストを実施した。
【0132】
その結果、現像剤供給体の回転方向を現像剤担持体と同方向に移動するように回転させると共に、現像剤規制部材により規制された余剰の現像剤を、現像室の上部の現像剤貯留部に回収する構造とした為、現像剤規制部材の突出し量に対する現像剤担持体表面の現像剤規制量は、突出し量の増加と共に規制量も急激に増加し、突出し量が0.88mm時に屈曲点Bを生じた。
【0133】
現像剤担持体表面の現像剤規制量を0.30mg/cm
2とした場合、規制部材の突出し量は0.85mmであり、現像剤規制量の許容変動量を±0.02mg/cm
2とした際の突出し量の寸法公差は0.04mmしか確保出来ず、大量生産時の組立性に問題を生じていることが判明した。
【0134】
次いで、「実施例1」と同様に画質評価を実施したところ、現像剤供給体の回転方向が現像剤担持体と同方向であり、規制部材により規制された余剰の現像剤を、現像室の上部の現像剤貯留部に回収する為、プリント開始直後から非画像領域にトナー汚れが発生した。又、プリントアウトの進行に伴い、画像濃度や小ポイント文字画像の再現性が著しく低下し、現像剤担持体表面の現像剤の規制ムラに起因する縦縞状の画像濃淡ムラが複数発生した。
【0135】
更に、評価終了後、現像剤担持体表面の現像剤規制量を確認したところ、現像剤担持体の軸方向での規制量に大きなバラ付きを生じていた。
【0136】
上記「実施例1及び比較例1〜5」で用いた現像ユニットの構成を表2、評価結果を表3にまとめて示す。尚、表中に記載されている各項目の評価基準は下記の通りである。
【0137】
[1.現像剤量の規制部材の組立性]
現像剤担持体表面の現像剤規制量が0.30mg/cm
2で、現像剤規制量の許容変動量を±0.02mg/cm
2とした場合の現像剤規制部材の突出し量の寸法公差を求め、以下の基準に従って評価した。
A:寸法公差が0.3mm以上 (非常に容易である)
B:寸法公差が0.2mm以上0.3mm未満 (容易である)
C:寸法公差が0.1mm以上0.2mm未満 (本発明において許容レベルである)
D:寸法公差が0.1mm未満 (非常に困難であり、本発明において不可レベルである)
【0138】
[2.画像濃度]
一辺5mmの正方形のソリッドパッチを四隅付近と中央部分に有する画像をプリントし、ソリッドパッチの反射濃度を分光光度計スペクトロアイ(グレタグマクベス社製)で計測し、得られた計測値の平均値を算出し、以下の基準に従って評価した。
A:1.30以上 (非常に良好である)
B:1.15以上1.30未満 (良好である)
C:1.00以上1.15未満 (本発明において許容レベルである)
D:1.00未満 (本発明において不可レベルである)
【0139】
[3.小ポイント文字画像の再現性]
四隅付近と中央部分に5ポイントの文字画像をプリントし、得られた文字画像の再現性を、以下の基準に従い評価した。
A:細線の線幅の変動量が10%未満 (非常に良好である)
B:細線の線幅の変動量が10%以上15%未満 (良好である)
C:細線の変化が15%以上であり、目視でも確認に出来る (本発明において許容レ
ベルである)
D:細線同士の接触や細線自身の断裂が目視でも容易に確認出来る(本発明において不
可レベルである
【0140】
[4.非画像領域(印刷背景)のトナー汚れ]
白画像形成時、現像工程後から転写工程に移行する間に感光体ドラム上に存在する現像剤をメンディングテープ(住友3M社製)の粘着面に移し取り、それを紙上に貼ったものの反射濃度を分光光度計スペクトロアイ(グレタグマクベス社製)で計測し、得られた反射濃度からメンディングテープをそのまま紙上に貼った時の反射濃度(ブランク)を差し引いた数値を求め、以下の基準に従って評価した。数値が小さい程、非画像領域のトナー汚れが抑制されていることを示す。
A:0.03未満 (非常に良好である)
B:0.03以上0.07未満 (良好である)
C:0.07以上1.00未満 (本発明において許容レベルである)
D:1.00以上 (本発明において不可レベルである)
【0141】
[5.縦縞状の画像濃度ムラ]
網点模様で構成されるハーフトーン画像を印刷し、得られたハーフトーン画像上に発生した縦縞状の画像濃淡ムラの発生箇所数を計測し、以下の基準に従って評価した。
A:未発生 (非常に良好である)
B:軽微な縦縞状の画像濃淡ムラが1箇所発生 (良好である)
C:2〜4箇所発生 (本発明において許容レベルである)
D:5箇所以上発生 (本発明において不可レベルである)
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
〈実施例2〉
現像剤担持体に「現像剤担持体の製造例2」で得られた「現像剤担持体T−2」を用いる以外は、「実施例1」と同様に評価テストを行った。この時の「現像剤担持体T−2」の凸部と凹部との高低差は、ブラック色の一成分系現像剤の重量平均粒径)の3.1倍となり、また、現像剤担持体の表面硬度に対する現像剤規制部材の当接部分の表面硬度比は0.54であった。
【0145】
評価テストの結果、規制部材の組立性や得られたプリントアウト画像に問題はなく、また、現像剤担持体表面も良好な状態に維持されていた。
【0146】
〈実施例3〉
現像剤担持体に「現像剤担持体の製造例3」で得られた「現像剤担持体T−3」を用いる以外は、「実施例1」と同様に評価テストを行った。この時の「現像剤担持体T−3」の凸部と凹部との高低差は、ブラック色の一成分系現像剤の重量平均粒径の0.8倍となり、また、現像剤担持体の表面硬度に対する現像剤規制部材の当接部分の表面硬度比は0.39であった。
【0147】
評価テストの結果、規制部材の組立性や得られたプリントアウト画像に問題はなく、また、現像剤担持体表面も良好な状態に維持されていた。
【0148】
〈実施例4〉
現像剤担持体に「現像剤担持体の製造例4」で得られた「現像剤担持体T−4」を使用し、また、現像剤規制部材の弾性当接体には、リン青銅の薄板(板厚=100μm、ビッカース硬度=190Hv)を用いる以外は、「実施例1」と同様に評価テストを行った。この時の「現像剤担持体T−4」の凸部と凹部との高低差は、ブラック色の一成分系現像剤の重量平均粒径の0.9倍となり、また、現像剤担持体の表面硬度に対する現像剤規制部材の当接部分の表面硬度比は0.38であった。
【0149】
評価テストの結果、規制部材の組立性や得られたプリントアウト画像に問題はなく、また、現像ローラ表面も良好な状態に維持されていた。
【0150】
〈実施例5〉
現像剤担持体に「現像剤担持体の製造例5」で得られた「現像剤担持体T−5」を用いる以外は、「実施例1」と同様に評価テストを行った。この時の「現像剤担持体T−5」の凸部と凹部との高低差は、ブラック色の一成分系現像剤の重量平均粒径の4.8倍となり、また、現像剤担持体の表面硬度に対する規制部材の当接部分の表面硬度比は0.37であった。
【0151】
評価テストの結果、規制部材の組立性や得られたプリントアウト画像に問題はなく、また現像剤担持体表面も良好な状態に維持されていた。
【0152】
〈実施例6〉
現像剤担持体に「現像剤担持体の製造例6」で得られた「現像剤担持体E−1」を使用し、また、現像剤規制部材の弾性当接体にステンレス鋼の薄板(板厚=70μm、ビッカース硬度=450Hv)を用いる以外は、「実施例1」と同様に評価テストを行った。この時の「現像剤担持体E−1」の凸部と凹部との高低差は、ブラック色の一成分系現像剤の重量平均粒径の4.9倍となり、また現像剤担持体の表面硬度に対する規制部材の当接部分の表面硬度比は0.90であった。
【0153】
評価テストの結果、現像剤担持体表面の凸部は摩耗により変形すると共に、現像剤粒子の軽微な固着が見られたが、規制部材の組立性や得られたプリントアウト画像に問題はなかった。
【0154】
〈実施例7〉
現像剤担持体に「現像剤担持体の製造例7」で得られた「現像剤担持体E−2」を使用し、また、規制部材の弾性当接体にリン青銅の薄板(板厚=120μm、ビッカース硬度=150Hv)を用いる以外は、「実施例1」と同様に評価テストを行った。この時の「現像剤担持体E−2」の凸部と凹部との高低差は、ブラック色の一成分系現像剤の重量平均粒径の4.0倍となり、また、現像剤担持体の表面硬度に対する現像剤規制部材の当接部分の表面硬度比は0.20であった。
【0155】
評価テストの結果、現像ローラ表面には、現像剤粒子に起因する軽微なフィルミングが発生したものの、規制部材の組立性や得られた印刷画像に問題はなかった。
【0156】
〈比較例5〉
現像剤担持体に「比較用現像剤担持体の製造例1」で得られた「現像剤担持体t−6」を使用し、また、規制部材の弾性当接体にステンレス鋼の薄板(板厚=70μm、ビッカース硬度=440Hv)を用いる以外は、「実施例1」と同様に評価テストを行った。この時の「現像剤担持体t−6」の凸部と凹部との高低差は、ブラック色の一成分系現像剤の重量平均粒径の3.2倍となり、また、現像ローラの表面硬度に対する規制部材の当接部分の表面硬度比は1.02であった。
【0157】
評価テストを行う前に現像剤担持体表面の現像剤規制量を確認したところ、規制部材の組立性は満足するものの、現像剤担持体の凸部頂面の面積率が40%以上(43%)であった為、現像剤担持体の軸方向での規制量に大きなバラ付きを生じた。
【0158】
評価テストで得られたプリントアウト画像には、プリント開始時から規制ムラに起因する画像濃淡ムラや印刷背景の汚れが発生する等、十分な画質を得ることが出来なかった。また、現像剤担持体の表面硬度に対する規制部材の当接部分の表面硬度比が1.00以上であった為、現像剤担持体表面の凸部の摩耗変形は著しく、現像剤粒子の固着が発生し、印刷画像に直接的な悪影響を与えた。
【0159】
〈比較例6〉
現像剤担持体に「比較用現像剤担持体の製造例2」で得られた「現像剤担持体t−7」を用いる以外は「実施例1」と同様に評価テストを行った。この時の「現像剤担持体t−7」の凸部と凹部との高低差は、ブラック色の一成分系現像剤の重量平均粒径の0.6倍となり、また、現像剤担持体の表面硬度に対する規制部材の当接部分の表面硬度比は0.50であった。
【0160】
評価テストの結果、現像ローラの凸部と凹部との高低差が、現像剤の重量平均粒径の0.8倍未満であった為、規制部材の組立性に問題を生じると共に、得られたプリントアウト画像には、プリント開始時から非画像領域にトナー汚れが発生する等、十分な画質を得ることが出来なかった。
【0161】
〈比較例7〉
現像剤担持体に「比較用現像剤担持体の製造例3」で得られた「現像剤担持体t−8」を使用し、また、規制部材の弾性当接体にリン青銅の薄板(板厚=120μm、ビッカース硬度=150Hv)を用いる以外は「実施例1」と同様に評価テストを行った。この時の「現像剤担持体t−8」の凸部と凹部との高低差は、ブラック色の一成分系現像剤の重量平均粒径の2.8倍となり、また、現像ローラの表面硬度に対する規制部材の当接部分の表面硬度比は0.15であった。
【0162】
評価テストで得られたプリントアウト画像は、プリント開始時は良好であったものの、プリントアウトの進行に伴い、画質の悪化を生じた。また、現像ローラの表面硬度に対する規制部材の当接部分の表面硬度比が0.20未満であった為、現像ローラ表面には、現像剤粒子に起因するフィルミングが発生し、プリントアウト画像に直接的な悪影響を与えた。
【0163】
〈比較例8〉
現像剤担持体に「比較用現像剤担持体の製造例4」で得られた「現像剤担持体e―3」を用いる以外は「実施例1」と同様に評価テストを行った。この時の「現像剤担持体e―3」の凸部と凹部との高低差は、ブラック色の一成分系現像剤の重量平均粒径の5.4倍であった。
【0164】
評価テストを行う前に現像ローラ表面の現像剤規制量を確認したところ、現像剤規制部材の組立性は満足するものの、現像剤担持体の凸部と凹部との高低差が、現像剤の体積平均粒径の5.0倍以上であった為、現像剤担持体の軸方向での規制量に大きなバラ付きを生じた。
【0165】
評価テストで得られたプリントアウト画像は、プリント開始直後の画像濃度や小ポイント文字画像の再現性は良好であったものの、規制ムラに起因する画像濃淡ムラや非画像領域のトナー汚れが発生する等、十分な画質を得ることが出来なかった。
【0166】
上記「実施例2〜7及び比較例5〜8」の評価結果を、以下の表4にまとめて示す。
【0167】
【表4】
【0168】
〈実施例9〉
上記「実施例1」で用いた画像形成装置のブラック色以外の現像器ユニットも、
図4に記載の「一成分系現像ユニット−A1」に交換し、画像形成が可能であるように調整/改造し、各色の現像ユニットには、上記「現像剤の製造例」で得られたブラック色、イエロー色、マゼンダ色及びシアン色の一成分系現像剤を、それぞれ対応する現像ユニットに各150gを投入した。また、「一成分系現像ユニット−A1」の現像剤担持体に「現像剤担持体の製造例1」で得られた「現像剤担持体T−1」を使用し、また、現像剤規制部材の弾性当接体にステンレス鋼の薄板(板厚=80μm、ビッカース硬度=350Hv)を用いた。
【0169】
従って、この時の「現像剤担持体T−1」の凸部と凹部との高低差は、各色の一成分系現像剤の重量平均粒径の1.9倍となり、また、現像剤担持体の表面硬度に対する現像剤規制部材の当接部分の表面硬度比は0.50であった。
【0170】
上記「実施例1」と同様にして、各色の現像剤担持体表面の現像剤規制量を調整した後、現像剤を補給しながら、フルカラーモードによりカラー画像10,000枚分をプリントし、プリント開始直後と終了時に得られたプリントアウト画像の画質評価を実施した。なお、転写材には、富士ゼロックス社製フルカラー複写機用紙C2(70g/cm
2、A4サイズ)を使用した。
【0171】
評価テストの結果、規制部材の組立性や得られたプリントアウト画像に問題はなく、プリント開始直後から終了時まで、優れた画像濃度と小ポイント文字画像の再現性を維持すると共に、非画像領域のトナー汚れが抑制されており、現像剤担持体表面の現像剤の規制ムラに起因する縦縞状の画像濃淡ムラのない良好なフルカラー画像を得ることが出来た。