(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の筒状ラベル付き容器は、胴部を有する容器と、前記容器の胴部に装着され且つ伸縮可能な伸縮領域を有する筒状ラベルと、を有する。
前記胴部の正面には、正面凹部が形成されている。この正面凹部の縁は、容器正面から見て無端環状である。前記筒状ラベルの伸縮領域の一部は、前記正面凹部の縁に密着しており、前記伸縮領域の内面と正面凹部の表面との間に空間部を有する。
以下、本発明の各実施形態について、適宜図面を参照しつつ説明する。
なお、容器の胴部の正面は、容器の軸回りの何れかの位置から、前記軸に対して直交する方向から見たときの面を意味し、例えば、前記正面は、容器の軸回りの何れかの位置のうち、1つの凹部の縁が欠損することなく見える位置から面であり、好ましくは、前記凹部の縁形状が最も大きく見える位置から見た面である。胴部の背面は、前記正面とは反対側から見たときの面(正面から軸回りに180度回転したときに見える面)を意味し、胴部の側面は、前記正面に対して直交する方向から見たときの面(正面から軸回りに90度回転したときに見える面)を意味する。前記容器の軸は、容器の重心を通り且つ縦方向(自立可能な容器の場合の上下方向)に延びる軸を意味する。
本発明を理解し易くするために、各図において、各部の具体的な寸法および縮尺比は、実際のものとは異なっている場合もある。
【0013】
[第1実施形態]
(容器)
図1乃至
図4に示すように、容器2は、平坦な接地面を有する底部21と、底部21の上方に形成された胴部22と、胴部22の上方に形成され且つ内容物を注出するための注出口23と、注出口23を開閉するキャップ部24と、底部21の接地面と平行且つ平坦であって、胴部22と注出口23を繋ぐ肩部25と、下方に向かうに従ってその周長が次第に小さくなり且つ底部21と胴部22を繋ぐ基部26と、を有する。
この容器2は、底部21を載置面に載せて自立可能である。もっとも、容器2は、自立可能でなくてもよい。
容器2が自立可能である場合、前記底部21の形状(接地面の輪郭)は、特に限定されないが、略楕円形状、略円形状、略長方形状、略正方形状などが挙げられる。
【0014】
この容器2の胴部22には、正面凹部5A及び背面凹部5Bが形成されている。
容器2の胴部22は、全体的に直胴状(直胴状は、水平断面の外形が一様な形状、つまり、周長が一様な形状をいう)でもよいが、周長が異なる部分を有することが好ましく、さらに、周長が異なる部分を有し且つその中に容器2の最大周長を成す部分が含まれていることがより好ましく、周長が異なる部分を有し且つその中に容器2の最大周長を成す部分が含まれていると共に、肩部25及び基部26からその最大周長を成す部分に向かうに従って周長が次第に大きくなっていることが特に好ましい。
図示例の容器2の胴部22は、周長が異なる部分を有し、その周長が異なる中の周長が大きい部分を基準にして、その大きい部分から上方及び下方に向かうに従ってその周長が次第に小さくなっている。好ましくは、その周長が大きい部分が、容器2の最大周長を成す部分となっている。前記周長が大きい部分に、正面凹部5Aの一部及び背面凹部5Bの一部が含まれている。
なお、胴部22の周長は、胴部22の該当箇所に胴部22の軸回りに糸を一周巻き、その糸の長さに相当する。
【0015】
前記正面凹部5Aよりも上方にある胴部22の上部は、上方に向かうに従ってその周長が次第に小さくなっている。例えば、胴部22のうち、正面凹部5Aの最上縁31A(正面凹部5Aの縁3Aのうち最も上方に位置する縁)の近傍上方部41Aは、上方に向かうに従ってその周長が次第に小さくなっている。
前記正面凹部5Aよりも下方にある胴部22の下部は、下方に向かうに従ってその周長が次第に小さくなっている。例えば、胴部22のうち、正面凹部5Aの最下縁32A(正面凹部5Aの縁3Aのうち最も下方に位置する縁)の近傍下方部42Aは、下方に向かうに従ってその周長が次第に小さくなっている。
好ましくは、前記正面凹部5Aの最上縁31Aを含んでその上方にある近傍上方部41Aは、上方に向かうに従ってその周長が次第に小さくなっており、前記正面凹部5Aの最下縁32Aを含んでその下方にある近傍下方部42Aは、下方に向かうに従ってその周長が次第に小さくなっている。
前記周長が次第に小さくなった近傍上方部41Aが正面凹部5Aの最上縁31Aを含む又は近傍下方部42Aが正面凹部5Aの最下縁32Aを含む場合、前記胴部22の最大周長を成す部分は前記正面凹部5Aの最上縁31Aを通る周囲又は最下縁32Aを通る周囲であることが好ましい。もっとも、胴部22の最大周長を成す部分は、正面凹部5Aの最上縁31A又最下縁32Aを通る周囲部分に限定されるわけではない。
前記近傍上方部41A及び近傍下方部42Aは、何れも正面凹部5Aから上方又は下方に離れるに従って縮径した縮径部分である。
【0016】
同様に、前記背面凹部5Bよりも上方にある胴部22の上部は、上方に向かうに従ってその周長が次第に小さくなっている。例えば、胴部22のうち、背面凹部5Bの最上縁31B(背面凹部5Bの縁3Bのうち最も上方に位置する縁)の近傍上方部41Bは、上方に向かうに従ってその周長が次第に小さくなっている。
前記背面凹部5Bよりも下方にある胴部22の下部は、下方に向かうに従ってその周長が次第に小さくなっている。例えば、胴部22のうち、背面凹部5Bの最下縁32B(背面凹部5Bの縁3Bのうち最も下方に位置する縁)の近傍下方部42Bは、下方に向かうに従ってその周長が次第に小さくなっている。
好ましくは、前記背面凹部5Bの最上縁31Bを含んでその上方にある近傍上方部41Bは、上方に向かうに従ってその周長が次第に小さくなっており、前記背面凹部5Bの最下縁32Bを含んでその下方にある近傍下方部42Bは、下方に向かうに従ってその周長が次第に小さくなっている。
前記周長が次第に小さくなった近傍上方部41Bが背面凹部5Bの最上縁31Bを含む又は近傍下方部42Bが背面凹部5Bの最下縁32Aを含む場合、前記胴部22の最大周長を成す部分は前記背面凹部5Bの最上縁31Bを通る周囲又は最下縁32Bを通る周囲であることが好ましい。もっとも、胴部22の最大周長を成す部分は、背面凹部5Bの最上縁31B又最下縁32Bを通る周囲部分に限定されるわけではない。
前記近傍上方部41B及び近傍下方部42Bは、何れも背面凹部5Bから上方又は下方に離れるに従って縮径した縮径部分である。
【0017】
また、胴部22は、軸回りの何れの位置から見ても同じ外形(例えば、円柱状、紡錘状など)でもよいが、好ましくは、
図1及び
図2に示すように、軸回りのある位置で見たときに最も大きい面積(投影形状の面積)を成す外形を有し、より好ましくは、軸回りのある位置で見たときに最も大きい面積(投影形状の面積)を成し且つその位置から軸回りに90度回転したときに最も小さい面積を成す外形を有する。
図1及び
図2に例示のように、軸回りでの投影形状が異なる異形胴部にあっては、その胴部22の正面は、軸回りのある位置で見たときに最も大きい面積を成す外形を有する位置から見た面であることが好ましい。
図示例の容器2は、
図1に示す軸回り位置から見たときの胴部22の面積(投影形状の面積)が最も大きく(すなわち、
図1が容器2の正面)、
図2に示す軸回りから見たときの胴部22の面積(投影形状の面積)が最も小さい(すなわち、
図2が容器2の側面)。なお、図示例の容器2の胴部22は、軸Oで向かい合う外形が対称形に形成されているので、容器2の正面と反対側から見たときの胴部22の面積も最も大きい。容器2の背面は、容器2の正面と対称に表れるので、その図は省略している。
【0018】
前記胴部22の水平断面の外形は、長軸及び短軸を有する形状であり、例えば、略楕円形状、略長方形状、コーナー部が弧状に丸められた長方形状などが挙げられる。図示例の容器2は、胴部22の水平断面の外形(但し、正面凹部及び背面凹部が形成された部分を除く)が、略楕円形状である。
かかる胴部22は、正面から見たときの幅が側面から見たときの幅よりも大きい。
【0019】
前記胴部22の正面の一部分は、軸O方向に凹んだ正面凹部5Aを有する。前記正面凹部5Aの縁3Aの形状は、
図1に示すように、正面から見て無端環状であり、
図2に示すように、側面から見て両端を有し且つ容器2の軸に直交する方向であって軸Oに近づくように窪んだ非直線状である。以下、容器2の正面から見た形状を「正面視形状」、容器2の背面から見た形状を「背面視形状」、容器2の側面から見た形状を「側面視形状」という。
また、胴部22の背面の一部分は、軸O方向に凹んだ背面凹部5Bを有する。前記背面凹部5Bの縁3Bの形状は、背面から見て無端環状であり、
図2に示すように、側面から見て両端を有し且つ容器2の軸Oに直交する方向であって軸Oに近づくように窪んだ非直線状である。
正面凹部5Aの縁3A又は背面凹部の縁3Bの側面視形状が前述のように有端非直線状である場合、容器2の側方から手を入れ、正面凹部5Aに対応する伸縮領域(筒状ラベルの一部)に親指を且つ背面凹部5Bに対応する伸縮領域(筒状ラベルの一部)に他の指を当てて握った際に、正面凹部5Aの縁3A又は背面凹部5Bの縁3Bが指に引っ掛かるので、筒状ラベル付き容器を持ち易くなる。
【0020】
ここで、正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bは、胴部22と凹部5A,5Bの境界であり、図示したように明瞭な線として表れていてもよいし、不明瞭であってもよい。
正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bの正面視形状及び背面視形状は、それぞれ無端環状であれば特に限定されず、例えば、略円状や略楕円状、略正方形状、略長方形状、略三角形状、略六角形状などが挙げられる。正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bの正面視形状及び背面視形状は、
図1に示すように、それぞれ略楕円形状や略長方形状のような長軸と短軸を有する形状が好ましく、さらに、その長軸が容器2の軸Oに対して略直交する方向に配置されていることがより好ましい。正面凹部5Aの縁3A又は背面凹部5Bの縁3Bの正面視形状又は背面視形状が、長軸と短軸を有し且つその長軸が容器2の軸Oに対して略直交する方向に配置されている形状である場合、容器2の側方から手を入れ、正面凹部5Aに対応する伸縮領域に親指を且つ背面凹部5Bに対応する伸縮領域に他の指を当てて握ることにより、筒状ラベル付き容器を持ち易くなる。
【0021】
正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bの側面視形状は、それぞれ有端非直線状であれば特に限定されず、例えば、
図2に示すように、容器2の軸Oの方向に凹んだ略C字状などの弧状、同軸Oの方向に凹んだ略コ字状などの角形状などが挙げられるが、好ましくは弧状である。正面凹部5Aの縁3A又は背面凹部5Bの縁3Bの側面視形状が弧状である場合、容器2の側方から手を入れ、正面凹部5Aに対応する伸縮領域に親指を且つ背面凹部5Bに対応する伸縮領域に他の指を当てて握った際に、指に違和感を感じ難くなる。
正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bの側面視形状について、
図2に示すように、正面凹部5Aの最上縁31A(及び/又は最下縁32A)及び背面凹部5Bの最上縁31B(及び/又は最下縁32B)と容器2の軸Oとの間の長さが最も大きく、正面凹部5Aの側縁及び背面凹部5Bの側縁と容器2の軸Oとの間の長さが最も小さい。
正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bに指を引っ掛かり易くするために、前記正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bの側面視形状における軸Oとの間の最大長さと最小長さの差(この差は、側面視において正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bの凹み深さに相当する)は、5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましい。他方、前記差が余りに大きいと、却って筒状ラベル付き容器を持ちにくくなる場合もあるので、前記差は、30mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましい。
【0022】
前記正面凹部5Aの表面51Aは、その縁3Aに連続し、その正面凹部5Aの縁3Aよりも容器2の軸Oの方向に延在している。従って、
図2に示す側面視では、正面凹部5Aの表面51Aは見えない。
図示例では、正面凹部5Aの表面51Aは、容器2の軸Oを含む平面に対して傾斜した傾斜面となっている。好ましくは、前記表面51Aの全体形状は、すり鉢状とされている。
同様に、背面凹部5Bの表面51Bは、その縁3Bに連続し、その背面凹部5Bの縁3Bよりも容器2の軸Oの方向に凹んでいる。図示例では、背面凹部5Bの表面51Bは、容器2の軸Oを含む平面に対して傾斜した傾斜面となっている。好ましくは、前記表面51Bの全体形状は、すり鉢状とされている。
なお、前記正面凹部5Aの表面51Aと背面凹部5Bの表面51Bは、一部分で繋がっている。従って、正面凹部5Aと背面凹部5Bの間には、容器2の正面と背面に貫通する貫通孔6が形成されている。図示例では、すり鉢状に傾斜した各表面51A,51Bの当該すり鉢の底部に、前記貫通孔6が形成されている。
【0023】
容器2(キャップ部24を除く)の材質は、特に限定されず、例えば、PET、PPなどの合成樹脂、金属、ガラス、陶器などが挙げられる。本発明の筒状ラベル付き容器の使用時には、筒状ラベルによって手のグリップ力を高めることができるので、硬質合成樹脂、金属、ガラス、陶器などの硬質材料で形成された硬質容器2を用いても、滑り難く且つ持ち易い筒状ラベル付き容器を構成できる。
もっとも、本発明において用いられる容器2は、軟質材料から形成された軟質容器でもよい。なお、硬質容器は、5歳児平均握力で且つ親指と人差し指の挟持力で容器の胴部を押し潰せないほどの強度を有する容器をいう。軟質容器は、前記のような挟持力で容器の胴部を押し潰すことができる容器をいう。
【0024】
(筒状ラベル)
図5に示すように、筒状ラベル7は、従来技術と同様に、長方形状のフィルムの両側端部を重ね合わせて接着することによって筒状に形成された筒状体である。なお、前記両側端部を重ね合わせて接着した部分71は、一般に、センターシール部、接合部又は重合接着部などと呼ばれるが、本明細書では、接合部71という。
その筒状体の全部又は一部に伸縮領域を有する。伸縮領域は、拡張力を加えることによって伸展して拡径し、(熱などを加えなくても)前記拡張力を解除することによって収縮してほぼ元の状態に復元する性質を有する領域である。このような性質を、自己伸縮性という。
全部に伸縮領域を有する筒状ラベル7(つまり、全体的に伸縮する筒状ラベル7)は、自己伸縮性フィルムから構成される。
一部に伸縮領域を有する筒状ラベル(つまり、部分的に伸縮する筒状ラベル)は、筒状体の一部の領域として自己伸縮性フィルムを用い、他の領域に非伸縮性フィルムを用いることにより形成できる(図示せず)。前記一部の領域は、筒状体の上端から下端を含み且つ筒状体の周方向の一部の領域であることが好ましい。
【0025】
本発明では、
図5に示すように、自己伸縮性フィルムを筒状に形成した筒状ラベル7が用いられることが好ましく、この筒状体は、その全体が自己伸縮性を有する。
前記自己伸縮性フィルムは、少なくとも一方向(フィルムの一方向は、筒状体に形成したときに周方向となる。以下同じ)に自己伸縮性を有していればよく、一方向及び他方向(他方向は、フィルムの面内において、前記一方向に対して直交する方向をいう)に自己伸縮性を有していてもよい。
【0026】
自己伸縮性フィルムの厚みとしては、特に限定されないが、10μm〜100μmであることが好ましく、より好ましくは15μm〜80μm、特に好ましくは20μm〜50μmである。
本発明においては、上記自己伸縮性フィルムとして、汎用タイプの自己伸縮性フィルムを用いてもよいし、高伸縮タイプの自己伸縮性フィルムを用いてもよい。特に、正面凹部5A及び背面凹部5Bに向かって伸びやすく、また、大きく伸張させた後でも復元しやすいので、高伸縮タイプの自己伸縮性フィルムを用いることが好ましい。
以下、汎用タイプの自己伸縮性フィルムと高伸縮タイプの自己伸縮性フィルムを、分説する。
【0027】
(1)汎用タイプの自己伸縮性フィルム
汎用タイプの自己伸縮性フィルムは、筒状体としたときに、その筒状体の周方向に伸張倍率1.25倍以上1.60倍未満に伸張可能で、且つ、1.25倍に伸張後の瞬間歪み(50mm/分)が10.5%以下であるものが好ましく、同1.25倍に伸張後の瞬間歪みが10%以下がより好ましく、同1.25倍に伸張後の瞬間歪みが8%以下が特に好ましく、同1.25倍に伸張後の瞬間歪みが6%以下が最も好ましい。
【0028】
さらに、前記自己伸縮性フィルムは、伸張倍率1.40倍以上1.60倍未満に伸張可能で、且つ、1.40倍に伸張後の瞬間歪み(50mm/分)が10.5%以下であるものが好ましく、同1.40倍に伸張後の瞬間歪みが10%以下がより好ましく、同1.40倍に伸張後の瞬間歪みが8%以下が特に好ましく、同1.40倍に伸張後の瞬間歪みが6%以下が最も好ましい。
【0029】
なお、前記自己伸縮性フィルムの伸張倍率の上限は、特に制限はないが、例えば、2.0倍以下である。また、前記自己伸縮性フィルムの瞬間歪みの下限は、理論上では零であるが、実際に零という場合は少ない。このため、前記自己伸縮性フィルムの瞬間歪みの下限は、0%を越え、好ましくは1%以上である。
前記伸張倍率は、伸張後の長さ/伸張前の長さ、で求められる。
【0030】
前記瞬間歪みは、次のようにして測定できる。
自己伸縮性フィルムを、他方向(筒状体の上下方向に相当)に長さ15±0.1mm、一方向(筒状体の周方向に相当)に長さ200mm(標線間距離100±2mm)の長方形に切り取り、サンプル片を作製する。このサンプル片の長辺方向を測定方向として、所定の伸張倍率(1.25倍又は1.40倍)になるまで引張り、サンプル片の標線間距離を測定する。
【0031】
前記測定は、例えば、クロスヘッド速度一定型又は振子型引張試験機(試験時の伸張速度:50mm/分)を用いて、所定の荷重(N)を加えてサンプル片の標線間距離が所定の倍率になるまで伸ばし、この直後に荷重を0(N)に戻したときの標線間距離を読み取る。その測定値を以下の計算式に代入して、瞬間歪み(%)を算出する。
瞬間歪み(%)=100×ΔL2/L2。
前記L2は、引張る前のサンプル片の標線間距離(mm)を示し、前記ΔL2は、伸張後に荷重を戻したときのサンプル片の標線間距離の増加(mm)を示す。
なお、永久歪み(%)は、前記引っ張り試験後、試験機から取り外し、23℃の恒温槽で4週間保管した後に上記標線間距離を読み取って算出できる。
【0032】
汎用タイプの自己伸縮性フィルムの材質は、特に限定されず、一般的には、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系の樹脂などが挙げられる。前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン系ポリエチレン(メタロセン系触媒を用いた重合によって得られる直鎖状低密度ポリエチレン)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
前記自己伸縮性フィルムの材質として、好ましくは線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が用いられ、より好ましくは、メタロセン系ポリエチレンが用いられる。
また、前記自己伸縮性フィルムは、無延伸でもよいが、一方向及び他方向にそれぞれ1.01倍〜1.3倍延伸されているものが好ましく、特に、1.05倍〜1.15倍延伸されているものがより好ましい。
【0034】
(2)高伸縮タイプの自己伸縮性フィルム
高伸縮タイプの自己伸縮性フィルムは、筒状体としたときに、その筒状体の周方向に伸張倍率1.60倍以上に伸張可能で、且つ、周方向に1.60倍に伸張後の瞬間歪み(50mm/分)が13%以下となるものが好ましく、同1.60倍に伸張後の瞬間歪みが11.5%以下となるものがより好ましく、同1.60倍に伸張後の瞬間歪みが10.5%以下となるものが特に好ましく、同1.60倍に伸張後の瞬間歪みが10%以下が最も好ましい。
【0035】
さらに、高伸縮タイプの自己伸縮性フィルムは、筒状体の周方向に伸張倍率1.75倍以上に伸張可能で、且つ、周方向に1.75倍に伸張後の瞬間歪み(50mm/分)が13%以下となるものが好ましく、同1.75倍に伸張後の瞬間歪みが11.5%以下となるものがより好ましく、同1.75倍に伸張後の瞬間歪みが10.5%以下となるものが特に好ましく、同1.75倍に伸張後の瞬間歪みが10%以下が最も好ましい。
【0036】
加えて、高伸縮タイプの自己伸縮性フィルムは、筒状体の周方向に伸張倍率1.60倍以上(好ましくは1.75倍以上)に伸張可能で、且つ、周方向に1.60倍(好ましくは1.75倍)に伸張後の瞬間歪み(6000mm/分)が30%以下となるものが好ましく、同1.60倍(好ましくは1.75倍)に伸張後の瞬間歪みが20%以下となるものがより好ましく、同1.60倍(好ましくは1.75倍)に伸張後の瞬間歪みが18%以下となるものが特に好ましい。
【0037】
なお、前記自己伸縮性フィルムの伸張倍率の上限は、特に制限はないが、例えば、2.0倍以下である。また、前記自己伸縮性フィルムの瞬間歪みの下限は、理論上では零であるが、実際に零という場合は少ない。このため、前記自己伸縮性フィルムの瞬間歪みの下限は、0%を越え、好ましくは1%以上である。
前記伸張倍率は、伸張後の長さ/伸張前の長さ、で求められる。
【0038】
前記瞬間歪みは、次のようにして測定できる。
自己伸縮性フィルムを、他方向に長さ15±0.1mm、一方向に長さ200mm(標線間距離100±2mm)の長方形に切り取り、サンプル片を作製する。このサンプル片の長辺方向を測定方向として、所定の伸張倍率(1.60倍又は1.75倍)になるまで引張り、サンプル片の標線間距離を測定する。
【0039】
前記測定は、例えば、クロスヘッド速度一定型又は振子型引張試験機(試験時の伸張速度:50mm/分又は6000mm/分)を用いて、所定の荷重(N)を加えてサンプル片の標線間距離が、所定の倍率(1.60倍又は1.75倍)になるまで伸ばし、この直後に荷重を0(N)に戻したときの標線間距離を読み取る。その測定値を以下の計算式に代入して、瞬間歪み(%)を算出する。
瞬間歪み(%)=100×ΔL2/L2。
前記L2は、引張る前のサンプル片の標線間距離(mm)を示し、前記ΔL2は、伸張後に荷重を戻したときのサンプル片の標線間距離の増加(mm)を示す。
【0040】
なお、永久歪み(%)は、前記引張り試験後、試験機から取り外し、23℃の恒温槽で4週間保管した後に上記標線間距離を読み取って算出できる。
以下、引張り試験とは、前記瞬間歪みの測定法における、引張試験機を用いてサンプル片を引き伸ばすことをいう。
【0041】
また、前記高伸縮タイプの自己伸縮性フィルムのストレッチ特性は、永久歪みによっても表すことができる。永久歪み(%)は、瞬間歪みと同様に、引張り試験後にサンプル片が元の長さに戻らずに変形した度合いを示すが、荷重を取り除いた4週間後に測定する点で瞬間歪みと異なる。永久歪みを測定するときの引張り試験におけるサンプル片の伸張速度は、「50mm/分」である。
永久歪みが小さいほど、フィルムの復元性が高く、ストレッチ特性に優れる。中でも、一方向に伸張倍率1.60倍に伸張後の永久歪み(50mm/分)は、11%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、7%以下が特に好ましく、6%以下が最も好ましい。
【0042】
また、筒状体としたときの上下方向(フィルムの他方向)の引張り応力が4.3N/mm
2であるときの、自己伸縮性フィルムの他方向の伸び(50mm/分)が、9%以下(例えば、1%〜9%)であることが好ましく、4%〜9%であることがより好ましく、5%〜8%が特に好ましい。
前記他方向の伸びは、引張り応力と伸び(歪み)との応力歪み曲線から求めることができる。
【0043】
具体的には、自己伸縮性フィルムを、他方向に長さ200mm(標線間距離100±2mm)、一方向に長さ15±0.1mmの長方形に切り取り、サンプル片を作製する。このサンプル片の長辺方向を測定方向として、クロスヘッド速度一定型又は振子型引張試験機(伸張速度:50mm/分)を用いて、サンプル片を引張り、そのときの応力歪み曲線を得る。その曲線から求められる、引張り応力4.3N/mm
2のときのサンプル片の伸び(%)を、前記上下方向の伸びとする。
【0044】
また、前記自己伸縮性フィルムは、筒状体としたときに、少なくともその周方向に伸張倍率1.10倍に伸張させたときの引張り応力(以下、F10値とする)が、好ましくは1〜10N/mm
2、より好ましくは2〜8N/mm
2、特に好ましくは3〜7N/mm
2である。
また、前記少なくとも周方向に伸張倍率1.60倍に伸張させたときの引張り応力(以下、F60値とする)は、好ましくは1〜12N/mm
2、より好ましくは2〜10N/mm
2、特に好ましくは3〜9N/mm
2である。なお、F10値及びF60値の下限値が低すぎると伸張した状態で容器2の締め付け力が弱くなりすぎ、見栄えの良い装着状態が得られない場合がある。
前記F10値及びF60値は、前記瞬間歪みの測定法の引張り試験により得られる、引張り応力と伸び(歪み)との応力歪み曲線から求めることができる。
【0045】
上記のように、周方向の伸張倍率が1.60倍以上と高く、且つ周方向に1.60倍に伸張後の瞬間歪み(50mm/分)が13%以下、周方向のF10値が10N/mm
2以下といういずれも小さな値を示す高伸縮タイプの自己伸縮性フィルムは、汎用タイプの自己伸縮性フィルムに比して、極めて優れたストレッチ特性を有している。
【0046】
高伸縮タイプの自己伸縮性フィルムは、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を主成分として構成されていることが好ましい。かかるポリエチレンを使用することにより、伸縮率及びヒートシール性に優れた基材2を得ることができる。前記自己伸縮性フィルムは、複数種の線状低密度ポリエチレンを用いて積層構造とすることもできる。また、1種の線状低密度ポリエチレンを用いて形成される単層構造であってもよい。
【0047】
前記線状低密度ポリエチレンは、エチレンと、αオレフィンとの共重合体であることが好ましい。αオレフィンとしては、炭素数が3〜20のαオレフィンであることが好ましく、炭素数が4〜8のαオレフィン(例えば、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなど)であることが特に好ましい。αオレフィン成分の含有量は、単量体成分の全重量に対して、好ましくは1〜20重量%であり、より好ましくは2〜15重量%であり、特に好ましくは5〜10重量%である。また、線状低密度ポリエチレンは、メタロセン系触媒を用いて重合されたものが特に好適である。これら線状低密度ポリエチレンは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記線状低密度ポリエチレンの密度は、上記のように、0.880〜0.930g/cm
3である。密度がこの範囲内であれば、良好なストレッチ特性が得られる。なお、線状低密度ポリエチレンの密度は、0.890〜0.925g/cm
3であることが好ましく、0.900〜0.920g/cm
3であることがより好ましく、0.905〜0.915g/cm
3であることが特に好ましい。
【0049】
前記線状低密度ポリエチレンのMFR(190℃、2.16kg)は、1〜30g/10分である。MFRがこの範囲内であれば、生産性が良好になる。なお、線状低密度ポリエチレンのMFRは、1〜20g/10分であることがより好ましく、1〜10g/10分であることが特に好ましい。
【0050】
前記線状低密度ポリエチレンは、市販品を用いることができる。適用可能な市販品としては、例えば、宇部丸善ポリエチレン(株)製の「ユメリット(登録商標)715FT,1540F,0540F」が挙げられる。
【0051】
線状低密度ポリエチレンは、エチレン及び上記αオレフィン以外の単量体成分、例えば、酢酸ビニル(VA)等のカルボン酸ビニル、アクリル酸(AA)等の不飽和カルボン酸、メタクリル酸メチル(MMA)等の(メタ)アクリル酸エステルなどを含有していてもよい。また、「主成分」とは、本発明の目的を損なわない範囲で上記線状低密度ポリエチレン以外の樹脂や添加剤(例えば、滑剤や帯電防止剤等)などを含んでもよいという意味であって、例えば、自己伸縮性フィルムを構成する樹脂の総重量に対して上記線状低密度ポリエチレンが70重量%(70重量%以上)であってもよい。特に好ましくは、上記線状低密度ポリエチレンが90重量%以上含有される。
【0052】
さらに、高伸縮タイプの自己伸縮性フィルムは、筒状体としたときの上下方向の屈折率が、厚み方向の屈折率よりも大きく、且つ1.507〜1.528である。前記上下方向の屈折率は、好ましくは1.510〜1.525である。また、自己伸縮性フィルムは、筒状体としたときの周方向の屈折率が、前記上下方向の屈折率と同等又は上下方向の屈折率よりも小さく、且つ1.500〜1.528であることが好適であり、より好ましくは1.503〜1.520である。そして、前記周方向の屈折率は、フィルムの厚み方向の屈折率と同等又は厚み方向の屈折率よりも大きいことが好ましい。自己伸縮性フィルムの厚み方向の屈折率は、1.500〜1.515が好ましく、1.500〜1.510がより好ましい。
【0053】
特に、高伸縮タイプの自己伸縮性フィルムの伸張性(ストレッチ特性)を損なうことなく、且つ伸張させたときに部分的な自己伸縮性フィルムの歪みを防ぐために、自己伸縮性フィルムの、前記周方向の屈折率は、前記厚み方向の屈折率よりも大きく、且つ前記上下方向の屈折率と同等又は上下方向の屈折率よりも小さいことが好ましい。
【0054】
また、前記自己伸縮性フィルムの厚み方向の屈折率(Rtとする)に対する前記上下方向の屈折率(Rhとする)の比率(Rh/Rt)は、1.001〜1.030が好ましく、1.002〜1.020がより好ましく、1.003〜1.015が特に好ましい。
自己伸縮性フィルムの厚み方向の屈折率(Rt)に対する前記周方向の屈折率(Rcとする)の比率(Rc/Rt)は、1.000〜1.030が好ましく、1.001〜1.020がより好ましく、1.002〜1.015が特に好ましい。
自己伸縮性フィルムの前記上下方向の屈折率(Rh)に対する前記周方向の屈折率(Rc)の比率(Rc/Rh)は、0.980〜1.005が好ましく、0.985〜1.000がより好ましく、0.990〜0.999が特に好ましい。
【0055】
前記フィルムの屈折率は、JIS K 7105、7142に準拠して測定できる。
前記屈折率は、例えば、JIS K 7142のA法に準拠した、アッベ屈折計((株)アタゴ製の製品名「アッベ屈折計NAR−2T」。Na白色光源)を用いて、測定波長589nmで測定できる。
【0056】
自己伸縮性フィルムの上記屈折率は、自己伸縮性フィルムの主成分である上記線状低密度ポリエチレンの組成、及び自己伸縮性フィルムの延伸を制御することにより実現できる。特に、筒状体としたときの上下方向、周方向、及び厚み方向における屈折率の差は、自己伸縮性フィルムの延伸方向及び延伸倍率を制御することにより実現できる。
【0057】
延伸倍率は、ストレッチ特性及び製造適性の両立の観点から、一方向及び他方向にそれぞれ1.01〜1.40倍であり、好ましくは1.03〜1.35倍、特に好ましくは1.05〜1.30倍である。前記自己伸縮性フィルムは、筒状体の周方向に延伸されていなくてもよいが、好ましくは、上下方向と同等以下の倍率で延伸されているものが好ましい。特に、延伸倍率が1.05〜1.30倍の範囲において、筒状体の周方向及び上下方向に対して同等の倍率で延伸されている自己伸縮性フィルムが好適である。
【0058】
自己伸縮性フィルム(汎用タイプ又は高伸縮タイプ)には、通常、所望のデザインを表示するため、意匠印刷層が設けられる。
意匠印刷層は、自己伸縮性フィルムの外面若しくは内面の何れか一方又は外面及び内面の双方に設けられる。もっとも、前記接合部71において、フィルムの両側端部の重ね合わせ面の間に意匠印刷層が設けられていると、前記重ね合わせ面間が十分な接着強度で接着しないおそれがある。このため、前記重ね合わせ面の間には、意匠印刷層が介在しないように、意匠印刷層を設けることが好ましい。
自己伸縮性フィルムは、透明又は不透明のいずれでもよい。自己伸縮性フィルムの内面に意匠印刷層が設けられる場合には、そのデザインを外側から透視できるようにするため、無色透明又は有色透明のフィルムが用いられる。
なお、意匠印刷層は、その全体が略均一な厚みを有していてもよいし、或いは、部分的に厚みが小さい箇所があってもよい。意匠印刷層が厚みの小さい箇所を有する場合、その厚みの小さい箇所が、後述する正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bの少なくとも何れか一方に位置するように、意匠印刷層が形成されていることが好ましい。
また、意匠印刷層は、接合部71を除いて、自己伸縮性フィルムの略全体にベタ状に設けられていてもよいし、意匠印刷層の面内に部分的に意匠印刷層を設けない箇所があってもよい。部分的に意匠印刷層が設けられていない箇所を有する場合、その箇所が、後述する正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bの少なくとも何れか一方に位置するように、意匠印刷層が形成されていることが好ましい。
【0059】
(筒状ラベル付き容器)
図6は、本発明の第1実施形態に係る筒状ラベル付き容器を正面側から見た図であり、
図7は、同筒状ラベル付き容器の正面凹部及び背面凹部の中心部を通る切断面で見た水平断面図であり、
図8は、同筒状ラベル付き容器の正面凹部及び背面凹部の中心部を通る切断面で見た縦断面図である。
図6乃至
図8において、筒状ラベル付き容器1は、上記容器2と、この容器2の胴部22に装着された上記筒状ラベル7と、を有する。
かかる筒状ラベル付き容器1は、次のようにして得ることができる。
すなわち、筒状ラベル7を径外方向に拡張力を加えて拡径し、正面凹部5A及び背面凹部5Bを覆うように容器2の胴部22に外嵌した後、前記拡張力を解除することにより、自己伸縮性を有する筒状ラベル7(自己伸縮性フィルム)の自己収縮力に従い、筒状ラベル7の内面が容器2の胴部22の外面に密着する。
このようにして正面凹部5A及び背面凹部5Bを含む胴部22に、筒状ラベル7が装着された筒状ラベル付き容器1を得ることができる。
この際、
図7に示すように、筒状ラベル7は、接合部71が正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bの何れにも重ならないように装着される。
【0060】
かかる筒状ラベル付き容器1は、筒状ラベル7の一部の内面が正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bに密着し、その内面と正面凹部5A及び背面凹部5Bの表面51A,51Bとの間に、それぞれ空間部を有する。
詳しくは、筒状ラベル7の自己収縮力により、筒状ラベル7の内面が、正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bを含む胴部22の外面に密着する一方で、正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bよりも内側へ凹んだ正面凹部5A及び背面凹部5Bの表面51A,51Bには密着しない。このため、筒状ラベル7の内面と正面凹部5Aの表面51Aの間に、及び、筒状ラベル7の内面と背面凹部5Bの表面51Bの間に、それぞれ空間部が形成される。従って、
図6に示すように、正面凹部5A及び背面凹部5Bは、筒状ラベル7の一部によって覆われており、正面凹部5A及び背面凹部5Bの各表面51A,51Bは外部から見えなくなる。
また、正面凹部5A及び背面凹部5Bに対応する筒状ラベル7の一部72A,72B(伸縮領域)の正面視形状及び側面視形状は、
図7及び
図8に示すように、正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bの正面視形状及び側面視形状と略同じになる。以下、筒状ラベル付き容器において、正面凹部5Aに対応する筒状ラベル7の一部を「正面凹部被覆ラベル部分72A」といい、背面凹部5Bに対応する筒状ラベル7の一部を「背面凹部被覆ラベル部分72B」という。
【0061】
さらに、筒状ラベル7の自己収縮力により、筒状ラベル7の上方部は、胴部22の近傍上方部41A,41Bに密着しており、筒状ラベル7の下方部は、胴部22の近傍下方部42A,42Bに密着している。前記近傍上方部41A,41B及び近傍下方部42A,42Bは、上述のように、何れも正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bから上方及び下方に離れるに従って縮径した縮径部分であるので、前記筒状ラベル7の上方部及び下方部は、それぞれ正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bから離れるに従って縮径している。
【0062】
前記筒状ラベル付き容器1は、使用者が筒状ラベル7の上から容器2の胴部22を手で持って使用される。
容器2の胴部22は、正面から見たときの幅が側面から見たときの幅よりも大きいので、親指を胴部22の正面側に且つ他の指を背面側に当てながら容器2を持ち易い。
そして、
図9に示すように、正面凹部被覆ラベル部分72Aに親指Xを且つ背面凹部被覆ラベル部分72Bに他の指Yを当てて握ると、正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bが正面凹部5A及び背面凹部5B側の表面51A,51B側へと撓む。具体的には、正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bの各内面と正面凹部5A及び背面凹部5Bの各表面51A,51Bとの間には、それぞれ空間部が存在する。筒状ラベル7は、自己伸縮性を有するので、これらの部分72A,72Bを指で押すと、前記空間部に存在する空気が、正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bの各内面と正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bとの間から外部へと押し出され、筒状ラベル7の上方部が下方に少しずれ且つ筒状ラベル7の下方部が上方に少しずれると共に正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bが伸張する。なお、正面凹部5Aと背面凹部5Bは、貫通孔6を介して連通しているので、正面凹部被覆ラベル部分72Aと正面凹部5Aとの間の空間部における気圧と、背面凹部被覆ラベル部分72Bと背面凹部5Bとの間の空間部における気圧とは、略均一になるので、正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bは、それぞれ同様に撓むようになる。
正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bが撓んで正面凹部5A及び背面凹部5Bへ入り込むことによって、手の指に接する筒状ラベル7の面積が増えるので、手のグリップ力が高まるようになる。また、筒状ラベル7は、比較的軟らかい自己伸縮性フィルムからなるので、持ったときの手の感触も良好である。かかる本発明の筒状ラベル付き容器1は、手に馴染みやすく、握力が比較的弱い人でも持ち易い。
【0063】
他方、手を離すと、自己伸縮性フィルムからなる正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bが、自己伸張力により元のように復元しようとするが、筒状ラベル7の内面は正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bにおいて密着しているので、(前記空間部内に外部から一気に空気が入らず)前記空間部内に空気が徐々に入るようになる。このため、正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bは、徐々に元のように復元し、伸張によって歪んだ正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bのデザインが、元のように綺麗に表示される。特に、接合部71が正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bに重なっていないので、筒状ラベル7の内面が正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bに隙間無く密着し、伸張した正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bが徐々に復元するようになる。
このように本発明の筒状ラベル付き容器1は、正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bが徐々に復元することにより、筒状ラベル7のデザインの歪みが生じ難くなり、何度か使用しても、デザイン上の外観が変化し難い。
【0064】
なお、筒状ラベル7の上方部は、上方に向かって周長が次第に小さくなった近傍上方部41A,41Bに密着しており、筒状ラベル7の下方部は、下方に向かって周長が次第に小さくなった近傍下方部42A,42Bに密着している。このため、手を正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bから離した後、(正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bを押し込んだときに)下方に位置ずれした筒状ラベル7の上方部が、近傍上方部41A,41Bの傾斜に従い上方に戻り易く、且つ、上方に位置ずれした筒状ラベル7の下方部が、近傍下方部42A,42Bの傾斜に従い下方に戻り易い。よって、これらの上方部及び下方部が、撓んだ正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bを引っ張るので、それらの部分72A,72Bが、
図7及び
図8に示すように元の状態に復元し易くなる。
【0065】
本発明の筒状ラベル付き容器1は、手に馴染み、持ち易いので、比較的握力が小さい人でも取り扱い易い。
さらに、何度か使用しても、筒状ラベルのデザインが歪みにくく、筒状ラベルに表示された商品名や説明書きなどを良好に確認できる。
【0066】
本発明の筒状ラベル付き容器は、上記第1実施形態に限られず、本発明の意図する範囲で様々に設計変更できる。以下、様々な他の実施形態を説明するが、上記第1実施形態と同様の構成及び効果については、その説明を省略する場合があり、また、上記第1実施形態と同様の概念については、同じ用語及び符号を使用する。なお、下記の様々な実施形態に係る構成を2以上選択し適宜組み合わせてもよい。
【0067】
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態の筒状ラベル付き容器の正面凹部及び背面凹部の中心部を通る切断面で見た水平断面図である。
上記第1実施形態の筒状ラベル付き容器1は、接合部71が正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bの何れにも重ならないように筒状ラベル7が装着されているが、第2実施形態の筒状ラベル付き容器1は、
図10に示すように、接合部71が正面凹部5Aの縁3Aに重なるように筒状ラベル7が装着されている。図示例では、接合部71が正面凹部5Aの縁3Aの幅方向中央部に配置されているが、接合部71が正面凹部5Aの縁3Aの中央部に配置されていなくてもよい。なお、特に図示しないが、接合部71が背面凹部5Bの縁3Bに重なるように筒状ラベル7が装着されていてもよい。
接合部71は2枚のフィルムの重ね合わせ接着部なので、接合部71に筒状ラベル7の内面は、(平坦でなく)僅かな段差を有する。かかる接合部71が正面凹部5Aの縁3Aに重なっていると、前記段差によって、正面凹部被覆ラベル部分72Aの内面と正面凹部5Aの縁3Aとの間に僅かな隙間を生じる。このため、正面凹部被覆ラベル部分72Aを指で押した際に、空間部内の空気が抜けやすく、より弱い力で正面凹部被覆ラベル部分72Aを撓ますことができる。他方、正面凹部被覆ラベル部分72Aから手を離した後には、凹んだ正面凹部被覆ラベル部分72Aが速やかに元のように復元するようになる。
【0068】
また、上記第1実施形態の筒状ラベル7の容器接触面(自己伸縮性フィルムの内面に意匠印刷層が設けられる場合には意匠印刷層の内面。自己伸縮性フィルムの内面に意匠印刷層が設けられない場合には、そのフィルムの内面)に、容器と筒状ラベルの摩擦抵抗を小さくするため、低摩擦層を設けてもよい(図示せず)。低摩擦層は、例えば、シリコーンや滑剤を含む印刷層などが挙げられる。低摩擦層を設けることにより、筒状ラベル7が容器に対して滑り易くなるので、より弱い力で正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bを撓ますことができ、他方、手を離した後には、凹んだそれらの部分72A,72Bが速やかに元のように復元するようになる。
【0069】
[第3実施形態]
図11は、第3実施形態の筒状ラベル付き容器を正面から見た図であり、
図12は、同筒状ラベル付き容器の正面凹部及び背面凹部の中心部を通る切断面で見た水平断面図である。ただし、
図11において、筒状ラベルを二点鎖線で表している。
第3実施形態の筒状ラベル付き容器1に用いられる容器2は、正面及び背面に貫通する筒状の貫通孔を有し、この貫通孔を覆うように筒状ラベル7が装着されている。
【0070】
具体的には、容器2の胴部22は、直胴状である。胴部22の外形は、
図12に示すように、略長方形状に形成されている。
この胴部22の正面側方には、正面凹部5Aが形成され、胴部22の背面側方には、背面凹部5Bが形成されている。ただし、正面凹部5Aの縁3Aの正面視形状は、無端環状であり、背面凹部5Bの縁3Bの背面視形状は、無端環状である。なお、無端環状の背面凹部5Bの縁3Bは、正面凹部5Aの縁3Aと対称に表れる。
環状の正面凹部5Aの縁3Aの正面視形状及び背面凹部5Bの縁3Bの背面視形状は、例えば、略長方形状であるが、略楕円状などでもよい。
前記正面凹部5Aの表面51Aは、その縁3Aに連続し、且つ、背面凹部5Bの表面51Bは、その縁3Bに連続している。
さらに、前記正面凹部5Aの表面51Aと背面凹部5Bの表面51Bは、境界のない連続した面を構成しており、例えば、表面51Aと表面51Bは、略長方形筒状の内周面を構成している。かかる正面凹部5A及び背面凹部5Bは、貫通されている。
筒状ラベル7は、自己収縮力により、正面凹部5A及び背面凹部5Bを含む胴部22に装着されている。従って、筒状ラベル7の内面が、正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3Bに密着し、且つ、正面凹部5A及び背面凹部5Bが、筒状ラベル7によって覆われている。また、筒状ラベル7の伸縮領域の内面と正面凹部5A及び背面凹部5Bの表面51A,51Bとの間に、それぞれ空間部が生じる。
【0071】
本実施形態の筒状ラベル付き容器1も、上記第1実施形態と同様に、筒状ラベル7の正面凹部被覆ラベル部分72A及び背面凹部被覆ラベル部分72Bが適度に撓むので持ち易く、又、手を離した後にはその部分72A,72Bが復元する。
【0072】
[第4実施形態]
上記第1実施形態の筒状ラベル付き容器1に用いられた筒状ラベル7は、全体的に自己伸縮性を有するが(1枚の自己伸縮性フィルムから形成されているが)、これに限定されない。例えば、
図13に示すように、筒状ラベル7が、自己伸縮性を有するフィルム81と自己伸縮性を有さないフィルム82とからなり、自己伸縮性フィルム81の両端部を非自己伸縮性フィルム82の両端部に接合部73,74にて接着することにより筒状に形成された筒状体から構成されていてもよい。この非自己伸縮性フィルム82は、自己伸縮性を有さないが、熱収縮性を有する。
かかる筒状ラベル7は、自己伸縮性フィルム81が伸縮領域となる。この伸縮領域が少なくとも正面凹部5Aの縁3A(好ましくは正面凹部5Aの縁3A及び背面凹部5Bの縁3B)に密着するように、筒状ラベル7を容器2に装着することにより、本発明の筒状ラベル付き容器が得られる。なお、本実施形態の筒状ラベル7は、加熱して非自己伸縮性フィルム82を収縮させることにより、容器2の胴部22に密着する。
【0073】
[第5実施形態]
また、上記第1乃至第4実施形態では、正面凹部5A及び背面凹部5Bは貫通孔を介して連通しているが、貫通孔が設けられていなくてもよい(図示せず)。
さらに、上記第1乃至第4実施形態では、正面凹部5Aと背面凹部5Bは、容器2の正面と背面の対称的な位置に形成されているが、対称的に形成されていなくてもよい(図示せず)。
また、上記第1乃至第4実施形態では、容器2に2つの凹部(正面凹部5A及び背面凹部5B)が形成されている場合を例示したが、本発明の筒状ラベル付き容器は、少なくとも1つの凹部(正面凹部5A)が形成された容器2に筒状ラベル7が装着されていればよい。
【0074】
[第6実施形態]
また、上記第1乃至第5実施形態の筒状ラベル付き容器1に用いられた容器2は、正面凹部5Aの縁3Aの形状が、胴部22の正面から見たとき無端環状であって、側面から見たときに両端を有し且つ容器2の軸Oに直交する方向に窪んだ非直線状であるが、これに限定されず、例えば、
図14乃至
図16に示すように、正面凹部5Aの縁3Aの形状が、胴部22の正面から見たときに無端環状であって、胴部22の側面から見たときに上下方向を長軸とする略長方形状(又は楕円状)でもよい。背面凹部5Bの縁3Bの形状も同様に、胴部22の背面から見たときに無端環状であって、胴部22の側面から見たときに上下方向を長軸とする略長方形状(又は楕円状)でもよい。かかる第6実施形態の容器2についても、上記各実施形態と同様に、正面凹部5A及び背面凹部5Bを覆うように筒状ラベル7を装着することにより、筒状ラベル付き容器1が得られる(図示せず)。
なお、
図14は、第6実施形態の筒状ラベル付き容器を構成する容器を正面から見た図であり、
図15は、それを右側面から見た図であり、
図16は、その容器を正面凹部及び背面凹部の中心部を通る切断面で見た水平断面図である。
【0075】
[第7実施形態]
さらに、上記第1乃至第6実施形態におけるラベル付き容器1においては、筒状ラベル7の内面と容器2の胴部22の間には、接着剤(又は粘着剤)が介在していないが、筒状ラベル7の内面と容器2の胴部22の間の一部に接着剤を介在させ、その接着部を設けた部分において両者を接着(動かないように密着)させてもよい。例えば、筒状ラベル7の内面と凹部(5A若しくは5B、又は、5A及び5B)の縁との間に前記縁形状に沿って所要幅の接着剤を設け、両者を接着してもよい(図示せず)。