特許第6134925号(P6134925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人同志社の特許一覧 ▶ 株式会社量子情報の特許一覧 ▶ 佐々木 喜一郎の特許一覧

<>
  • 特許6134925-在宅支援システム 図000002
  • 特許6134925-在宅支援システム 図000003
  • 特許6134925-在宅支援システム 図000004
  • 特許6134925-在宅支援システム 図000005
  • 特許6134925-在宅支援システム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134925
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】在宅支援システム
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/00 20060101AFI20170522BHJP
   G06Q 50/22 20120101ALI20170522BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H04M11/00 302
   G06Q50/22
   H04N7/18 D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-36975(P2013-36975)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-165807(P2014-165807A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(73)【特許権者】
【識別番号】513048379
【氏名又は名称】株式会社量子情報
(73)【特許権者】
【識別番号】513048380
【氏名又は名称】佐々木 喜一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】藤井 透
(72)【発明者】
【氏名】大窪 和也
(72)【発明者】
【氏名】中軽米 真
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和義
(72)【発明者】
【氏名】竹中 邦明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 喜一郎
【審査官】 中村 信也
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3064704(JP,U)
【文献】 特開2012−175192(JP,A)
【文献】 特開2007−213364(JP,A)
【文献】 特開2008−085421(JP,A)
【文献】 特開平05−236472(JP,A)
【文献】 特開2007−300452(JP,A)
【文献】 特開2001−127990(JP,A)
【文献】 特表2004−531800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 19/00
G06Q 10/00−10/10
G06Q 30/00−30/08
G06Q 50/00−50/20
G06Q 50/22−50/24
G06Q 50/26−99/00
H04N 7/10
H04N 7/14−7/173
H04N 7/20−7/56
H04N 21/00−21/858
H04M 3/00
H04M 3/16−3/20
H04M 3/38−3/58
H04M 7/00−7/16
H04M 11/00−11/10
G08B 23/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被支援者宅に設置された端末と、支援センターに設置されたサーバとを備え、ネットワークを介して前記端末と前記サーバとの間で双方向の通信が可能な在宅支援システムであって、
前記端末として、コンピュータの機能を実現するPCユニットと、テレビジョン受像機の機能を実現するTVユニットとを備えたコンピュータ内蔵テレビジョン受像機を用い、
前記PCユニットは、第1のビデオカメラで撮影した被支援者の映像データと、第1のマイクで取得した被支援者の音声データを、前記ネットワークを介して前記サーバに送信し、
前記TVユニットは、前記サーバから送信されたエージェントの映像データをディスプレイに表示すると共に音声データをスピーカから出力し、更に、
前記エージェントの映像データは、第2のビデオカメラで撮影した前記支援センターの担当者の映像に応じてエージェントの顔の表情を変化させることにより作成され、
前記エージェントの音声データは、第2のマイクで取得した前記担当者の声を変調することにより作成され、かつ当該エージェントの声は、担当者が変わっても同様の音色になることを特徴とする在宅支援システム。
【請求項2】
前記TVユニットは、前記サーバから前記エージェントの映像データを受信したとき、ピクチャーインピクチャー機能を利用して前記ディスプレイの画面上のウィンドウに前記エージェントの映像を表示することを特徴とする、請求項に記載の在宅支援システム。
【請求項3】
前記PCユニットは、前記サーバとの通信を行なわないときはスリープ状態に保持され、前記サーバからのデータを受信したときに起動状態となることを特徴とする、請求項1または2に記載の在宅支援システム。
【請求項4】
前記被支援者宅には、ビデオカメラ、距離センサーおよびマイクを備えた、被支援者の位置や動作を解析できるモーションキャプチャ装置が設置され、
前記PCユニットは、前記モーションキャプチャ装置で解析された被支援者のデータを前記サーバに送信することを特徴とする、請求項1ないしのいずれかに記載の在宅支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在宅高齢者などの被支援者宅と支援センターとをネットワークを介して双方向通信可能に接続した在宅支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの自治体では住民の高齢化、少子化が進み、これに対応して一人暮らしの老人が増えている。これらの老人が住む自治体では、一人暮らしの老人が全て健常者であるとは限らないことから、職員が各老人の家庭を定期的に巡回して、入浴、健康診断等の福祉サービスを行っている。
【0003】
しかし、このような方法では、自治体側の手間がかかり過ぎると共に、人手を要することから、老人が病気などで寝込んでしまっても、自治体の職員や周辺の住民がこれに気付かないなどの問題が発生している。
【0004】
このような状況を改善するため、発明者等は先に、在宅高齢者などの被支援者宅にコミュニケーション用の端末としてパーソナルコンピュータ(以降、「PC」という)を設置すると共に、被支援者宅と支援センターとを双方向通信可能に接続して、支援センターが保有する被支援者のデータベースに基づいて被支援者の精神的なケアを実現するシステムを提案した(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載の在宅支援システムは、一人住まいの高齢者の精神的なケアを行い、癒し効果を発揮できることから、老人介護の一環としての活用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4307177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者等は、特許文献1記載の在宅支援システムについて、自治体の協力を得て実験を行った。その結果、一人暮らしの高齢者はテレビジョン受像機(以降、「TV」という)が生活の中心になっており、コミュニケーション手段にPCを用いた場合、予定した機能を十分発揮できないことが分かった。
【0008】
具体的には、支援センターからPCを介して呼び出しを行っても、高齢者がTVを視聴中のため、あるいは視聴中でなくても、TVから流れる音声によって支援センターからの呼び出しに気付かないことが多い。更に、高齢者の多くは耳が遠いためにTVの音量が大きく、問いかけの音声を確認できないこともある。実験では、これらのことが原因となって、期待した効果を発揮することができなかった。
【0009】
本発明は上述の状況に鑑みてなされたもので、被支援者宅に設置する端末として高齢者に身近なTVを用いた在宅支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明にかかる在宅支援システムは、被支援者宅に設置された端末と、支援センターに設置されたサーバとを備え、ネットワークを介して前記端末と前記サーバとの間で双方向の通信が可能な在宅支援システムであって、
前記端末として、コンピュータの機能を実現するPCユニットと、テレビジョン受像機の機能を実現するTVユニットとを備えたコンピュータ内蔵テレビジョン受像機を用い、
前記PCユニットは、第1のビデオカメラで撮影した被支援者の映像データと、第1のマイクで取得した被支援者の音声データを、前記ネットワークを介して前記サーバに送信し、
前記TVユニットは、前記サーバから送信されたエージェントの映像データをディスプレイに表示すると共に音声データをスピーカから出力し、更に、
前記エージェントの映像データは、第2のビデオカメラで撮影した前記担当者の映像に応じてエージェントの顔の表情を変化させることにより作成され、
前記エージェントの音声データは、第2のマイクで取得した前記担当者の声を変調することにより作成され、かつ当該エージェントの声は、担当者が変わっても同様の音色になることを特徴とする。
【0012】
ここで、前記TVユニットは、前記サーバから前記エージェントの映像データを受信したとき、ピクチャーインピクチャー機能を利用して前記ディスプレイの画面上のウィンドウに前記エージェントの映像を表示することが好ましい。
【0013】
また前記PCユニットは、前記サーバとの通信を行なわないときはスリープ状態に保持され、前記サーバからのデータを受信したときに起動状態となることが好ましい。
【0014】
本発明にかかる在宅支援システムにおいて、前記被支援者宅には、ビデオカメラ、距離センサーおよびマイクを備えた、被支援者の位置や動作を解析できるモーションキャプチャ装置が設置され、前記PCユニットは、前記モーションキャプチャ装置で解析された被支援者のデータを前記サーバに送信するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる在宅支援システムでは、被支援者宅に設置する端末にPC内蔵TVを用いており、高齢者にとって身近なTVを使用することから、高齢者とのコミュニケーションが確実にできるようになる。
【0016】
また、TVが動作中であることで高齢者の在宅を確認できると共に、TVに内蔵されたPCを介して支援センターから定期的な呼び出しを行うことにより高齢者の安否を確認でき、結果として、一人暮らしの高齢者を24時間見守ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1にかかる在宅支援システムの全体構成を示す図である。
図2図1のPC内蔵TVの構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態1にかかる在宅支援システムの動作を説明するフローチャートである。
図4】被支援者宅のディスプレイの表示画面を示す図である。
図5】本発明の実施の形態2にかかる在宅支援システムにおける被支援者宅の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態にかかる在宅支援システムについて、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1に、本発明の実施の形態1にかかる在宅支援システムの全体構成を示す。在宅支援システムの具体的な構成について説明する前に、本発明にかかる在宅支援システムの基本構成と動作について説明する。
【0019】
本発明にかかる在宅支援システムでは、高齢者とのコミュニケーション用の端末(情報提供用および情報取得用)として、PC内蔵TVを採用している。具体的には、高齢者の支援に必要な情報の提供手段として、高齢者の生活の中心になっているTVを使用し、TVの映像表示および音声出力の機能を利用して支援に必要な情報を提供している。
【0020】
またPC内蔵TVのピクチャーインピクチャー機能(以降、「PIP機能」という)を利用し、支援センターから呼び出しを行う際には、視聴中のTV画像に呼出者であるエージェントの画像を重ねて表示している。具体的には、支援センターから呼び出しがあった時にTVの音声をミュートし、TV画面にエージェントの画像を表示すると共に、エージェントの声をスピーカから出力している。
【0021】
一方、TVの近傍(例えばディスプレイの上)にビデオカメラとマイクを設置し、高齢者の支援に必要な情報の収集手段として用いる。ビデオカメラで撮影した高齢者の映像およびマイクで取得した高齢者の声は、TVに内蔵されたPCにより圧縮符号化され、パケット化データとして支援センターに送信され、会話の際に用いられる。
【0022】
<在宅支援システムの構成>
図1に示すように、本実施の形態にかかる在宅者支援システム1は、高齢者が居住する被支援者宅2に設置されたPC内蔵TV20と、支援センター3に設置された管理用サーバ30と、ネットワーク手段の一種であり、PC内蔵TV20とサーバ30との間を双方向通信可能な状態で接続するインターネット4とで構成されている。図1では、3つの被支援者宅のPV内蔵TV20がインターネット4に接続されているが、実際には、支援センター3が支援を担当している全ての被支援者宅2に設置されたPC内蔵TV20がネットワーク4に接続されている。
【0023】
被支援者宅2には、PC内蔵TV20以外に、インターネット4を介してPC内蔵TV20と支援センター3のサーバ30との間で相互通信を行うためのルータ21、およびサーバ30から送られてきた映像を表示するディスプレイ22と音声を出力するスピーカ23が設置されている。図ではPC内蔵TV20とディスプレイ22は別体となっているが、一般的には、ディスプレイ22とスピーカ23は、PC内蔵TV20の筐体の前面に取り付けられている。
【0024】
ディスプレイ22の上部には、被支援者の映像と音声を支援センター3のサーバ30に送信するためのビデオカメラ24とマイク25が設置されている。
【0025】
PC内蔵TV20は、PCとしての機能を実現するPCユニット210とTVとしての機能を実現するTVユニット220とで構成され、PCユニット210には、前述のルータ21と、PCユニット210にデータを入力するキーボード26およびマウス27が接続されている。一方、TVユニット220には、赤外線等を用いてTVの動作を制御するリモートコントローラ(以降、「リモコン」と略す)28、および放送電波を受信するアンテナ29が接続されている。
【0026】
なお、PC内蔵TV20には、PCユニット210とTVユニット220がディスプレイ22やスピーカ23とは別に、それぞれ独立の筐体内に収納され、かつ相互に接続された形態のものを含むものとする。
【0027】
支援センター3には、被支援者の管理用サーバ30以外に、サーバ30へのデータの入出力を行うPC31と、被支援者に関するデータ等、支援に必要なデータを格納したデータベース32と、インターネット4を介してサーバ30と被支援者宅2のPC内蔵TV20との間で相互通信を行うためのルータ33が設置されている。
【0028】
またPC31には、被支援者の映像を表示するディスプレイ34と音声を出力するスピーカ35が接続され、更に、ディスプレイ34の上部には、支援センター3の担当者が、被支援者と会話を行う際に用いるビデオカメラ36とマイク37が設置されている。
【0029】
<PC内蔵TVの構成と機能>
次に、図2に基づいてPCユニット210とTVユニット220の機能を説明する。最初に、PCユニット210について説明する。
【0030】
PCユニット210は、一般のPCと同様の機能を実現するものであり、データ送受信部211、メモリ212、入力部213、圧縮符号化部214、アプリケーション実行部215、データ処理部216、データ転送部217、制御信号送受信部218および制御部219で構成されている。
【0031】
データ送受信部211は、TCP/IPプロトコルに従って作成され、サーバ30から送信されたパケット化データを、インターネット4およびルータ21を介して受信した後、パケットから取り出す。逆に、TCP/IPプロトコルに従って作成したパケット化データを、ルータ21およびインターネット4を介してサーバ30に送信する。受信および送信されるデータには、テキスト、静止画像、映像、音声等がパケット化されたコンテンツデータが含まれる。
【0032】
メモリ212は、ハードディスク、フラッシュメモリ等で構成され、各種のデータを記憶する。メモリ212には、映像、音声等のコンテンツデータに加えて、アプリケーション実行部215で実行される各種のアプリケーションソフトが記憶されている。
【0033】
入力部213は、ユーザによる入力操作を受け付けるもので、具体的には、キーボード26またはマウス27から発信された信号を受信し、制御部219に出力する。圧縮符号化部214は、ビデオカメラ24から出力された映像信号およびマイク25から出力された音声信号をA/D変換した後、圧縮符号化してMPEG2またはMPEG4準拠のパケット化データを作成する。
【0034】
アプリケーション実行部215は、メモリ212に記憶されたアプリケーションソフトを読み出し、実行する。データ処理部225は、データ送受信部211で受信したコンテンツデータを処理する。データ転送部217は、データ送受信部211で受信したデータをTVユニット220のデータ取得部223に送信する。
【0035】
制御信号送受信部218は、TVユニット220の制御信号送受信部221に制御信号を送信し、逆に、制御信号送受信部221からの制御信号を受信する。ここで、制御信号には、PCユニット210またはTVユニット220を操作するための操作信号や、コンテンツデータを取得するためのアクセス情報が含まれる。
【0036】
制御部219は、PCユニット210の各部の動作を制御する。図示しないが、制御部219を初めとして、図2に示したPCユニット210の各ブロックの機能は、CPU、メモリ、グラフィックコントローラ等の既知の部品を組み合わせて実現される。
【0037】
次に、TVユニット220について説明する。制御信号送受信部221は、PCユニット210の制御信号送受信部218から送信された制御信号を受信し、および制御信号送受信部218に制御信号を送信する。
【0038】
データ受信部222は、例えば、地上波デジタル放送として送信され、アンテナ29で受信した放送信号を復調してパケット化されたコンテンツデータを取り出す。デジタル放送の場合、信号にはMPEG2やMPEG4等の方式によって圧縮符号化された映像信号や音声信号が含まれている。なお、データ受信部222が受信する信号は、地上波デジタル放送として送信される信号に限定されず、衛星放送またはケーブルテレビ放送として送信される信号も含まれる。
【0039】
データ取得部223は、PCユニット210のデータ転送部217から送信されたコンテンツデータを受信し、データ合成部226に出力する。
【0040】
入力部224は、ユーザによる入力操作を受け付ける。具体的には、ユーザによる入力操作に応じてリモコン28が発信した信号を受信し、制御部229に出力する。
【0041】
データ処理部225はデータ受信部222から出力されたパケット化データを処理する。具体的には、アンテナ29で受信したデジタル放送の信号をデコードしてコンテンツデータを再生し、データ合成部226に出力する。
【0042】
データ合成部226は、データ処理部225から出力された放送番組のコンテンツデータ、およびデータ取得部223がPCユニット210から受信したコンテンツデータを合成して、1つのコンテンツデータを生成する。
【0043】
映像出力部227は、データ合成部226で作成された映像信号をディスプレイ22に出力する。音声出力部228は、データ合成部226で作成された音声信号をスピーカ23に出力する。また制御部229は、TVユニット220を構成する各ブロックを統括制御する。
【0044】
PCユニット210と同様に、TVユニット220の各ブロックの機能は、CPU、メモリ、デモジュレータ、デコーダ、グラフィックコントローラ、オーディオプロセッサ等の既知の部品を組み合わせて実現される。また図示しないが、PCユニット210およびTVユニット220には商用電源に接続された電源部が設けられており、それぞれのユニットを構成する部品に動作用の電力を供給している。
【0045】
<在宅支援システムの動作>
次に、図3のフローチャートに基づき、本実施の形態にかかる在宅支援システムの動作について説明する。
【0046】
PC内蔵TV20に内蔵されたPCユニット210とTVユニット220は、それぞれ独立して動作できるように設定されており、被支援者がTVユニット220を起動してTV番組を視聴しているとき、PCユニット210はスリープ状態に保持されている。スリープ状態では、PCユニット210は、外部からの信号を受信するために必要な最小限の部品にのみ電力が供給されている。
【0047】
本実施の形態では、TVの視聴時および非視聴時を問わず、PCユニット210をスリープ状態に保持することで、迅速な応答と省エネを両立させている。PCユニット210が起動状態となるのは、外部からの信号を受信したとき、および被支援者がPCユニット210の起動スイッチをオンにした場合である。それ以外のときは、PCユニット210をスリープ状態に保持して、無駄な電力の消費を抑えている。
【0048】
PCユニット210はPCとしての機能を備えているため、被支援者がPC内蔵TV20をPCとして使用したい場合、PCユニット210の起動スイッチをオンにし、メモリ212から必要なソフトウェアを読み出し、アプリケーション実行部215で実行させて作業を行う。この際、TVユニット220およびディスプレイ22は表示装置として機能し、キーボード26とマウス27を用いて必要なデータを入力する。
【0049】
一方、被支援者がPC内蔵TV20をTVとして使用したい場合、リモコン28を用いてTVユニット220の起動スイッチをオンにし、希望するチャンネルを選択すると、ディスプレイ22に映像が表示され、スピーカ23から音声が出力される。
【0050】
支援センター3の担当者が被支援者と連絡を取る場合、図3に示すように、担当者はPC31を用い、サーバ30およびインターネット4を介して被支援者宅2のPC内蔵TV20にアクセスし、通信可能な状態にあるか否かを確認する(ステップS11)。
【0051】
前述したように、通常、PC内蔵TV20のPCユニット210はスリープ状態に保持されており、サーバ30からの信号を受信すると、PCユニット210はスリープ状態を解除してPCを起動させ、通信可能であることを示す応答信号をサーバ30に送信する(ステップS21)。
【0052】
支援センター3のサーバ30は、被支援者宅2のPCユニット210が通信可能な状態であることを確認した後、エージェントの映像データと音声データを被支援者宅2のPCユニット210に送信して被支援者との会話を行う(ステップS12)。
【0053】
支援センター3の担当者の映像データと音声データは、ビデオカメラ36およびマイク37によりリアルタイムで取得できるが、そのデータをそのままPCユニット210には送信しない。映像については、担当者の映像をエージェントの映像に置き換えている。
【0054】
具体的には、サーバ30は、アバター作成用のソフトウェアを用い、データベース32から読み出したエージェントの映像の顔の表情を、ビデオカメラ36で撮影した担当者の動作(例えば口の動き)に応じて変化させ、その映像データをPCユニット210に送信する。同様に音声についても、サーバ30は、マイク37で取得した担当者の声を変調して、担当者が変わっても、エージェントの声が同様の音色になるようにする。
【0055】
担当者の映像と音声を用いず、エージェントの映像と音声を用いて被支援者との会話を行う理由について説明する。支援センター3の担当者は被支援者の安否を確認するため、定期的に(例えば、1日に1回)被支援者と会話を行う必要がある。
【0056】
その際、PC内蔵TV20のディスプレイ22に担当者の映像を表示し、スピーカ23から担当者の声を出力する。会話の際、支援センター3の担当者が常に同じであれば、被支援者と十分な意思疎通が行えるが、被支援者毎に対応する担当者を固定化することは難しい。現実的には、被支援者と会話を行う担当者が毎回もしくは数回毎に代わることになるが、高齢者は担当者の変更に戸惑い、結果として担当者に親しみを感じることができず、会話をいやがることも考えられる。
【0057】
そのための対策として、本実施の形態では、担当者としてコンピュータで合成したエージェントの映像(アバター)を表示すると共に、ビデオカメラ36で撮影した担当者の映像に応じて、エージェントの表情を変化させることにより、常に同じ人と会話しているような雰囲気を作り出している。更に音声についても、担当者の声を変調して、担当者が変わっても、エージェントの声が同様の音色になるようにしている。
【0058】
このように本実施の形態では、担当者の表情に合わせてエージェントの表情を変化させ、また担当者の声を変調して同様の音色の音声を出力することにより、高齢者が常に同じ担当者と会話しているように感じる雰囲気を作り出している。
【0059】
図3の説明に戻って、サーバ30で作成されたエージェントの映像と音声は、サーバ30にインストールされた圧縮符号化ソフトによって圧縮符号化されてMPEG2またはMPTG4準拠のパケットに変換された後、TCP/IPプロトコルに従ってPCユニット210に送信される(ステップS12)。
【0060】
エージェントの映像データと音声データを含むパケットを受信したPCユニット210は、そのパケットをTVユニット220に転送し、TVユニット220のPIP機能を利用して、ディスプレイ22のウィンドウにエージェントの映像を表示する。
【0061】
PCユニット210が、支援センター3のサーバ30からエージェントの映像データと音声データを受信したとき、被支援者がTVを視聴している場合、スピーカ23から出力されるテレビ番組の音声をミュートし、代わりにエージェントの声を出力する(ステップ22)。同時に図4(a)に示す、ディスプレイ22の画面Pに表示されたテレビ番組の映像を、図4(b)に示す、ウィンドウ画面WにエージェントEの映像が表示された画面に切り換える(ステップS23)。
【0062】
被支援者は、映像と音声によって支援センター3の担当者から呼び出しがあったことが分かるため、キーボードに設けられた会話開始ボタン(図示せず)を押下すると(ステップS24)、図4(c)に示すように画面P全体にエージェントEの画像が表示される(ステップS25)。
【0063】
被支援者が会話開始ボタンを押下すると同時に、ビデオカメラ24で撮影された被支援者の映像データと、マイク25から入力された被支援者の音声データがPCユニット210に入力され、圧縮符号化部504でMPEG2またはMPG4準拠のパケット化データに変換され、支援センター3のPC31に送信される(ステップS26)。
【0064】
以降、PC内蔵TV20とPC31を用いて、被支援者と担当者との間で会話が行われ、被支援者の安易が確認され、更に被支援者が困っている事等について、担当者が相談に乗ることができる。
【0065】
なお、ディスプレイ22の画面切換の一連の動作は、PCユニット210の制御部219から出力された制御信号をTVユニット220の制御部229が受信し、この制御信号に基づいて制御部229がTVユニット220の各部の動作を制御することにより実現される。
【0066】
会話終了後、被支援者がキーボード26に設けられた会話終了ボタン(図示せず)
を押下すると、PCユニット210はスリープ状態に移行する(ステップS27)。
【0067】
上述したように、被支援者がTVを視聴している場合、ウィンドウ画面WにエージェントEの映像を表示し、スピーカ23からエージェントの声を出力すれば、支援センター3の担当者は、被支援者との会話に確実に移行できる。
【0068】
なお、支援センター3の担当者がPC31を用いて被支援者宅2のPCユニット210にアクセスしたときに、被支援者がTVを視聴していない場合、もしくは被支援者が外出している場合、会話許可ボタン(図示せず)が押下されないため、PCユニット210はスリープ状態を維持する。
【0069】
会話許可ボタンが押下されないとき、被支援者の安否を確認するため、ビデオカメラおよびマイクを動作させて被支援者の映像と音声を確認することも考えられるが、被支援者のプライバシーを侵害する恐れがあるため、強制的に映像データおよび音声データを送信することは行われない。
【0070】
(実施の形態2)
図5に、本実施の形態における被支援者宅2aのシステム構成を示す。実施の形態1では、ビデオカメラ24とマイク25を用いて被支援者の映像データと音声データを取得したが、本実施の形態では、モーションキャプチャ装置40を用いて被支援者の映像データと音声データを取得している。それ以外の構成は実施の形態1と変わりがなく、動作も同じである。
【0071】
モーションキャプチャ装置40は、ビデオカメラ、距離センサーおよびマイクを備えており、これらの機器から取得した映像データ、距離データおよび音声データに基づいて被支援者の位置や動きを解析できるものである。被支援者の位置や動きの解析は、専用のソフトウェアを動作させるプロセッサにより行われる。入手の容易なモーションキャプチャ装置として、例えば日本マイクロソフト社から販売されている装置(商品名「キネクト」)がある。
【0072】
モーションキャプチャ装置を利用することで、ビデオカメラとマイクを用いた場合では得られない機能を実現できる。例えば、被支援者の声が小さく、マイクでは被支援者の話を聞き取ることができない場合でも、被支援者の口の動きから発音する声を聞き分け、それを文字データに変換して支援センターのサーバ30に送信することができる。支援センター3の担当者は、ディスプレイ34に文字で表示された被支援者の話を確認しながら会話を続けることができるため、マイクでの聞き取りが難しい場合であっても、支援に必要な情報を確実に取得できる。
【0073】
以上説明したように本発明にかかる在宅支援システムでは、被支援者宅に設置する端末として、高齢者にとって身近なTVを用いることから、支援センターの担当者と高齢者との間のコミュニケーションが確実に行えるようになる。
【0074】
なお、上述した各実施の形態では、被支援者が高齢者である場合について説明したが、本発明にかかる在宅支援システムは高齢者の支援に限定されず、身体が不自由なために外出が困難な人全てに適用できるものである。
【符号の説明】
【0075】
1 在宅支援システム
2 被支援者宅
3 支援センター
4 インターネット
20 PC内蔵TV
21、33 ルータ
22 ディスプレイ
23 スピーカ
24、36 ビデオカメラ
25、37 マイク
26 キーボード
28 マウス
30 サーバ
31 PC
32 データベース
40 モーションキャプチャ装置
P 画面
W ウィンドウ
E エージェント
図1
図2
図3
図4
図5