(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
組織片が収納される処理槽と、前記処理槽と連通可能に接続された脱水剤用タンク、中間剤用タンクおよび混合剤用タンクと、前記処理槽に所定量の薬液が移送されたことを検出する検出センサとを備えた組織片処理装置の動作方法であって、
(a)前記処理槽と前記脱水剤用タンクとを連通した状態で前記処理槽内を減圧し、前記検出センサを用いて所定量となるまで、前記脱水剤用タンクから前記処理槽へ脱水剤を移送する処理と、
(b)前記処理槽と前記中間剤用タンクとを連通した状態で前記処理槽内を減圧して、前記検出センサを用いて所定量となるまで、前記中間剤用タンクから前記処理槽へ中間剤を移送する処理と、
(c)前記処理槽と前記混合剤用タンクとを連通した状態で前記処理槽内を加圧して、前記(a)、(b)処理によって前記処理槽に所定量ずつ供給された前記脱水剤と前記中間剤とが混合されてなる混合剤を、前記処理槽から前記混合剤用タンクへ移送する処理と、
を含むことを特徴とする組織片処理装置の動作方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、標本作製方法を用いたとしても、例えば脂肪が多い組織片の場合、その組織片の深部には水分と油分が混在していることが多く、脱脂が不十分となり、パラフィン浸透が不十分なものが得られてしまうことがある。その対応策としては、アルコールによる脱水処理と、キシレンによる脱脂処理との間に、キシレンとアルコールの混合液(混合剤)による処理が行われたりしている。このキシレン・アルコール混合液を用いることで、希釈脱水と脂肪溶解の相互効果により、キシレン・アルコール混合液が組織片の深部に浸透し、脱水、脱脂が行われているものと考えられる。
【0007】
しかしながら、作業者(例えば、検体技師)自身が、キシレンとアルコールとを所定量ずつ混ぜ合わせて薬液(混合液)を作製しようとすると、手間がかかる上に、手が汚れる、室内が臭う、薬液が床にこぼれるなどの問題が生じてしまう。
【0008】
また、特許文献1、2に記載の組織片処理装置では、アルコール、キシレン、パラフィンといった各薬液は、別々に薬液タンクに貯留され、対象の処理が行われるときに薬液タンクから処理槽へ供給される。すなわち、これら組織片処理装置では、キシレン・アルコール混合液を取り扱っていない。このため、キシレン・アルコール混合液の作製を、作業者ではなく、自動的に行う組織片処理装置が求められている。
【0009】
なお、特許文献1、2に記載の組織片処理装置では、同じ処理槽に対してアルコールやキシレンを給排するので、例えば、キシレンにおいては処理槽に残存したアルコールがわずかに含有されることとなるが、これはキシレン・アルコール混合液として前述の相互効果を得られるものではない。
【0010】
本発明の目的は、一定割合の混合液を作製することのできる組織片処理装置を提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
本発明の一実施形態における組織片処理装置は、組織片が収納される処理槽と、前記処理槽と連通可能に接続され、薬液が貯留される複数の薬液タンクと、前記処理槽と連通した前記薬液タンクから前記処理槽へ薬液を移送する際には前記処理槽内を減圧し、前記処理槽から該処理槽と連通した前記薬液タンクへ薬液を移送する際には前記処理槽内を加圧するポンプと、前記処理槽に所定量の薬液が移送されたことを検出する検出センサと、前記ポンプおよび前記検出センサとそれぞれ配線を介して接続され、複数の処理を実行する制御部とを備え、前記複数の処理には、(a)脱水剤を貯留する前記薬液タンクから前記処理槽へ、前記検出センサを用いて所定量となるまで前記脱水剤を移送する処理と、
(b)中間剤を貯留する前記薬液タンクから前記処理槽へ、前記検出センサを用いて所定量となるまで前記中間剤を移送する処理と、(c)前記(a)処理による前記脱水剤と、前記(b)処理による前記中間剤とが混合されてなる混合剤を、前記処理槽から前記混合剤が貯留される前記薬液タンクへ移送する処理とが含まれることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一実施形態における組織片処理装置の動作方法は、組織片が収納される処理槽と、前記処理槽と連通可能に接続された脱水剤用タンク、中間剤用タンクおよび混合剤用タンクと、前記処理槽に所定量の薬液が移送されたことを検出する検出センサとを備えた組織片処理装置の動作方法であって、(a)前記処理槽と前記脱水剤用タンクとを連通した状態で前記処理槽内を減圧し、前記検出センサを用いて所定量となるまで、前記脱水剤用タンクから前記処理槽へ脱水剤を移送する処理と、(b)前記処理槽と前記中間剤用タンクとを連通した状態で前記処理槽内を減圧して、前記検出センサを用いて所定量となるまで、前記中間剤用タンクから前記処理槽へ中間剤を移送する処理と、(c)前記処理槽と前記混合剤用タンクとを連通した状態で前記処理槽内を加圧して、前記(a)、(b)処理によって前記処理槽に所定量ずつ供給された前記脱水剤と前記中間剤とが混合されてなる混合剤を、前記処理槽から前記混合剤用タンクへ移送する処理と、を含むことを特徴とする。
【0014】
前記一実施形態における組織片処理装置において、前記検出センサは、前記処理槽に移送された前記薬液の液位を検出する複数の液位センサを備え、前記処理槽に移送された前記薬液を量る目盛りとして、前記複数の液位センサがそれぞれ設けられていることが好ましい。これによれば、処理槽を薬液の計量容器として用いることができる。
【0015】
また、前記一実施形態における組織片処理装置において、複数の液位センサには、前記処理槽に移送された前記薬液の量が前記組織片を浸漬する量を保証する保証センサと、前記処理槽に移送された前記薬液がオーバーフローするのを防止する上限センサとが含まれていることが好ましい。これによれば、液位センサを保証センサおよび上限センサとして用いることができる。
【0016】
前記一実施形態における組織片処理装置において、前記複数の処理には、(d)前記(a)〜(c)処理の後に、前記処理槽内で前記組織片を脱水剤に浸漬させる処理と、(e)前記(d)処理の後に、前記処理槽内で前記組織片を混合剤に浸漬させる処理と、(f)前記(e)処理の後に、前記処理槽内で前記組織片を脱水剤に浸漬させる処理と、(g)前記(f)処理の後に、前記処理槽内で前記組織片を中間剤に浸漬させる処理と、(h)前記(g)処理の後に、前記処理槽内で前記組織片を包埋剤に浸漬させる処理とが含まれることが好ましい。これによれば、脱脂が充分になされた標本を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、組織片処理装置において一定割合の混合液を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0021】
まず、本発明の実施形態における組織片処理装置の構成について、
図1〜
図4を参照して説明する。
図1〜
図4はそれぞれ組織片処理装置10の正面図、上面図、側面図、系統図である。なお、
図1〜
図3では、装置内部を透視した構成部材を破線で示している。
【0022】
組織片処理装置10は、装置本体の上面に設けられたモニタ28を備えている。このモニタ28は、組織片に施されている処理などについて表示することができる。
【0023】
また、組織片処理装置10は、組織片が収納される処理槽11(レトルトともいう。)と、処理槽11を開閉する蓋11aとを備えている。例えば、組織片は、バスケット(図示せず)に収納された状態で、処理槽11の蓋11aを開けて処理槽11に出し入れされる。そして、処理槽11の蓋11aを閉じて、処理槽11に収納された組織片に対する薬液処理(浸漬処理)が行われる。
【0024】
また、組織片処理装置10は、処理槽11と連通可能に接続され、組織片の処理に用いられる種々の薬液がそれぞれ貯留される複数の薬液タンクを備えている。種々の薬液には、例えば、エタノール(脱水剤)と、キシレン(中間剤)と、エタノールとキシレンとを混合したキシレン・エタノール混合液(混合剤)と、パラフィン(包埋剤)とが含まれる。また、複数の薬液タンクには、これら薬液を貯留する、脱水剤用タンク12と、中間剤用タンク13と、混合剤用タンク14と、脱水剤用タンク12や中間剤用タンク13よりも容量が大きい(例えば、2〜3倍程度)大容量タンク15、17と、包埋剤用タンク18とが含まれる。大容量タンク15、17には未使用の薬液(新液ともいう。)が貯留される。この大容量タンク15は脱水剤用タンクとして、大容量タンク17は中間剤用タンクとして用いられる。
【0025】
装置内部には上中下段の薬液タンク棚が設けられている。中下段の棚には、内部タンクとして、複数の脱水剤用タンク12と、複数の中間剤用タンク13と、複数の混合剤用タンク14とが配列して設けられている。なお、この中下段の棚には、組織片に処理を施すことができなくなった薬液を貯留したり、いずれかの薬液を予備として貯留したりできる予備タンクを設けることもできる。
【0026】
また、装置内部の上段の棚には、内部タンクとして、包埋用タンク18が配列して設けられている。包埋処理では組織片を溶融したパラフィンに浸漬させることとなるが、パラフィンは、室温で固化するため、上段棚を例えば60℃の温蔵庫(オーブン)として構成し、溶融状態とされている。なお、パラフィンの溶融状態を保持できるように、また、浸漬処置中の各薬液の温度を所定温度に保つために、処理槽11の底部外側面に加熱ヒータ(図示せず)が設けられている。
【0027】
また、大容量タンク15、17は、脱水剤用タンク12、中間剤用タンク13の2〜3倍程度の容量であり、組織片処理装置10のコンパクト化を図るために薄板状に形成されている。この大容量タンク15、17は、組織片処理装置10の構造体としての強度を確保するために装置本体の両側壁面に一体に装着されている。そして、大容量タンク15、17は、その各内壁面が複数の補強材20が井桁状に接合されて補強されている(
図3参照)。井桁状の補強材20を用いることで、大容量タンク15、17へ装置外部から新液を移送する際にタンク内が減圧状態となっても、また、所定量の薬液を貯留することによって加圧状態となっても、大容量タンク15、17の歪みを可及的に少なくすることができる。
【0028】
また、大容量タンク15、17内の薬液が外気温度により蒸発し、大容量タンク15、17の内圧が高まることが考えられる。このため、蒸発したガスによりタンク内の圧力が規定値以上に上昇することを防ぐために、組織片処理槽10は、大容量タンク15に設けられた安全弁40と、大容量タンク17に設けられた安全弁42とを備えている(
図4参照)。そして、組織片処理装置10は、安全弁40、42から蒸発したガスの臭気を除去するために、容易に取り替え可能に装置正面に設けられたフィルタ37(例えば、活性炭フィルタ)を備えている(
図1、
図4参照)。
【0029】
また、組織片処理装置10は、装置本体の正面に設けられ、大容量タンク15、17に新液を供給する供給ポート22、24と、処理槽11内への薬液の給排を行う給排ポート26とを備えている。供給ポート22、24、給排ポート26は、組織片処理装置10の外部に設けられた着脱可能な外部タンク(薬液タンク)と薬液管路を介して接続されている。大容量タンク15へは供給ポート22を介して外部タンク(新液タンク)から未使用の薬液が移送(供給)される。また、大容量タンク17へは供給ポート24を介して外部タンク(新液タンク)から未使用の薬液が移送(供給)される。また、処理槽11へは給排ポート26を介して外部タンク(新液タンク)から未使用の薬液が移送(供給)され、処理槽11から給排ポート26を介して外部タンク(廃液タンク)へ使用済みの薬液(廃液)が移送(排出)される。
【0030】
また、組織片処理装置10は、一方で処理槽11と薬液管路を介して接続され、他方で複数の薬液タンクとそれぞれ薬液管路を介して接続された選択バルブ30(例えば、電動モータ駆動のロータリバルブ)を備えている。この選択バルブ30は、脱水剤用タンク12、中間剤用タンク13、混合剤用タンク14、大容量タンク15、17、包埋剤用タンク18、給排ポート26と接続された外部タンク(新液タンクまたは廃液タンク)のうちから選択された薬液タンクと、処理槽11とを連通可能とするものである。
【0031】
また、組織片処理装置10は、処理槽11と選択バルブ30とを接続する薬液管路の中途に設けられた切換バルブ32(電磁式)を備えている。切換バルブ32は、三方弁であって、薬液管路33を介して処理槽の上部と接続され、選択バルブ30の他には、薬液管路34を介して処理槽11の底部と接続されている。切換バルブ32は、処理槽11へ薬液を供給(移送)する際に、薬液管路33を開状態および薬液管路34を閉状態として、処理槽11と選択バルブ30とを連通する。また、切換バルブ32は、処理槽11から薬液を排出(移送)する際に、薬液管路33を閉状態および薬液管路34を開状態として、処理槽11と選択バルブ30とを連通する。また、切換バルブ32は、処理槽11内で薬液中に組織片を浸漬する際に、薬液管路33を閉状態および薬液管路34を閉状態として、処理槽11と選択バルブ30とを遮断する。
【0032】
また、組織片処理装置10は、処理槽11の上部(後述の液位センサ36aよりも上部となる。)とエア管路を介して接続され、処理槽11内を減圧または加圧するポンプ35と、ポンプ35とエア管路を介して接続されたフィルタ37とを備えている。このポンプ35は、フィルタ37を介して空気の吸引または処理槽11内の薬液混合ガスの排出を行う。ポンプ35は、処理槽11に選択された薬液タンクから薬液を移送する(引き込む)際に、処理槽11内を減圧(エア吸引)するのに用いられる。また、ポンプ35は、処理槽11から選択された薬液タンクへ薬液を移送する(送り出す)際に、処理槽11内を加圧(エア噴出)するのに用いられる。
【0033】
このポンプ35へ通じるエア路の中途には、大容量タンク15からのエア管路(均圧ライン)および大容量タンク17からのエア管路(均圧ライン)が設けられている。そして、組織片処理装置10は、これらエア管路のそれぞれに設けられた開閉バルブ54、56を備えている。この開閉バルブ54、56は、手動式であっても、電磁式であってもよい。開閉バルブ54、56は、供給ポート22、24を介して外部タンク内の薬液を大容量タンク15、17に供給(補給を含む)する際のみに開状態と、その他処理中においては閉状態とする。
【0034】
また、組織片処理装置10は、処理槽11に所定量の薬液が移送されたことを検出する検出センサ36を備えている。この検出センサ36は、処理槽11に移送された薬液を量る目盛りとして設けられた複数の液位センサ36a、36b、36c、36d、36eを備えている。このように複数の液位センサ36a〜36eを処理槽11に設けることで、処理槽11を薬液の計量容器として用いることができる。例えば、処理槽11の底部−液位センサ36e間の液量、液位センサ36e−36d間の液量、液位センサ36d−36c間の液量、液位センサ36c−36b間の液量、液位センサ36b−36a間の液量が同じとなるように、複数の液位センサ36a〜36dが設けられている。なお、より多くの液位センサを設けることで、処理槽11の目盛りを細かく振ることができる。
【0035】
そして、液位センサ36aは、処理槽11に移送された薬液がオーバーフローするのを防止する上限センサとしても用いられる。また、液位センサ36cは、処理槽11に移送された薬液の量が組織片を浸漬する量を保証する保証センサとしても用いられる。
【0036】
また、組織片処理装置10は、選択バルブ30、切換バルブ32、ポンプ35、および検出センサ36とそれぞれ配線を介して電気的に接続され、複数の処理を実行する制御部38を備えている。制御部38は、演算処理装置(CPU)や記憶部(メモリ)を用いて構成され、予め記録された動作プログラムにしたがって動作し、選択バルブ30、切換バルブ32、ポンプ35を駆動するための信号を送信したり、検出センサ36からの検出信号を受信したりして、選択バルブ30などの制御を行う。なお、制御部38に対して処理動作開始指示などの制御用データや各工程の処理データが操作部(図示せず)によって、入力されている。
【0037】
次に、本発明の実施形態における組織片処理装置を用いた標本作製方法について
図4〜
図9を参照して説明する。
図5は、標本作製方法の処理フロー図であり、その一部が制御部38の処理フローと重複している。また、
図6〜
図9は、混合液の作製工程を説明するための説明図である。なお、
図6〜
図9では、説明を明解にするために組織片処理装置の要部を簡略して示している。
【0038】
まず、組織片処理装置10の薬液タンクに新液を供給(貯留)する(
図5のステップS100)。具体的には、エタノールを脱水剤用タンク12へ供給し、キシレンを中間剤用タンク13へ供給し、パラフィンを包埋剤用タンク18へ供給する(
図6参照)。また、エタノールを大容量タンク15へ供給し、キシレンを大容量タンク17へ供給する。
【0039】
続いて、装置内部で混合液(薬液)を作製し、混合剤用タンク14に混合液から組織片処理装置10の薬液タンクに混合液を移送(供給)する(
図5のステップS200)。
【0040】
まず、大容量タンク15と処理槽11とを連通するように選択バルブ30の選択、切換バルブ32の切り替えを行い、ポンプ35によって処理槽11内を減圧して、大容量タンク15内のエタノールを吸引して処理槽11内へエタノールを移送する(
図7参照)。このとき、大容量タンク15(脱水剤用タンク)から処理槽11へ、検出センサ36を用いて所定量となるまで、すなわち液位センサ36dが検知するまでエタノールを移送する。
【0041】
次いで、大容量タンク17と処理槽11とを連通するように選択バルブ30の選択、切換バルブ32の切り替えを行い、ポンプ35によって処理槽11内を減圧して、大容量タンク17内のキシレンを吸引して処理槽11内へキシレンを移送する(
図8参照)。このとき、大容量タンク17(中間剤用タンク)から処理槽11へ、検出センサ36を用いて所定量となるまで、すなわち液位センサ36bが検知するまでキシレンを移送する。これにより、先に処理槽11内に移送されているエタノールと、キシレンとが1:1の割合(混合比)で混合されてなるキシレン・エタノール混合液が作製される。
【0042】
ここで、エタノールとキシレンとの割合が1:1に限らず、作業者の入力設定(例えば、モニタ28の選択画面からの選択)によって種々変更することができる。例えば、エタノールとキシレンとの割合が1:2とする場合、液位センサ36eが検知するまでエタノールを処理槽11へ移送した後、液位センサ36cが検知するまでキシレンをさらに処理槽11へ移送すればよい。より細かい割合でキシレン・エタノール混合液を作製する場合には、処理槽11に移送された薬液を量る目盛りとして、より多くの液位センサを設ければよい。
【0043】
次いで、処理槽11と移送先の混合剤用タンク14とを連通するように選択バルブ30の選択、切換バルブ32の切り替えを行い、ポンプ35によって処理槽11内を加圧して、処理槽11内のキシレン・エタノール混合液を押圧して移送先の混合剤用タンク14へキシレン・エタノール混合液を移送する(
図9参照)。
【0044】
このように、処理槽11に所定量の薬液が移送されたことを検出する検出センサ36を用いることで、組織片処理装置10において一定割合の混合液を自動的に作製することができる。また、作業者の入力設定だけで、容易に一定割合の混合液を自動的に作製することができる。また、フィルタ37を備えた組織片処理装置10の内部で混合液を作製するので、室内環境を健全に保つことができる。
【0045】
続いて、エタノールに浸漬させて、第1脱水剤処理を行う(
図5のステップS300)。これに先立ち、組織片はバスケット(図示せず)に入れられ、バスケットが処理槽11に収容される。ここでは、組織片処理装置10の薬液タンク(内部タンク)として、エタノールが貯留された脱水剤用タンク12を3つ(以下、12a、12b、12cと符号を付す。)確保されているものとする。なお、確保される脱水剤用タンク12の数は、作業者の設定により変更することができる。
【0046】
まず、脱水剤用タンク12aと処理槽11とを連通するように選択バルブ30の選択、切換バルブ32の切り替えを行い、ポンプ35によって処理槽11内を減圧して、脱水剤用タンク12a内のエタノールを吸引して処理槽11内へエタノールを移送する。
【0047】
このとき、脱水剤用タンク12aから処理槽11へ、検出センサ36を用いて所定量となるまで、保証センサである液位センサ36cが検知するまでエタノールを移送する。すなわち、処理槽11内に移送されたエタノールの液面は、液位保証センサ36cと上限センサ36aと間であり、エタノール中に組織片を充分に浸漬できる量となる。液位センサ36cが検知できない場合には、大容量タンク15あるいは脱水剤用タンク12bから処理槽11内へエタノールを補給することができる。なお、他のキシレンなどの薬液に対しても検出センサ36を用いて同様にして移送(補給)することができる。
【0048】
次いで、エタノール中に組織片を所定時間浸漬した後、処理槽11と脱水剤用タンク12aとを連通するように選択バルブ30の選択、切換バルブ32の切り替えを行い、ポンプ35によって処理槽11内を加圧して、処理槽11内のエタノールを押圧して脱水剤用タンク12aへエタノールを移送する。
【0049】
同様にして、脱水剤用タンク12b、12cから処理槽11へ移送されたエタノール中に組織片を順繰りに浸漬する。このような第1脱水剤処理によって、組織片が含有する水分をある程度取り除いてしまうことができる。
【0050】
ここで、組織片と所定回数接触すると、組織片中の水分などが混入されて脱水剤用タンク12a、12b、12cに貯留されるエタノールの濃度が低下する。具体的には、エタノールの濃度は最も先に処理に用いられる脱水剤用タンク12aのものが最も低濃度であり、次いで脱水剤用タンク12b、12cの順となる。このため、所定回数第1脱水剤処理を行った後、落液処理を行う。まず、脱水剤用タンク12aのエタノールを用いた浸漬処理後、選択バルブ30で給排ポート26の外部タンク(廃液タンク)を選択して、処理槽11からその外部タンクへそのエタノールを排出(移送)する。次いで、脱水剤用タンク12bのエタノールを用いた浸漬処理後、選択バルブ30で空の脱水剤用タンク12aを選択して、処理槽11から脱水剤用タンク12aへそのエタノールを移送する。次いで、脱水剤用タンク12cのエタノールを用いた浸漬処理後、選択バルブ30で空の脱水剤用タンク12bを選択して、処理槽11から脱水剤用タンク12bへそのエタノールを移送する。そして、大容量タンク15の未使用のエタノールを処理槽11に移送した後、選択バルブ30で空の脱水剤用タンク12cを選択して、処理槽11から脱水剤用タンク12cへそのエタノールを供給(移送)する。なお、他のキシレンなどの薬液に対しても同様にして落液処理を行う。
【0051】
続いて、組織片をキシレン・エタノール混合液に浸漬させて、混合剤処理(親和処理)を行う(
図5のステップS400)。ここでは、組織片処理装置10の薬液タンク(内部タンク)として、キシレン・エタノール混合液が貯留された混合剤用タンク14を2つ(以下、14a、14bと符号を付す。)確保されているものとする。なお、確保される混合剤用タンク14の数は、作業者の設定により変更することができる。
【0052】
まず、混合剤用タンク14aと処理槽11とを連通するように選択バルブ30の選択、切換バルブ32の切り替えを行い、ポンプ35によって処理槽11内を減圧して、混合剤用タンク14a内のキシレン・エタノール混合液を吸引して処理槽11内へキシレン・エタノール混合液を移送する。
【0053】
次いで、キシレン・エタノール混合液中に組織片を所定時間浸漬した後、処理槽11と混合剤用タンク14aとを連通するように選択バルブ30の選択、切換バルブ32の切り替えを行い、ポンプ35によって処理槽11内を加圧して、処理槽11内のキシレン・エタノール混合液を押圧して混合剤用タンク14aへキシレン・エタノール混合液を移送する。
【0054】
同様にして、混合剤用タンク14bから処理槽11へ移送されたエタノール中に組織片を順繰りに浸漬する。このような混合剤処理によって、キシレン・エタノールによる脂肪溶解(親和性の向上)と希釈脱水の相互効果により、薬液が組織片の深部にまで浸透させることができる。
【0055】
続いて、組織片をエタノールに浸漬させて、第2脱水剤処理を行う(
図5のステップS500)。ここでは、組織片処理装置10の薬液タンク(内部タンク)として、エタノールが貯留された脱水剤用タンク12を2つ(以下、12d、12eと符号を付す。)確保されているものとする。なお、確保される脱水剤用タンク12の数は、作業者の設定により変更することができる。
【0056】
まず、脱水剤用タンク12dと処理槽11とを連通するように選択バルブ30の選択、切換バルブ32の切り替えを行い、ポンプ35によって処理槽11内を減圧して、脱水剤用タンク12d内のエタノールを吸引して処理槽11内へエタノールを移送する。
【0057】
次いで、エタノール中に組織片を所定時間浸漬した後、処理槽11と脱水剤用タンク12dとを連通するように選択バルブ30の選択、切換バルブ32の切り替えを行い、ポンプ35によって処理槽11内を加圧して、処理槽11内のエタノールを押圧して脱水剤用タンク12dへエタノールを移送する。
【0058】
同様にして、脱水剤用タンク12eから処理槽11へ移送されたエタノール中に組織片を順繰りに浸漬する。このような第2脱水剤処理によって、キシレン・エタノール混合液をエタノールに置換することでさらに希釈脱水をすることができる。
【0059】
続いて、組織片をキシレンに浸漬させて、中間剤処理を行う(
図5のステップS600)。ここでは、組織片処理装置10の薬液タンク(内部タンク)として、キシレンが貯留された中間剤用タンク12を3つ(以下、13a、13b、13cと符号を付す。)確保されているものとする。なお、確保される脱水剤用タンク12の数は、作業者の設定により変更することができる。
【0060】
まず、中間剤用タンク13aと処理槽11とを連通するように選択バルブ30の選択、切換バルブ32の切り替えを行い、ポンプ35によって処理槽11内を減圧して、中間剤用タンク13a内のキシレンを吸引して処理槽11内へキシレンを移送する。
【0061】
次いで、キシレン中に組織片を所定時間浸漬した後、処理槽11と中間剤用タンク13aとを連通するように選択バルブ30の選択、切換バルブ32の切り替えを行い、ポンプ35によって処理槽11内を加圧して、処理槽11内のキシレンを押圧して中間剤用タンク13aへキシレンを移送する。
【0062】
同様にして、中間剤用タンク13b、13cから処理槽11へ移送されたキシレン中に組織片を順繰りに浸漬する。このような中間剤処理によって、充分に脱水された組織片に対して脂肪を溶解させながら組織片の深部にキシレンを浸透させることができる。
【0063】
続いて、組織片をパラフィンに浸漬させて、包埋剤処理を行う(
図5のステップS700)。ここでは、組織片処理装置10の薬液タンク(内部タンク)として、パラフィンが貯留された包埋剤用タンク18を4つ(以下、18a、18b、18c、18dと符号を付す。)確保されているものとする。なお、確保される包埋剤用タンク18の数は、作業者の設定により変更することができる。
【0064】
まず、包埋剤用タンク18aと処理槽11とを連通するように選択バルブ30の選択、切換バルブ32の切り替えを行い、ポンプ35によって処理槽11内を減圧して、中間剤用タンク13a内のパラフィンを吸引して処理槽11内へパラフィンを移送する。
【0065】
次いで、パラフィン中に組織片を所定時間浸漬した後、処理槽11と包埋剤用タンク18aとを連通するように選択バルブ30の選択、切換バルブ32の切り替えを行い、ポンプ35によって処理槽11内を加圧して、処理槽11内のパラフィンを押圧して包埋剤用タンク18aへパラフィンを移送する。
【0066】
同様にして、包埋剤用タンク18b、18c、18dから処理槽11へ移送されたパラフィン中に組織片を順繰りに浸漬する。このような包埋剤処理によって、脂肪を溶解させながら、キシレンが浸透した組織片の深部にまでパラフィンを浸透させることができる。
【0067】
本実施形態における組織片処理装置10によれば、顕微鏡で観察可能であり、脱脂が充分になされた標本(組織片)を得ることができる。
【0068】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0069】
例えば、前記実施形態では、検出センサ36として、処理槽11の目盛りとして複数の液位センサ36a〜36eを用いることで、組織片処理装置10の構成をシンプルとした場合について説明した。これに限らず、処理槽11手前の薬液管路に設けられた流量センサを用いて処理槽へ移送される薬液量を検出することもできる。
【0070】
また、例えば、前記実施形態では、脱水剤としてエタノールを用いた場合について説明したが、メタノール、ブタノール、イソプロパノール、工業用メチルアルコールなどのアルコールを用いることもできる。また、前記実施形態では、中間剤としてキシレンを用いた場合について説明したが、トルエン、クロロホルム、アルカン系脂肪族炭化水素を主成分とする薬液などを用いることもできる。このため、前記実施形態では、混合剤としてキシレン・エタノール混合液を用いた場合について説明したが、例えば、キシレン・メタノール混合液を用いることもできる。
【0071】
また、例えば、前記実施形態では、脱水剤用タンク12、13よりも容量が大きい大容量タンク15、17を備え、それぞれから処理槽11に給液することによって、自動的に一定の割合で混合液を作製する場合について説明した。これに限らず、大容量タンク15、17を備えずに、複数の脱水剤用タンク12のうちのいずれかを新液タンクとし、複数の中間剤用タンク13のうちのいずれかを新液タンクとして用いて、これら新液タンクから自動的に一定の割合で混合液を作製することもできる。
【0072】
また、例えば、前記実施形態では、キシレン・エタノール混合液を作製するにあたり、処理槽11にエタノールを供給した後、さらに処理槽11にキシレンを供給する場合について説明したが、処理槽11にキシレンを供給した後、さらに処理槽11にエタノールを供給する場合であってもよい。
【0073】
また、例えば、前記実施形態では、脱水剤としてエタノールを用い、中間剤としてキシレンを用い、その脱水剤用および中間剤用タンクからキシレン・エタノール混合液を作製する場合について説明した。これに限らず、脱水剤としてメタノールを用い、中間剤としてキシレンを用い、また、脱水剤用タンクとは別の薬液タンクを設けてエタノールを貯留させておき、別の薬液タンクおよび中間剤用タンクからキシレン・エタノール混合液を作製することもできる。
【0074】
また、例えば、前記実施形態では、組織片に対して、第1脱水剤処理、混合剤処理、第2脱水剤処理、中間剤処理、包埋剤処理の順で行って標本を作製する場合について説明したが、混合剤処理による組織片の脱水が充分である場合、第2脱水剤処理を省略することもできる。