(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134943
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/60 20060101AFI20170522BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20170522BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20170522BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20170522BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/67
A61K8/34
A61K8/63
A61Q19/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-109418(P2013-109418)
(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公開番号】特開2014-227386(P2014-227386A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】710009494
【氏名又は名称】株式会社サイエンスリン
(72)【発明者】
【氏名】榊 教生
(72)【発明者】
【氏名】林 弘志
【審査官】
松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−225865(JP,A)
【文献】
特開2004−099472(JP,A)
【文献】
特開2002−336294(JP,A)
【文献】
特開2002−087926(JP,A)
【文献】
特開2015−44968(JP,A)
【文献】
特開2004−155735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)から(F);
(A)α−D−グルコピラノシルグリセロール
(B)L−アスコルビン酸
(C)グリセリンおよび/またはソルビット
(D)1,3−プロパンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールから選ばれる一種又は二種以上
(E)グリチルリチン酸及びその誘導体から選ばれる一種又は二種以上
(F)水
を含有し、成分(C)と成分(D)の配合質量比が1:0.1〜1.5で、且つ成分(C)と成分(D)の配合量が合せて40〜70質量%からなることを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
成分(F)の水の配合量が30質量%以下である請求項1記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
可溶化型の剤型である請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関する。更に詳細には、α−D−グルコピラノシルグリセロール、L−アスコルビン酸、グリセリンおよび/またはソルビット、経皮吸収促進成分、グリチルリチン酸及びその誘導体から選ばれる一種又は二種以上、水とで構成することにより、シミや老人性色素斑などの色素沈着を予防改善し、肌に透明感を与えるなどの美白並びに美肌効果に優れる皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、美白効果に有効な美白剤として、L−アスコルビン酸及びその誘導体並びにそれらの塩が用いられている。これらアスコルビン酸類は、メラノサイトが、メラニン色素を生成する過程で、中間産物のドーパキノンがドーパクロムを形成する反応を抑制することで、メラニンの生成を抑え、その沈着を防ぐ効果がある。さらに、酸化されて濃くなった酸化型メラニンを、薄くて目立ちにくい還元型メラニンに還元する作用を有しており、シミ・ソバカスの改善、老人性色素斑、肝斑等の治療・改善に有効な薬剤として知られている。しかしながら、アスコルビン酸類は化学的に不安定であり、酸化によりから褐色に変色して化粧料などの外観を著しく損なうとともに、シミ、ソバカスなどを改善又は予防するという美白効果が低減するという欠点を有する。
【0003】
またアスコルビン酸類は、基本的に水溶性の性質を有することから、疎水性である角質層への経皮吸収性はもともと良くはなく、配合濃度を高くするなどして、その効果を高める手段としてきた。
【0004】
酸化を受けにくい安定性に優れたアスコルビン酸誘導体としては、特にアスコルビン酸グルコシドが知られており、化粧料などに幅広く配合されている。ところが、アスコルビン酸グルコシドであっても、製剤中に配合すると、どうしても経時で部分酸化および非酸化崩壊によって分解されやすいといった安定性上の問題点があった。それゆえ遊離酸であるL−アスコルビン酸は、製剤中で安定に存在することが極めて難しく、水を含まないドライな性状で、しかも遮光保存下にて用いられることが多かった。しかしながら、L−アスコルビン酸は、アスコルビン酸類の中でも特に還元力が強く、美白成分、美肌成分として特に優れた性質を有していることから、これを配合して安定性、および経皮吸収性に優れた製剤を提供することは極めて有意義である。このことが難しいが故に、これに化学修飾を施すことで多くの誘導体が開発されてきた経緯がある。
【0005】
L−アスコルビン酸は、容易に酸化および分解されるため、そのまま化粧料などに配合しても、すぐに分解され、崩壊されたアスコルビン酸は活性を失い、黄変や変臭を起こしてしまうという一般認識を持たれた物質である。そのためアスコルビン酸の安定化に関しては、誘導体化による方法には多くの報告があるが、遊離酸であるL−アスコルビン酸の安定化に関しては、研究例は少なく、文献も多くは開示されていない。
【0006】
またL−アスコルビン酸の経皮吸収性に関しても、誘導体化による方法にて報告があるのみで、研究例は少ない。その中で、アスコルビン酸類の安定化と経皮吸収促進に関しては、幾つかの報告がある。
【0007】
アスコルビン酸類の安定化に関する文献としては、アスコルビン酸、そのエステル誘導体、そのエーテル誘導体及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種、水、及びグリコールエーテルを含有することによりアスコルビン酸類を安定に含む外皮用組成物(特許文献1)、ポリメタクロイルオキシエトキシホスホリルコリンと、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、ハイドロキノンの配糖体、トラネキサム酸、4−メトキシサリチル酸及びそれらの塩から選択される1種乃至は2種以上とを皮膚外用剤に含有させことで、光により退色或いは着色しやすい成分を、皮膚外用剤に安定化させて含有させる技術(特許文献2)、水溶性アスコルビン酸、グリコールエーテルまたは特定の多価アルコールを含有する皮膚外用剤に、低分子ベタインを配合することによって、水溶性アスコルビン酸を安定に可溶化するもの(特許文献3)、10から15%の水、47から55%のエトキシジグリコール、22から29%のプロピレングリコールを含むキャリアーに、15%以下のL-アスコルビン酸を含み、安定なビタミンC溶液を得ることができる方法(特許文献4)などがある。
【0008】
アスコルビン酸類の経皮吸収性に関する文献としては、リン脂質およびグリコールエーテルを含有することにより、ビタミンA類、特定のビタミンC類およびキサンチン誘導体の経皮吸収性に優れた皮膚外用剤(特許文献5)、アスコルビン酸又はアスコルビン酸誘導体から選択される1種又は2種以上を含有する皮膚外用剤において、ジグリセリンおよび低分子ベタインを併用することで、アスコルビン酸又はアスコルビン酸誘導体の経皮吸収性を高め、シミやくすみ改善効果等を十分に発揮するとともに、保湿効果に優れる皮膚外用剤(特許文献6)、などの報告がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−348228号公報
【特許文献2】特開2005−068115号公報
【特許文献3】特開2005−225865号公報
【特許文献4】特開2007−238625号公報
【特許文献5】特開2006−213696号公報
【特許文献6】特開2005−336133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これら経皮吸収性能を発揮する製剤に関する報告のほとんどは、含まれる経皮吸収促進成分もしくは経皮吸収抑制成分の効果によるものであり、薬剤の経皮吸収を促進する製剤環境としての考えに立った発明は少ない。また、薬剤の効果をコントロールする手段に関する報告はない。
【0011】
本発明は、L−アスコルビン酸を安定に含み、かつ経皮吸収性に優れる皮膚外用剤を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、α−D−グルコピラノシルグリセロール、グリセリンおよび/またはソルビット、経皮吸収促進成分、グリチルリチン酸及びその誘導体から選ばれる一種又は二種以上、水を含有する皮膚外用剤中に、遊離酸のL−アスコルビン酸を用いることで、L−アスコルビン酸を安定にかつ経皮吸収性に優れた形で提供することが可能なことを見出し、本願発明を達成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、次の成分(A)から(F);
(A)α−D−グルコピラノシルグリセロール
(B)L−アスコルビン酸
(C)グリセリンおよび/またはソルビット
(D)経皮吸収促進成分
(E)グリチルリチン酸及びその誘導体から選ばれる一種又は二種以上
(F)水
を含有し、成分(C)と成分(D)の配合質量比が1:0.1〜1.5で、且つ成分(C)と成分(D)の配合質量が合せて40〜70質量%からなることを特徴とする皮膚外用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、α−D−グルコピラノシルグリセロール、L−アスコルビン酸、グリセリンおよび/またはソルビット、経皮吸収促進成分、グリチルリチン酸及びその誘導体から選ばれる一種又は二種以上、水を含有する皮膚外用剤は、L−アスコルビン酸を経時で安定に保つことができ、色素沈着を予防改善し、肌に透明感を与え、美白並びに美肌効果に優れるものであった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について説明する。
本発明に用いられる成分(A)のα−D−グルコピラノシルグリセロールは、グリセリルグルコシドとも呼ばれ、グリセリンとグルコースが1分子対1分子の割合でα−又はβ−グルコシド結合したもので、食品分野では甘味料等として利用されている他、化粧料等においては、保湿性に優れるため、保湿剤として配合されている。本発明においては、成分(B)のL−アスコルビン酸の安定化のための必須成分として配合されている。α−D−グルコピラノシルグリセロールの配合量としては、L−アスコルビン酸との質量比が、1:0.05〜1であることが好ましく、1:0.05〜0.8質量比がさらに好ましい。0.05未満では、充分な安定化効果が得られない場合があり、1より多くても、さらなる安定化効果は認められない場合があり、好ましくない。α−D−グルコピラノシルグリセロールとしては、具体的には、東洋製糖株式会社製のCOSARTE−2Gが市販品として挙げられる。
【0016】
本発明の(B)のL−アスコルビン酸は、遊離酸であり、かつ塩の形をとらないL−アスコルビン酸のことをいう。
【0017】
L−アスコルビン酸は、水溶性であることから疎水性である角質層への経皮吸収性はもともと良くないが、本発明の皮膚外用剤においては、配合濃度に大きく影響することなく、低濃度域から高濃度域まで作用を最大限に発揮することができる。その中でも、L−アスコルビン酸の配合量としては、0.1〜12質量%の濃度域が好ましい。0.1質量%未満では、美白効果を得るのに、充分な吸収量が認められない場合があり、また12質量%以上では、L−アスコルビン酸が常温下で飽和濃度を超える場合があり、製剤に白濁や沈殿物が生じたりなどが見られ好ましくない。1〜10質量%がさらに好ましい。
【0018】
(C)成分のグリセリンおよび/またはソルビットも、(A)成分と同様に(B)のL−アスコルビン酸の安定化のために極めて有効に作用する成分であり、本発明の必須成分の一つとして配合されている。この中で、外用剤に配合して肌に不快感が少ないことなどから、グリセリンが特に好ましい。
【0019】
(D)の経皮吸収促進成分としては、1,3−プロパンジオール、1,2−アルカンジオールから選ばれる一種又は二種以上が用いられる。さらに1,2−アルカンジオールとしては、1,2−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−へキサンジオール、及び1,2−オクタンジオールから選ばれるアルカンジオールが経皮吸収促進効果に優れることで好ましく、1,2−ペンタンジオール、1,2−へキサンジオールがより好ましい。(D)の経皮吸収促進成分の中で、促進性の強さや刺激性が低いことから、1,3−プロパンジオールが特に好ましい。
【0020】
(E)のグリチルリチン酸及びその誘導体から選ばれる一種又は二種以上としては、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等が例示される。これらは、自身の経皮吸収性により(B)のL−アスコルビン酸の経皮吸収を促進するとともに、経皮吸収により生じる皮膚刺激を緩和するのに効果的に働くものである。
【0021】
本発明の皮膚外用剤は、(C)のグリセリンおよび/またはソルビットと、(D)の経皮吸収促進成分の配合量に関して、次に記載する配合比率と配合量の範囲内においてのみ、本発明の効果を顕著に奏することが可能となる。
【0022】
つまり成分(C)と成分(D)の配合質量比としては、1:0.1〜1.5で、且つ成分(C)と成分(D)の配合量が併せて40〜70質量%において、本発明の効果である(B)のL−アスコルビン酸の安定化効果と経皮吸収性が現われる。成分(C)と成分(D)の配合質量比が1:0.1未満では、安定化効果および経皮吸収促進効果は充分に発揮することはできず、1:1.5を超えても、それらの効果に差は見られない。また、成分(C)と成分(D)の合計の配合量が40質量%未満でも安定化効果および経皮吸収促進効果に差は見られず、70質量%を超えてもさらなる効果は認められない。
【0023】
また、成分(F)の水の配合質量は30質量%以下であることが好ましい。水が30質量%を超えると、L−アスコルビン酸の溶解度は高まるが、L−アスコルビン酸自体が分解を受け易くなり、充分な経時安定性が確保できない。
【0024】
さらに本発明の皮膚外用剤は、L−アスコルビン酸の保存安定性において、水素イオン指数(以下pH)を2.7〜4.5にするのが好ましい。pHを2.7〜4.5にすることで、L−アスコルビン酸の保存安定性を著しく向上させることができる。pH測定条件としては、皮膚外用剤ダイレクトでも、精製水で希釈したものでも構わない。更に優れた保存安定性向上効果を得るには、pHは2.8〜4.0であることがより好ましい。
【0025】
本発明の皮膚外用剤には、上記必須成分以外に、他の成分として、例えば、油剤、界面活性剤、水溶性高分子、皮膜形成剤、ゲル化剤、樹脂類、抗菌剤、香料、金属封鎖剤、酸化防止剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、着色剤、植物抽出成分、その他の保湿成分等を本発明の効果を損なわない範囲にて含有することができる。
【0026】
本発明の皮膚外用剤は常法に従って製造することができる。また、本発明の皮膚外用剤は、医薬部外品、医薬品など皮膚外用剤全般を包含するものである。その剤型としては、水溶液系、水分散液系、水中油型乳化系が好ましく、特に水溶液系、水分散液系などの、可溶化型の製剤系において、本発明の効果が顕著に発揮されやすい。
【実施例】
【0027】
次に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0028】
表1に、本発明の皮膚外用剤である水性化粧料の実施例1〜5、及び比較例1〜3を示す。下記製法にて表1に記載する皮膚外用剤を調製した。得られた水性化粧料について、下記に示す保存安定性試験(L−アスコルビン酸の残存率、黄変度合い、臭いの変化)、経皮吸収性試験、美白効果評価試験の3つの評価試験を行った。その結果を併せて表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
[製造方法]
成分10の精製水に、成分1〜9および11を順次、完全に溶解したことを確認しながら投入する。100メッシュ以上でろ過し、水性化粧料を得た。
【0031】
[保存安定性試験(L−アスコルビン酸の残存率)]
表1に示す各試料について、45℃恒温槽に1ヶ月間保管後、高速液体クロマトグラフィーを用いてL−アスコルビン酸の残存量を定量した。結果は調製時の配合量に対する残存量(%)で表した。
【0032】
[保存安定性試験(黄変度合いと臭いの変化)]
表1に示す各試料を、同一のガラス透明容器に充填し、一方を45℃恒温槽に、もう一方を5℃恒温槽に保管(アルミホイルにて遮光)し、4ヶ月間後、両試料の経時での黄変の度合いならびに臭いの変化を比較した。黄変の度合いは、45℃保存試料を絶対評価にて、臭いの変化は、5℃保存試料を基準に45℃保存試料について下記判断基準を用いて評価した。
【0033】
[評価基準]黄変の度合い
スコア◎:変化なし。
スコア○:僅かに黄変が見られる。
スコア△:かなりの黄変が見られる。
スコア×:明らかな黄変が見られる。
[評価基準]臭いの変化
スコア◎:差なし。
スコア△:僅かに異臭が感じられる。
スコア×:明らか臭いの変化が感じられる。
【0034】
[経皮吸収性試験]
経皮吸収試験は一般に行われるテープストリッピング法を用いて実施した。被験者として、男子5名女子5名の健常人10名を用いた。以下にその手順を示す。L−アスコルビン酸には、「L−アスコルビン酸」CSPC Weisheng Pharmaceutical (Shijiazhuang) Co., Ltd.製を用いた。
1.被験者の前腕内側部を石ケンで洗浄。(25℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内)
2.15分間安静。
3.試料5mg/cm2を前腕内側の3箇所に塗布。
4.それぞれの部位について、試験Aは1時間放置後、試験Bは3時間放置後、試験Cは6時間放置後、の3回に分けて試料を塗布した部位を石ケンにて洗浄。
5.15分間安静。
6.テープストリッピング専用テープにて角層を採取。
7.採取した角層からL−アスコルビン酸を抽出。
8.抽出液中のL−アスコルビン酸の濃度をHPLCにて測定。
9.角層中のL−アスコルビン酸の濃度(μg/cm2)を算出。
この結果より求められた角層中のL−アスコルビン酸の濃度は、高いほど経皮吸収効果が高いと判断される。
【0035】
[美白効果評価試験]
まず紫外線照射により惹起される色素沈着の作成を行う。被験部位は日常生活で日光暴露されにくい5名の被験者の左上腕内側部を用い、各被験者の最小紅班量(MED)を予め測定しておき、左上腕内側部に各被験者のMEDの2倍量に相当する紫外線(UVB波)を、1日1回、3日間照射して色素沈着を惹起させた。紫外線照射部位に対し、各試料を45℃1ヶ月間恒温槽に保管したものを測定サンプルとし、1日2回1ヶ月間の連続塗布を行い、美白効果試験を行った。
【0036】
評価は、分光色差計(日本電色工業社製)を用いて測色し、白さのパラメーターは明度を表すL*(エルスター)を用いる。1ヶ月後の改善が見られた時のL*1から、最も色素沈着が進行した時の明度値L*2を差し引いた△L*(L*1−L*2)を求め、5名の被験者の平均値にて、下記の5段階評価基準により美白効果を判定した。スコア値が5に近いほど美白効果が高い。
【0037】
[評価基準]美白効果
スコア5:△L*が5以上
スコア4:4.5≦△L*<5
スコア3:4.0≦△L*<4.5
スコア2:3.5≦△L*<4.0
スコア1:△L*が3.5未満
【0038】
表1の結果から、本発明の実施例1〜5の皮膚外用剤は、比較例に比べて、経時でのL−アスコルビン酸の黄変や変臭が少なく、かつ残存率も極めて高いことから、L−アスコルビン酸の保存安定性に優れることが確認された。また、本発明の実施例の皮膚外用剤を塗布した皮膚は、比較例に比べて、L−アスコルビン酸の角層中の濃度が高いことが確認された。さらに、実施例を塗布した皮膚の顕著な明度の上昇が確認された。
【0039】
これらのことから、本発明の皮膚外用剤は、L−アスコルビン酸の経時安定性に優れ、経皮吸収性にも優れることから、色素沈着を改善し、美白効果にも優れることがわかった。
【0040】
実施例6 皮膚外用剤(美容液化粧料)
1.
α−D−グルコピラノシルグリセロール 0.1
2.
L−アスコルビン酸 35.0
3.
グリセリン 35.0
4.
1,3−プロパンジオール 3.5
5.
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
6.
精製水 22.83
7.
キサンタンガム 0.05
8.
ヒアルロン酸ナトリウム 0.02
9.
フェノキシエタノール 0.3
10. エタノール 3.0
11. 香料 0.1
合計 100.0
【0041】
[製造方法]
成分6の精製水に、成分1〜5および7〜8を順次、完全に溶解したことを確認しながら投入する。最後に9〜11を加え、100メッシュ以上でろ過し、美容液化粧料を得た。
【0042】
実施例6の本発明の皮膚外用剤(美容液化粧料)は、pHが3.05で、L−アスコルビン酸の経時安定性および経皮吸収性に優れ、美白効果にも優れるものであった。