【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の高モル比珪酸ソーダと酸成分と水とを混合することにより得られる地盤注入用固結材が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の地盤注入用固結材に関する。
1.SiO
2/Na
2Oで表されるモル比が3.8〜5.3でありSiO
2濃度が17質量%以上である高モル比珪酸ソーダと、酸成分と、水とを混合することにより得られる地盤注入用固結材であって、
(1)前記高モル比珪酸ソーダは、珪酸ソーダと活性珪酸とを混合することによりSiO
2/Na
2Oで表されるモル比が3.8〜5.3である混合液を調製後、当該混合液を濃縮して当該混合液のSiO
2濃度を17質量%以上に調整することにより得られ、
(2)前記活性珪酸は
、珪酸コロイド溶液である、
ことを特徴とする地盤注入用固結材。
2.前記モル比が5.0を超えて5.3以下である、上記項1に記載の地盤注入用固結材。
3.前記SiO
2濃度が17〜23質量%である、上記項1又は2に記載の地盤注入用固結材。
4.前記珪酸ソーダは、SiO
2/Na
2Oで表されるモル比が3〜5であり、且つ、SiO
2濃度が10〜30質量%である、上記項1〜
3のいずれかに記載の地盤注入用固結材。
5.前記活性珪酸は、SiO
2濃度が3〜6質量%である、上記項1〜
4のいずれかに記載の地盤注入用固結材。
【0010】
以下、本発明の地盤注入用固結材について詳細に説明する。
【0011】
本発明の地盤注入用固結材は、SiO
2/Na
2Oで表されるモル比が3.8〜5.3でありSiO
2濃度が17質量%以上である高モル比珪酸ソーダと、酸成分と、水とを混合することにより得られることを特徴とする。
【0012】
上記特徴を有する本発明の地盤注入用固結材は、5号珪酸ソーダ又は3号珪酸ソーダと酸成分と水とを混合することにより得られる従来品の地盤注入用固結材と比較して固結時の収縮率が小さいという特性がある。また、コロイダルシリカを混合してSiO
2濃度を増加した従来品との関係では、同じモル比において固結時の強度が大きいという特性がある。また、特定の高モル比珪酸ソーダを用いることにより、SiO
2含有量を増加するためにコロイダルシリカを混合する必要がなく地盤注入時に地盤への浸透性が良好である。
(高モル比珪酸ソーダ)
上記高モル比珪酸ソーダは、上記特定のモル比及びSiO
2濃度が満たされている限り製造方法は限定されないが、高モル比珪酸ソーダの長期安定性を考慮して下記の製造方法により製造されるものが好ましい。即ち、珪酸ソーダと活性珪酸とを混合することによりSiO
2/Na
2Oで表されるモル比が3.8〜5.3である混合液を調製後、当該混合液を濃縮して当該混合液のSiO
2濃度を17質量%以上に調整する製造方法により製造されるものが好ましい。以下、当該製造方法について例示的に説明する。
【0013】
上記製造方法で使用する珪酸ソーダとしては限定されず、市販品やそれに水を加えて希釈した希釈溶液を使用できる。
【0014】
珪酸ソーダのモル比(SiO
2/Na
2O)は限定されないが、3〜5程度が好ましく、汎用の珪酸ソーダが使えるため、3.1〜3.8程度がより好ましい。
【0015】
珪酸ソーダに含まれるシリカ濃度としては、10〜30質量%程度が好ましく、20〜30質量%程度がより好ましい。
【0016】
上記製造方法で使用する活性珪酸としては特に限定されず、例えば、上記珪酸ソーダの水希釈液をイオン交換又は電気透析により脱アルカリ処理することにより得られる珪酸コロイド溶液が使用できる。なお、上記活性珪酸は完全に脱アルカリされているものだけでなく、アルカリが一部残存しているものでもよい。
【0017】
上記活性珪酸のSiO
2濃度は限定的ではないが、3〜6質量%程度が好ましい。
【0018】
上記製造方法では、上記珪酸ソーダ(水希釈液も含む)と上記活性珪酸を混合することによりモル比が3.8〜5.3(好ましくは4.8〜5.3)である混合液を調製する。なお、モル比が5.0を超えて5.3以下(好ましくは5.1以上5.3以下)に調整することにより、最終製品の地盤注入用固結材の収縮率を低減することができる(後述の試験例39)。ここで、特に珪酸ソーダに活性珪酸を添加する態様によれば、混合液を中性領域にすることなくモル比をより確実に調整することができる点で好ましい。
【0019】
次いで、混合液を濃縮して混合液のSiO
2濃度を17質量%以上に調整する。濃縮の程度は最終製品の用途に応じて適宜設定できるが、安定性と取扱性とを考慮すると、17〜23質量%が好ましく、18〜22質量%がより好ましい。濃縮後のSiO
2濃度が23質量%を超える場合には、粘性が高くなり取扱性が低下するおそれがある。
【0020】
濃縮方法は限定されないが、例えば、加温下(好ましくは40〜60℃程度)でロータリーエバポレーターを用いて濃縮すればよい。
【0021】
上記濃縮により得られる高モル比珪酸ソーダは、長期安定性が優れており、調製後100時間を経過しても実質的に変化が認められない長期安定性の優れた高モル比珪酸ソーダである。特に好ましい実施態様では、調製後100日経過後も実質的に変化が認められない程度の優れた長期安定性が得られる。
【0022】
特にモル比が4.8〜5.2であり、SiO
2濃度が18〜22質量%である場合には、試験例の結果からも明らかなように、調製後100日経過後において変化が認められない。
(地盤注入用固結材)
本発明の地盤注入用固結材は、上記高モル比珪酸ソーダと酸成分と水とを混合することにより得られる。
【0023】
上記酸成分としては限定されないが、硫酸及び/又はリン酸が好ましい。これらの酸は複数種類を混合して使用することもできる。これらの酸は、酸濃度が50〜80質量%の市販の酸溶液がそのまま使用できる。
【0024】
上記酸成分及び水の混合割合は、地盤注入用固結材の所望のSiO
2含有量、pH及びゲルタイムに応じて適宜設定することができる。本発明では、地盤注入用固結材のSiO
2含有量は2〜15質量%が好ましく、3〜12質量%がより好ましい。また、pHとゲルタイムは関連しており、地盤注入用固結材の用途が液状化防止用である場合には、pH2〜4程度、ゲルタイム10時間以上に設定することが好ましい。他方、地盤注入用固結材が瞬結〜緩結タイプ(ゲルタイム10秒〜1時間程度)の場合には、pH4〜8程度に設定することが好ましい。よって、水の混合割合はSiO
2含有量の調整の点で設定し、酸成分の混合割合はpH及びゲルタイムの調整の点で設定すればよい。
【0025】
上記成分の混合方法は限定されないが、例えば、調製用容器に水の一部を入れておき、当該水を撹拌しながら酸成分及び残りの水で希釈した高モル比珪酸ソーダを滴下することにより各成分を混合することが好ましい。このような混合方法を採用することにより、各成分を効率的に混合することができるとともに酸成分の供給による調製用容器の腐食等の発生を効果的に抑制することができる。
【0026】
本発明の地盤注入用固結材は、上記高モル比珪酸ソーダを原料として用いることにより、SiO
2含有量を増加するためにコロイダルシリカを混合する必要がない。通常、地盤注入用固結材に用いられるコロイダルシリカに含まれるシリカ(SiO
2)の平均粒子径は5〜30nmであり、従来この大きな平均粒子径が地盤への浸透性を不十分とする原因になっていたが、本発明ではコロイダルシリカを含有しないため地盤注入時に地盤への浸透性が良好である。
【0027】
本発明の地盤注入用固結材は、地盤の液状化防止注入工事又は地盤補強工事に有用である。特にコロイダルシリカを含有しない点で地盤への浸透性が良好である上、従来品の地盤注入用固結材と比較して固結時の収縮率が小さい点で有利である。