(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134958
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】充電ケーブルの自動巻取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 75/34 20060101AFI20170522BHJP
H02G 11/00 20060101ALI20170522BHJP
B60L 11/18 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
B65H75/34
H02G11/00
!B60L11/18 C
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-52053(P2013-52053)
(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-177324(P2014-177324A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】村田 聡
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】三浦 一浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏
【審査官】
笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−023324(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/127678(WO,A1)
【文献】
特開2004−019503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 51/02 〜 51/12
B65H 54/28
B65H 54/76 〜 54/84
B65H 75/34 〜 75/50
B60L 1/00 〜 3/12
B60L 7/00 〜 13/00
B60L 15/00 〜 15/42
H05K 7/00
B60R 16/03
H02G 11/00 〜 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用充電装置に設置された充電ケーブルの自動巻取装置であって、
充電ケーブルを挟持して送る一対の駆動ローラと、
これらの一対の駆動ローラを充電ケーブルの巻取方向、または送出方向に駆動する駆動手段を備え、
前記一対の駆動ローラを、回転中心軸が床面に対し垂直となるように水平配置するとともに、
これらの駆動ローラの下方に塵埃排出用の開口部を形成したことを特徴とする充電ケーブルの自動巻取装置。
【請求項2】
前記駆動手段を、前記一対の駆動ローラの上方に配置したことを特徴とする請求項1記載の充電ケーブルの自動巻取装置。
【請求項3】
前記駆動手段の配置空間と前記一対の駆動ローラの配置空間とを仕切る仕切部材を備えることを特徴とする請求項1または2記載の充電ケーブルの自動巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両への充電を行うために用いられる車両用充電装置に形成される充電ケーブルの自動巻取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
充電ケーブルを介して車両への充電を行う車両用充電装置においては、充電に使用されていない充電ケーブルは特許文献1等に示すように充電スタンドの側面に巻かれ、その先端の充電コネクタは充電スタンドのホルダに引掛けて収納されている。しかし、利用者によっては充電ケーブルをきちんと巻き取らずに放置することがある。そのような場合には、放置した充電ケーブルにより利用者が転倒する問題があり、場合によっては、放置した充電ケーブルが車両に踏まれるなどして充電ケーブル自体が損傷または変形する恐れもある。
【0003】
また特許文献2に示すように、充電ケーブルを自動巻取りする装置も提案されている。この装置は、モータ駆動されるドラムにより充電ケーブルを自動巻取りするものであるが、常に一定方向に巻き取るために充電ケーブルが変形し、引き出したときに充電ケーブルが湾曲してしまうという問題がある。また比較的大型のドラムに巻き取るため、大型のモータが必要となるという問題もある。更に、このような構造では、充電ケーブルに付着した塵埃等がそのまま装置内に持ち込まれモータの停止、充電ケーブルの巻取り時に使用する駆動ローラの劣化、また、駆動ローラに付着した塵埃により充電ケーブルを損傷するなどの問題が生じるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−19609号公報
【特許文献2】特開2003−244832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、簡易な構造で、充電ケーブルの変形や損傷を与えることがなく容易に巻き取ることができる充電ケーブルの自動巻取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明の充電ケーブルの自動巻取装置は、車両用充電装置に設置された充電ケーブルの自動巻取装置であって、充電ケーブルを挟持して送る一対の駆動ローラと、これらの一対の駆動ローラを充電ケーブルの巻取方向、または送出方向に駆動する駆動手段を備え、前記一対の駆動ローラを、回転中心軸が床面に対し垂直となるように水平配置
するとともに、これらの駆動ローラの下方に塵埃排出用の開口部を形成したことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の充電ケーブルの自動巻取装置において、前記駆動手段を、前記一対の駆動ローラの上方に配置したことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の充電ケーブルの自動巻取装置において、前記駆動手段の配置空間と前記一対の駆動ローラの配置空間とを仕切る仕切部材を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の充電ケーブルの自動巻取装置は、充電ケーブルの巻取方向、または送出方向に駆動される一対の駆動ローラ間に充電ケーブルを挟持し巻き戻しを行う。このため充電ケーブルに変形や損傷を与えることを防止することができる。なお、駆動ローラの回動方向を変更させれば送出装置としても機能させることができる。
【0010】
なお、一対の駆動ローラを上下に配置した場合、充電ケーブルに付着した塵埃が、駆動ローラとの接触時に下方の駆動ローラ上に落下することとなり、下方の駆動ローラは落下した塵埃により損傷する恐れがある。これに対し、本発明の充電ケーブルの自動巻取装置では、一対の駆動ローラを、回転中心軸が床面に対し垂直となるように水平配置
するとともに、これらの駆動ローラの下方に塵埃排出用の開口部を形成することにより、充電ケーブルに付着した塵埃を、一対の駆動ローラとの接触時に下方に落下させ、駆動ローラの損傷を防止することが可能となる。
【0011】
また、塵埃が駆動手段の内部に混入するとトラブルの要因となるが、本発明では、前記のように、一対の駆動ローラを、回転中心軸が床面に対し垂直となるように水平配置することにより、充電ケーブルに付着した塵埃を、一対の駆動ローラとの接触時に下方に落下させるところ、請求項2記載の発明のように、駆動手段を、前記一対の駆動ローラの上方に配置することにより、塵埃が駆動手段の内部に混入する現象を防止することができる。
【0012】
更に、請求項3記載の発明のように、駆動手段の配置空間と前記一対の駆動ローラの配置空間とを仕切る仕切部材を備える構造とすれば、塵埃が駆動手段の内部に混入する現象を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】自動巻取装置を備えた充電装置の全体斜視図である。
【
図3】実施形態の自動巻取装置の垂直断面図である。
【
図4】実施形態の自動巻取装置下方からの斜視図である。
【
図5】カバー部材を除き内部構造を示す斜視図である。
【
図6】カバー部材を回動させた状態を示す斜視図である。
【
図7】
図5から更に仕切板を除いた状態を示す斜視図である。
【
図8】
図7から更に各種ギヤ除いた状態を示す斜視図である。
【
図9】ローラ保持部を回動させた状態を示す斜視図である。
【
図10】
図8から更にローラ保持部と付勢手段を除いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の自動巻取装置を備えた充電装置の全体図であり、スタンド筐体1の下部に自動巻取装置2が設けられ、その下方が充電ケーブル収納部3となっている。この自動巻取装置2から延びる充電ケーブル4はその先端に充電コネクタ5を備え、この充電コネクタ5は非充電時には
図1のようにスタンド筐体1のホルダ(図示せず)に引掛けてある。充電の際には充電ケーブル4をスタンド筐体1から引き出して充電コネクタ5を車両側のコネクタに差し込むとともに、操作部6から必要な操作を行って充電を開始する。そして充電が完了したときには、自動巻取装置2により充電ケーブル4を巻き取るようになっている。なお、自動巻取装置2の設置箇所は、特に限定されず、本実施形態では充電装置のスタンド筐体1内部に配置しているが、自動巻取装置2と充電装置のスタンド筐体1とを別体として隣接配置することもできる。
【0015】
自動巻取装置2は、
図2、
図3に示すように、一対の駆動ローラ7、8を回転駆動させながら、充電ケーブル4を巻き取って充電ケーブル収納部3に収納するものであり、これらの駆動ローラ7、8は、充電ケーブル収納部3の上面に位置する取付板9上に、水平かつ、回転中心軸が取付板9に対し垂直となるように配置されている。これらの駆動ローラ7、8は、充電ケーブル4の断面形状に対応した溝部10、11を備え、充電ケーブル4を左右から挟持して送ることができる位置に配置されている。
【0016】
このように、駆動ローラ7、8を、回転中心軸が床面に対し垂直となるように水平配置しているため、充電ケーブル4に付着した塵埃は、駆動ローラ7、8との接触時に下方に落下する。塵埃が駆動手段となる駆動モータ13の内部に混入するとトラブルの要因となり、本実施形態では、駆動ローラ7、8の上方には、カバー部材12を介して、駆動モータ13を配置して、充電ケーブル4に付着して持ち込まれ、駆動ローラ7、8との接触時に下方に落下する塵埃が、駆動モータ13に混入する現象を回避している。下方に落下した塵埃は、
図4に示すように、駆動ローラ7、8の下方に形成された開口部23から、駆動モータ13、駆動ローラ7,8を形成した空間から排出される。
【0017】
図5のカバー部材12を除いた自動巻取装置斜視図に示すように、駆動モータ13の下方、かつ、駆動ローラ7、8の上方には、駆動モータ12からの駆動力を駆動ローラ7、8に伝達する手段となる駆動ギヤ14と、駆動ギヤ14の回転を直接駆動ローラ7に伝達する伝達ギヤ15と、駆動ギヤ14の回転をリンクギヤ16を介して駆動ローラ8に伝達する伝達ギヤ17が配置されている。本実施形態では、前記各種ギヤ14、15、16、17と、駆動ローラ7、8との間の空間を、仕切板18で仕切る構造として、充電ケーブル4に付着して持ち込まれる塵埃が巻き上がって上方の空間に侵入することを防止している。
【0018】
なお、装置内に貯まった塵埃の除去作業や、駆動ローラ7,8のメンテナンス作業、あるいは、充電ケーブル4の取り換え作業等を容易に行えるように、カバー部材12や仕切板18は着脱自在、もしくは、
図6に示すように、回動可能にとすることが好ましい。
【0019】
本実施形態では、
図7の
図5から更に仕切板18除いた斜視図、
図8の
図7から更に各種ギヤ14、15、16、17除いた斜視図に示すように、駆動ローラ7、8を、ローラ軸部41、42を介して、断面略コ字状のローラ保持部19、20に軸支させている。ローラ保持部19、20は、上記同様に、塵埃が上方の空間に侵入することを防止する機能を有する。また、これらのローラ保持部19、20は、一端で、共通の回動軸21に、各々回動自在に軸支されるとともに、回動軸21と相対する他端には、ローラ保持部19、20内の駆動ローラ7、8を、充電ケーブル4方向に付勢する付勢手段22を備え、
図9に示すように、回動軸21を回動中心として、充電ケーブル4への付勢する力を調整するため駆動ローラ7、8を揺動可能に保持する機能も有する。他の実施形態として、いずれか一方のローラ保持部19、20のみを揺動可能とすることもできる。
【0020】
付勢手段22は、ローラ保持部19、20の上面を垂直に折り曲げて形成した垂直片24に形成した孔部25を貫通して配置される中央軸部26と、中央軸部26の両端に挿入されて、垂直片24の外側面に配置されるバネ部27と、バネ部27の可動範囲を調節する調節部28から構成され、駆動ローラ7,8の長年使用による摩耗等に伴って接触圧力が低減した際においても付勢手段22により、充電ケーブル4の押圧方向に付勢される。通常、一対の駆動ローラ7,8で充電ケーブル4を挟持しながら充電ケーブル4の搬送を行う場合、駆動ローラ7,8の摩耗に伴って接触圧力が低減し、駆動ローラ7,8の空回り現象が生じる恐れがあるところ、付勢手段22を備える当該構成によれば、駆動ローラ7,8の摩耗等が生じた場合であっても、接触圧力を、充電ケーブル4の搬送に最適な範囲に維持することができる。また、充電ケーブル4の巻取時に生じる揺り戻しもバネ部27で吸収することもできる。なお、調節部28の調節によって、ローラ保持部19、20の回動角度の調節や、接触圧力の調節を自在に行うことができる。なお、付勢手段22の具体的構造は特に限定されず、例えば、前記バネ部27に変えて、中央軸部に反転バネを組み込むこともできる。また、付勢手段22の配置も特に限定されないが、ローラ保持部19、20の揺動時に各種ギヤ14、15、16、17間の距離が変動してギヤの空回りが生じないように、各種ギヤ14、15、16、17からは十分な距離を確保して配置することが好ましい。
【0021】
本実施形態では、
図10に示すように、取付板9の下方に、充電ケーブル4を適切な位置にガイドするガイド部材29が配置されている。
【0022】
ガイド部材29は、
図10、
図11に示すように、充電ケーブル4を引出口に案内する引出側ガイド部30と、充電ケーブルの収納部方向に案内する引込側ガイド部31を備えている。引出側ガイド部30と引込側ガイド部31は2本の連結部32で連結され、連結部32の上端には、取付板9の底面に固定される水平辺33が折り曲げ形成されている。2本の連結部32間に形成される空間34が形成されている。なお、ガイド部材29は引出側ガイド部30と引込側ガイド部31を一体に形成しているものであるが、それぞれ別途に形成するものであっても良い。
【0023】
図4に示すように、2本の連結部32間に形成される空間34は、駆動ローラ7、8の下方に形成された開口部23の下方に位置するように配置されている。
【0024】
引出側ガイド部30と引込側ガイド部31は、何れも充電ケーブル4のずれや充電ケーブル4を巻取る際に生じる揺り戻しを補正するガイドローラ35を形成している。
【0025】
本実施形態では、引出側ガイド部30には、充電ケーブル4を上下から挟持する一対のガイドローラ35を配置しているが、その他の実施形態として、
図12に示す、ブラシユニット36を内蔵したブラシ付きガイド部材43を配置したり、ガイドローラ35とブラシ付きガイド部材43の双方を配置することもできる。
【0026】
図12に示すブラシ付きガイド部材43は、一対の回転ブラシから構成されるブラシユニット36を2段に重ねて内蔵し、充電ケーブル通過孔37を形成したケース38に収納され、同じく充電ケーブル通過孔39を形成したカバー40で被覆されている。
【0027】
ブラシユニット36の、一方は充電ケーブル4を左右から挟持するように垂直配置し、他方は充電ケーブル4を上下から挟持するように水平配置している。当該構造によれば、自動巻取装置2に入る前の段階で、充電ケーブル4の全側面にブラシを当てて、塵埃を除去することができるため、駆動ローラ7、8との接触時に塵埃を除去する場合と比べて、駆動ローラ7、8の摩耗を低減することができる。
【0028】
なお、ブラシユニット36は消耗部材であり、定期的な交換が必要となるため、ブラシ付きガイド部材43は、自動巻取装置に充電ケーブル4を通した状態で、取付け可能な構造とすることが好ましい。構造例として
図12に示すようにブラシユニット36の1辺を開放させて形成した開放部36aを形成しておくことにより、充電ケーブル4を通した状態でもカバー40を外してブラシユニット36を交換可能なように形成している。その他、ブラシ付きガイド部材43を自動巻取装置と別体として配置することもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 スタンド筐体
2 自動巻取装置
3 充電ケーブル収納部
4 充電ケーブル
5 充電コネクタ
6 操作部
7、8 駆動ローラ
9 取付板
10、11 溝部
12 カバー部材
13 駆動モータ
14 駆動ギヤ
15 伝達ギヤ
16 リンクギヤ
17 伝達ギヤ
18 仕切板
19、20 ローラ保持部
21 回動軸
22 付勢手段
23 開口部
24 垂直片
25 孔部
26 中央軸部
27 バネ部
28 調節部
29 ガイド部材
30 引出側ガイド部
31 引込側ガイド部
32 連結部
33 水平辺
34 空間
35 ガイドローラ
36 ブラシユニット
37 充電ケーブル通過孔
38 ケース
39 充電ケーブル通過孔
40 カバー
41、42 ローラ軸部
43 ブラシ付き整線部材