(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
係合素子が、ステム高さ方向に2段以上の係合突起を有し、かつステムから突出する各段の係合突起の突出長がほぼ同一であり、さらにステムの茎幅が基板表面から最頂部に行くにしたがって係合突起が存在する段毎に細くなっている請求項1または2に記載の網戸用取付け具セット。
ステム高さ方向の係合突起間の距離(Z)が0.2〜1.5mmであり、ステムから突出する各段の係合突起の突出長(S1)が0.05〜0.3mmである請求項1〜3のいずれかに記載の網戸用取付け具セット。
ステムの高さ(H)が1.0〜3.5mmであり、基板に近い1段目の係合突起が存在している箇所のステム幅(D1)が0.3〜0.7mmであり、2段目以降の係合突起が存在している箇所のステム幅が直下のステム幅よりも0.05〜0.2mm狭い請求項1〜4のいずれかに記載の網戸用取付け具セット。
網面に取り付ける物体が、防虫剤、消臭剤および芳香剤の少なくともいずれか1つを含むケースまたはシートからなる機能性物体である請求項1〜6のいずれかに記載の網戸用取付け具セット。
【背景技術】
【0002】
従来から、防虫剤を含有するシートやケースを網戸の網面に面ファスナーを用いて取り付けることは公知である。この取り付け方法は、防虫剤含有シートやケースの裏面に一方の面ファスナー(例えばフック状係合素子を有する面ファスナー)を貼り付け、これを網戸の網面に押し付け、網面の反対側の面からもう一方の面ファスナー(例えばループ状係合素子を有する面ファスナー)を押し付けて、網面を挟んで両方の面ファスナーを係合させて防虫剤含有シートやケースを網戸に取り付けるものである(特許文献1)。そして、このような公知技術を用いた網戸固定用防虫剤が現在販売されている。
【0003】
しかしながら、この網面を挟んで両方の面ファスナーを係合させて網戸に固定する技術の場合には、機能性物体裏面に取り付けられたフック面ファスナーとループ面ファスナーの中間に存在する網面に遮られて、両方の面ファスナーが十分に近づくことが難しく、期待したほども係合力が得られず、自然に或いは網戸の開け閉めの振動や風による振動等により係合が外れて防虫剤シートやケースが脱落するという欠点を有している。
【0004】
より詳細に説明すると、網面の両面に存在する面ファスナーが係合するためには、一方の係合素子が網戸の網面を貫通して他の面ファスナーの係合素子面まで到達することが必要であるが、従来の一般に市販されている面ファスナーでは網面に遮られて、係合力が発現するに充分な数の係合素子が網面を貫通することが難しく、高い係合力が得られない。高い係合力が得られない場合には、重量のある物体を網戸の網面に取り付けることができず、あるいは取り付けたとしても、時間の経過や網戸やガラス戸の開け閉め時の振動等により係合が外れて、取り付けた物体が脱落するということが生じる。
【0005】
また、網戸の網面に殺虫剤含有ケース等を取り付ける取り付け具として、基板およびその表面から突出する一対の棒状体素子からなり、該棒状体素子の間隔が中間部で一旦広くなり、根元部および先端部で狭くなっている、あるいはその逆の間隔を有している取り付け具が公知である(特許文献2)。
【0006】
この取り付け具の場合には、網戸を挟んで留める必要がないことから、上記特許文献1の場合のような問題点を有しないが、その反面、一対の棒状体素子の一方が網面を十分貫通できない場合には、係止力が殆ど得られず、さらに棒状体として硬くて太く、かつ長いものが用いられることが多く、貫通した棒状体の先端に網面から垂直に突出していることから人体が先端部に接触すると場合により人体に傷を与える場合がある等の問題点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した面ファスナーや取付け具を用いる公知技術の問題点を解消するものであり、具体的には、機能性物体側に取り付けられた面ファスナーの係合素子が容易に網面を貫通して網面を挟んで反対面に存在しているループ状面ファスナーと強固に係合することにより、高い係合力と人体に対する安全性が得られる取付け具及びそれを用いた取付け具セットである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、
網戸用取付け具の係合素子を網戸の網面を貫通させ、網面を挟んで反対側に存在しているループ状係合素子を有する面ファスナーのループ状係合素子と係合させることにより機能性物体が網戸に固定されるようにした、網戸取付け具とループ状係合素子を有する面ファスナーからなる網戸取付け具セットにおいて、網戸取付け具が、熱可塑性樹脂製の基板と同基板表面から突出する同樹脂製の多数の係合素子からなり、同係合素子が、基板表面から突出するステムと同ステムから側部に突出し、かつステム高さ方向に並んで複数段存在する係合用突起からなることを特徴とする網戸取付け具
セットである。
【0010】
そして好ましくは、本発明は、このような物体を取り付けるための取付け具において、ステムを挟んで対象方向に係合突起がステムから突出し、係合突起が突出する方向と交わる方向に係合素子が列をなして並んで存在しており、そして係合素子列方向には係合突起は突出していない場合であり、また係合素子が、ステム高さ方向に2段以上の係合突起を有し、かつステムから突出する各段の係合突起の突出長がほぼ同一であり、さらにステムの茎幅が基板表面から最頂部に行くにしたがって係合突起が存在する段毎に細くなっている場合である。
【0011】
そして好ましくは、本発明は、上記の物体を取り付けるための取付け具において、ステム高さ方向の係合突起間の距離(Z)が0.2〜1.5mmであり、ステムから突出する各段の係合突起の突出長(S1)が0.05〜0.3mmである場合であり、またステムの高さ(H)が1.0〜3.5mmであり、基板に近い1段目の係合突起が存在している箇所のステム幅(D1)が0.3〜0.7mmであり、2段目以降の係合突起が存在している箇所のステム幅が直下のステム幅よりも0.05〜0.2mm狭くなっている場合であり、また10〜40個/cm
2の密度で係合素子が存在している場合である。
【0012】
そして本発明は、網面に取り付ける物体が防虫剤、消臭剤および芳香剤の少なくともいずれか1つを含むケースまたはシートからなる機能性物体である上記取り付け具であり、また、本発明は、網面に取り付ける物体が装飾用シートまたは装飾用機器からなる機能性物体である上記の取付け具である。
【0013】
また、本発明の網戸の網面に取り付ける機能性物体は、上記した防虫剤、消臭剤および芳香剤等を含むケースやシート以外にも、装飾用シートや装飾用機器等で代表される装飾用品や、例えば、生活雑貨等で代表される日用品が挙げられる。また、本発明の網戸とは、一般的に窓や扉に設置される網戸以外に、網面を有する仕切りや窓や扉等も含む。
【0014】
また本発明は、上記の網戸用取付け具の係合素子を網戸の網面を貫通させ、網面を挟んで反対側に存在しているループ状係合素子を有する面ファスナーのループ状係合素子と係合させることにより機能性物品が網戸に固定されるようにした、上記の網戸取付け具とループ状係合素子を有する面ファスナーからなる網戸取付け具セットである。
なお、機能性物品は上記網戸用取付け具の方でもループ状係合素子を有する面ファスナーの方でもいずれに固定しても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の網戸用取付け具では、係合突起がステム高さ方向に複数段存在しており、網面を係合素子が一度貫通すると係合突起が複数段存在していることから、網面から抜けにくく、かつループ状係合素子と係合し易く、その結果高い係合力が得られる。そして好ましくは、基板表面から突出するステムの茎幅が基板表面から最頂部に向かい細くなっていることにより、ステム先端、すなわち係合素子先端を網面に容易に貫通させることができ、また、網目の細かい網から網目の粗い網まで容易に貫通することができることから、網目の細かい網戸から粗い網戸まで使用可能であり、そして好ましくはステムから突出する係合突起の突出長が各段ともほぼ同一であることから、網面から係合素子を引き抜く際、すなわち機能性物体を網面から取り外す際に網面に過度の損傷を与えない。
【0016】
したがって、本発明の網戸取り付け具を用いると、細い先端部が網目を貫通でき高い係合力を得ることができ、そして取り付ける機能性物体がある程度の重量を有するものであっても簡単かつ強固に網戸の網に取り付けられることができ、さらに取り付ける必要がなくなった場合や取り付けた機能性物体が機能を喪失した場合には速やかに取り外すことができ、しかも取り付けることや取り外すことにより、網戸の網を構成するモノフィラメントを傷つけることがない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面に基づき本発明を説明する。
本発明の網戸用取付け具は、
図1に示すように、熱可塑性樹脂からなる基板(1)とその表面に突出する同樹脂からなる多数の係合素子(2)から構成される。基板(1)の厚さとしては0.1〜1.0mmが好ましい。
【0019】
基板および係合素子を形成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6やナイロン66等のナイロン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の延伸可能な樹脂が好適な例として挙げられる。
【0020】
係合素子(2)は、
図1に示すように、基板表面から突出するステムと同ステムから側部に突出し、かつステム高さ方向に並んで複数段存在する係合用突起からなっている。そして好ましくは、
図1に示すように、基板(1)上に、係合素子の係合突起が突出している方向に対して交差する方向(
図1ではX方向)に、多数の係合素子が並列に列をなして並んでおり、さらにこのような係合素子列が基板上に平行に複数列(
図1では2列)存在しており、そして個々の係合素子では、係合突起が2段以上が好ましく、係合突起を形成することができれば上限は特に制限は無いが5段以下が好ましく4段以下がより好ましく、さらに好ましくは、
図3や
図5に示すように係合突起の段数が2段または3段構造であり(
図3では3段、
図5では2段)、いわゆるクリスマスツリー型の形状となっている。
【0021】
本発明の網戸用取付け具の基板(1)の裏面(ステムと反対側の面)、またはループ状係合素子を有する面ファスナーの裏面には、例えば
図4に示すように、防虫剤や芳香剤、またはこれらを内有する箱体や包装体等の機能性物体(3)が一体化されている。
図4は、(4)の網戸の網を構成しているモノフィラメントを挟んで、本発明の網戸取付け具の一例とループ状係合素子を有する面ファスナーが取り付けられている状態を示しており、網戸用取付け具の係合素子列方向(X方向)に直交する面(Y方向)での断面図である。
【0022】
本発明の網戸用取付け具の基板(1)の裏面(ステムと反対側の面)、またはループ状係合素子を有する面ファスナーの基布(5)の裏面に上記したような機能性物体(3)を取り付ける方法としては、接着剤、粘着材、面ファスナー、ホッチキス、縫製あるいは基板裏面に取り付けたフック等を物体裏面に取り付けた穴等に差し込む等のいずれの方法であってもよい。
【0023】
取り付ける機能性物体(3)としては、上記した防虫剤、芳香剤、消臭剤、またはこれらを内在させたシートや瓶や缶や箱体等のケース等の他に、室内装飾用の飾り(クリスマスツリーに付ける飾りのようなもの)等、遮光調整シート、さらに網戸に模様を付与するための模様付きシート、電飾品等で代表される装飾用シートまたは装飾用器具等の装飾品や生活雑貨等で代表される日用品が挙げられる。
【0024】
本発明の取付け具を構成する係合素子のサイズに関しては、係合素子の最頂部と基板表面の距離、すなわち
図1〜3に示すステム高さ(H)として1.0〜3.5mmの範囲が好ましく、この範囲より短いと網面を貫通しても十分な係合を得ることが難しく、またこの範囲より長すぎるとこれまたステムが倒れ易く網面を貫通させるのが難しくなり、機能性物体が外れ易くなる。より好ましくは、1.2〜3.0mmの範囲である。
【0025】
またステムの高さ方向の係合突起先端部間の距離(
図3や
図5で示すZ)としては0.2〜1.5mmの範囲が係合力の点で好ましい。より好ましくは、0.3〜1.1mmの範囲である。
【0026】
ステムから側面に突出する各係合突起の突出長はほぼ同じ寸法であることが上記したように、取り外す際に網を構成するモノフィラメントを傷めないことから好ましく、係合突起の突出長(
図3で示すSや
図5で示すS1)が0.05〜0.3mmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.07mm〜0.25mmの範囲、さらに好ましくは0.09〜0.2mmの範囲である。
【0027】
ステムから突出する各係合突起の突出長(
図3で示すSや
図5で示すS1)が、0.05mmより短い場合には、ループ状係合素子を有する面ファスナーと高い係合力が得られ難く、またこの範囲より長い場合は網面を貫通させるのが難しくなり、機能性物体が外れ易くなる。
【0028】
また、本発明の取付け具において、ステムの茎幅(
図3や
図5で示すD1〜D3)が基板表面から最頂部に行くにしたがって係合突起が存在する段毎に細くなっているのが好ましく、基板に近い1段目の係合突起が存在している箇所のステム幅に対して2段目以降の係合突起が存在している箇所のステム幅が直下のステム幅よりも0.05〜0.2mm狭いものがより好ましく、具体的に係合突起が3段の場合には、基板に最も近い1段目の係合突起が存在している箇所のステム幅(D1)が0.3〜0.7mmであり、2段目の係合突起が存在している箇所のステム幅(D2)がD1より0.05〜0.2mm狭く、3段目の係合突起が存在している箇所のステム幅(D3)がD2より0.05〜0.2mm狭くなっているのが好ましい。
【0029】
1段目のステム幅(D1)が上記範囲より狭い場合には十分な係合力が得られず、またこの範囲より広い場合にはこれまた網面を貫通させることが難しく、機能性物体が外れ易くなる。さらにD2とD3の幅が上記範囲の場合には、係合素子が倒れ難く、あるいは各種の網目の網戸に対して貫通できる能力が向上し、係合力も向上する。
【0030】
また係合突起は、図に示すように、ステム(茎)を挟んで対象方向に突出し、そして係合突起が突出する方向と交わる方向に係合素子が列をなして並んで存在しており、そして係合素子列方向には係合突起は突出していないのが、網戸の網目に挿入し易く、かつ取り外す際に網を形成するモノフィラメントや係合素子を傷つけないことから好ましい。さらに係合素子が列をなして並んでいることにより、ループ状係合素子を有する面ファスナーと高い係合力が得られ、機能性物体が重量あるものであっても取り付けることが可能となる。
【0031】
そして、ステムの列方向厚さ(
図2に示すW)としては0.1〜0.5mmが好ましく、この範囲より薄い場合には、係合素子の強度が低く、またこの範囲より厚い場合には、係合素子が網目を貫通することが難しくなる。
【0032】
本発明の網戸用の取付け具は、前記したように、係合素子が、基板表面から突出するステムと、同ステムから側部に突出しかつステム高さ方向に並んで複数段存在する係合用突起からなることが必要であり、複数段存在することにより、網戸を貫通したあとの係合力が格段に向上し、さらに網目の異なる網戸に対応可能となる。好ましくは2段以上存在し、、係合突起を形成することができれば上限は特に制限は無いが5段以下が好ましく4段以下がより好ましく、さらに好ましくは、
図3や
図5に示すように係合突起の段数が2段または3段構造である場合である。
【0033】
係合素子列方向の係合素子間距離(
図2に示すS2)としては、0.1〜2.0mmが好ましく、この範囲より狭い場合には、係合素子が網目に貫通し難く、逆にこの距離より広い場合には、係合素子密度が低くなり、ループ状係合素子を有する面ファスナーとの高い係合力が得られない。
【0034】
さらに本発明では、ステム列が複数列並列に基板上に存在していることが好ましい。複数列並列に存在することにより、ループ状係合素子を有する面ファスナーのループがより多く係合し、高い係合力が得られ、取り付け状態が安定し、機能性物体の重量を分散して網面に保持することができる。
【0035】
さらに係合素子密度としては、係合素子が存在している基板部分の基板1cm
2当たり10〜40個が好ましく、この範囲よりも少ない場合には、ループ状係合素子との十分な係合力を得られず、面積の大きい取り付け具を使用することが必要となり、機能性物体が小さい容器等の場合には不自然となり、逆にこの範囲より多い場合には、係合素子が網面を貫通し難く網目を痛めてしまうこととなる。より好ましくは、係合素子密度が15〜35個/cm
2の範囲の場合である。
【0036】
本発明の網戸用の取付け具において、係合素子列1cm当たり3〜20本の係合素子が存在しており、そしてこのような係合素子列が取り付け具の長さ1cm当たり3〜8列存在しているのが、網戸の網目への挿入性やループ状係合素子との係合力の点で好ましい。より好ましくは係合素子列1cm当たり5〜15本の係合素子が存在しており、そのような係合素子列が取付け具1cm当たり4〜7列存在している場合である。
【0037】
次に、本発明の網戸用取付け具の製造方法について説明する。
図1、
図3及び
図5に示すような形状であれば公知の雄型係合素子付き面ファスナーの製造方法が採用可能であるが、好適な一例を挙げれば、まず
図1のX方向から見た形状で示すように、あるいは
図3や
図5の係合素子断面が複数並んだ状態で示すようなスリットを有するノズルから、熱可塑性樹脂を溶融押出しし、基板の表面にテープ長さ方向に連続している係合素子列条を複数列有するテープを成形する。次に、得られたテープの表面に存在する該列条に小間隔で列条の先端から付け根付近までテープ長さ方向と交わる方向に切れ目を入れる。切れ目の間隔としては0.1〜2.0mmが適切である。
【0038】
次いで、テープを長さ方向に延伸する。延伸倍率としては、延伸後のテープ長さが元のテープの長さの2.0〜5.0倍となる程度が好ましい。この延伸により、列条に入れられた切れ目が広がり、列条が、独立した多数の係合素子からなる係合素子列となる。
このようにして得られた延伸テープを長さ方向に直角に切断すると本発明の網戸用取り付け具が得られる。
【0039】
次に、本発明の網戸用取付け具とセットで用いられるループ状係合素子を有する面ファスナーについて説明すると、このようなループ状係合素子を有する面ファスナーとしては、マルチフィラメント糸が基布上にループを形成している面ファスナーが好ましい。基布を織る段階で、ループを構成するマルチフィラメント糸を基布に織り込むと同時にループとなるように、基布上にマルチフィラメント糸からなるループ状の浮き上がりを形成する。ループ状係合素子は、ループ状係合素子を構成するマルチフィラメント糸の一部のフィラレントがループからより引き出されたり、マルチフィラメント束が乱れた構造を有するように、ループ面ファスナーの表面を乱しているのが好ましい。
【0040】
本発明で取り付ける対象の網戸に関しては特に限定されないが、現在一般に18〜30メッシュのものが用いられており、本発明の網戸の網面に物体を取り付けるための取付け具が対象とする網戸としては、この一般的な網目が18〜30メッシュのものが好適である。そして、網戸の網目を構成しているモノフィラメントの直径が0.12〜0.35mmであるものが好適である。
【0041】
モノフィラメントは合成繊維、あるいは金属繊維やガラス繊維の表面を樹脂コートしたものでもよい。一般に網戸を構成する網目としては経糸織密度と緯糸織密度を同一とした平織構造体が用いられる。
【0042】
本発明の取付け具を用いて機能性物体を網戸の網面に取り付ける際には、雨により機能性物体が濡れることを少しでも軽減するために、室内側に機能性物体を取り付けるのが好ましい。また、外部からの視覚を重視する場合には、室外側に取り付けても構わない。その際には、取り付けたことにより、ガラス戸の開閉が妨げられないように、取り付け物の厚みは合計で20mm以内とするのが好ましい。
【0043】
本発明の取付け具の大きさとしては、縦×横で1.0cm×1.0cm〜5cm×5cmの大きさが適当である。もちろん、取り付け物の大きさや重さ形状等により取り付けるための取付け具を複数用いてもよい。
【0044】
本発明の網戸用の取付け具は、前記したように、網戸の網面に機能性物体を取り付けるために用いられるものであり、具体的には、殺虫剤や防虫剤等を含むケースやシート、消臭剤や芳香剤を含有するケースやシート、装飾用品や電飾品等で代表される機能性物体を網戸に取り付けるのに用いられる。これら以外にも、網戸に日用品等の物体を取り付ける際の取付け具として使用できる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0046】
なお、実施例中の係合力(面直剥離強力)は、網戸用取り付け具とマルチフィラメントからなるループ状係合素子を有する面ファスナー(クラレファスニング(株)製B9751Y)をそれぞれ25mm角にカットし、このカットした面ファスナーをプラスチック板(厚さ5mm・重さ20g)に両面テープにて貼り付けた状態で網戸用の各種網(18メッシュ、20メッシュ、24メッシュ、30メッシュ)を挟んで網戸用取付け具を押し当て係合させ、網面の面直方向にオートグラフ(SHIMADZU社製)にて引張り速度300mm/分で引張ったときの面直剥離強力である。(以下、この測定方法をクラレファスニング法と称す。)
【0047】
なお、実施例中の網戸の網への取り付け易さは、25mm角にカットされた取り付け具を網戸用の各種網(18メッシュ、20メッシュ、24メッシュ、30メッシュ)に手で押し当てたときの挿入のし易さを以下の基準で官能評価したものである。
(網戸の網面への挿入性の順位)
A:極めて挿入し易い(ほとんど抵抗なく挿入できる)。
B:挿入し易い(若干の抵抗を感じるが、力を加えることにより簡単に挿入できる)。
C:挿入し難い(抵抗が高く、かなり力を加えても挿入し難い)。
【0048】
なお、実施例中の網面からの取り外し易さは、25mm角にカットされた取付け具を網戸用の網(18メッシュ、20メッシュ、24メッシュ、30メッシュ)に手で押し当て、係合突起が各段数存在する係合素子の根本まで網面に貫通させた後、取付け具を網面から引き剥がしたときの外し易さを官能評価したものである。
(網面からの取り外し易さの順位)
A:極めて外し易い(取付け具を網目からめくり取るようにすることで簡単に外すことができる)
B:外し易い
C:外し難い(外す際に網目を構成するモノフィラメントが破断される可能性あり)
【0049】
なお、実施例中の耐久性は取り付け具とマルチフィラメント糸からなるループ状係合素子を有する面ファスナー(クラレファスニング(株)製:B9751Y)をそれぞれ25mm角にカットし、ループ状係合素子を有する面ファスナーをプラスチック板(厚さ5mm・重さ20g)に両面テープにて貼り付けた状態で網戸用の各網面(18メッシュ、20メッシュ、24メッシュ、30メッシュ)を挟んで取り付け具を押し当て係合させ、1ヶ月放置したものである。
(物体を取り付けたときの耐久性の判定)
○:脱落なし
× :脱落あり
【0050】
実施例1
ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出し、冷却して基板の表面から突出する係合素子の断面形状を有し、係合素子が
図1に示すような3段構造の係合突起を有し、かつテープ長さ方向に連続している係合素子用列条が基板上に存在しているテープを成形した。そして該テープの係合素子用列条の先端から根元までカット角度0度(すなわちテープ長さ方向に直角)で等間隔で切れ目を入れ、そしてテープを長さ4.4倍に延伸し取付け具(雄型係合素子を有する面ファスナー)を製作した。
【0051】
得られた取り付け具のステム高さ(H)は2.3mm、ステムの高さ方向の係合突起先端部間の距離(Z)は0.5mm、係合突起の突出長(S1)は0.12mm、1段目のステム幅(D1)は0.6mm、2段目のステム幅(D2)はD1より0.1mm狭く、3段目のステム幅(D3)はD2より0.1mm狭く、さらにステムの列方向長さ(W)は0.3mm、係合素子列方向の係合素子間の距離(S2)は1.0mm、係合素子密度は24個/cm
2で、係合素子列1cm当たりの係合素子本数としては8本/cm、1cm当たりの係合素子列本数は3本/cmである。
【0052】
一方、ループ状係合素子を有する面ファスナーをプラスチック板(厚さ5mm・重さ20g)に両面テープにて貼り付け、この状態で網戸用の各種網(18メッシュ、20メッシュ、24メッシュ、30メッシュ)を挟んで、上記の雄型係合素子を有する面ファスナーを押さえつけて係合させた。そして、網面の面直方向にオートグラフ(島津社製)にて引張り速度300mm/分で引張ったときの面直剥離強力を測定した。結果は表1のとおりであった。
【0053】
また、上記の方法で得られた取付け具を25mmにカットし、網戸用の網(18メッシュ、20メッシュ、24メッシュ、30メッシュ)に手で押し当てたときの挿入のし易さと網面から引き剥がしたときの外し易さを官能評価した結果、取り付けや取り外し時に係合素子に押しやられ、網目の目ずれが生じたが、網目に遮られることなく付け外しがし易かった。また、耐久性の評価として網戸の網面に取り付け具を取り付け、1ヶ月放置したが、雨や風による脱落或いは開け閉めによる振動での脱落等は全く生じなかった。
【0054】
実施例2
上記実施例1において基板の表面から突出する係合素子の断面形状が2段構造の係合突起からなり、係合素子のステム列が基板上に存在しているテープを成形した。それ以外は実施例1と同様の方法によりテープ状物を製造した。
【0055】
得られた取り付け具(雄型係合素子を有する面ファスナー)のステム高さ(H)は1.9mm、ステムの高さ方向の係合突起先端部間の距離(Z)は0.5mm、係合突起の突出長(S1)は0.12mm、1段目のステム幅(D1)は0.6mm、2段目のステム幅(D2)はD1より0.1mm狭く、さらにステムの列方向長さ(W)は0.3mm、係合素子列方向の係合素子間の距離(S2)は1.0mm、係合素子密度は24個/cm
2で、係合素子列1cm当たりの係合素子本数としては8本/cm、1cm当たりの係合素子列本数は3本/cmである。
【0056】
一方、ループ状係合素子を有する面ファスナーをプラスチック板(厚さ5mm、重さ20g)に両面テープにて貼り付け、この状態で網戸用の各種網(18メッシュ、20メッシュ、24メッシュ、30メッシュ)を挟んで、上記の雄型係合素子を有する面ファスナーを押し付けて面ファスナー同士を係合させ、網面の面直方向にオートグラフ(島津社製)にて引張り速度300mm/分で引張ったときの面直剥離強力を測定した。結果は表1のとおりであった。
【0057】
一方、上記の方法で得られた取付け具を25mmにカットし、網戸用の網(18メッシュ、20メッシュ、24メッシュ、30メッシュ)に手で押し当てたときの挿入のし易さと網面から引き剥がしたときの外し易さを官能評価した結果、取り付けや取り外し時に係合素子に押しやられ目ずれが生じたが、網目に遮られることなく付け外しがし易かった。また、耐久性の評価として網戸の網面に取り付け具を取り付け、1ヶ月放置したが、雨や風による脱落或いは開け閉めによる振動での脱落等は全く生じなかった。
【0058】
比較例1
上記実施例1において基板の表面から突出する雄型係合素子の断面形状が1段構造の鏃からなり、係合素子のステム列が基板上に複数列存在しているテープを成形し。それ以外は実施例1と同様の方法により取付け具を製造した。
【0059】
得られた取り付け具のステム高さ(H)は1.3mm、ステムの高さ方向の係合突起先端部間の距離(Z)は0.5mm、係合突起の突出長(S1)は0.12mm、ステム幅(D1)は0.6mm、さらにステムの列方向長さ(W)は0.3mm、係合素子列方向の係合素子間の距離(S2)は1.0mm、係合素子密度は24個/cm
2で、係合素子列1cm当たりの係合素子本数としては8本/cm、1cm当たりの係合素子列本数は3本/cmである。
【0060】
一方、ループ状係合素子を有する面ファスナーをプラスチック板(厚さ5mm・重さ20g)に両面テープにて貼り付けた状態で網戸用の各種網(18メッシュ、20メッシュ、24メッシュ、30メッシュ)を挟んで、得られた取付け具を係合させ、網面の面直方向にオートグラフ(島津社製)にて引張り速度300mm/分で引張ったときの面直剥離強力を測定した。結果は表1のとおりであった。
【0061】
得られた取付け具を25mmにカットし、網戸用の各種網(18メッシュ、20メッシュ、24メッシュ、30メッシュ)に手で押し当てたときの挿入のし易さと網面から引き剥がしたときの外し易さを官能評価した結果、取り付けや取り外し時に係合素子に押しやられ目ずれが生じたが、網目に遮られることなく付け外しがし易かった。また、耐久性の評価として網戸の網面に取り付け具を取り付け、1ヶ月放置したが、係合素子が1段しかなく係合力が低いため雨、風や振動によって頻繁に脱落した。
【0062】
【表1】
【0063】
以上の結果から、基板の表面から突出する係合素子の係合突起の段数が1段は、網戸の網に極めて取り付け易いが、係合力が弱く機能性物体が脱落し易い。係合突起の段数が2段〜3段のものは高い係合力を発揮し物体が脱落し難く、且つ物体を取り付け易いことが分かる。
【0064】
また、これら取付け具の係合剥離により網戸構成モノフィラメントが傷つけられることもなく、網戸の室内側に存在するガラス戸の開閉にも全く支障がなかった。