(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無効電力変動判定部が、当該電力変換システムが前記電力系統から切り離された単独運転をしていると判定する際の、出力電圧の周波数は、当該電力変換システムが運転の継続を要求される、前記電力系統の上限周波数よりも低い、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換システム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以降、本発明を実施するための形態と、その比較例とを、各図を参照して詳細に説明する。
図1は、分散型電源システム14と、それに含まれる電力変換システム11の構成を示す概略の構成図である。
図1に示すように、分散型電源システム14は、電力変換システム11と、複数の分散型電源121−1〜121−mと、複数のDC/DCコンバータ122−1〜122−mとを含んで構成される。
複数の分散型電源121−1〜121−mは、例えば、太陽光発電パネル・蓄電池・電気自動車・燃料電池車などの直流電力源である。DC/DCコンバータ122−1〜122−mは、例えば、片方向絶縁型DC/DCコンバータ・双方向絶縁型DC/DCコンバータ・非絶縁型DC/DCコンバータなどである。複数の分散型電源121−1〜121−mは、それぞれDC/DCコンバータ122−1〜122−mを介して直流給電点13に接続される。直流給電点13は、電力変換システム11の電力変換器111の直流側端子に接続される。これにより、各分散型電源121−1〜121−mが供給する直流電力は、それぞれDC/DCコンバータ122−1〜122−mによって所定電圧に変換されて、電力変換システム11に供給される。電力変換システム11は、直流電力を交流電力に変換して電力系統17と連系することにより、変換した交流電力を一般家電機器などの不図示の負荷などに供給するものである。
電力変換システム11に接続されるものは、上記した直流電力源に限られず、風力発電機やディーゼル発電機などに代表される交流発電装置と、この交流発電装置が発電した交流電力を直流電力に整流するAC/DCコンバータの組合せであってもよい。
【0019】
電力変換システム11は、電力変換器111と、制御装置112と、電圧検出器113と、電流検出器114と、リレー115とを含んで構成される。
電力変換器111の交流側端子である系統116には、電圧検出器113と電流検出器114とが接続され、リレー115を介して連系点15に接続される。電力変換器111は、直流電力を交流電力に変換するものである。
電圧検出器113は、この電力変換システム11の交流側である系統116の出力電圧を検出して、その出力電圧信号を制御装置112へ伝送する。電流検出器114は、例えばカレントトランスであり、この電力変換システム11の交流側である系統116の出力電流を検出して、その出力電流信号を制御装置112へ伝送する。制御装置112は、伝送された系統116の出力電圧信号と出力電流信号とを演算して、電力変換器111を制御することにより、系統116の出力電圧と出力電流とを制御する。
【0020】
電力変換システム11の交流側端子である系統116は、電力系統17の連系点15に接続されている。連系点15は、例えば、線路のインピーダンスである系統インピーダンス16を介して電力系統17に接続される。この連系点15には、複数台の分散型電源システム14が接続されていてもよい。
負荷18は、例えば電力需要者が有する一般家電機器である。負荷18は、連系点15に接続されて、電力変換システム11および電力系統17から交流電力が供給される。
【0021】
(比較例)
図15は、比較例の電力変換システム11の単独運転検出部21の構成を説明する図である。
図1に示す電力変換システム11と同一の要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
図15に示すように、比較例の電力変換システム11の制御装置112は、例えば、マイクロコンピュータにより構成されたものであり、単独運転検出部21と、出力電流制御部22とを含んで構成される。
単独運転検出部21は、周波数計測部211と、無効電力指令計算部212と、基本波・高調波電圧計算部213と、ステップ状無効電力注入判定部214と、加算器215と、単独運転判定部216とを含んで構成される。単独運転検出部21は、ステップ注入付周波数フィードバック方式の構成であり、無効電力を系統116に注入することにより、自身である電力変換システム11が電力系統17と連系せずに単独運転していることを検出するものである。
制御装置112は、計測した系統116の周波数から所定系統周期内での系統116の周波数偏差を演算すると共に、この演算した系統116の周波数偏差に基づいて系統116に注入すべき無効電力を演算する。制御装置112は更に、演算した無効電力を系統116に注入する一方、計測した系統116の電圧と周波数とから、系統116の周波数偏差が所定系統周期数分にわたり連続して一定以下となる状態が継続し、系統116の周波数に実質変化が無く、かつ、系統116の電圧が所定電圧変動幅を超える変化でもって急変したという条件が成立したか否かを判定する。制御装置112は、この条件が成立したならば、既に注入している無効電力に加えて、追加で無効電力を注入する制御を行う。
制御装置112は、例えばマイクロコンピュータで構成した場合、CPU(Central Processing Unit)・メモリ・インタフェースなどを有する。このメモリには、比較例の単独運転検出方法を実施するためのソフトウェアプログラムが記憶される。CPUは、インタフェースを介して入力される系統116の出力電圧信号や出力電流信号などに基づいて各種演算等を実行し、その実行結果から、インタフェースを介して、リレー115の開閉指令を出力し、電力変換器111に対して電流制御指令値を出力する。
【0022】
周波数計測部211は、電圧検出器113から入力される電圧信号に基づき、系統116の電圧信号の周波数を所定の計測周期単位、例えば5m秒単位で順次計測するものである。なお、電力系統17の系統周波数を50Hz(1系統周期は20m秒)とした場合、周波数計測部211の計測周期単位は、電力系統17の系統周期の1/3以下、例えば、5m秒単位にすることが望ましい。周波数計測部211が計測した周波数信号は、無効電力指令計算部212と単独運転判定部216に入力される。
無効電力指令計算部212は、周波数計測部211から入力される周波数信号から、系統116の周波数偏差を算出し、算出した周波数偏差に応じて系統116に注入する無効電力の指令値を計算するものである。これにより、無効電力指令計算部212は、単独運転時には、周波数偏差に応じて無効電力の指令値を正帰還的に増大させるができる。
【0023】
基本波・高調波電圧計算部213は、電圧検出器113から入力される系統116の電圧信号に基づき、系統116の電圧の基本波と高調波とを計算するものである。計算した基本波と高調波とは、ステップ状無効電力注入判定部214に入力される。
ステップ状無効電力注入判定部214は、系統116の電圧の基本波と高調波とに基づき、系統116の周波数偏差が所定系統周期数分にわたり連続して一定以下となる状態が継続し、系統116の周波数に実質変化が無く、かつ、系統116の電圧が所定電圧変動幅を超える変化でもって急変したときに無効電力を追加注入する制御を行うものである。
加算器215は、無効電力指令計算部212から入力される無効電力の指令値と、ステップ状無効電力注入判定部214から入力される追加無効電力とを加算して、出力電流制御用の無効電力指令値とする。
【0024】
単独運転判定部216は、周波数の変動から単独運転を判定する周波数変動判定部217を備える。周波数変動判定部217は、周波数計測部211から入力される周波数信号から周波数変動を算出し、その周波数変動に基づいて単独運転であるか否かを判定(第2の単独運転判定)するものである。比較例の電力変換システム11においては、電力系統17に接続されている場合には系統116の出力電圧の周波数が変動しないのに対し、単独運転の場合には系統116の出力電圧の周波数が変動する。これにより、単独運転判定部216は、自身が単独運転であるか否かを判定することができる。単独運転判定部216は、自身が単独運転であることを検知すると、リレー115をオフして電力変換器111に停止信号を出力する。
出力電流制御部22は、電流検出器114が検出した系統116の出力電流信号と、電圧検出器113が検出した系統116の出力電圧信号と、加算器215から入力される出力電流制御用の無効電力指令値とに基づき、電力変換器111を制御することにより、系統116に注入する無効電力を制御する。出力電流制御部22は更に、単独運転判定部216から入力される停止信号により、自身の動作を停止させる。
【0025】
図16は、比較例の単独運転判定部216による単独運転判定処理のフローチャートである。
比較例の電力変換システム11が起動すると、単独運転判定部216は、単独運転判定処理を開始する。
ステップS60において、単独運転判定部216は、系統116の周波数の変動を判定する。単独運転判定部216は、周波数の変動有りと判定したならば(Yes)、ステップS61の処理を行い、周波数の変動が無いと判定したならば(No)、ステップS63の処理を行う。
【0026】
ステップS61において、単独運転判定部216は、判定条件が所定期間に亘って継続しているか否かを判断する。単独運転判定部216は、判定条件が所定期間に亘って継続したと判断したならば(Yes)、ステップS62の処理を行い、判定条件が所定期間に亘って継続しなかったと判断したならば(No)、ステップS63の処理を行う。
ステップS62において、単独運転判定部216は、自身が単独運転であると判定し(第2の単独運転判定)、リレー115をオフして電力変換器111に停止信号を出力したのち、
図16の処理を終了する。
ステップS63において、単独運転判定部216は、自身が電力系統17と連系していると判定し、ステップS60の処理に戻る。
【0027】
単独運転移行時には、単独運転検出部21の制御によって、系統116の周波数が変動する。単独運転判定部216は、周波数変動判定部217によって、系統116の周波数変動が所定の条件を満たしたときに単独運転であると判定する。
【0028】
図17は、比較例の単独運転判定動作を示すグラフである。
図17の縦軸は、系統116の周波数変動を示している。
図17の横軸は、時間を示している。
時刻t
40以前において、電力変換システム11は、電力系統17に連系している。このとき、系統116の周波数の偏差は少なく、無効電力指令計算部212が系統116に注入する無効電力は少ない。このとき、系統116に注入される無効電力は、系統116の周波数の偏差を発生させず、代わりに系統116の無効電力を増大させる。
時刻t
40において、電力変換システム11は単独運転状態に移行する。無効電力指令計算部212は、系統116の周波数の偏差に応じた無効電力を注入する。このとき、系統116に注入される無効電力は、系統116の無効電力を増大させず、代わりに系統116の周波数の偏差を発生させる。すなわち、系統116の周波数は、注入された無効電力に応じて変動するので、正帰還的に増大する。
時刻t
41において、周波数変動判定部217は、周波数計測部211が計測した系統116の周波数変動が、閾値f
TH1を超えることを判定する。
時刻t
42において、周波数変動判定部217は、時間t
TH1に亘って系統116の周波数変動が継続したことを判断する。これにより、単独運転判定部216は、単独運転状態であると判定して電力変換システム11を電力系統17から解列し、電力変換器111に停止信号を出力する。
【0029】
ここで、周波数に関する運転継続要求の上限値をf
FRTとする。系統116の周波数変動のみから単独運転を判定する場合には、周波数に関する運転継続要求を満たすために、周波数変動が上限値f
FRTを上回ってから単独運転を判定する必要がある。すなわち、閾値f
TH1を上限値f
FRTよりも大きく設定しなければならない。
【0030】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態における電力変換システム11の単独運転検出部31を示す概略の構成図である。
図15に示す電力変換システム11と同一の要素には、同一符号を付している。
図2に示すように、第1の実施形態における電力変換システム11の制御装置112は、比較例とは異なる単独運転検出部31と、比較例と同様な出力電流制御部22とを含んで構成される。
単独運転検出部31は、比較例とは異なる無効電力計測部317と、単独運転判定部316とを含み、比較例と同様な周波数計測部211と、無効電力指令計算部212と、基本波・高調波電圧計算部213と、ステップ状無効電力注入判定部214と、加算器215とを含んで構成される。
無効電力計測部317は、入力される系統116の出力電圧信号および出力電流信号から、系統116の無効電力を計測するものである。
単独運転判定部316は、減算器315と、比較例とは異なる無効電力変動判定部318とを含んで構成される。減算器315は、無効電力の指令値から無効電力の計測値を減算するものである。無効電力変動判定部318は、入力される系統116の無効電力から、自身である電力変換システム11が電力系統17から切り離された単独運転をしているか否かを判定するものである。
【0031】
図3(a),(b)は、単独運転検出部31による単独運転判定動作を示すグラフである。
図3(a)は、系統116の周波数変動を説明するグラフである。
図3(a)の縦軸は、系統116の出力電圧の周波数を示している。
図3(a)の横軸は、時間を示している。
図3(b)は、無効電力の指令値および計測値の時間変化を説明するグラフである。
図3(b)の縦軸は、無効電力を示している。
図3(b)の横軸は、
図3(a)と共通する時間を示している。グラフの実線は、無効電力の指令値を示している。グラフの破線は、無効電力の計測値を示している。
時刻t
0以前において、電力変換システム11は、電力系統17に連系している。このときは、
図3(a)に示すように、系統116の周波数の変動は少なく、
図3(b)に示すように、無効電力の指令値および計測値の変動も少ない。
時刻t
0において、電力変換システム11は、単独運転に移行する。このとき、単独運転検出部31は、系統116の周波数を変動させるために、無効電力の指令値を出力電流制御部22に出力する。
この無効電力の指令値が入力されると、出力電流制御部22は、電力変換システム11の出力電圧と出力電流との位相差を変化させる。このとき、電力変換システム11は、負荷18が直結しており、負荷18のインピーダンスによって無効電流が決定される。負荷18のインピーダンスが所定値を保つ場合には、出力電流の位相変化に追従して、出力電圧の位相が変化する。その結果、出力電圧のゼロクロス間の周期が変化して、周波数計測部211で計測される周波数が変化する。
【0032】
このように、単独運転状態において、電力変換システム11が出力する無効電力を変化させようとする働きは、電力変換システム11が出力する交流電圧の周波数を変化させる。すなわち、電力変換システム11が出力する無効電力の計測値は、無効電力の指令値に追従しなくなる。
単独運転検出部31は、系統116の周波数の変動が大きくなるにつれて、更に無効電力指令を大きくし、周波数の変動を正帰還的に増大させる。このため、無効電力の指令値と計測値との差異は時間経過とともに拡大する。やがて、無効電力指令が設定された所定の上限値に達すると、系統116の周波数は変動しなくなる。
【0033】
図4(a),(b)は、電力系統17と連系した状態を説明するグラフである。
図4(a)は、電力系統17の周波数が変動した場合の周波数変動を示すグラフである。
図4(a)の縦軸は、系統116の出力電圧の周波数を示している。
図4(a)の横軸は、時間を示している。
図4(b)は、無効電力の指令値および計測値の時間変化を説明する図である。
図4(b)の縦軸は、無効電力を示している。
図4(b)の横軸は、
図4(a)と共通する時間を示している。グラフの実線は、無効電力の指令値を示している。グラフの破線は、系統116の無効電力の計測値を示している。
時刻t
1において、系統116の周波数の変動が開始し、単独運転検出部31はその周波数変動に応じて無効電力の指令値を変動させる。電力系統17に連系している場合、電力変換システム11が出力する無効電力は、負荷18のインピーダンスとは独立している。そのため、電力変換システム11は無効電力制御により指令値に応じた無効電力を出力する。すなわち、系統116の無効電力の計測値は、無効電力の指令値に追従する。無効電力の指令値と、無効電力の計測値との差異は発生しないか、発生したとしても僅かである。
以上をまとめると、電力変換システム11の単独運転時には、無効電力の指令値と計測値との間に差異が発生する。それに対して、電力変換システム11が電力系統17に連系している場合には、電力系統17の周波数が変動しても、無効電力の指令値と計測値との間に差異は発生しないか、発生したとしても僅かである。第1の実施形態の単独運転判定部316は、無効電力の指令値と計測値との差の絶対値を算出して、これが閾値を超えるか否かを判断することにより、単独運転であるか否かを判定している。
【0034】
図5は、第1の実施形態における無効電力判定処理を示すフローチャートである。
第1の実施形態の電力変換システム11が起動すると、単独運転判定部316は、単独運転判定処理(第1の単独運転判定)を開始する。
ステップS10において、単独運転判定部316は、無効電力指令計算部212から無効電力の指令値を取得する。
ステップS11において、単独運転判定部316は、無効電力計測部317から、系統116の無効電力の計測値を取得する。
ステップS12において、単独運転判定部316は、減算器315により、無効電力の指令値と計測値との差の絶対値を算出し、これを無効電力の誤差とする。
ステップS13において、単独運転判定部316は、無効電力の誤差が閾値を超えたか否かを判定(第1の単独運転判定)する。単独運転判定部316は、無効電力の誤差が閾値を超えたと判断したならば(Yes)、ステップS14の処理を行い、無効電力の誤差が閾値を超えなかったと判断したならば(No)、ステップS16の処理を行う。
【0035】
ステップS14において、単独運転判定部316は、判定条件が所定期間に亘って継続しているか否かを判断する。単独運転判定部316は、判定条件が所定期間に亘って継続したならば(Yes)、ステップS15の処理を行い、判定条件が所定期間に亘って継続したならばならば(No)、ステップS16の処理を行う。
ステップS15において、単独運転判定部316は、自身が単独運転であると判定し、リレー115をオフして電力変換器111に停止信号を出力したのち、
図5の処理を終了する。
ステップS16において、単独運転判定部316は、自身が電力系統17と連系していると判定し、ステップS10の処理に戻る。
【0036】
図6(a),(b)は、第1の実施形態における単独運転判定動作を示すグラフである。
図6(a)は、周波数変動を示すグラフである。
図6(a)の縦軸は、系統116の周波数の変動を示している。
図6(a)の横軸は、時間を示している。
図6(b)は、無効電力の誤差を示すグラフである。
図6(b)の縦軸は、無効電力誤差を示している。
図6(b)の横軸は、
図6(a)と共通する時間を示している。
時刻t
10において、電力変換システム11は、単独運転を開始する。
時刻t
10以降、単独運転検出部31が系統116の周波数の変動を正帰還的に増大させるため、無効電力の指令値が増大する。電力変換システム11の単独運転状態において、系統116の無効電力の計測値は、負荷18のインピーダンスによって決定される。通常、単独運転検出に要する時間は、長くても数百ミリ秒である。この短期間に負荷18のインピーダンスが急変することは考えにくく、所定値を保つと考えられる。よって、無効電力の誤差は、正帰還的に増大する。
【0037】
時刻t
11において、無効電力の誤差は、閾値q
TH1を超える。
時刻t
12において、時間t
TH2に亘って、無効電力の誤差が閾値q
TH1を超える。これにより、単独運転判定部316は、自身が単独運転であると判定し、電力変換システム11を電力系統17から解列する。日本では、日本電機工業会規格に単独運転状態を判定するための無効電力指令の上限値が定められている。この上限値から、閾値q
TH1を更に適切に決定することができる。
第1の実施形態の電力変換システム11は、系統116の周波数変動が周波数に関する運転継続要求の上限値f
FRTに達する前でも、系統116の無効電力から単独運転状態であることが判定できる。これにより、比較例よりも周波数変動が小さいうちに、単独運転に移行したことを判定できるので、電力系統17への無用な干渉を低減し、かつ、単独運転の検出時間を短縮できる。
【0038】
単独運転判定部316は、無効電力変動判定部318を備えることにより、系統連系状態であって電力系統17の周波数が変動した場合と、単独運転状態とを明確に区別できる。これにより、単独運転検出機能の信頼性、および、系統事故時運転継続機能の信頼性を向上可能である。
【0039】
(第2の実施形態)
電力系統17に連系しているとき、電力変換システム11は、ステップ状無効電力注入判定部214により追加無効電力が注入され、系統116の無効電力には、所定の偏差が生じる。それに対して単独運転時に電力変換システム11の系統116の無効電力には、偏差が生じなくなる。第2の実施形態は、系統116の無効電力の偏差を監視することにより、単独運転であるか否かを判断するものである。
図7は、第2の実施形態における電力変換システム11の単独運転検出部31を示す概略の構成図である。
図2に示す第1の実施形態の電力変換システム11と同一の要素には、同一の符号を付している。
図7に示すように、第2の実施形態における単独運転検出部31は、第1の実施形態とは異なる単独運転判定部316Aを含み、第1の実施形態と同様な周波数計測部211と、無効電力指令計算部212と、基本波・高調波電圧計算部213と、ステップ状無効電力注入判定部214と、加算器215と、無効電力計測部317とを含んで構成される。
単独運転判定部316Aは、第1の実施形態と同様な減算器315と、第1の実施形態とは異なる無効電力変動判定部318を含み、更に記憶部319を含んで構成される。
【0040】
図8は、第2の実施形態における単独運転判定部316Aによる無効電力変動判定処理を示すフローチャートである。
第1の実施形態の電力変換システム11が起動すると、単独運転判定部316Aは、単独運転判定処理(第1の単独運転判定)を開始する。
ステップS20において、単独運転判定部316Aは、無効電力計測部317から、系統116の無効電力の計測値を取得する。
ステップS21において、単独運転判定部316Aは、記憶部319に、系統116の無効電力の計測値を記憶する。
ステップS22において、単独運転判定部316Aは、減算器315により、無効電力の最新の計測値と、所定時間だけ過去の計測値との差の絶対値を算出し、これを無効電力偏差とする。所定時間だけ過去の計測値は、記憶部319から読み出される。
ステップS23において、単独運転判定部316Aは、無効電力偏差が閾値以下であるか否かを判定する。単独運転判定部316Aは、無効電力偏差が閾値以下ならば(Yes)、ステップS24の処理を行い、無効電力偏差が閾値以下でなかったならば(No)、ステップS26の処理を行う。
【0041】
ステップS24において、単独運転判定部316Aは、判定条件が所定期間に亘って継続しているか否かを判断する。単独運転判定部316Aは、判定条件が所定期間に亘って継続したならば(Yes)、ステップS25の処理を行い、判定条件が所定期間に亘って継続しなかったならば(No)、ステップS26の処理を行う。
ステップS25において、単独運転判定部316Aは、自身が単独運転であると判定し、リレー115をオフして電力変換器111に停止信号を出力したのち、
図8の処理を終了する。
ステップS26において、単独運転判定部316Aは、自身が電力系統17と連系していると判定し、ステップS20の処理に戻る。
【0042】
図9(a),(b)は、第2の実施形態における単独運転判定動作を示すグラフである。
図9(a)は、周波数変動を示すグラフである。
図9(a)の縦軸は、系統116の周波数の変動を示している。
図9(a)の横軸は、時間を示している。
図9(b)は、無効電力の偏差を示すグラフである。
図9(b)の縦軸は、無効電力誤差を示している。
図9(b)の横軸は、
図9(a)と共通する時間を示している。
時刻t
20において、電力変換システム11は、単独運転を開始する。
前記した
図3(b)で示すように、単独運転状態において系統116の無効電力の計測値は、ほとんど変化しない。そのため、時刻t
20から時刻t
21まで、
図9(b)に示す無効電力偏差は、ほぼ0のままである。すなわち、無効電力偏差は、閾値q
TH2を超えない。
時刻t
22において、この判定条件が時刻t
21から時間t
TH2に亘って継続する。単独運転判定部316Aは、自身が単独運転であると判定し、電力変換システム11を電力系統17から解列する。
第2の実施形態の電力変換システム11は、系統116の周波数変動が周波数に関する運転継続要求の上限値f
FRTに達する前でも、無効電力から単独運転状態であることが判定できる。これにより、比較例よりも周波数変動が小さいうちに、単独運転に移行したことを判定できるので、電力系統17への無用な干渉を低減し、かつ、単独運転の検出時間を短縮できる。
単独運転判定部316Aは、無効電力変動判定部318と記憶部319とを備えることにより、系統連系状態であって電力系統17の周波数が変動した場合と、単独運転状態とを明確に区別できる。これにより、単独運転検出機能の信頼性、および、系統事故時運転継続機能の信頼性を向上可能である。
【0043】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の単独運転判定部316Bは、無効電力に加えて周波数変動からも単独運転を判定するようにしている。これにより、比較例や第1の実施形態や第2の実施形態に比べて、電力系統17への無用な干渉を低減し、かつ単独運転の検出時間を短縮できる。
図10は、第3の実施形態における単独運転検出部31を示す概略の構成図である。
図2に示す第1の実施形態の単独運転検出部31と同一の要素には、同一の符号を付している。
図10に示すように、第3の実施形態における単独運転検出部31は、第1の実施形態とは異なる単独運転判定部316Bを含み、第1の実施形態と同様な周波数計測部211と、無効電力指令計算部212と、基本波・高調波電圧計算部213と、ステップ状無効電力注入判定部214と、加算器215と、無効電力計測部317とを含んで構成される。
単独運転判定部316Bは、第1の実施形態と同様な無効電力変動判定部318を含み、更に比較例と同様な周波数変動判定部217を含んで構成される。第3の実施形態の単独運転判定部316Bは、無効電力と周波数とから、自身が単独運転であるか否かを判定するものである。
【0044】
図11は、第3の実施形態における単独運転判定部316Bの単独運転判定処理を示すフローチャートである。
第3の実施形態の電力変換システム11が起動すると、単独運転判定部316Bは、単独運転判定処理を開始する。
ステップS30において、単独運転判定部316Bは、周波数変動判定部217により、系統116の周波数の変動を判定する。単独運転判定部316Bは、周波数の変動有りと判定したならば(Yes)、ステップS31の処理を行い、周波数の変動が無いと判定したならば(No)、ステップS34の処理を行う。
【0045】
ステップS31において、単独運転判定部316Bは、無効電力変動判定部318により、無効電力の誤差を判定する。単独運転判定部316Bは、無効電力の誤差有りと判定したならば(Yes)、ステップS32の処理を行い、無効電力の誤差が無いと判定したならば(No)、ステップS34の処理を行う。
【0046】
ステップS32において、単独運転判定部316Bは、判定条件が所定期間に亘って継続しているか否かを判断する。単独運転判定部316Bは、判定条件が所定期間に亘って継続したならば(Yes)、ステップS33の処理を行い、判定条件が所定期間に亘って継続しなかったならば(No)、ステップS34の処理を行う。
ステップS33において、単独運転判定部316Bは、自身が単独運転であると判定し、リレー115をオフして電力変換器111に停止信号を出力したのち、
図11の処理を終了する。
ステップS34において、単独運転判定部316Bは、自身が電力系統17と連系していると判定し、ステップS30の処理に戻る。
【0047】
図12(a),(b)は、第3の実施形態における単独運転判定動作を示すグラフである。
図12(a)は、周波数変動を示すグラフである。
図12(a)の縦軸は、周波数変動を示している。
図12(a)の横軸は、時間を示している。
図12(b)は、無効電力の誤差を示すグラフである。
図12(b)の縦軸は、無効電力誤差を示している。
図12(b)の横軸は、
図12(a)と共通する時間を示している。
時刻t
30において、電力変換システム11は単独運転状態に移行する。これ以降、無効電力指令計算部212により、系統116の周波数の変動が次第に増大する。
時刻t
31において、無効電力変動判定部318は、算出した系統116の無効電力誤差が閾値q
TH1を超えることを判定する。
時刻t
32において、周波数変動判定部217は、周波数計測部211が計測した系統116の周波数変動が、閾値f
TH2を超えることを判定する。
時刻t
33において、周波数変動判定部217は、時間t
TH2に亘って系統116の周波数変動と無効電力誤差とが継続したことを判断する。これにより、単独運転判定部316Bは、単独運転状態であると判定して電力変換システム11を電力系統17から解列し、電力変換器111に停止信号を出力する。
単独運転判定部316Bは、周波数変動と無効電力とから単独運転を判定するので、系統116の周波数に関する運転継続要求の上限値f
FRTよりも閾値f
TH2は、小さく設定される。これにより、電力変換システム11は、単独運転の検出時間を短縮できる。単独運転判定部316Bは更に、無効電力の誤差に加えて、周波数変動によって単独運転を判定するので、負荷18の変動による無効電力の変動によって、誤って単独運転であることを判定することがなくなる。
【0048】
図13は、第3の実施形態の第1変形例における単独運転判定部316Bの単独運転判定処理を示すフローチャートである。
第3の実施形態の第1変形例の電力変換システム11が起動すると、単独運転判定部316Bは、単独運転判定処理を開始する。
【0049】
ステップS40において、単独運転判定部316Bは、無効電力変動判定部318により、無効電力の誤差を判定する。単独運転判定部316Bは、無効電力の誤差有りと判定したならば(Yes)、ステップS41の処理を行い、無効電力の誤差が無いと判定したならば(No)、ステップS44の処理を行う。
ステップS41において、単独運転判定部316Bは、周波数変動判定部217により、系統116の周波数の変動を判定する。単独運転判定部316Bは、周波数の変動有りと判定したならば(Yes)、ステップS42の処理を行い、周波数の変動が無いと判定したならば(No)、ステップS44の処理を行う。
【0050】
ステップS42〜S44の各処理は、
図11に示すステップS32〜S34の各処理と同様である。ステップS44において、単独運転判定部316Bは、自身が電力系統17と連系していると判定し、ステップS40の処理に戻る。
単独運転判定部316Bは、無効電力の誤差の判定と、周波数変動の判定の順番を入れ替えてもよい。これにより、処理の自由度を向上させることができる。
【0051】
図14は、第3の実施形態の第2変形例における単独運転判定部316Bの単独運転判定処理を示すフローチャートである。
第3の実施形態の第2変形例の電力変換システム11が起動すると、単独運転判定部316Bは、単独運転判定処理を開始する。
処理を開始すると、単独運転判定部316Bは、ステップS50,S51と、ステップS52,S53とを並行に処理する。
ステップS50において、単独運転判定部316Bは、無効電力変動判定部318により、無効電力の誤差を判定する。単独運転判定部316Bは、無効電力の誤差有りと判定したならば(Yes)、ステップS51の処理を行い、無効電力の誤差が無いと判定したならば(No)、ステップS54の処理を行う。
ステップS51において、単独運転判定部316Bは、系統116の無効電力の誤差有りと判定し(第1の単独運転判定)、ステップS54の処理を行う。
ステップS52において、単独運転判定部316Bは、周波数変動判定部217により、系統116の周波数の変動を判定する。単独運転判定部316Bは、周波数の変動有りと判定したならば(Yes)、ステップS53の処理を行い、周波数の変動が無いと判定したならば(No)、ステップS54の処理を行う。
ステップS53において、単独運転判定部316Bは、系統116の周波数の変動有りと判定し(第2の単独運転判定)、ステップS54の処理を行う。
ステップS54において、単独運転判定部316Bは、系統116の無効電力の誤差および周波数の変動が有るか否かを判定する。すなわち、単独運転判定部316Bは、第1の単独運転判定および第2の単独運転判定の論理積を判定する。単独運転判定部316Bは、当該判断条件が成立したならば(Yes)、ステップS55の処理を行い、当該判断条件が成立しなかったならば(No)、ステップS57の処理を行う。
【0052】
ステップS55において、単独運転判定部316Bは、判定条件が所定期間に亘って継続しているか否かを判断する。単独運転判定部316Bは、判定条件が所定期間に亘って継続したならば(Yes)、ステップS56の処理を行い、判定条件が所定期間に亘って継続しなかったならば(No)、ステップS57の処理を行う。
ステップS56において、単独運転判定部316Bは、自身が単独運転であると判定し、リレー115をオフして電力変換器111に停止信号を出力したのち、
図14の処理を終了する。
ステップS57において、単独運転判定部316Bは、自身が電力系統17と連系していると判定し、ステップS50,S52の並行処理に戻る。
【0053】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0054】
上記の各構成、処理部などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0055】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
本発明の変形例として、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
(a) 第1〜第3の実施形態において無効電力の指令値や無効電力の計測値は、それぞれ移動平均や積分計算等の数学的処理を行った値に置き換えて計算してもよい。これにより、単独運転の検出精度を向上可能である。
(b) 第1、第2の実施形態は、無効電力の変動を利用して単独運転を判定している。しかし、これに限られず、電力変換システム11は、無効電力の変動とともに変動する他の測定要素から単独運転を判定してもよく、例えば、無効電力のかわりに、無効電流や力率や皮相電力から単独運転を判定してもよい。これにより、電力変換システム11の設計の自由度を向上させることができる。
(c) 第3の実施形態の単独運転の判定方法に限られず、第2の実施形態における系統116の無効電力の偏差と、系統116の周波数の変動とを組み合わせて単独運転を判定してもよい。これにより、電力変換システム11の設計の自由度を向上させることができる。