特許第6134977号(P6134977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134977
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/60 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   A62C35/60
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-93923(P2013-93923)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-213052(P2014-213052A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】岡本 尚
(72)【発明者】
【氏名】大前 信弘
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−158286(JP,A)
【文献】 特開2010−209671(JP,A)
【文献】 特開2005−147557(JP,A)
【文献】 特開2003−010356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側配管の下流側に、消火ヘッドを備えた二次側配管を連通接続してある消火設備であって、
前記二次側配管は、主管部と、前記主管部の先端側から基端側にかけて連通接続する連通管部とを備えたループ配管として構成してあり、
ループ配管内の消火水の温度を検出自在な水温センサと、
前記水温センサによる前記消火水の検出温度が、設定凍結警戒温度以下の時、前記ループ配管内の前記消火水を循環させる水循環手段が備えてあり、
前記水循環手段は、前記ループ配管に備えた逆止弁と、前記ループ配管における前記逆止弁の設置部を挟んだ上流部と下流部とにわたって設けられたバイパス配管と、前記バイパス配管に設けられた循環用ポンプとを備えて構成してある消火設備。
【請求項2】
前記消火ヘッドへの前記消火水の送水に伴って、前記循環用ポンプへの作用水圧を制限する水圧制限手段が、前記バイパス配管に設けてある請求項に記載の消火設備。
【請求項3】
前記一次側配管と前記二次側配管との間に、流水検知装置が介在させてあり、前記水循環手段は、前記流水検知装置の下流側の近傍に配置してある請求項1又は2に記載の消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次側配管の下流側に、消火ヘッドを備えた二次側配管を連通接続してある消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の消火設備としては、二次側配管を循環経路で構成し、消火ヘッドを設置してある領域の温度を検出する温度センサーを備え、温度センサーの検出値が所定温度以下になると、循環経路の水を循環させる水循環手段を備え、二次側配管内の水が凍結する前に、水循環手段で水を循環させ、凍結防止を図れるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−158286号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の消火設備によれば、消火ヘッドの設置領域の温度(温度センサーの検出値)が、例えば、−5℃に下がったら、水循環手段を作動制御させるように構成されている。即ち、消火ヘッドの設置領域の例えば気温を基にして水循環手段の作動制御が実施されるものである。
しかしながら、検出された気温が−5℃であったにしても、空気と水との比熱が異なっていることや、気温と水温とが平衡状態となるまでに時間がかかること等を考慮すると、必ずしも、気温と水温とが同様の変化を示す場合ばかりではない。
つまり、一例として、急激に気温が低下し、気温が−5℃よりも低い値(例えば、−10℃)になったような場合、二次側配管内の水は、必ずしも0℃以下になっているとは限らず、気温との平衡状態に達していない場合は凍らないこともある。
このように、従来の消火設備によれば、水の凍結防止を図る上での水循環手段の制御精度が低くなる虞がある。
この問題点を解消して、確実に凍結防止を図れるように水循環手段を制御するには、温度制御上の安全率を高く見て、結果的には、循環経路の水が凍結するより相当前の時点から水循環手段を作動させておく必要がある。
その結果、水循環手段の運転時間が長くなり、機器の損耗が激しくなることに加えて、無駄な動力費がかかることになり、経済性が低い問題点があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、水の凍結防止制御を高精度で且つ経済的に実施できる消火設備を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、一次側配管の下流側に、消火ヘッドを備えた二次側配管を連通接続してある消火設備であって、前記二次側配管は、主管部と、前記主管部の先端側から基端側にかけて連通接続する連通管部とを備えたループ配管として構成してあり、ループ配管内の消火水の温度を検出自在な水温センサと、前記水温センサによる前記消火水の検出温度が、設定凍結警戒温度以下の時、前記ループ配管内の前記消火水を循環させる水循環手段が備えてあり、
前記水循環手段は、前記ループ配管に備えた逆止弁と、前記ループ配管における前記逆止弁の設置部を挟んだ上流部と下流部とにわたって設けられたバイパス配管と、前記バイパス配管に設けられた循環用ポンプとを備えて構成してあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、水温センサによって検出したループ配管内の消火水の検出温度を基にして水循環手段を作動させる凍結防止運転を実施できるから、消火水の温度を直接的に凍結防止制御に反映させることができ、より好ましいタイミングで消火水を循環させることが可能となる。
従って、水循環手段の制御精度が向上し、無駄の少ない凍結防止運転によって、確実に且つ経済的に二次側配管内の水の凍結防止を図れるようになる。
【0008】
【0009】
さらに、本発明の第1の特徴構成であれば、前記凍結防止運転の際には、バイパス配管の循環用ポンプを駆動させるだけで、消火水をループ配管内で所定の流れ方向に沿って循環させることができながら、火災時に一次側配管から消火ヘッドへ消火水が送水される消火運転の際には、その流れを、バイパス配管や循環用ポンプが阻害することがなく、スムーズに消火運転を実施できる。
また、バイパス配管や循環用ポンプや逆止弁を、ユニット化することもでき、その場合は、消火設備に簡単に組み込むことができ、良好な施工性が得られる。
【0010】
本発明の第の特徴構成は、前記消火ヘッドへの前記消火水の送水に伴って、前記循環用ポンプへの作用水圧を制限する水圧制限手段が、前記バイパス配管に設けてあるところにある。
【0011】
本発明の第の特徴構成によれば、前記消火運転に伴って二次側配管の水圧が上昇しても、水圧制限手段によって循環用ポンプに高圧が作用するのを防止できる。
従って、高圧に伴う循環用ポンプの作動不良や、循環用ポンプの水漏れ等を未然に防止することができる。
【0012】
本発明の第の特徴構成は、前記一次側配管と前記二次側配管との間に、流水検知装置が介在させてあり、前記水循環手段は、前記流水検知装置の下流側の近傍に配置してあるところにある。
【0013】
流水検知装置は、メンテナンスを必要とする関係上、建物のシャフト部等、メンテナンス作業を実施しやすい個所に設置されていることが多い。
従って、本発明の第の特徴構成によれば、水循環手段を、前記流水検知装置の下流側近傍に配置してあることによって、流水検知装置と同様に、水循環手段に対するメンテナンス作業をも実施し易くなる。
その結果、水循環手段の維持管理性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】消火設備の設置状況を示す模式図
図2】別実施形態の消火設備を示す模式図
図3】別実施形態の消火設備を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の消火設備の一実施形態を示すもので、本実施形態においては、消火設備Fは、『閉鎖型の湿式スプリンクラー設備』を例に挙げて説明しており、建物内に設定された複数の消火領域Kのそれぞれに、複数のスプリンクラーヘッド(消火ヘッドの一例)Sを設け、火災時に対応するスプリンクラーヘッドSから水(消火水の一例)wが散水されるように構成されている。
尚、消火領域Kは、当該実施形態においては、各階層毎にそれぞれ設けてある。また、同一階層に、複数の消火領域Kが設けられることもある。
【0016】
消火設備Fは、一次側配管1の下流側に、流水検知装置2、及び、前記複数のスプリンクラーヘッドSを備えた二次側配管3を直列状態に連通接続して構成してある。
【0017】
一次側配管1は、貯水槽4から各二次側配管3に至って設置してあり、配管経路に設けられた送水ポンプP1によって、貯水槽4の水wを各二次側配管3へ送水できるように構成されている。
【0018】
流水検知装置2は、火災等でスプリンクラーヘッドSが作動することに伴う配管内の水の流れを検出することができ、その検出結果を、図示しない送水ポンプ制御装置へ電気信号として送信するように構成されている。
送水ポンプ制御装置は、流水検知装置2からの電気信号を受けると、前記送水ポンプP1を駆動させ、スプリンクラーヘッドSからの散水を継続させるように構成されている。また、合わせて、警報信号を発するようにしてもよい。
【0019】
二次側配管3は、主管部R1と、主管部R1の先端側から基端側にかけて連通接続する連通管部R2とを備えたループ配管Rとして構成してあり、主管部R1に備えた複数の枝管6の先端に、それぞれスプリンクラーヘッドSが取り付けられている。
尚、枝管6は、その外周部を保温材hによって包み込む状態に被覆してあり、枝管6内で水wが凍結するのを防げるように構成されている。
【0020】
一方、ループ配管Rにおいては、ループ配管R内の水wを循環させることで凍結防止を図れるように構成してあり、ループ配管R内の水wの温度を検出自在な水温センサ7と、水温センサ7による水wの検出温度が、設定凍結警戒温度以下の時、ループ配管R内の水wを循環させる水循環手段8とが備えてある。
【0021】
水温センサ7は、ループ配管R内のどの位置に設けてあってもよいが、当該実施形態においては、主管部R1に設けてある。
また、水温センサ7の検出結果は、循環用ポンプ制御装置5へ電気信号として送信されるようになっている。
【0022】
水循環手段8のユニットYは、主管部R1の基端側部分の一部に取り付けられている。
ユニットYは、主管部R1の一部となる本体部8Aと、本体部8Aに並列に連通接続されたバイパス配管8Bとを備えた環状配管部材で構成されている。また、ユニットYは、流水検知装置2の下流側の近傍に配置してあり、例えば、建物のシャフト部やパイプスペース等に、流水検知装置2と共にユニットYも設けることができ、メンテナンス等の作業を効率的に実施することができる。
【0023】
本体部8Aには、主管部R1の基端側から先端側への流れを許容し、反対側の流れを阻止する逆止弁9が取り付けられている。尚、同様の逆止弁11は、連通管部R2にも設置されている。
バイパス配管8Bには、経路の中間部に循環用ポンプP2が設けてある。また、バイパス配管8Bにおける循環用ポンプP2の経路上流側には、定流量弁(水圧制限手段の一例)10が設けられている。
【0024】
前記循環用ポンプP2は、水温センサ7の検出温度が、設定凍結警戒温度(例えば、1℃)以下の時に駆動を開始するように循環用ポンプ制御装置5によって制御されている。
従って、循環用ポンプP2が設けられたバイパス配管8Bから主管部R1を経て、主管部R1の先端部から連通管部R2を通過して、主管部R1の基端部、及び、バイパス配管8Bに戻る循環経路で水を循環させ、凍結防止を図ることができる(図1の矢印参照)。
この循環運転時には、本体部8Aの逆止弁9、及び、連通管部R2の逆止弁11によって水の流れが一方向に規制されている。即ち、循環用ポンプP2で送る水wが、バイパス配管8Bと本体部8Aとの間でショートループするのを、逆止弁9で阻止することで、主管部R1と連通管部R2とにわたって循環させることができる。
【0025】
また、循環用ポンプP2による循環運転時の流量は、水の凍結防止のために移動させるだけのものであるから少ない量で十分であり、前記定流量弁10の作用によって、循環運転時の流量を低流量に設定することができる。
【0026】
当該消火設備Fによれば、ループ配管R内の水の検出温度を基にして水循環手段8を作動させる凍結防止運転を実施できるから、水循環手段8の制御精度が向上し、無駄の少ない凍結防止運転によって、確実に且つ経済的に二次側配管3内の水の凍結防止を図れるようになる。
また、送水ポンプPからの送水による消火運転時には、バイパス配管8Bや循環用ポンプP2がその流れを阻害することがなく、スムーズに消火運転を実施できる。
また、水循環手段8をユニット化してあると共に、流水検知装置2の下流側近傍に設けてあるから、効率よくメンテナンス作業を実施することができ、消火設備Fの維持管理性の向上を図ることができる。
【0027】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0028】
〈1〉 消火設備Fの設置対象は、先の実施形態で説明した複数層を備えた建物に限るものではなく、例えば、単層の建物であってもよく、また、一つの階層に、単独の消火領域Kを備えたもの以外にも、複数の消火領域Kを備えたものであってもよい。
【0029】
〈2〉 水循環手段8は、先の実施形態で説明したユニットYとして構成されたものに限るものではなく、各構成をそれぞれループ配管Rに組み込んで形成してあってもよい。
また、水循環手段8の構成は、主管部R1に設けることに限らず、連通管部R2に設けてあってもよい(図2参照)。
更には、循環用ポンプP2を、ループ配管Rに並列するバイパス配管8Bに設けてある構成に替えて、図2に示すように、ループ配管Rの連通管部R2に直接的に設けるものであってもよい。
また、逆止弁9,11は、その何れも、又は、何れか一方を設けない構成を採用するものであってもよい。
【0030】
〈3〉 水圧制限手段10は、先の実施形態で説明した循環用ポンプP2の上流側のみに設けることに限らず、図3に示すように、下流側にも設けてあってもよく、送水ポンプP1によってスプリンクラーヘッドSへ大量の水が送水される場合であっても、循環用ポンプP2に高圧が作用するのを防止することができ、高圧に伴う循環用ポンプの作動不良や、循環用ポンプの水漏れ等を未然に防止することができる。
【0031】
〈4〉 水温センサ7は、先の実施形態で説明した主管部R1に備えたものに限るものではなく、例えば、ループ配管Rにおける主管部R1とは別の位置に設けてあってもよく、要するに、ループ配管R内の水の温度を検出できる位置であればよい。
尚、ループ配管Rにおいて、予め、水温が低下しやすい個所が特定できる場合には、その個所に水温センサ7を設置しておくのが好ましい。
【0032】
〈5〉 消火ヘッドSは、先の実施形態で説明したスプリンクラーヘッドに限るものではなく、例えば、泡ヘッドであってもよい。
【0033】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 一次側配管
2 流水検知装置
3 二次側配管
7 水温センサ
8 水循環手段
8B バイパス配管
9 逆止弁
10 定流量弁(水圧制限手段の一例)
P2 循環用ポンプ
R ループ配管
R1 主管部
R2 連通管部
S スプリンクラーヘッド(消火ヘッドの一例)
w 水(消火水の一例)
図1
図2
図3