特許第6134984号(P6134984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134984
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】不織布を有するインプラント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20170522BHJP
   A61F 2/90 20130101ALI20170522BHJP
【FI】
   A61F2/07
   A61F2/90
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-554821(P2013-554821)
(86)(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公表番号】特表2014-511234(P2014-511234A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】EP2012000841
(87)【国際公開番号】WO2012113581
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2015年2月24日
(31)【優先権主張番号】102011012501.9
(32)【優先日】2011年2月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508140512
【氏名又は名称】フェノックス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PHENOX GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ハネス,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】モンスタット,ヘルマン
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−507278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/06−2/07
A61F 2/90
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置されるべき血管内に血管内法によって植え込まれる、血管奇形の処置のためのメンブランインプラントであって、該メンブランインプラントが、
拡張可能なステント(4)及び、
前記ステント(4)に結合されたメンブラン(2,3,5,11)を有してなり、
前記メンブラン(2,3,5,11)が、
(i) 前記ステントのメッシュを少なくともその中央領域において覆い、
(ii) プラスチック原繊維を含む不織布の形態で与えられ、
(iii) 前記ステント(4)との結合を形成し、
(iv) 少なくともその一部分は、多孔質構造を有し、
(v) 前記血管の壁に面する外層を有し、前記外層が、前記ステントが前記血管内で拡張したときに圧縮されるようなスポンジ状構造を有し、
(vi) 実質的に水密で平滑な構造の内層(3)を有する、
ことを特徴とするメンブランインプラント。
【請求項2】
前記メンブラン(2,3,5,11)が、多層構成であることを特徴とする請求項1に記載のメンブランインプラント。
【請求項3】
ポリカーボネートウレタンの前記メンブラン(2,3,5,11)を有することを特徴とする請求項1に記載のメンブランインプラント。
【請求項4】
前記メンブラン(2,3,5,11)が前記ステント(4)のウエブを全側面で包埋することを特徴とする請求項1に記載のメンブランインプラント。
【請求項5】
前記外層が10μmと400μmの間の層厚を有することを特徴とする請求項1に記載のメンブランインプラント。
【請求項6】
前記外層が、前記メンブラン内に、径が1μmと100μmの間の範囲にある細孔を有することを特徴とする請求項1に記載のメンブランインプラント。
【請求項7】
前記ステント(4)が形状記憶材料でつくられた自己拡張ステントであることを特徴とする請求項1に記載のメンブランインプラント。
【請求項8】
前記ステントがニチノールまたは三元ニッケル−チタン合金からなることを特徴とする請求項に記載のメンブランインプラント。
【請求項9】
前記メンブラン(2,3,5,11)が少なくともその外層(2)に医薬物質を収容することを特徴とする請求項1に記載のメンブランインプラント。
【請求項10】
前記医薬物質が抗炎症効果または抗狭窄効果を有することを特徴とする請求項に記載のメンブランインプラント。
【請求項11】
前記メンブラン(2,3,5,11)がX線不透過性造影剤を収容することを特徴とする請求項1に記載のメンブランインプラント。
【請求項12】
前記ステント(4)の少なくとも外側に密着促進層が設けられることを特徴とする請求項1に記載のメンブランインプラント。
【請求項13】
前記細孔の径が10μmと50μmの間の範囲にあることを特徴とする請求項に記載のメンブランインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血管奇形の処置のためのメンブランインプラントに関し、インプラントは拡張可能なステント及びステントに結合されたメンブランを有し、メンブランは少なくとも中央領域においてステントのメッシュを覆う。メンブランインプラントは、処置されるべき患者の血管内への血管内法による埋込が目的とされる。
【背景技術】
【0002】
通常は非常に小さい領域に局限されている、特に動脈の、血管奇形の処置のため、機械的、熱的、化学的、電気的または薬理的な性質の局所的効果を排他的にまたは好ましくは発揮する、多くの機器が開発されている。これらの処置方法は主に、処置機器がカテーテルによって配置部位に案内されてそこに施される手段による、血管内手法に基づく。
【0003】
特に血管の硬化性狭窄との関係で、また動脈瘤またはその他の動静脈奇形を埋めるためにも、普通に用いられる処置形態は、狭窄部を拡張するためまたは奇形を埋めるために用いられるステントの配置である。複数のステントタイプが開発され、用いられている。
【0004】
基本的に2つのステントタイプがある。一方に、ほとんどの場合、医療目的に適する鋼でつくられ、バルーンカテーテルによって配置部位に輸送されて、そこで水圧により膨らまされる、バルーン膨張性ステントがある。他方では、自己拡張性材料、例えばニチノールでつくられ、緊縮形態でカテーテルによって配置部位に進められ、そこで解放されて、意図されたような拡張形状を解放状態においてとる、ステントが用いられる。いずれのステントタイプも、特に抗炎症効果または抗狭窄効果を有する、薬剤と組み合わせることができる。
【0005】
特に血管奇形を埋めるに役立つステントの一形態はメンブランを備えるステントであり、このステントは血管から奇形への血液の進入を妨げるかまたは阻止さえもする。動脈瘤またはシャントの場合、このステントは一般にその場所に、動脈瘤またはシャントを閉塞する、血塊の形成をおこさせる。そのようなメンブランインプラントは、例えば特許文献1に説明されている。
【0006】
既に上述したように、動静脈の奇形及び狭窄の処置のためのステント及びその他のインプラントは薬剤と、そのようにすればそれらの物質の薬理特性の結果としてインプラントの純機械的効果を補助するため、組み合わされることが多い。特に、パクリタキセル及びラパマイシンのような増殖抑制物質を含むコーティングが有効であることが分かっている。特に再狭窄の発生を防止するため、血管内ステントとともに用いるための多くのその他の成分が発表されている。再狭窄はステントの植込後の初めの数週間内におこることが最も多く、ステント植込プロセス中に血管に生じた損傷によることが多い。
【0007】
薬理物質によるステント及びその他のインプラントのコーティングは、特にステント表面上への活性薬剤の固着及び有意な時間にわたる活性薬剤の一様な投与に関して、大きな問題がある。所望の長さの時間にわたって低く一定の有効濃度が利用できることが重要である。活性物質は極めて効果的な薬剤であるから、薬剤投与ピークは回避されなければならず、投与自体は所望の長さの時間に限定されるべきである。従来のステント構造及びメンブランを採用すると、この要件は達成困難である。
【0008】
メンブラン被覆インプラントは薬剤でコーティングしなければならないとは限らない。奇形を閉塞するには、処置されるべき奇形を血液循環系から隔離すれば通常は十分である。この目的のため、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリアミドまたはポリオレフィンでつくられた様々なプラスチックメンブランが開発された。しかし、この種のメンブランは、拡張するステントによって血管壁に事実上機械的に保持されるが、メンブランを運ぶステントへの取付けは容易ではないという欠点を有する。ステント構造自体への結合が望ましいであろう。別の望ましい特徴は、拡張時にステントによって血管壁にかけられる圧力の、この態様において外傷のリスクが最小限に抑えられ得るような、適切な分散を可能にする構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2010/006777A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、ステントとの一体結合の実現を可能にするメンブランインプラントであって、メンブランが、血管壁とステントの間に配置される「クッション」としても、血管奇形を閉塞するために立てられたバリアとしても、機能するに適する、メンブランインプラントを提供することにある。さらに、薬剤または医薬物質の収容及び近隣の血管壁への所望の長さの時間にわたる薬剤または医薬物質の一様な投与を可能にするに適するように構成されたメンブランを提供することも望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的のため、メンブランインプラントは、プラスチック原繊維からなる不織布でつくられたメンブランを備え、メンブランはステントと一体結合され、少なくとも一部分は、多孔構造である。多孔構造により、メンブランは薬剤を収容し、それらの医薬物質を生理学的条件の下で周囲の血管壁に投与することができる。
【0012】
本発明にしたがうメンブランインプラントのメンブランはプラスチック繊維またはプラスチック原繊維からなる不織布であり、ステント構造に直接に取り付けられる。一般に、ステント構造自体は、例えば適する溶液または乳液を用いる浸漬コーティングまたはスプレイコーティングにより、ステント上に不織布の原繊維または遷移を被着するために用いることができる。この目的のため、繊維は整列態様または非整列態様で被着させることができる。被着のタイプは、また繊維寸法及び層厚も、多孔度に影響する。
【0013】
ステント上のメンブランは不織布のエレクトロスピニングによってつくられることが好ましい。電流の印加により、不織布の原繊維または繊維がポリマー溶液から分離され、基板上に被着される。そのような被着は繊維を膠着させて不織布にする。一般に、原繊維は100nmと1000nmの間の範囲の直径を有する。エレクトロスピニングによってつくられたメンブランインプラントは、ステント枠との結合を容易に形成し、この態様においてステント枠を包埋するに適する、非常に薄く、一様に形成された、メンブランを有する。このメンブランは、強く固着し、機械的応力に耐え、そこから伝搬するクラックを生じさせるような開口をつくらずに、機械的に容易に穿孔することができる。プロセスパラメータを適切であるように選ぶことにより、原繊維の太さ及び長さを、また多孔度も、制御することができる。
【0014】
メンブラン材料として、そのような用途に対して是認されているいずれの生体適合材料も、例えば、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレンまたは同様な材料を、用いることができる。ポリウレタン、中でもポリカーボネートウレタンとして知られるコポリマーが特に好ましい。メンブランの作製に関し、またこの目的に適する材料に関しては、国際公開第2008/049386号パンフレット、独国特許発明第2806030号明細書及びこれらの明細書に挙げられている文献を参照されたい。
【0015】
本発明にしたがって用いられるメンブランは少なくとも一部分は多孔質である。本文脈において少なくとも一部分は多孔質であるとは、血管壁に面するメンブラン側(外側)が細孔を有し、血管に面するメンブラン側(内側)が実質的に水密であることを意味する。
【0016】
本発明で提案されるようなメンブランは一般に、径が1〜100μmの、特に10μmと50μmの間の範囲の、細孔を有する。原繊維の直径は0.5μmと100μmの間の範囲にあり、原繊維の長さは10μmと1mmの間である。
【0017】
血管の寸法に依存して、約20〜50μmの細孔径が内皮細胞の進界成長に関して特に有利であることが分かっている。
【0018】
メンブランは単層からなることができる。すなわち、メンブランは単一作業サイクルでステント構造に施すことができる。一般に、メンブランは数層、特に2層または3層からなるように構成されるであろう。メンブランの内層は上述した実質的に水密の層とすることができる。他方で、血管壁に面するメンブランの外層は、適するキャリア基板に活性薬剤を収容し、細孔を通して血管壁に薬剤を投与することができるように、多孔質またはスポンジ状の構造である。活性薬剤は浸漬または吹付けによって細孔内に導入することができる。緻密なファイバコンパウンドの中間層を設ければ、メンブラン強度が高められることになろう。
【0019】
個々の層が異なる方法でつくられる、例えば、内層がエレクトロスピニングにより、第2層がスプレイコーティングにより、第3層がエレクトロスピニングによりつくられる、多層実施形態も提供することができる。このようにすれば、相異なる方法が提供する利点を、特に多孔度、強度または不浸透性に関する最適結果の達成に関して、利用することができる。
【0020】
活性薬剤は、一層系または多層系の層マトリックス内に、すなわち内層にも、導入することもできる。薬剤は次いで、マトリックスを通る拡散により、あるいはポリマーの分解または浸蝕の結果として、放出されるであろう。
【0021】
X線不透過性物質も層系に組み込むことができ、そのような物質はインプラントの配置または制御に有用である。X線不透過性物質は、例えば、硫酸バリウムのような重金属の塩またはヨウ素化合物とすることが、X線写真検査目的のための造影剤として普通に用いられているから、できる。
【0022】
本発明のメンブランインプラントが、例えば動脈瘤を埋めるため、血流に影響を与えることが目的とされる場合、ほとんどの場合は薄いメンブランで十分であろう。このメンブランの内側は実質的に水密の特性を有する。この場合も、外側は内皮細胞の進界成長を補助するために多孔質であるように構成される。
【0023】
しかし、製造の観点からは、多層メンブランを、内層及び外層がともに、不浸透性、多孔度または強度に関して同等であるように、構成することが通常は有利である。これにより。特に、ステント構造をメンブランに包埋するかまたは包み込むことが可能になり、このようにすれば、ステントをメンブランと組み合わせた複合体の形成が可能になる。このようにすれば、ステントのウエブは全側面でメンブラン材料に囲まれる。
【0024】
いずれの場合にも、本発明のメンブランは、それぞれのステント構造について、限定的にステントの中央領域を覆うであろう。それにもかかわらず、ステントの全長がメンブランを介して血管壁と接触しているであろうようにメンブランがステント全体を取り囲み、覆うことが有利であると考えられる。
【0025】
メンブランインプラントのメンブランは、特に、適するプラスチック溶液を用いるスプレイコーティングによってつくられ、コーティングは数回の作業サイクルでつくり上げることができる。この場合のステントは一次キャリアまたはマトリックスとしてはたらくことができる。すなわち、コーティングはステントのハニカム上またはメッシュ上に、ハニカムまたはメッシュがそのように形成されたメンブランによって封入されてしまうまで、直接に吹付けされる。別形として、ステントをマンドレル上に取り付け、次いで外側からスプレイコーティングし、続いてマンドレルから取り外すこともできる。スプレイコーティングする目的のためには、特にファイバの製造に適するノズルが用いられるべきである。
【0026】
この目的のため、技術文献に頻繁に説明されているような、いわゆるエレクトロスピニングプロセスの適用も可能である。この場合も、個々の繊維がステント表面上に被着され、それぞれの繊維は、被着密度に依存して、多かれ少なかれ多孔質のメッシュを形成することになる。
【0027】
コーティングを施す場合、繊維は相互に、またステント枠とも、十分に強固で緻密な結合をなすことが絶対に保証されなければならない。通常、繊維には被着されると直ちに密着する傾向がある、しかし、これは、接着剤を用いることによるかまたは、個々の繊維の粘着及び/または溶接を目的とする、機械的、熱的またはその他の種類の処理を続けて実施することによって達成することもできる。例えば、ここで超音波を、超音波は多孔度を高める目的で繊維を「ばらけさせる」ために用いることもできるから、成功裏に適用することができる。エレクトロスピニングプロセスでは、その速度による、繊維の太さ、多孔度及び密着度の制御が可能になる。
【0028】
不織布とステント構造の間の結合強度の最適化/向上に関し、少なくともステント枠の外側に密着促進層を施すことができる。この目的のため、ポリマーを用いる浸漬法及び吹付け法を用いることができ、あるいはパリレンを用いる化学的気相成長法(CVD)のような堆積法を用いることができる。
【0029】
ステント枠上のメンブランは通常、10〜400μm、特に10〜100μm、好ましくは10〜40μmの層厚を有する。薬剤配合物を収容することを目的としたメンブランの層厚(及び多孔度)は通常、バリア機能だけを果たさなければならないメンブランより大きい。
【0030】
メンブランの構成については、それぞれの層の繊維が異なる態様で整列されている、いくつかの層を提供することが有利であり得る。これは多孔度に影響を与えるだけでなく、可撓性にも、また摩擦特性にも、効果を有し得る。例えば、メンブランの外側表面上に繊維を意図的に整列させることにより、特にインプラントの軸方向に平行に整列させた場合、カテーテル内におけるメンブランの滑動特性に有用な影響を与えることができる。これにより、配置中のカテーテル内のインプラントの押込みを容易にすることが可能になる。
【0031】
ポリカーボネートウレタンの使用の結果、メンブランが極めて生体適合性になることは既知である。さらに、多孔度により、内皮細胞の進界成長が促進され、よってインプラントを血管壁と一体化することができる。他の多くのプラスチック物質と同様、体内にあるポリカーボネートウレタンは時間の経過にともなって分解し、ある程度の時間後にメンブランを溶解させる。
【0032】
本発明のメンブランインプラントのステントの材料及び構造は、ステントが様々な所望の任務を果たし得るように、選ぶことができる。メンブランと同様、ステントは、例えば純鉄、マグネシウム、マグネシウム合金またはコバルト−クロム合金を用いることにより、自己溶解性とすることができる。
【0033】
ステント枠としては、血管内への植込に適する、従来のいずれのステントも用いることができる。しかし、この場合ステントはメンブランを血管表面に取り付けるためにはたらくだけであるから、ステントの主部が開放構造であることを意味する、比較的低い枠密度を有するステントが好ましい。支持効果は必ずしも必要ではない。支持効果が達成されるべきである場合には、ステントはその要件を満たすように構成されるべきである。特にメンブラン安定化の目的のためには、高められた枠密度(細メッシュ)が有利である。
【0034】
本発明で提案されるように、自己拡張式ステントも、形状記憶材料で作製されるから、用いることができる。ニチノールまたは三元ニッケル−チタン合金でつくられたステントは既知であり、そのようなステントはカテーテル内部に保持される緊縮形態で輸送され、カテーテルから解放されると印象された拡張形状を取り戻し、メンブランを介して血管壁に取り付くことができる。そのようなステントは、例えば動脈瘤のような血管奇形を閉塞するために、血流に影響を与えるようにはたらくメンブランステントに特に適している。
【0035】
ステントは従来態様でチューブ体から切り取ることができるが、適するワイア材料でつくられた、いわゆる編組ステントも同様に用いることができる。特に編組ステントは脳内の動脈瘤またはその他の血管奇形を埋める目的のための「神経ステント」として適用することができる。
【0036】
ワイアでつくられたステントまたは低枠密度を有するステントを不織布の可撓性メンブランと組み合わせて用いることで、細腔血管内にも困難なく導入することができる、極めて可撓性で薄いメンブランインプラントの作製が可能になる。そのような細腔血管のための可撓性ステントは特に神経放射線学において利用される。
【0037】
メンブランインプラントが、不織布のメンブランがそれらの間に配置された2本の外ステントの組合せからなることができることも、本発明で提案される。ステント枠に不織布がその外側にだけまたはその内側にだけ設けられることも考えられる。別形は、内側に配されたステントが全側面からメンブランで囲まれ、その結果血管及び血液のステント枠との接触が防止されるような態様で作製された本発明のメンブランインプラントを提供する。本発明にしたがえば、両側面が不織布で覆われたステントが好ましい。これはステントのウエブまたはストラットが不織布材料内に包埋され、不織布材料で囲まれることを意味する。
【0038】
本発明にしたがうメンブランインプラントが薬剤を収容することになる場合、そのような医薬物質は血管に面する外部メンブラン層に施されることが好ましい。この趣意で、この層は特に、スポンジ状表面構造を有するように構成される。初めは、発生された拡張圧力がこの場合は薬剤を大量に「押し出す」が、その後は、薬剤はある期間にわたって一様に血管に投与される。局所施薬目的のため、また疾病のタイプに依存して、様々な非常に異なる適切な薬剤がある。血管狭窄の予防及び処置のために、またその他の空間占有プロセスのためにも、細胞増殖抑制性活性物質が、例えば、腫瘍の処置にまたは再狭窄の予防のためにステントまたはバルーンカテーテルに施されるように、用いられる。
【0039】
例えば、狭窄効果を少ししかまたは全く有していない、炎症性で、富脂質または感染性の血管壁変性の処置のため、抗炎症特性による細胞増殖抑制性薬剤、免疫抑制剤、ステロイドまたは非ステロイド抗炎症薬、スタチン、抗酸化薬、凝固阻害薬または個々の活性物質の混合物を用いることができる。複数のそのような物質は、薬物学の教科書及び、例えば、米国特許出願公開第2008/0118544号または独国特許出願公開第102007036685号のような、多くの特許の明細書に説明されている。好ましい薬剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、プロタキセル及びその他のタキサン類、メトトレキサート、2-デオキシグルコース、サリドマイド、トリアムシノロン、ベタメトゾン、デキサメタゾン及びこれらの誘導体、ゲニステイン、シロリムス、エベロリムス及びその他のmTOR阻害薬、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、プロブコール、トコフェロール、アスコルビン酸、三酸化ヒ素、及びその他のヒ素塩及びヒ素化合物、ビスマス塩及びビスマス化合物である。適切な活性物質は、投与可能な程度まで、塩または錯化合物の、または共有結合を有する、形態で、例えばプロドラッグまたはそれらの有効な誘導体の形態で、用いることもできる。活性物質の混合物を、必要な程度まで用いることができ、それぞれの活性物質はその効力にしたがって投与される。
【0040】
本発明のメンブランは従来のカテーテルを用いて配置部位に輸送される。ステントがバルーン膨張タイプであれば、ステントは通常の態様でバルーン上にメンブランとともに留め付けられる。自己拡張ステントの場合は、カテーテル及びガイドワイアによってメンブラン搭載ステントを配置することができる。この目的のために用いられる技法は一般に、当業者には既知である。
【0041】
本発明のメンブランインプラントは従来の浸漬コーティング法及びスプレイコーティング法によって作製することができ、メンブラン付ステント枠を得るには多くの作業工程が必要である。しかし、メンブランを作製するには、有機溶媒内プラスチック溶液、例えばクロロホルム内ポリカーボネートウレタンを利用する、エレクトロスピニングプロセスが好ましい。このプロセスは、初めにコア上に被着され、後に内側に配置される不織布を提供し、続いてステントがコア上に押し嵌めされる。これに続いて、コアは再びクランプされ、別のスピニング層が設けられる。2つのエレクトロスピニング工程のパラメータは同じとすることができるが、例えば、より厚く、より多孔質の外層を形成するため、変えることもできる。外層は血管壁に接触するため及び、適用可能であれば、医薬物質を収容するための層である。
【0042】
ステンレス鋼コアが、後に構成物から引き抜かれるマンドレルとして、通常用いられる。スピニングレートに依存して、ステントのメッシュ構造にかけて内層と外層の間に多少とも強力な結合がつくられる。高スピニングレートは、この場合被着される原繊維の溶媒含有量が多くなるほど既にスピニングコーティングされた材料との結合が強くなるから、この結合に適する。
【0043】
本発明のさらなる教示が添付図面によって与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、メンブランが2層構造である、本発明のメンブランインプラントの断面図である。
図2図2は、メンブランが3層構造である、本発明のメンブランインプラントの詳細を示す。
図3図3は2層メンブラン構造の本発明のメンブランインプラントの詳細を示し、メンブランはステントの内側及び外側に配されている。
図4図4は本発明にしたがうメンブランインプラントの図式表示である。
図5図5は本発明にしたがうメンブランインプラントの写真表示である。
図6図6図5にしたがうメンブランインプラントの拡大区画を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は血管1内に配された本発明のメンブランインプラントを示し、インプラントのメンブランは、血管壁に接触しているスポンジ状外層2及び、血管を(矢印の方向に)通過している血液の、メンブランの浸透の防止を、またメンブランを血管壁1に押し付けるためにはたらく支持構造またはステント4の枠の浸透の防止も目的とする、多少とも水密の層3を有する。例えば、メンブランは小胞形の動脈瘤Aを循環する血流から隔離するためにはたらくことができ、このようにして、動脈瘤の閉塞を起こさせることができる。しかし、スポンジ状外層により、ステントは、例えば拡張された血管の壁に抗狭窄効果を及ぼす目的で、薬剤を収容することもできる。
【0046】
図2は本発明にしたがうメンブランインプラントの壁構造の一部を示し、内側にステント4があり、実質的に水密であるように構成された層3が隣接し、強固な中間層5を間にして、血管壁1との接触が目的とされるスポンジ状外層2がある。
【0047】
枠構造4を有するステントがメンブランと一体化され、その結果、比較的滑らかなインプラント壁を形成し、よって血流に対して僅かな抵抗しか与えない、メンブランの平滑な内層がメンブランのステントの内側上に配されることは当然である。
【0048】
図3は、ステント枠4,ステント枠4上の内側のメンブラン層及び外側の第2のメンブラン層を有し、層2及び3がメッシュにかけて相互接続され、血管壁1とも接触する、本発明のメンブランインプラントの壁構造の一部を示す。
【0049】
図4は、ステント枠4が結合素子10を介してガイドワイア6に連結されている、本発明のメンブランインプラントを示す。ガイドワイア6には、遠位領域において、マーカーコイル8を覆うプラスチックチューブ7が与えられている。切断点9は、ここに図示される事例においては一般に既知の電解プロセスを用いて、インプラントをガイドワイアから切り離すためにはたらく。あるいは、機械的切断システムを設けることができる。
【0050】
中央領域において、メンブランインプラントのステント枠4には、メッシュ構造を覆うメンブラン11が設けられている。マーカーコイル12がインプラントの遠位領域に配され、このコイルによりインプラントの正確な配置が可能になる。
【0051】
図示される事例において、ステント4は金属チューブから切り取られており、ステントは、カテーテル内を緊縮形態で案内され、カテーテルから解放されるとほどけることができる。特に、形状記憶材料、例えばニチノールが、使用に適する。しかし、特にニチノールフィラメントでつくられた、編組ステント構造を代わりに用いることができる。
【0052】
図5は本発明にしたがうメンブランインプラントの写真表示であり、インプラントはカテーテルチューブから解放されている。メッシュ4をメンブラン被覆11とともに明瞭に見ることができる。
【0053】
図6は、枠4のウエブ及びこの事例ではウエブを包埋しているメンブラン被覆を示す、図4及び5に示されるような本発明のメンブランインプラントの拡大写真である。
【符号の説明】
【0054】
1 血管(壁)
2 スポンジ状外層
3 水密層
4 ステント(枠)
5 中間層
6 ガイドワイア
7 プラスチックチューブ
8,12 マーカーコイル
9 切断点
10 結合素子
11 メンブラン
A 動脈瘤
図1
図2
図3
図4
図5
図6