(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数色の発光素子を色毎に輝度を調整して発光可能な光源、上記色毎の発光素子の発光または消灯を制御する駆動部を備えた装置が内蔵するコンピュータが実行するプログラムであって、
上記コンピュータを、
上記駆動部により複数色の発光素子を同時発光する同時発光期間での、発光開始からの時間経過に伴う輝度時間特性に基づき、上記光源の複数色の階調変調値を調整する調整手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許技術は、半導体発光素子の温度変動に基づく発光効率の低下を相殺するべく、供給電力をより上昇させて同一フィールド内での発光輝度を均一となるように制御する。したがって、発光直後のまだ温度が上昇していない状態で最適な発光輝度が得られるように供給電力により駆動すると、その後の温度が上昇した状態ではより高い電力による駆動を行なうこととなり、発光素子の熱的負荷が大きく、素子の劣化を招く虞がある。
【0006】
ところで複数の原色の半導体発光素子を同時に発光させることで、混色としての補色あるいは白色を用いた光像を投影するフィールドをフレーム中に設定して、総合的な画像の色再現性及び輝度を向上させるような駆動方式を採るものがある。
【0007】
このような補色あるいは白色の画像投影フィールドを設定した場合、各色の光源素子毎に発光効率の変化特性が異なる。
【0008】
加えて、補色フィールドの前に位置するフィールドから続けて発光している素子と、その補色フィールドで発光を開始した素子とでは、同じ補色フィールドで発光する場合でも、それぞれの温度特性及び発光時間が共に異なる。
【0009】
図5(A)は、補色フィールドであるYe(黄色)フィールドに続いてG(緑色)フィールドが位置する場合の、G用の半導体発光素子による光源とR(赤色)用の半導体発光素子による光源の各発光波形を示す。G用光源の発光波形が、
図5(A−1)に示すように高い波高値で2つのフィールド期間分に渡っているのに対し、
図5(A−2)に示すようにR用光源の発光波形は、当初のYeフィールド期間のみとなっており、且つG用光源に対して非常に低い波高値となっている。
【0010】
加えて、G用光源、R用光源共に発光期間の当初が、素子温度が低いために最も輝度が高く、素子の温度上昇によって輝度が急激に低下した後、徐々に吸熱量と放熱量が相殺される割合が増え、低下の割合がゆるやかになる。
【0011】
しかしながら、G用光源の発光輝度がまだ低下する過程時に、R用光源の発光輝度がゆるやかに安定しつつ、同時発光する期間を停止するものとなっており、発光輝度の時間特性が両光源素子で著しく異なることが見て取れる。
【0012】
次の
図5(B)は、補色フィールドであるYe(黄色)フィールドを挟んで、その前側にG(緑色)フィールド、後ろ側にR(赤色)フィールドが位置する場合の、G用の半導体発光素子による光源とR(赤色)用の半導体発光素子による光源の各発光波形を示す。
【0013】
G用光源、R用光源共に、発光期間の当初が、素子温度が低いために最も輝度が高く、素子の温度上昇によって輝度が低下した後、徐々に吸熱量と放熱量が相殺される割合が増え、低下の割合がゆるやかになる。
【0014】
しかしながら、両発光素子の発光タイミングのずれから、中央のYeフィールドでは、G用光源の発光波形が、
図5(B−1)に示すように低下した状態で安定しているのに対し、
図5(B−2)に示すようにR用光源の発光波形は発光当初の最も高い状態から急激に低下する過程となっており、この場合も発光輝度の時間特性が両光源素子で著しく異なることが見て取れる。
【0015】
これらのように同時発光する複数の光源素子の輝度時間特性が著しく異なるような場合、光源素子を駆動する電流を調整する方法を採用したとしても、同時発光するフィールド期間では正確な階調表現がしにくく、一部で階調が反転するなど、不自然な色の描写となる可能性がある。
【0016】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数色の半導体発光素子の同時発光による輝度向上と正確な階調表現とを両立することが可能な投影装置、投影方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様は、複数色の発光素子を各色毎に輝度を調整して発光可能な光源と、上記色毎の発光素子の発光または消灯を制御する駆動手段と、上記駆動手段により複数色の発光素子を同時発光する同時発光期間での、発光開始からの時間経過に伴う輝度時間特性に基づき、上記
光源の複数色の階調変調値を調整する調整手段と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数色の半導体発光素子の同時発光による輝度向上と正確な階調表現とを両立することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明をDLP(登録商標)方式のデータプロジェクタ装置に適用した場合の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るデータプロジェクタ装置10の概略機能構成を示す図である。
入力部11は、例えばピンジャック(RCA)タイプのビデオ入力端子、D−sub15タイプのRGB入力端子、HDMI(High−Definition Multimedia Interface)端子などにより構成される。入力部11に入力された各種規格のアナログまたはデジタルの画像信号は、入力部11で必要に応じてデジタル化された後に、システムバスSBを介して画像変換部12に送られる。
【0022】
画像変換部12は、スケーラあるいはフォーマッタとも称され、入力されるデジタル値の画像データを、投影に適した所定フォーマットの画像データに統一して投影処理部13へ送る。このとき画像変換部12は、内部に備えられる階調変換部12Aにより、後述するように階調テーブルを参照した上でPWM信号情報として上記投影処理部13へ送る。
【0023】
この際、OSD(On Screen Display)用の各種動作状態を示すシンボル等のデータも必要に応じて画像変換部12により画像データに重畳加工され、加工後の画像データを投影処理部13へ送る。
【0024】
投影処理部13は、送られてきた画像データに応じて、所定のフォーマットに従ったフレームレート、例えば60[フレーム/秒]と色成分の分割数、及び表示階調数を乗算した、より高速な時分割駆動により、空間的光変調素子であるマイクロミラー素子14を表示するべく駆動する。
【0025】
このマイクロミラー素子14は、アレイ状に配列された複数、例えばWXGA(Wide eXtended Graphic Array)(横1280画素×縦800画素)分の微小ミラーの各傾斜角度を個々に高速でオン/オフ動作して画像を表示することで、その反射光により光像を形成する。
【0026】
一方で、光源部15から時分割でR,G,Bの原色光が循環的に出射される。この光源部15からの原色光が、ミラー16で全反射して上記マイクロミラー素子14に照射される。
【0027】
そして、マイクロミラー素子14での反射光で光像が形成され、形成された光像が投影レンズ部17を介して、投影対象となる図示しないスクリーンに投影表示される。
【0028】
光源部15は、青色のレーザ光を発するLD18を有する。
LD18が発する青色のレーザ光(B)は、ミラー19で反射され、ダイクロイックミラー20を透過した後に蛍光ホイール21の周面に照射される。この蛍光ホイール21は、ホイールモータ(M)22により回転されるもので、上記青色のレーザ光が照射される周面全周に渡って蛍光体層21gを形成している。
【0029】
より詳細には、蛍光ホイール21の上記レーザ光が照射される円周上に蛍光体を塗布することで蛍光体層21gが形成される。蛍光ホイール21の蛍光体層21gが形成されている面の裏面には図示しない反射板が蛍光体層21gと重なるように設けられている。
【0030】
蛍光ホイール21の蛍光体層21gに青色のレーザ光が照射されることで、緑色光(G)が反射光として励起する。この緑色光は、上記ダイクロイックミラー20で反射され、ダイクロイックミラー23でも反射されて、インテグレータ24で輝度分布が均一な光束とされた後に、ミラー25で反射されて、上記ミラー16に至る。
【0031】
さらに光源部15は、赤色光を発するLED26、及び青色光を発するLED27を有する。
LED26が発する赤色光(R)は、上記ダイクロイックミラー20を透過し、上記ダイクロイックミラー23で反射された後、上記インテグレータ24で輝度分布が均一な光束とされ、それから上記ミラー25で反射されて、上記ミラー16に至る。
【0032】
LED27が発する青色光(B)は、上記ダイクロイックミラー23を透過し、上記インテグレータ24で輝度分布が均一な光束とされた後に、上記ミラー25で反射されて、上記ミラー16に至る。
【0033】
以上の如く、ダイクロイックミラー20は、青色光,赤色光を透過する一方で、緑色光を反射する。ダイクロイックミラー23は、青色光を透過する一方で、緑色光及び赤色光を反射する。
本実施形態では、上記マイクロミラー素子14による反射光の振り分け動作で、上記投影レンズ部17方向に反射されなかった光、所謂「オフ光」が測定手段である輝度センサ28に入射される。この輝度センサ28は、入射された光の照度を測定し、後に詳述するが、輝度を示す信号を上記投影処理部13に出力する。
【0034】
投影処理部13は、上記マイクロミラー素子14での画像の表示による光像の形成、上記LD18、LED26,27の各発光、上記ホイールモータ22による蛍光ホイール21の回転、及び上記輝度センサ28による輝度の測定を、後述するCPU29の制御の下に実行する。
【0035】
上記各回路の動作すべてをCPU29が制御する。このCPU29は、メインメモリ30及びプログラムメモリ31と直接接続される。メインメモリ30は、例えばSRAMで構成され、CPU29のワークメモリとして機能する。プログラムメモリ31は、電気的に書換可能な不揮発性メモリで構成され、上記CPU29が実行する動作プログラムや各種定型データと、さらに階調テーブル31Aとして、後述する原色R,G,Bの期間及び混色のYe,Wの期間に対応した複数の階調値毎のPWMパターンの設定値などを記憶する。CPU29は、上記メインメモリ30及びプログラムメモリ31を用いて、このデータプロジェクタ装置10内の制御動作を実行する。
【0036】
上記CPU29は、操作部32からのキー操作信号に応じて各種投影動作を実行する。
この操作部32は、データプロジェクタ装置10の本体に設けられるキー操作部と、このデータプロジェクタ装置10専用の図示しないリモートコントローラからの赤外光を受光する赤外線受光部とを含み、ユーザが本体のキー操作部またはリモートコントローラで操作したキーに基づくキー操作信号をCPU29へ直接出力する。
【0037】
上記CPU29はさらに、上記システムバスSBを介して音声処理部33とも接続される。音声処理部33は、PCM音源等の音源回路を備え、投影動作時にシステムバスSBを介して与えられる音声データをアナログ化し、スピーカ部34を駆動して拡声放音させ、あるいは必要によりビープ音等を発生させる。
【0038】
続いて、上記光源部15とマイクロミラー素子14、及び投影レンズ部17を含む光学系のより具体的な構成例について
図2により説明する。
【0039】
図2において、LD18は、複数、例えば8×4(紙面に垂直な方向)の計24個のマトリックス状に配置されたLDアレイで構成され、それぞれの発光により出射された青色レーザ光は、これも同数のミラーを、段差を設けてマトリックス状に配置したミラーアレイで構成されるミラー19で反射される。
【0040】
ミラー19で反射された青色のレーザ光は、レンズ41,42、ダイクロイックミラー20、レンズ43,44を介して蛍光ホイール21に投射される。
【0041】
蛍光ホイール21の蛍光体層21g(
図1参照)で励起した緑色光は、蛍光ホイール21の蛍光体層21gが形成されている面の裏面に設けられている図示しない反射板で反射され、上記レンズ43,44を介してダイクロイックミラー20で反射され、レンズ45を介した後にダイクロイックミラー23で反射される。
【0042】
このダイクロイックミラーホイール23で反射された緑色光が、レンズ46、インテグレータ24、及びレンズ47を介してミラー25で反射され、さらにレンズ48を介して上記ミラー16に至る。
【0043】
ミラー16で反射された緑色光は、レンズ49を介してマイクロミラー素子14に照射され、このマイクロミラー素子14で対応する色の光像が形成される。形成された光像は、上記レンズ49を介して投影レンズ部17側に出射される。
【0044】
また、LED26が発する赤色光は、レンズ50,51を介して上記ダイクロイックミラー20を透過し、レンズ45を介して上記ダイクロイックミラー23で反射される。
【0045】
LED27が発する青色光は、レンズ52,53を介して上記ダイクロイックミラー23を透過する。
【0046】
次に上記実施形態の動作について説明する。
なお、上述した如く以下に示す動作は全て、CPU29がプログラムメモリ31から読出した動作プログラムや固定データ等をメインメモリ30に展開して記憶させた上で実行する。
【0047】
本実施形態では、カラー画像1フレームを投影する際、例えば、
図4に示すように、当該フレームをR(赤),Ye(黄),G(緑),B(青),W(白)の5フィールドで構成して当該色の画像を投影するものとする。
【0048】
投影処理部13では、赤色信号Rに対応する画像は、R(赤)フィールド,Ye(黄)フィールド,W(白)フィールドの期間、緑色信号Gに対応する画像は、Ye(黄)フィールド,G(緑)フィールド,W(白)フィールドの期間、青色信号Bに対応する画像は、B(青)フィールド,W(白)フィールドの期間、にそれぞれ割り振られて、その光源の輝度レベルの時間積分値の割り振られた複数フィールド分の和として、対応する階調に応じた表示が行われるように、赤色信号Rと緑色信号Gと青色信号Bの階調に対応するPWM信号(オン/オフ信号)が作られる。
【0049】
そして、次のフレーム期間を用いて、マイクロミラー素子14により、そのPWM信号に基づく表示が行われる。
【0050】
また、投影処理部13は、Ye(黄)フィールドにおいては、緑色光用のLD18、及び赤色光用のLED26を同時に発光させる。
【0051】
さらに投影制御部13は、W(白)フィールドにおいては、緑色光用のLD18、赤色光用のLED26、及び青色光用のLED27のすべてを同時に発光させる。
【0052】
図3は、データプロジェクタ装置10の電源がオンである間に実行する、主として階調のキャリブレーション動作に関する処理内容を抽出して示すフローチャートである。
【0053】
電源をオンした状態でCPU29は、キャリブレーション動作を行なうタイミングであるか否かを判断する(ステップS101)。
【0054】
ここでキャリブレーション動作を行なうタイミングとは、例えば、電源投入当初、連続投影時間で一定時間(ex.30分)毎などに相当するものとし、CPU29がメインメモリ30内に設定する連続動作時間をカウントするレジスタの内容に基づいて判断するものとする。
【0055】
上記ステップS101でキャリブレーション動作を行なうタイミングではないと判断した場合、CPU29は通常の投影動作として、その時点で設定されているR,G,B各色の階調データに基づいて、入力部11から入力される画像信号に対応した画像をマイクロミラー素子14で表示して反射光により光像を形成させ、投影レンズ部17より投影対象のスクリーン等に出射し(ステップS102)、その後に再び上記ステップS101からの処理に戻る。
【0056】
図4は、この通常投影時に主としてCPU29により実行される投影動作の処理タイミングを示す。前述したように
図4(A)に示す如く、カラー画像1フレームがR(赤),Ye(黄),G(緑),B(青),W(白)の5フィールドで構成してR(赤),G(緑),B(青)信号に対応する画像を投影する。
【0057】
Yeフィールドは、赤色光と緑色光の混色による補色の画像投影期間として設定されるもので、赤色光を発するLED26と、緑色光を得るために青色の励起光を発するLD18とが同時に発光するよう投影処理部13により駆動される。
【0058】
またWフィールドでは、赤色光、緑色光、及び青色光の混色による輝度画像(モノクロ画像)の投影期間として設定されるもので、赤色光を発するLED26、緑色光を得るために青色の励起光を発するLD18、及び青色光を発する投影レンズ部17の全てが同時に発光するよう投影処理部13により駆動される。
【0059】
したがって、
図4(B)に示すように赤色光を発する光源であるLED26の発光タイミングは、当該フレームの前のフレームのWフィールドから当該フレームのRフィールド及びYeフィールドに至る期間となる。
【0060】
また
図4(C)に示すように緑色光を得るために青色の励起光を発するLD18の発光タイミングは、当該フレームのYeフィールド及びGフィールドと、Wフィールドの2つの期間となる。
【0061】
さらに
図4(D)に示すように青色光を発するLED27の発光タイミングは、当該フレームのBフィールド及びWフィールドとなる。
【0062】
図4(E)〜
図4(G)に色毎の光源素子の輝度時間特性を例示する。図示する如く、色光源毎に輝度レベルが大きく異なる(G>R>B)と共に、発光期間の当初が最も輝度が高く、素子の温度上昇によって輝度が急激に低下した後、吸熱量と放熱量が相殺される割合が増え、低下の割合がゆるやかになる。
【0063】
一方、上記ステップS101でキャリブレーション動作を行なうタイミングであると判断した場合、CPU29はキャリブレーション動作の光源を指定する変数nを初期化して「0」とした後(ステップS103)、変数nの値、ここでは「0」により指定されるLED26の輝度時間特性を測定する(ステップS104)。
【0064】
この輝度時間特性の測定にあたっては、例えば2画像フレームに渡ってLED26のみを発光させるものとして、上記
図4(B)に示したタイミング、すなわち1フレーム目のWフィールドから2フレーム目のYeフィールドまで発光するように投影処理部13により駆動させる。
【0065】
このとき投影処理部13は、マイクロミラー素子14で表示させる画像が投影画像全面が黒色となるようにして、光源部15からの光を全て投影レンズ部17側ではなく輝度センサ28側に反射させる。なお、そのときの他の色の光源はオフに対応する動作とさせる。
【0066】
これにより上記
図4(E)に示したように変化するLED26の輝度時間特性を、輝度センサ28を用いて測定する。
この測定結果が、このフィールド構成に基づく、赤色光を発するLED26の発光開始からの時間経過に伴う輝度時間特性を表すデータとなる。
【0067】
その後、変数nの値を「+1」更新設定し(ステップS105)、更新設定した変数nの値が、R,G,Bの輝度時間特性の測定を終えたことを示す値「3」ではないことを確認した上で(ステップS106)、再び上記ステップS104からの処理に戻る。
【0068】
こうしてステップS104,S105の処理を繰返し実行することで、CPU29は変数nの値を更新設定しながら、緑色光の輝度時間特性、青色光の輝度時間特性も同様にして実行する。
【0069】
つまり、緑色光の輝度時間特性の測定にあたっては、上記
図4(C)に示したタイミング、すなわち1画像フレーム中のYeフィールド及びGフィールドと、Wフィールド6とでLD18を発光させて、測定する。なお、その測定期間に他の色の光源はオフに対応する動作とさせる。
【0070】
また、青色光の輝度時間特性の測定にあたっては、上記
図4(D)に示したタイミング、すなわち1画像フレーム中のBフィールド及びWフィールド6でLED27を発光させて、測定する。なお、その測定期間に他の色の光源はオフに対応する動作とさせる。
【0071】
そして、青色光の輝度時間特性の測定を終えた後、上記ステップS105で変数nの値を「+1」更新設定して「3」とすると、続くステップS106でCPU29はその変数nの値からR,G,Bの輝度時間特性の測定を終えたものと判断する。
【0072】
次いでCPU29は、上記測定したR,G,Bの輝度時間特性に基づき、原色(R,G,B)期間中に対応するPWMタイミング情報である階調変調データ(階調変調値)を調整して、プログラムメモリ31の階調テーブル31Aに設定する(ステップS107)。
【0073】
さらにCPU29は、上記設定したR,G,Bの輝度時間特性に基づき、複数色の光源を同時発光しての混色フィールドであるYeフィールド及びWフィールド期間中でのPWMタイミング情報である階調変調データを、各発光開始時間のずれを考慮して算出し、算出した正確な階調を得るための階調変調データを調整してプログラムメモリ31の階調テーブル31Aにそれぞれ設定する(ステップS108)。
【0074】
上記ステップS107及びS108では、PWM信号のオンの期間が局所的に集中(連続)しないように考慮されるとともに、R,G,Bの各光源の輝度の減衰カーブによる階調の逆転現象が起きないように、R,G,Bの輝度時間特性を考慮して、階調テーブル31Aが調整(設定)される。
【0075】
以上でキャリブレーション動作を終えたものとして、再び上記ステップS101からの処理に戻る。
【0076】
以上詳述した如く本実施形態によれば、同時発光期間での各発光開始時間のずれを考慮して、正確な階調を得るための各階調変調データを調整して、プログラムメモリ31の階調テーブル31Aに設定するので、複数色の半導体発光素子の同時発光による輝度向上と正確な階調表現とを両立することが可能となる。
【0077】
また上記実施形態では、輝度センサ28を用いて各色発光素子の実際の輝度時間特性を測定した上で適正な階調変調データを読出して設定するものとしているので、半導体発光素子の経年変化や個体差等を勘案し、より正確な階調表現が実現できる。
【0078】
特に上記実施形態では、輝度センサ28の位置を、投影レンズ部17に至る画像投影用の光軸方向から外れた、所謂オフ光が照射される位置に配するものとしたので、各色光源の輝度時間特性測定時には投影レンズ部17から出射する画像をごく短時間だけ停止するだけで済み、測定用の不必要な画像を投影することを回避でき、通常の投影動作への影響を最小限に留めることができる。
【0079】
また上記実施形態では、Yeフィールドのように原色光2色の混色による補色画像を投影する期間を設けるものとしており、このような補色期間では、R,G,B3色を同時に発光して輝度画像を投影するWフィールド期間に比して、1色当たりの階調の誤差が与える影響が大きく、色ずれが認識されやすい。しかし、上記実施形態では、このような補色期間を設ける場合でも、使用する各光源の輝度時間特性を正確に把握して、同時発光期間もグレー階調としての利用だけでなく、補色の階調表現に利用できる精細な階調表現を実現することが可能となる。
【0080】
この点は、上記Yeフィールドに限らず、B(青色)光源とG(緑色)光源とを同時に発光させるCy(シアン)フィールド、及びR(赤色)光源とB(青色)光源とを同時に発光させるMg(マゼンタ)フィールドを設ける場合にも同様の効果を奏し得る。
【0081】
なお上記実施形態では説明しなかったが、投影画像の輝度を輝度センサ28で測定するのみならず、予想される複数色の発光素子それぞれの輝度時間特性をプログラムメモリ31に予め記憶しておき、そのデータを参照することで、階調変調データを調整するようにしてもよい。
【0082】
このような構成とすることで、フィールド構成の変化やそのタイミングの変化に対応して、輝度時間特性に基づく正確な階調表現を容易に実現することが可能となる。
【0083】
また、光源素子であるLD18、LED26、及びLED27それぞれの温度を検出するものとし、予め検出した温度(帯域)の変化に伴う複数の輝度時間特性をプログラムメモリ31に記憶しておき、検出した光源素子毎の温度に基づいて記憶している輝度時間特性を切換え、光源素子毎の階調値を調整するものとしてもよい。
【0084】
このような構成とすることで、光源素子の周辺の温度変化に伴う輝度時間特性の変化に容易に対応することが可能となる。
【0085】
なお、上記実施形態は、緑色光を、蛍光体を用いて励起するための励起用光源に青色光を発するLD18を用い、赤色光を発するLED26、及び青色光を発するLED27を用いる場合の構成について説明したが、本発明はこのような構成に限ることなく、半導体発光素子を使用する各種投影装置に適用可能であることは勿論である。
【0086】
また、上記実施形態では、定期的にキャリブレーション動作を行わせるようにしたが、通常投影時に先だって一回行うものとしてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、補色の同時点灯期間として、Ye期間のみを持つフィールド構成の投影装置で説明したが、補色の同時点灯期間としてCyやMgの期間を有するフィールド構成の投影装置にも、本発明が適用可能であることは言うまでもない。
【0088】
また、上記実施形態では、発光素子としてLDやLEDの半導体発光素子の例で説明したが、それに限定されず、輝度時間特性を有する発光素子に対して、本発明は適用可能である。
【0089】
その他、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件による適宜の組み合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0090】
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
請求項1記載の発明は、複数色の発光素子を各色毎に輝度を調整して発光可能な光源と、上記色毎の発光素子の発光または消灯を制御する駆動手段と、上記駆動手段により複数色の発光素子を同時発光する同時発光期間での、発光開始からの時間経過に伴う輝度時間特性に基づき、上記複数色の階調変調値を調整する調整手段と、画像信号を入力する入力手段と、上記調整手段で調整した階調変調値に応じ、上記光源からの光を上記入力手段で入力する画像信号に基づいて空間変調して光像を形成する光変調手段と、上記光変調手段で形成した光像を出射して投影する投影手段とを具備したことを特徴とする。
【0091】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記複数色の発光素子の色毎の輝度時間特性を測定する輝度測定手段をさらに具備し、上記調整手段は、上記輝度測定手段で測定した上記複数色の発光素子の色毎の輝度時間特性に基づき、上記複数色の階調変調値を調整することを特徴とする。
【0092】
請求項3記載の発明は、上記請求項2記載の発明において、上記輝度測定手段は、上記光変調手段で上記投影手段の方向とは異なる方向に出射された光を用いて輝度時間特性を測定することを特徴とする。
【0093】
請求項4記載の発明は、上記請求項1乃至3何れかに記載の発明において、上記同時発光期間は、原色光を発する2色の発光素子を駆動することを特徴とする。
【0094】
請求項5記載の発明は、上記請求項1乃至4何れかに記載の発明において、上記複数色の発光素子それぞれの輝度時間特性を記憶する記憶手段をさらに具備し、上記調整手段は、上記記憶手段で記憶する上記複数色の発光素子それぞれの輝度時間特性に基づいて、上記複数色の階調変調値を調整することを特徴とする。
【0095】
請求項6記載の発明は、上記請求項5記載の発明において、上記複数色の発光素子それぞれの温度を検出する温度検出手段をさらに具備し、上記記憶手段は、温度に対応する輝度時間特性を複数記憶し、上記調整手段は、上記温度検出手段で検出した上記複数色の発光素子の色毎の温度に基づいて上記記憶手段で記憶する輝度時間特性を切換え、上記複数色の発光素子毎の階調変調値を調整することを特徴とする。
【0096】
請求項7記載の発明は、複数色の発光素子を色毎に輝度を調整して発光可能な光源、上記色毎の発光素子の発光または消灯を制御する駆動部、画像信号を入力する入力部、上記光源からの光を上記入力部で入力する画像信号に基づいて空間変調して光像を形成する光変調部、及び上記光変調部で形成した光像を出射して投影する投影部を備えた装置での投影方法であって、上記駆動部により複数色の発光素子を同時発光する同時発光期間での、発光開始からの時間経過に伴う輝度時間特性に基づき、上記複数色の階調変調値を調整する調整工程を有することを特徴とする。
【0097】
請求項8記載の発明は、複数色の発光素子を色毎に輝度を調整して発光可能な光源、上記色毎の発光素子の発光または消灯を制御する駆動部、画像信号を入力する入力部、上記光源からの光を上記入力部で入力する画像信号に基づいて空間変調して光像を形成する光変調部、及び上記光変調部で形成した光像を出射して投影する投影部を備えた装置が内蔵するコンピュータが実行するプログラムであって、上記コンピュータを、上記駆動部により複数色の発光素子を同時発光する同時発光期間での、発光開始からの時間経過に伴う輝度時間特性に基づき、上記複数色の階調変調値を調整する調整手段として機能させることを特徴とする。