(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術が有する課題は、中継装置としてのアクセスポイントの消費電力を低減することが考慮されていない点である。特に、ユーザが持ち歩いて利用するアクセスポイントは二次電池によって稼働する場合が多いので、アクセスポイントの消費電力の低減は大きな課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためのものであり、以下の形態又は適用例として実現できる。
【0006】
適用例1:接続装置と;前記接続装置と通信する複数のクライアント装置と;前記接続装置と前記複数のクライアント装置との間の通信を中継するために、前記接続装置および前記複数のクライアント装置と通信する複数の中継装置とを備える通信システムであって;前記複数の中継装置同士が通信できる場合、前記複数の中継装置のうちで他の中継装置よりも良好な適
性値を有する中継装置は、自装置が通信している担当クライアント装置と、自装置以外の中継装置が通信している他クライアント装置とを含む被集約クライアント装置それぞれに対して集約中継装置として通信し、前記集約中継装置以外の中継装置は、前記担当クライアント
装置との通信を中断する通信システム。この適用例によれば、複数の中継装置全体が消費する電力を低減できる。複数の中継装置がそれぞれ通信を行うよりも、通信が集約される方が消費電力は低減されやすいからである。さらに、上記のような集約中継装置と被集約クライアント装置との通信は、集約中継装置と集約中継装置以外の中継装置とが同一の接続装置に接続されることによって、互いに通信できる場合に実行するので、集約中継装置が他クライアント装置と通信できるかを事前に検出する手法に比べて簡易に実行できる。
【0007】
適用例2:適用例1に記載の通信システムであって;前記複数の中継装置それぞれは、互いに通信できる場合に、自装置の前記適性値を前記接続装置に通知する適性値通知部を備え;前記接続装置は、前記複数の中継装置それぞれから通知された適性値のうち他の中継装置に比べて良好な値を通知してきた中継装置に、前記集約中継装置として選定されたことを通知する選定通知部を備え;前記複数の中継装置それぞれは、前記選定を通知された場合に、前記他クライアント装置と通信を開始する通信開始部を備える通信システム。この適用例によれば、集約中継装置の選定を接続装置が集中的に行うことができる。
【0008】
適用例3:適用例2に記載の通信システムであって;前記複数の中継装置それぞれは;前記選定を通知された場合に、他の中継装置に対して前記通信開始用情報の返信を要求する要求部と;前記返信要求を受けた場合、前記担当クライアント装置についての前記通信開始用情報を返信する返信部とを備え;前記通信開始部は、前記他の中継装置から返信された通信開始用情報を用いて、通信を開始する通信システム。この適用例によれば、通信開始用情報の授受が適切に実行される。この適用例に代わる手法としては、例えば、集約中継装置に通信開始用情報を送信することを、接続装置が他の中継装置に対して指示する手法が考えられる。
【0009】
適用例4:適用例3に記載の通信システムであって;前記複数の中継装置それぞれは、前記選定を通知された場合に、前記通信開始部によって通信が開始されなかったとき、その旨を前記接続装置に通知する非開始通知部を備え;前記接続装置は、前記非開始通知部から通知を受けた場合、前記複数の中継装置のうち、その通知をしてきた中継装置によって通知された適性値の次に良好な適性値を通知してきた中継装置に、前記集約中継装置として選定されたことを通知する選定変更通知部を備え;前記複数の中継装置それぞれは、前記選定変更通知部による通知を受けた場合、前記被集約クライアント装置と通信を開始する選定変更後通信開始部を備える通信システム。選定変更通知部による通知を受けた中継装置が、被集約クライアント装置についての通信開始用情報を取得するための手順の主体には、接続装置が含まれても含まなくても良い。
【0010】
適用例5:適用例4に記載の通信システムであって;前記選定変更通知部は、前記複数の中継装置に前記集約中継装置に適する中継装置が無い場合、前記複数の中継装置の何れに対しても前記通知をせず;前記接続装置は、前記複数の中継装置に前記集約中継装置に適する中継装置が無い場合、前記適性値通知部による通知以前に通信していたクライアント装置と通信することを、前記複数の中継装置それぞれに指示する原状回復指示部を備える通信システム。「集約中継装置に適する中継装置が無い場合」とは、例えば、適性値を通知してきた中継装置全てから通信の非開始が通知された場合や、適性値が基準値未満の中継装置しか残っていない場合などが挙げられる。
【0011】
適用例6:適用例4又は適用例5に記載の通信システムにおいて;前記複数の中継装置それぞれは;自装置による前記返信の後に、自装置を省電力状態に移行させる移行部と;前記省電力状態の場合に前記選定変更通知部による通知を受けたとき、自装置を前記省電力状態から通常状態に復帰させる復帰部とを備え;前記選定変更後通信開始部は、前記省電力状態の場合に前記選定変更通知部による通知を受けたときは、前記復帰部による復帰後に通信を開始する通信システム。この適用例によれば、更に消費電力を低減できる。この適用例に代わる手法としては、例えば、選定変更通知部によって通知された場合に復帰するのではなく、その通知前の別途の指示に基づき復帰する手法が考えられる。
【0012】
適用例7:適用例1に記載の通信システムであって;前記複数の中継装置それぞれは;互いに通信できる場合に、前記適性値を互いに通知する適性値通知部と;他の中継装置から通知された前記適性値の何れよりも自装置の適性値の方が良好な場合、前記他クライアント装置と通信を開始する通信開始部とを備える通信システム。この適用例によれば、集約中継装置の選定を接続装置を介さずに実行できる。
【0013】
適用例8:適用例7に記載の通信システムであって;前記複数の中継装置それぞれは、前記通知された適性値の何れかが自装置の前記適性値よりも良好な場合に、他の中継装置に比べて良好な前記適性値を通知してきた中継装置に対して、自装置が通信しているクライアント装置についての前記通信開始用情報を送信する送信部を備え;前記通信開始部は、前記他の中継装置から送信された通信開始用情報を用いて、通信を開始する通信システム。この適用例によれば、通信開始用情報の授受が適切に実行される。この適用例に代わる手法としては、例えば、通知された適性値の何れよりも自装置の適性値の方が良好な場合に、他の中継装置に対して、他クライアント装置についての前記通信開始用情報の返信を要求するようにしても良い。
【0014】
適用例9:適用例8に記載の通信システムであって;前記複数の中継装置それぞれは;前記通知された適性値の何れよりも自装置の前記適性値の方が良好な場合に、前記通信開始部によって通信が開始されなかったとき、自装置の前記適性値の次に良好な値を通知してきた中継装置に、前記被集約クライアント装置と通信するための通信開始用情報を送信する非開始後送信部と;前記非開始後送信部から送信された通信開始用情報を用いて、前記被集約クライアント装置と通信を開始する選定変更後通信開始部とを備える通信システム。「被集約クライアント装置と通信するための通信開始用情報」には、送信先の中継装置が元々通信していたクライアント装置についての通信開始用情報が含まれても含まれなくても良い。
【0015】
適用例10:適用例9に記載の通信システムであって;前記非開始後送信部は、前記複数の中継装置に前記集約中継装置に適する中継装置が無い場合、前記複数の中継装置の何れに対しても前記通信開始用情報を送信せず;前記複数の中継装置それぞれは、前記複数の中継装置に前記集約中継装置に適する中継装置が無い場合、前記適性値通知部による通知以前に通信していたクライアント装置と通信することを、他の中継装置それぞれに指示する原状回復指示部を備える通信システム。「集約中継装置に適する中継装置が無い場合」とは、例えば、自装置の適性値が最も悪い場合や、適性値が基準値未満の中継装置しか残っていない場合などが挙げられる。
【0016】
適用例11:適用例9又は適用例10に記載の通信システムであって;前記複数の中継装置それぞれは;自装置に備えられた前記送信部による送信後に、自装置を省電力状態に移行させる移行部と;前記省電力状態の場合に前記通信開始用情報を受信したとき、自装置を前記省電力状態から通常状態に復帰させる復帰部とを備え;前記選定変更後通信開始部は、前記復帰部による復帰後に通信を開始する通信システム。この適用例によれば、更に消費電力を低減できる。この適用例に代わる手法としては、選定を通知されたときに復帰するのではなく、その通知前の別途の指示に基づき復帰する手法が考えられる。
【0017】
適用例12:適用例1から適用例11の何れか1つに記載の通信システムであって;前記接続装置は、前記集約中継装置としての中継装置との通信が正常にできなくなった場合、他の中継装置それぞれに前記適性値の返信を要求する適性値返信要求部を備え;前記複数の中継装置それぞれは、前記適性値返信要求部の要求に応じて自装置の前記適性値を返信する適性値返信部を備え;前記接続装置は、他の中継装置に比べて良好な前記適性値を返信してきた中継装置に、前記集約中継装置を引き継ぐための前記通信開始用情報を送信する引継用送信部を備え;前記複数の中継装置それぞれは、前記引継用送信部から送信された通信開始用情報を用いて、前記被集約クライアント装置との通信を開始する引継部を備える通信システム。
【0018】
適用例13:適用例12に記載の通信システムであって;前記複数の中継装置それぞれは、前記引継用送信部から通信開始用情報が送信された場合に、前記引継部による引継がされないとき、通信を開始できないクライアント装置を特定する情報を前記接続装置に送信する特定用情報送信部を備え;前記接続装置は、前記特定用情報送信部から送信された情報によって特定されるクライアント装置との通信を、他の中継装置に実行させる補完部を備える通信システム。被集約クライアント装置を一括して引き継ぐ中継装置がなくても、引継が実現される。この適用例に代わる手法としては、被集約クライアント装置を一括して引き継ぐことができる中継装置を探す手法が考えられる。
【0019】
適用例14:適用例1から適用例13の何れか1つに記載の通信システムであって;前記適性値は、前記接続装置との通信用の信号強度と自装置を駆動するための二次電池の残量との少なくとも一方である通信システム。この適用例によれば、中継装置と良好に通信できる中継装置に通信を集約できたり、二次電池の残量が少ない中継装置の消費電力を低減できたりする。
【0020】
適用例15:適用例1から適用例14の何れか1つに記載の通信システムであって;前記接続装置は、前記複数の中継装置に対して給電する通信システム。この適用例によれば、集約中継装置による通信の集約が成功する可能性が高くなる。給電は、有線方式でも無線方式でも、可能な範囲は有限である。よって、複数の中継装置が接続装置から給電を受ける時、それら中継装置同士が互いに接近する可能性が高い。このように接近すれば、複数の中継装置それぞれの担当クライアント装置が、複数の中継装置それぞれに対して接近する可能性が高い。この結果、集約中継装置として選定された中継装置と、他クライアント装置との距離が近くなり、通信の集約が成功する可能性が高くなる。
【0021】
上記何れの適用例も、他の形態によって実施できる。例えば、上記通信方法を実現するために中継装置及び/又は接続装置によって実行されるプログラム、このプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体、中継装置そのものなどが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態1:
通信システムCS(
図1):
図1は、通信システムCSの概略構成を示す。通信システムCSは、
図1に示すように、クレードル10と、無線LANのアクセスポイント(以下「AP」と言う)20a,20bと、ホームゲートウェイ50とを備える。通信システムCSは、クライアント装置をWANに、本実施形態ではインターネットINTに接続するためのものである。クレードル10は、AP20a,20bに対するワイヤレス給電機能を有する。ホームゲートウェイ50は、インターネットINTとの接続を行う。
【0024】
クライアント装置は、無線LANクライアント装置の機能を有する周知のコンピュータである。
図1は、パーソナルコンピュータをクライアント装置CLa,CLbとして例示する。他には、ゲーム機、スマートフォン、PDA、他のAP等が挙げられる。
図1は、AP20aの担当クライアント装置がクライアント装置CLa、AP20bの担当クライアント装置がクライアント装置CLbである状態を例示する。担当クライアント装置とは、後述する集約処理以前に通信しているクライアント装置のことである。
【0025】
ホームゲートウェイ50は、ブロードバンドルータとして機能する。クレードル10は、ホームゲートウェイ50に有線または無線によって接続される。
図1は、有線によって接続される場合を示す。AP20a,20bは、クレードル10と、クライアント装置とを相手に無線通信をする。この無線通信は、クレードル10とクライアント装置との無線通信を中継するために行われる。
図1は、AP20aが、クレードル10の上に置かれている状態を示している。このように置かれることによって、AP20aは、
図1に示すようにクレードル10によるワイヤレス給電の可能範囲に位置する。一方、
図1は、AP20bが、ワイヤレス給電の可能範囲外に位置する状態を示している。この状態においては、AP20bは給電を受けていない。ただし、クレードル10は、複数のAPに対して同時に給電できるので、AP20bは、クレードル10に接近すれば給電を受けることができる。
【0026】
クレードル10(
図2):
図2は、クレードル10の詳細構成を示すブロック図である。クレードル10は、
図2に示すように、CPU110と、PHYチップ120と、イーサネット(登録商標)I/F125と、無線通信部130と、給電部140と、電力I/F150とを備える。CPU110は、後述する集約処理を実行することによって、選定通知部111、選定変更通知部112及び原状回復指示部113として機能する。CPU110は、引継処理(
図5と共に後述)を実行することによって、適性値返信要求部114、引継用送信部115及び補完部116として機能する。
【0027】
無線通信部130は、無線通信のために電波を授受するためのモジュールである。無線通信部130は、変調器、アンプ、アンテナ等を含む。無線通信部130は、CPU110によって制御される。無線通信部130は、複数の方式による無線通信に対応できるように構成されている。複数の方式とは、60GHz(ミリ波)を用いた無線通信方式と、IEEE802.11に属する複数の無線通信規格とを含む。IEEE802.11に属する複数の規格とは、本実施形態においては、IEEE802.11、IEEE802.11a、IEEE802.11b、IEEE802.11n、IEEE802.11ac、IEEE802.11adのことである。60GHzを用いた無線通信方式としては、IEEE802.15.3cやWirelessHD(登録商標)であっても良い。
【0028】
イーサネットI/F125は、ホームゲートウェイ50との有線通信におけるインターフェイスである。クレードル10とホームゲートウェイ50との通信には、イーサネットにおいてTCP/IPプロトコルが用いられる。PHYチップ120は、イーサネットI/F125とCPU110とのインターフェイスである。PHYチップ120は、論理信号と、実際の電気的な信号との変換を行う。電力I/F150は、家庭用電源から供給される電力を、CPU110と給電部140とに供給する。給電部140は、ワイヤレス給電を行う。このワイヤレス給電は、電磁誘導方式によって行われる。給電部140は、電磁誘導を発生させるためのコイル等を備える。
【0029】
AP20a,20b(
図3):
図3は、AP20a,20bの詳細構成を示すブロック図である。AP20a,20bは、CPU210と、クレードル通信部230と、受電部240と、バッテリ250と、クライアント通信部260とを備える。受電部240は、電磁誘導方式によるワイヤレス給電を受ける。受電部240は、ワイヤレス給電によって受けた電力を、CPU210とバッテリ250とに供給する。クレードル通信部230は、クレードル10と無線通信するために、複数の通信方式から何れかを選択して無線通信をするためのモジュールである。この複数の通信方式とは、クレードル10が選択可能な通信方式と同じ通信方式のことである。クレードル通信部230は、変調器やアンプ、アンテナ等を含む。クライアント通信部260は、少なくとも1つのクライアント装置を相手に無線通信するために、複数の通信方式から何れかを選択して無線通信をするためのモジュールである。クライアント通信部260は、変調器やアンプ、アンテナ等を含む。
【0030】
CPU210は、クレードル通信部230とクライアント通信部260とを制御することによって、クレードル10とクライアント装置との無線通信を中継する。CPU210は、後述する集約処理を実行することによって、適性値通知部211、要求部212、返信部213、移行部214、通信開始部215、非開始通知部216、復帰部217及び選定変更後通信開始部218として機能する。CPU210は、引継処理を実行することによって、適性値返信部221、引継部222及び特定用情報送信部223として機能する。
【0031】
集約処理(
図4):
図4は、集約処理を示すシーケンス図である。集約処理を開始するための必要条件は、複数のAPそれぞれが、クレードル10及び少なくとも1つのクライアント装置との通信を実行していることである。
図4は、
図1の場合と同じで、AP20aがクライアント装置CLaと、AP20bがクライアント装置CLbと通信している場合を例示している。集約処理の開始の契機は、上記の通信を実行している複数のAP同士が通信できることを、それらAP自身が検出することである。それらのAPを以下「参加AP」とも呼ぶ。参加APの数は、複数であればいくつでも良い。各参加APが通信するクライアント装置の数は、いくつでも良い。参加AP同士の通信は、本実施形態においては、IEEE802.11によるアドホック通信によって行われる。
【0032】
初めに、参加AP(AP20a,20b:
図4に例示した場合に対応する装置を示す。以下同じ。)それぞれの適性値通知部211が、クレードル10との通信におけるRSSIをクレードル10に通知する(ステップS310,ステップS315)。
【0033】
クレードル10のCPU110は、複数のAP(AP20a,20b)それぞれからRSSIの通知を受けると、それらAPを参加APとして認識する。クレードル10の選定通知部111は、最も強いRSSIを通知してきたAP(AP20a)に、集約APとして選定された旨を通知する(ステップS320)。
【0034】
集約APとして選定された旨を通知されたAP(AP20a)のCPU210は、自装置が集約APであると認識する。集約AP(AP20a)の要求部212は、他の参加AP(AP20b)に、担当クライアント装置についての通信開始用情報の返信を要求する(ステップS330)。通信開始用情報とは、本実施形態の場合、SSIDと無線セキュリティキーとである。
【0035】
通信開始用情報の返信を要求されたAP(AP20b)の返信部213は、要求通り返信する(ステップS335)。通信開始用情報を返信したAP(AP20b)の移行部214は、クレードル10及び担当クライアント装置(クライアント装置CLb)との通信を中断し、自装置(AP20b)を省電力モードに移行させる(ステップS340)。省電力モードとは、パーソナルコンピュータ等のスリープモード(スタンバイモード)と同様に、外部からの指示に基づき素早く再起動できる状態を維持しつつ、できるだけ消費電力を低減するモードである。AP20a,20bの場合、クレードル10からの指示に基づき再起動できる状態を維持する。一方で、クレードル10は、クライアント装置と通信するために消費する電力をできるだけ少なくするために、クライアント通信部260等への通電は最小限にする。
【0036】
省電力モードに移行したAP(AP20b)と通信していたクライアント装置(クライアント装置CLb)は、省電力モードに移行したAP(AP20b)との通信は中断されるので、他に通信できるAPを探し、アソシエーションを行う。集約AP(AP20a)の通信開始部215は、このアソシエーションに応え、取得した通信開始用情報によって新たなクライアント装置(クライアント装置CLb)との通信を開始することによって、被集約クライアント装置(クライアント装置CLa,CLb)との通信を集約し(ステップS350)、集約処理を終える。「新たなクライアント装置」とは、取得した通信開始用情報によって特定される全てのクライアント装置である。
【0037】
一方、この集約がされない場合、集約AP(AP20a)の非開始通知部216は、その旨をクレードル10に通知する(ステップS360)。「集約がされない」とは、新たなクライアント装置の中で、通信が開始されないクライアント装置が1つでも存在する場合である。「集約がされない場合」の検出は、新たなクライアント装置との通信が所定時間以内に開始されないことに基づく。集約がされない原因としては、例えば、新たなクライアント装置との位置関係が、通信に適さないことが挙げられる。
【0038】
クレードル10の選定変更通知部112は、上記の旨の通知を受けると、現在の集約AP(AP20a)の次に強いRSSIを通知してきたAP(AP20b)に、新たに集約APとして選定された旨と、前任の集約APを特定する情報とを通知する(ステップS365)。
【0039】
省電力モードのAP(AP20b)の復帰部217は、集約APとして選定された旨の通知を受けると、自装置を通常モードに復帰させる(ステップS367)。通常モードに復帰した集約AP(AP20b)のCPU210は、前任の集約AP(AP20a)に、通信開始用情報の返信を要求する(ステップS370)。ここで返信要求の対象となる通信開始用情報は、前任の集約APの元の担当クライアント装置(クライアント装置CLa)についてのものである。参加APが3つ以上の場合は、これに加え、前任および現在の集約AP以外の参加APの元の担当クライアント装置についての通信開始用情報も返信対象に含まれる。
【0040】
上記の返信要求を受けたAP(AP20a)のCPU210は、要求通り返信をする(ステップS375)。返信をしたAP(AP20a)のCPU210は、クレードル10及び担当クライアント装置(クライアント装置CLa)との通信を中断し、自装置(AP20a)を省電力モードに移行させる(ステップS377)。
【0041】
上記の返信を受けたAP(AP20b)の選定変更後通信開始部218は、元の担当クライアント装置(クライアント装置CLb)、及び取得した通信開始用情報によって特定されるクライアント装置(クライアント装置CLa)との通信を開始することによって、被集約クライアント装置(クライアント装置CLa,CLb)との通信を集約し(ステップS380)、集約処理を終える。
【0042】
一方、この集約がされない場合は、集約AP(AP20b)の非開始通知部216は、その旨をクレードル10に通知する(ステップS385)。この旨の通知を受けたクレードル10の選定変更通知部112は、集約APの候補が残っている場合、先述した動作を再び実行する(ステップS365)。集約APの候補は、参加APのうち、まだ集約APとして選定されたことが無いこと、及び通知してきたRSSIが基準値以上であることを満たすAPである。
【0043】
一方、集約APの候補が残っていない場合、クレードル10の原状回復指示部113は、参加AP(AP20a,20b)それぞれに原状回復を指示する(ステップS387)。原状回復とは、集約処理の開始前、つまりRSSIの通知前に通信していたクライアント装置(クライアント装置CLa,CLb)と通信することである。
【0044】
原状回復を指示されたAP(AP20a,20b)は、原状回復をし(ステップS392,ステップS395)、集約処理を終える。原状回復指示を受けた時に省電力モードであるAP(AP20a)は、原状回復に先立ち、通常モードに復帰する(ステップS390)。
【0045】
引継処理(
図5):
図5は、引継処理を示すシーケンス図である。引継処理を開始するための必要条件は、集約処理によって通信が集約されたことである。
図5は、AP20aが集約APとなって、被集約クライアント装置(クライアント装置CLa,CLb)との通信を集約し、AP20bが担当クライアント装置を譲渡した場合を例示する。引継処理の開始の契機は、クレードル10と集約APとの通信が正常にできなくなったことを、クレードル10が検出したことである。
【0046】
初めに、クレードル10の適性値返信要求部114が、集約処理において参加APであったAP(AP20a,20b)にRSSIの返信を要求する(ステップS410)。集約APは、要求を受けることができない可能性が高いので、要求先から除外されても良い。返信要求を受けたAP(AP20b)の適性値返信部221は、RSSIを返信する(ステップS430)。返信要求を受けた時に省電力モードであるAP(AP20b)は、上記返信に先立ち、通常モードに復帰する(ステップS420)。
【0047】
クレードル10の引継用送信部115は、最も強いRSSIを返信してきたAP(AP20b)に、通信開始用情報を送信する(ステップS440)。ここで送信対象となる通信開始用情報は、集約処理におけるステップS375において返信されるものと同じである。クレードル10は、ステップS440において通信開始用情報を送信するために、被集約クライアント装置(クライアント装置CLa,CLb)それぞれの通信開始用情報を、集約が終わった段階で、集約AP(AP20a)から取得する。
【0048】
通信開始用情報を受信したAP(AP20b)の引継部222は、その通信開始用情報を用いて、被集約クライアント装置(クライアント装置CLa,CLb)と通信を開始することによって、集約APを引き継ぐ(ステップS450)。
【0049】
一方、この引継がされない場合、通信開始用情報を受信したAP(AP20b)の特定用情報送信部223は、通信を開始できるクライアント装置とは通信を開始しつつ、通信を開始できないクライアント装置(クライアント装置CLa,20b)を特定する情報(特定用情報)をクレードル10に送信する(ステップS460)。
【0050】
クレードル10の補完部116は、特定用情報を受信すると、特定用情報によって特定されるクライアント装置との通信のために、次に強いRSSIを返信してきた他のAP(AP20a,20b以外のAPがある場合、そのAP)に通信開始用情報を送信する(ステップS470)。クレードル10は、全クライアント装置の通信が確保されるまで、ステップS470を繰り返す。
【0051】
RSSIを返信してきた全APを対象に通信開始用情報を送信しても、通信が確保されないクライアント装置が存在する場合は、そのクライアント装置の通信を確保するために、ステップS410から引継処理を再び実行する。再び実行する場合のステップS440において送信されるのは、通信が確保されていないクライアント装置についての通信開始用情報である。
【0052】
効果:
実施形態1によれば、参加AP全体の消費電力を低減できる。消費電力が低減されるAPは、省電力モードに移行したAPである。一方、集約APの消費電力は、担当クライアント装置が増加する分、増大する。しかし、この増大分は、省電力モードに移行することによって低減される分よりも小さい場合が多い。よって、複数のAP全体の消費電力が低減されることになる。
【0053】
AP同士が通信できることは、通信の集約ができることの十分条件でも必要条件でもないものの、AP同士が通信できない場合に比べ、通信の集約ができる可能性が高いと言える。集約処理は、これに着目したものである。しかも、AP同士が通信できることは、通信の集約ができることよりも検出が簡単である点において有利である。さらに集約処理は、AP同士の通信によるステップを含む点において、AP同士の通信ができることを活用している。
【0054】
初めに選定した集約APによる集約が失敗した場合は、集約APを引継させていくことによって、集約に成功する可能性を高めている。最終的に失敗した場合は、原状を回復することによって通信を継続できる。
【0055】
クレードル10からのRSSIが強いAPから順に集約APとして選定されることによって、集約後の通信を良好に行うことができる。
【0056】
クレードル10が各APに対するワイヤレス給電機能を有することによって、各APがクレードル10に近接する機会が増える。各APがクレードル10に近接すると、AP同士の距離が短くなりやすくなる。一方、通信の集約ができる可能性は、AP同士の距離が短ければ短いほど高くなる。よって、クレードル10のワイヤレス給電機能によって、通信の集約ができる可能性が高くなっている。
【0057】
AP同士が通信できる状態は、APとクライアント装置との通信同士が干渉しやすい状態である。通信の集約を行うことによって、この干渉を回避しやすくなる。
【0058】
実施形態2:
実施形態2の説明は、実施形態1と異なる点を説明することによって行う。実施形態2のクレードル10に備えられたCPUは、後述するように、集約処理の実行主体とならない。よって、このCPUは、選定通知部111、選定変更通知部112及び原状回復指示部113としては機能しない。
【0059】
AP20a,20b(
図6):
図6は、実施形態2のAP20a,20bの詳細構成を示すブロック図である。
図6に示すように、実施形態2のAP20a,20bは、CPU210の代わりにCPU510を備える。CPU510は、実施形態2の集約処理を実行することによって、適性値通知部511、送信部512、移行部514、通信開始部515、非開始後送信部516,復帰部517、選定変更後通信開始部518及び原状回復指示部519として機能する。
【0060】
集約処理(
図7):
図7は、実施形態2の集約処理を示すシーケンス図である。初めに、参加AP(AP20a,20b)それぞれの適性値通知部511が、他の参加APそれぞれに対して、自装置のSOCを通知する(ステップS610,ステップS615)。SOC(State Of Charge)とは、バッテリ250の最大充電容量に対する残量の比率を示す値である。
【0061】
他の参加APの何れかから通知されたSOCの方が、自装置のSOCよりも大きいAP(AP20b)の送信部512は、担当クライアント装置の通信開始用情報を、最も大きいSOCを通知してきたAP(AP20a)に送信する(ステップS635)。この送信をしたAP(AP20b)の移行部514は、自装置を省電力モードに移行させる(ステップS640)。
【0062】
省電力モードに移行したAP(AP20b)と通信していたクライアント装置(クライアント装置CLb)は、省電力モードに移行したAP(AP20b)との通信は中断されるので、他に通信できるAPを探し、アソシエーションを行う。他の参加APから通信開始用情報を受信したAP(AP20a)は集約APとなり、集約AP(AP20a)の通信開始部515が、このアソシエーションに応え、その通信開始用情報によって新たなクライアント装置との通信を開始することによって、被集約クライアント装置(クライアント装置CLa,CLb)との通信を集約し(ステップS650)、集約処理を終える。
【0063】
一方、この集約がされない場合、集約AP(AP20a)の非開始後送信部516は、自装置の次に大きなSOCを通知してきたAP(AP20b)に、通信開始用情報を送信する(ステップS660)。ここで送信対象となる通信開始用情報は、実施形態1のステップS375において返信されるものと同じである。この送信をしたAP(AP20a)のCPU510は、クレードル10及び担当クライアント装置(クライアント装置CLa)との通信を中断し、自装置を省電力モードに移行させる(ステップS677)。
【0064】
上記の通信開始用情報を受信したAP(AP20b)の復帰部517は、自装置を通常モードに復帰させる(ステップS667)。通常モードに復帰したAP(AP20b)は新たに集約APとなる。新たな集約AP(AP20b)の選定変更後通信開始部518は、元の担当クライアント装置(クライアント装置CLb)、及び取得した通信開始用情報によって特定されるクライアント装置(クライアント装置CLa)との通信を開始し、被集約クライアント装置(クライアント装置CLa,CLb)との通信を集約して(ステップS680)、集約処理を終える。
【0065】
この集約がされない場合、集約APの候補が残っているときは、集約AP(AP20b)の非開始後送信部516は、自装置の次に大きなSOCを通知してきたAPに通信開始用情報を送信する(ステップS660)。集約APの候補は、実施形態1の場合の「RSSI」を「SOC」に読み替えたものである。
【0066】
一方、集約APの候補が残っていないときは、集約AP(AP20b)のCPU510は、元の担当クライアント装置と通信を継続または開始する(ステップS682)。元の担当クライアント装置と通信を開始したAP(AP20b)の原状回復指示部519は、他の参加AP(AP20a)に、原状回復を指示する(ステップS687)。
【0067】
原状回復を指示されたAP(AP20a)は、原状回復し(ステップS692)、集約処理を終える。原状回復指示を受けた時に、省電力モードであるAP(AP20a)は、原状回復に先立ち、通常モードに復帰する(ステップS690)。
【0068】
実施形態2の効果:
実施形態1と異なり、クレードル10を介さずに通信の集約を実行することによって、集約処理のステップ数が減る。この結果、実施形態1に比べて集約処理が簡易になっている。SOCが高いAPから順に集約APとして選定されることによって、SOCが低いAPの消費電力を低減できる。
【0069】
他の実施形態:
本発明の実施形態は、先述した実施形態に限られず、発明の技術的範囲における種々の形態が採用され得る。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、先述した課題の一部または全部を解決するために、或いは、先述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことができる。その技術的特徴は、必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除できる。この他、例えば、以下のものが考えられる。
【0070】
実施形態1における集約APの選定において、及び/又は実施形態1,2の集約APを引き継ぐAPの選定において、RSSIに加えて又は代えてSOCに基づいても良いし、ランダムでも良いし、この他のものに基づいても良い。
実施形態2における集約APの選定において、SOCに加えて又は代えてRSSIに基づいても良いし、ランダムでも良いし、この他のものに基づいても良い。
AP同士のやり取りを趣旨とする何れのステップも、クレードル10を介してやり取りしても、介さずにやり取りしても良い。例えば、ステップS330及びステップS335における担当クライアント装置の通信開始用情報のやり取りを、クレードル10を介して行うようにしても良い。
【0071】
実施形態1,2における集約処理において、参加APが3つ以上の場合、参加AP全ての担当クライアント装置との通信を1つの集約APに集約するのに代えて、複数のAPに集約しても良い。
実施形態1,2における集約処理において、参加APが3つ以上の場合、一度に1つのAPに集約するのに代えて、集約を段階的に進めても良い。例えば、参加APが4つの場合、まず2つずつのAPで集約をし、集約したAP同士で更に集約をしても良い。このようにすれば、集約が部分的に可能な場合に、可能な範囲で集約を進めやすくなる。どのような順番で集約を進めるかについては、例えば、実施形態2の場合に、AP同士間の通信の信号強度が強い組み合わせから順に集約する手法などが考えられる。
【0072】
ワイヤレス給電の方式は、実施形態と異なっていても良い。例えば、磁界共鳴方式、電解結合方式、電波受信方式などが挙げられる。
クレードル10の代わりに、給電機能を有しない接続装置を用いても良い。
他の通信方式、例えば11g等を、実施形態で採用された通信方式に加えたり、何れかの通信方式に代えて採用したりしても良い。
通信方式は、IEEE802.11に準拠したものに限らず、現状、利用可能な他の方式でも良いし、将来的に利用可能となる方式でも良い。
ホームゲートウェイのインターネットへの接続方式は、例えば、USB等でも良い。
上記実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしても良く、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしても良い。