(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6135057
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】車両用インタークーラ
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20170522BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20170522BHJP
F02B 29/04 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
F28F9/02 301E
F28D1/053 A
F02B29/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-156433(P2012-156433)
(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公開番号】特開2014-20590(P2014-20590A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】高田 一秀
(72)【発明者】
【氏名】冨川 清一郎
【審査官】
▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−314990(JP,A)
【文献】
特開2005−077012(JP,A)
【文献】
特開2007−177786(JP,A)
【文献】
米国特許第05095882(US,A)
【文献】
特開2006−118436(JP,A)
【文献】
特開2010−038477(JP,A)
【文献】
特開2006−125731(JP,A)
【文献】
実開平02−124225(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第10238205(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F02B 29/04
F28D 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンへの吸気を流通させる複数のチューブを横方向に配置したコア部と、
前記コア部の吸気上流側に取り付けられて前記チューブに吸気を導入する中空状の入口ヘッダー部、筒状の入口パイプ部、及び該入口ヘッダー部と該入口パイプ部とを連結する中空状の入口連結部を有する吸気導入部と、を備える車両用インタークーラにおいて、
前記入口連結部は、吸気上流部が前記入口パイプ部と連結された直線中空状の入口上流直線部と、前記入口上流直線部と前記入口ヘッダー部との間に設けられた直線中空状の入口中間直線部と、前記入口上流直線部と前記入口中間直線部とを連結する曲線中空状の連結屈曲部と、を有し、かつ、吸気下流側の前記入口ヘッダー部との接続部から該接続部より吸気上流側の所定部位に至るまでの全域において、その上部外壁の縦断面形状を上方に突出させた円弧状に形成され、
前記連結屈曲部は、前記連結屈曲部の屈曲方向内側の曲率が前記連結屈曲部の屈曲方向外側の曲率よりも小さく形成されていることを特徴とする車両用インタークーラ。
【請求項2】
前記コア部の吸気下流側に取り付けられて前記チューブから吸気が流入する中空状の出口ヘッダー部、筒状の出口パイプ部、及び該出口ヘッダー部と該出口パイプ部とを連結する中空状の出口連結部を有する吸気導出部をさらに備え、
前記出口連結部は、吸気上流側の前記出口ヘッダー部との接続部から該接続部より吸気下流側の所定部位に至るまでの全域において、その上部外壁の縦断面形状を上方に突出させた円弧状に形成されている請求項1に記載の車両用インタークーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用インタークーラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両用インタークーラは、吸気を流通させる複数のチューブを車幅方向に配置したコア部と、過給機側に接続される円筒状の入口パイプ部、及びコア部の吸気上流側に取り付けられる縦長中空状の入口ヘッダー部を有する吸気導入部と、コア部の吸気下流側に取り付けられる縦長中空状の出口ヘッダー部、及びエンジン側に接続される円筒状の出口パイプ部を有する吸気導出部とを備えている。また、吸気導入部の入口パイプ部と入口ヘッダー部とは曲面中空状の入口連結部で連結されると共に、吸気導出部の出口ヘッダー部と出口パイプ部とは曲面中空状の出口連結部で連結されている。このような車両用インタークーラは、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−133198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸気の冷却効率を向上するには、各チューブ内の吸気流速を均一化することが好ましい。しかしながら、従来の車両用インタークーラの吸気導入部は、入口連結部の上部外壁の縦断面形状が吸気上流側から吸気下流側に至る全域において、外周側を斜めに切り欠いた逆V字状に形成されている(
図2中の破線A参照)。
【0005】
そのため、入口連結部の吸気流路は上方側ほど狭くなり、上方のチューブへの吸気の流れ込みが阻害されることで、各チューブ内の吸気流速を不均一にさせている。結果として、各チューブ内の吸気流量も不均一になり、コア部における吸気の冷却効率を十分に発揮できない可能性がある。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたもので、その目的は、各チューブ内の吸気流速を効果的に均一化することができる車両用インタークーラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の車両用インタークーラは、エンジンへの吸気を流通させる複数のチューブを横方向に配置したコア部と、前記コア部の吸気上流側に取り付けられて前記チューブに吸気を導入する中空状の入口ヘッダー部、筒状の入口パイプ部、及び該入口ヘッダー部と該入口パイプ部とを連結する中空状の入口連結部を有する吸気導入部と、を備える車両用インタークーラにおいて、前記入口連結部は、吸気下流側の前記入口ヘッダー部との接続部から該接続部より吸気上流側の所定部位に至るまでの全域において、その上部外壁の縦断面形状を上方に突出させた円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、前記入口連結部は、吸気上流側から吸気下流側の少なくとも一箇所以上を屈曲して形成され、かつ、その屈曲位置に曲率を小さくする入口R部が設けられてもよい。
【0009】
また、前記コア部の吸気下流側に取り付けられて前記チューブから吸気が流入する中空状の出口ヘッダー部、筒状の出口パイプ部、及び該出口ヘッダー部と該出口パイプ部とを連結する中空状の出口連結部を有する吸気導出部をさらに備え、前記出口連結部は、吸気上流側の前記出口ヘッダー部との接続部から該接続部より吸気下流側の所定部位に至るまでの全域において、その上部外壁の縦断面形状を上方に突出させた円弧状に形成されてもよい。
【0010】
また、前記出口連結部は、吸気上流側から吸気下流側の少なくとも一箇所以上を屈曲して形成され、かつ、その屈曲位置に曲率を小さくする出口R部が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用インタークーラによれば、各チューブ内の吸気流速を効果的に均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用インタークーラを示す模式的な斜視図である。
【
図2】(a)は本実施形態に係る車両用インタークーラの上視図、(b)は(a)の破線A領域における横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1〜3に基づいて、本発明の一実施形態に係る車両用インタークーラについて説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0014】
本実施形態の車両用インタークーラ1は、
図1に示すように、吸気と外気との熱交換を行うコア部10と、図示しない過給機からの吸気をコア部10に導入する吸気導入部20と、コア部10から図示しないエンジンに吸気を導出する吸気導出部30とを備えている。
【0015】
コア部10は、吸気を流通させる車幅方向に延在する複数のチューブ11と、各チューブ11間に介装された図示しない複数のアウターフィンと、貫通形成された図示しない複数の穴に各チューブ11の吸気上流端を挿通して固定する縦長の入口プレート13と、貫通形成された図示しない複数の穴に各チューブ11の吸気下流端を挿通して固定する縦長の出口プレート14とを備えている。本実施形態において、入口プレート13及び出口プレート14のプレート平面は、複数のチューブ11の軸方向と直交する。
【0016】
吸気導入部20は、過給機側の吸気管(不図示)に接続されて車両前後方向に延在する略円筒状の入口パイプ部21と、コア部10の入口プレート13に取り付けられた縦長中空状の入口ヘッダー部22と、入口パイプ部21と入口ヘッダー部22とを滑らかに連結する中空状の入口連結部23とを備えている。本実施形態において、入口パイプ部21と入口連結部23との接続位置は、入口ヘッダー部22の長手方向(上下方向)中心位置よりも上方に偏心されている。また、入口ヘッダー部22は、その外壁面が何れも図示しないシャシフレームや周辺部品と干渉しないように、下方側を縮小して形成されている。
【0017】
吸気導出部30は、エンジン側の吸気管(不図示)に接続された車両前後方向に延在する略円筒状の出口パイプ部31と、コア部10の出口プレート14に取り付けられた縦長中空状の出口ヘッダー部32と、出口パイプ部31と出口ヘッダー部32とを滑らかに連結する中空状の出口連結部33とを備えている。本実施形態において、出口パイプ部31と出口連結部33との接続位置は、出口ヘッダー部32の長手方向(上下方向)中心位置よりも上方に偏心されている。また、出口ヘッダー部32は、その外壁面が何れも図示しないシャシフレームや周辺部品と干渉しないように、下方側を縮小して形成されている。
【0018】
次に、
図2,3に基づいて、本実施形態の入口連結部23の詳細構成を説明する。
【0019】
図2(a)に示すように、入口連結部23は、吸気上流端を入口パイプ部21に連結された直線中空状の入口上流側直線部23aと、吸気下流端を入口ヘッダー部22の側面に連結された曲面中空状の入口下流側曲面部23bと、これら入口上流側直線部23a及び入口下流側曲面部23bを連結する直線中空状の入口中間直線部23cとを備えている。
【0020】
入口上流側直線部23aは、コア部10の背面側に配置されたラジエータ60との干渉を避けるように、その軸方向を入口パイプ部21の軸方向に対して傾斜させている。入口中間直線部23cは、その外周面がラジエータ60の側面と平行になるように、軸方向を車両前後方向に向けている。すなわち、入口上流側直線部23aと入口中間直線部23cとの連結部は所定の角度で屈曲する(
図2(a)中の領域A参照)。
【0021】
さらに、この屈曲位置には、
図2(b)に示すように、吸気流路の曲率を小さくする入口R部23dが設けられている。これにより、入口上流側直線部23a及び入口中間直線部23cは、吸気上流側から吸気下流側に至る全域において、吸気流路が全体的になだらかに形成されて、吸気の流れを促進することができる。
【0022】
入口下流側曲面部23bは、吸気上流側から吸気下流側に向かい車両内側に湾曲する曲面状に形成されている。また、
図3に示すように、入口下流側曲面部23bの上部外壁23eは、上方側における吸気の流路容積を確保するように、曲面開始位置の直上流側(所定位置)から入口ヘッダー部22との連結位置に至る全域において、その縦断面形状を上方に突出させた円弧状に形成されている。さらに、入口下流側曲面部23bにおける入口ヘッダー部22との連結部は、入口ヘッダー部22に向かうに従い拡張して形成されている(
図3中の領域B参照)。すなわち、上部外壁23eの吸気下流端部は、入口ヘッダー部22に近づくに従い上方に高くなるように形成されている。これにより、入口下流側曲面部23bは、その上方側における吸気の流路容積が大きく確保されて、入口ヘッダー部22内の上部領域から上方のチューブ11への吸気の流入を促進することができる。
【0023】
なお、詳細な説明及び図示は省略するが、出口連結部33の形状も入口連結部23と略同一に形成されている。すなわち、出口連結部33の出口上流側曲面部33bにおける上部外壁は、出口ヘッダー部32との連結位置から曲面終端位置の直下流側(所定位置)に至る全域において、その縦断面形状を上方に突出させた円弧状に形成され、かつ、その吸気上流端部を出口ヘッダー部32に近づくに従い上方に高くなるように形成されている。また、出口連結部33の出口下流側直線部33aと出口中間直線部33cとの連結部は所定の角度で屈曲し、かつ、その屈曲位置には吸気流路の曲率を小さくする出口R部33b(
図2(a)参照)が設けられている。これにより、上方のチューブ11から出口ヘッダー部32内、及び出口ヘッダー部32から出口連結部33を介して出口パイプ部31への吸気の流れが促進される。
【0024】
次に、本実施形態に係る車両用インタークーラ1による作用効果を説明する。
【0025】
吸気導入部20において、入口連結部23の入口下流側曲面部23bにおける上部外壁23eは、曲面開始位置の直上流側から入口ヘッダー部22との連結位置に至る全域において、その縦断面形状を上方に突出させた円弧状に形成され、かつ、その吸気下流端部を入口ヘッダー部22に近づくに従い上方に高くなるように形成されている。すなわち、入口連結部23の入口下流側曲面部23bは、その上方側における吸気の流路容積を大きく確保したことで、
図3中に破線で示す従来の形状に比べて圧損が低減されて、入口ヘッダー部22内の上部領域から上方のチューブ11への吸気の流入が促進される。
【0026】
したがって、本実施形態の車両用インタークーラ1によれば、各チューブ11内の吸気流速を効果的に均一化することができると共に、各チューブ11の吸気流量も均一化されて吸気の冷却効率を向上することができる。
【0027】
また、入口連結部23の入口上流側直線部23aと入口中間直線部23cとの連結部は所定の角度で屈曲すると共に、その屈曲位置には吸気流路の曲率を小さくする入口R部23dが設けられている。すなわち、屈曲位置に入口R部23dを設けたことで、入口連結部23の吸気流路は全体的になだらかに形成されている。
【0028】
したがって、本実施形態の車両用インタークーラ1によれば、入口パイプ部21から入口連結部23を介した入口ヘッダー部22への吸気の流れを効果的に促進することができる。
【0029】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0030】
例えば、上部外壁23eが上方に突出する円弧状に形成される範囲は、入口下流側曲面部23bにおける入口ヘッダー部22との連結位置から曲面開始位置の直上流側までとしたが、入口ヘッダー部22との連結位置から所定範囲(ゼロよりも大きい範囲)であればよく、さらに入口中間直線部23cや入口上流側直線部23aの全域まで延長してもよい。この場合も上述の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0031】
また、入口パイプ部21と入口連結部23との接続位置は、入口ヘッダー部22の長手方向(上下方向)中心位置よりも上方に偏心されるものとして説明したが、下方に偏心させてもよい。この場合は、入口連結部23の下部外壁の縦断面形状を下方に突出させた円弧状に形成すればよい。
【0032】
また、入口連結部23を屈曲させる部分は一カ所に限定されず、複数箇所を屈曲させてもよい。この場合は、全ての屈曲位置に吸気流路の曲率を小さくするR部を設ければよい。
【符号の説明】
【0033】
1 車両用インタークーラ
10 コア部
11 チューブ
20 吸気導入部
21 入口パイプ部
22 入口ヘッダー部
23 入口連結部
23d 入口R部
23e 上部外壁
30 吸気導出部
31 出口パイプ部
32 出口ヘッダー部
33 出口連結部
33d 出口R部