(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)2質量%水溶液の20℃における粘度が2〜6mPa・sであるヒドロキシプロピルセルロース 30〜60質量%
(B)4質量%水溶液の20℃における粘度が3〜6mPa・sであるポリビニルアルコール 2〜8質量%
(C)糖アルコール及び/又は多価アルコール 4〜20質量%
及び
(D)非イオン性界面活性剤 1〜5質量%
を含有し、(A)成分と(B)成分との配合割合を示す(A)/(B)が質量比として5〜25であることを特徴とするフィルム状口腔用組成物。
ポリエチレングリコールが、平均分子量400〜600のポリエチレングリコール及び/又は平均分子量2,000〜6,000のポリエチレングリコールである請求項2記載のフィルム状口腔用組成物。
(D)非イオン性界面活性剤が、脂肪酸の炭素数が8〜24かつグリセリンの重合度が2〜20であるポリグリセリン脂肪酸エステル、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5〜30モルであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びアルキル基の炭素数が14〜18かつエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜20モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる1種又は2種以上である請求項1乃至3のいずれか1項記載のフィルム状口腔用組成物。
【背景技術】
【0002】
従来、歯磨剤等の口腔用組成物には、ペースト状、液状、粉状などの形態の製剤があるが、歯磨き時の製剤使用量は使用者任せであるため、収容容器から必要以上に吐出させて過剰量で使用したり、あるいは吐出させる量が少なすぎて口腔衛生上、適切な量を使用できない場合があった。
また、近年、携帯用の電動歯ブラシの売れ行きが好調であり、外出先でもオーラルケアを行う人が増加しているが、この場合、使用する歯磨剤は従来型の130g入り程度のものを使用している人が多く、このような歯磨剤は、製剤形態として持ち運びや置き場所に困るオフィスに最適とは言い難かった。
【0003】
製剤を一定量で使用できるよう使用量の調整が容易で、かつ持ち運びに便利な製剤形態として、フィルム状の製剤が考えられる。この場合、口腔用組成物、特に歯磨剤としての使用を満足させるためには、口腔内に適用した後にフィルム基材が速やかに溶解し、泡立ち始めることが望ましく、また、フィルム状の形態で携帯し使用し易いものであるためには、携帯し易い容器に収容可能であり、使用時に取り扱い易いことが望ましい。
【0004】
これまでに、歯磨き用として使用し得る水溶性洗浄用フィルムとして、水溶性ポリマーと発泡性洗浄剤を特定量含有する技術が特許文献1(特開2007−197540号公報)に提案されている。この特許文献1のフィルムは、水溶性ポリマーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体を含有し、使用量調整が容易で、かつ発泡性が良く優れた洗浄力を有するものであるが、フィルム状製剤の溶解性や、使用時の手指のベタつきなどの取り出し易さについては検討されておらず言及されていない。
【0005】
また、溶解性に優れるシート状、フィルム状の製剤として、水溶性ポリマーを含有するシート状医薬製剤(特許文献2;特表2009−539897号公報)、ゲル化剤とフィルム剤とを含有し、制吐薬等の有効成分を配合したフィルム型製剤(特許文献3;特表2009−501751号公報)が提案されている。しかし、これらは、そもそも医薬品に関する技術であり、また、水溶性ポリマーの種類や配合量による最適化などの検討はなされていない。
特許文献4(特許第5014712号公報)には、水難溶性成分と水溶性高分子とを含有し、特定の非イオン性界面活性剤を配合した口腔内溶解フィルムが提案されている。この特許文献4は、水難溶性成分が水溶性高分子中に良好に分散し均一性が高い口腔内溶解フィルムを与える技術である。
【0006】
一方、フィルム状の製剤が唾液と接触した際の迅速な崩壊、溶解を達成するために、親水性のフィルムを形成するポリマーをフィルム基材として使用することはよく知られている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明のフィルム状口腔用組成物は、水溶性のフィルム基材として(A)特定粘度のヒドロキシプロピルセルロース及び(B)特定粘度のポリビニルアルコールを適切割合で含有し、かつ(C)糖アルコール及び/又は多価アルコール、(D)非イオン性界面活性剤を含有する。
なお、本発明において各成分の配合量は、組成物全体に対する配合量として記載するが、これは乾燥後のフィルム製剤全体に対する乾燥質量を意味する(以下、同様。)。
【0015】
(A)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、2%(質量%、以下同様。)水溶液の20℃における粘度が2〜6mPa・sであり、好ましくは2〜3mPa・sである。粘度が上記範囲外であると、特に口腔内での溶解性が劣り、本発明の効果を与えることができない。
なお、ヒドロキシプロピルセルロースの粘度は、B型粘度計(東機産業(株)製、型番:TVB−10、ローターL/Adpを使用、回転数60rpm、測定時間3分間)による測定値である(以下、同様。)。
【0016】
上記粘度のヒドロキシプロピルセルロースとしては、市販のものを使用できる。具体的には日本曹達(株)製のセルニーSSL、セルニーSL等が挙げられる。
【0017】
(A)ヒドロキシプロピルセルロースの配合量は、口腔内での溶解性の点から、組成物全体の30〜60%であり、好ましくは35〜60%、より好ましくは40〜55%である。配合量が30%未満では、柔軟性を確保できず、離型シートからの剥離性が劣る。60%を超えると、口腔内での溶解性が劣る。また、製剤化が難しくなる場合がある。
【0018】
(B)ポリビニルアルコール(PVA)は、4%水溶液の20℃における粘度が3〜6mPa・sであり、好ましくは3〜5mPa・sである。粘度が上記範囲外であると、特に口腔内での溶解性が劣り、本発明の効果を与えることができない。
なお、ポリビニルアルコールの粘度は、B型粘度計(東機産業(株)製、型番:TVB−10、ローターL/Adpを使用、回転数60rpm、測定時間3分間)による測定値である(以下、同様。)。
【0019】
上記粘度のポリビニルアルコールとしては、市販のものを使用できる。具体的には日本合成化学(株)製のゴーセノールEG−05、日本酢ビ・ポバール(株)製のポバールJP05等が挙げられる。
【0020】
(B)ポリビニルアルコールの配合量は、口腔内での溶解性、剥離性、手指への付着性の点から、組成物全体の2〜8%であり、好ましくは3〜6%である。配合量が2%未満では、製剤の柔軟性が確保できず、離型シートからの剥離性が劣り、また手指へのベタツキが生じる。8%を超えると、口腔内での溶解性が劣る。
【0021】
本発明においては、(A)、(B)成分を適切割合で併用した系を用いることが、効果発現に重要である。(A)成分を欠くと口腔内での溶解性が劣り、(B)成分を欠くと離型シートからの剥離性が劣り、また手指へのベタツキが生じ、取り扱い性に劣る。
【0022】
この場合、(A)、(B)成分の配合量の割合を示す(A)/(B)は、口腔内での溶解性、剥離性、手指への付着性の点から、(A)/(B)が質量比として5〜25であり、好ましくは7〜15である。(A)/(B)が5未満では口腔内での溶解性が劣る。25を超えると、製剤の柔軟性を確保できず、離型シートからの剥離性が劣り、また手指へのベタツキが生じ、取り扱い性に劣る。
【0023】
更に、本発明では、水溶性フィルム基材として(A)、(B)成分以外の水溶性高分子物質を、本発明の効果を妨げない範囲で配合してもよい。具体的には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、プルラン、ペクチン、カラギーナン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、トラントガム、グァーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グルコマンナン、アラビアガム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。これら水溶性高分子物質は配合しなくてもよいが、配合する場合は、組成物全体の10%以下、特に5%以下が好ましく、また、(A)、(B)成分を含めた水溶性高分子物質の合計配合量が組成物全体の32〜78%となる範囲内、特に45〜65%の範囲内であることが好ましい。
【0024】
(C)成分は糖アルコール及び/又は多価アルコールであり、例えば糖アルコールとしてソルビトール、キシリトール、エリスリトール等、多価アルコールとしてポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。中でもポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトールが好ましく、とりわけポリエチレングリコールが好適である。(C)成分としてポリエチレングリコールを用いると、製剤の柔軟性が向上し、特に離型シートからの剥離性がより優れる。
【0025】
ポリエチレングリコールとしては、平均分子量200〜20,000、特に400〜6,000のものが好適であり、中でも、平均分子量400〜600のポリエチレングリコール及び/又は平均分子量2,000〜6,000のポリエチレングリコールが好ましい。これらは1種単独でも2種以上組み合わせてもよいが、2種以上組み合わせることがより好ましく、具体的には平均分子量400〜600のポリエチレングリコールと平均分子量2,000〜6,000のポリエチレングリコールとの組み合わせ、とりわけ平均分子量400のポリエチレングリコールと平均分子量4,000のポリエチレングリコールとの組み合わせが好ましい。このようなポリエチレングリコールを用いると、より優れた柔軟性を与えることができる。
【0026】
なお、ポリエチレングリコールの平均分子量は、医薬部外品原料規格(外原規)2006記載の平均分子量を示し、外原規2006に収載されるポリエチレングリコール11000の平均分子量試験を用いて測定することができる(以下、同様。)。
測定法について詳述すると、ピリジン中で無水フタル酸と反応させてフタル酸エステルとし、過剰量の無水フタル酸を加水分解して水酸化ナトリウムで滴定することにより平均分子量を求める。
【0027】
ポリエチレングリコールとしては市販品を使用できる。具体的には、ポリエチレングリコール400(平均分子量380〜420)、ポリエチレングリコール4000(平均分子量2,600〜3,800)等が挙げられる。なお、市販品は商品によっては例えばポリエチレングリコール#4000等のように、ポリエチレングリコールと数値の間に#がつく場合がある。
【0028】
(C)糖アルコール及び/又は多価アルコールの配合量は、剥離性、手指への付着性の点から、組成物全体の4〜20%であり、好ましくは5〜15%、より好ましくは10〜15%である。4%未満では製剤の柔軟性が確保できず、離型シートからの剥離性が劣る。20%を超えると、手指へのベタツキが生じ、また、製剤の柔軟性が確保できず、離型シートからの剥離性が劣る。
【0029】
(D)非イオン性界面活性剤は、安定化剤であり、特に清涼感付与効果を経時で安定化し持続させることができる。非イオン性界面活性剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる1種又は2種以上を好適に使用できる。
【0030】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8〜24のものが好ましく、グリセリンの重合度は2〜20が好ましい。例えばラウリン酸デカグリセリル、オレイン酸デカグリセリル等が挙げられるが、特にラウリン酸デカグリセリルが好ましい。具体的には、市販されている阪本薬品工業(株)製のSY−グリスタ−ML−750、MO−7S等を使用できる。
【0031】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5〜30モルのものが挙げられる。例えば、市販のNIKKOL HCO−5、HCO−10、HCO−20、HCO−30(日光ケミカルズ(株)製)、BLAUNON CW−3、10、PCW−20(青木油脂産業(株)製)等を使用できる。
【0032】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、エチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜20モルで、アルキル基の炭素数が14〜18のものが挙げられる。例えば、EMALEX105、107、605、608(日本エマルジョン(株)製)、BLAUNON SR−705、707(青木油脂産業(株)製)等の市販品を使用できる。
【0033】
(D)非イオン性界面活性剤としては、中でもポリグリセリン脂肪酸エステル、とりわけラウリン酸デカグリセリルが、特に清涼感付与効果の安定性の点から好適である。
【0034】
(D)非イオン性界面活性剤の配合量は、清涼感付与効果の安定性の点から、組成物全体の1〜5%が好ましく、より好ましくは2〜4%である。配合量が多いほど清涼感付与効果を安定化できるが、多く配合し過ぎると苦味やベタツキが発現することがある。5%以下であると、苦味や手指へのベタツキが生じることなく清涼感付与効果を安定化することができる。
【0035】
本発明のフィルム状口腔用組成物は、通常の口腔用組成物と同様、l−メントールを配合することができる。なお、l−メントールの配合量は特に限定されず通常量でよく、組成物全体に対して3〜8%が好ましい。
【0036】
本発明のフィルム状口腔用組成物は、口腔用フィルム製剤、特に口腔内溶解フィルム製剤として好適に調製され、特にフィルム状の歯磨剤として有効に用いることができる。本発明にかかわる口腔内溶解フィルム製剤は、複数枚を積み重ねて収容容器に収容し、使用時に破損することなく素手で容易に必要枚数を取り出すことができ、その際にフィルム同士が付着したりフィルムが手指に付着せずベタツキ感を与えることなく容易に取り扱うことができる。また、このフィルム製剤は、舌の上にのせたり頬内に貼付するなどして口腔内に適用し、適用後は口中に水を含まなくても唾液の浸入により10秒未満、特に6秒未満という短時間でフィルム基材が溶解して製剤が崩壊し、配合成分が溶出するもので、この場合、研磨剤等の水不溶性成分は口腔内に分散し、また、有効成分等の配合成分由来の効果が発現する。
このようなフィルム製剤は、フィルム状の歯磨剤、口中清涼剤、洗口剤等として使用し得る。特に、歯磨剤として好適であり、口腔内適用後すぐに通常の方法で歯磨きすることで歯磨剤として使用し得る。
【0037】
本発明組成物には、適用目的、剤型等に応じて、上記成分以外にも適宜な公知成分を本発明の効果を妨げない範囲で配合できる。例えばフィルム状歯磨剤では、研磨剤、界面活性剤、更に必要により香料、甘味料、着色剤、防腐剤、賦形剤、有効成分などが挙げられる。
【0038】
研磨剤としては、シリカゲル、沈降シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム2水和物及び無水和物、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂系研磨剤などが挙げられる。研磨剤の配合量は、組成物全体の2〜40%、特に10〜30%が好ましい。
【0039】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合できる。アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン酸塩、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩など、両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルイミダゾリニウムベタイン等のベタイン系などが挙げられる。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、中でも発泡性に優れるラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩が好適に配合され、これにより泡立ちが優れる製剤を与えることができる。
これら界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.001〜5%が好ましく、(D)非イオン性界面活性剤を含めた界面活性剤の総配合量が組成物全体の10%以下となる範囲が好ましい。
【0040】
香料としては、l−メントールに加えて、その他の香料、例えばペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。
また、配合量は特に限定されないが、これらの香料素材は、l−メントールと合わせて組成物中に6〜15%使用するのが好ましい。
【0041】
甘味料としては、サッカリンナトリウム等が挙げられ、着色剤としては、青色1号、黄色4号、二酸化チタン等が挙げられる。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等の安息香酸又はその塩などが挙げられる。賦形剤としては、クロスポピドン、部分α化デンプン等が挙げられる。
【0042】
有効成分としては、口腔用組成物に通常配合されるものを使用できる。例えばイソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン性殺菌剤、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸等の抗炎症剤、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ等の酵素、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、アスコルビン酸やその誘導体、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、グルコン酸銅、銅クロロフィリンナトリウム等の銅化合物、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化ストロンチウムなどの無機塩類、酢酸トコフェロール等のビタミン類、ゼオライト、アズレン、ジヒドロコレステロール、クロロフィル、トウキ軟エキス、タイム、オウゴン、チョウジ、ハマメリス等の植物抽出物、歯石防止剤、歯垢防止剤などが挙げられる。これら有効成分は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合できる。
【0043】
本発明のフィルム状口腔用組成物は、その製造方法に特に制限はなく、公知の方法を採用してフィルム製剤に調製できる。具体的に口腔内溶解フィルム製剤を調製するには、まず、水等の溶媒に配合成分を添加、混合してフィルム形成用スラリー液を調製し、このフィルム形成用スラリー液を離型シートの上に塗工、乾燥して薄膜状のフィルムを形成させた後、形成した薄膜状フィルムから離型シートを剥離することで、口腔内溶解フィルム製剤を得ることができる。なお、スラリー液は調製時に必要により90〜95℃程度に加温して配合成分を溶解させてもよい。
また、離型シートとしては、例えば、表面にマット処理を施したポリプロピレンなどの樹脂フィルムが使用できる。フィルム形成用スラリー液の塗工には、ハンドコーターなどの公知のコーターを使用できる。塗工後の乾燥温度は適宜設定できるが、65〜120℃が好ましい。
【0044】
この場合、フィルム製剤の形状は、口腔内へ適用可能な範囲で調整できるが、本発明の効果を与えるには、フィルムの厚さが適度であることがより好ましい。フィルムの厚さは、好ましくは25〜125μm、より好ましくは30〜60μm、更に好ましくは50μm程度であり、乾燥後の薄膜状フィルムの厚みが上記範囲内になるよう、具体的にはハンドコーターの厚みを適宜調整するなどして組成物を離型シート上に塗工することが望ましい。
また、フィルム製剤の大きさ(面積)は、好ましくは1〜5cm
2、より好ましくは2〜4cm
2であり、得られた薄膜状フィルムをこのような大きさに裁断することが好ましい。
なお、本発明において、フィルム製剤を収容する容器は、特に限定はなく、適宜な枚数の製剤を積み重ねて収容可能で、携帯し易く、また使用時にフィルム製剤を取り出し易い形態のプラスチック製容器等を好適に使用できる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0046】
[実施例1〜22、比較例1〜13]
表1〜3に示す成分を含有する口腔内溶解フィルム(フィルム状歯磨剤組成物)を下記方法で調製し、評価した。結果を表1〜3に示す。
【0047】
(1)口腔内溶解フィルムの製造方法
口腔内溶解フィルムは、フィルム状歯磨剤組成物に配合される各成分を含有するフィルム形成用スラリー液を調製し、このフィルム形成用スラリー液を、離型シート(20×50cm、表面にマット処理を施したポリプロピレン)の上にハンドコーターを用いて下記の厚みになるように常法で塗工後に乾燥し、薄膜状のフィルムを離型シート上に形成させ、その後、離型シートを剥離し、得られた薄膜状フィルムを裁断することにより製造した。このようにして形成された口腔内溶解フィルムは、厚み50μmであり、2.0×1.5cmに裁断し、プラスチックケース(3×2.5cm)に複数枚を積み重ねて入れた。
なお、フィルム形成用スラリー液の調製方法は以下の通りである。
まず、水に(B)成分を加えて撹拌、分散させて90℃程度まで加温し、(B)成分を溶解させた。冷却した後、(C)、(D)成分を加えて溶解させ、その後に(A)成分、アルギン酸ナトリウムを順に加えて溶解させた。得られた混合溶液に、他の成分を加えて、フィルム形成用スラリー液とした。なお、比較例は上記方法に準じて調製した。
【0048】
なお、表中の各成分の配合量は、いずれも乾燥後のフィルム製剤全体に対する乾燥質量(%)であり、フィルム形成用スラリー液への配合量ではない。後述の実施例23〜25についても同様である。
【0049】
また、各例の調製に用いた使用原料の詳細を下記に示す。なお、粘度については、ヒドロキシプロピルセルロースは2%水溶液の粘度(20℃)、ポリビニルアルコールは4%水溶液の粘度(20℃)であり、それぞれ上記と同様にB型粘度計で測定した値である。また、ポリエチレングリコールの平均分子量は上記と同様に外原規2006記載の平均分子量である。
(A)ヒドロキシプロピルセルロース
HPC−1;セルニーSSL、粘度2.5mPa・s(日本曹達(株)製)
HPC−2;セルニーSL、粘度4.8mPa・s(日本曹達(株)製)
HPC−3(比較品);セルニーM、粘度200mPa・s(日本曹達(株)製)
(B)ポリビニルアルコール
PVA−1;ゴーセノールEG−05、粘度5.0mPa・s(日本合成化学(株)製)
PVA−2;ポバールJP05、粘度5.0mPa・s(日本酢ビ・ポバール(株)製)
PVA−3;(比較品)ゴーセノールEG−40、粘度43mPa・s(日本合成化学(株)製)
(C)糖アルコール及び/又は多価アルコール
PEG400;ポリエチレングリコール400(平均分子量400、三洋化成(株)製)
PEG4000;ポリエチレングリコール4000(平均分子量3,400、三洋化成(株)製)
グリセリン;濃グリセリン(阪本薬品工業(株)製))
ソルビトール;75%ソルビトール液(ロケット社製)
(D)非イオン性界面活性剤
ラウリン酸デカグリセリル;SY−グリスタ−ML−750(阪本薬品工業(株)製)
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油;BLAUNON PCW−20(青木油脂産業(株)製)
【0050】
(2)口腔内溶解フィルムの評価方法
<口腔内での溶解性>
専門家の評価者10人を用いた官能試験により、下記方法で口腔内での溶解性を評価した。
口腔内溶解フィルム1枚を舌上にのせて適用して溶解状態を下記の評点基準に従って評価した。なお、この口腔内での溶解性とは、フィルム基材が口腔内で溶解するのに要する時間であり、研磨剤等の水不溶性成分は口腔内に分散する。
評点基準
4点:口腔内で6秒未満のうちに溶解する。
3点:口腔内で6秒以上10秒未満の範囲内で溶解する。
2点:口腔内で10秒以上30秒未満の範囲内で溶解する。
1点:口腔内での溶解に30秒以上かかる。
10名の評点結果を平均し、下記の基準により評価した。下記の基準で◎及び○の溶解性が確保されるものを、口腔内での溶解性が良好なフィルム製剤であると判断した。
評価基準
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0051】
<離型シートからの剥離性>
評価者5人で、下記方法で離型シートからの剥離性を評価した。
離型シートにフィルム形成用スラリー液を塗工、乾燥後、得られた薄膜状のフィルムを離型シートから剥離する際の剥離性を下記の評点基準に従って評価した。
評点基準
4点:フィルムを抵抗なく剥離できる。
3点:フィルムを剥離するときに抵抗はあるが破れずに剥離できる。
2点:剥離するときにフィルムが破れる。
1点:フィルムを剥離することができない。
5名の評点結果を平均し、下記の基準により評価した。下記の基準で◎及び○の剥離性が確保されるものを、離型シートからの剥離性が良好であり、製造時の取り扱い性に優れるフィルム製剤であると判断した。
評価基準
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0052】
<手指への付着のなさ>
評価者5人で、手指への付着のなさを下記方法で評価した。
口腔内溶解フィルム1枚を素手で持った際の手指のベタツキ感について下記評点基準で評価した。
評点基準
4点:手指に全くベタツキを感じず、素手で非常に取り扱い易い。
3点:手指にベタツキを感じず、素手で取り扱い易い。
2点:手指にややベタツキを感じ、素手で取り扱うことがやや難しい。
1点:手指がベタツキ、素手で取り扱うことが難しい。
5名の評点結果を平均し、下記の基準により評価した。下記の基準で◎及び○のベタツキのなさが確保されるものを、手指への付着のなさが良好であり、使用時の取り扱い性に優れるフィルム製剤であると判断した。
評価基準
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0053】
<清涼感付与効果の保存安定性>
専門家の評価者10人を用いた官能試験により、下記方法で評価した。
口腔内溶解フィルムを収容容器に収容した状態で、25℃で1ヶ月間保存した後、一枚を取り出して舌の上にのせて使用し、その際の清涼感付与効果について、以下の評点基準で評価した。
評点基準
4点:清涼感を強く感じる。
3点:清涼感を感じる。
2点:清涼感をわずかに感じる。
1点:清涼感を全く感じない。
10名の評点結果を平均し、下記の基準により評価した。下記の基準で◎及び○の清涼感が感じられるものを、清涼感付与効果の保存安定性が良好なフィルム製剤であると判断した。
評価基準
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
次に、実施例23〜25として、下記組成の製剤を上記と同様の原料を用いて同様にしてフィルム状に調製し、同様に評価したところ、口腔内での溶解性、離型シートからの剥離性、手指への付着のなさ、清涼感付与効果の保存安定性に優れていた。
【0058】
[実施例23] フィルム状口中清涼剤
HPC−1(セルニーSSL) 52.0%
PVA−1(ゴーセノールEG−05) 5.0
PEG400 5.0
PEG4000 10.0
ラウリン酸デカグリセリル 4.0
アルギン酸ナトリウム 4.0
塩化カルシウム 0.4
クロスポピドン 9.0
サッカリンナトリウム 0.4
l−メントール 5.1
香料* 5.1
合計 100.0%
【0059】
[実施例24] フィルム状洗口剤
HPC−1(セルニーSSL) 48.9%
PVA−1(ゴーセノールEG−05) 5.2
PEG400 4.6
PEG4000 10.1
ラウリン酸デカグリセリル 3.5
アルギン酸ナトリウム 4.3
塩化カルシウム 0.4
クロスポピドン 8.6
ラウリル酸ナトリウム 2.0
サッカリンナトリウム 0.6
l−メントール 5.9
香料* 5.9
合計 100.0%
【0060】
[実施例25] フィルム状歯磨剤
HPC−1(セルニーSSL) 42.8%
PVA−1(ゴーセノールEG−05) 4.5
PEG400 4.0
PEG4000 8.8
ラウリン酸デカグリセリル 3.0
アルギン酸ナトリウム 3.8
塩化カルシウム 0.4
無水ケイ酸 12.6
クロスポピドン 7.5
ラウリル硫酸ナトリウム 1.8
サッカリンナトリウム 0.6
l−メントール 5.1
香料* 5.1
合計 100.0%