(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記含窒素有機化合物を有する化合物が、アルキルアミン類、アミノ基含有アルコール類、カルボキシル置換アルキルアミン類、イミダゾール類、ピペラジン類、グアニジン類、ピペリジン類およびピロリジン類のいずれか一種、若しくは二種以上の混合物であることを特徴とする請求項2に記載の微細炭素繊維分散液。
前記微細炭素繊維が、炭素原子のみから構成されるグラファイト網面が、閉じた頭頂部と下部が開いた胴部とを有する釣鐘状構造単位を形成し、前記胴部の母線と繊維軸とのなす角θが15°より小さく、前記釣鐘状構造単位が、中心軸を共有して2〜30個積み重なって集合体を形成し、前記集合体が、Head−to−Tail様式で間隔をもって連結して繊維を形成している微細炭素繊維であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の微細炭素繊維分散液。
微細炭素繊維と、アミド系有機溶媒である分散媒と、ポリマー系分散剤と、水中でのpKaが7.5以上である有機塩基性化合物とを混合し、超音波処理及び/又は撹拌・粉砕処理を行なうことを特徴とする微細炭素繊維分散液の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の微細炭素繊維分散液は、微細炭素繊維と、分散媒と、ポリマー系分散剤と、pKaが7.5以上である塩基性化合物とからなる。本発明で用いるポリマー系分散剤は、それ自体が微細炭素繊維の分散剤として機能するものであれば特に限定されないが、具体的にはセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等が挙げられる。これらポリマー系分散剤は、それぞれ単体で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いても構わない。これらのポリマーは、分散媒中で微細炭素繊維に吸着して被覆し、ポリマー分子鎖同士の立体反発によって分散安定化していると考えられている。
【0013】
本発明で用いるセルロース誘導体としては、微細炭素繊維を分散安定化できるものであれば特に限定されないが、具体的にはメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、それぞれ単体で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いても構わない。
【0014】
本発明で用いるポリビニルアセタールとしては、微細炭素繊維を分散安定化できるものであれば特に限定されないが、具体的にはポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール及びその混合物が挙げられる。
【0015】
本発明で用いるポリマー系分散剤の分子量は、微細炭素繊維を分散安定化できる範囲で特に限定されず、分散剤の種類によっても異なるが、通常重量平均分子量が5000〜100000程度であれば好適に分散できる。高濃度で粘度の低い分散液を得る場合は、重量平均分子量が8000〜50000であることが特に好ましい。
【0016】
本発明で用いるポリマー系分散剤の添加量は、微細炭素繊維の配合量、分散剤の種類、及び用途に応じて適宜定めることができるが、一般には微細炭素繊維の重量に対して10%以上、分散媒の重量に対して20%以下であれば、微細炭素繊維を十分に分散させることができる。微細炭素繊維の重量に対して10%以下であると、微細炭素繊維表面に吸着し、分散剤として働く分散剤の量が不足するために、一部の微細炭素繊維は凝集して多くの沈殿物が生じたり、分散液の粘度が非常に高くなって機械的分散処理が出来なったりする危険性がある。また、分散媒の重量に対して20%以上であると、分散剤の分散媒中での分子運動が困難になるために、微細炭素繊維表面に十分な量の分散剤が吸着することが困難となり、分散剤溶液の粘度が高すぎて機械的分散処理が困難となる。導電性を付与する為の分散液として塗膜、導電助剤、他のポリマーに添加する場合は分散性を保つ範囲で分散剤の添加量を少なくする事が好ましい。なお、後述するpKaが7.5以上である塩基性化合物を加える事で、分散性が向上して分散液の粘度が低下するため、本発明におけるポリマー系分散剤の使用量は、ポリマー系分散剤単体で用いる場合よりも少量にする事が可能である。
【0017】
本発明において、上記のポリマー系分散剤と共に、必要に応じてアニオン性分散剤、カチオン性分散剤、両性分散剤、非イオン性分散剤などの公知の分散剤を併用する事もできる。
【0018】
アニオン性分散剤の例としては、芳香族スルホン酸系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩等)、モノソープ系アニオン性界面活性剤、エーテルサルフェート系界面活性剤、フォスフェート系界面活性剤、カルボン酸系界面活性剤などが挙げられる。また、コール酸、オレイン酸などや、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸なども好適に使用できる。シクロデキストリンなどはアニオン性官能基で修飾することによって使用することが可能である。エステル基を有するポリマー、オリゴマーのエステル部分を加水分解してアニオン性官能基に変換して使用することも可能である。
【0019】
カチオン性分散剤の例としては、第4級アルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルアミン塩等のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド等のカチオン性基を有する化合物が挙げられる。
【0020】
両性分散剤の例としては、アルキルベタイン系界面活性剤(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、プロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン)、スルホベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤などが挙げられる。
【0021】
非イオン性分散剤としては、エーテル系(ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等)およびエステル系(ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンジステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等)、ソルビトールおよびグリセリン等の多価アルコール脂肪酸のアルキルエーテルおよびアルキルエステル、アミノアルコール脂肪酸アミド等の界面活性剤が挙げられる。
【0022】
本発明では、pKaが7.5以上である塩基性化合物を加える事で、格段に微細炭素繊維の分散性が向上して粘度が低減し、高濃度であっても粘度及びチキソ性が低い微細炭素繊維分散液が得られる。塩基性化合物はpKaが7.5以上であれば特に限定はされないが、1〜3級アミノ基を有する含窒素有機化合物や、金属塩である事が好ましい。
【0023】
含窒素有機化合物としては、分子内に少なくとも1つの1〜3級アミノ基を有する化合物(以下、1〜3級アミンという)が好ましい。本出願において、1〜3級アミノ基は中心チッ素原子に対する3つの結合がすべて単結合である構造を意味する。このような1〜3級アミノ基を1つ有していれば、分子内にその他のチッ素原子を有していてもよく、その他のチッ素原子は1〜3級アミノ基であっても、2重結合を有するイミノ基を構成してもよい。分子内にその他のチッ素原子を有する場合、アミノ基のチッ素原子と隣接しないことが好ましい。
【0024】
1〜3級アミンとしては、脂肪族アミンが好ましく、鎖状(分岐、直鎖)であっても環状であってもよい。環状アミンの場合、飽和環が好ましい。環状アミンでない場合、アミノ基と共にイミノ基等の不飽和基を有していてもよい。また、脂肪族アミンの炭化水素基部分は、OH、アミノ基、COOH等で置換されていてもよい。また、脂肪族基の中の−CH2−が、Oで置き換えられていてもよく、このときアミノ基のチッ素原子と隣接しない方が好ましく、例えばアルキルアミン類、アミノ基含有アルコール類、カルボキシル置換アルキルアミン類、イミダゾール類、ピペラジン類、グアニジン類、ピペリジン類およびピロリジン類を挙げる事ができる。
【0025】
アルキルアミン類としては、存在するアルキル基が互いに独立して、分岐または直鎖アルキル基、または脂環式基を有する1〜3級アミンが好ましく、より好ましくは分子中の炭素数の合計が15以下となるようにアルキル基を有する。具体的にはヘキシルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N−プロピルエチルアミン、N−ブチルエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等を挙げることができる。また、アルキル基はアミノ基で置換されていてもよく、その場合2以上の1〜3級アミノ基を含有することになり、例えばエチレンジアミン、ジエチレンジアミントリアミン等のジまたはトリアミンを挙げることができる。
【0026】
アミノ基含有アルコール類としては、上記のアルキルアミンにおいて、アルキル基の水素がOHで置換された化合物が好ましく、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、N−n−ブチルエタノールアミン、2−(メチルアミノ)エタノール等を挙げることができる。
【0027】
カルボキシル置換アルキルアミン類としては、上記のアルキルアミンにおいて、アルキル基の水素がCOOHで置換された化合物が挙げられ、エチレンジアミン四酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、1,2−プロパンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、トランス1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、ジカルボキシメチルアスパラギン酸、S,S−エチレンジアミン二コハク酸、エチレンジアミン二(o−ヒドキシフェニル)酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、メチルグリシン二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸等が挙げられる。また、カルボキシル基の一部または全部が、Na等のアルカリ金属と塩を形成していてもよい。
【0028】
イミダゾール類としては、具体的には1,2−ジメチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−4−エチルイミダゾール等が挙げられる。
【0029】
ピペラジン類としては、無置換、またはアルキル基で置換されたピペラジンが好ましく、ここでアルキル基は、さらにアミノ基を有していてもよい。アルキル基の置換位置は、ピペラジン環中の任意の位置でよく、チッ素原子上であっても、炭素原子上であってもよい。具体的には、ピペラジン、1−メチルピペラジン、1−エチルピペラジン、1−プロピルピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジエチルピペラジン、1,4−ジプロピルピペラジン、2−メチルピペラジン、2−エチルピペラジン、3−プロピルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,6−ジエチルピペラジン、2,6−ジプロピルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,5−ジエチルピペラジン、2,5−ジプロピルピペラジン等を挙げることができる。また、1−アミノエチルピペラジンのような、アミノアルキル基で置換されたピペラジンも好ましい。
【0030】
その他、含窒素有機化合物としてグアニジン類、ピペリジン類、ピロリジン類が挙げられ、具体的には、グアニジンおよびグアニジン塩類、ピペリジン、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、1−プロピルピペリジン、2、3または4−メチルピペリジン、2、3または4−エチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,6−ジエチルピペリジン、2,6−ジプロピルピペリジン、2,4−ジメチルピペリジン、2,4−ジエチルピペリジン、1−アミノエチルピペリジン、モルホリン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、1−エチルピロリジン、1−プロピルピロリジン、2または3−メチルピロリジン、2または3−エチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、2,5−ジエチルピロリジン、2,5−ジプロピルピロリジン、2,4−ジメチルピペリジン、2,4−ジエチルピペリジン、1−アミノエチルピロリジン等を挙げることができる。
【0031】
含窒素有機化合物の沸点は特に限定されないが、電極用途等、残存による悪影響が懸念される場合は、混合するバインダー樹脂の熱分解温度以下である事が好ましく、電極ペーストの乾燥温度以下である事がより好ましい。具体的には300℃以下である事が好ましく、200℃以下であることがより好ましい。本発明において、沸点の低い含窒素有機化合物を用いた場合の重要な利点の一つは、乾燥時に含窒素有機化合物が蒸発するため、最終的な使用形態においては系内に残存しない点である。含窒素有機化合物の残存による悪影響が無い用途で用いる場合はこの限りでは無い。
【0032】
pKaが7.5以上の金属塩としては、アルカリ金属と弱酸との塩が好ましく、アルカリ金属はNaおよびKが好ましく、弱酸としては炭酸、シュウ酸、酢酸、リン酸および炭素数4以下のカルボン酸が好ましく、特に炭酸、シュウ酸、酢酸、リン酸が好ましい。具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム等を挙げることができる。また、ポリマーの加水分解による経時劣化が加速される懸念はあるが、強酸との塩である水酸化ナトリウム等も用いる事が出来る。金属塩は上記の含窒素有機化合物と異なり、乾燥後も系内に残存する為、残存による悪影響が無い用途で利用する事が好ましい。
【0033】
尚、pKaの値は、ケミカル・アブストラクトなどのベータベースに基づいた検索サービスとして知られるSciFinder(登録商標)によって容易に検索することができる。ここでは、Advanced Chemistry Development(ACD/Labs)Software V11.02(Copyright 1994−2011 ACD/Labs)によって検索された文献値を採用した。
【0034】
なお、用いる塩基性化合物は一種であっても、複数種の混合物であってもよい。
【0035】
本発明で用いる塩基性化合物の使用量は、上記のポリマー系分散剤の重量に対して2%以上、50%以下、微細炭素繊維の重量に対して0.5%以上、12.5%以下であれば、微細炭素繊維を十分に分散させることができる。塩基性化合物の使用量が少なすぎる場合は、微細炭素繊維分散液の粘度低減効果が殆ど見られず、また多すぎる場合は、塩基性化合物自体の残存による悪影響や、ポリマー系分散剤の加水分解による経時劣化が加速される懸念がある。
【0036】
本発明における分散媒は、上記のポリマー系分散剤が溶解可能で、微細炭素繊維が分散可能な範囲で特に限定されないが、水、及びまたは、水溶性有機溶媒のいずれか一種、若しくは二種以上からなる混合溶媒であることが好ましい。
【0037】
水溶性有機溶媒としては、アルコール系(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ベンジルアルコールなど)、多価アルコール系(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコールなど)、多価アルコールエーテル系(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルなど)、アミド系(N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン(NEP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルカプロラクタムなど)、複素環系(シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトンなど)、スルホキシド系(ジメチルスルホキシドなど)、スルホン系(ヘキサメチルホスホロトリアミド、スルホランなど)、低級ケトン系(アセトン、メチルエチルケトンなど)、その他、テトラヒドロフラン、尿素、アセトニトリルなどを使用することができる。この中でも電池用電極ペーストへの応用の観点から水及び又はアミド系有機溶媒であることがより好ましく、アミド系有機溶媒の中でもN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0038】
本発明で用いる微細炭素繊維は、用途に応じて使い分けられ、特に限定されないが、具体的には、気相成長法炭素繊維、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブのことを示す。
【0039】
本発明において、特に一般的に多層カーボンナノチューブと言われる、平均直径が5以上、20nm以下である微細炭素繊維を用いる場合、DBP吸油量が250ml/100g以上、400ml/100g以下であると、良好な導電付与特性を担保しながらも、より粘度の低い分散液を得る事が出来る。
【0040】
前記のようなDBP吸油量が250ml/100g以上、400ml/100g以下の微細炭素繊維を得る場合、マグネシウムが置換固溶したコバルトのスピネル型酸化物を含む触媒上に、CO及びH2を含む混合ガスを供給して反応させることによって製造された微細炭素繊維である事が好ましい。
【0041】
また、前記のようなDBP吸油量が250ml/100g以上、400ml/100g以下の微細炭素繊維は、炭素原子のみから構成されるグラファイト網面が、閉じた頭頂部と下部が開いた胴部とを有する釣鐘状構造単位を形成し、前記胴部の母線と繊維軸とのなす角θが15°より小さく、前記釣鐘状構造単位が、中心軸を共有して2〜30個積み重なって集合体を形成し、前記集合体が、Head−to−Tail様式で間隔をもって連結して繊維を形成している事が好ましい。
【0042】
以上のような微細炭素繊維を用いる事で、分散媒に高濃度に分散した際も比較的粘度が低く、かつ均一に分散した微細炭素繊維分散液を得ることが可能となる。高濃度に分散した際に比較的粘度が低く、かつ均一に分散できる理由は定かではないが、下記の3点が影響しているものと推測される。第一に、本発明で用いられる微細炭素繊維は、DBP吸油量が低い為に分散媒への分散時に微細炭素繊維に取り込まれる分散媒量が少なく、結果として高濃度でも粘度の上昇が小さいことが挙げられる。なお、平均直径が20nm以上の場合、微細炭素繊維が太く、分散液中の微細炭素繊維の本数が少なくなる為、結果として分散液の粘度は低く抑える事が出来るが、平均直径20nm以下の微細炭素繊維を用いた場合のような高い導電性との両立を図ることは難しい。第二に、本発明に用いられる微細炭素繊維は、CO及びH2を含む混合ガスを供給して反応させることによって製造することで、エチレンガスやメタン等の炭化水素を炭素源として用いて製造される従来のMWNT等の微細炭素繊維と比較して、微細炭素繊維の成長が緩やかである為に微細炭素繊維同士の絡まりが弱く、均一に分散しやすいことが挙げられる。第三に、本発明で用いられる微細炭素繊維は、前記釣鐘状構造単位がHead−to−Tail様式で間隔をもって連結している為に、分散処理を施した際に適度に連結部分が外れることによって分散性が高く、かつ高濃度分散時の粘度上昇が小さいことが挙げられる。
【0043】
なお、本発明に用いられる微細炭素繊維およびその製造方法は、再公表特許WO2009/110570に記載のものと同様である。
【0044】
本発明の微細炭素繊維分散液において、微細炭素繊維の配合量は、微細炭素繊維が均一に分散している限り特に限定されるものではない。例えば微細炭素繊維として単層カーボンナノチューブを用いて、水やアミド系有機溶媒中に分散させる場合においては、溶媒の重量に対して0.005%〜1%までの範囲で分散性や用途に応じて適宜選択される。また、微細炭素繊維として多層カーボンナノチューブや気相成長法炭素繊維を用いる場合は0.005%〜20%までの範囲で分散性や用途に応じて適宜選択される。微細炭素繊維の濃度が20wt%を超える場合は分散液の粘度が高すぎるため、分散処理が困難となる。
【0045】
本発明において、微細炭素繊維と、分散媒と、ポリマー系分散剤と、pKaが7.5以上である塩基性化合物を分散混合する方法は、特に限定されない。例えば、分散媒にポリマー系分散剤と、pKaが7.5以上である塩基性化合物を溶解した溶液に、微細炭素繊維を投入し、超音波処理や、攪拌方法といった分散処理を行うことによって分散混合することができる。また、微細炭素繊維とポリマー系分散剤を混合後、分散媒とpKaが7.5以上である塩基性化合物を加えて希釈し、分散処理をすることもできる。さらに、微細炭素繊維と、分散媒と、ポリマー系分散剤とを混合して分散処理を施した後、pKaが7.5以上である塩基性化合物を後から添加しても構わない。
【0046】
超音波処理としてはバス型やプローブ型のソニケータを用いることができる。攪拌方法としては、ホモミキサー、ホモジナイザーのような高速攪拌やアトライター、ビーズミル、サンドミル、遊星ミル等のメディア型湿式分散装置や、湿式ジェットミル等の攪拌方法を使用することができる。微細炭素繊維を1重量%以下の低濃度に分散させる場合は、特に超音波処理が好適である。超音波処理の処理時間は、用いる微細炭素繊維の種類及び添加量、セルロース誘導体及び又はポリビニルピロリドンの種類及び添加量によって適宜決められるが、概ね10分〜5時間の処理が好ましく、10分〜3時間の処理がより好ましい。また、微細炭素繊維を1重量%以上の高濃度に分散させる場合は、アトライター、ビーズミル、サンドミル、遊星ミル等のメディア型湿式分散装置や湿式ジェットミルによる処理が特に好適である。メディア型湿式分散装置による処理時間は処理方法、用いる微細炭素繊維の種類及び添加量、ポリマー系分散剤の種類及び添加量によって適宜決められるが、概ね30分〜50時間の処理が好ましい。処理時間が短すぎると微細炭素繊維の分散が不十分となる恐れがある。また処理時間が長すぎると過度のエネルギーにより微細炭素繊維を傷付ける恐れがある。
【0047】
本発明の微細炭素繊維分散液の粘度は特に限定されるものではないが、分散性を保つ範囲でなるべく低い方が応用の観点から好ましく、後述する測定方法での回転粘度が50〜1000mPa・sであることが好ましく、500mPa・s以下であることが特に好ましい。分散液の粘度が高すぎる場合、塗膜にする際の塗布や、他の樹脂との混合が困難になる場合がある。また、電池用電極ペーストを得る為にバインダー樹脂や活物質へ混合する際に分散が不十分になる可能性や、電池用電極ペーストの粘度が高くなることで、成形時に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0048】
本発明の微細炭素繊維分散液中の分散された微細炭素繊維のサイズは特に限定されるものではないが、微細炭素繊維一本一本が凝集する事なく孤立分散している事が好ましく、
後述する測定方法でのメジアン径が0.1〜3μmである事が好ましく、0.3〜2μmであることが特に好ましい。メジアン径が3μm以下であると塗布した際に光沢を示しやすく、分散性良好な塗膜が得られる。メジアン径が大きすぎる場合は微細炭素繊維の凝集が多く、孤立分散出来ていない部分が多くなる為、高い光沢を示す塗膜は得られない。メジアン径が0.1μm以下になるまで分散処理をした場合、微細炭素繊維が短繊維化しすぎて、導電性に悪影響を及ぼす。
【0049】
本発明の微細炭素繊維分散液は、電池の電極への導電性を付与するための導電助剤として好適に利用する事ができる。導電助剤として利用する際は、微細炭素繊維分散液、活物質、バインダー樹脂を直接混合して電極ペーストを作成しても良いし、微細炭素繊維分散液と活物質を配合後、常圧または減圧下で乾燥・熱処理させることにより、前記活物質が微細炭素繊維によって被覆された微細炭素繊維被覆活物質を作成し、バインダー樹脂及び分散媒と混合して電極ペーストを作成しても良い。微細炭素繊維被覆活物質を作成する場合、電気特性の向上を図る為に分散剤を焼失させることが好ましく、これによって活物質が微細炭素繊維に被覆された微細炭素繊維被覆活物質が得られる。
【0050】
本発明の電極ペーストに用いる事が出来る電極活物質は特に限定されるものではなく、公知のものを好適に用いることができるが、リチウム含有金属複合酸化物、炭素粉末、ケイ素粉末、スズ粉末、またはケイ素若しくはスズを含む合金粉末が好ましい。電極ペースト中への微細炭素繊維分散液の配合量は、特に限定されないが、通常、電極活物質の固形分に対して微細炭素繊維の固形分で、0.3〜10wt%添加する事が好ましい。微細炭素繊維が少なすぎると、集電体に形成された活物質同士の導電性が発現できず、不活性な部分が多くなり、電極としての機能が不十分になることがある。また、微細炭素繊維の量が多すぎると、相対的に活物質量が減る為、結果として電池の容量が低下する。
【0051】
本発明の電極ペーストに用いる事ができるバインダー樹脂は特に限定されるものではないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリビニルブチラール、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、スチレンブタジエンゴムなどの各種ゴム、リグニン、ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、セルロース系樹脂、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、キチン類、キトサン類、デンプンなどが挙げられる。これらバインダー樹脂は、単独使用または2種以上併用することもできる。
【0052】
バインダー樹脂の配合量は特に限定されないが、通常、電極活物質の固形分に対して0.3wt%〜25wt%、より好ましくは1wt%〜10wt%以下である。バインダー樹脂が少なすぎると塗工特性が不十分であったり、電極組成物の結着が弱く、集電体から剥がれてしまったりする場合があり、バインダー樹脂が多すぎると電池特性が低下する場合がある。なお、電極ペースト中には、必要に応じて界面活性剤や粘度調整剤などの添加剤を加えることができる。
【0053】
本発明の電極ペーストは、各成分を配合後、ビーズミルやボールミルなどの公知の分散混合装置によって混合させることで得られる。混合させる方法は特に限定されないが、アトライター、ビーズミル、サンドミル、遊星ミル等のメディア型湿式分散混合装置による処理や、プラネタリーミキサー、トリミックス、フィルミックス、湿式ジェットミル等のメディアレス分散混合装置を好適に用いる事が出来る。
【0054】
本発明の電極ペーストは、アルミ箔や銅箔などの公知の集電体に塗布し、乾燥、圧密化させることで電池用電極として好適に利用できる。塗布及び乾燥方法は特に限定されず、公知の方法を用いる事ができる。本発明の電池用電極は、均一に分散した微細炭素繊維が活物質を均一に覆っている為、少量でも高い導電性の付与が期待できる。またそれぞれの活物質間を微細炭素繊維が繋いでいる為に活物質の高い利用効率が期待でき、充放電時の活物質の膨潤・収縮によっても活物質の孤立が起りにくい為にレート特性やサイクル特性の向上が期待される。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、表1の各分散液A〜E、各実施例、および比較例では、宇部興産株式会社製AMC(登録商標)(DBP吸油量330ml/100g)を微細炭素繊維として用いた。測定はJIS K 6217−4 ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部:オイル吸油量の求め方 を参考に、ブラベンダー社製 アブソープトメーターC型を用いて、回転翼125rpm、DBP滴下速度4.0ml/min.の条件で実施し、DBP吸油量の値は最大トルクの70%値を指標とした。
【0056】
本願では、まず塩基性化合物を添加せずに微細炭素の分散液A〜E(表1参照、後述)を作成し、この分散液A〜Eに塩基性化合物を加えることにより得られたものを、実施例1〜22の微細炭素繊維分散液として示す(表2参照、後述)。
【0057】
以下の例で用いた特性の測定方法を以下に示す。
【0058】
〔微細炭素繊維分散液の回転粘度測定及びTI値の算出〕
TOKIMEC社製の回転粘度計でコーン角1.34°、半径24mmのコーンプレートを用いて微細炭素繊維分散液の回転粘度を測定した。測定は、10rpm(ずり速度44.8s−1)、及び100rpm(ずり速度448s−1)で行い、10rpmでの測定値と100rpmでの測定値の比をTI値としてチキソ性の指標とした。
TI値=(10rpmでの回転粘度)/(100rpmでの回転粘度)
【0059】
〔粘度低下率の算出〕
分散液に塩基性化合物を添加した後の回転粘度の低下率を下記の式から算出して粘度低減効果の指標とした。算出には10rpmでの測定値を用い、20%以上粘度が低下した物を粘度低下効果が高いと判断した(実施例1〜22、表2参照)。
粘度低下率=(添加前の回転粘度−添加後の回転粘度)/(添加前の回転粘度)
【0060】
〔分散液中の微細炭素繊維の粒径測定〕
得られた微細炭素繊維分散液の微細炭素繊維の粒径をレーザー回折法により測定した。測定は堀場製作所製LA−950V2を用いて、体積基準50%径(メジアン径(D50))を評価の指標とした。
【0061】
〔PVDF混合液の保存安定性〕
実施例1(表2参照)で得られた微細炭素繊維分散液とPVDFのNMP溶液を混合した混合液を2週間放置し、目視で凝集が確認されなかったものを保存安定性○とし、凝集が確認されたものを保存安定性×とした(実施例23〜26、表3参照)。
【0062】
【表1】
【0063】
〔分散液A〕
AMC15gと、分散剤としてメチルセルロース(信越化学株式会社製SM−4)1.25wt%を溶解したNMP285gとを混合し、浅田鉄工株式会社製ビーズミルPCM−Lを用いて4時間分散処理し、5wt%の微細炭素繊維分散液を得た。メディアは0.3mmのジルコニア(ZrO2)ビーズを用い、周速10m/sで分散処理を行った。得られた分散液の粘度、TI値、及び粒径を表1に示す。
【0064】
〔分散液B〕
AMC15gと、分散剤としてポリビニルピロリドン(BASF社製Kollidone25)1.25wt%を溶解したNMP285gとを混合し、浅田鉄工株式会社製ビーズミルPCM−Lを用いて4時間分散処理し、5wt%の微細炭素繊維分散液を得た。メディアは0.3mmのジルコニア(ZrO2)ビーズを用い、周速10m/sで分散処理を行った。得られた分散液の粘度、TI値を表1に示す。
【0065】
〔分散液C〕
AMC15gと、分散剤としてポリビニルアルコール(和光純薬工業試薬#500)0.75wt%を溶解したNMP285gとを混合し、浅田鉄工株式会社製ビーズミルPCM−Lを用いて4時間分散処理し、5wt%の微細炭素繊維分散液を得た。メディアは0.3mmのジルコニア(ZrO2)ビーズを用い、周速10m/sで分散処理を行った。得られた分散液の粘度、TI値、及び粒径を表1に示す。
【0066】
〔分散液D〕
AMC15gと、分散剤としてポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製エスレックB・K BL-1)1.25wt%を溶解したNMP285gとを混合し、浅田鉄工株式会社製ビーズミルPCM−Lを用いて4時間分散処理し、5wt%の微細炭素繊維分散液を得た。メディアは0.3mmのジルコニア(ZrO2)ビーズを用い、周速10m/sで分散処理を行った。得られた分散液の粘度、TI値を表1に示す。
【0067】
〔分散液E〕
AMC15gと、分散剤としてカルボキシメチルセルロース−ナトリウム塩(ダイセルファインケム株式会社製CMC#1220)1.5wt%を溶解した水285gとを混合し、浅田鉄工株式会社製ビーズミルPCM−Lを用いて4時間分散処理し、5wt%の微細炭素繊維分散液を得た。メディアは0.3mmのジルコニア(ZrO2)ビーズを用い、周速10m/sで分散処理を行った。得られた分散液の粘度、TI値、及び粒径を表1に示す。
【0068】
【表2】
pKa について
水酸化ナトリウム以外は、SciFinder で検索された文献値。
水酸化ナトリウムについては、完全解離したと仮定した場合の計算値を示す。
【0069】
〔実施例1〕
表1の分散液A20gを50mlサンプル瓶に投入し、25mg(0.125wt%)のトリエチルアミンを加えてあわとり練太郎(株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで2分撹拌混合して微細炭素繊維分散液を得た。混合後の粘度、TI値、及び粘度低下率を表2に示す。pKaが7.5以上である塩基性化合物を加える事で、分散液の粘度が格段に低減し、チキソ性も低下する事が示された。
【0070】
〔実施例2〜16、参考例1,2〕
トリエチルアミンの代わりに表2に記載の塩基性化合物を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。混合後の粘度、TI値、及び粘度低下率を表2に示す。pKaが7.5以上である塩基性化合物を加える事で、分散液の粘度が格段に低減し、チキソ性も低下する事が示された。
【0071】
〔実施例19〕
表1の分散液B20gを50mlサンプル瓶に投入し、25mg(0.125wt%)のモノエタノールアミンを加えてあわとり練太郎(株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで2分撹拌混合して微細炭素繊維分散液を得た。混合後の粘度、TI値、及び粘度低下率を表2に示す。pKaが7.5以上である塩基性化合物を加える事で、分散液の粘度が格段に低減し、チキソ性も低下する事が示された。
【0072】
〔実施例20〕
表1の分散液C20gを50mlサンプル瓶に投入し、25mg(0.125wt%)のトリエチルアミンを加えてあわとり練太郎(株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで2分撹拌混合して微細炭素繊維分散液を得た。混合後の粘度、TI値、及び粘度低下率を表2に示す。pKaが7.5以上である塩基性化合物を加える事で、分散液の粘度が格段に低減し、チキソ性も低下する事が示された。
【0073】
〔実施例21〕
表1の分散液D20gを50mlサンプル瓶に投入し、25mg(0.125wt%)のトリエチルアミンを加えてあわとり練太郎(株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで2分撹拌混合して微細炭素繊維分散液を得た。混合後の粘度、TI値、及び粘度低下率を表2に示す。pKaが7.5以上である塩基性化合物を加える事で、分散液の粘度が格段に低減し、チキソ性も低下する事が示された。
【0074】
〔参考例3〕
表1の分散液E20gを50mlサンプル瓶に投入し、25mg(0.125wt%)のモノエタノールアミンを加えてあわとり練太郎(株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで2分撹拌混合して微細炭素繊維分散液を得た。混合後の粘度、TI値、及び粘度低下率を表2に示す。pKaが7.5以上である塩基性化合物を加える事で、分散液の粘度が格段に低減し、チキソ性も低下する事が示された。
【0075】
〔比較例1〕
トリエチルアミンの代わりにピリジンを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。混合後の粘度、TI値、及び粘度低下率を表2に示す。添加物のpKaが7.5以下の場合、分散液の粘度は若干低下するも低下率は20%に満たず、粘度低減効果は小さい事が示された。
【0076】
〔比較例2〕
トリエチルアミンの代わりにピラゾールを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。混合後の粘度、TI値、及び粘度低下率を表2に示す。添加物のpKaが7.5以下の場合、分散液の粘度は若干低下するも低下率は20%に満たず、粘度低減効果は小さい事が示された。
【0077】
【表3】
【0078】
〔実施例23〕
PVDF溶液(株式会社クレハ製、KFポリマーL#7208(固形分8wt%))をNMPで希釈した5wt%PVDFのNMP溶液10gと、実施例1で得られた微細炭素繊維分散液10gを50mlサンプル瓶に投入し、あわとり練太郎(株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで2分撹拌混合した。混合後の粘度、TI値、保存安定性を表3に示す。pKaが7.5以上である塩基性化合物を含む微細炭素繊維分散液は、バインダー樹脂であるPVDFと混合後の粘度も低く、保存安定性も良好であることが示された。
【0079】
〔実施例24〕
実施例3で得られた微細炭素繊維分散液を用いた以外は、実施例23と同様の操作を行った。混合後の粘度、TI値、保存安定性を表3に示す。pKaが7.5以上である塩基性化合物を含む微細炭素繊維分散液は、バインダー樹脂であるPVDFと混合後の粘度も低く、保存安定性も良好であることが示された。
【0080】
〔実施例25〕
実施例12で得られた微細炭素繊維分散液を用いた以外は、実施例23と同様の操作を行った。混合後の粘度、TI値、保存安定性を表3に示す。pKaが7.5以上である塩基性化合物を含む微細炭素繊維分散液は、バインダー樹脂であるPVDFと混合後の粘度も低く、保存安定性も良好であることが示された。
【0081】
〔実施例26〕
実施例16で得られた微細炭素繊維分散液を用いた以外は、実施例23と同様の操作を行った。混合後の粘度、TI値、保存安定性を表3に示す。pKaが7.5以上である塩基性化合物を含む微細炭素繊維分散液は、バインダー樹脂であるPVDFと混合後の粘度も低く、保存安定性も良好であることが示された。
【0082】
〔比較例3〕
表1の分散液Aで得られた微細炭素繊維分散液を用いた以外は、実施例23と同様の操作を行った。混合後の粘度、TI値、保存安定性を表3に示す。塩基性化合物を加えていないため、バインダー樹脂であるPVDFと混合後の粘度が高く、2週間放置後には凝集が見られることから、保存安定性も不良であった。
【0083】
〔比較例4〕
比較例1で得られた微細炭素繊維分散液を用いた以外は、実施例21と同様の操作を行った。混合後の粘度、TI値、保存安定性を表3に示す。塩基性化合物が添加されているもののpKaが7.5以下の場合、バインダー樹脂であるPVDFと混合後の粘度が高く、2週間放置後には凝集が見られることから、保存安定性も不良であった。