(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6135295
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】コンベヤベルトの支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置
(51)【国際特許分類】
B65G 43/08 20060101AFI20170522BHJP
B65G 15/08 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
B65G43/08 F
B65G15/08 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-105306(P2013-105306)
(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公開番号】特開2014-227229(P2014-227229A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】侯 剛
(72)【発明者】
【氏名】宮島 純
(72)【発明者】
【氏名】末藤 亮太郎
(72)【発明者】
【氏名】笹熊 英博
【審査官】
福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−273719(JP,A)
【文献】
特開2008−275539(JP,A)
【文献】
特開2001−317987(JP,A)
【文献】
特開2006−292736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/08
B65G 15/08
B65G 15/60
G01L 5/00− 5/28
G01N 17/00−19/10
G01G 11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリ間に張設されたコンベヤベルトの内周面に当接して転動する測定用支持ローラと、この測定用支持ローラに作用する抵抗力を検知するロードセルと、このロードセルの検知データが入力される制御部を備えた支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置において、
前記測定用支持ローラを支持する支持部と、この支持部が上面に載置されるフレームと、このフレームの上面と前記支持部の下面との間に介在する低摩擦部材と、前記支持部の前後それぞれに固定されて前記フレームに直接または間接的に接続されるロードセルとを備えたことを特徴とする支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置。
【請求項2】
前記支持部の移動を前後方向にガイドするガイド部が設けられている請求項1に記載の支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置。
【請求項3】
前記コンベヤベルトの内周面の前記測定用支持ローラが当接する部分近傍の表面温度を検知し、その検知データが前記制御部に入力される表面温度計が設けられた請求項1または2に記載の支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置。
【請求項4】
前記表面温度計が複数設けられ、これら表面温度計により、前記コンベヤベルトの内周面の前記測定用支持ローラが当接する部分近傍のうち、測定用支持ローラの当接する部分よりも前方側および後方側の表面温度が検知される請求項3に記載の支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置。
【請求項5】
前記測定用支持ローラ周辺の雰囲気温度を検知し、その検知データが前記制御部に入力される雰囲気温度計が設けられた請求項1〜4のいずれかに記載の支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置。
【請求項6】
前記測定用支持ローラを、前記コンベヤベルトのベルト幅方向の任意の位置で、ローラ軸方向を水平方向に対して任意の角度に設定して配置できる構成にした請求項1〜5のいずれかに記載の支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトの支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置に関し、さらに詳しくは、より簡便かつ精度よく、コンベヤベルト稼動時の支持ローラ乗り越え抵抗力を測定できるコンベヤベルトの支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベヤベルトを駆動するための消費電力は、コンベヤベルトの種類や駆動ローラ等の周辺設備、さらにはコンベヤベルトに積載する運搬物の重量の変動等の影響を受けて変動することが知られている。ベルトコンベヤが長機長になると、コンベヤベルトを支持する支持ローラの数が増加するため、消費電力に関してはコンベヤベルトと支持ローラとの接触に起因する動力損失が支配的になる。そのため、支持ローラ乗り越え時に生じる動力損失、即ち、支持ローラ乗り越え抵抗力を低減させることが重要な課題になっている。
【0003】
この支持ローラ乗り越え抵抗力を測定する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の
図5には、プーリ間に張設されたコンベヤベルトの内周側面に測定用支持ローラを配置し、この測定用支持ローラを配置した位置でコンベヤベルトに上方から荷重を付与した状態にしてコンベヤベルトを走行させて、その際に測定用支持ローラに作用する水平方向の抵抗力を測定する装置が記載されている。測定用支持ローラは支持部材の先端に取り付けられて、この支持部材によって搖動可能に支持されるとともに、前後一対の連結部材によってベルト長手方向の移動が拘束されている。そして、前後一対の連結部材のそれぞれに設けられたロードセルによって測定用支持ローラに作用する抵抗力が測定される構成になっている。しかしながら、測定用支持ローラは支持部材に支持されて搖動するため、ロードセルによって測定される抵抗力には、水平方向成分だけでなく少なからず垂直方向成分も含まれることになり、測定精度を向上させる余地があった。
【0004】
この特許文献1では、直交座標系(X,Y,Z)のそれぞれの軸方向に作用する抵抗力を検出する検出器を設けることが提案されている。これにより、測定用支持ローラに作用する水平方向成分の抵抗力だけでなく、その他2方向の抵抗力も測定する。そのため、装置およびデータ分析が複雑になる。また、これに伴って装置が高コストになるという問題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−273719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、より簡便かつ精度よく、コンベヤベルト稼動時の支持ローラ乗り越え抵抗力を測定できるコンベヤベルトの支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のコンベヤベルトの支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置は、プーリ間に張設されたコンベヤベルトの内周面に当接して転動する測定用支持ローラと、この測定用支持ローラに作用する抵抗力を検知するロードセルと、このロードセルの検知データが入力される制御部を備えた支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置において、前記測定用支持ローラを支持する支持部と、この支持部が上面に載置されるフレームと、このフレームの上面と前記支持部の下面との間に介在する低摩擦部材と、前記支持部の前後それぞれに固定されて前記フレームに直接または間接的に接続されるロードセルとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、測定用支持ローラを支持する支持部の下面と、支持部が載置されるフレームの上面との間に低摩擦部材を介在させて、支持部をフレームに載置するので、走行しているコンベヤベルトの内周面に測定用支持ローラを当接させて転動させると、実質的に測定用支持ローラに作用する水平方向の抵抗力のみを、支持部の前後それぞれに固定されて前記フレームに直接または間接的に接続されるロードセルにより検知できる。そして、前後のロードセルにより検知された検知データの差異に基づいて、測定用支持ローラに作用する水平方向の抵抗力を測定することができる。このように、高価な検知器を用いることなく、簡便な構成でありながら、コンベヤベルト稼動時の支持ローラ乗り越え抵抗力を高精度で測定することが可能になっている。
【0009】
ここで、例えば、前記支持部の移動を前後方向にガイドするガイド部が設けられている仕様にすることもできる。この仕様によれば、コンベヤベルトの内周面に当接して転動する測定用支持ローラの左右の振れを防止できるので、支持ローラ乗り越え抵抗力を高精度で測定するには有利になる。
【0010】
前記コンベヤベルトの内周面の前記測定用支持ローラが当接する部分近傍の表面温度を検知し、その検知データが前記制御部に入力される表面温度計が設けられた仕様にすることもできる。この仕様によれば、コンベヤベルトが支持ローラを乗り越える際のコンベヤベルトに生じる温度変化を把握できる。それ故、支持ローラ乗り越え抵抗力に対するコンベヤベルトの内周面の温度変化の影響を考慮することにより、支持ローラ乗り越え抵抗力を高精度で測定するには有利になる。
【0011】
前記表面温度計が複数設けられ、これら表面温度計により、前記コンベヤベルトの内周面の前記測定用支持ローラが当接する部分近傍のうち、測定用支持ローラの当接する部分よりも前方側および後方側の表面温度が検知される仕様にすることもできる。この仕様によれば、コンベヤベルトが支持ローラを乗り越える際に生じるコンベヤベルトの温度変化をより詳細に把握できる。それ故、支持ローラ乗り越え抵抗力を高精度で測定するには益々有利になる。
【0012】
前記測定用支持ローラ周辺の雰囲気温度を検知し、その検知データが前記制御部に入力される雰囲気温度計が設けられた仕様にすることもできる。この仕様によれば、支持ローラ乗り越え抵抗力に対する雰囲気温度の影響を考慮することで、支持ローラ乗り越え抵抗力を高精度で測定するには有利になる。
【0013】
前記測定用支持ローラを、前記コンベヤベルトのベルト幅方向の任意の位置で、ローラ軸方向を水平方向に対して任意の角度に設定して配置できる構成にすることもできる。この構成によれば、コンベヤベルトがベルト幅方向に平らな状態であっても、コンベヤベルトのベルト上面が凹状に湾曲した状態(トラフ角度付の状態)であっても、支持ローラ乗り越え抵抗力を精度よく測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置を側面視で例示する説明図である。
【
図4】測定用支持ローラをコンベヤベルトの内周面に当接させる前の状態を側面視で例示する説明図である。
【
図5】測定用支持ローラに作用する抵抗力を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0016】
図1〜
図3に例示するように、本発明の支持ローラ乗り越え抵抗力測定装置1(以下、測定装置1という)は、測定用支持ローラ2と、測定用支持ローラ2を支持する支持部3と、この支持部3が上面に載置されるフレーム4と、測定用支持ローラ2に作用する抵抗力を逐次検知する2つのロードセル10a、10bと、このロードセル10a、10bの検知データが逐次入力される制御部13を備えている。さらに、フレーム4の上面と支持部3の下面との間に低摩擦部材7が介在している。測定用支持ローラ2は、プーリ16a、16b間に張設されたコンベヤベルト14の内周面15に当接して転動する。
【0017】
一方のロードセル10aは支持部3の前側に固定され、他方のロードセル10bは支持部3の後側に固定されて、それぞれフレーム4に直接または間接的に接続される。本明細書において前後方向とは、コンベヤベルト14の走行方向(長手方向)であり、支持部3の前側は支持部3に対してコンベヤベルト14の走行方向下流側、後側はコンベヤベルト14の走行方向上流側を意味する。尚、図面はコンベヤベルト14がベルト幅方向に平らな状態になっているが、通常は、コンベヤベルト14のベルト上面が凹状に湾曲した状態で本発明が適用される。
【0018】
コンベヤベルト14がベルト幅方向に平らな状態であっても、コンベヤベルト14のベルト上面が凹状に湾曲した状態(トラフ角度付の状態)であっても、支持ローラ乗り越え抵抗力を精度よく測定可能にするには、測定用支持ローラ2を、コンベヤベルト14のベルト幅方向の任意の位置で、ローラ軸方向を水平方向に対して任意の角度に設定して配置できる構成にするとよい。例えば、コンベヤベルト14のベルト上面が凹状に湾曲した状態の場合、コンベヤベルト14のベルト幅方向中央部に測定用支持ローラ2を配置するには、ローラ軸方向を水平に設定する。ベルト幅方向端部に測定用支持ローラ2を配置するには、コンベヤベルト14の湾曲に沿うようにローラ軸方向を水平方向に対して傾斜させる。
【0019】
この実施形態では、それぞれのロードセル10a、10bは、接続部材5を介して、フレーム4を構成する垂直フレーム4bに間接的に接続されている。ロードセル10a、10bは直接、垂直フレーム4bに接続することもできる。また、フレーム4を構成する水平フレーム4aや支持フレーム4cにロードセル10a、10bを接続することもできる。
【0020】
低摩擦部材7としては、例えば、フッ素樹脂等を用いることができる。低摩擦部材7の動摩擦係数(JIS K7125)は例えば0.2以下である。
【0021】
この実施形態では、水平フレーム4aの上面に、前後方向に延びるレール部9aが突設されている。また、支持部3の下面には、このレール部9aが嵌合する溝部9bが設けられている。そして、レール部9aの全面および水平フレーム4aの上面の全面が低摩擦部材7により覆われている。このレール部9aと溝部9bとにより、支持部3の移動を前後方向にガイドするガイド部8が構成されている。
【0022】
水平フレーム4aおよび支持部3は、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等により形成されていて、水平フレーム4aの上面および支持部3の下面のガイド部8を除いた部分は、平坦な面状になっている。
【0023】
溝部9bの全面および支持部3の下面の全面が摩擦部材7により覆われている仕様にすることもできる。支持部3の下面に前後方向に延びるレール部9aが突設され、水平フレーム4aの上面にレール部9aに嵌合する溝部9bが設けられた仕様にすることもできる。
【0024】
この実施形態では、さらに、コンベヤベルト14の内周面15の測定用支持ローラ2が当接する部分近傍の表面温度を逐次検知する非接触型の表面温度計11a、11bが設けられている。表面温度計11a、11bによる検知データは、パーソナルコンピュータ等の制御部13に逐次入力される。
【0025】
2つの表面温度計11a、11bのうち、一方の表面温度計11aは、コンベヤベルト14の内周面15の測定用支持ローラ2が当接する部分近傍のうち、測定用支持ローラ2の当接する部分よりも前方側の表面温度を検知し、他方の一方の表面温度計11bは、測定用支持ローラ2の当接する部分よりも後方側の表面温度を検知する。
【0026】
この実施形態では、さらに、測定用支持ローラ2周辺の雰囲気温度を逐次検知する雰囲気温度計12が設けられている。雰囲気温度計12による検知データは、制御部13に逐次入力される。コンベヤベルト14のベルト走行速度Vも制御部13に逐次入力されるようになっている。
【0027】
垂直フレーム4bには、測定用支持ローラ2の上下位置を調節する上下アジャスタ機構6が設けられている。上下アジャスタ機構6によって、測定用支持ローラ2を所望の位置に移動させて、その上下位置で固定することができる。フレーム4に配置する測定用支持ローラ2は1個に限らず、コンベヤベルト14の幅方向に複数並べて配置することもできる。
【0028】
この測定装置1を用いてコンベヤベルト14の支持ローラ乗り越え抵抗を測定する方法を以下に説明する。
【0029】
まず、
図4に例示するように、プーリ16a、16b間に張設されたコンベヤベルト14の内周面15に測定用支持ローラ2を配置する。そして、上下アジャスタ機構6を用いて測定用支持ローラ2を上方移動させることによりコンベヤベルト14の内周面15に当接させて、測定用支持ローラ2に対して上下方向の所望の初期荷重を付与する。例えば、使用現場での条件等に合った初期荷重を測定用支持ローラ2に付与してセットした状態にする。
【0030】
このセットした状態で
図1に例示するように、コンベヤベルト14を走行させる。これにより、測定用支持ローラ2は、走行するコンベヤベルト14の内周面15に当接して転動する。
【0031】
図5に例示するように、測定用支持ローラ2がコンベヤベルト14の内周面15に当接して転動する際に、測定用支持ローラ2には、ベルト進行方向に向かって斜め下方の外力Fが作用する。ここで、測定用支持ローラ2をコンベヤベルト14が乗り越える際に生じる単位時間当たりのエネルギ損失Wは、外力F×ベルト走行速度Vとなる。実機の支持ローラは垂直方向に変位しないので、外力Fの垂直分力Fvによる損失はない。そのため、測定用支持ローラ2に作用する外力Fの水平分力Fhとベルト速度Vが求まれば、1個の測定用支持ローラ2当りのエネルギ損失、即ち、ベルト乗り越え損失が求まる。
【0032】
そこで、本発明では測定用支持ローラ2に作用する水平方向の抵抗力(水平分力Fh)のみを検知するようにしている。即ち、コンベヤベルト14が測定用支持ローラ2を乗り越える際に、測定用支持ローラ2に作用する水平方向の抵抗力が、コンベヤベルトが乗り越える際の支持ローラ乗り越え抵抗力となる。
【0033】
コンベヤベルト14が測定用支持ローラ2を乗り越える際には、前側のロードセル10aは支持部材3とフレーム4との間の水平方向の圧縮力を検知し、後側のロードセル10bは支持部材3とフレーム4との間の水平方向の引張力を検知する。そして、前側のロードセル10aが検知した圧縮力から後側のロードセル10bが検知した引張力を差し引いた値(絶対値)の1/2が、支持ローラ乗り越え抵抗力として把握される。即ち、それぞれのロードセル10a、10bの初期状態(ゼロ点)を合わせていなくても、それぞれのロードセル10a、10bによる検知データを用いることに誤差を小さくして水平方向の抵抗力が測定される。
【0034】
さらに本発明では、支持部3の下面と水平フレーム4aの上面との間に低摩擦部材7を介在させて支持部3を水平フレーム4aに載置しているので、走行しているコンベヤベルト14の内周面15に測定用支持ローラ2を当接させて転動させると、実質的に測定用支持ローラ2に作用する水平方向の抵抗力のみが、支持部3の前後それぞれに固定されたロードセル10a、10bにより検知される。そして、前後のロードセル10a、10bにより検知された検知データに基づいて上述したように、測定用支持ローラ2に作用する水平方向の抵抗力を測定することができる。このように、高価な検知器を用いることなく、簡便な構成でありながら、コンベヤベルト14稼動時の支持ローラ乗り越え抵抗力を高精度で測定することが可能になっている。これに伴って、測定装置1のコストを低く抑えるにも有利になっている。
【0035】
この測定装置1により測定された支持ローラ乗り越え抵抗力を分析することにより、コンベヤベルトを駆動する際の消費電力を低減できる支持ローラ乗り越え抵抗力の小さなコンベヤベルトを開発することが可能になる。例えば、測定結果に基づいて、ゴム組成物、心体、補強材等の材質やベルト構造を改良して省電力タイプのコンベヤベルトを製造することができる。或いは、既存のコンベヤベルトを駆動する際の消費電力を精度よく把握して、より消費電力の少ないコンベヤベルトに置き換えることが可能になる。このように本発明は、コンベヤベルトを駆動する際の消費電力を削減するには大いに有益である。
【0036】
この実施形態のように、支持部3の移動を前後方向にガイドするガイド部8を設けることにより、コンベヤベルト14の内周面15に当接して転動する測定用支持ローラ2の左右の振れを防止できる。したがって、測定用支持ローラ2の左右の振れの影響が最小限になり、支持ローラ乗り越え抵抗力を高精度で測定するには有利になる。
【0037】
表面温度計11a、11bを設けることにより、コンベヤベルト14が測定用支持ローラ2を乗り越える際のコンベヤベルト14に生じる温度変化を把握できる。それ故、支持ローラ乗り越え抵抗力に対するコンベヤベルト14の内周面15の温度変化の影響を考慮することで、支持ローラ乗り越え抵抗力を高精度で測定するには有利になる。
【0038】
この実施形態では複数の表面温度計11a、11bを設けて、一方の表面温度計11aによりコンベヤベルト14の内周面15の測定用支持ローラ2が当接する部分近傍のうち、測定用支持ローラ2の当接する部分よりも前方側の表面温度を検知し、他方の表面温度計11bにより測定用支持ローラ2の当接する部分よりも後方側の表面温度を検知する。これにより、コンベヤベルト14が測定用支持ローラ2を乗り越える際に生じるコンベヤベルト14の温度変化(ヒステリシスロス)をより詳細に把握できる。それ故、支持ローラ乗り越え抵抗力を高精度で測定するには益々有利になる。
【0039】
雰囲気温度計12により、測定用支持ローラ2周辺の雰囲気温度を検知することにより、支持ローラ乗り越え抵抗力に対する雰囲気温度の影響を考慮することができる。支持ローラ乗り越え抵抗力は、温度依存性があるので、雰囲気温度を考慮することにより、支持ローラ乗り越え抵抗力を高精度で測定するには有利になる。
【0040】
この実施形態のように上下アジャスタ機構6が設けると、測定用支持ローラ2に対して付与する上下方向の初期荷重を簡単に調節することができる。それ故、使用現場での条件等に合った初期荷重を測定用支持ローラ2に付与して、実使用下での支持ローラ乗り越え抵抗力をより高精度で測定することが可能になる。
【0041】
コンベヤベルト14の外周面(上表面)には、必要に応じて使用現場と同等の条件になるように運搬物を載置して運搬する。また、測定用支持ローラ2は、例えば、使用現場のコンベヤ装置に取り付けられている支持ローラと同等仕様のものを用いる。
【符号の説明】
【0042】
1 測定装置
2 測定用支持ローラ
3 支持部
4 フレーム
4a 水平フレーム
4b 垂直フレーム
4c 支持フレーム
5 接続部材
6 上下アジャスタ機構
7 低摩擦部材
8 ガイド部
9a レール部
9b 溝部
10a、10b ロードセル
11a、11b 表面温度計
12 雰囲気温度計
13 制御部
14 コンベヤベルト
15 内周面
16a、16b プーリ