(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の弦が張設された指板に設けられ、それぞれ押弦操作される弦との近接度合いを検出するとともに、当該検出された近接度合いに対応する信号を出力する複数のセンサと、
前記複数のセンサの中で最も近接度合いの大きいセンサの前記指板上の位置を押弦操作位置として検出する操作位置検出手段と、
前記検出された押弦操作位置よりブリッジ部側にある前記指板に設けられた前記複数のセンサ夫々の出力信号の少なくとも一部から、前記張設された複数の弦夫々の振動信号を抽出する振動信号抽出手段と、
前記抽出された振動信号に基づいて、前記張設された複数の弦のいずれかが弾弦されたか否かを検出する弾弦検出手段と、
前記弾弦の検出に応答して、前記検出された操作状態から発音すべき楽音の音高を決定する音高決定手段と、
前記決定された音高の楽音の発音を、音源に対して指示する発音指示手段と、
を有する楽音発生装置。
前記振動信号抽出手段は、前記検出された押弦操作位置よりブリッジ部側にある前記指板内に設けられた前記複数のセンサの出力信号それぞれを加重平均した信号を、前記張設された複数の弦夫々の振動信号として抽出する請求項1又は2に記載の楽音発生装置。
前記振動信号抽出手段は、前記検出された押弦操作位置よりブリッジ部側にある前記指板内に設けられた前記複数のセンサの出力信号の中で最大レベルの信号に基づいて、前記張設された複数の弦夫々の振動信号として抽出する請求項1又は2に記載の楽音発生装置。
複数の弦が張設された指板に設けられ、それぞれ押弦操作される弦との近接度合いを検出するとともに、当該検出された近接度合いに対応する信号を出力する複数のセンサを有する楽音発生装置に用いられる楽音発生方法であって、
前記複数のセンサの中で最も近接度合いの大きいセンサの前記指板上の位置を押弦操作位置として検出し、
前記検出された押弦操作位置よりブリッジ部側にある前記指板に設けられた前記複数のセンサ夫々の出力信号の少なくとも一部から、前記張設された複数の弦夫々の振動信号を抽出し、
前記抽出された振動信号に基づいて、前記張設された複数の弦のいずれかが弾弦されたか否かを検出し、
前記弾弦の検出に応答して、前記検出された操作状態から発音すべき楽音の音高を決定し、
前記決定された音高の楽音の発音を、音源に対して指示する、楽音発生方法。
複数の弦が張設された指板に設けられ、それぞれ押弦操作される弦との近接度合いを検出するとともに、当該検出された近接度合いに対応する信号を出力する複数のセンサを有する楽音発生装置として用いられるコンピュータに、
前記複数のセンサの中で最も近接度合いの大きいセンサの前記指板上の位置を押弦操作位置として検出する操作位置検出ステップと、
前記検出された押弦操作位置よりブリッジ部側にある前記指板に設けられた前記複数のセンサ夫々の出力信号の少なくとも一部から、前記張設された複数の弦夫々の振動信号を抽出する振動信号抽出ステップと、
前記抽出された振動信号に基づいて、前記張設された複数の弦のいずれかが弾弦されたか否かを検出する弾弦検出ステップと、
前記弾弦の検出に応答して、前記検出された操作状態から発音すべき楽音の音高を決定する音高決定ステップと、
前記決定された音高の楽音の発音を、音源に対して指示する発音指示ステップと、
を実行させるプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
[電子弦楽器1の概要]
初めに、
図1を参照して、本発明の一実施形態としての電子弦楽器1の概要について説明する。
【0011】
図1は、電子弦楽器1の外観を示す正面図である。
図1に示す如く、電子弦楽器1は、本体10と、ネック20と、ヘッド30とに大別される。
【0012】
ヘッド30には、スチール製の弦22の一端が巻かれる糸巻き31が取り付けられており、ネック20は、指板21に複数のフレット23が埋め込まれている。なお、本実施形態において、弦22は6本、フレット23は21個、設けられている。6本の弦22は、各々弦番号と対応付けられている。一番細い弦22が、弦番号「1番」であり、弦22の太さが太くなる順番で弦番号が大きくなる。21個のフレット23は、各々フレット番号と対応付けられている。最もヘッド30寄りのフレット23は、フレット番号「1番」であり、ヘッド30側から遠ざかるに連れて、配置されたフレット23のフレット番号が大きくなる。
【0013】
本体10には、弦22の他端が取り付けられるブリッジ16と、弦22の振動を検出するノーマルピックアップ11と、放音されるサウンドにトレモロ効果を付加するためのトレモロアーム17と、本体10の内部に内蔵されている電子部13と、各々の弦22と電子部13とを接続するケーブル14と、音色の種類等を表示するための表示部15と、が設けられている。
なお、電子弦楽器1においては、構造上、押弦操作された場所がブリッジ側に行くにしたがって各弦22の音高が高くなる。即ち、フレット番号が大きくなる程、音高が高くなる。
このように構成される本実施形態の電子弦楽器1においては、各々の弦22の振動を独立して検出するヘキサピックアップを用いずに、後述する押弦センサ44からの出力値(以下、センサ値という)に基づいて各々の弦22の振動を独立して検出する。
具体的には、本実施形態の電子弦楽器1においては、検出されたセンサ値のうちの1のセンサ値を音高指定に使用し、検出された他のセンサ値を弦の振動を検出するセンサとして使用する。即ち、所定のセンサ値で音高を決定したら、他のセンサ値でピッチ反映と発音のトリガ用の振動検出を行う。また、センサ値を再検出した場合(押弦位置が変わった場合)には、再度検出したセンサ値に基づいて、音高を決定し、他のセンサ値で弦振動に追従してピッチを変更する。
【0014】
図2は、電子部13のハードウェア構成を示すブロック図である。電子部13は、CPU(Central Processing Unit)41と、ROM(Read Only Memory)42と、RAM(Random Access Memory)43と、押弦センサ44と、音源45と、ノーマルピックアップ11と、スイッチ48と、表示部15と、I/F(インターフェース)49と、がバス50を介して接続されている。
さらに、電子部13は、DSP(Digital Signal Processor)46と、D/A(デジタルアナログコンバータ)47と、を備える。
【0015】
CPU41は、ROM42に記録されているプログラム、又は、記憶部(図示せず)からRAM43にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
【0016】
RAM43には、CPU41が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0017】
押弦センサ44は、押弦が何番の弦の何番のフレットに対して行われたかを検出する。この押弦センサ44は、後述する静電センサの出力に基づいて、いずれかのフレット23(
図1参照)上において弦22(
図1参照)に対して押弦操作が行われたのかを検出する。
【0018】
音源45は、例えばMIDI(Musical Instrument Digital Interface)データで発音が指示された楽音の波形データを生成し、その波形データをD/A変換して得られるオーディオ信号を、DSP46及びD/A47を介して外部音源53に出力して、発音及び消音の指示を出す。なお、外部音源53は、D/A47から出力されたオーディオ信号を増幅して出力するアンプ回路(図示せず)と、アンプ回路から入力されたオーディオ信号により楽音を放音するスピーカ(図示せず)と、を備える。また、音源45は、押弦センサ44から取得したセンサ値に基づいて生成されたWave(RIFF waveform Audio Format)データをD/A変換して得られるオーディオ信号を、外部音源53に出力して生音を出す。
【0019】
ノーマルピックアップ11は、検出された弦22(
図1参照)の振動を電気信号に変換してCPU41に出力する。
【0020】
スイッチ48は、本体10(
図1参照)に設けられた各種スイッチ(図示せず)からの入力信号をCPU41に出力する。
表示部15は、発音対象となる音色の種類等を表示する。
【0021】
図3は、押弦センサ44の信号制御部を示す模式図である。
【0022】
押弦センサ44においては、Y信号制御部52は、弦22のいずれかを順次指定し、指定された弦に対応する静電センサを指定する。X信号制御部51は、フレット23のいずれかを指定し、指定されたフレットに対応する静電センサを指定する。こうして弦22及びフレット23の両方同時に指定された静電センサのみを動作させ、この動作された静電センサの出力値の変化をCPU41(
図2参照)に押弦位置情報として出力する。
【0023】
図4は、静電センサの出力に基づいて弦22とフレット23との接触を検出することなく、押弦を検知するタイプの押弦センサ44が適用されたネック20の斜視図である。
【0024】
図4において、指板21の下部には、静電センサとしての静電パッド26が、各々の弦22、及び各々のフレット23ごとに対応付けられて配置されている。即ち、本実施形態のように、6弦×21フレットである場合、144箇所の静電パッドが配置される。これらの静電パッド26は、弦22が指板21に近づいたときの静電容量を検出してCPU41に送信する。CPU41は、この送信された静電容量の値に基づいて押弦位置に対応する弦22及びフレット23を検出する。
【0025】
[メインフロー]
図5は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行されるメインフローを示すフローチャートである。
【0026】
まず、ステップS1では、CPU41は、電源の投入によりイニシャライズを実行する。ステップS2では、CPU41は、スイッチ処理(
図6で後述する)を実行する。ステップS3では、CPU41は、演奏検知処理(
図8で後述する)を実行する。ステップS4では、CPU41は、生音処理(
図18で後述する)を実行する。ステップS5では、CPU41は、その他の処理を実行する。その他の処理では、CPU41は、例えば、表示部15に出力コードのコード名を表示するなどの処理を実行する。ステップS5の処理が終了すると、CPU41は、処理をステップS2に移行させて、ステップS2〜S5の処理を繰り返す。
【0027】
[スイッチ処理]
図6は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行されるスイッチ処理を示すフローチャートである。
【0028】
まず、ステップS11では、CPU41は、音色スイッチ処理(
図7で後述する)を実行する。ステップS12では、CPU41は、モードスイッチ処理を実行する。モードスイッチ処理では、CPU41は、パラメータ変更処理(
図17で後述する)のいずれが実行されるかを識別するためのモードが決定される。ステップS12の処理が終了すると、CPU41は、スイッチ処理を終了する。
【0029】
[音色スイッチ処理]
図7は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される音色スイッチ処理を示すフローチャートである。
【0030】
まず、ステップS21では、CPU41は、音色スイッチ(図示せず)がオンされたか否かを判断する。音色スイッチがオンされたと判断された場合、CPU41は、処理をステップS22に移し、オンされたと判断されなかった場合、CPU41は、音色スイッチを終了する。ステップS22では、CPU41は、音色スイッチにより指定された音色に対応する音色番号を、変数TONEに格納する。ステップS23では、CPU41は、変数TONEに基づくイベントを音源45に供給する。これにより、音源45に、発音されるべき音色が指定される。ステップS23の処理が終了すると、CPU41は、音色スイッチ処理を終了する。
【0031】
[演奏検知処理]
図8は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される演奏検知処理を示すフローチャートである。
【0032】
まず、ステップS31では、CPU41は、押弦位置検出処理(
図9で後述する)を実行する。ステップS32では、CPU41は、弦振動処理(
図12で後述する)を実行する。ステップS33では、CPU41は、統合処理(
図16で後述する)を実行する。ステップS33の処理が終了すると、CPU41は、演奏検知処理を終了する。
【0033】
[押弦位置検知処理]
図9は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される押弦位置検知処理(
図8のステップS31の処理)を示すフローチャートである。
【0034】
まず、ステップS41では、CPU41は、1〜6列の弦(各弦)に属する静電センサ46のセンサ値を順次サーチする。ステップS42において、CPU41は、押弦センサ44の出力値として、最大のセンサ値を検出した行番号(M)を取得する。ステップS43において、CPU41は、押弦センサ44の出力値として、次に大きなセンサ値を検出した行番号(N)を取得する。ステップS44において、CPU41は、押さえ位置を検出したか否かを判断する。押さえ位置を検出したという判断は、次のように行われる。CPU41は、取得した行番号(M),(N)のうち音高が高い位置(ブリッジ側の位置)にある行番号が属するフレットに相当する音程を押さえ位置として検出する。押さえ位置が検出されたと判断された場合、CPU41は、処理をステップS46に移し、押さえ位置が検出されたと判断されない場合、CPU41は、ステップS45において、非押弦、即ち、開放弦であると判断する。その後、CPU41は、ステップS46に処理を移す。
ステップS46では、CPU41は、先行トリガ処理(
図10で後述)を実行する。ステップS47では、CPU41は、先行トリガタイミング時の押弦センサ44の出力値をRAM43に記録する。ここで、先行トリガタイミング時の押弦センサ44の出力値は、Snmとして押さえ位置ごとに対応付けられて記録される。ここで、n=弦番号、m=フレット番号である。
ステップS48では、CPU41は、ピッチ補正データを作成する。具体的には、弦番号とフレット番号とに対応する音高を基準の音高として、当該基準の音高が発音される場合での押弦センサ44の出力値をKnmとすると、ピッチ補正データ(Ph)は、補正値(H)を用いて、以下の式(1)で算出される。
Ph=(Knm−Snm)/100×H・・・(1)
ここで、Snmは、実際の押弦の力に応じて変化するので、押弦状態に応じてピッチ補正データは変化することになる。
ステップS49において、CPU41は、全弦サーチしたか否かを判断する。全弦サーチしていないと判断された場合、CPU41は、処理をステップS41に戻し、全弦サーチしたと判断された場合、CPU41は、押弦位置検知処理を終了する。
【0035】
[先行トリガ処理]
図10は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される先行トリガ処理(
図9のステップS46の処理)を示すフローチャートである。ここで、先行トリガとは、演奏者による弾弦前の押弦が検出されたタイミングでの発音のトリガのことである。
【0036】
まず、ステップS51では、CPU41は、Wave取込処理(
図19で後述)を実行する。ステップS52では、CPU41は、先行トリガ可否処理(
図11で後述)を実行する。ステップS53では、先行トリガが可能であるか否か、即ち、先行トリガフラグがオンであるか否かを判断する。この先行トリガフラグは、後述する先行トリガ可否処理のステップS62において、オンされる。先行トリガフラグがオンである場合、CPU41は、ステップS54に処理を移行させ、先行トリガフラグがオフである場合、CPU41は、先行トリガ処理を終了する。
ステップS54では、CPU41は、音色スイッチで指定された音色と、先行トリガ可否処理のステップS63で決定されるベロシティとに基づいて、音源45に発音指示の信号を送信する。ステップS54の処理が終了すると、CPU41は、先行トリガ処理を終了する。
【0037】
[先行トリガ可否処理]
図11は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される先行トリガ可否処理(
図10のステップS52の処理)を示すフローチャートである。
【0038】
まず、ステップS61では、CPU41は、
図19のステップS141で算出したWave値に基づいた各々の弦の振動レベルが、所定の閾値(Th1)より大きいか否かを判断する。この判断がYESの場合、CPU41は、処理をステップS62に移行させ、NOの場合、CPU41は、先行トリガ可否処理を終了する。
ステップS62では、CPU41は、先行トリガを可能にするために、先行トリガフラグをオンにする。ステップS63では、CPU41は、ベロシティ確定処理を実行する。
具体的には、ベロシティ確定処理では、以下の処理が実行される。CPU41は、ヘキサピックアップの出力に基づいた振動レベルがTh1を超えた時点(以下、「Th1時点」と呼ぶ)より前の、3つの振動レベルのサンプリングデータに基づいて、振動レベルの変化の加速度を検出する。具体的には、Th1時点より1つ前及び2つ前のサンプリングデータに基づいて、振動レベルの変化の第1速度を算出する。さらに、Th1時点より2つ前及び3つ前のサンプリングデータに基づいて、振動レベルの変化の第2速度を算出する。そして、当該第1速度及び当該第2速度に基づいて、振動レベルの変化の加速度を検出する。さらに、CPU41は、実験で得られた加速度のダイナミクス内にベロシティが0〜127に収まるように内挿補間する。
具体的には、ベロシティを「VEL」、検出された加速度を「K」、実験で得られた加速度のダイナミクスを「D」、補正値を「H」とすると、ベロシティは、以下の式(2)で算出される。
VEL=(K/D)×128×H・・・(2)
加速度Kと補正値Hとの関係を示すマップ(図示せず)のデータは、各弦の音高ごとにROM42に格納されている。ある弦のある音高の波形を観測すると、弦がピックから離れた直後の波形の変化には固有の特性がある。したがって、この特性のマップのデータが各弦の音高ごとに予めROM42に格納されることで、検出された加速度Kに基づいて補正値Hが取得される。ステップS63の処理が終了すると、CPU41は、先行トリガ可否処理を終了する。
【0039】
[弦振動処理]
図12は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される弦振動処理(
図8のステップS32の処理)を示すフローチャートである。
【0040】
まず、ステップS71では、CPU41は、Wave取込処理(
図19で後述)を実行する。ステップS72では、CPU41は、ノーマルトリガ処理(
図13で後述)を実行する。ステップS73では、CPU41は、ピッチ抽出処理(
図14で後述)を実行する。ステップS74では、CPU41は、消音検知処理(
図15で後述)を実行する。ステップS74の処理が終了すると、CPU41は、弦振動処理を終了する。
【0041】
[ノーマルトリガ処理]
図13は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行されるノーマルトリガ処理(
図12のステップS72の処理)を示すフローチャートである。ノーマルトリガとは、演奏者による弾弦が検出されたタイミングでの発音のトリガのことである。
【0042】
まず、ステップS81では、CPU41は、先行トリガが可能でないか否かを判断する。即ち、CPU41は、先行トリガフラグがオフであるか否かを判断する。先行トリガが可能でないと判断された場合、CPU41は、ステップS82に処理を移行させる。先行トリガが可能であると判断された場合、CPU41は、ノーマルトリガ処理を終了する。ステップS82では、CPU41は、
図19のステップS141で算出したWave値に基づいた各々の弦の振動レベルが、所定の閾値(Th2)より大きいか否かを判断する。この判断がYESの場合、CPU41は、処理をステップS83に移行させ、NOの場合、CPU41は、ノーマルトリガ処理を終了する。ステップS83では、CPU41は、ノーマルトリガを可能にするために、ノーマルトリガフラグをオンにする。ステップS83の処理が終了すると、CPU41は、ノーマルトリガ処理を終了する。
【0043】
[ピッチ抽出処理]
図14は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行されるピッチ抽出処理(
図12のステップS73の処理)を示すフローチャートである。
【0044】
ステップS91において、CPU41は、Wave取込処理(
図19で後述)を実行する。ステップS92において、ステップS91のWave取込処理により取り込まれたwave値からピッチを抽出して、音高を決定する。
【0045】
[消音検知処理]
図15は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される消音検知処理(
図12のステップS74の処理)を示すフローチャートである。
【0046】
まず、ステップS101において、CPU41は、発音中であるか否かを判断する。この判断がYESの場合、CPU41は、処理をステップS102に移行させ、この判断がNOの場合、CPU41は、消音検知処理を終了する。ステップS102では、CPU41は、
図19のステップS141で算出したWave値に基づいた各々の弦の振動レベルが、所定の閾値(Th3)より小さいか否かを判断する。この判断がYESの場合、CPU41は、処理をステップS103に移行させ、NOの場合、CPU41は、消音検知処理を終了する。ステップS103では、CPU41は、消音フラグをオンにする。ステップS103の処理が終了すると、CPU41は、消音検知処理を終了する。
【0047】
[統合処理]
図16は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される統合処理(
図8のステップS33の処理)を示すフローチャートである。統合処理では、押弦位置検出処理(
図8のステップS31の処理)の結果と弦振動処理(
図8のステップS32の処理)の結果とが統合される。
【0048】
まず、ステップS111において、CPU41は、先行発音済みか否かを判断する。即ち、先行トリガ処理(
図10参照)において、音源45に発音指示がなされたか否かを判断する。先行トリガ処理において、音源45に発音指示がなされたと判断された場合、CPU41は、処理をステップS112に移行させる。ステップS112において、CPU41は、パラメータ変更処理(
図17で後述)を実行し、処理をステップS115に移行させる。
一方、ステップS111において、先行トリガ処理において、音源45に発音指示がなされたと判断されない場合、CPU41は、処理をステップS113に移行させる。ステップS113において、CPU41は、ノーマルトリガフラグがオンであるか否かを判断する。ノーマルトリガフラグがオンである場合、CPU41は、ステップS114において、音源45に発音指示信号を送信し、処理をステップS115に移行させる。ステップS113において、ノーマルトリガフラグがオフである場合、CPU41は、処理をステップS115に移行させる。
ステップS115では、CPU41は、消音フラグがオンであるか否かを判断する。消音フラグがオンである場合、CPU41は、ステップS116において、音源45に消音指示信号を送信する。消音フラグがオフである場合、CPU41は、統合処理を終了する。ステップS116の処理が終了すると、CPU41は、統合処理を終了する。
【0049】
[パラメータ変更処理]
図17は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行されるパラメータ変更処理(
図16のステップS112の処理)を示すフローチャートである。
【0050】
まず、ステップS121において、CPU41は、
図14のステップS92で抽出されたピッチ(Pt)を読み込む。ステップS122において、CPU41は、読み込まれたピッチ(Pt)に、
図9のステップS46で算出されたピッチ補正データ(Ph)を乗算することにより、音源45を制御する音源制御ピッチ(Opt)を算出する。ステップS123において、CPU41は、音源45に算出された音源制御ピッチを送信することで、音源45に音源制御ピッチ(Opt)を反映させる。したがって、押弦状態に応じてピッチを補正できる。
【0051】
[生音処理]
図18は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される生音処理を示すフローチャートである。
【0052】
ステップS131において、CPU41は、Wave取込処理(
図19で後述)を実行する。ステップS132において、ステップS131のWave取込処理により取り込んだ音をD/A変換して、生波形で出力する。即ち、CPU41は、D/A変換したWave取込処理により取り込んだ音を発音指示信号として音源45に送信する。ステップS132の処理が終了すると、CPU41は、生音処理を終了する。本実施形態においては、静電パッド26を、弦振動を検出する手段として用いているために、押弦された静電センサ以外の静電センサのセンサ値に基づいて、生音を再現する。
【0053】
[Wave取込処理]
図19は、本実施形態に係る電子弦楽器において実行されるWave取込処理を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS141において、CPU41は、音高が決定された静電パッドよりも音高の高い他の静電パッドのセンサ値を全て加算平均した値をWave値として算出する。即ち、弦のWave値は、以下の式(1)で表される。
弦のWave値=ΣO
Po、o/音高が決定された静電パッドよりも音高の高い他の静電パッドの数・・・(1)
「ΣO
Po、o」は、検出された他のセンサ値の総和を示す。
ステップS141の処理が終了すると、CPU41は、Wave取込処理を終了する。
電子弦楽器1では、このような手法で、弦のWave値を算出することで、ヘキサピックアップ等の各弦の振動を検出する機構を用いずに、押弦の検出にも用いる静電センサのみで音高指定と振動検出を行う。本手法の場合、弦を1点で支持するピックアップに夜場合に比べて、複数のセンサからの値を用いて出力音を生成するためにうなりや実際の演奏に近い綺麗な表現で音を再現することができる。
【0055】
[Wave取込処理(変形例)]
図20は、本実施形態に係る電子弦楽器において実行されるWave取込処理の変形例を示すフローチャートである。なお、ステップS151の処理は、上述した
図19のステップS141の処理に代わる他の手法を示す処理である。
【0056】
ステップS151において、CPU41は、音高が決定された静電センサよりも音高の高い静電センサのセンサ値のうちで最大の値を示したセンサ値をWave値として算出する。即ち、弦のWave値は、以下の式(2)で表される。
弦のWave値=O
Pmax
「O
Pmax」は、音高が決定された静電センサよりも音高の高い静電センサのセンサ値のうちで最大の値を示したセンサ値を示す。
電子弦楽器1では、このような手法で、弦のWave値を算出する場合、上述した加算平均からWave値を算出する場合に比べて、ノイズに対する耐性が良好となる。
【0057】
以上、本実施形態の電子弦楽器1の構成及び処理について説明した。
本実施形態においては、複数の静電パッド26は、複数の弦22が張設された指板21に設けられ、それぞれ押弦操作される弦22との近接度合いを検出するとともに、当該検出された近接度合いに対応する信号を出力する。CPU41は、複数の静電パッド26の中で最も近接度合いの大きい静電パッド26の指板21上の位置を押弦操作位置として検出し、検出された押弦操作位置よりブリッジ16側にある指板21に設けられた複数の静電パッド26夫々の出力信号の少なくとも一部から、張設された複数の弦22夫々の振動信号を抽出し、抽出された振動信号に基づいて、張設された複数の弦のいずれかが弾弦されたか否かを検出し、弾弦の検出に応答して、検出された操作状態から発音すべき楽音の音高を決定する。決定された音高の楽音の発音を、音源45に対して指示する。
したがって、指板21に配置したセンサで音高指定と振動検出を行うため、ヘキサピックアップ不要、かつ、生の振動を高音質で捕らえることができ、音色やピッチの微妙な変化を反映することができる。
【0058】
また、本実施形態においては、CPU41は、弾弦の検出された弦22の振動信号から振動ピッチを抽出し、抽出されたピッチに基づいて、音源45にて発音されている楽音の音高を制御する。
したがって、指板に配置したセンサで音高指定と振動検出を行うため、ヘキサピックアップ不要となる。
【0059】
また、本実施形態においては、CPU41は、検出された押弦操作位置よりブリッジ16側にある指板21に設けられた複数の静電パッド26の出力信号それぞれを加重平均した信号を、張設された複数の弦夫々の振動信号として抽出する。
したがって、指板21に配置した静電パッド26で音高指定と振動検出を行うため、ヘキサピックアップ不要となる。
【0060】
また、本実施形態においては、CPU41は、検出された押弦操作位置よりブリッジ16側にある指板21に設けられた複数の静電パッド26の出力信号の中で最大レベルの信号に基づいて、張設された複数の弦22夫々の振動信号として抽出する。
したがって、指板21に配置した静電パッド26で音高指定と振動検出を行うため、ヘキサピックアップ不要となる。
【0061】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0062】
上述の実施形態では、既存の静電パッドが押弦のみを検出するタイプの22フレットの電子弦楽器と同様の構成で、ヘキサピックアップを除く構成の一例を示したため、21フレットの電子弦楽器として構成したが、これに限られない。22フレットの電子弦楽器として構成する場合には、フレット及び弦振動の検出を行う静電パッドをさらに追加することにより構成可能である。また、これ以上のフレットも同様の手法で増設可能である。また、高音質にするために、静電パッドをフレットが設置されていない先に配置してもよい。
【0063】
また、上述の本実施形態では、音高決定に使用した静電パッド以外の静電パッドのセンサ値を用いて弦振動を検出するように構成したが、音高決定に使用した静電パッドのセンサ値も含めて弦振動を検出してもよい。また、音高決定に使用した静電パッドに対して音高が高い静電パッドのセンサ値を用いるように構成したが、音高決定に使用した静電パッドの両側に位置する静電パッドのセンサ値を用いてもよい。この場合には、アリコート弦(共鳴弦)のような残響成分が含まれるようになるため、より倍音や残響の効果が生じ、豊かな音になる。
【0064】
また、上述の本実施形態において説明したように、弦の振動の検出に用いたWave値は、生音の生成に利用してもよく、ピッチのみならず、他のエフェクトや音源制御に用いてもよい。
【0065】
また、上述の実施形態では、本発明が適用される楽音発生装置は、電子弦楽器1を例として説明したが、特にこれに限定されず、弦のない電子楽器としても構成することができる。
【0066】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
【0067】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0068】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体で構成される。当該記録媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini−Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されている
図2のRAM43に含まれるハードディスク等で構成される。
【0069】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換など種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書などに記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0071】
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
複数の弦が張設された指板に設けられ、それぞれ押弦操作される弦との近接度合いを検出するとともに、当該検出された近接度合いに対応する信号を出力する複数のセンサと、
前記複数のセンサの中で最も近接度合いの大きいセンサの前記指板上の位置を押弦操作位置として検出する操作位置検出手段と、
前記検出された押弦操作位置よりブリッジ部側にある前記指板に設けられた前記複数のセンサ夫々の出力信号の少なくとも一部から、前記張設された複数の弦夫々の振動信号を抽出する振動信号抽出手段と、
前記抽出された振動信号に基づいて、前記張設された複数の弦のいずれかが弾弦されたか否かを検出する弾弦検出手段と、
前記弾弦の検出に応答して、前記検出された操作状態から発音すべき楽音の音高を決定する音高決定手段と、
前記決定された音高の楽音の発音を、音源に対して指示する発音指示手段と、
を有する楽音発生装置。
[付記2]
前記弾弦の検出された弦の振動信号から振動ピッチを抽出するピッチ抽出手段と、
前記抽出されたピッチに基づいて、前記音源にて発音されている楽音の音高を制御する楽音制御手段と、
をさらに有する付記1に記載の楽音発生装置。
[付記3]
前記振動信号抽出手段は、前記検出された押弦操作位置よりブリッジ部側にある前記指板内に設けられた前記複数のセンサの出力信号それぞれを加重平均した信号を、前記張設された複数の弦夫々の振動信号として抽出する付記1又は2に記載の楽音発生装置。
[付記4]
前記振動信号抽出手段は、前記検出された押弦操作位置よりブリッジ部側にある前記指板内に設けられた前記複数のセンサの出力信号の中で最大レベルの信号に基づいて、前記張設された複数の弦夫々の振動信号として抽出する付記1又は2に記載の楽音発生装置。
[付記5]
複数の弦が張設された指板に設けられ、それぞれ押弦操作される弦との近接度合いを検出するとともに、当該検出された近接度合いに対応する信号を出力する複数のセンサを有する楽音発生装置に用いられる楽音発生方法であって、
前記複数のセンサの中で最も近接度合いの大きいセンサの前記指板上の位置を押弦操作位置として検出し、
前記検出された押弦操作位置よりブリッジ部側にある前記指板に設けられた前記複数のセンサ夫々の出力信号の少なくとも一部から、前記張設された複数の弦夫々の振動信号を抽出し、
前記抽出された振動信号に基づいて、前記張設された複数の弦のいずれかが弾弦されたか否かを検出し、
前記弾弦の検出に応答して、前記検出された操作状態から発音すべき楽音の音高を決定し、
前記決定された音高の楽音の発音を、音源に対して指示する、楽音発生方法。
[付記6]
複数の弦が張設された指板に設けられ、それぞれ押弦操作される弦との近接度合いを検出するとともに、当該検出された近接度合いに対応する信号を出力する複数のセンサを有する楽音発生装置として用いられるコンピュータに、
前記複数のセンサの中で最も近接度合いの大きいセンサの前記指板上の位置を押弦操作位置として検出する操作位置検出ステップと、
前記検出された押弦操作位置よりブリッジ部側にある前記指板に設けられた前記複数のセンサ夫々の出力信号の少なくとも一部から、前記張設された複数の弦夫々の振動信号を抽出する振動信号抽出ステップと、
前記抽出された振動信号に基づいて、前記張設された複数の弦のいずれかが弾弦されたか否かを検出する弾弦検出ステップと、
前記弾弦の検出に応答して、前記検出された操作状態から発音すべき楽音の音高を決定する音高決定ステップと、
前記決定された音高の楽音の発音を、音源に対して指示する発音指示ステップと、
を実行させるプログラム。