特許第6135364号(P6135364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6135364
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20170522BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20170522BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20170522BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20170522BHJP
   H01L 29/16 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H01L29/78 652H
   H01L29/78 652T
   H01L29/78 652B
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 652P
   H01L29/78 652M
   H01L29/78 652S
   H01L29/78 658E
   H01L29/78 658G
   H01L29/06 301G
   H01L29/06 301D
   H01L29/06 301V
   H01L29/16
【請求項の数】15
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-155671(P2013-155671)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-26727(P2015-26727A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 圭司
(72)【発明者】
【氏名】増田 健良
(72)【発明者】
【氏名】玉祖 秀人
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雄
(72)【発明者】
【氏名】日吉 透
(72)【発明者】
【氏名】酒井 光彦
【審査官】 恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−169385(JP,A)
【文献】 特開2009−158681(JP,A)
【文献】 特開2001−267570(JP,A)
【文献】 特開2013−008890(JP,A)
【文献】 特開2013−089836(JP,A)
【文献】 特開2001−352065(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/031212(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/06
H01L 29/12
H01L 29/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と、前記第1の主面と反対の第2の主面とを有する炭化珪素層を備え、
前記炭化珪素層は、前記第1の主面をなし第1導電型を有するドリフト領域と、
前記ドリフト領域上に設けられ前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、
前記ドリフト領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ前記第2の主面をなしかつ前記第1導電型を有するソース領域とを含み、
前記炭化珪素層には、前記第2の主面から前記ソース領域および前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト領域に至る第1の側壁部と、前記ドリフト領域に位置する第1の底部とからなるトレンチが設けられており、
前記炭化珪素層は、前記第1の底部に対向するように前記ドリフト領域に埋め込まれて配置され、かつ前記第2導電型を有する第2導電型領域を含み、
前記第2導電型領域は前記ソース領域と電気的に接続されており、
前記ソース領域と接する金属領域をさらに備え、
前記金属領域は、前記第2導電型領域と直接接する、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
平面視において、前記第2導電型領域は網目構造を有している、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
記金属領域を介して前記ソース領域と前記第2導電型領域とは電気的に接続されている、請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記炭化珪素層には、前記第1の主面および前記第2の主面との間に位置する第2の底部と、前記第2の底部と前記第2の主面とを繋ぐ第2の側壁部とからなる段差部が設けられており、
前記金属領域は、前記第2の主面において前記ソース領域と接し、かつ前記第2の底部と接する、請求項3に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記炭化珪素層は、終端領域と、前記終端領域に囲まれた素子領域とからなり、
前記段差部は、前記終端領域に設けられている、請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記終端領域は、前記第2導電型を有するガードリング領域を有し、
前記金属領域は、前記第2の底部において前記ガードリング領域と接し、かつ前記ガードリング領域は前記第2導電型領域と接する、請求項5に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記終端領域は、平面視において前記ガードリング領域を囲み、かつ前記第1導電型を有するフィールドストップ領域を含み、
前記フィールドストップ領域は、前記第2の主面から離間している、請求項6に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記金属領域は、前記第2の底部において前記第2導電型領域と直接接している、請求項5に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記炭化珪素層は、終端領域と、前記終端領域に囲まれた素子領域とからなり、
前記段差部は、前記素子領域に設けられている、請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
前記金属領域は、前記第2の底部において前記第2導電型領域と直接接している、請求項9に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
前記ソース領域は、前記ボディ領域および前記第2導電型を有するJTE領域を介して前記第2導電型領域と接している、請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項12】
前記トレンチの前記第1の底部は、平面視において多角形のセルを囲うように延在しており、
平面視において、前記セルの頂点が前記第2導電型領域と重なる位置に前記第2導電型領域が配置されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項13】
第1の主面と、前記第1の主面と反対の第2の主面とを有する炭化珪素層を準備する工程と、
前記炭化珪素層の前記第2の主面にトレンチを形成する工程とを備え、
前記炭化珪素層は、前記第1の主面をなし第1導電型を有するドリフト領域と、
前記ドリフト領域上に設けられ前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、
前記ドリフト領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ前記第2の主面をなしかつ前記第1導電型を有するソース領域とを含み、
前記トレンチは、前記第2の主面から前記ソース領域および前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト領域に至る第1の側壁部と、前記ドリフト領域に位置する第1の底部とからなり、
前記炭化珪素層は、前記第1の底部に対向するように前記ドリフト領域に埋め込まれて配置され、かつ前記第2導電型を有する第2導電型領域を含み、
前記第2導電型領域は前記ソース領域と電気的に接続されており、
前記ソース領域と接し、かつ前記第2導電型領域と直接接する金属領域を形成する工程をさらに備える、炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記炭化珪素層の前記第2の主面に、前記第1の主面および前記第2の主面との間に位置する第2の底部と、前記第2の底部と前記第2の主面とを繋ぐ第2の側壁部とからなる段差部を形成する工程と、
前記金属領域を形成する工程において、前記金属領域は、前記第2の底部に接する請求項13に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記段差部の形成は、熱エッチングにより行われる、請求項14に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置およびその製造方法に関するものであり、特に、トレンチが設けられた炭化珪素半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体装置の高耐圧化、低損失化、高温環境下での使用などを可能とするため、半導体装置を構成する材料として炭化珪素の採用が進められつつある。炭化珪素は、従来から半導体装置を構成する材料として広く使用されている珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体である。そのため、半導体装置を構成する材料として炭化珪素を採用することにより、半導体装置の高耐圧化、オン抵抗の低減などを達成することができる。また、炭化珪素を材料として採用した半導体装置は、珪素を材料として採用した半導体装置に比べて、高温環境下で使用された場合の特性の低下が小さいという利点も有している。
【0003】
特表2000−509559号公報(特許文献1)には、ゲートトレンチを有する炭化珪素電界効果トランジスタが記載されている。当該炭化珪素電界効果トランジスタは、ゲートトレントの底部の近くに設けられたp領域と、当該p領域に接するソースコンタクトとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2000−509559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特表2000−509559号公報に記載の炭化珪素電界効果トランジスタによれば、ゲートトレンチの角部における電界集中を十分に緩和することは困難である。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、トレンチの角部における電界集中を効果的に緩和することができる炭化珪素半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る炭化珪素半導体装置は、炭化珪素層を備えている。炭化珪素層は、第1の主面と、第1の主面と反対の第2の主面とを有する。炭化珪素層は、ドリフト領域と、ボディ領域と、ソース領域とを含む。ドリフト領域は、第1の主面をなし第1の導電型を有する。ボディ領域は、ドリフト領域上に設けられ第1の導電型と異なる第2の導電型を有する。ソース領域は、ドリフト領域から隔てられるようにボディ領域上に設けられ第2の主面をなしかつ第1導電型を有する。炭化珪素層には、第2の主面からソース領域およびボディ領域を貫通してドリフト領域に至る第1の側壁部と、ドリフト領域に位置する第1の底部とからなるトレンチが設けられている。炭化珪素層は、第1の底部に対向するようにドリフト領域に埋め込まれて配置され、かつ第2導電型を有する第2導電型領域を含む。第2導電型領域はソース領域と電気的に接続されている。
【0008】
本発明に係る炭化珪素半導体装置の製造方法は以下の工程を備えている。第1の主面と、第1の主面と反対の第2の主面とを有する炭化珪素層が準備される。炭化珪素層の第2の主面にトレンチが形成される。炭化珪素層は、ドリフト領域と、ボディ領域と、ソース領域とを含む。ドリフト領域は、第1の主面をなし第1の導電型を有する。ボディ領域は、ドリフト領域上に設けられ第1の導電型と異なる第2の導電型を有する。ソース領域は、ドリフト領域から隔てられるようにボディ領域上に設けられ第2の主面をなしかつ第1導電型を有する。トレンチは、第2の主面からソース領域およびボディ領域を貫通してドリフト領域に至る第1の側壁部と、ドリフト領域に位置する第1の底部とからなる。炭化珪素層は、第1の底部に対向するようにドリフト領域に埋め込まれて配置され、かつ第2導電型を有する第2導電型領域を含む。第2導電型領域はソース領域と電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トレンチの角部における電界集中を効果的に緩和することができる炭化珪素半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面模式図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す平面模式図である。
図3図2の領域III−IIIにおける断面模式図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を概略的に示すフロー図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第1の工程を概略的に示す断面模式図である。
図6】本発明の実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第2の工程を概略的に示す断面模式図である。
図7】本発明の実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第3の工程を概略的に示す断面模式図である。
図8】本発明の実施の形態2に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面模式図である。
図9】本発明の実施の形態2に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す平面模式図である。
図10】本発明の実施の形態3に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面模式図である。
図11】本発明の実施の形態3に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面模式図である。
図12】本発明の実施の形態3に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を概略的に示すフロー図である。
図13】本発明の実施の形態3に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第1の工程を概略的に示す断面模式図である。
図14】本発明の実施の形態3に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第2の工程を概略的に示す断面模式図である。
図15】本発明の実施の形態3に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第3の工程を概略的に示す断面模式図である。
図16】本発明の実施の形態4に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面模式図である。
図17】本発明の実施の形態5に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面模式図である。
図18】本発明の実施の形態6に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面模式図である。
図19】本発明の実施の形態7に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面模式図である。
図20】本発明の実施の形態7に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本願発明の実施形態の説明]
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。また、本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、”−”(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付している。
【0012】
(1)実施の形態に係る炭化珪素半導体装置1は、炭化珪素層10を備えている。炭化珪素層10は、第1の主面10bと、第1の主面10bと反対の第2の主面10aとを有する。炭化珪素層10は、ドリフト領域81と、ボディ領域82と、ソース領域83とを含む。ドリフト領域81は、第1の主面10bをなし第1の導電型を有する。ボディ領域82は、ドリフト領域81上に設けられ第1の導電型と異なる第2の導電型を有する。ソース領域83は、ドリフト領域81から隔てられるようにボディ領域82上に設けられ第2の主面10aをなしかつ第1導電型を有する。炭化珪素層10には、第2の主面10aからソース領域83およびボディ領域82を貫通してドリフト領域81に至る第1の側壁部SW1と、ドリフト領域81に位置する第1の底部BT1とからなるトレンチTRが設けられている。炭化珪素層10は、第1の底部BT1に対向するようにドリフト領域81に埋め込まれて配置され、かつ第2導電型を有する第2導電型領域2を含む。第2導電型領域2はソース領域83と電気的に接続されている。
【0013】
上記実施の形態に係る炭化珪素半導体装置1によれば、炭化珪素層10は、トレンチTRの第1の底部BT1に対向するようにドリフト領域81に埋め込まれて配置され、かつ第2導電型を有する第2導電型領域2を含む。これにより、トレンチTRの第1の底部BT1と第1の側壁部SW1とが接する角部81aにおける電界集中を効果的に緩和することができる。結果として、炭化珪素半導体装置の耐圧を効果的に向上することができる。また第2導電型領域2はソース領域83と電気的に接続されている。これにより、ドレイン電圧印加時における空乏化が促進されることにより、キャパシタンスの低下が促進される。それゆえ、炭化珪素半導体装置の高速応答性が向上し、スイッチング特性が向上する。
【0014】
(2)上記(1)に係る炭化珪素半導体装置1において好ましくは、平面視において、第2導電型領域2は網目構造を有している。これにより、電流経路を広く確保しながら、トレンチTRの角部81aにおける電界集中を緩和することができる。
【0015】
(3)上記(1)または(2)に係る炭化珪素半導体装置1において好ましくは、金属領域96をさらに備える。金属領域96はソース領域83と接する。金属領域96を介してソース領域83と第2導電型領域2とは電気的に接続されている。これにより、炭化珪素半導体装置のスイッチング特性を効果的に向上することができる。ここで、金属領域96を介してソース領域83と第2導電型領域2とは電気的に接続されているとは、ソース領域83と第2導電型領域2とを繋ぐ電気回路の一部に金属領域96を含むことを意味し、ソース領域83および第2導電型領域2を繋ぐ電気回路が金属領域96以外の導電領域を有する場合も含む。
【0016】
(4)上記(3)に係る炭化珪素半導体装置1において好ましくは、炭化珪素層10には、第1の主面10bおよび第2の主面10aとの間に位置する第2の底部BT2と、第2の底部BT2と第2の主面10aとを繋ぐ第2の側壁部SW2とからなる段差部STが設けられている。金属領域96は、第2の主面10aにおいてソース領域83と接し、かつ第2の底部BT2と接する。これにより、第2導電型領域2を効果的にソース領域83と電気的に接続することができる。
【0017】
(5)上記(4)に係る炭化珪素半導体装置1において好ましくは、炭化珪素層10は、終端領域ORと、終端領域ORに囲まれた素子領域IRとからなる。段差部STは、終端領域ORに設けられている。これにより、素子領域IRを広く確保しながら、第2導電型領域2をソース領域83と電気的に接続することができる。
【0018】
(6)上記(5)に係る炭化珪素半導体装置1において好ましくは、終端領域ORは、第2導電型を有するガードリング領域3を有する。金属領域96は、第2の底部BT2においてガードリング領域3と接し、かつガードリング領域3は第2導電型領域2と接する。これにより、炭化珪素半導体装置の耐圧を向上することができる。
【0019】
(7)上記(6)に係る炭化珪素半導体装置1において好ましくは、終端領域ORは、平面視においてガードリング領域3を囲み、かつ第1導電型を有するフィールドストップ領域4を含む。フィールドストップ領域4は、第2の主面10aから離間している。これにより、炭化珪素半導体装置の耐圧をより向上することができる。
【0020】
(8)上記(5)に係る炭化珪素半導体装置1において好ましくは、金属領域96は、第2の底部BT2において第2導電型領域2と直接接している。これにより、炭化珪素半導体装置のスイッチング特性をより向上することができる。
【0021】
(9)上記(4)に係る炭化珪素半導体装置1において好ましくは、炭化珪素層10は、終端領域ORと、終端領域ORに囲まれた素子領域IRとからなる。段差部STは、素子領域IRに設けられている。これにより、第2導電型領域2全体を短時間でソース領域と同電位にすることができる。
【0022】
(10)上記(9)に係る炭化珪素半導体装置1において好ましくは、金属領域96は、第2の底部BT2において第2導電型領域2と直接接している。これにより、炭化珪素半導体装置のスイッチング特性をより向上することができる。
【0023】
(11)上記(1)または(2)に係る炭化珪素半導体装置1において好ましくは、ソース領域83は、ボディ領域82および第2導電型を有するJTE領域5を介して第2導電型領域2と接している。これにより、ソース領域83と第2導電型領域とを接続するための金属領域96を形成する必要がないので、炭化珪素半導体装置1の製造工程が簡素化される。
【0024】
(12)上記(1)〜(11)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置1において好ましくは、トレンチTRの第1の底部BT1は、平面視において多角形のセルCLを囲うように延在しており、平面視において、セルCLの頂点81aが第2導電型領域2と重なる位置に第2導電型領域2が配置されている。セルCLの頂点81aは、トレンチTRの角部の中でも特に電界が集中しやすい箇所である。第2導電型領域2をセルCLの頂点81aと重なるように配置することにより、効果的にトレンチTRの角部81aにおける電界集中を緩和することができる。
【0025】
(13)実施の形態に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法は、以下の工程を備えている。第1の主面10bと、第1の主面10bと反対の第2の主面10aとを有する炭化珪素層10が準備される。炭化珪素層10の第2の主面10aにトレンチTRが形成される。炭化珪素層10は、ドリフト領域81と、ボディ領域82と、ソース領域83とを含む。ドリフト領域81は、第1の主面10bをなし第1の導電型を有する。ボディ領域82は、ドリフト領域81上に設けられ第1の導電型と異なる第2の導電型を有する。ソース領域83は、ドリフト領域81から隔てられるようにボディ領域82上に設けられ第2の主面10aをなしかつ第1導電型を有する。トレンチTRは、第2の主面10aからソース領域83およびボディ領域82を貫通してドリフト領域81に至る第1の側壁部SW1と、ドリフト領域81に位置する第1の底部BT1とからなる。炭化珪素層10は、第1の底部BT1に対向するようにドリフト領域81に埋め込まれて配置され、かつ第2導電型を有する第2導電型領域2を含む。第2導電型領域2はソース領域83と電気的に接続されている。
【0026】
上記実施の形態に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法によれば、炭化珪素層10は、トレンチTRの第1の底部BT1に対向するようにドリフト領域81に埋め込まれて配置され、かつ第2導電型を有する第2導電型領域2を含む。これにより、トレンチTRの第1の底部BT1と第1の側壁部SW1とが接する角部81aにおける電界集中を効果的に緩和することができる。結果として、炭化珪素半導体装置の耐圧を効果的に向上することができる。また第2導電型領域2はソース領域83と電気的に接続されている。これにより、ドレイン電圧印加時における空乏化が促進されることにより、キャパシタンスの低下が促進される。それゆえ、炭化珪素半導体装置の高速応答性が向上し、スイッチング特性が向上する。
【0027】
(14)上記(13)に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、炭化珪素層10の第2の主面10aに、第1の主面10bおよび第2の主面10aとの間に位置する第2の底部BT2と、第2の底部BT2と第2の主面10aとを繋ぐ第2の側壁部SW2とからなる段差部STが形成される。ソース領域83および第2の底部BT2に接する金属領域96が形成される。これにより、これにより、第2導電型領域2を効果的にソース領域83と電気的に接続することができる。
【0028】
(15)上記(14)に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、段差部STの形成は、熱エッチングにより行われる。これにより、効果的に段差部STを形成することができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
次に、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1を参照して、実施の形態1の炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の構造について説明する。実施の形態1に係るMOSFET1は、炭化珪素層10と、炭化珪素単結晶基板80と、ゲート絶縁膜91と、ゲート電極92と、層間絶縁膜93と、金属領域96と、ドレイン電極98とを有する。
【0029】
炭化珪素層10は、第1の主面10bと、第1の主面と反対の第2の主面10aとを有する炭化珪素からなるエピタキシャル層である。炭化珪素単結晶基板80は、たとえばポリタイプ4Hを有する六方晶炭化珪素単結晶からなる。炭化珪素層10の第1の主面10bは、炭化珪素単結晶基板80と接する。炭化珪素層10は、ドリフト領域81と、ボディ領域82と、ソース領域83と、コンタクト領域84と、p型領域2と、接続領域2aとを主に有する。炭化珪素層10は、素子領域IRと、素子領域IRを取り囲む終端領域OR(図10参照)とからなる。終端領域ORは、ガードリング領域3(図10参照)と、フィールドストップ領域4(図10参照)とを有していてもよい。
【0030】
ドリフト領域81は、たとえば窒素などの不純物を含むn型(第1の導電型)領域である。ドリフト領域81は炭化珪素層10の第1の主面10bをなす。ドリフト領域81は下部ドリフト領域81cおよび上部ドリフト領域81dを有する。上部ドリフト領域81dは、下部ドリフト領域81c上に設けられている。下部ドリフト領域81cおよび上部ドリフト領域81dの境界面に接してp型領域2が部分的に設けられている。ドリフト領域81の不純物濃度は、炭化珪素単結晶基板80の不純物濃度よりも低いことが好ましい。ドリフト領域81のドナー濃度は、好ましくは1×1015cm-3以上5×1016cm-3以下であり、たとえば8×1015cm-3である。下部ドリフト領域81cおよび上部ドリフト領域81dの厚みは、たとえば各々9μmおよび3μmである。
【0031】
ボディ領域82は、たとえばアルミニウムやホウ素などの不純物を含むp型(第2の導電型)領域である。ボディ領域82は上部ドリフト領域81d上に設けられている。ボディ領域82のアクセプタ濃度は、好ましくは1×1017cm-3以上5×1018cm-3以下である。ボディ領域82のアクセプタ濃度は、ドリフト領域81のドナー濃度よりも高い。
【0032】
ソース領域83は、たとえばリンなどの不純物を含むn型領域である。ソース領域83は、ボディ領域82によってドリフト領域81から隔てられるようにボディ領域82上に設けられている。ソース領域83のドナー濃度は、たとえば2×1019cm-3程度である。ソース領域83のドナー濃度は、ボディ領域82のアクセプタ濃度よりも高い。ソース領域83はコンタクト領域84と共に炭化珪素層10の第2の主面10aをなしている。
【0033】
コンタクト領域84は、たとえばアルミニウムなどの不純物を含むp型領域である。コンタクト領域84は、ソース領域83に囲まれて設けられており、ボディ領域82につながっている。コンタクト領域84のアクセプタ濃度は、ボディ領域82のアクセプタ濃度よりも高い。コンタクト領域84のアクセプタ濃度は、たとえば1×1020cm-3程度である。コンタクト領域84と、ソース領域84と、ボディ領域82と、ドリフト領域81とによりセルCLが形成される。
【0034】
炭化珪素層10の第2の主面10aには(ゲート)トレンチTRが設けられている。トレンチTRは第1の側壁部SW1および第1の底部BT1からなる。第1の側壁部SW1は、炭化珪素層10の第2の主面10aからソース領域83およびボディ領域82を貫通して上部ドリフト領域81dに至っている。第1の底部BT1は、第1の側壁部SW1と連接し、かつ上部ドリフト領域81dに位置している。第1の側壁部SW1は、ボディ領域82上において、MOSFET1のチャネル面を含む。
【0035】
第1の側壁部SW1は、炭化珪素層10の第2の主面10aに対して傾斜している。断面視(第1の主面10bに平行な方向の視野)において、トレンチTRは開口に向かってテーパ状に拡がっている。本実施の形態において、第1の底部BT1は第2の主面10aとほぼ平行であり、かつ平坦な形状を有する。第1の底部BT1と第1の側壁部SW1とが繋がる部分は、トレンチTRの角部81bである。
【0036】
炭化珪素層10には、炭化珪素層10の第1の主面10bおよび第2の主面10aの間に位置する第2の底部BT2と、第2の底部BT2と第2の主面10aとを繋ぐ第2の側壁部SW2とからなる段差部STが設けられている。本実施の形態において、段差部STは、素子領域IRに設けられている。好ましくは、段差部STの第2の底部BT2は、トレンチTRの第1の底部BT1よりも第1の主面10bに近い位置に設けられている。好ましくは、断面視において、段差部STの第2の底部BT2の幅は、トレンチTRの第1の底部BT1の幅よりも広い。段差部STは、素子領域IRに設けられた複数のセルCLの中の一部を形成しないようにして設けられる。段差部STの個数は、セルCLの個数よりも少ない。
【0037】
p型領域2(第2導電型領域)および接続領域2aの各々は、たとえばアルミニウムなどの不純物を含むp型領域である。p型領域2はドリフト領域81の内部に埋め込まれるように設けられている。p型領域2は、トレンチTRの第1の底部BT1から離間して設けられている。好ましくは、p型領域2は、トレンチTRの第1の底部BT1よりも第1の主面10b側に位置する。好ましくは、p型領域2は、ボディ領域82から1μm以上5μm以下離れている。p型領域2および接続領域2aの各々のドーズ量は、たとえば1×1012cm-2以上1×1015cm-2以下であり、好ましくは1×1013cm-2以上5×1013cm-2以下ある。接続領域2aは、段差部STの第2の底部BT2に接して設けられている。接続領域2aとp型領域2とは、たとえば同時に形成されることにより実質的に一体となったp型領域2であってもよい。この場合、金属領域96は、p型領域2と直接接続される。
【0038】
図2は、図1の領域II−IIでMOSFET1を切断した面である。図2を参照して、平面視(第1の主面10bの法線方向の視野)において、p型領域2は網目構造を有している。図2において、破線で囲まれた六角形(多角形)の部分は、トレンチTRの第1の底部BT1の位置で見た上部ドリフト領域81dの平面形状である。隣り合う六角形のセルCLに挟まれた領域がトレンチTRの第1の底部BT1である。言い換えれば、トレンチTRの第1の底部BT1は、平面視において六角形(多角形)のセルCLを囲うように延在している。平面視において、六角形(多角形)のセルCLが有する全ての頂点81aの各々が、p型領域2と重なる位置にp型領域2が配置されている。
【0039】
トレンチTRの第1の側壁部SW1と第1の底部BT1とが交差する部分であって、六角形のセルCLの頂点81aは、トレンチTRの第1の角部81aであり、六角形の隣り合う2つの頂点の中間に位置する部分は、トレンチTRの第2の角部81bである。第1の角部81aは、第2の角部81bよりも電界集中が起こりやすく、電界強度が高くなる。好ましくは、平面視において、p型領域2は、トレンチTRの第1の角部81aと重なる位置に設けられ、かつトレンチTRの第2の角部81bに重ならない位置に設けられる。これにより、電流経路を確保しつつ、トレンチTRの第1の角部81aにおける電界集中を効果的に緩和することができる。
【0040】
平面視において、トレンチTRの第1の底部BT1はハニカム構造を有している。平面視において、p型領域2は、当該ハニカム構造の交差点ISと重なる位置に配置されており、当該ハニカム構造の隣り合う2つの交差点ISを結ぶ線分の一部とは重ならないような形状を有する網目構造を有している。平面視において、接続領域2aは、たとえば六角形(多角形)状を有している。図2に示すように、接続領域2aは、六角形の頂点の各々においてp型領域2と接している。
【0041】
図3は、図2の領域III−IIIでMOSFET1を切断した面である。図3を参照して、断面視において、p型領域2は、トレンチTRの第1の底部BT1の一部に対向する位置に設けられている。言い換えれば、平面視において、p型領域2と、トレンチTRの第1の底部BT1とは部分的に重なっている。p型領域2は、ソース領域83およびボディ領域82に対向する位置に設けられている。またp型領域2は、トレンチTRの第1の側壁部SW1と第1の底部BT1との接線上であって、六角形のセルCLの頂点81aに対向する位置に配置されている。
【0042】
図1を参照して、ゲート絶縁膜91は、トレンチTRの第1の側壁部SW1と、第1の底部BT1との各々を覆っている。ゲート絶縁膜91は、ソース領域83および上部ドリフト領域81dをつなぐようにボディ領域82上に設けられている。ゲート絶縁膜91は、段差部STを形成する第2の側壁部SW2および第2の底部BT2に接していてもよい。ゲート電極92はゲート絶縁膜91に接し、かつトレンチTRの内部に設けられている。層間絶縁膜93は、ゲート電極92およびゲート絶縁膜91に接して設けられ、ゲート電極92とソース電極94とを電気的に絶縁している。層間絶縁膜93は、段差部STを形成する第2の側壁部SW2および第2の底部BT2に接して設けられているゲート絶縁膜91上に配置されていてもよい。層間絶縁膜93は、たとえば二酸化珪素からなる。
【0043】
金属領域96は、ソース電極94と、ソース配線層95と、コンタクト電極94aとを含む。ソース電極94は、ソース領域83およびコンタクト領域84の各々に接している。ソース配線層95はソース電極94上に接して配置されている。ソース配線層95は、たとえばアルミニウム層である。層間絶縁膜93はゲート電極92とソース配線層95との間を絶縁している。コンタクト電極94aは、段差部STの第2の底部BT2において接続領域2aと接している。コンタクト電極94aは、ゲート絶縁膜91と接していてもよい。ソース配線層95は、ソース電極94から層間絶縁膜93を跨いで段差部ST内に入り込み、コンタクト電極94aと接している。金属領域96は、炭化珪素層10の第2の主面10aにおいてソース領域83およびコンタクト領域84に接し、かつ段差部STの第2の底部BT2と接する。
【0044】
ソース領域83はp型領域2と金属領域96を介して電気的に接続されている。ソース領域83は、ソース電極94とオーミック接合している。ソース領域83は、ソース電極94と、ソース配線層95と、コンタクト電極94aと、接続領域2aとを介してp型領域2と電気的に接続されている。
【0045】
好ましくは、トレンチTRの第1の側壁部SW1および段差部STの第2の側壁部SW2の各々は特殊面を含む。特殊面とは、面方位{0−33−8}を有する第1の面を含む面である。より好ましくは、特殊面は、第1の面を微視的に含み、さらに、面方位{0−11−1}を有する第2の面を微視的に含む。さらに好ましくは、第1の面および第2の面は、面方位{0−11−2}を有する複合面を含む。また特殊面は、{000−1}面に対して、巨視的に62°±10°のオフ角を有する面である。
【0046】
次に本実施の形態に係る炭化珪素半導体装置であるMOSFET1の製造方法の一例について説明する。
【0047】
まず、第1のエピタキシャル層形成工程(図4:S10)が実施される。図5に示すように、ドリフト領域81(図1)の一部となる下部ドリフト領域81cが炭化珪素単結晶基板80上に形成される。具体的には、エピタキシャル成長によって下部ドリフト領域81cが炭化珪素単結晶基板80上に形成される。このエピタキシャル成長は、たとえば原料ガスとしてシラン(SiH4)とプロパン(C38)との混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素ガス(H2)を用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)法により行うことができる。この際、不純物として、たとえば窒素(N)やリン(P)などの不純物(ドナー)を導入することが好ましい。下部ドリフト領域81cが含む窒素などの不純物濃度は、たとえば7.0×1015cm3程度である。下部ドリフト領域81cの厚みは、たとえば9μm程度である。
【0048】
次に、埋込p型領域形成工程(図4:S20)が実施される。下部ドリフト領域81cの一部の上に、p型の導電型を有するp型領域2が形成される。具体的には、下部ドリフト領域81cに対して、注入マスク(図示せず)を用いて、アルミニウムなどのアクセプタイオン(第2の導電型を付与するための不純物イオン)の注入が行われることにより、p型領域2が形成される。アルミニウムイオンのドーズ量は、たとえば3×1013cm-2程度である。
【0049】
次に、第2のエピタキシャル層形成工程(図4:S30)が実施される。図6に示すように、p型領域2が形成された後、n型を有する下部ドリフト領域81c上に、n型を有する上部ドリフト領域81dが形成される。これによりp型領域2は、下部ドリフト領域81cおよび上部ドリフト領域81dによって構成されるドリフト領域81に埋め込まれる。上部ドリフト領域81dは下部ドリフト領域81cの形成方法と同様の方法によって形成され得る。上部ドリフト領域81dが含む窒素などの不純物濃度は、たとえば1.0×1016cm3程度である。上部ドリフト領域81dの厚みは、たとえば3μm程度である。
【0050】
次に、ドリフト領域81上にボディ領域82およびソース領域83が形成される。これらの形成は、たとえばドリフト領域81に対するイオン注入により行い得る。ボディ領域82を形成するためのイオン注入においては、たとえばアルミニウム(Al)などの、p型を付与するための不純物がイオン注入される。またソース領域83を形成するためのイオン注入においては、たとえばリン(P)などの、n型を付与するための不純物がイオン注入される。なおイオン注入の代わり、不純物の添加をともなうにエピタキシャル成長が用いられてもよい。
【0051】
ドリフト領域81とボディ領域82とソース領域83とコンタクト領域84とp型領域2とは、第1の主面10bおよび第2の主面10aを有する炭化珪素層10を構成する。ドリフト領域81は第1の主面10bをなし、ソース領域83は第2の主面10aをなす。以上により。第1の主面10bと、第1の主面10bと反対側の第2の主面10aとを有する炭化珪素層10が準備される。
【0052】
次に、段差部形成工程(図5:S40)が実施される。具体的には、ソース領域83からなる第2の主面10a上に、開口部を有するマスク層(図示せず)が形成される。マスク層として、たとえばシリコン酸化膜などを用いることができる。開口部は段差部ST(図1)の位置に対応して形成される。
【0053】
マスク層の開口部において、ソース領域83と、ボディ領域82と、ドリフト領域81の一部とがエッチングにより除去される。エッチングの方法としては、たとえば反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)、特に誘導結合プラズマ(ICP:Inductive Coupling Plasma)RIEを用いることができる。具体的には、たとえば反応ガスとしてSF6またはSF6とO2との混合ガスを用いたICP−RIEを用いることができる。このようなエッチングにより、段差部ST(図1)が形成されるべき領域に、第2の主面10aに対してほぼ垂直な側壁を有する凹部が形成される。
【0054】
次に、凹部において熱エッチングが行われる。熱エッチングは、たとえば、少なくとも1種類以上のハロゲン原子を有する反応性ガスを含む雰囲気中での加熱によって行い得る。少なくとも1種類以上のハロゲン原子は、塩素(Cl)原子およびフッ素(F)原子の少なくともいずれかを含む。この雰囲気は、たとえば、Cl2、BCL3、SF6、またはCF4である。たとえば、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスを反応ガスとして用い、熱処理温度を、たとえば700℃以上1000℃以下として、熱エッチングが行われる。
【0055】
なお、反応ガスは、上述した塩素ガスと酸素ガスとに加えて、キャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、たとえば窒素(N2)ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどを用いることができる。そして、上述のように熱処理温度を700℃以上1000℃以下とした場合、SiCのエッチング速度はたとえば約70μm/時になる。また、この場合に、酸化珪素から作られたマスク層は、SiCに対する選択比が極めて大きいので、SiCのエッチング中に実質的にエッチングされない。
【0056】
図7に示すように、上記の熱エッチングにより、炭化珪素層10の第2の主面10a上に段差部STが形成される。段差部STは、ソース領域83およびボディ領域82を貫通してドリフト領域81に至る第2の側壁部SW2と、ドリフト領域81上に位置する第2の底部BT2とを有する。好ましくは、段差部STの形成時、第2の側壁部SW2上、特にボディ領域82上において、上述した特殊面が自己形成される。次にマスク層がエッチングなど任意の方法により除去される。
【0057】
次に、イオン注入工程(図4:S50)が実施される。コンタクト領域84(図1)および接続領域2a(図1)が形成される領域に開口を有するイオン注入マスク層が炭化珪素層10の第2の主面10a上に形成される。当該マスク層を用いて、アルミニウムイオンなどが、炭化珪素層10にイオン注入されることにより、p型の導電型を有するコンタクト領域84および接続領域2aが形成される。なお、コンタクト領域84の形成と接続領域2aの形成は同時に行われてもよいし、別々に行われてもよい。
【0058】
次に、活性化アニール工程(図4:S60)が実施される。イオン注入工程によって炭化珪素層10に注入された不純物を活性化するために、当該炭化珪素層10に対して熱処理が行われる。この熱処理の温度は、好ましくは1500℃以上1900℃以下であり、たとえば1700℃程度である。熱処理の時間は、たとえば30分程度である。熱処理の雰囲気は、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、たとえばAr雰囲気である。
【0059】
次に、トレンチ形成工程(図5:S70)が実施される。トレンチ形成工程は、上述した段差部形成工程(図5:S40)と同様の方法により実施することができる。具体的にはソース領域83およびコンタクト領域84からなる面上に、開口部を有するマスク層が形成される。マスク層として、たとえばシリコン酸化膜などを用いることができる。開口部はトレンチTR(図1)の位置に対応して形成される。マスク層の開口部において、ソース領域83と、ボディ領域82と、ドリフト領域81の一部とがエッチングにより除去される。エッチングは、たとえば反応ガスとしてSF6またはSF6とO2との混合ガスを用いたICP−RIEを用いて行われる。当該エッチングにより、トレンチTR(図1)が形成されるべき領域に、第2の主面10aに対してほぼ垂直な側壁を有する凹部が形成される。
【0060】
次に、凹部において熱エッチングが行われる。熱エッチングは、たとえば、少なくとも1種類以上のハロゲン原子を有する反応性ガスを含む雰囲気中での加熱によって行い得る。少なくとも1種類以上のハロゲン原子は、塩素(Cl)原子およびフッ素(F)原子の少なくともいずれかを含む。この雰囲気は、たとえば、Cl2、BCL3、SF6、またはCF4である。たとえば、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスを反応ガスとして用い、熱処理温度を、たとえば700℃以上1000℃以下として、熱エッチングが行われる。なお、反応ガスは、上述した塩素ガスと酸素ガスとに加えて、キャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、たとえば窒素(N2)ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどを用いることができる。
【0061】
上記の熱エッチングにより、炭化珪素層10の第2の主面10a上にトレンチTRが形成される。トレンチTRは、ソース領域83およびボディ領域82を貫通してドリフト領域81に至る第1の側壁部SW1と、ドリフト領域81上に位置する第1の底部BT1とを有する。第1の側壁部SW1および第1の底部BT1の各々はp型領域2から離れている。好ましくは、トレンチTRの形成時、第1の側壁部SW1上、特にボディ領域82上において、特殊面が自己形成される。次にマスク層がエッチングなど任意の方法により除去される。
【0062】
なお、トレンチ形成工程(図4:S70)と、段差部形成工程(図4:S40)とは、ともに熱エッチングにより実施されるが、段差部形成工程における熱エッチング時間は、トレンチ形成工程における熱エッチング時間より長くてもよい。これにより、段差部STを形成する第2の底部BT2は、トレンチTRの第1の底部BT1よりも第1の主面10bに近い位置に形成される。トレンチTRの深さ、言い換えれば、炭化珪素層10の第1の主面10bの法線方向に沿った、炭化珪素層10の第2の主面10aとトレンチTRの第1の底部BT1との距離は、たとえば1.0μm以上1.8μm以下程度である。段差部STの深さ、言い換えれば、炭化珪素層10の第1の主面10bの法線方向に沿った、炭化珪素層10の第2の主面10aと段差部STの第2の底部BT2との距離は、たとえば1.1μm以上3.0μm以下程度である。
【0063】
次に、ゲート酸化膜形成工程(図4:S80)が実施される。トレンチTRの第1の側壁部SW1および第1の底部BT1を覆い、かつ段差部STの第2の側壁部SW2および第2の底部BT2を覆うゲート絶縁膜91が形成される。ゲート絶縁膜91は、たとえば熱酸化により形成され得る。ゲート絶縁膜91形成後、雰囲気ガスとして一酸化窒素(NO)ガスを用いるNOアニールが行われてもよい。温度プロファイルは、たとえば、温度1100℃以上1300℃以下、保持時間1時間程度の条件を有する。これにより、ゲート絶縁膜91とボディ領域82との界面領域に窒素原子が導入される。その結果、界面領域における界面準位の形成が抑制されることで、チャネル移動度を向上させることができる。なお、このような窒素原子の導入が可能であれば、NOガス以外のガスが雰囲気ガスとして用いられてもよい。このNOアニールの後にさらに、雰囲気ガスとしてアルゴン(Ar)を用いるArアニールが行われてもよい。Arアニールの加熱温度は、上記NOアニールの加熱温度と同じか、あるいは高く、ゲート絶縁膜91の融点よりも低いことが好ましい。この加熱温度が保持される時間は、たとえば1時間程度である。これにより、ゲート絶縁膜91とボディ領域82との界面領域における界面準位の形成がさらに抑制される。なお、雰囲気ガスとして、Arガスに代えて窒素ガスなどの他の不活性ガスが用いられてもよい。
【0064】
次に、ゲート電極形成工程(図4:S90)が実施される。ゲート絶縁膜91上に接するゲート電極92が形成される。具体的には、トレンチTRの内部の領域をゲート電極92によって埋めるように、ゲート絶縁膜91上にゲート電極92が形成される。ゲート電極92の形成方法は、たとえば、導体またはドープされたポリシリコンの成膜とCMP(Chemical Mechanical Polishing)とによって行い得る。
【0065】
次に、層間絶縁膜形成工程(図4:S100)が実施される。ゲート電極92の露出面を覆うように、ゲート電極92およびゲート絶縁膜91上に層間絶縁膜93が形成される。層間絶縁膜93は、段差部STを形成する第2の側壁部SW2および第2の底部BT2上に形成されたゲート絶縁膜93上に接して形成される。
【0066】
次に、ソース電極及びドレイン電極形成工程(図4:S110)が実施される。層間絶縁膜93およびゲート絶縁膜91に開口部が形成されるように、層間絶縁膜93およびゲート絶縁膜91に対してエッチングが行われる。この開口部により第2の主面10a上においてソース領域83およびコンタクト領域84の各々が露出する。次に、第2の主面10a上においてソース領域83およびコンタクト領域84の各々に接するソース電極94が形成される。
【0067】
同様に、段差部STの第2の底部BT2において接続領域2aが露出するように、ゲート絶縁膜91および層間絶縁膜93がエッチングされる。次に、段差部STの第2の底部BT2において接続領域2aと接するコンタクト電極94aが形成される。コンタクト電極94aの形成は、ソース電極94の形成と同時に行われてもよいし、別々に行われてもよい。次に、ソース電極94と、コンタクト電極94aと、層間絶縁膜93とに接してソース配線層95が形成される。以上により、ソース領域83と、段差部STの第2の底部BT2とに接する金属領域96が形成される。またドリフト領域81からなる第1の主面10b上に、炭化珪素単結晶基板80を介して、ドレイン電極98が形成される。
【0068】
次に、実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の作用効果について説明する。
【0069】
実施の形態1に係るMOSFET1によれば、炭化珪素層10は、トレンチTRの第1の底部BT1に対向するようにドリフト領域81に埋め込まれて配置され、かつp型を有するp型領域2を含む。これにより、トレンチTRの第1の底部BT1と第1の側壁部SW1とが接する角部81aにおける電界集中を効果的に緩和することができる。結果として、MOSFET1の耐圧を効果的に向上することができる。またp型領域2はソース領域83と電気的に接続されている。これにより、ドレイン電圧印加時における空乏化が促進されることにより、キャパシタンスの低下が促進される。それゆえ、MOSFET1の高速応答性が向上し、スイッチング特性が向上する。
【0070】
また実施の形態1に係るMOSFET1によれば、平面視において、p型領域2は網目構造を有している。これにより、電流経路を広く確保しながら、トレンチTRの角部81aにおける電界集中を緩和することができる。またp型領域2は網目構造を有するように一体となってドリフト領域81内において広がっている。p型領域2が複数存在し、それぞれ孤立している場合は、それぞれのp型領域2に対してソース電極94と電気的に接続する必要がある。この場合、複数のp型領域2の各々に対してソース電極94と電気的に接続するための多数のソーストレンチを形成する必要がある。一方、実施の形態1に係るMOSFET1によれば、p型領域2が網目構造を有するように一体となっている。そのため、p型領域2とソース電極94とを電気的に接続するために多数のソーストレンチを設ける必要がないので、MOSFET1のセルピッチを低減することができる。結果として、MOSFET1のオン抵抗を低減することができる。
【0071】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1によれば、金属領域96をさらに備える。金属領域96はソース領域83と接する。金属領域96を介してソース領域83とp型領域2とは電気的に接続されている。これにより、MOSFET1のスイッチング特性を効果的に向上することができる。
【0072】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1によれば、炭化珪素層10には、第1の主面10bおよび第2の主面10aとの間に位置する第2の底部BT2と、第2の底部BT2と第2の主面10aとを繋ぐ第2の側壁部SW2とからなる段差部STが設けられている。金属領域96は、第2の主面10aにおいてソース領域83と接し、かつ第2の底部BT2と接する。これにより、p型領域2を効果的にソース領域83と電気的に接続することができる。
【0073】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1によれば、炭化珪素層10は、終端領域ORと、終端領域ORに囲まれた素子領域IRとからなる。段差部STは、素子領域IRに設けられている。これにより、p型領域2全体を短時間でソース領域83と同電位にすることができる。
【0074】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1によれば、金属領域96は、第2の底部BT2においてp型領域2と直接接している。これにより、MOSFET1のスイッチング特性をより向上することができる。
【0075】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1によれば、トレンチTRの第1の底部は、平面視において多角形のセルCLを囲うように延在しており、平面視において、セルCLの頂点81aがp型領域2と重なる位置にp型領域2が配置されている。セルCLの頂点81aは、トレンチTRの角部の中でも特に電界が集中しやすい箇所である。p型領域2をセルの頂点81aと重なるように配置することにより、効果的にトレンチTRの角部81aにおける電界集中を緩和することができる。
【0076】
実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、炭化珪素層10は、トレンチTRの第1の底部BT1に対向するようにドリフト領域81に埋め込まれて配置され、かつp型を有するp型領域2を含む。これにより、トレンチTRの第1の底部BT1と第1の側壁部SW1とが接する角部81aにおける電界集中を効果的に緩和することができる。結果として、MOSFET1の耐圧を効果的に向上することができる。またp型領域2はソース領域83と電気的に接続されている。これにより、ドレイン電圧印加時における空乏化が促進されることにより、キャパシタンスの低下が促進される。それゆえ、MOSFET1の高速応答性が向上し、スイッチング特性が向上する。
【0077】
また実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、炭化珪素層10の第2の主面10aに、第1の主面10bおよび第2の主面10aとの間に位置する第2の底部BT2と、第2の底部BT2と第2の主面10aとを繋ぐ第2の側壁部SW2とからなる段差部STが形成される。ソース領域83および第2の底部BT2に接する金属領域96が形成される。これにより、p型領域2を効果的にソース領域83と電気的に接続することができる。
【0078】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、段差部STの形成は、熱エッチングにより行われる。これにより、効果的に段差部STを形成することができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係るMOSFET1の構成について説明する。実施の形態2に係るMOSFET1の構成は、主にp型領域2の形状において実施の形態1に係るMOSFET1の構成と異なっており、その他については実施の形態1に係るMOSFET1とほぼ同様の構成を有している。以下、実施の形態1に係るMOSFET1の構成と違う点を中心に説明する。
【0079】
図8を参照して、実施の形態2に係るMOSFET1のp型領域2は、トレンチTRの第1の底部BT1に対向する位置に設けられている。断面視において、第1の主面10bと平行な方向に沿ったp型領域2の幅は、トレンチTRの第1の底部BT1の幅よりも小さくてもよい。接続領域2aは、コンタクト電極94aと接して設けられている。接続領域2aは、段差部STの第2の底部BT2においてゲート絶縁膜91と接していてもよい。断面視において、第1の主面10bと平行な方向に沿った接続領域2aの幅は、コンタクト電極94aの幅よりも大きくてもよい。
【0080】
図9は、図8の領域IX−IXでMOSFET1を切断した面である。図9を参照して、平面視において、p型領域2は網目構造を有している。図9において、破線で囲まれた六角形(多角形)の部分は、トレンチTRの第1の底部BT1の位置で見た上部ドリフト領域81dの平面形状である。隣り合う六角形のセルCLに挟まれた領域がトレンチTRの第1の底部BT1である。言い換えれば、トレンチTRの第1の底部BT1は、平面視において六角形のセルCLを囲うように延在している。実施の形態2に係るMOSFET1が有するp型領域2は、平面視において、六角形のセルCLを囲うように配置されている。
【0081】
平面視において、トレンチTRの第1の底部BT1はハニカム構造を有している。p型領域2は、平面視においてトレンチTRの第1の底部BT1と重なるように設けられている。つまり、p型領域2もハニカム構造を有している。平面視において、接続領域2aは、たとえば六角形(多角形)状を有している。図9に示すように、接続領域2aは、六角形の頂点の各々においてp型領域2と接している。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係るMOSFET1の構成について説明する。実施の形態3に係るMOSFET1の段差部STが終端領域ORに設けられている点において実施の形態1に係るMOSFET1の構成と異なっており、その他については実施の形態1に係るMOSFET1とほぼ同様の構成を有している。以下、実施の形態1に係るMOSFET1の構成と違う点を中心に説明する。
【0082】
図10を参照して、実施の形態3の炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の構造について説明する。実施の形態3に係るMOSFET1の炭化珪素層10は、終端領域ORと、終端領域ORに囲まれた素子領域IRとからなる。終端領域ORは、平面視において、素子領域IRを囲むように設けられた複数のガードリング領域3と、ガードリング領域3を囲むように設けられたフィールドストップ領域4とを有する。ガードリング領域3は、p型領域2と同じ導電型(第2導電型)を有する。ガードリング領域3のドーズ量は、p型領域2のドーズ量よりも少なくてもよい。ガードリング領域3におけるアルミニウムイオンなどのアクセプタイオンのドーズ量は、たとえば1.3×1013cm-2程度であり、p型領域2におけるアルミニウムイオンなどのアクセプタイオンのドーズ量は、たとえば3.0×1013cm-2程度である。フィールドストップ領域4は、たとえばリン(P)などがイオン注入されたn型領域である。フィールドストップ領域4におけるリンイオンなどのドナーイオンのドーズ量は、たとえば1.0×1013cm-2程度である。
【0083】
炭化珪素層10の第2の主面10aには段差部STが設けられている。段差部STの第2の底部BT2は、炭化珪素層10の終端領域ORに設けられている。段差部STの第2の底部BT2上に絶縁膜91が設けられ、絶縁膜91上に絶縁膜93が設けられている。ガードリング領域3およびフィールドストップ領域4は、段差部STの第2の底部BT2において絶縁膜91と接している。絶縁膜93およびソース配線層95に接して保護膜97が設けられている。
【0084】
終端領域ORは、炭化珪素層10の側端部10dを含む領域であって、最も外側に配置されているセルよりも外側の領域である。ソース配線層95は、素子領域IRに設けられているセルのソース領域83およびコンタクト領域84に接するソース電極94と、かつ終端領域ORに設けられた段差部STの第2の底部BT2に接するコンタクト電極94aとを電気的に繋ぐように設けられている。接続領域2aは、段差部STの第2の底部BT2においてコンタクト電極94aと接している。接続領域2aは、終端領域ORから素子領域IRに延在するように設けられていてもよい。
【0085】
図11は、図10の領域XI−XIでMOSFETを切断した面である。図11を参照して、平面視において、p型領域2は網目構造を有している。図11において、破線で囲まれた六角形(多角形)の部分は、トレンチTRの第1の底部BT1の位置で見た上部ドリフト領域81dの平面形状である。隣り合う六角形のセルCLに挟まれた領域がトレンチTRの第1の底部BT1である。言い換えれば、トレンチTRの第1の底部BT1は、平面視において六角形のセルCLを囲うように延在している。平面視において、六角形のセルCLが有する全ての頂点81aの各々がp型領域2と重なる位置に、p型領域2が配置されている。
【0086】
平面視において、トレンチTRの第1の底部BT1はハニカム構造を有している。平面視において、p型領域は、当該ハニカム構造の交差点ISと重なる位置に配置されており、当該ハニカム構造の交差点ISと交差点ISとを結ぶ線の一部とは重ならないような形状を有する網目構造を有している。平面視において、接続領域2aは、たとえば六角形(多角形)状を有している。図11に示すように、接続領域2aは、平面視におけるp型領域2の外側端部においてp型領域2と接している。
【0087】
平面視において、p型領域2と、炭化珪素層10の側端部10dとの間に、ガードリング領域3と、フィールドストップ領域4とが設けられている。ガードリング領域3は、p型領域2および接続領域2aを囲むように、第1の主面10bと平行な方向に沿って延在している。フィールドストップ領域4は、ガードリング領域3よりも、炭化珪素層10の側端部10d側に設けられている。p型領域2の一部は、終端領域ORに設けられていてもよい。
【0088】
次に、実施の形態3に係る炭化珪素半導体装置であるMOSFET1の製造方法の一例について説明する。
【0089】
まず、第1のエピタキシャル層形成工程(図12:S10)が実施される。第1のエピタキシャル層形成工程は、実施の形態1で説明した方法と同様に実施される。これにより、炭化珪素単結晶基板80上に下部ドリフト領域81cが形成される。下部ドリフト領域81cが含む窒素などの不純物濃度は、たとえば7.0×1015cm3程度である。下部ドリフト領域81cの厚みは、たとえば9μm程度である。
【0090】
次に、埋込p型領域形成工程(図12:S20)が実施される。図13に示すように、下部ドリフト領域81cの一部の上に、p型領域2と、p型を有する接続領域2aと、p型を有するガードリング領域3と、n型を有するフィールドストップ領域4とが形成される。具体的には、下部ドリフト領域81cに対して、注入マスク(図示せず)を用いて、アルミニウムなどのアクセプタイオンの注入が行われことにより、p型領域2と、接続領域2aと、ガードリング領域3とが形成される。ガードリング領域3におけるアルミニウムイオンなどのアクセプタイオンのドーズ量は、たとえば1.3〜1.5×1013cm-2程度であり、p型領域2におけるアルミニウムイオンなどのアクセプタイオンのドーズ量は、たとえば3.0×1013cm-2程度である。
【0091】
次に、第2のエピタキシャル層形成工程(図12:S30)が実施される。図14に示すように、p型領域2と、接続領域2aと、ガードリング領域3と、フィールドストップ領域4とが形成された後、n型を有する下部ドリフト領域81c上に、n型を有する上部ドリフト領域81dが形成される。これによりp型領域2と、接続領域2aと、ガードリング領域3と、フィールドストップ領域4とは、下部ドリフト領域81cおよび上部ドリフト領域81dによって構成されるドリフト領域81に埋め込まれる。上部ドリフト領域81dは下部ドリフト領域81cの形成方法と同様の方法によって形成され得る。上部ドリフト領域81dが含む窒素などの不純物濃度は、たとえば1.0×1016cm3程度である。上部ドリフト領域81dの厚みは、たとえば3μm程度である。
【0092】
次に、イオン注入工程(図12:S50)が実施される。具体的には、ドリフト領域81上にボディ領域82およびソース領域83が形成される。これらの形成は、たとえばドリフト領域81に対するイオン注入により行い得る。ボディ領域82を形成するためのイオン注入においては、たとえばアルミニウム(Al)などの、p型を付与するための不純物がイオン注入される。またソース領域83を形成するためのイオン注入においては、たとえばリン(P)などの、n型を付与するための不純物がイオン注入される。なおイオン注入の代わり、不純物の添加をともなうにエピタキシャル成長が用いられてもよい。
【0093】
次に、コンタクト領域84(図10)が形成される領域に開口を有するイオン注入マスク層が炭化珪素層10の第2の主面10a上に形成される。当該マスク層を用いて、アルミニウムイオンなどが、炭化珪素層10にイオン注入されることにより、p型の導電型を有するコンタクト領域84が形成される。
【0094】
次に、活性化アニール工程(図12:S60)が実施される。イオン注入工程によって炭化珪素層10に注入された不純物を活性化するために、当該炭化珪素層10に対して熱処理が行われる。この熱処理の温度は、好ましくは1500℃以上1900℃以下であり、たとえば1700℃程度である。熱処理の時間は、たとえば30分程度である。熱処理の雰囲気は、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、たとえばAr雰囲気である。
【0095】
次に、トレンチ形成工程(図12:S70)が実施される。トレンチ形成工程では、実施の形態1で説明した熱エッチングが実施される。これにより、炭化珪素層10の第2の主面10a上にトレンチTRが形成される。トレンチTRは、ソース領域83およびボディ領域82を貫通してドリフト領域81に至る第1の側壁部SW1と、ドリフト領域81上に位置する第1の底部BT1とを有する。第1の側壁部SW1および第1の底部BT1の各々はp型領域2から離れている。好ましくは、トレンチTRの形成時、第1の側壁部SW1上、特にボディ領域82上において、特殊面が自己形成される。
【0096】
次に、段差部形成工程(図12:S75)が実施される。段差部形成工程では、実施の形態1で説明した熱エッチングにより実施される。上記の熱エッチングにより、炭化珪素層10の第2の主面10a上に段差部STが形成される。段差部STは、ソース領域83およびボディ領域82を貫通してドリフト領域81に至る第2の側壁部SW2と、ドリフト領域81上に位置する第2の底部BT2とを有する。好ましくは、段差部STの形成時、第2の側壁部SW2上、特にボディ領域82上において、上述した特殊面が自己形成される。また段差部STの第2の底部BT2に接続領域2aの一部と、ガードリング領域3と、フィールドストップ領域4とが露出するように、段差部STが形成される。p型領域2の一部が段差部STの第2の底部BT2に露出するように、段差部STが形成されてもよい。以上のようにして、図15に示すトレンチTRと段差部STとが形成された炭化珪素層10が形成される。
【0097】
次に、ゲート酸化膜形成工程(図12:S80)が実施される。トレンチTRの第1の側壁部SW1および第1の底部BT1を覆い、かつ段差部STの第2の側壁部SW2および第2の底部BT2を覆うゲート絶縁膜91が形成される。ゲート絶縁膜91は、たとえば熱酸化により形成され得る。ゲート絶縁膜91形成後、雰囲気ガスとして一酸化窒素(NO)ガスを用いるNOアニールが行われてもよい。
【0098】
次に、ゲート電極形成工程(図12:90)が実施される。ゲート絶縁膜91上に接するゲート電極92が形成される。具体的には、トレンチTRの内部の領域をゲート電極92によって埋めるように、ゲート絶縁膜91上にゲート電極92が形成される。ゲート電極92の形成方法は、たとえば、導体またはドープされたポリシリコンの成膜とCMPとによって行い得る。
【0099】
次に、層間絶縁膜形成工程(図12:S100)が実施される。ゲート電極92の露出面を覆うように、ゲート電極92およびゲート絶縁膜91上に層間絶縁膜93が形成される。層間絶縁膜93は、段差部STを形成する第2の側壁部SW2および第2の底部BT2上に形成されたゲート絶縁膜93上に接して形成される。
【0100】
次に、ソース電極及びドレイン電極形成工程(図12:S110)が実施される。層間絶縁膜93およびゲート絶縁膜91に開口部が形成されるように、層間絶縁膜93およびゲート絶縁膜91に対してエッチングが行われる。この開口部により第2の主面10a上においてソース領域83およびコンタクト領域84の各々が露出する。次に、第2の主面10a上においてソース領域83およびコンタクト領域84の各々に接するソース電極94が形成される。
【0101】
同様に、段差部STの第2の底部BT2において接続領域2aが露出するように、ゲート絶縁膜91および層間絶縁膜93がエッチングされる。次に、段差部STの第2の底部BT2において接続領域2aと接するコンタクト電極94aが形成される。コンタクト電極94aの形成は、ソース電極94の形成と同時に行われてもよいし、別々に行われてもよい。次に、ソース電極94と、コンタクト電極94aと、層間絶縁膜93とに接してソース配線層95が形成される。またドリフト領域81からなる第1の主面10b上に、炭化珪素単結晶基板80を介して、ドレイン電極98が形成される。
【0102】
実施の形態3に係るMOSFET1によれば、炭化珪素層10は、終端領域ORと、終端領域ORに囲まれた素子領域IRとからなる。段差部STは、終端領域ORに設けられている。これにより、素子領域IRを広く確保しながら、p型領域2をソース領域83と電気的に接続することができる。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4に係るMOSFET1の構成について説明する。実施の形態4に係るMOSFET1は、接続領域2aが平面視においてp型領域2を取り囲むように形成されている点において実施の形態3に係るMOSFET1の構成と異なっており、その他については実施の形態3のMOSFET1とほぼ同様の構成を有している。以下、実施の形態3に係るMOSFET1の構成と違う点を中心に説明する。
【0103】
図16を参照して、実施の形態4の炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の構造について説明する。実施の形態4に係るMOSFET1は、炭化珪素層10は、終端領域ORと、終端領域ORに囲まれた素子領域IRとからなる。接続領域2aは、終端領域ORに設けられており、終端領域ORと素子領域IRとの境界部においてp型領域2と接続されていてもよい。接続領域2aは、平面視において、p型領域2を取り囲むように設けられたガードリング領域である。金属領域96は、段差部STの第2の底部BT2においてガードリング領域である接続領域2aと接する。ガードリング領域である接続領域2aはp型領域2と接する。言い換えれば、金属領域96は、ガードリング領域としての接続領域2aを介してp型領域2と接続されている。
【0104】
実施の形態4に係るMOSFET1によれば、終端領域ORは、p型を有するガードリング領域3を有する。金属領域96は、第2の底部BT2においてガードリング領域3と接し、かつガードリング領域3はp型領域2と接する。これにより、MOSFET1の耐圧を向上することができる。
(実施の形態5)
次に、実施の形態5に係るMOSFET1の構成について説明する。実施の形態5に係るMOSFET1は、フィールドストップ領域4とゲート絶縁膜91との間にドリフト領域81が存在している点において実施の形態4に係るMOSFET1の構成と異なっており、その他については実施の形態4のMOSFET1とほぼ同様の構成を有している。以下、実施の形態4に係るMOSFET1の構成と違う点を中心に説明する。
【0105】
図17を参照して、実施の形態5の炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の構造について説明する。実施の形態5に係るMOSFET1のフィールドストップ領域4は、炭化珪素層10の第2の主面10aから離間して設けられている。またフィールドストップ領域4は、段差部STの第2の底部BT2から離間していてもよい。言い換えれば、フィールドストップ領域4とゲート絶縁膜91との間にドリフト領域81が存在している。炭化珪素層10の側端部10dと接する炭化珪素層10の第2の主面10aは、段差部STの第2の底部BT2よりも炭化珪素層10の第1の主面10bから離れた位置に存在する。
【0106】
実施の形態5に係るMOSFET1によれば、終端領域ORは、平面視においてガードリング領域3を囲み、かつn型を有するフィールドストップ領域4を含む。フィールドストップ領域4は、第2の主面10aから離間している。これにより、MOSFET1の耐圧をより向上することができる。
(実施の形態6)
次に、実施の形態6に係るMOSFET1の構成について説明する。実施の形態6に係るMOSFET1は、ガードリング領域3とゲート絶縁膜91との間にドリフト領域81が存在している点と、金属領域96がp型領域2に直接接している点において実施の形態5に係るMOSFET1の構成と異なっており、その他については実施の形態5のMOSFET1とほぼ同様の構成を有している。以下、実施の形態5に係るMOSFET1の構成と違う点を中心に説明する。
【0107】
図18を参照して、実施の形態6の炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の構造について説明する。実施の形態6に係るMOSFET1のガードリング領域3およびフィールドストップ領域4は、炭化珪素層10の第2の主面10aから離間して設けられている。またガードリング領域3は、段差部STの第2の底部BT2から離間していてもよい。ガードリング領域3およびフィールドストップ領域4とゲート絶縁膜91との間にドリフト領域81が存在している。ガードリング領域3およびフィールドストップ領域4はドリフト領域81に埋め込まれている。接続領域は、たとえばp型領域2と実質的に一体となったp型領域2である。金属領域96は、段差部STの第2の底部BT2においてp型領域2に直接接している。
【0108】
実施の形態6に係るMOSFET1によれば、金属領域96は、第2の底部BT2においてp型領域2と直接接している。これにより、MOSFET1のスイッチング特性をより向上することができる。
(実施の形態7)
次に、実施の形態7に係るMOSFET1の構成について説明する。実施の形態7に係るMOSFET1は、JTE(Junction Termination Extension)領域を有し、かつ金属領域96が段差部STの第2の底部BT2に接していない点において実施の形態3に係るMOSFET1の構成と異なっており、その他については実施の形態3のMOSFET1とほぼ同様の構成を有している。以下、実施の形態3に係るMOSFET1の構成と違う点を中心に説明する。
【0109】
図19を参照して、実施の形態7の炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の構造について説明する。実施の形態7に係るMOSFET1は、JTE領域5を有している。JTE領域5は、p型(第2導電型)を有する領域である。JTE領域5における、たとえばアルミニウムイオンなどのドーズ量は、1.3〜1.5×1013cm-2程度である。JTE領域5は、段差部STの第2の側壁部SW2および第2の底部BT2においてゲート絶縁膜91と接している。JTE領域5は、p型領域2と、ボディ領域82とに接している。ソース電極94は、コンタクト領域84と、ボディ領域82と、JTE領域5とを介してp型領域2と電気的に接続されている。コンタクト領域84は、ソース領域83と接する。ソース領域83は、ソース電極94とオーミック接合している。JTE領域5は、平面視においてp型領域2を取り囲むように設けられていてもよい。
【0110】
次に、実施の形態7に係る炭化珪素半導体装置であるMOSFET1の製造方法の一例について説明する。
【0111】
まず、第1のエピタキシャル層形成工程(図20:S10)が実施される。第1のエピタキシャル層形成工程は、実施の形態1で説明した方法と同様に実施される。これにより、炭化珪素単結晶基板80上に下部ドリフト領域81cが形成される。下部ドリフト領域81cが含む窒素などの不純物濃度は、たとえば7.0×1015cm3程度である。下部ドリフト領域81cの厚みは、たとえば9μm程度である。
【0112】
次に、埋込p型領域形成工程(図20:S20)が実施される。具体的には、下部ドリフト領域81cに対して、注入マスク(図示せず)を用いて、アルミニウムなどのアクセプタイオンの注入が行われことにより、p型領域2が形成される。アルミニウムイオンのドーズ量は、たとえば3×1013cm-2程度である。
【0113】
次に、第2のエピタキシャル層形成工程(図20:S30)が実施される。p型領域2が形成された後、n型を有する下部ドリフト領域81c上に、n型を有する上部ドリフト領域81dが形成される。これによりp型領域2は、下部ドリフト領域81cおよび上部ドリフト領域81dによって構成されるドリフト領域81に埋め込まれる。上部ドリフト領域81dは下部ドリフト領域81cの形成方法と同様の方法によって形成され得る。上部ドリフト領域81dが含む窒素などの不純物濃度は、たとえば1.0×1016cm3程度である。上部ドリフト領域81dの厚みは、たとえば3μm程度である。
【0114】
次に、イオン注入工程(図20:S50)が実施される。具体的には、ドリフト領域81上にボディ領域82およびソース領域83が形成される。これらの形成は、たとえばドリフト領域81に対するイオン注入により行い得る。ボディ領域82を形成するためのイオン注入においては、たとえばアルミニウム(Al)などの、p型を付与するための不純物がイオン注入される。またソース領域83を形成するためのイオン注入においては、たとえばリン(P)などの、n型を付与するための不純物がイオン注入される。なおイオン注入の代わり、不純物の添加をともなうにエピタキシャル成長が用いられてもよい。
【0115】
次に、コンタクト領域84(図19)が形成される領域に開口を有するイオン注入マスク層が炭化珪素層10の第2の主面10a上に形成される。当該マスク層を用いて、アルミニウムイオンなどが、炭化珪素層10にイオン注入されることにより、p型の導電型を有するコンタクト領域84が形成される。
【0116】
次に、段差部形成工程(図20:S55)が実施される。段差部形成工程では、実施の形態1で説明した熱エッチングにより実施される。上記の熱エッチングにより、炭化珪素層10の第2の主面10a上に段差部STが形成される。段差部STは、ソース領域83およびボディ領域82を貫通してドリフト領域81に至る第2の側壁部SW2と、ドリフト領域81上に位置する第2の底部BT2とを有する。好ましくは、段差部STの形成時、第2の側壁部SW2上、特にボディ領域82上において、上述した特殊面が自己形成される。
【0117】
次に、JTEおよびGR形成工程(図20:S56)が実施される。具体的には、段差部STの第2の底部BT2および第2の側壁部SW2に対して、注入マスク(図示せず)を用いて、アルミニウムなどのアクセプタイオンの注入が行われることにより、段差部STの第2の底部BT2および第2の側壁部SW2に接するJTE領域5と、段差部STの第2の底部BT2に接するガードリング領域3が形成される。アルミニウムイオンのドーズ量は、たとえば1.3×1013cm-2程度である。JTE領域5は、p型領域2およびボディ領域82に接するように形成される。同様に、段差部STの第2の底部BT2対して、注入マスク(図示せず)を用いて、リンイオンなどのドナーイオンの注入が行われことにより、段差部STの第2の底部BT2に接するフィールドストップ領域4が形成される。
【0118】
次に、活性化アニール工程(図20:S60)が実施される。イオン注入工程によって炭化珪素層10に注入された不純物を活性化するために、当該炭化珪素層10に対して熱処理が行われる。この熱処理の温度は、好ましくは1500℃以上1900℃以下であり、たとえば1700℃程度である。熱処理の時間は、たとえば30分程度である。熱処理の雰囲気は、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、たとえばAr雰囲気である。
【0119】
次に、トレンチ形成工程(図20:S70)が実施される。トレンチ形成工程では、実施の形態1で説明した熱エッチングが実施される。これにより、炭化珪素層10の第2の主面10a上にトレンチTRが形成される。トレンチTRは、ソース領域83およびボディ領域82を貫通してドリフト領域81に至る第1の側壁部SW1と、ドリフト領域81上に位置する第1の底部BT1とを有する。第1の側壁部SW1および第1の底部BT1の各々はp型領域2から離れている。好ましくは、トレンチTRの形成時、第1の側壁部SW1上、特にボディ領域82上において、特殊面が自己形成される。
【0120】
次に、ゲート酸化膜形成工程(図20:S80)が実施される。トレンチTRの第1の側壁部SW1および第1の底部BT1を覆い、かつ段差部STの第2の側壁部SW2および第2の底部BT2を覆うゲート絶縁膜91が形成される。ゲート絶縁膜91は、たとえば熱酸化により形成され得る。ゲート絶縁膜91形成後、雰囲気ガスとして一酸化窒素(NO)ガスを用いるNOアニールが行われてもよい。ゲート絶縁膜91は、JTE領域5と、ガードリング領域3と、フィールドストップ領域4と、ボディ領域82と、ソース領域83とに接して形成される。
【0121】
次に、ゲート電極形成工程(図20:90)が実施される。ゲート絶縁膜91上に接するゲート電極92が形成される。具体的には、トレンチTRの内部の領域をゲート電極92によって埋めるように、ゲート絶縁膜91上にゲート電極92が形成される。ゲート電極92の形成方法は、たとえば、導体またはドープされたポリシリコンの成膜とCMPとによって行い得る。
【0122】
次に、層間絶縁膜形成工程(図20:S100)が実施される。ゲート電極92の露出面を覆うように、ゲート電極92およびゲート絶縁膜91上に層間絶縁膜93が形成される。層間絶縁膜93は、段差部STを形成する第2の側壁部SW2および第2の底部BT2上に形成されたゲート絶縁膜93上に接して形成される。
【0123】
次に、ソース電極及びドレイン電極形成工程(図20:S110)が実施される。層間絶縁膜93およびゲート絶縁膜91に開口部が形成されるように、層間絶縁膜93およびゲート絶縁膜91に対してエッチングが行われる。この開口部により第2の主面10a上においてソース領域83およびコンタクト領域84の各々が露出する。次に、第2の主面10a上においてソース領域83およびnコンタクト領域84の各々に接するソース電極94が形成される。次に、ソース電極94と、コンタクト電極94aと、層間絶縁膜93とに接してソース配線層95が形成される。またドリフト領域81からなる第1の主面10b上に、炭化珪素単結晶基板80を介して、ドレイン電極98が形成される。
【0124】
実施の形態7に係るMOSFET1によれば、ソース領域83は、ボディ領域82およびp型を有するJTE領域5を介してp型領域2と接している。これにより、ソース領域83とp型領域2とを接続するための金属領域96を形成する必要がないので、MOSFET1の製造工程が簡素化される。
【0125】
なお上記各実施の形態では、炭化珪素半導体装置としてMOSFETを例に挙げて説明したが、炭化珪素半導体装置は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などであってもよい。また上記各実施の形態では、n型を第1導電型とし、p型を第2導電型して説明したが、p型を第1導電型とし、n型を第2導電型としてもよい。
【0126】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0127】
1 炭化珪素半導体装置(MOSFET)
2 第2導電型領域(p型領域)
2a 接続領域
3 ガードリング領域
4 フィールドストップ領域
10 炭化珪素層
10a 第2の主面
10b 第1の主面
10d 側端部
80 炭化珪素単結晶基板
81 ドリフト領域
81a 第1の角部(頂点)
81b 第2の角部
81c 下部ドリフト領域
81d 上部ドリフト領域
82 ボディ領域
83 ソース領域
84 コンタクト領域
91 ゲート絶縁膜(絶縁膜)
92 ゲート電極
93 層間絶縁膜
94 ソース電極
94a コンタクト電極
95 ソース配線層
96 金属領域
97 保護膜
98 ドレイン電極
BT1 第1の底部
BT2 第2の底部
CL セル
IR 素子領域
IS 交差点
OR 終端領域
ST 段差部
SW1 第1の側壁部
SW2 第2の側壁部
TR トレンチ
図1
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