(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下、「トナー」と称する場合がある。)は、少なくとも、非晶性樹脂を含む結着樹脂と、30℃における弾性率が10
4Pa以上10
6Pa以下であり、100℃における弾性率が10
4Pa以上10
6Pa以下である樹脂粒子と、を含有する静電荷像現像用トナーである。
【0023】
従来の画像形成においては、低温での定着を実現するため、例えば、結着樹脂を低分子量化したトナー、結晶性の樹脂を添加したトナー、ガラス転移温度の低い結着樹脂を用いたトナー、又は、結着樹脂以外のガラス転移温度が低い成分を添加したトナーの適用が試みられている。しかし、いずれも保存中にトナーのブロッキングが生じる傾向にあった。
【0024】
そこで、本実施形態に係るトナーは、少なくとも、非晶性樹脂を含む結着樹脂と、30℃における弾性率が10
4Pa以上10
6Pa以下であり、100℃における弾性率が10
4Pa以上10
6Pa以下である樹脂粒子(以下、「特定樹脂粒子」と称する場合がある)と、を含有するトナーとする。
【0025】
ここで、特定樹脂粒子は、弾性率が上記範囲であることから、温度が異なる環境における弾性率の変化が抑制されているゴム状の樹脂粒子であると言える。
つまり、本実施形態に係るトナーは、温度変化による弾性率の変化が抑制されたゴム状の樹脂粒子を含有している。
そして、そのような特定樹脂粒子を含むことにより、本実施形態に係るトナーで形成された画像は、例えば、局所的に力が加わる場合であっても、該樹脂粒子によって該画像に局所的に掛かる応力が分散され、歪が生じ難くなると考えられる。
その結果、本実施形態に係るトナーで形成された画像は、記録媒体に対して高い密着性を有することとなり、低温で定着した場合であっても、コールドオフセットが抑制される画像となると考えられる。
【0026】
また、本実施形態に係るトナーは、含有する特定樹脂粒子の弾性率が10
4Pa以上であるため、表面の粘着性が抑制されると考えられる。
そのため、特定樹脂粒子を含有するトナーは、ブロッキングが抑制されることとなる。
【0027】
以上より、本実施形態に係るトナーは、低温定着性を実現すると共に、トナーのブロッキングが抑制されることとなる。
【0028】
以下、本実施形態に係るトナーについて詳細に説明する。
【0029】
本実施形態に係るトナーは、少なくとも、非晶性樹脂を含む結着樹脂と、30℃における弾性率が10
4Pa以上10
6Pa以下であり、100℃における弾性率が10
4Pa以上10
6Pa以下である樹脂粒子と、を含有する静電荷像現像用トナーである。
【0030】
具体的には、本実施形態に係るトナーは、非晶性樹脂を含む結着樹脂と、上記構成の樹脂粒子と、を含むトナー粒子を含有しており、必要に応じて、外添剤を含んでいてもよい。
以下、トナー粒子について説明する。
【0031】
(トナー粒子)
トナー粒子は、非晶性樹脂を含む結着樹脂と、特定樹脂粒子と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他の添加剤と、を含んで構成される。
【0032】
−特定樹脂粒子−
特定樹脂粒子は、30℃における弾性率が10
4Pa以上10
6Pa以下であり、100℃における弾性率が10
4Pa以上10
6Pa以下である。
【0033】
特定樹脂粒子は、30℃における弾性率が、2.0×10
4Pa以上5.5×10
5Pa以下であり、100℃における弾性率が2.0×10
4Pa以上5.5×10
5Pa以下であることが望ましい。
【0034】
特定樹脂粒子の上記弾性率は、トナー粒子を作製する前の特定樹脂粒子分散液を乾燥させた特定樹脂粒子の弾性率、又はトナーから分離した特定樹脂粒子の弾性率であり、測定は、以下のようにして行う。
トナー粒子から特定樹脂粒子を分離して弾性率を測定する際は、以下のようにして行う。
なお、特定樹脂粒子の弾性率は、トナー粒子を作製する前のものであっても、トナーから分離したものであっても、同じような値である。
【0035】
トナーからテトラヒドロフラン不溶分の分離:
トナーを秤量し、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ28×10mm、東洋ろ紙社製)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてテトラヒドロフラン200mlを用いて、テトラヒドロフラン可溶分を8時間抽出する。
抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、円筒ろ紙上のテトラヒドロフラン不溶分として特定樹脂粒子、顔料、外添剤などを採取する。
【0036】
テトラヒドロフラン不溶分から特定樹脂粒子の分離:
採取したテトラヒドロフラン不溶分を遠沈管に入れ、クロロホルム/テトラヒドロフラン20/80混合溶媒を加えて、充分に分散させた後、50000回転で1時間遠心分離を行う。その後上澄みを採取し、溶媒を乾燥することで特定樹脂粒子を融着物として分離する。
【0037】
次に、分離した特定樹脂粒子の弾性率を、以下のようにして測定する。
また、トナー粒子を作製する前の特定樹脂粒子分散液を乾燥させた特定樹脂粒子の場合も、以下のようにして測定する。
分離した特定樹脂粒子(又は特定樹脂粒子分散液を乾燥させた特定樹脂粒子)の弾性率G’は、レオメトリックス社製のレオメーター、商品名「ARES」(RHIOSシステム、ver6.4.4)を用いた。直径8mmのパラレルプレートを用い、あらかじめ厚さ1mmになるように乾燥させた特定樹脂粒子を直径8mmの円筒状に成型し、パラレルプレートの間に挟み、正弦波振動により測定を行った。周波数は6.28rad/sとし、30℃および100℃で、動的粘弾性を測定した。歪みは初期値を0.005%とした後は、最大5%の自動測定モードによって変化させ測定し、得られたデータから、G’を求めた。
【0038】
特定樹脂粒子の個数平均粒径は、50nm以上1000nm以下が望ましく、80nm以上500nm以下がより望ましい。
なお、特定樹脂粒子の個数平均粒径は、トナー粒子の断面をルテニウム(Ru)染色した透過型電子顕微鏡(TEM)像から測定する。
具体的には、まず、トナー粒子をビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と硬化剤を用いて包埋したのち、切削用サンプルを作製する。次にダイヤモンドナイフを用いた切削機、例えばLEICAウルトラミクロトーム(日立テクノロジーズ社製)を用いて−100℃の下、切削サンプルを切削し、観察用サンプルを作製する。更に、この観察用サンプルを四酸化ルテニウム雰囲気下となっているデシケーター内に放置し、染色を行う。染色の判断は、同時に放置したテープの染色具合により判断する。この様にして染色された観察サンプルを、TEMにより倍率約5000倍前後で観察する。
なお、トナー粒子が四酸化ルテニウムで染色されているため、特定樹脂粒子は、結着樹脂等から、染色の濃淡の違いや形状で判別される。トナー粒子内部で、染色されず黒っぽくなっている部分を特定樹脂粒子ドメインと判断した。
次に、観察したTEM像から、特定樹脂粒子の一つ一つの粒子の最大径を求め、この粒子の100個の粒径から平均値を求めることで、特定樹脂粒子の個数平均粒径を得る。
【0039】
特定樹脂粒子に含まれる樹脂は、30℃及び100℃における特定樹脂粒子の弾性率を上記範囲内とする観点から、例えば、ビニル樹脂、エチレン性二重結合を持つポリエステル樹脂、天然ゴムポリウレタン樹脂などが挙げられる。
特定樹脂粒子は、これらの樹脂を単独で含んでいてもよく、2種類以上を含んでいてもよい。
2種類以上の樹脂を含んでいる樹脂粒子の場合、これらの樹脂の混合物を含む樹脂粒子であっても、これらの樹脂の共重合体を含む樹脂粒子であってもよいし、一方の樹脂に他方の樹脂の単量体を重合した共重合体を含む樹脂粒子であってもよい。
【0040】
特定樹脂粒子は、トナーのブロッキングを抑制する観点から、エチレン性二重結合を持つポリエステル樹脂及びビニル樹脂を含む樹脂粒子であることが望ましい。
これは、エチレン性二重結合を持つポリエステル樹脂及びビニル樹脂を含む樹脂粒子とすることにより、樹脂粒子の弾性率が上述した範囲内となると共に、エチレン性二重結合を持つポリエステル樹脂によって樹脂粒子と非晶性樹脂を含む結着樹脂との親和性が高まり、特定樹脂粒子のトナー(又はトナー粒子)表面への露出が抑制され、特定樹脂粒子を介する凝集が生じ難くなることが理由として挙げられる。
なお、トナー(又はトナー粒子)の表面における特定樹脂粒子の露出を抑制することにより、トナーの帯電性も向上すると考えられる。
【0041】
エチレン性二重結合を持つポリエステル樹脂及びビニル樹脂を含む樹脂粒子は、これらの樹脂の混合物を含む樹脂粒子であっても、これらの樹脂の共重合体を含む樹脂粒子であってもよい。
【0042】
エチレン性二重結合を持つポリエステル樹脂は、エチレン性不飽和結合を持つ多価カルボン酸と、多価アルコールと、の重縮合反応により生成した重縮合体を示す。
エチレン性不飽和結合を持つ多価カルボン酸として具体的には、例えば、マレイン酸、フマル酸、無水マレン酸、イタコン酸、イタコン酸無水物等が挙げられる。
また、多価アルコールとして具体的には、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)等が挙げられる。
ビニルモノマーとの反応性と、ポリエステル合成時の安定性の両立の観点から、エチレン性二重結合を持つポリエステル樹脂として望ましくは、エチレン性不飽和多価カルボン酸としてフマル酸を適用したポリエステル樹脂(以下、「フマル酸含有ポリエステル樹脂」と称する)、エチレン性不飽和多価カルボン酸としてマレイン酸を適用したポリエステル樹脂(以下、「マレイン酸含有ポリエステル樹脂」と称する)、が挙げられる。
これらの中でも、フマル酸含有ポリエステル樹脂が望ましく、フマル酸含有ポリエステル樹脂がより望ましい。
【0043】
ビニル樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル(ブチルアクリレート)、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、トリメチロールプロパントリメタクリラート(TMPTMA)等のビニル基を有するエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ビニルスルフォン酸、エチレンイミン、ビニルピリジン、ビニルアミン等のビニル系高分子酸やビニル系高分子塩基の材料となる単量体の重合体が挙げられる。
これらの中でも、室温(約25℃)における弾性率制御の観点から、ビニル樹脂はガラス転移温度が低いものであることがよいため、単量体としては例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート等の単独重合体のガラス転位点が0℃以下の単量体を含有していることが望ましい。
また、その他の単量体としてスチレン、メチルメタクリレート、酢酸ビニルなどの単官能単量体、エチレングリコールジメタクリレート、ノナンジアクリレート、デカンジオールジアクリレートなどの二官能単量体、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能単量体を併用してもよい。 また、ビニル樹脂は、これらの単量体を単独で用いた樹脂でもよいし、2種以上の単量体を用いた共重合体である樹脂であってもよい。
【0044】
これらの中でも、ビニル樹脂は、スチレン類、エステル類から選択される1種以上の重合体が望ましく、具体的には、例えば、ブチルアクリレートの単独重合体、2-エチルヘキシルアクリレートの単独重合体、スチレンとブチルアクリレートとの共重合体、ブチルアクリレートとデカンジオールジアクリレートとの共重合体が望ましく、ブチルアクリレートの単独重合体、スチレンとブチルアクリレートとの共重合体、ブチルアクリレートとデカンジオールジアクリレートとの共重合体がより望ましい。
【0045】
なお、2種以上の単量体を用いたビニル樹脂は、エチレン性二重結合を持つポリエステル樹脂との結合性を向上させて、樹脂粒子の弾性率を調整する観点から、スチレンを単量体として用いた樹脂であることが望ましい。
【0046】
特定樹脂粒子の製造方法としては、例えば、乳化重合法、バンバリーミキサーやニーダー等を用いる溶融混練法、懸濁重合法、噴霧乾燥法等、公知の方法が適用される。
また、特定樹脂粒子の製造方法としては、例えば、樹脂粒子の分散液又は樹脂粒子凝集物分散液に単量体を滴下して、シード乳化重合を行なう方法も適用される。
【0047】
シード乳化重合を行う方法としては、例えば、エチレン性二重結合を持つポリエステル樹脂及びビニル樹脂を含む樹脂粒子を製造する場合、具体的には、エチレン性二重結合を持つポリエステル樹脂の乳化物の存在下においてビニル樹脂の単量体を滴下し、ラジカル重合を開始することによりシード乳化重合を行う方法が挙げられる。
ここで、シード乳化重合による製造方法においては、エチレン性二重結合を持つポリエステル樹脂を樹脂粒子の表面に集まり易くする観点から、アルカリ性の存在下において滴下することが望ましい。
表面にエチレン性二重結合を持つポリエステル樹脂が集まった特定樹脂粒子は、結着樹脂との親和性が高まり、トナー(又はトナー粒子)表面への露出が抑制されるため、本実施形態に係るトナーは、特定樹脂粒子が露出した箇所におけるブロッキングが抑制されることとなると考えられる。
【0048】
−結着樹脂−
結着樹脂は、非晶性樹脂を含んでおり、必要に応じて、その他の樹脂を含んでいてもよい。
【0049】
なお、樹脂の「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10(℃/min)で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを指す。
一方、樹脂の「非晶性」とは、半値幅が10℃を超えること、階段状の吸熱量変化を示すこと、又は明確な吸熱ピークが認められないことを指す。
【0050】
非晶性樹脂としては、公知のトナー用の非晶性樹脂が利用され、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体であるビニル系樹脂が挙げられる。
また、非晶性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの非晶性樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのなかでも、非晶性のポリエステル樹脂が特に望ましい。
【0051】
・非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0052】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0055】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下より好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0056】
非晶性ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0057】
結着樹脂に含まれていてもよいその他の樹脂としては、例えば、結晶性ポリエステル樹脂、ポリアルキレン樹脂、長鎖アルキル(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの中でも、トナーの低温定着性を向上させる観点から、結晶性ポリエステル樹脂が望ましい。
【0058】
・結晶性ポリエステル樹脂
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。なお、結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶構造を容易に形成するため、芳香族を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族を有する重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0059】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸等の二塩基酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価のカルボン酸としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとしては、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
ここで、多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0062】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、50℃以上100℃以下が好ましく、55℃以上90℃以下がより好ましく、60℃以上85℃以下がさらに好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0063】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下が好ましい。
【0064】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、非晶性ポリエステルと同様に、周知の製造方法により得られる。
【0065】
また、結晶性ポリエステル樹脂は、全結着樹脂に対して、含有量が2質量%以上40質量%以下(好ましくは2質量%以上30質量%以下)の範囲で用いることがよい。
【0066】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0067】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0069】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0070】
−離型剤−
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0071】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0072】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0073】
−その他の添加剤−
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0074】
−トナー粒子の特性等−
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0075】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0076】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマンーコールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0077】
トナー粒子の形状係数SF1としては、110以上150以下が好ましく、120以上140以下がより好ましい。
【0078】
なお、形状係数SF1は、下記式により求められる。
式:SF1=(ML
2/A)×(π/4)×100
上記式中、MLはトナーの絶対最大長、Aはトナーの投影面積を各々示す。
具体的には、形状係数SF1は、主に顕微鏡画像又は走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラによりルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0079】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO
2、TiO
2、Al2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na2O、ZrO
2、CaO・SiO
2、K
2O・(TiO
2)n、Al
2O
3・2SiO
2、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等が挙げられる。
【0080】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部である。
【0081】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、PMMA、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0082】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0083】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、必要に応じて、トナー粒子に対して、外添剤を外添してもよい。
【0084】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0085】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0086】
なお、上記のようにして製造した特定樹脂粒子を分散した樹脂粒子分散液(以下、「特定樹脂粒子分散液」と称する場合がある)についても、上記樹脂粒子分散液と共に準備し、凝集させて凝集粒子を形成後、加熱して融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0087】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0088】
−樹脂粒子分散液準備工程−
まず、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、特定樹脂粒子分散液と、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤分散液を準備する。
【0089】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0090】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0093】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.05μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.08μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0094】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0095】
−特定樹脂粒子分散液準備工程−
次に、特定樹脂粒子分散液について説明する。
特定樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0096】
特定樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
特定樹脂粒子分散液において、特定樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、特定樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて特定樹脂粒子分散液中に特定樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0099】
特定樹脂粒子分散液中に分散する特定樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μmがさらに好ましい。
なお、特定樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0100】
なお、樹脂粒子分散と同様にして、例えば、着色剤分散液、離型剤分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0101】
−凝集粒子形成工程−
次に、樹脂粒子分散液と共に、特定樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と特定樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0102】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度−30℃以上ガラス転移温度−10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0103】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、例えば無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0104】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0105】
−融合・合一工程−
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0106】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0107】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0108】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディーゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動師分機、風力師分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0109】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0110】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;マトリックス樹脂に導電性粒子が分散・配合された樹脂分散型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、樹脂含浸型キャリア、及び導電性粒子分散型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0111】
磁性粉としては、例えば、酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0112】
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0113】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電材料等、その他添加剤を含ませてもよい。
【0114】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0115】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0116】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0117】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0118】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0119】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0120】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0121】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0122】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0123】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0124】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0125】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0126】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0127】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0128】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0129】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0130】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0131】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0132】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0133】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0134】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0135】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0136】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0137】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0138】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0139】
なお、
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0140】
以下、実施例および比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。また、「部」は特に断りがない限り「質量部」を示す。
尚、本実施例において、「実施例3」及び「実施例5」を、「参考例3」及び「参考例5」と読み替えるものとする。
【0141】
(非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1の調製)
−非晶性ポリエステル樹脂1の作製−
テレフタル酸50mol%、ドデセニルコハク酸無水物20mol%、及びフマル酸30mol%からなる酸成分と、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物85mol%及びビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物15mol%からなるアルコール成分と、を1:1のmol比で、攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに仕込み、窒素雰囲気化で2時間を要して80℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した。その後、前記混合物100質量部に対しジブチル錫オキサイド0.7質量部を投入し、さらに生成する水を留去しながら同温度から2時間を要して210℃まで温度を上げ、210℃でさらに6時間脱水縮合反応を継続して非晶性ポリエステル樹脂1を得た。
非晶性ポリエステル樹脂1の重量平均分子量は16,000、酸価は11.0mgKOH/g、ガラス転移温度は59.0℃であった。
【0142】
・非晶性ポリエステル樹脂1 100質量部
・2−ブタノン 50質量部
・イソプロピルアルコール 15質量部
5Lのセパラブルフラスコに上記2-ブタノンと上記イソプロピルアルコールとの混合溶媒を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、完全に溶解させて油相を得た。
【0143】
この攪拌されている油相に10質量%アンモニア水溶液を合計で3.5質量部となるようにスポイトで徐々に滴下し、更にイオン交換水230質量部を10ml/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、「非晶性ポリエステル樹脂1」を含む「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1」を得た。この分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径は167nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0144】
(非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液2の調製)
−非晶性ポリエステル樹脂2の作製−
テレフタル酸60mol%、ドデセニルコハク酸無水物30mol%、及びフマル酸10mol%からなる酸成分と、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物85mol%及びビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物15mol%からなるアルコール成分と、を1:1のmol比で、攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに仕込み、窒素雰囲気化で2時間を要して80℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した。その後、前記混合物100質量部に対しジブチル錫オキサイド0.7質量部を投入し、さらに生成する水を留去しながら同温度から2時間を要して210℃まで温度を上げ、210℃でさらに6時間脱水縮合反応を継続して非晶性ポリエステル樹脂2を得た。
非晶性ポリエステル樹脂2の重量平均分子量は15,000、酸価は10.6mgKOH/g、ガラス転移温度は56.1℃であった。
【0145】
・非晶性ポリエステル樹脂2 100質量部
・2−ブタノン 50質量部
・イソプロピルアルコール 15質量部
5Lのセパラブルフラスコに上記2-ブタノンと上記イソプロピルアルコールとの混合溶媒を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、完全に溶解させて油相を得た。
【0146】
この攪拌されている油相に10質量%アンモニア水溶液を合計で3.5質量部となるようにスポイトで徐々に滴下し、更にイオン交換水230質量部を10ml/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、「非晶性ポリエステル樹脂2」を含む「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液2」を得た。この分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径は174nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0147】
(結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1の調製)
−結晶性ポリエステル樹脂1の作製−
1,10−ドデカン二酸100mol%からなる酸成分と、1,9-ノナンジオール100mol%からなるアルコール成分と、を1:1のmol比で、攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに仕込み、窒素雰囲気化で2時間を要して90℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した。その後、前記混合物100質量部に対しジブチル錫オキサイド0.5質量部を投入し、さらに生成する水を留去しながら同温度から2時間を要して180℃まで温度を上げ、180℃でさらに6時間脱水縮合反応を継続して結晶性ポリエステル樹脂1を得た。
結晶性ポリエステル樹脂1の重量平均分子量は27,000、酸価は9.8mgKOH/g、溶融温度は73.5℃であった。
【0148】
・結晶性ポリエステル樹脂1 100質量部
・2−ブタノン 60質量部
・イソプロピルアルコール 20質量部
5Lのセパラブルフラスコに上記2-ブタノンと上記イソプロピルアルコールとの混合溶媒を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、完全に溶解させて油相を得た。
【0149】
この攪拌されている油相に10質量%アンモニア水溶液を合計で3.8質量部となるようにスポイトで徐々に滴下し、更にイオン交換水230質量部を10ml/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、「結晶性ポリエステル樹脂1」を含む「結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1」を得た。この分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径は182nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0150】
(特定樹脂粒子分散液1の調製)
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1 150質量部
・イオン交換水 177質量部
・アクリル酸ブチル 168質量部
・スチレン 2質量部
・10%アンモニア水 3質量部
1Lセパラブルフラスコ中で上記を混合し、窒素気流下、撹拌しながら75℃に加熱した。そこに過硫酸アンモニウム1.5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させたものを2時間かけて滴下した。更に75℃で3時間反応させることで特定樹脂粒子1を含有する特定樹脂粒子分散液1を得た。体積平均粒径は292nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0151】
(特定樹脂粒子分散液2の調製)
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1 150質量部
・イオン交換水 177質量部
・アクリル酸ブチル 170質量部
・10%アンモニア水 3質量部
1Lセパラブルフラスコ中で上記を混合し、窒素気流下、撹拌しながら75℃に加熱した。そこに過硫酸アンモニウム1.5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させたものを2時間かけて滴下した。更に75℃で3時間反応させることで特定樹脂粒子2を含有する特定樹脂粒子分散液2を得た。体積平均粒径は296nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0152】
(特定樹脂粒子分散液3の調製)
・イオン交換水 300質量部
・アクリル酸ブチル 190質量部
・1,10−デカンジオールジアクリレート 10質量部
・界面活性剤Dowfax2A1 2質量部
1Lセパラブルフラスコ中で上記を混合し、窒素気流下、撹拌しながら75℃に加熱した。そこに過硫酸アンモニウム1.5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させたものを2時間かけて滴下した。更に75℃で3時間反応させることで特定樹脂粒子3を含有する特定樹脂粒子分散液3を得た。体積平均粒径は248nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0153】
(特定樹脂粒子分散液4の調製)
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1 200質量部
・イオン交換水 137質量部
・アクリル酸ブチル 158質量部
・スチレン 2質量部
・10%アンモニア水 3質量部
1Lセパラブルフラスコ中で上記を混合し、窒素気流下、撹拌しながら75℃に加熱した。そこに過硫酸アンモニウム1.5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させたものを2時間かけて滴下した。更に75℃で3時間反応させることで特定樹脂粒子4を含有する特定樹脂粒子分散液4を得た。体積平均粒径は285nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0154】
(特定樹脂粒子分散液5の調製)
・イオン交換水 300質量部
・スチレン 188質量部
・トリメチロールプロパントリメタクリレート 12質量部
・界面活性剤Dowfax2A1 2質量部
1Lセパラブルフラスコ中で上記を混合し、窒素気流下、撹拌しながら75℃に加熱した。そこに過硫酸アンモニウム1.5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させたものを2時間かけて滴下した。更に75℃で3時間反応させることで特定樹脂粒子5を含有する特定樹脂粒子分散液5を得た。体積平均粒径は226nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0155】
(特定樹脂粒子分散液6の調製)
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1 200質量部
・イオン交換水 137質量部
・アクリル酸ブチル 156質量部
・スチレン 4質量部
・10%アンモニア水 3質量部
1Lセパラブルフラスコ中で上記を混合し、窒素気流下、撹拌しながら75℃に加熱した。そこに過硫酸アンモニウム1.5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させたものを2時間かけて滴下した。更に75℃で3時間反応させることで特定樹脂粒子6を含有する特定樹脂粒子分散液6を得た。体積平均粒径は279nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0156】
(比較樹脂粒子分散液1の調製)
・イオン交換水 300質量部
・アクリル酸ブチル 160質量部
・スチレン 40質量部
・界面活性剤Dowfax2A1 2質量部
1Lセパラブルフラスコ中で上記を混合し、窒素気流下、撹拌しながら75℃に加熱した。そこに過硫酸アンモニウム1.5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させたものを2時間かけて滴下した。更に75℃で3時間反応させることで比較樹脂粒子1を含有する比較樹脂粒子分散液1を得た。体積平均粒径は220nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0157】
(比較樹脂粒子分散液2の調製)
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液2 150質量部
・イオン交換水 177質量部
・アクリル酸ブチル 170質量部
・10%アンモニア水 3質量部
1Lセパラブルフラスコ中で上記を混合し、窒素気流下、撹拌しながら75℃に加熱した。そこに過硫酸アンモニウム1.5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させたものを2時間かけて滴下した。更に75℃で3時間反応させることで比較樹脂粒子2を含有する比較樹脂粒子分散液2を得た。体積平均粒径は301nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0158】
(比較樹脂粒子分散液3の調製)
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1 300質量部
・イオン交換水 57質量部
・アクリル酸ブチル 156質量部
・スチレン 4質量部
・10%アンモニア水 3質量部
1Lセパラブルフラスコ中で上記を混合し、窒素気流下、撹拌しながら75℃に加熱した。そこに過硫酸アンモニウム1.5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させたものを2時間かけて滴下した。更に75℃で3時間反応させることで比較樹脂粒子3を含有する比較樹脂粒子分散液3を得た。体積平均粒径は247nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0159】
(弾性率の測定)
得られた特定樹脂粒子分散液1から6、比較樹脂粒子分散液1から3それぞれを70℃で3日間乾燥させることにより各樹脂粒子を得、既述の方法で特定樹脂粒子の弾性率を測定した。結果を表1に記す。
【0160】
(着色剤分散液の調製)
・シアン顔料(大日精化工業(株)社製、銅フタロシアニン、C.I.Pigment Blue15:3): 50質量部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンR): 5質量部
・イオン交換水: 200質量部
上記成分を混合溶解し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)5分と超音波バスにより10分間分散し、中心径390nm、固形分量21.5%の着色剤分散液を得た。
【0161】
(離型剤分散液1の調製)
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンR): 2質量部
・イオン交換水: 470質量部
・パラフィンワックス(HNP−9日本精鑞社製): 200質量部
上記成分を混合し、120℃に加熱して、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒子径170nm、固形分量30%の離型剤分散液を得た。
【0162】
[実施例1]
−トナー粒子1の作製−
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1を固形分の比率で33:67の割合で混合し、この混合樹脂粒子分散液:100質量部と、特定樹脂粒子分散液1:50質量部と、着色剤分散液:14質量部と、離型剤分散液1:15質量部と、ポリ水酸化アルミニウム(浅田化学社製、Paho2S):8質量部と、イオン交換水:400質量部とを、丸型ステンレス鋼鉄フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて混合し、分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら45℃まで加熱した。45℃で30分保持した後、D50vが5.3μmの凝集粒子が生成していることを確認した。更に加熱用オイルバスの温度を上げて50℃で2時間保持し、D50vは5.6μmとなった。その後、この凝集粒子を含む分散液に70質量部の非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1を追加した後、加熱用オイルバスの温度を60℃まで上げて30分間保持した。この凝集粒子を含む分散液に1N水酸化ナトリウムを追加して、系のpHを8.2に調整した後ステンレス製フラスコを密閉し、磁気シールを用いて攪拌を継続しながら85℃まで加熱し、2時間保持した。氷水で冷却後、このトナー粒子を濾別し、25℃のイオン交換水で5回洗浄した後、凍結乾燥してトナー粒子1を得た。
【0163】
(トナー)
トナー粒子1:100質量部と、外添剤(日本アエロジル社製、疎水性シリカ:RX50)0.5部と日本アエロジル社製、疎水性シリカR972:1.5質量部、をヘンシェルミキサーを用い周速20m/s×15分間ブレンドをおこなった後、45μm網目のシーブを用いて粗大粒子を除去し、トナー1を得た。
【0164】
(静電荷像現像剤)
得られたトナー10質量部と、以下のようにして得たキャリア90質量部と、をV−ブレンダーを用い20rpmで20分間攪拌し、212μmの網目を有するシーブで篩うことにより、現像剤1を得た。
【0165】
−キャリアの作製−
スチレン−アクリル樹脂(スチレン:メチルメタクリレート=10:90、Mw:3.5万)2.5質量部をトルエン45質量部に投入し、樹脂溶液を作成した。この樹脂溶液にカーボンブラック0.2質量部を投入し、この混合液をサンドミルを用いて30分間微分散して分散液を作製した。この分散液25質量部を、体積平均粒径30μmのフェライト粒子100質量部と混合した。さらにこの混合物を真空脱気型ニーダーに入れ、80℃に加熱しながら30分間撹拌し、さらに減圧しながら撹拌して溶剤を除去した。溶剤除去後、75μmのメッシュで篩分を行い、凝集物を除去してキャリアを得た。
【0166】
<評価>
得られたトナー及び現像剤について、以下の評価を行った。結果は表1に示す。
【0167】
(低温定着性)
以下の方法により、コールドオフセットが発生しない最低定着温度を求め、低温定着性を評価した。
まず、画像形成装置として富士ゼロックス社製DocuCentreIV C3370を用意し、該装置に搭載されている電磁誘導方式の定着装置を改造し、定着温度を制御するようにした。また該定着装置を、外付けの駆動用モーターで駆動するように改造した。
次に、別途、画像形成装置として富士ゼロックス社製A−Color 635を用い、記録媒体として富士ゼロックス社製J紙を用い、トナー載り量が13.5g/m
2になるように調整して画像形成を行い、未定着のソリッド画像(25mm×25mm)を用意した。
【0168】
DocuCentreIV C3370改造機を用い、定着温度を80℃から220℃まで5℃きざみで昇温させ、温度ごとに搬送速度175mm/秒で未定着のソリッド画像(25mm×25mm)の定着を行った。
各温度の定着画像を目視で観察し、コールドオフセットによる画像の乱れが確認されなくなった温度を求めた。
評価基準は以下のようにした。
A:コールドオフセットによる画像乱れが確認されない温度が110℃未満
B:コールドオフセットによる画像乱れが確認されない温度が110℃以上130℃以下
C:コールドオフセットによる画像乱れが確認されない温度が130℃を超える
【0169】
(画像の折り曲げ強度)
まず、画像形成装置として富士ゼロックス株式会社製の商品名:DocuCentreC6550Iを準備し、現像剤1を現像し得るよう改造を施した。該画像形成装置の定着装置では、温度140℃、定着時間40msの加熱条件、および圧力0.3MPaの加圧条件にて定着が行われる。
【0170】
上記画像形成装置を用い、上記現像剤を用いて、用紙(王子製紙製、OKトップコート+127gsm)の印字領域の全面に、単位面積当たりのトナー載り量(TMA)が「0.2g/m
2、0.4g/m
2、0.6g/m
2、0.8g/m
2、1g/m
2」となる単色ベタ画像をそれぞれ形成した。
【0171】
画像を形成した各用紙を、画像を内側にして用紙の長手方向中央から二つ折りにして折り曲げ、折り曲げた部分を軽く拭きとった後の画像の破壊(剥がれ)具合を観察し、「折り曲げ線上における当初形成された画像部の総長さ(A)に対する、折り曲げ線上において剥がれが生じた部分の総長さ(B)の比率(B/A)」を算出した。評価基準は以下の通りである。
A:軽微で不連続な画像の剥がれがある(B/Aは70%未満)
B:よく見ると不連続な剥がれがあるが、画像が薄いため軽微に見える
C:折り曲げ線の全領域にわたって連続した剥がれがある(B/Aは100%)
【0172】
(ブロッキング)
電子写真複写機(商品名A−color、富士ゼロックス(株)製)の現像器に現像剤1を充填し、この電子写真複写機を用いて、画像密度1%のプリントテストチャートの画像を10000枚出力し、コピーテストを行った。
10000枚プリント後の画像ソリッド部の白筋の発生の様子を観察し、また現像器内のトナーの様子を目視で観察した。これら観察により、以下の判断基準により耐ブロッキング性を評価した。
評価結果は、A及びBで、使用に問題がないとする。
【0173】
A:白筋の発生はなく、現像器内でブロッキングしたトナーがほとんど見られない。
B:白筋の発生はないが、現像器内でブロッキングしたトナーがわずかに見られる。
C:白筋の発生がはっきり見られ、現像器内でブロッキングしたトナーが見られる。
【0174】
[実施例2〜6、比較例1〜3]
表1に従って、特定樹脂粒子分散液の種類を変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子、トナー、及び現像剤を作製し、評価した。結果は表1に示す。
【0175】
【表1】