(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6135469
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】蓄電装置の検査方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20170522BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20170522BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20170522BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20170522BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20170522BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20170522BHJP
H01M 2/02 20060101ALI20170522BHJP
H01M 10/0585 20100101ALN20170522BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/48 P
H01M10/44 A
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6555
H01M2/02 A
!H01M10/0585
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-233023(P2013-233023)
(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2015-95312(P2015-95312A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 元章
(72)【発明者】
【氏名】南形 厚志
(72)【発明者】
【氏名】石川 英明
【審査官】
冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−339925(JP,A)
【文献】
特開2008−181858(JP,A)
【文献】
特開2001−236985(JP,A)
【文献】
特開2010−153275(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/082502(WO,A1)
【文献】
特開2009−289655(JP,A)
【文献】
特開平09−120809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/44
H01M 10/48
H01M 10/0585
H01M 10/60
H01M 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のケース内に電極組立体及び電解液を収容した蓄電装置が複数接続されて構成される蓄電モジュールの前記蓄電装置の検査方法であって、
一対の金属製の拘束部材によって絶縁部材を介在させた状態で前記蓄電装置を挟み込む挟込工程と、
前記蓄電装置の両側から前記絶縁部材を介在させて一対の前記拘束部材で拘束した状態で、前記拘束部材と前記ケースとの間で短絡検査を行う検査工程と、
を含み、
前記蓄電モジュールにおいて前記蓄電装置の前記ケースと放熱用の金属製部材との間に絶縁フィルムが介在されており、
前記絶縁部材は、前記絶縁フィルムと同じ材質であり、前記絶縁フィルムと同じ厚みである、蓄電装置の検査方法。
【請求項2】
前記短絡検査は、抵抗検査である、請求項1に記載の蓄電装置の検査方法。
【請求項3】
前記検査工程は、前記蓄電モジュールに組み付けられる前に前記蓄電装置に充電する工程で実施される、請求項1又は2に記載の蓄電装置の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電モジュールは、所定の配列方向に沿って配列された複数の蓄電装置がエンドプレート間に拘束されており、蓄電装置間には蓄電装置で発生した熱を放熱するための金属製の部材(放熱部材、放熱部材に熱を伝える伝熱部材等)が介在されている。各蓄電装置は、金属製のケース内に電極組立体及び電解液等を収容している。また、放熱用の金属製部材を介在させた蓄電装置間には、短絡を防止するために、金属製のケースと放熱用の金属製部材との間に絶縁フィルムが設けられている。
図3には、蓄電モジュールの蓄電装置100,100間の一例が示されており、蓄電装置100のケース100aと放熱用の金属製部材101との間に絶縁フィルム102が設けられている。
【0003】
蓄電装置のケースの表面には、製造中や運搬中等にキズや打痕等ができる場合がある。このキズや打痕等が突起状のものの場合、ケースに接する絶縁フィルムを破ってしまう可能性がある。絶縁フィルムが破られると金属製のケースと放熱用の金属製部材との間とが短絡するので、そのような突起状のものがあるかを検査しておく必要がある。例えば、特許文献1には、電池ユニットを電槽に収納した状態で集電板の折曲部に対応する箇所を極板群の積層方向に加圧し、電槽と集電板との短絡検査を行う角形電池の短絡検査方法が開示されている。集電板の折曲部に突起異物が存在する場合、加圧することにより突起異物によって集電板上に貼付けられている集電板絶縁テープが突き破られるため、電槽と集電板とが短絡するので、そのような突起異物を短絡不良として検出できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−181858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているのは、単体の蓄電装置での短絡検査であり、ケース(電槽)とそのケース内の集電板との短絡検査を行うことによって、ケース内部における集電板の折曲部に存在する突起異物等を検出している。複数の蓄電装置からなる蓄電モジュールの場合、
図3に示すように、隣接する蓄電装置100,100の各ケース100a,100a共に突起物P,Pが存在し、その各突起物P,Pで絶縁フィルム102,102をそれぞれ破ってしまうと、放熱用の金属製部材101を介してケース100a,100a間が短絡する。すると、ケース100aの電位が変化し、ケース100a内の電極組立体の正極とケース100a間の電位差によりケース100a内の電解液が分解する可能性がある。したがって、蓄電モジュールの場合、蓄電モジュールの蓄電装置100,100間の短絡を防止するために、蓄電装置100のケース100aの外部に突起物等があるかを検査することが重要となる。
【0006】
そこで、本技術分野においては、蓄電モジュールの蓄電装置間の短絡を防止するための蓄電装置の検査方法が要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る蓄電装置の検査方法は、金属製のケース内に電極組立体及び電解液を収容した蓄電装置が複数接続されて構成される蓄電モジュールの蓄電装置の検査方法であって、一対の金属製の拘束部材によって絶縁部材を介在させた状態で蓄電装置を挟み込む挟込工程と、蓄電装置の両側から絶縁部材を介在させて一対の拘束部材で拘束した状態で、拘束部材とケースとの間で短絡検査を行う検査工程とを含む。
【0008】
この検査方法では、まず、蓄電装置(ケース)の各面と拘束部材との間に絶縁部材をそれぞれ配置させて、絶縁部材を介在させた状態で一対の拘束部材によって蓄電装置を挟み込む。蓄電装置が挟み込まれる面は、蓄電モジュールで複数の蓄電装置が配列される方向の面(隣り合う蓄電装置が対向する面)であり、蓄電モジュールにおいて絶縁部材を介在させて放熱用の金属製部材が配置される側の面である。拘束部材は、金属製である。絶縁部材は、蓄電モジュールにおいて蓄電装置のケースと放熱用の金属製部材との間に設けられる絶縁部材と材料(材質)や厚み等が同じ部材かあるいはそれと同程度の部材であり、蓄電モジュールで使われる絶縁部材自体でもよい。そして、この検査方法では、一対の拘束部材間で蓄電装置を拘束した状態で、拘束部材と蓄電装置のケースとの間で短絡検査を行う。この短絡検査で短絡が検出されなかった場合、ケースと拘束部材との間が絶縁部材で絶縁されており、ケースには絶縁部材を破るような突起物がないと推測される。一方、短絡検査で短絡が検出された場合、ケースと拘束部材との間が絶縁部材で絶縁されておらず、ケースには絶縁部材を破るような突起物があると推測される。この場合、この蓄電装置を用いると隣り合う蓄電装置間で放熱用の金属製部材を介して短絡する可能性があるので、この絶縁不良となる蓄電装置を蓄電モジュールには使わない。このように、この検査方法によれば、蓄電装置の両側に絶縁部材を介在させて一対の金属製の拘束部材で拘束した状態でケースと拘束部材との間の短絡検査を行うことにより、ケースには絶縁部材を破るような突起物があるか否か(ひいては、絶縁不良となる蓄電装置か否か)を推測(判定)できるので、蓄電モジュールの蓄電装置間の短絡を防止することができる。
【0009】
一形態の蓄電装置の検査方法では、短絡検査は、抵抗検査である。短絡検査として抵抗検査を行うことにより、検出された抵抗値が小さい場合、ケースと拘束部材との間の抵抗が小さいので、ケースと拘束部材との間が絶縁部材で絶縁されておらず、ケースには突起物があると推測できる。
【0010】
一形態の蓄電装置の検査方法では、蓄電モジュールにおいて蓄電装置のケースと放熱用の金属製部材との間に絶縁フィルムが介在されており、絶縁部材は、絶縁フィルムと同じ材質であり、絶縁フィルムと同じ厚みである。このように蓄電モジュールにおいて実際に用いられている絶縁フィルムと同じ材質で同じ厚みの絶縁部材を用いて短絡検査を行うので、蓄電モジュールにおける実際の状況に則した検査を行うことができる。
【0011】
一形態の蓄電装置の検査方法では、検査工程は、蓄電モジュールに組み付けられる前に蓄電装置に充電する工程で実施される。このように蓄電装置の充電工程を利用して短絡検査を行うので、短絡検査専用で蓄電装置を拘束部材で拘束する必要がなく、検査コストや検査工数を低減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓄電モジュールの蓄電装置間の短絡を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態に係る蓄電装置からなる蓄電モジュールを模式的に示す平面図である。
【
図2】本実施の形態に係る蓄電装置の検査時の構成を模式的に示す側面図である。
【
図3】蓄電モジュールの隣接する蓄電装置間で短絡が発生した場合を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る蓄電装置の検査方法の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
本実施の形態に係る蓄電装置の検査方法は、蓄電装置が製造された後(蓄電モジュールに組み付けられる前)に行う蓄電装置に対する充放電工程(少なくとも蓄電装置に充電を行う工程であり、放電を行わない場合もある)を利用して行う検査に適用する。充放電工程は、正極と負極との間の反応を均一化する目的(また、蓄電装置内で発生するガスによる膨張を抑制する目的もある)で、蓄電装置を一対の拘束板で挟んで拘束圧をかけながら充放電を行う工程である。検査で不良品と判定された蓄電装置は、蓄電モジュールに使われない。
【0016】
図1及び
図2を参照して、本実施の形態に係る蓄電装置1の検査方法について説明する。
図1は、蓄電装置1からなる蓄電モジュールを模式的に示す平面図である。
図2は、蓄電装置1の検査時の構成を模式的に示す側面図である。
【0017】
検査方法について説明する前に、
図1を参照して、蓄電モジュールMの構成について説明しておく。蓄電モジュールMは、複数の蓄電装置1が放熱板2を介して配列され、その配列体が配列方向の両端面にそれぞれ配置された一対のエンドプレート3,3間に拘束された状態で構成されている。本実施の形態では、放熱板2が特許請求の範囲に記載する放熱用の金属製部材に相当する。なお、ここで説明する蓄電モジュールMの構成は一例であり、他の様々な構成の蓄電モジュールを適用できる。
【0018】
蓄電装置1は、角型の蓄電装置である。複数の蓄電装置1は、所定の配列方向(角型の蓄電装置の最も広い面同士が接する配列方向であり、正極及び負極が積層される方向)に沿って配列された状態でエンドプレート3,3間に挟み込まれることで拘束圧が付加され、拘束される。以下に、蓄電装置1(特に、リチウムイオン二次電池)の構成について説明する。なお、以下で説明する蓄電装置1の構成は一例であり、他の様々な構成の蓄電装置を適用できる。
【0019】
蓄電装置1は、ケース1a、電解液、電極組立体を主に備えている。ケース1aは、電解液及び電極組立体を収容するケースであり、角型である。ケース1aは、アルミニウムやステンレス鋼等の金属によって形成されている。電解液は、ケース1a内に収容され、電極組立体内に含浸される。電解液は、例えば、有機溶媒系又は非水系の電解液である。
【0020】
電極組立体は、正極、負極及び正極と負極とを絶縁するセパレータを備えている。電極組立体は、シート状の複数の正極と複数の負極及びシート状(または袋状)の複数のセパレータが積層されて構成されている。電極組立体は、ケース1a内に収容され、ケース1a内において電解液に満たされている。
【0021】
正極は、金属箔と、金属箔の少なくとも一面に形成された正極活物質層からなる。正極は、金属箔の端部に正極活物質層が形成されていないタブを有する。タブは、正極の上縁部に延び、導電部材を介して正極端子1bに接続されている。金属箔は、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔である。正極活物質層は、正極活物質、バインダを含んでいる。正極活物質層は、導電助剤を含んでいてもよい。正極活物質は、例えば、複合酸化物、金属リチウム、硫黄である。複合酸化物は、マンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つとリチウムとを含む。バインダは、例えば、ポリアミドイミド、ポリイミド等の熱可塑性樹脂、主鎖にイミド結合を有するポリマ樹脂である。導電助剤は、例えば、カーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)である。
【0022】
負極は、金属箔と、金属箔の少なくとも一面に形成された負極活物質層からなる。負極は、金属箔の端部に負極活物質層が形成されていないタブを有する。タブは、負極の上縁部に延び、導電部材を介して負極端子1cに接続されている。金属箔は、例えば、銅箔、銅合金箔である。負極活物質層は、負極活物質、バインダを含んでいる。負極活物質層は、導電助剤を含んでいてもよい。負極活物質は、例えば、黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素である。バインダ、導電助剤は、正極で示した同様のバインダ、導電助剤を適用できる。
【0023】
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布である。
【0024】
複数の蓄電装置1は、上記の配列方向に沿って配列される際に、隣り合う蓄電装置1,1間で正極端子1bと負極端子1cとの位置が交互になるように配列される。そして、隣り合う蓄電装置1,1間で正極端子1bと負極端子1cとが接続部材1dでそれぞれ接続され、複数の蓄電装置1が電気的に直列に接続されている。
【0025】
蓄電装置1のケース1aにおける上記の配列方向の両側の各表面には、絶縁フィルム4,4がそれぞれ貼り付けられている。したがって、絶縁フィルム4は、ケース1aと放熱板2(エンドプレート3の場合もある)との間に介在される。絶縁フィルム4は、隣り合う蓄電装置1,1間の短絡を防止するための絶縁部材である。絶縁フィルム4は、従来の蓄電モジュールに用いられている周知のものを適用できる。絶縁フィルム4は、蓄電装置1のケース1aにおける上記の配列方向の面を十分に覆うことができる大きさの矩形状である。蓄電装置1から放熱板2への伝熱性を低下させないために、絶縁フィルム4の厚みは、薄いほうが好ましい。本実施の形態では、絶縁フィルム4が特許請求の範囲に記載する絶縁フィルムに相当する。なお、複数の蓄電装置1はエンドプレート5,5間で拘束されているので、絶縁フィルム4をケース1aの両側の表面に貼り付けないで、ケース1aと放熱板2(あるいは、エンドプレート5)との間に挟んでいる状態だけでもよい。
【0026】
放熱板2は、蓄電装置1で発生した熱を放熱するための部材である。放熱板2は、所定の厚みを有する板状であり、絶縁フィルム4と接する面が蓄電装置1における上記の配列方向の面よりも十分に大きい面である。放熱板2は、アルミニウムやステンレス鋼等の金属によって形成されている。なお、蓄電装置1で発生した熱を放熱するための部材を放熱板2としているが、これ以外の構成で放熱を行ってもよい。例えば、蓄電装置1,1間に伝熱プレートを介在させ、その伝熱プレートとから放熱部材や冷却部材等に熱を伝えて放熱する構成とする。
【0027】
エンドプレート3は、上記の配列方向に沿って配列された複数の蓄電装置1の両端部に配置されて、配列された複数の蓄電装置1に両側から拘束圧を付加して拘束するための部材である。エンドプレート3は、板状であり、絶縁フィルム4と接する面が蓄電装置1における上記の配列方向の面よりも十分に大きい面である。エンドプレート3は、拘束圧を付加できる十分な厚みを有している。エンドプレート3には、連結部材3aを挿入できる径の貫通孔(図示せず)が複数開口されている。この貫通孔の位置は、例えば、エンドプレート3の四隅の角部周辺である。連結部材3aは、棒状の部材であり、両端部に雄ねじが切られている。エンドプレート3,3間に放熱板2を介在させて複数の蓄電装置1が挟み込まれた状態で、各連結部材3aが両側のエンドプレート3,3の各貫通孔にそれぞれ通されて、連結部材3aの両端部の雄ねじにナット3b,3bがそれぞれねじ込まれている。これによって、エンドプレート3,3間で複数の蓄電装置1に拘束圧が付加されて、拘束された状態になっている。
【0028】
それでは、
図2を参照して、蓄電装置1の検査方法について説明する。蓄電装置1の検査は、充放電工程で蓄電装置1に充放電を行う前あるいは行った後に検査を行う。この充放電工程では、通常、一対の拘束板10,10で両側から蓄電装置1を挟み込み、拘束板10,10から蓄電装置1に拘束圧を付加しながら充放電を行う。この挟み込み、拘束圧を付加する方向は、蓄電装置1の正極及び負極が積層されている方向である。
【0029】
拘束板10は、板状であり、拘束圧を付加できる十分な厚みを有している。拘束板10は、金属で形成されている。拘束板10の拘束圧を付加する面は、角型の蓄電装置1の挟み込まれる面よりも十分に広い大きさ及び形状を有している。拘束板10には、ボルト10aを挿入できる貫通孔が複数開口されている。貫通孔の位置は、例えば、拘束板10の四隅の角部周辺である。特に、一方側の拘束板10の貫通孔には、雌ねじが切られている。各ボルト10aは、蓄電装置1を挟み込んだ拘束板10,10の各貫通孔に挿入され、雄ねじが一方側の拘束板10の貫通孔の雌ねじにねじ込まれる。これによって、拘束板10,10間が複数のボルト10aで連結され、ボルト10aの締結力によって拘束板10,10間に拘束圧が付加される。
【0030】
蓄電装置1の検査を行うために、従来の充放電工程とは異なり、蓄電装置1と各拘束板10,10との間に絶縁フィルム11,11を介在させる。そして、絶縁フィルム11を蓄電装置1と拘束板10との間にそれぞれ介在させた状態で、拘束板10,10間で蓄電装置1を拘束する。この状態で、一方側の拘束板10と蓄電装置1のケース1aとの間で抵抗検査装置12によって抵抗検査を行うとともに、他方側の拘束板10と蓄電装置1のケース1aとの間で抵抗検査装置12によって抵抗検査を行う。本実施の形態では、拘束板10が特許請求の範囲に記載する拘束部材に相当し、絶縁フィルム11が特許請求の範囲に記載する絶縁部材に相当し、抵抗検査装置12が特許請求の範囲に記載する短絡検査を行うための装置である。
【0031】
絶縁フィルム11は、ケース1aと拘束板10との間を絶縁するための部材である。絶縁フィルム11は、角型の蓄電装置1の挟み込まれる面よりも十分に広い大きさ及び形状を有しており、例えば、拘束板10の面と同じ大きさ及び形状を有している。絶縁フィルム11は、蓄電モジュールMにおいて蓄電装置1の両側に設けられる絶縁フィルム4と同じ厚みであり、同じ材料(同じ材質)で形成された絶縁フィルムとする。なお、絶縁フィルム11は、検査専用ではなく、蓄電モジュールMで用いられる絶縁フィルム4を蓄電装置1のケース1aに貼り付けたものをそのまま利用してもよい。
【0032】
抵抗検査装置12は、金属製の拘束板10と金属製のケース1aとの間の抵抗値を測定する装置である。抵抗検査装置12としては、例えば、抵抗値を測定する周知のテスターである。拘束板10とケース1aとの間が絶縁フィルム11で絶縁されている場合、抵抗検査装置12で測定される抵抗値は非常に大きい値になる。一方、拘束板10とケース1aとの間が絶縁フィルム11が破損して短絡している場合、抵抗検査装置12で測定される抵抗値は小さい値になる。この抵抗値の差は非常に大きいので、その間の抵抗値を閾値として予め設定しておき、抵抗検査装置12で測定された抵抗値が閾値より小さい場合には短絡していると判定するようにするとよい。
【0033】
上記の構成による蓄電装置1に対する短絡検査の作用について説明する。まず、挟込工程では、蓄電装置1と拘束板10との間に絶縁フィルム11を介在させた状態で、一対の拘束板10,10間に蓄電装置1を挟み込み。さらに、挟込工程では、拘束板10,10間を複数のボルト10aによって連結し、拘束板10,10から蓄電装置1に拘束圧を付加する。なお、充放電工程の充放電を行う場合も、蓄電装置1と拘束板10との間に絶縁フィルム11を介在させた状態で充放電を行っても問題ない。
【0034】
次に、検査工程では、蓄電装置1のケース1aと一方側の拘束板10との間に一方側の抵抗検査装置12を接続するとともに、蓄電装置1のケース1aと他方側の拘束板10との間に他方側の抵抗検査装置12を接続する。さらに、検査工程では、一方側の抵抗検査装置12での抵抗値を測定するとともに、他方側の抵抗検査装置12での抵抗値を測定する。そして、各抵抗検査装置12で測定された各抵抗値が、閾値より小さいか否かを判定する。
【0035】
例えば、
図2に示すように、ケース1aにキズや打痕等による突起物Pがあり、蓄電装置1が拘束板10,10間で拘束圧が付加されてその突起物Pで絶縁フィルム11が破られている場合、突起物P(金属)を介して金属製のケース1aと突起物Pがある側の金属製の拘束板10との間が短絡(導通)している。そのため、突起物Pがある側の抵抗検査装置12で測定された抵抗値が閾値よりも小さくなり、短絡している(絶縁不良)と判定される。この場合、この蓄電装置1は後工程の蓄電モジュールMとして組み付けられる工程には用いられず、不良品として扱われる。なお、不良品として扱われる蓄電装置1は、両側の短絡検査で少なくとも一方側で短絡(絶縁不良)と判定されたものである。
【0036】
ケース1aに突起物P等がなく、蓄電装置1が拘束板10,10間で拘束圧が付加されも、絶縁フィルム11が正常に機能している場合、金属製のケース1aと金属製の拘束板10との間が絶縁されている。そのため、抵抗検査装置12で測定された抵抗値が閾値よりも大きくなり、短絡していない(絶縁正常)と判定される。両側の短絡検査で共に短絡していないと判定された場合、この蓄電装置1は後工程の蓄電モジュールMとして組み付けられる工程に用いられる。
【0037】
この蓄電装置1の検査方法によれば、蓄電装置1の両側に絶縁フィルム11を介在させて金属製の拘束板10,10間で拘束した状態でケース1aと拘束板10との間の短絡検査(特に、抵抗検査)を行うことにより、金属製のケース1aと金属製の拘束板10との間が短絡しているか否かを判定でき、ケース1aに絶縁フィルム11を破るような突起物Pがあるか否か(ひいては、絶縁不良となる蓄電装置1か否か)を推測(判定)できる。その結果、絶縁不良となる蓄電装置1が後工程に使われることはなく、蓄電モジュールMの直列接続された蓄電装置1,1間の放熱板2を介した短絡を防止することができる。
【0038】
この蓄電装置1の検査方法では、充放電工程を利用して短絡検査を行うので、短絡検査専用で蓄電装置1を拘束部材で拘束する必要がなく、検査コストや検査工数を低減できる。
【0039】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0040】
例えば、本実施の形態では蓄電装置の充放電工程を利用して蓄電装置の短絡検査を行う構成としたが、他の工程(例えば、短絡検査以外の蓄電装置に対する検査工程)内で短絡検査を行ってもよいしあるいは短絡検査単独で行ってもよい。
【0041】
また、本実施の形態では短絡検査として抵抗値を測定する抵抗検査を行う構成としたが、他の短絡検査を行ってもよく、例えば、ケースと拘束板との間の一方側から電流を流し、他方側で電流値を測定し、その測定された電流値を判定して短絡検査を行う。
【符号の説明】
【0042】
1…蓄電装置、1a…ケース、2…放熱板、3…エンドプレート、4…絶縁フィルム、10…拘束板、10a…ボルト、11…絶縁フィルム、12…抵抗検査装置。