(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6135491
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】自動車用電源装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/033 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
B60R16/033 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-259235(P2013-259235)
(22)【出願日】2013年12月16日
(65)【公開番号】特開2015-113101(P2015-113101A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】井本 政善
【審査官】
菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−207714(JP,A)
【文献】
特開平10−262330(JP,A)
【文献】
特開平09−275632(JP,A)
【文献】
特開2001−124852(JP,A)
【文献】
特開2010−213068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60R 16/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載されるとともに、電源部から複数の電力供給経路を介して電力を供給可能とした複数の電源ボックスと、
前記各電源ボックスに接続された負荷と、
前記各電源ボックスに設けられ、前記負荷と前記各電力供給経路との接続を開閉する開閉装置と、
前記自動車の周辺の衝突危険度を検出し、その衝突危険度があらかじめ設定されたレベルを超えたとき、前記電源ボックスに電力を供給する電力供給経路を衝突危険度の低い供給経路に切り替える供給経路切替信号を前記開閉装置に出力する電力供給経路切替装置とを備えた自動車用電源装置において、
前記開閉装置は、
前記複数の電力供給経路間にそれぞれ配設された切替スイッチと、
前記切替スイッチ間には複数の負荷がそれぞれ負荷駆動スイッチを介して接続され、前記供給経路切替信号に基づいて、前記切替スイッチのいずれか一方を遮断状態とするとともにあらかじめ設定された優先度に応じて前記負荷駆動スイッチを開閉制御する制御部と
を備えたことを特徴とする自動車用電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用電源装置において、
前記電力供給経路切替装置は、
前記自動車の周辺に近づく障害物を検出する監視センサと、
前記監視センサから出力される検出信号に基づいて、衝突危険度があらかじめ設定されたレベルを超えたとき危険判定信号を出力する監視部と、
前記危険判定信号の入力に基づいて、前記供給経路切替信号を生成する切替制御部と
を備えたことを特徴とする自動車用電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車用電源装置において、
前記監視センサを前記自動車の前部及び後部にそれぞれ設けるとともに、前記電源ボックス及び電力供給経路を前記自動車の周囲に環状に配設し、前記危険判定信号により前記電源ボックスへの電力供給経路を衝突危険度の低い供給経路に切り替えることを特徴とする自動車用電源装置。
【請求項4】
請求項2に記載の自動車用電源装置において、
前記監視センサを前記自動車の左右両側部にそれぞれ設けるとともに、前記電源ボックス及び電力供給経路を前記自動車の周囲に環状に配設し、前記危険判定信号により前記電源ボックスへの電力供給経路を衝突危険度の低い供給経路に切り替えることを特徴とする自動車用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の装備に対し、複数の電源供給経路を確保して、電力供給の冗長化を図ることにより、各装備の動作を安定化させるようにした自動車用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子化された自動車では、バッテリーから多数の装備に電力を供給するために、バッテリーと各装備との間に複数の電源ボックスが介在されている。そして、各電源ボックスを電源制御ECUで開閉制御して、バッテリーから各装備に対し複数の電力供給経路を確保することにより、いずれかの電力供給経路が遮断状態となっても、電力供給経路を適宜に切り替えることにより、各装備を安定して動作させることが可能となっている。
【0003】
特許文献1には、電力分配部に電力を供給する電力線に異常が発生した場合には、その異常を検知して当該電力線以外の他の電力供給経路を介して当該電力分配部に電力を供給することにより、電力供給を安定化させた電力分配システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−275632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された自動車用電源装置では、電力線の異常により電源電圧の低下が検出されたとき、当該電力線を不導通とするとともに、他の電力供給経路から当該電力分配部に電力を供給する。このため、電力供給経路の切替時には電源の瞬断あるいは電源電圧の低下が発生するため、当該電力分配部から電力が供給される装備で、不具合が発生するおそれがある。
【0006】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は電
力供給経路の異常に関わらず、安定した電源供給を可能とする自動車用電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する自動車用電源装置は、自動車に搭載されるとともに、電源部から複数の電力供給経路を介して電力を供給可能とした複数の電源ボックスと、前記各電源ボックスに接続された負荷と、前記各電源ボックスに設けられ、前記負荷と前記各電力供給経路との接続を開閉する開閉装置と、前記自動車の周辺の衝突危険度を検出し、その衝突危険度があらかじめ設定されたレベルを超えたとき、前記電源ボックスに電力を供給する電力供給経路を衝突危険度の低い供給経路に切り替える供給経路切替信号を前記開閉装置に出力する電力供給経路切替装置
とを備えた自動車用電源装置において、前記開閉装置は、前記複数の電力供給経路間にそれぞれ配設された切替スイッチと、前記切替スイッチ間には複数の負荷がそれぞれ負荷駆動スイッチを介して接続され、前記供給経路切替信号に基づいて、前記切替スイッチのいずれか一方を遮断状態とするとともにあらかじめ設定された優先度に応じて前記負荷駆動スイッチを開閉制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成により、衝突危険度の上昇により、電力供給経路の異常の発生に先立って当該電力供給経路が衝突危険度の低い供給経路に切り替えられる。
加えて、負荷駆動スイッチを開閉制御して、あらかじめ設定された優先度に応じて、電力を供給する負荷を制限することで、各電力供給経路の電力容量を超えないように制御することができる。
また、上記の自動車用電源装置において、前記電力供給経路切替装置は、前記自動車の周辺に近づく障害物を検出する監視センサと、前記監視センサから出力される検出信号に基づいて、衝突危険度があらかじめ設定されたレベルを超えたとき危険判定信号を出力する監視部と、前記危険判定信号の入力に基づいて、前記供給経路切替信号を生成する切替制御部とを備えることが好ましい。
【0009】
この構成により、監視センサで障害物が検出されると、監視部から危険判定信号が出力され、その危険判定信号に基づいて切替制御部により供給経路切替信号が生成される。
また、上記の自動車用電源装置において、前記監視センサを前記自動車の前部及び後部にそれぞれ設けるとともに、前記電源ボックス及び電力供給経路を前記自動車の周囲に環状に配設し、前記危険判定信号により前記電源ボックスへの電力供給経路を衝突危険度の低い供給経路に切り替えることが好ましい。
【0010】
この構成により、自動車の前方あるいは後方で衝突危険度が上昇すると、自動車の前方あるいは後方で衝突危険度の高い供給経路が衝突危険度の低い供給経路に切り替えられる。
【0011】
また、上記の自動車用電源装置において、前記監視センサを前記自動車の左右両側部にそれぞれ設けるとともに、前記電源ボックス及び電力供給経路を前記自動車の周囲に環状に配設し、前記危険判定信号により前記電源ボックスへの電力供給経路を衝突危険度の低い供給経路に切り替えることが好ましい。
【0012】
この構成により、自動車の左方あるいは右方で衝突危険度が上昇すると、自動車の左方あるいは右方で衝突危険度の高い供給経路が衝突危険度の低い供給経路に切り替えられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の自動車用電源装置によれば、電
力供給経路の異常に関わらず、電源を安定して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態の自動車用電源装置を示す配線図である。
【
図2】一実施形態の自動車用電源装置を示す配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、自動車用電源装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、自動車には6台の電源ボックス1a〜1fが配設され、各電源ボックス1a〜1fは電源幹線2a〜2fでループ状に接続されている。また、電源ボックス1c,1fは電源幹線2gで接続され、電源ボックス1a,1b,1c,1f及び電源ボックス1c,1d,1e,1fがループ状に接続されている。
【0018】
前記電源ボックス1aにはバッテリー3aとオルタネータ4が接続され、前記電源ボックス1dにはバッテリー3bが接続されている。そして、各電源ボックス1a〜1fにはバッテリー3a,3bの少なくともいずれかから電力が供給される。
【0019】
また、各電源ボックス1a〜1fには多数の装備が負荷5として接続され、前記バッテリー3a,3bから供給された電力が各負荷5に供給される。
前記各電源ボックス1a〜1fには電源制御ECU6が接続されている。そして、電源制御ECU6は、各電源ボックス1a〜1fにいずれの電源幹線2a〜2gから電力を供給するかを制御する。
【0020】
自動車の前部及び後部と左右両側部には、レーザーレーダー等で構成される監視センサ7a〜7dがそれぞれ配設され、各監視センサ7a〜7dは車両周辺監視用ECU8に接続されている。
【0021】
各監視センサ7a〜7dは、車両周辺に近づく障害物や他の自動車等を検出し、その検出信号を監視用ECU8に出力する。監視用ECU8は各監視センサ7a〜7dの検出信号に基づいて自動車の周辺での衝突危険度があらかじめ設定されたレベルを超えているか否かを判定し、超えている場合には危険判定信号を電源制御ECU6に出力する。
【0022】
電源制御ECU6は、その危険判定信号に基づいて各電源ボックス1a〜1fに供給経路切替信号S1〜S6を出力し、各電源ボックス1a〜1fでは供給経路切替信号S1〜S6に基づいて電力の供給を受ける電源幹線2a〜2gを選択する。
【0023】
次に、前記電源ボックス1a〜1fの具体的構成を説明する。
図2は、前記電源ボックス1eを示す。前記電源幹線2d,2e間には切替スイッチ9a,9bが介在され、その切替スイッチ9a,9b間には多数の負荷5がそれぞれ負荷駆動スイッチ10を介して接続されている。
【0024】
前記切替スイッチ9a,9b及び負荷駆動スイッチ10は、制御部11から出力される切替信号に基づいて開閉制御される。前記制御部11には、前記電源制御ECU6から出力される供給経路切替信号S5が入力され、制御部11はその供給経路切替信号S5に基づいて切替スイッチ9a,9b及び負荷駆動スイッチ10を開閉制御する。
【0025】
電源ボックス1bは、電源ボックス1eと同様な構成であり、電源ボックス1aはバッテリー3aとオルタネータ4が切替スイッチ間に接続され、電源ボックス1dはバッテリー3bが切替スイッチ間に接続される点が異なる。
【0026】
また、電源ボックス1c,1fはそれぞれ3本の電源幹線が接続されるため、各電源幹線がそれぞれ切替スイッチを介して接続される。
次に、上記のように構成された自動車用電源装置の作用を説明する。
【0027】
監視センサ7a〜7dからの検出信号により、自動車周辺の衝突危険度が低い通常時には、各電源ボックス1a〜1fには、少なくとも一本の電源幹線が接続され、バッテリー3a若しくはバッテリー3bから電力が供給される。
【0028】
そして、各電源ボックス1a〜1fから各負荷5に電力が供給されて、各負荷5が正常に動作する。
図3に示すように、例えば自動車の後方に後続車12が接近すると、監視センサ7bの検出信号により車両周辺監視用ECU8が衝突危険度の上昇を判定し、その判定信号を電源制御ECU6に出力する。そして、電源制御ECU6は電源ボックス1eに供給経路切替信号S5を出力する。
【0029】
すると、電源ボックス1eでは制御部11の動作により切替スイッチ9bが不導通状態となるとともに、切替スイッチ9aが導通状態となり、電源幹線2dが切断された状態となる。
【0030】
この状態では、電源ボックス1dには電源幹線2cから電力が供給されて、電源ボックス1dに接続された各負荷5に電力が供給される。また、電源ボックス1eには電源幹線2eから電力が供給されて、電源ボックス1eに接続された各負荷5に電力が供給される。
【0031】
この状態から、後続車12が追突して電源幹線2dが破壊されても、電源ボックス1dには電源幹線2cから電力が供給されるとともに、電源ボックス1eには電源幹線2eから電力が供給されるので、電源ボックス1d,1eで電源の瞬断や電源電圧の低下が発生することはない。
【0032】
監視センサ7aにより、自動車の前方での衝突危険度の上昇が判定された場合には、同様に異常の発生に先立って電源幹線2aが切断された状態となり、監視センサ7c,7dにより自動車の左右方向での衝突危険度の上昇が判定された場合には、異常の発生に先立って電源幹線2cあるいは電源幹線2eが切断された状態となる。
【0033】
上記のような自動車用電源装置では、次に示す効果を得ることができる。
(1)衝突危険度の上昇を検知して、予測される異常の発生に先立って、異常が予測される電源幹線2a〜2f以外の電源幹線から当該電源幹線が接続される電源ボックス1a〜1fに電力を供給することができる。従って、電源幹線2a〜2fで異常が発生しても、当該電源幹線が接続される電源ボックスでの電源の瞬断や電源電圧の低下を防止することができる。
【0034】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・異常の発生が予測された電源幹線2a〜2fを遮断するとき、電源制御ECU6により電源ボックス1a〜1fの負荷駆動スイッチ10を開閉制御して、あらかじめ設定された優先度に応じて、電力を供給する負荷5を制限してもよい。このような制御を行うことにより、各電源幹線の電力容量を超えないように制御することができる。
【符号の説明】
【0035】
1a〜1f…電源ボックス、2a〜2g…電力供給経路(電源幹線)、3a,3b…電源部(バッテリー)、4…電源部(オルタネータ)、5…負荷、6…電力供給経路切替装置(切替制御部、電源制御ECU)、7a〜7d…電力供給経路切替装置(監視センサ)、8…電力供給経路切替装置(監視部、監視用ECU)、9a,9b…開閉装置(切替スイッチ)、11…開閉装置(制御部)、S1〜S6…供給経路切替信号。