特許第6135551号(P6135551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6135551
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20170522BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   H02M7/48 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-37202(P2014-37202)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-162979(P2015-162979A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】竹内 那津子
【審査官】 東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−259313(JP,A)
【文献】 特開2011−228220(JP,A)
【文献】 特開2003−224981(JP,A)
【文献】 特開2011−4243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00−7/98
H05B 6/00−6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれダイオードが逆並列接続された二つの半導体スイッチを直列接続した回路を直流電源と並列に2回路接続したフルブリッジインバータ回路の出力に共振コンデンサと共振リアクトルとを含む負荷を接続する電力変換装置において、
前記それぞれの半導体スイッチを構成するダイオードはワイドバンドギャップ半導体で構成し、前記半導体スイッチの主端子間電圧を検出する電圧検出回路と、電圧設定値と前記電圧検出回路の検出値とを比較する電圧比較回路と、を備え、
オン信号が印加される時点の前記半導体スイッチのオフ信号期間に前記電圧設定値と前記電圧検出値とを比較して、連続した複数回の前記オフ信号期間で、前記電圧検出値が大であるとき、制御信号がオン信号になっても、前記半導体スイッチをオンしない半導体スイッチの保護回路を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記半導体スイッチはワイドバンドギャップ半導体で構成したMOSFETとし、逆並列接続されたダイオードは前記MOSFETの寄生ダイオードとすることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記連続した複数回のオフ信号期間は、前記半導体スイッチのスイッチング周波数と同期したスイッチング周期をカウンタで複数回カウントした期間とすることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記連続した複数回のオフ信号期間は、前記半導体スイッチのスイッチング周期の複数倍の時間に相当するタイマーで構成することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力に共振コンデンサ、共振リアクトルを含む負荷回路を接続し、出力電圧に対し、出力電流を遅れ位相で運転する電力変換装置の保護回路技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に、特許文献1に記載された従来技術として、背景技術を説明するための回路図を、図6にその動作波形図を示す。最初に、図5に示す回路図について説明する。
直流電源8を直流入力として接続した電力変換器7は、直流コンデンサ7i、半導体スイッチ7a、7b、7c、7d(この例ではダイオード7e、7f、7g、7hが逆並列接続されたIGBT)により構成される単相矩形波出力の電圧形フルブリッジインバータである。
その出力には、共振コンデンサ9、インダクタンス成分10aと抵抗成分10bからなる誘導加熱負荷10が接続され、全体で共振回路を構成している。ここで、図示しない制御回路から出力された周波数指令値はパルス生成回路11に入力され、制御信号が生成される。制御信号はゲート駆動回路12に入力され、その出力は、電力変換器7の半導体スイッチ7a、7b、7c、7d(IGBT)のゲートに入力される。
次に、図6について説明する。
【0003】
半導体スイッチ7a、7dと半導体スイッチ7b、7cを交互にオンオフすることにより変換回路7の出力には高周波の交流を出力する。電力変換器7の出力電圧Voは矩形波であるが、その出力には共振コンデンサ9とインダクタンス成分10aからなる共振回路が接続されているため、その共振曲線の共振点付近の出力周波数で運転しているとき、出力電流Ioは、正弦波に近い波形となる。また、共振点より高い出力周波数で運転しているため、出力電圧Voに対し、出力電流Ioは遅れ位相となる。
正常な動作状態である遅れ位相での運転期間のA点でゲート信号G7a、G7dをオフすると、IGBT7a、7dの両端電圧V7a、V7dが立上り、IGBTに流れている電流I7a、I7dは7a、7dから7b、7cに転流する。転流後のI7b、I7cの極性は負であるので、フリーホイールダイオードに流れているが、出力に接続されている共振回路により、徐々に電流が減少して、極性が正となった後電流が増加する。ここで、A点からある一定時間後のフリーホイールダイオードに流れている期間のB点で、ゲート信号G7b、G7cをオンすることで、電流はフリーホイールダイオードからIGBTにスムーズに切り替わる。
【0004】
次に、異常な動作状態である進み位相での運転期間のC点を見てみる。誘導加熱負荷10の異常(インダクタンス成分10a、具体的には加熱用コイルの短絡)などで、共振周波数が高くなった場合で、IGBTの電流I7a、I7dは、ゲート信号G7a、G7dがオフする前に、極性が負になっており、フリーホイールダイオードに流れている。すなわち、出力電圧Voに対し、出力電流Ioは進み位相となっている。
そのため、C点でゲート信号G7a、G7dがオフになっても、電流はIGBT7b、7cに転流せずに7a、7dのフリーホイールダイオードにそのまま流れている。その後、C点からある一定時間(デッドタイム)後のD点で、ゲート信号G7b、G7cをオンするとIGBT7a、7dのフリーホイールダイオードが急峻に逆回復し電流I7a、I7dは、IGBT7b、7cに転流する。
【0005】
この場合、例えば小電流などの電流領域においては、フリーホイールダイオードの急峻な逆回復により、サージ電圧が発生し、半導体素子が破壊することがある。また、電力変換器の半導体素子にMOSFETを用い、寄生ダイオードをフリーホイールダイオードとして用いている場合、急峻な逆回復をすることだけで破壊する。特許文献1に、出力電圧に対して出力電流の位相が進み位相になった場合の保護回路の従来例が記載されている。
図7に、従来例を説明するための回路図を、その波形図を図6に示す。
通常の出力電圧Voに対し、出力電流Ioが遅れ位相のときのB点で、ゲート信号G7b、G7cをオンするとき、オンするIGBT7b、7cのフリーホイールダイオードに電流が流れており、IGBT7b、7cの電圧はダイオード導通時の順方向降下電圧の−数V程度である。
【0006】
誘導加熱負荷の異常、ノイズによる誤動作などで、出力電圧Voに対し、出力電流Ioが進み位相のときのD点では、ゲート信号G7b、G7cをオンするとき、対抗アームのIGBT7a、7dのフリーホイールダイオードに電流が流れており、IGBT7b、7cの電圧は直流コンデンサ7eの電圧Edが印加され、本電源では数百V以上となる。
この電圧の違いを利用して、保護を行うのが、本実施例である。
半導体スイッチ7Xの主電極間の電圧を検出した値を分圧する抵抗R1、R2からなる分圧抵抗1とそれを電圧設定値と比較するコンパレータ2、制御信号がオン信号となる際のタイミングをとるフリップフロップ3、ディレイ回路4、およびAND回路5、ゲート信号を生成する増幅回路6から構成される。
半導体スイッチ7Xの主電極間の電圧を分圧抵抗1により取り扱いの容易な数V程度の電圧に分圧した後、コンパレータ2は電圧設定値とこの値を比較し、半導体素子7Xの主電極間の電圧が、上述のダイオードの導通時の電圧の−数V程度のときは、ハイ(Hi)を出力し、直流中間コンデンサ7eの電圧(本電源では数百V以上)のときはロー(Lo)を出力する。
【0007】
通常の出力電圧Voに対し、出力電流Ioが遅れ位相のときのB点では、コンパレータ2はハイ(Hi)を出力しているため、制御信号がオン、すなわちロー(Lo)→ハイ(Hi)になったとき、フリップフロップ3はハイ(Hi)を出力する。フリップフロップ3の入力→出力の遅れ時間以上に設定されたディレイ回路4の出力がロー(Lo)→ハイ(Hi)になったとき、AND回路5の他方の入力もハイ(Hi)であるので、出力もハイ(Hi)となり、増幅回路6を介して、半導体素子7XのIGBTをオンする。
誘導加熱負荷の異常などで、出力電圧Voに対し、出力電流Ioが進み位相のときのD点では、コンパレータ2はLoを出力しているため、制御信号がオン、すなわちロー(Lo)→ハイ(Hi)になったとき、フリップフロップ3はロー(Lo)を出力する。ディレイ回路4の出力がロー(Lo)→ハイ(Hi)になったとき、AND回路5の他方の入力はロー(Lo)であるので、出力はロー(Lo)のままでIGBT7Xはオンしない。
同時に、フリップフロップ3の出力がロー(Lo)となったとき、故障信号が図示しない制御回路に入力され、変換装置の運転を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−259313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来例では、インバータの出力電流が出力電圧に対して進み位相となったことを、IGBTの両端電圧と制御信号との関係から検出し、保護回路を即座に動作させ、制御回路から次のオン信号が出されても、IGBTをオンさせないようにして、さらに装置を停止させるようにしている。このため、負荷の急変や異常、ノイズ印加による誤動作などにより装置が停止に至る頻度が高くなり、適用範囲が制限される。
従って、解決しようとする課題は、出力に共振コンデンサと共振リアクトルを含む負荷を接続し、定常時は出力電圧に対して出力電流を遅れ位相で運転する電力変換装置に関し、負荷の異常などで、出力電圧に対して出力電流が進み位相となった場合に装置を即座に停止させずに所定時間以上運転継続可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、第1の発明においては、それぞれダイオードが逆並列接続された二つの半導体スイッチを直列接続した回路を直流電源と並列に2回路接続したフルブリッジインバータ回路の出力に共振コンデンサと共振リアクトルとを含む負荷を接続し、出力電圧に対して出力電流を遅れ位相で運転する電力変換装置において、
前記それぞれの半導体スイッチを構成するダイオードはワイドバンドギャップ半導体で構成し、前記半導体スイッチの主端子間電圧を検出する電圧検出回路と、電圧設定値と前記電圧検出回路の検出値とを比較する電圧比較回路と、を備え、
オン信号が印加される時点の前記半導体スイッチのオフ信号期間に前記電圧設定値と前記電圧検出値とを比較して、連続した複数回の前記オフ信号期間で、前記電圧検出値が大であるとき、制御信号がオン信号になっても、前記半導体スイッチをオンしない半導体スイッチの保護回路を備える。
【0011】
第2の発明においては、第1の発明における前記半導体スイッチはワイドバンドギャップ半導体で構成したMOSFETとし、逆並列接続されたダイオードは前記MOSFETの寄生ダイオードとする。
第3の発明においては、第1の発明における前記連続した複数回のオフ信号期間は、前記半導体スイッチのスイッチング周波数と同期したスイッチング周期を複数回カウンタ回路でカウントした時間とする。
第4の発明においては、第1の発明における前記連続した複数回のオフ信号期間は、前記半導体スイッチのスイッチング周期の時間の複数倍の時間に相当するタイマー回路で構成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、直流電源と並列にそれぞれダイオードが逆並列接続された二つの半導体スイッチを直列接続した回路を2回路接続したフルブリッジインバータ回路の交流出力に共振回路を含む負荷を接続し、それぞれの半導体スイッチを構成するダイオードはワイドバンドギャップ半導体で構成し、インバータ回路の出力電圧に対する出力電流の位相が進み位相となったことをスイッチング信号と同期して複数回検出した時に、制御回路からのオン信号を半導体スイッチの制御端子に伝達させないようにし、さらに外部の制御回路に対して故障信号を送出し、制御回路で変換装置を停止させるようにしている。
この結果、負荷の短時間の異常、ノイズによる誤動作などにより変換装置が停止する頻度が少なくなり、装置の適用範囲を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施例を示す回路図である。
図2】本発明の第1の実施例の動作図例である。
図3】本発明の第2の実施例を示す回路図である。
図4】本発明のN回動作図例を示す。
図5】本発明が対象とする主回路図である。
図6図5の各部の動作をしめす波形図である。
図7】従来の実施例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の要点は、出力に共振コンデンサと共振リアクトルを含む負荷を接続し、出力電圧に対して出力電流を遅れ位相で運転する電力変換装置において、半導体スイッチとしてワイドバンドギャップ半導体を使用した素子を使用し、半導体スイッチの主端子間電圧を検出する電圧検出回路と、電圧設定値と前記電圧検出値を比較する電圧比較回路と、を備え、オン信号が印加される時点の前記半導体スイッチの前記オフ信号期間に前記電圧設定値と前記電圧検出値を比較して、連続した複数回の前記オフ信号期間で、前記電圧検出値が大であるとき、前記半導体スイッチをオンしないようにしている点である。半導体スイッチとしてIGBTなどのSi(シリコン)半導体を用いた場合には逆並列接続するダイオードをワイドバンドギャップ半導体とし、ワイドバンドギャップ半導体を用いたMOSFETを用いる場合には、ダイオードはMOSFETの寄生ダイオードを用いる場合に適用する。
【実施例1】
【0015】
図1に、本発明の実施例を説明するための回路図を、図2に動作モード図を示す。
半導体スイッチ7Xの主電極間の電圧を検出した値を分圧する抵抗R1、R2からなる分圧抵抗1とそれを電圧設定値と比較するコンパレータ2、制御信号がオン信号となる際のタイミングをとるフリップフロップ3、ディレイ回路4、AND回路5、ゲート信号を生成する増幅回路6及びカウンタ13から構成される。
半導体スイッチ7Xの主電極間の電圧を分圧抵抗1により取り扱いの容易な数V程度の電圧に分圧した後、コンパレータ2は電圧設定値とこの値を比較し、半導体素子7Xの主電極間の電圧が、上述のダイオードの導通時の電圧の−数V程度のときは、ハイ(Hi)を出力し、直流中間コンデンサ7eの電圧(本電源では数百V以上)のときはロー(Lo)を出力する。
【0016】
通常の出力電圧Voに対し、出力電流Ioが遅れ位相のときのE点では、コンパレータ2はハイ(Hi)を出力しているため、制御信号がオン、すなわちロー(Lo)→ハイ(Hi)になったとき、フリップフロップ3のQ出力はハイ(Hi)を出力する。フリップフロップ3の入力→出力の遅れ時間以上に設定されたディレイ回路4の出力がロー(Lo)→ハイ(Hi)になったとき、AND回路5の他方の入力もハイ(Hi)であるので、出力もハイ(Hi)となり、増幅回路6を介して、半導体スイッチ7X(IGBT)をオンする。
【0017】
負荷の異常などで、出力電圧Voに対し、出力電流Ioが進み位相のときのE点では、コンパレータ2はロー(Lo)を出力しているため、制御信号がオン、すなわちロー(Lo)→ハイ(Hi)になったとき、フリップフロップ3のQ端子出力はロー(Lo)を出力する。制御信号がハイ(H)→ロー(Lo)になった時点でフリップフロップ3をプリセットするとQ出力はハイ(Hi)となる。図4に示すように、この動作をカウンタ13でN回数えて所定回数になった場合にカウンタの出力がロー(Lo)となるように設定する。この動作は、ゲート信号がロー(Lo)からハイ(Hi)になったタイミングとなる。次に制御信号がハイ(Hi)になり、ディレイ回路4の出力がロー(Lo)→ハイ(Hi)になったとき、AND回路5の他方の入力はロー(Lo)であるので、出力はロー(Lo)のままでIGBT7Xはオンしない。図4は、半導体スイッチ7b、7cを示しているが、7a、7dについても同様の動作となる。
【0018】
主回路において、出力電圧に対して出力電流が進み位相になった場合には、制御回路で遅れ位相になるように周波数制御するが、この制御に必要な時間よりもカウンタ13のカウント回数で決まる時間が長くなるように設定する。また、制御信号をブロックするタイミングは、制御信号に同期させることが望ましい。制御信号のオン信号期間の途中でオン信号をブロックすると大きな電流を遮断することになり、遮断時の跳ね上がり電圧を抑制するスナバを大型化する必要が生じる。
【0019】
また、この実施例では、進み位相になって複数回はダイオードがオフ(逆回復相当)するモードとなるが、ダイオードとして、SiC(炭化珪素)、GaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップ半導体を使用した主回路構成としているため、破壊されることなく運転を継続することができる。ここで、ワイドバンドギャップ半導体を使用したダイオードには逆回復電流は流れないため、Si(シリコン)半導体を使用した場合のように逆回復破壊することはない。また、カウンタ13の出力がロー(Lo)となったとき、故障信号が図示しない制御回路に入力され、変換装置の運転を停止させる。上述のように、本実施例ではカウンタ13がカウントアップするまで、複数回連続して進み位相であることが検出された場合に変換装置が停止されることになり、従来に比べて装置が停止する頻度が少なくなる。
【実施例2】
【0020】
図3に第2の実施例を示す。第1の実施例との違いは、第1の実施例におけるカウンタ13の代わりにタイマー14をフリップフロップ3のQ出力に接続し、フリップフロップ3のQ出力と制御信号を入力としたAND回路15の出力で、タイマーをリセットするようにしている点である。
出力電圧Voに対し、出力電流Ioが遅れ位相のときのE点では、コンパレータ2はハイ(Hi)を出力しているため、制御信号がオン、すなわちロー(Lo)→ハイ(Hi)になったとき、フリップフロップ3のQ出力はハイ(Hi)となる。また制御信号の立下りでフリップフロップ3をプリセットするが、この時もフリップフロップ3のQ出力はハイ(Hi)となる。このように遅れ位相のときは、フリップフロップ3のQ出力は常にハイ(Hi)であり、制御信号のオン信号でリセットされた状態となり、タイマーとしてカウントしない。
【0021】
一方、出力電圧Voに対し、出力電流Ioが進み位相のときのE点では、コンパレータ2はロー(Lo)を出力しているため、制御信号がオン、すなわちロー(Lo)→ハイ(Hi)になったとき、フリップフロップ3のQ出力はロー(Lo)となる。また制御信号の立下りでフリップフロップ3をプリセットするが、この時フリップフロップ3のQ出力はハイ(Hi)となる。このように、フリップフロップ3のQ出力はハイ(Hi)とロー(Lo)を繰り返す動作となり、これをカウントすることによりタイマーを形成する。タイマーがカウントアップした時点で、タイマー14の出力はローとなり、次に制御信号がハイ(Hi)になり、ディレイ回路4の出力がロー(Lo)→ハイ(Hi)になったとき、AND回路5の他方の入力はロー(Lo)であるので、出力はロー(Lo)のままでIGBT7Xはオンしない。
主回路において、出力電圧に対して出力電流が進み位相になった場合には、制御回路で遅れ位相になるように周波数制御するが、この制御に必要な時間よりもタイマーの時間が長くなるように設定する。
【0022】
また、この実施例では、進み位相になって複数回ダイオードがオフ(逆回復相当)するモードとなるが、ダイオードとして、SiC(炭化珪素)、GaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップ半導体を使用した主回路構成としているため、破壊されることなく運転を継続することができる。ここで、ワイドバンドギャップ半導体を使用したダイオードには逆回復電流は流れないため、Si(シリコン)半導体を使用した場合のように逆回復破壊することはない。また、カウンタ13の出力がロー(Lo)となったとき、故障信号が図示しない制御回路に入力され、変換装置の運転を停止させる。上述のように、本実施例ではタイマー14がカウントアップするまで、複数回連続して進み位相であることが検出された場合に変換装置が停止されることになり、従来に比べて装置が停止する頻度が少なくなる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本願では共振コンデンサと共振リアクトルを含む負荷に高周波の電力を供給する変換装置について説明したが、具体的には共振回路を使用するスイッチング電源、DC−DCコンバータ、誘導加熱電源などに適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1・・・分圧抵抗 2・・・コンパレータ 5、15・・・AND回路
3・・・フリップフロップ 4・・・ディレイ回路
6・・・増幅回路 7・・・電力変換器 9・・・共振コンデンサ
7X、7a〜7d・・・半導体スイッチ(IGBT) 10・・・誘導加熱負荷
7e〜7h・・・ダイオード
7i・・・直流コンデンサ 8・・・直流電源
10a・・・インダクタンス成分 10b・・・抵抗成分
11・・・パルス生成回路 12・・・ゲート駆動回路
13・・・カウンタ 14・・・タイマー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7