(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
時計用の文字板には、時刻等を示す数字や文字及びこれに代わる指標(いわゆる時字)や各種の目盛、記号等が配置されている。
こうした時字等は、印刷によって平面的に形成されることもあるが、高級感のある仕上がりとするためには、立体的に表現されることが好ましい。このため、植字部材を別部材として形成し、これを文字板上に配置して固定する「植字」の手法を用いることが広く行われている。
【0003】
従来、植字部材は、金属材料で形成されることが一般的であり、植字部材の固定には、機械的なかしめや接着固定が多く用いられている。
すなわち、例えば植字部材の裏面側に脚部を設けるとともに、金属材料や樹脂材料で形成された文字板にこの脚部を挿通させる孔を穿設し、植字部材を文字板上に配置した後、文字板の裏面側で脚部を機械的にかしめたり、接着剤により接着する等により固定されていた。
【0004】
この点、近時の成形金型技術の進化により、微細な部品である植字部材についても樹脂材料で形成することが可能となっている。
文字板及び植字部材がともに樹脂材料で形成されている場合には、樹脂同士を接合させる各種の手法を用いて植字部材を文字板上に固定することができる。
樹脂同士の接合手法としては、接着剤による固定、熱圧着、超音波接合等が挙げられる。
しかし、微細な部品を接着剤で固定することは手間がかかり、また、接着剤のはみ出し等により美しい仕上がりとならない場合もある。
そこで、特許文献1には、レーザー溶着の技術を用いて樹脂同士を溶着させる手法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、植字部材は文字板上に配置される微細な部品であり、しかも、時計の文字板においては、熱による変形や焼け、くすみ等、わずかな傷であっても目立ってしまい、製品品質が低下してしまう。
この点、上記のような従来の手法は、微小な熱のコントロールが不可能であり、微細な部品の微小領域での安定した溶着を行うことが困難であり、特に、時計における植字部材のように外観への熱影響の排除が強く要請される部品の溶着を行うことは難しいという問題がある。
【0007】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、樹脂製の文字板に樹脂製の微細な部品である植字部材を精密に固定することができる植字固定方法
、植字固定構造
及び時計を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る植字固定方法は、
透明又は半透明の樹脂で形成された文字板の表面に不透明又は半透明のレーザー吸収特
性を有する樹脂で形成され、肉厚部が設けられた植字部材を配置して、
治具により均一に圧力を加えながら前記文字板の裏面側から前記肉厚部に向けてレーザー光を照射し、
前記植字部材の界面においてレーザー光を吸収させ、熱により前記植字部材及び前記文字板のうち少なくとも一方を溶融させることにより前記文字板上に前記植字部材を溶着させることを特徴としている。
また、本発明に係る植字固定方法は、
透明又は半透明の樹脂で形成された文字板の表面に不透明又は半透明のレーザー吸収特性を有する樹脂で形成され、頂点又は頂線が設けられた植字部材を配置して、
治具により均一に圧力を加えながら前記文字板の裏面側から前記頂点又は前記頂線に向けてレーザー光を照射し、
前記植字部材の界面においてレーザー光を吸収させ、熱により前記植字部材及び前記文字板のうち少なくとも一方を溶融させることにより前記文字板上に前記植字部材を溶着させることを特徴としている。
また、本発明に係る植字固定方法は、
透明又は半透明の樹脂で形成された文字板の表面に不透明又は半透明のレーザー吸収特性を有する樹脂で形成され、断熱層が設けられた植字部材を配置して、
治具により均一に圧力を加えながら前記文字板の裏面側からレーザー光を照射し、
前記植字部材の界面においてレーザー光を吸収させ、熱により前記植字部材及び前記文字板のうち少なくとも一方を溶融させることにより前記文字板上に前記植字部材を溶着させ、
前記断熱層は、レーザー光が照射される前記植字部材の領域と前記植字部材の表面との間に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂製の文字板に樹脂製の微細な部品である植字部材を精密に固定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から
図8を参照しつつ、本発明に係る植字固定方法及び植字固定構造の一実施形態について説明する。なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
図1は、本実施形態における植字固定構造を適用した文字板及び植字部材の平面図である。
図1に示すように、本実施形態の植字固定構造は、文字板1と植字部材2とを備えている。
【0014】
本実施形態において、文字板1は、透明又は半透明の樹脂で形成されている。
文字板1を形成する材料は、具体的には、例えば、アクリル樹脂(メタクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメチルメタクリレート等、PMMA)やポリカーボネート樹脂(PC)等であり、光の透過率は20%以上であることが好ましい。
【0015】
また、植字部材2は、文字板1の表面に配置されるものであり、例えば指針3によって指し示され、時刻等を示す数字や文字及びこれに代わる指標(いわゆる時字)等を立体的に表現する時字用の植字部材2aや、各種情報を表示させる小表示部4の周囲等に設けられるリングや目盛、記号等を立体的に表現する加飾用の植字部材2b等を含んでいる。
植字部材2は、不透明又は半透明であってレーザー吸収特性を有する樹脂で形成されている。
植字部材2を形成する材料は、具体的には、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)やABS樹脂等の比較的耐熱性に優れるものであり、かつ可視光を吸収する不透明なものが好ましく、光の透過率は20%以下であることが好ましい。
【0016】
図2(a)は、
図1に示す植字部材とその周辺の文字板の拡大図であり、
図2(b)は、
図2(a)における矢視b方向から見た植字部材の正面図であり、
図2(c)は、
図2(a)における矢視c方向から見た植字部材の側面図である。
また、
図3(a)、
図4(a)及び
図5(a)は、植字部材の一変形例とその周辺の文字板の拡大図であり、
図3(b)、
図4(b)及び
図5(b)は、
図3(a)、
図4(a)及び
図5(a)における矢視b方向からそれぞれの植字部材を見た場合の植字部材の正面図である。
図2(a)から
図2(c)に示すように、植字部材2は、本体部21と、本体部21の裏面側に設けられる脚部22とからなる。なお、脚部22の形状や数は図示例に限定されない。また、脚部22を備えることは必須ではなく、脚部22のない構成でもよい。
植字部材2が脚部22を備える場合には、文字板1には脚部22が嵌め込まれる孔が設けられる。なお、孔は貫通孔でもよいし、貫通しない凹部でもよい。植字部材2側に脚部22を設け、文字板1側にこれを嵌め込む孔を設けることで、植字部材2の位置決めが容易となる。
【0017】
また、本実施形態における植字部材2aには、上面に長手方向に沿って頂線23が設けられており、植字部材2aは、正面視においてほぼ山型となっている(
図2(b)参照)。
ここで、頂線23とは面同士が交わって他の部分よりも高くなっている部分をいう。なお、本実施形態では、
図2(b)等に示すように斜面同士が交わっている部分の他、例えば
図3(b)や
図4(b)に示すように、斜面と平面とが交わっている部分も頂線23とする。
なお、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、他の部分よりも高くなっている点がある場合、当該「点」を頂点24とする。
【0018】
図6は、本実施形態における植字固定方法を説明するための要部断面図であり、本実施形態における植字固定構造を実現するための装置構成の概略を示している。
【0019】
本実施形態における植字固定方法を実現するための装置は、具体的には、
図6に示すように、文字板1及び植字部材2を支持する支持部材51と、文字板1及び植字部材2を加圧する加圧部材52と、加圧部材52により加えられる圧力を均一化する圧力均一化治具53と、を備えている。
圧力均一化治具53は、レーザー光Lを透過させるとともに、レーザー溶着の際に生じる熱に耐え得るものである必要があり、例えば平板状の透明な耐熱ガラスが適用される。
圧力均一化治具53を介して加圧することにより、文字板1及び植字部材2を面で加圧することができ、植字部材2に均一な圧力を加えながらレーザー溶着を行うことができる。
ここで、均一な圧力とは、均整度80%以上の圧力であることが好ましく、出力は0.1〜5Nであることが好ましい。
【0020】
植字部材2を文字板1に固定する際には、文字板1の表面に植字部材2を配置し、文字板1の表面側であって固定対象となる植字部材2の上に、文字板1及び植字部材2の表面を保護する保護シート54を配置する。さらに植字部材2の表面側に緩衝部材55を配置して、この緩衝部材55を介して加圧部材52による加圧が行われる。緩衝部材55としては、例えばシリコーンゴム等を用いることができる。
【0021】
本実施形態では、このように耐熱性を有する治具を用いて均一に圧力を加えながら文字板1の裏面側からレーザー光Lを照射することにより、植字部材2の界面においてレーザー光Lを吸収させ、熱により植字部材2及び文字板1のうち少なくとも一方を溶融させて文字板1上に植字部材2を溶着させる。
【0022】
本実施形態において、レーザー光Lの照射条件(出力条件)は、波長が390〜1200nm、出力が0.1W〜10.0W(より好ましくは、5.0W〜8.0W)、繰返し周波数が1kHz〜500MHz、スキャン速度が1mm/s〜100mm/s程度であることが好ましい。
また、レーザー光Lのビーム形状は、中央部にピークを有する一般的なガウシアン分布形状ではなく、ピークの無い均等な分布のビーム形状であることが好ましい。
図7(a)及び
図8(a)は、ピークの無いビームの一例を上から見た図であり、
図7(b)及び
図8(b)は、
図7(a)及び
図8(a)に示すビームを立体視した図である。レーザー光Lのビーム形状としては、例えば、
図7(a)及び
図7(b)に示すトップハット形状や
図8(a)及び
図8(b)に示すリング形状等のように、小さく均整度の高い形状のビームを用いることが好ましい。
レーザー光Lのビーム形状は、図示しないレーザー発生装置におけるレーザーの発振する共振器部(キャビティ)の構造、光の回折(例えばビーム出力端の大きさや波長)を調整することによって行われる。
【0023】
レーザー光Lを照射する場合には、レーザー光Lを吸収することで生ずる熱の影響が植字部材2における視認側(すなわち、植字部材2の表面)に現れることを極力避ける必要があり、そのためには、レーザー光Lにより溶融する植字部材2の界面から植字部材2の表面までの、レーザー光Lの照射方向における距離をできる限り稼ぐことが好ましい。
このため、例えば、植字部材2に肉厚部が設けられている場合には、レーザー光Lの照射箇所は、この肉厚部とすることが好ましい。本実施形態において肉厚部とは、レーザー光Lの照射方向における厚みが厚い部分を言う。
例えば、
図4(a)に示すように、植字部材2に長手方向に延在する脚部22が設けられている場合には、この脚部22が設けられている部分は、植字部材2の厚み(レーザー光Lの照射方向における厚み)が厚い肉厚部となっている。このため、レーザー光Lの照射は、この脚部22に沿って行われることが好ましい。また、脚部22が
図2(a)に示すような細いものである場合でも、当該部分を溶着させるだけで植字部材2を固定することができるような場合には、当該脚部22に対してレーザー光Lを照射して、スポット溶接を行ってもよい。また、脚部22以外でも、植字部材2のデザインとして肉厚部分を設けることが可能な場合には、当該肉厚部分に対してレーザー光Lの照射を行う。
また、
図2(a)及び
図3(a)に示すように、植字部材2に頂線23が設けられている場合や、
図5(a)に示すように、植字部材2に頂点24が設けられている場合には、レーザー光Lは、この頂線23や頂点24に対して照射されることが好ましい。
頂線23や頂点24の設けられている部分は、植字部材2において最も高さの高い部分となっているため、この部分にレーザー光Lを照射することで、レーザー光Lの照射距離を稼ぐことができる。
【0024】
図2(a)、
図3(a)、
図4(a)、
図5(a)では、レーザー光Lの照射により溶融する部分を斜線の網掛けで示している。
図3(a)に示すように、頂線23が2本設けられている場合には、各頂線23に対してそれぞれレーザー光Lを往復させてもよいし、各頂線23とこれを結ぶ部分に対してレーザー光Lをコ字状にスキャンさせてもよい。
レーザー光Lをコ字状にスキャンさせる場合には、各頂線23を結ぶ部分についてはスキャンの移動速度を早くしたり、レーザー光Lの出力を落とす等により、溶融する部分をできるだけ少なくすることが好ましい。
また、頂線23が2本設けられている場合には、
図3(b)に示すように、各頂線23にレーザー光Lを照射する際の照射角度を変えて、それぞれ斜め下方向から照射することが好ましい。このようにすることで、頂線23までの照射距離をより稼ぐことができる。
【0025】
図2(b)及び
図2(c)では、レーザー光Lを頂線23に対して照射した場合における植字部材2内での熱の拡散状況を矢印で示している。
図2(b)及び
図2(c)に示すように、レーザー光Lを頂線23に対して照射した場合には、比較的厚みのある部分である頂線23近傍に熱が拡散され、植字部材2の表面に熱影響が現れるのを抑えることができる。
【0026】
次に、本実施形態における植字固定方法について説明する。
本実施形態において文字板1に植字部材2を固定する場合には、
図6に示すように、支持部材51の上に圧力均一化治具53である耐熱ガラス板等を載置し、その上に植字部材2が配置された文字板1を載置する。
そして、文字板1の表面側であって固定対象となる植字部材2の上に、文字板1及び植字部材2の表面を保護する保護シート54を配置し、さらに植字部材2の表面側に緩衝部材55を配置して、この緩衝部材55を介して加圧部材52による加圧を行う。
図示しないレーザー照射装置において、照射するレーザー光Lのビーム形状をピークのない形状となるように調整し、植字部材2における頂線23や頂点24部分、又は脚部22の設けられている部分等の肉厚部に対してレーザー光Lを照射する。
これにより、均一に圧力が加わった状態で文字板1の裏面側からレーザー光Lが照射され、これによって、植字部材2の界面においてレーザー光Lが吸収され、熱により植字部材2及び文字板1のうち少なくとも一方が溶融して文字板1上に植字部材2が溶着される。
このとき、レーザー溶着によって生じた熱は植字部材2における比較的厚みのある部分で拡散され、植字部材2の表面への熱影響が抑えられる。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、透明又は半透明の樹脂で形成された文字板1の表面に不透明又は半透明のレーザー吸収特性を有する樹脂で形成された植字部材2を配置して、耐熱性を有する治具である圧力均一化治具53によって均一に圧力を加えながら文字板1の裏面側からレーザー光Lを照射する。これにより、植字部材2の界面においてレーザー光Lを吸収させ、熱により植字部材2及び文字板1のうち少なくとも一方を溶融させることにより文字板1上に植字部材2を溶着させる。
このように、均一に圧力が加わった状態でレーザー溶着を行うことにより、レーザー溶着によって生じる熱影響を均一に分散させることができ、植字部材2の表面(すなわち視認側)への熱影響を防いで、高品質な植字部材2(アップライトインデックス)を備える文字板1を形成することができる。
また、レーザー光Lの照射による熱溶着によって植字部材2を固定するため、接着剤を用いた固定等、他の固定手法よりも格段に耐衝撃性能を向上させることができる。
また、植字部材2の肉厚部である脚部22や頂線23・頂点24の設けられている部分に対してレーザー光Lを照射する。このため、レーザー光Lの照射距離を稼ぐことができ、レーザー溶着によって生じる熱影響が植字部材2の表面(すなわち視認側)に現れるのを抑えることができる。
また、植字部材2に頂線23や頂点24を設けた場合には、仮にレーザー光Lの照射による熱影響によるくすみ等が現れた場合でも、植字部材2の表面を平面とした場合よりも目立ちにくく、さらに、デザイン性にも優れた植字を実現することができる。
さらに、レーザー光Lのビーム形状を、先端部にピークのないトップハット形状等としているため、ガウシアン分布形状のレーザー光Lを用いる場合と比べて、レーザー光Lの照射による熱影響が一点に集中しにくくなり、植字部材2の表面(すなわち視認側)への熱影響をより低減させることができる。
【0028】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0029】
例えば、本実施形態では、レーザー光Lを植字部材2の真下から照射する場合を例示したが、レーザー光Lを照射する方向はこれに限定されない。
例えば、レーザー光Lを植字部材2の脚部22に向けて照射する場合に、
図9(a)から
図9(c)に示すように、脚部22の斜め下からレーザー光Lを照射してもよい。
このように斜めにレーザー光Lを照射した場合には、真下から照射するよりも植字部材2の表面までの距離を稼ぐことができ、植字部材2の表面への熱影響を抑えることができる。
また、この場合、
図9(c)に示すように、レーザー光Lが照射される部分(
図9(c)では植字部材2の脚部22)をレーザー光Lの照射角度に応じて斜めに切り欠いてもよい。レーザー光Lの、照射対象物への入射角度をほぼ直角とすることで熱を効率よく拡散させることができる。
【0030】
また、例えば、
図10(a)に示すように、中央部を凹ませたデザインの植字部材2を文字板1の上に固定したい場合には、薄肉となってしまう部分について、植字部材2の内部をくり抜いて空洞とし、空気層25を設けてもよい。
このように、植字部材2の内部に空気層25を設けることにより、レーザー光Lの照射によって生じる熱の伝達を抑えることができ、熱影響によるくすみや焼けが植字部材2の表面(すなわち視認側)に現れるのを抑えることができる。
また、植字部材2の内部に断熱構造を設けるため、植字部材2の外観に影響を及ぼすこともない。
【0031】
また、例えば、
図10(b)に示すように、植字部材2の下側の側部にスリット26を設けてもよい。植字部材2の幅が狭い場合等には、レーザー光Lの熱影響が植字部材2の側部に現れるおそれがある。
この点、植字部材2の側部にスリット26を設けた場合には、この部分に空気による断熱層ができ、熱の伝達を抑えることができ、熱影響によるくすみや焼けが植字部材2の表面(すなわち視認側)に現れるのを抑えることができる。
また、この場合にも植字部材2の内部であって文字板1との間に隠れる部分に断熱構造を設けるため、植字部材2の外観に影響を及ぼすこともない。
【0032】
また、本実施形態では、先端部にピークのないビーム形状のレーザー光Lを用いる例を示したが、レーザー光Lのビーム形状はこれに限定されない。
例えば、植字部材2の表面までの照射距離が十分に稼げる場合や、植字部材2の内部に断熱構造を設ける場合には、レーザー光Lのビーム形状を一般的なガウシアン分布形状としてもよい。
【0033】
また、本実施形態では、圧力均一化治具53として、レーザー光Lを透過させる耐熱ガラスを用いたが、圧力均一化治具53はこれに限定されない。
例えば、レーザー光Lを透過させない部材であっても、レーザー光Lの通り道に孔を形成することにより圧力均一化治具として適用することが可能である。
【0034】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
透明又は半透明の樹脂で形成された文字板の表面に不透明又は半透明のレーザー吸収特性を有する樹脂で形成された植字部材を配置して、
耐熱性を有する治具により均一に圧力を加えながら前記文字板の裏面側からレーザー光を照射し、
前記植字部材の界面においてレーザー光を吸収させ、熱により前記植字部材及び前記文字板のうち少なくとも一方を溶融させることにより前記文字板上に前記植字部材を溶着させることを特徴とする植字固定方法。
<請求項2>
前記植字部材に肉厚部を設け、
前記レーザー光の照射箇所は、前記肉厚部とすることを特徴とする請求項1に記載の植字固定方法。
<請求項3>
前記植字部材に頂点又は頂線を設け、
前記レーザー光は、前記頂点又は頂線に対して照射されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植字固定方法。
<請求項4>
前記レーザー光は、先端部にピークのないビーム形状であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の植字固定方法。
<請求項5>
透明又は半透明の樹脂で形成された文字板と、
前記文字板の表面に配置され、不透明又は半透明のレーザー吸収特性を有する樹脂で形成された植字部材と、
を備え、
耐熱性を有する治具により均一に圧力を加えながら前記文字板の裏面側からレーザー光を照射することにより、前記植字部材の界面においてレーザー光を吸収させ、熱により前記植字部材及び前記文字板のうち少なくとも一方を溶融させて前記文字板上に前記植字部材を溶着させることを特徴とする植字固定構造。