(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するモータ制御装置、磁束指令の生成装置および磁束指令の生成方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[1.モータ制御装置]
図1は、実施形態に係るモータ制御装置の構成例を示す図である。
図1に示すモータ制御装置1は、直流電源2とモータ3との間に配置される。かかるモータ制御装置1は、電力変換部10と、電流検出部11と、制御部12とを備え、直流電源2から供給される直流電力を交流電力へ変換してモータ3へ出力し、モータ3を制御する。
【0011】
なお、
図1に示すモータ制御装置1は、直流電源2とモータ3との間に配置されるが、交流電源とモータ3との間に配置されてもよい。この場合、モータ制御装置1は、交流電源から供給される交流電力を直流電力へ変換して電力変換部10へ供給するコンバータを備える。なお、電流検出部11および制御部12が磁束指令の生成装置の一例に相当する。
【0012】
電力変換部10は、コンデンサC1と複数のスイッチング素子Q1〜Q6を備える。スイッチング素子Q1〜Q6は、3相ブリッジ接続され、それぞれ保護用のダイオードが逆並列接続される。スイッチング素子Q1〜Q6は、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチング素子である。また、スイッチング素子Q1〜Q6は、次世代半導体スイッチング素子のSiC、GaNであってもよい。
【0013】
電流検出部11は、電力変換部10とモータ3のU相、V相およびW相の各相との間に流れる相電流を検出する。かかる電流検出部11は、電力変換部10からモータ3のU相、V相およびW相への出力電流の瞬時値i
u、i
v、i
wをそれぞれ検出し、かかる瞬時値i
u、i
v、i
w(以下、出力電流i
u、i
v、i
wと記載する)を検出電流として出力する。
【0014】
電流検出部11は、例えば、U相、V相およびW相の相毎に、磁電変換素子であるホール素子、シャント抵抗、または、電流トランスを有し、出力電流i
u、i
v、i
w(以下、出力電流i
oと総称する場合がある)を検出する。
【0015】
制御部12は、例えば、速度指令ω
*に応じた速度でモータ3が回転するように、出力電流i
u、i
v、i
wをフィードバック値として、電力変換部10のスイッチング素子Q1〜Q6を駆動するPWM(Pulse Width Modulation)信号S1〜S6を生成して電力変換部10へ出力する。これにより、直流電源2から供給される直流電力が電力変換部10により交流電力へ変換されてモータ3へ出力され、モータ3が制御される。
【0016】
[2.制御部12]
制御部12は、3相2相変換部13と、磁束推定部14と、速度位置推定部15と、トルク推定部16と、磁束指令出力部17と、駆動部18とを備える。かかる制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。かかるマイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、後述する制御を実現する。
【0017】
3相2相変換部13、磁束推定部14、速度位置推定部15、トルク推定部16、磁束指令出力部17および駆動部18の機能は、例えば、上記CPUが上記プログラムを読み出して実行することにより実現される。なお、3相2相変換部13、磁束推定部14、速度位置推定部15、トルク推定部16、磁束指令出力部17および駆動部18は、それぞれ一部または全部がハードウェアで構成されてもよい。
【0018】
3相2相変換部13は、出力電流i
u、i
v、i
wを固定座標上の直交した2軸のαβ成分へ変換して、αβ軸電流i
αβを求める。かかるαβ軸電流i
αβは、αβ軸座標系のベクトルであり、α軸成分であるα軸電流i
αとβ軸成分であるβ軸電流i
βを含む。
【0019】
磁束推定部14は、例えば、αβ軸電流i
αβおよびαβ軸電圧指令v
αβ*に基づいて、電機子鎖交磁束φのαβ軸成分の推定値(以下、αβ軸推定磁束φ
αβ^と記載する)を求める。電機子鎖交磁束φは、モータ3の固定子(一次側)の磁束である。αβ軸推定磁束φ
αβ^は、α軸成分であるα軸推定磁束φ
α^とβ軸成分であるβ軸推定磁束φ
β^を含む。
【0020】
なお、磁束推定部14は、公知技術であり、例えば、特開2015−12770号公報や特開2015−12771号公報に開示された磁束演算器を用いることができる。なお、磁束推定部14は、αβ軸推定磁束φ
αβ^を求めることができる構成であれば、他の構成であってもよい。
【0021】
速度位置推定部15は、磁束推定部14によって推定されたαβ軸推定磁束φ
αβ^に基づいて、推定位置θ
φ^および推定速度ω^を求める。速度位置推定部15は、例えば、αβ軸推定磁束φ
αβ^を逆正接演算することによって推定位置θ
φ^を求め、さらに、かかる推定位置θ
φ^を微分して推定速度ω^を求める。なお、推定位置θ
φ^は、モータ3の回転子位置θ
φの推定値であり、回転子位置θ
φは、モータ3の回転子の電気角である。
【0022】
トルク推定部16は、αβ軸電流i
αβおよびαβ軸推定磁束φ
αβ^に基づいて推定トルクT^を演算する。推定トルクT^は、電力変換部10の出力トルクTの推定値である。出力トルクTは、モータ3に発生させるトルクであり、発生トルクTと呼ぶこともある。例えば、トルク推定部16は、T^=(φ
α^×i
β−φ
β^×i
α)×(3/2)×(P
n/2)を演算することによって、推定トルクT^を求めることができる。「P
n」は、モータ3の極数である。
【0023】
磁束指令出力部17は、αβ軸電流i
αβ、推定速度ω^および推定トルクT^に基づいて、磁束指令φ
*を生成する。駆動部18は、推定位置θ
φ^、磁束指令φ
*およびαβ軸推定磁束φ
αβ^に基づいて、電力変換部10を駆動するPWM信号S1〜S6を生成する。
【0024】
PWM信号S1〜S6によって電力変換部10のスイッチング素子Q1〜Q6がON/OFF制御され、磁束指令φ
*に応じたU相、V相およびW相の電圧が電力変換部10から出力される。これにより、モータ3の回転が制御される。なお、電力変換部10は、PWM信号S1〜S6を増幅してスイッチング素子Q1〜Q6へ出力する増幅回路を備えることもできる。
【0025】
磁束指令出力部17は、速度指令出力部21と、減算部22と、速度制御部23と、トルク制御部24と、磁束指令生成部26とを備える。速度指令出力部21は、速度指令ω
*を出力する。かかる速度指令ω
*は、モータ3の回転子の回転速度ωの目標値である。かかる回転速度ωは、電気角速度である。
【0026】
減算部22は、速度指令ω
*から推定速度ω^を減算し、速度偏差Δωを求める。速度制御部23は、速度偏差Δωがゼロになるように、かかる速度偏差Δωに対してPI(比例積分)制御を行い、トルク指令T
*を生成する。
【0027】
トルク制御部24は、トルク指令T
*および推定トルクT^に基づき、トルク偏差ΔTを求める。例えば、トルク制御部24は、トルク指令T
*と推定トルクT^との差を演算し、かかる演算結果をトルク偏差ΔTとして出力する。
【0028】
磁束指令生成部26は、αβ軸電流i
αβ、トルク偏差ΔTおよび速度指令ω
*に基づき、モータ3のトルクに対してモータ3の電流を最小にするMTPA制御(Maximum Torque Per Ampere Control)を行うための磁束指令φ
*を求める。かかる磁束指令φ
*は、モータ3の電機子鎖交磁束φの目標値である。かかる磁束指令生成部26の構成については後で詳述する。
【0029】
駆動部18は、電圧指令演算部27とPWM制御部28とを備える。電圧指令演算部27は、磁束指令φ
*およびαβ軸推定磁束φ
αβ^に基づいて、3相電圧指令v
uvw*およびαβ軸電圧指令v
αβ*を生成する。3相電圧指令v
uvw*は、U相の電圧指令v
u*、V相の電圧指令v
v*およびW相の電圧指令v
w*を含む。また、αβ軸電圧指令v
αβ*は、α軸成分であるα軸電圧指令v
α*とβ軸成分であるβ軸電圧指令v
β*を含む。
【0030】
例えば、電圧指令演算部27は、下記式(1)、(2)の演算によって、磁束指令φ
*をαβ軸磁束指令φ
αβ*へ変換する。αβ軸磁束指令φ
αβ*は、αβ軸座標系における磁束指令φ
*のα成分であるα軸磁束指令φ
α*とβ成分であるβ軸磁束指令φ
β*を含む。
【数1】
【0031】
電圧指令演算部27は、αβ軸磁束指令φ
αβ*、αβ軸推定磁束φ
αβ^、推定位置θ
φ^に基づいて、3相電圧指令v
uvw*を求める。
【0032】
例えば、電圧指令演算部27は、α軸磁束指令φ
α*とα軸推定磁束φ
α^との偏差Δφ
αがゼロになるように例えば偏差Δφ
αに対するPI(比例積分)制御を行ってα軸電圧指令v
α*を求める。また、電圧指令演算部27は、β軸磁束指令φ
β*とβ軸推定磁束φ
β^との偏差Δφ
βがゼロになるように例えば偏差Δφ
βに対するPI制御を行ってβ軸電圧指令v
β*を求める。
【0033】
また、電圧指令演算部27は、α軸電圧指令v
α*およびβ軸電圧指令v
β*を推定位置θ
φ^に同期して回転するdq軸座標系の成分へ変換して、d軸電圧指令v
d*およびq軸電圧指令v
q*を求める。電圧指令演算部27は、下記式(3)、(4)の演算によって、d軸電圧指令v
d*およびq軸電圧指令v
q*に基づき、電圧振幅Vmおよび位相θaを求める。
【数2】
【0034】
電圧指令演算部27は、位相θaに推定位置θ
φ^を加算して電圧位相θを求め、下記式(5)〜(7)の演算によって、3相電圧指令v
uvw*を求める。
【数3】
【0035】
PWM制御部28は、3相電圧指令v
uvw*に応じたPWM信号S1〜S6を生成し、電力変換部10へ出力する。これにより、U相、V相およびW相の電圧指令v
u*、v
v*、v
w*に応じたU相、V相およびW相の電圧v
u、v
v、v
wが電力変換部10からモータ3へ出力される。なお、図示しないが、PWM制御部28とスイッチング素子Q1〜Q6との間には、例えば、PWM信号S1〜S6を増幅する増幅回路を設けることができる。
【0036】
[3.磁束指令生成部26]
図2は、磁束指令生成部26の構成例を示す図である。
図2に示すように、磁束指令生成部26は、探査信号生成部39と、探査成分抽出部40と、磁束指令演算部41と、加算部42と、磁束制限部43と、MTPA停止制御部44とを備える。かかる磁束指令生成部26は、例えば、演算周期Ts毎に演算を行う。
【0037】
磁束指令生成部26の探査信号生成部39は、磁束指令φ
MTPAに重畳するための探査信号φ
hを生成する。探査信号φ
hの周波数(以下、探査信号周波数ω
hと記載する)は、モータ制御装置1やモータ3が許容する周波数帯の周波数であり適切な値に設定される。例えば、探査信号周波数ω
hは、駆動周波数ωo近傍ではない周波数であって、駆動周波数ωoよりも高い周波数にすることができる。なお、駆動周波数ωoは、電力変換部10の出力電圧の周波数である。
【0038】
探査信号生成部39は、例えば、下記式(8)の演算によって、探査信号φ
hを求める。下記式(8)において、「K
h」は、探査信号φ
hの振幅、すなわち、重畳磁束振幅を示す。「K
h」は、例えば、定格磁束φ
rateの1/100である。
【数4】
【0039】
また、探査信号生成部39は、速度指令ω
*に応じて探査信号周波数ω
hを変動させることができる。例えば、探査信号生成部39は、速度指令ω
*のn倍(nは2以上の数)の周波数を探査信号周波数ω
hとすることができる。
【0040】
探査成分抽出部40は、出力電流i
u、i
v、i
wに含まれる電流成分のうち探査信号φ
hに対応する電流成分である電流i
mhの振幅(以下、振幅I
mhと記載する)をαβ軸電流i
αβから抽出する。探査成分抽出部40は、例えば、αβ軸電流i
αβの振幅I
mのうち探査信号φ
hと同一周波数で同相の成分の振幅を振幅I
mhとして抽出する。
【0041】
磁束指令演算部41は、振幅I
mh、トルク偏差ΔTおよび速度指令ω
*に基づいて磁束指令φ
MTPAを生成する。かかる磁束指令演算部41は、ベース指令生成部45と、補正量生成部46と、補正部47とを備える。
【0042】
ベース指令生成部45は、ベース磁束指令φ
rate’を生成する。かかるベース磁束指令φ
rate’(ベース指令の一例)は、磁束指令φ
*のベースとなる磁束指令であり、例えば定格磁束φ
rateに基づいて生成される。補正量生成部46は、磁束補正量Δφ
MTPAを生成する。補正部47は、ベース磁束指令φ
rate’から磁束補正量Δφ
MTPAを減算することにより、磁束指令φ
MTPAを生成する。
【0043】
ここで、磁束指令演算部41によって生成される磁束補正量Δφ
MTPAについて説明する。
図3は、電機子鎖交磁束φと、発生トルクTと、電流振幅I
mと、負荷角ρとの関係を示す図である。負荷角ρは、磁束軸であるd軸からの電流負荷角であり、また、電流振幅I
mは、αβ軸電流i
αβの振幅である。
【0044】
図3に示すように、負荷角ρと電流振幅I
mとの関係は、電機子鎖交磁束φおよび発生トルクTのそれぞれの状態に応じて変わる。例えば、T=T
2の場合を考える。この場合、負荷角ρがB点(ρ=ρ
B)であれば、電流振幅I
mが最も小さく、このときの電機子鎖交磁束φはφ
2である。また、負荷角ρがA点(ρ=ρ
A)であれば、電機子鎖交磁束φが過剰な状態であり、負荷角ρがC点(ρ=ρ
C)であれば、電機子鎖交磁束φが不足した状態である。
【0045】
ここで、電機子鎖交磁束φに探査信号φ
hを重畳し、電流振幅I
mから探査信号φ
hと同一周波数および同相成分の電流i
mhを抽出すると仮定する。この場合、負荷角ρがA点、B点、およびC点である場合での電機子鎖交磁束φと電流i
mhとは、
図4に示すように表すことができる。
図4は、電機子鎖交磁束φと電流i
mhとの関係を示す図である。
【0046】
図4に示すように、電機子鎖交磁束φがA点から増加した場合、電流i
mhは増加し、電機子鎖交磁束φがA点から減少した場合、電流i
mhは減少する。また、電機子鎖交磁束φがC点から増加した場合、電流i
mhは減少し、電機子鎖交磁束φがC点から減少した場合、電流i
mhは増加する。一方、電機子鎖交磁束φがB点にある場合、電流i
mhはゼロになる。
【0047】
したがって、電流i
mhがゼロになるように電機子鎖交磁束φを制御することによって、高効率磁束(
図3に示すMTPA曲線上の点)に電機子鎖交磁束φを追従させることができる。磁束指令演算部41は、電流i
mhがゼロになるように磁束補正量Δφ
MTPAを演算し、かかる磁束補正量Δφ
MTPAをベース磁束指令φ
rate’から減算することによって磁束指令φ
MTPAを生成する。これにより、MTPA制御を行うことができる磁束指令φ
MTPAを生成することができる。
【0048】
ところで、電圧飽和が発生している状態では、MTPA制御を行う磁束指令φ
MTPAを生成することが難しい場合がある。そこで、磁束指令生成部26は、制限磁束φ
s_FWと磁束指令φ
*との偏差に基づき電圧飽和状態を判定する。電圧飽和が発生していると判定した場合、磁束指令生成部26は、例えば、電力変換部10の出力電圧が制限電圧を超えないように、磁束指令φ
**を制限磁束φ
s_FWに制限する。また、磁束指令生成部26は、電圧飽和が発生していると判定した場合、探査信号φ
hの重畳動作とMTPA推定動作の停止を行うことができる。
【0049】
図2に戻って、磁束指令生成部26の説明を続ける。磁束指令生成部26の加算部42は、磁束指令φ
MTPAに探査信号φ
hを加算して、磁束指令φ
**を生成する。これにより、磁束指令φ
MTPAに探査信号φ
hが重畳された磁束指令φ
**が生成される。
【0050】
磁束指令φ
**は、磁束制限部43を通じて磁束指令φ
*として出力される。磁束制限部43は、リミッタ48を備える。リミッタ48は、制限磁束φ
s_FWに基づいて磁束指令φ
*を制限する。
【0051】
例えば、リミッタ48は、制限磁束φ
s_FWに基づき、磁束指令φ
**が制限磁束φ
s_FWを超えない場合、磁束指令φ
**を磁束指令φ
*として出力する一方、磁束指令φ
**が制限磁束φ
s_FWを超える場合、磁束指令φ
*が一定値以上にならないように、磁束指令φ
*を制限する。
【0052】
また、リミッタ48は、磁束指令φ
**が制限磁束φ
s_FWを超える場合、定格磁束φ
rateの10%以下になるように磁束指令φ
*を制限することができる。これにより、電圧飽和が発生した場合に磁束指令φ
*を制限することができる。
【0053】
MTPA停止制御部44は、制限磁束φ
s_FWと磁束指令φ
*との偏差Δφが予め設定された閾値φ
STOP以下になった場合、探査信号生成部39および磁束指令演算部41へローアクティブの停止指令S
STOPを出力する。かかる停止指令S
STOPは、例えば、S
STOP=K
h×K
bであり、K
bは、例えば、1〜10の範囲である。
【0054】
このように、MTPA停止制御部44は、制限磁束φ
s_FWと磁束指令φ
*との偏差Δφが、探査信号φ
hの振幅K
hに対して所定の大きさ以下になった場合に、ローアクティブの停止指令S
STOPを出力する。これにより、電圧飽和が発生した場合に、探査信号φ
hの重畳動作およびMTPA推定動作が共に停止され、磁束指令φ
*の生成動作が停止される。
【0055】
このように、磁束指令生成部26は、磁束指令φ
MTPAに探査信号φ
hを重畳して磁束指令φ
*を生成し、電流振幅I
mのうち探査信号φ
hと同一周波数で同相の成分を抽出し、かかる抽出成分がゼロになるように磁束指令φ
MTPAを生成する。
【0056】
これにより、実施形態にかかるモータ制御装置1は、モータ特性を事前に把握することなく高効率運転を行うことができる。以下、磁束指令生成部26の構成についてさらに詳細に説明する。
【0057】
[3.1.探査信号生成部39]
図5は、探査信号生成部39の構成例を示す図である。
図5に示すように、探査信号生成部39は、積分部51と、正弦演算部52と、増幅部53と、乗算部54とを備える。積分部51は、探査信号周波数ω
hを積分して、探査信号位相θ
hを求める。
【0058】
かかる積分部51は、増幅部55と、加算部56と、遅延部57とを備える。増幅部55は、探査信号周波数ω
hをTs倍にする。加算部56は、増幅部55の演算結果と遅延部57の遅延結果とを加算して探査信号位相θ
hを求める。遅延部57は、1演算周期Tsだけ探査信号位相θ
hを遅延させる。
【0059】
正弦演算部52は、探査信号位相θ
hに基づいて、sinθ
hを求める。増幅部53は、ゲインKにより停止指令S
STOPをK倍する。乗算部54は、sinθ
hに増幅部53の増幅結果を乗算して探査信号φ
h(=K×S
STOP×sinθ
h)を求める。なお、ゲインKは、上述した式(8)の「K
h」に対応し、例えば、定格磁束φ
rateに対し1〜100[%]程度である。
【0060】
[3.2.MTPA停止制御部44]
次に、MTPA停止制御部44について説明する。
図6は、MTPA停止制御部44の構成例を示す図である。
【0061】
図6に示すように、MTPA停止制御部44は、遅延部50と、減算部58と、停止信号出力部59を備える。遅延部50は、磁束指令φ
*を1演算周期Ts分遅延させる。減算部58は、遅延部50によって遅延された磁束指令φ
*を制限磁束φ
s_FWから減算し、制限磁束φ
s_FWと磁束指令φ
*との偏差Δφを求める。停止信号出力部59は、制限磁束φ
s_FWと磁束指令φ
*との偏差Δφに応じた停止指令S
STOPを出力する。例えば、停止信号出力部59は、偏差Δφが閾値φ
STOP以上である場合に、S
STOP=1に設定し、偏差Δφが閾値φ
STOP未満である場合、S
STOP=0に設定する。
【0062】
なお、停止信号出力部59は、偏差Δφが閾値φ
STOP未満である場合、偏差Δφが小さくなるほど停止指令S
STOPが「0」に近づくように停止指令S
STOPを出力することもできる。これにより、偏差Δφが閾値φ
STOPの前後で変動した場合であっても、停止指令S
STOPが「1」と「0」とを繰り返すことを防止することができる。
【0063】
[3.3.ベース指令生成部45]
次に、ベース指令生成部45の構成を説明する。
図7は、ベース指令生成部45の構成例を示す図である。
【0064】
図7に示すように、ベース指令生成部45は、定格磁束出力部60と、ローパスフィルタ(LPF)64とを備え、ベース磁束指令φ
rate’を生成する。
【0065】
定格磁束出力部60は、定格周波数ω
rate[rad/s]と定格電圧V
rate[Vrms]とに基づいて、定格磁束φ
rateを演算する。定格磁束出力部60は、例えば、下記式(9)の演算により、定格磁束φ
rateを求めることができる。
【数5】
【0066】
なお、定格周波数ω
rateは、下記式(10)に示すように、モータ3の定格回転数N
rateおよび極数P
nに基づいて求められる。かかる定格周波数ω
rateは、例えば、モータ制御装置1の入力部(図示せず)から入力することができ、入力された定格周波数ω
rateの情報は、制御部12に設定される。なお、定格回転数N
rateおよび極数P
nが入力部から入力される場合、定格磁束出力部60は、下記式(10)に基づいて定格周波数ω
rateを求めることができる。
【数6】
【0067】
また、定格電圧V
rateは、例えば、モータ3の定格電圧または電力変換部10の定格電圧である。かかる定格電圧V
rateは、例えば、モータ制御装置1の入力部(図示せず)から入力することができ、入力された定格電圧V
rateの情報は、制御部12に設定される。
【0068】
ローパスフィルタ64は、定格磁束φ
rateに対してローパスフィルタ処理を行ってベース磁束指令φ
rate’として出力する。このように、ローパスフィルタ処理により1次遅れ処理を行うのは、起動時に電力変換部10の出力電流が過度に流れることを抑制するためである。
【0069】
[3.4.補正量生成部46]
次に、補正量生成部46について説明する。
図8は、補正量生成部46の構成例を示す図である。
【0070】
図8に示すように、補正量生成部46は、乗算部66と、アンチワインドアップ制御部67と、加算部68と、積分部69と、インパクト磁束ブースト部70とを備える。
【0071】
乗算部66は、電流i
mhの振幅I
mhに停止指令S
STOPを乗算する。これにより、例えば、停止指令S
STOPが「1」である場合には、電流i
mhの振幅I
mhがそのまま乗算部66から出力される。一方、停止指令S
STOPが「0」である場合には、乗算部66の乗算結果がゼロになり、補正量生成部46による磁束補正量Δφ
MTPAの演算が停止する。
【0072】
アンチワインドアップ制御部67は、MTPA停止制御部44が探査信号φ
hの重畳動作とMTPA推定動作の停止を行った場合に、制限磁束φ
s_FWと磁束指令φ
*との偏差Δφに一致するように積分部69の出力を制御する。かかるアンチワインドアップ制御部67は、例えば、磁束指令φ
**と磁束指令φ
*との差に応じた電流量i
AW(以下、電流i
AWと記載する)を求め、積分部69の出力を制御する。
【0073】
加算部68は、乗算部66による乗算結果にアンチワインドアップ制御部67の電流i
AWを加算する。積分部69は、加算部68の加算結果を積分して磁束補正量Δφ
MTPAを生成する。
【0074】
インパクト磁束ブースト部70は、トルク偏差ΔTおよび電流振幅I
mに基づき、インパクト的に負荷が増加した場合に、磁束補正量Δφ
MTPAを迅速に変化させるためのインパクト磁束ブースト補正値Δφ
IMPを出力する。
【0075】
積分部69は、インパクト磁束ブースト部70のインパクト磁束ブースト補正値Δφ
IMPに基づいて、磁束補正量Δφ
MTPAを調整することができる。これにより、インパクト的に負荷が増加した場合に、磁束補正量Δφ
MTPAを迅速に変化させることができ、例えば、磁束の不足による脱調などを抑制することができる。
【0076】
[3.5.探査成分抽出部40および補正量生成部46]
図9は、探査成分抽出部40および補正量生成部46の構成例を示す図である。以下、探査成分抽出部40、補正量生成部46のアンチワインドアップ制御部67、積分部69およびインパクト磁束ブースト部70の順に説明する。
【0077】
[3.5.1.探査成分抽出部40]
図9に示すように、探査成分抽出部40は、振幅検出部71と、バンドパスフィルタ(BPF)72と、乗算部73と、ローパスフィルタ(LPF)74とを備える。振幅検出部71は、例えば、下記式(11)に示すαβ軸電流i
αβの2乗和平方根を演算することにより、αβ軸電流i
αβの電流振幅I
mを演算する。
【数7】
【0078】
バンドパスフィルタ72は、探査信号周波数ω
hよりも低い周波数成分と探査信号周波数ω
hよりも高い周波数成分を除去するバンドパスフィルタ処理を電流振幅I
mに対して行うことによって、電流振幅I
mのうち探査信号周波数ω
hと同一周波数の成分の電流I
m_BPFを抽出する。なお、バンドパスフィルタ72は、探査信号周波数ω
hよりも高い周波数成分を除去するローパスフィルタと探査信号周波数ω
hよりも低い周波数成分を除去するハイパスフィルタとを有する構成であってもよい。
【0079】
乗算部73は、電流I
m_BPFにsinθ
hを乗算し、ローパスフィルタ74は、乗算部73の乗算結果にローパスフィルタ処理を行う。これにより、電流I
m_BPFのうち探査信号位相θ
hと同相の電流i
mhの直流成分が抽出される。ローパスフィルタ74によって抽出される電流i
mhの直流成分は、電流i
mhの振幅I
mhである。なお、かかる処理は、ヘテロダイン処理とも呼ばれる。
【0080】
[3.5.2.アンチワインドアップ制御部67]
アンチワインドアップ制御部67は、減算部75と、遅延部76と、増幅部77とを備える。減算部75は、磁束指令φ
**から磁束指令φ
*を減算する。遅延部76は、減算部75の減算結果Δφ
*を1演算周期Ts分遅延させる。
【0081】
増幅部77は、遅延部76によって遅延された減算結果Δφ
*をK
a倍することによって、アンチワインドアップ制御のための電流i
AWを生成する。ゲインK
aは、磁束から電流への換算のための係数であり、例えば、下記式(12)に示すように表すことができる。式(12)中の「I
rate」は、モータ3の定格電流であり、「L」は、モータ3のリアクタンスである。
【数8】
【0082】
磁束制限部43によって磁束指令φ
*が制限されていない場合、磁束指令φ
**がそのまま磁束指令φ
*として磁束制限部43から出力されることから、磁束指令φ
**と磁束指令φ
*とが同じである。そのため、アンチワインドアップ制御部67から出力される電流i
AWは、ゼロである。
【0083】
一方、磁束制限部43によって磁束指令φ
*が制限された場合、アンチワインドアップ制御部67から出力される電流i
AWは、磁束指令φ
**と磁束指令φ
*との差に応じた電流である。したがって、乗算部66の乗算結果に対して、磁束指令φ
**と磁束指令φ
*との差に応じた電流量が加算される。
【0084】
[3.5.3.積分部69]
積分部69は、増幅部78、80と、加算部79、81と、リミッタ82と、遅延部83とを備える。増幅部78は、加算部68の加算結果をK
i倍する。積分ゲインK
iは、例えば、下記式(13)に示すように表すことができる。式(13)において、ω
MTPA[rad/s]は、MTPA制御応答の速度を示し、例えば、2πである。
【数9】
【0085】
加算部79は、増幅部78の増幅結果にインパクト磁束ブースト補正値Δφ
IMPを加算する。増幅部80は、加算部79の加算結果をTs倍する。加算部81は、遅延部83によって1演算周期Tsだけ遅延された磁束補正量Δφ
MTPAを増幅部80の増幅結果に加算する。リミッタ82は、加算部81の加算結果を所定範囲内に制限する。
【0086】
[3.5.4.インパクト磁束ブースト部70]
インパクト磁束ブースト部70は、絶対値演算部84、88と、係数出力部85と、リミッタ86と、乗算部87と、除算部89と、増幅部90とを備える。絶対値演算部84は、速度指令ω
*の絶対値を演算する。
【0087】
係数出力部85は、速度指令ω
*の絶対値|ω
*|に応じた係数K
ωを出力する。かかる係数K
ωは、例えば、絶対値|ω
*|が所定値ω
th1未満の場合に、「0」であり、絶対値|ω
*|が所定値ω
th1以上所定値ω
th2未満の場合に、絶対値|ω
*|が大きいほど「1」に近づき、絶対値|ω
*|が所定値ω
th2以上の場合に「1」である。
【0088】
リミッタ86は、トルク偏差ΔTを所定範囲内に制限する。例えば、リミッタ86は、定格トルクT
rateとトルク指令T
*とに基づき、T
*>0である場合(力行運転時)、ΔT<T
rate×0.1であれば、トルク偏差ΔTをゼロにする。また、リミッタ86は、T
*<0である場合(回生運転時)、ΔT>−T
rate×0.1であれば、トルク偏差ΔTをゼロにする。
【0089】
これにより、インパクト磁束ブースト部70は、トルクが増加した場合にトルク偏差ΔTに応じたインパクト磁束ブースト補正値Δφ
IMPを出力し、トルクが減少する場合には、インパクト磁束ブースト補正値Δφ
IMPをゼロに設定して出力することができる。なお、リミッタ86には、力行運転と回生運転との間の状態変化におけるリミット動作にヒステリシスを設けられる。
【0090】
乗算部87は、リミッタ86から出力されるトルク偏差ΔTに係数K
ωを乗算する。これにより、速度指令ω
*が所定値ω
th1未満の場合に、トルク偏差ΔTに応じたインパクト磁束ブースト補正値Δφ
IMPが出力されることが抑制される。
【0091】
絶対値演算部88は、乗算部87の乗算結果の絶対値を演算する。除算部89は、絶対値演算部88によって演算された絶対値を電流振幅I
mで除算する。これにより、不足分の磁束を算出することができる。増幅部90は、ゲインK
IMPを有しており、除算部89の除算結果をK
IMP倍してインパクト磁束ブースト補正値Δφ
IMP(=K
IMP×(|K
ω×ΔT|/I
m))を生成する。
【0092】
[4.磁束指令φ
*の生成処理]
次に、磁束指令φ
*の生成処理の流れを説明する。
図10は、磁束指令φ
*の生成処理の流れを示すフローチャートである。かかる磁束指令φ
*の生成処理は、モータ制御装置1によって繰り返し実行される。
【0093】
図10に示すように、電流検出部11は、電力変換部10からモータ3のU相、V相およびW相の各相に流れる相電流として出力電流i
oを検出する(ステップS10)。制御部12は、出力電流i
oに含まれる電流成分のうち探査信号φ
hに対応する成分を抽出する(ステップS11)。
【0094】
制御部12は、探査信号φ
hに対応する成分が低減するように磁束指令φ
*を生成する(ステップS12)。制御部12は、生成した磁束指令φ
*に基づいて電力変換部10を駆動する(ステップS13)。
【0095】
なお、上述した磁束指令生成部26は、探査信号φ
hに対応する成分として、電流i
mhの振幅I
mhを抽出し、かかる振幅I
mhが低減するように磁束指令φ
*を生成するが、かかる構成に限定されない。例えば、磁束指令生成部26は、結果的に電流i
mhが低減するように磁束指令φ
*を生成することができればよく、例えば、電流i
mhの振幅I
mhに代えて、電流i
mhを抽出し、かかる電流i
mhが低減するように磁束指令φ
*を生成する構成であってもよい。
【0096】
また、上述した磁束指令生成部26は、ベース磁束指令φ
rate’から磁束補正量Δφ
MTPAを減算することによって磁束指令φ
MTPAを生成するが、ベース磁束指令φ
rate’を用いずに、磁束補正量Δφ
MTPAを磁束指令φ
MTPAとすることもできる。
【0097】
また、上述した磁束指令生成部26は、MTPA停止制御部44、アンチワインドアップ制御部67およびインパクト磁束ブースト部70などを設けたが、例えば、モータ3の種別や動作環境によっては、これらを設けなくてもよい場合がある。
【0098】
なお、上述した例では、磁束指令生成部26から電圧指令演算部27へ磁束指令φ
*を出力するが、磁束指令生成部26から電圧指令演算部27へαβ軸磁束指令φ
αβ*を出力する構成であってもよい。この場合、磁束指令生成部26は、上記式(1)、(2)の演算を行う。
【0099】
以上のように、実施形態に係るモータ制御装置1は、駆動部18と、電流検出部11と、磁束指令生成部26(指令生成部の一例)とを備える。駆動部18は、探査信号φ
hが重畳された磁束指令φ
*に基づいて電力変換部10を駆動する。電流検出部11は、駆動部18によって駆動された電力変換部10の出力電流を検出する。磁束指令生成部26は、電流検出部11によって検出された出力電流i
u、i
v、i
w(検出電流の一例)に含まれる電流成分のうち探査信号φ
hに対応する電流i
mhの成分(例えば、電流i
mhの振幅I
mh)が低減するように磁束指令φ
*を生成する。これにより、モータ制御装置1は、モータ3のモータ特性を事前に測定することなく、高効率運転を行うことができる。
【0100】
また、磁束指令生成部26は、探査成分抽出部40(抽出部の一例)と、磁束指令演算部41(演算部の一例)とを備える。探査成分抽出部40は、電流検出部11によって検出された出力電流i
oに含まれる電流i
mhの成分(例えば、電流i
mhの振幅I
mh)を抽出する。磁束指令演算部41は、探査成分抽出部40によって抽出される電流i
mhの成分が低減するように磁束指令φ
*を演算する。このように、探査信号φ
hに対応する電流i
mhを抽出することから、高効率運転を精度よく行うことができる。
【0101】
磁束指令演算部41は、探査成分抽出部40によって電流i
mhの成分がゼロになるように磁束指令φ
*を演算する。探査信号φ
hに対応する電流i
mhがゼロになることで、発生トルクTに対して電流を最小にすることができるため、高精度な高効率運転を行うことができる。
【0102】
磁束指令演算部41は、ベース指令生成部45と、補正量生成部46と、補正部47を備える。ベース指令生成部45は、磁束指令φ
*のベースとなるベース磁束指令φ
rate’を生成する。補正量生成部46は、探査成分抽出部40によって抽出された電流i
mhの成分に基づいて電流i
mhを低減する磁束補正量Δφ
MTPAを生成する。補正部47はベース磁束指令φ
rate’を磁束補正量Δφ
MTPAによって補正して磁束指令φ
*を生成する。これにより、磁束指令φ
*のベースとなるベース磁束指令φ
rate’から負荷に応じて磁束指令φ
*を減じるように動作することから、例えば、モータ3の制御を開始する際に磁束が不足することを回避することができる。
【0103】
また、ベース指令生成部45は、ローパスフィルタ64で定格磁束φ
rate(予め設定された原指令の一例)にローパスフィルタ処理を行ってベース磁束指令φ
rate’を生成する。このように、ローパスフィルタ処理を施すことにより、一次遅れを発生させることができることから起動時の電流を抑制することができる。
【0104】
補正量生成部46は、積分部69を備える。積分部69は、探査成分抽出部40によって抽出された電流i
mhの成分(例えば、電流i
mhの振幅I
mh)を積分して磁束補正量Δφ
MTPAを生成する。これにより、電流成分を低減するように磁束補正量Δφ
MTPAを適切に生成することができる。
【0105】
実施形態に係るモータ制御装置1は、速度制御部23(トルク指令生成部の一例)と、トルク推定部16とを備える。速度制御部23は、トルク指令T
*を生成する。トルク推定部16は、電力変換部10の出力トルクTの推定値である推定トルクT^を求める。補正量生成部46は、インパクト磁束ブースト部70(調整部の一例)を備える。インパクト磁束ブースト部70は、トルク指令T
*と推定トルクT^との差ΔTに基づいて磁束補正量Δφ
MTPAを調整する。これにより、例えば、急な負荷変化があった場合などにおいて、磁束を急峻に変化させることができ、高効率運転を精度よく行うことができる。
【0106】
インパクト磁束ブースト部70は、トルク指令T
*と推定トルクT^との差ΔTを出力電流i
oの振幅I
mによって除算した結果に基づいて、磁束補正量Δφ
MTPAを調整する。これにより、例えば、急な負荷変化があった場合などにおいて、磁束を精度よく変化させることができる。
【0107】
このように、モータ制御装置1は、「探査信号が重畳された磁束指令に基づいた電流をモータに流す電力変換部」と「前記電流に含まれる電流成分のうち前記探査信号に対応する電流成分に基づいて前記電力変換部から流れる電流が小さくなるように磁束指令を生成する手段」を備える。電力変換部10は、「探査信号が重畳された磁束指令に基づいた電流をモータに流す電力変換部」の一例であり、磁束指令生成部26は、「前記電流に含まれる電流成分のうち前記探査信号に対応する電流成分に基づいて前記電力変換部から流れる電流が小さくなるように磁束指令を生成する手段」の一例である。
【0108】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。