(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基準モード走行中の各時刻におけるアクセルからブレーキへの切換え判定点を結んだ、アクセルからブレーキへの切換え線を第1の切換え線と定義し、基準モード走行中の各時刻におけるブレーキからアクセルへの切換え判定点を結んだ、ブレーキからアクセルへの切換え線を第2の切換え線と定義し、
各判定基準点の時刻で検出した車速が前記第1の切換え線を上回ったときにアクセルからブレーキに切換え、各判定基準点の時刻で検出した車速が前記第2の切換え線を下回ったときにブレーキからアクセルに切換える切換え制御部を備えた請求項1又は2に記載の車両試験装置。
【背景技術】
【0002】
従来からシャシーダイナモメータ上で試験車両を走行させて試験車両の燃費や排出ガス等の各種性能試験が行われている。この性能試験は、例えば
図9に示す燃費消費率試験(JC08モード)のように、時刻と車速から定義される運転パターンに従って、アクセルとブレーキとシフト操作(マニュアルトランスミッション車においてはクラッチ操作も)を適切に行って走行させる。
【0003】
走行するにあたって、例えば
図10に示すように、時刻と車速から定められる基準モード(基準走行モード)の基準点と±2.0km/h(日本・欧州の場合は±2.0km/h、米国の場合は±2.0mile/h)、±1.0秒の許容値からなる四角で定められる上限許容線と下限許容線の内側を走行しなければならない。
【0004】
図10において、上限許容線は、基準モードのある時刻における基準点から+2.0km/h、+1.0秒外れた上限点を各時刻毎に結んだ線であり、下限許容線は、基準モードのある時刻における基準点から−2.0km/h、−1.0秒外れた下限点を各時刻毎に結んだ線である。
【0005】
この際、車速は試験車両側のアクセル操作とブレーキ操作により車速追従制御がなされ、シャシーダイナモメータは、試験車両のタイヤに接するローラにより仮想路面抵抗(負荷)が生ずるように車速に応じた負荷駆動パターンで駆動制御される。
【0006】
前記アクセル操作、ブレーキ操作は運転者が行うに限らず、運転操作ロボットが行う場合もある。
【0007】
前記車速の制御は、例えば予め運転パターンに従って基準モードに沿うよう走行制御して得た車速データを蓄積しておき、試験時にその蓄積された車速データを車速指令とし、該車速指令と検出した車速との車速偏差に基づいて車速追従制御がなされる。
【0008】
尚、特許文献1には、前記車速偏差に基づいてアクセルとブレーキを切換えるためのブレーキ作動タイミング自動判別回路が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1を含めた従来の車速制御は、主に基準指令と車速検出の差分である車速偏差に注目し、基準車速への追従性向上を図っていた。
【0011】
しかし、基準(走行)モードの傾斜が増すにつれて、その過渡における追従性が必要となり車速偏差は大きくなりやすく、アクセルとブレーキの切換えが発生しやすい。このように従来は、基準モードの傾きに応じた適切な車速偏差に基づく車速制御はなされていなかった。
【0012】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、基準モードの傾きに応じた適切な、アクセルとブレーキを切換えるための車速偏差データを得ることができる車両試験装置および車両試験装置の車速偏差算出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための請求項1に記載の車両試験装置は、シャシーダイナモメータ上で車両を走行させて車両の各種試験を行う車両試験装置において、
時刻と車速から定義される車両の運転パターンの基準モードに沿って、該基準モードから所定速度、所定時間ずれた範囲内で走行させるように車速追従制御を行うときの、アクセルからブレーキへ切換えるための第1の切換え車速偏差、又はブレーキからアクセルへ切換えるための第2の切換え車速偏差のうち、少なくともいずれか一方を算出する車速偏差算出部を備え、
前記車速偏差算出部は、
前記運転パターンの基準モード上の現在時刻における判定基準点の車速を近似微分して基準モードの第1の傾斜を演算し、前記基準モードの第1の傾斜に、アクセルからブレーキに切換えるときの時間のずれを設定した第1の切換え時間偏差設定値を乗算し、前記乗算値に、アクセルからブレーキに切換えるときの車速のずれを設定した第1の切換え車速偏差設定値を加算することによって、前記判定基準点から、現在時刻におけるアクセルからブレーキへの切換え判定点までの第1の切換え車速偏差を算出する第1の算出処理か、
又は、前記運転パターンの基準モード上の現在時刻における判定基準点の車速を近似微分して基準モードの第2の傾斜を演算し、前記基準モードの第2の傾斜に、ブレーキからアクセルに切換えるときの時間のずれを設定した第2の切換え時間偏差設定値を乗算し、前記乗算値に、ブレーキからアクセルに切換えるときの車速のずれを設定した第2の切換え車速偏差設定値を加算することによって、前記判定基準点から、現在時刻におけるブレーキからアクセルへの切換え判定点までの第2の切換え車速偏差を算出する第2の算出処理、
のうち少なくともいずれか一方を実行することを特徴としている。
【0014】
また、
請求項4に記載の車両試験装置の車速偏差算出方法は、シャシーダイナモメータ上で車両を走行させて車両の各種試験を行う車両試験装置における、
時刻と車速から定義される車両の運転パターンの基準モードに沿って、該基準モードから所定速度、所定時間ずれた範囲内で走行させるように車速追従制御を行うときの、アクセルからブレーキへ切換えるための第1の切換え車速偏差、又はブレーキからアクセルへ切換えるための第2の切換え車速偏差のうち、少なくともいずれか一方を算出する車速偏差算出方法であって、
前記運転パターンの基準モード上の現在時刻における判定基準点の車速を近似微分して基準モードの第1の傾斜を演算し、前記基準モードの第1の傾斜に、アクセルからブレーキに切換えるときの時間のずれを設定した第1の切換え時間偏差設定値を乗算し、前記乗算値に、アクセルからブレーキに切換えるときの車速のずれを設定した第1の切換え車速偏差設定値を加算することによって、前記判定基準点から、現在時刻におけるアクセルからブレーキへの切換え判定点までの第1の切換え車速偏差を算出する第1の算出処理か、
又は、前記運転パターンの基準モード上の現在時刻における判定基準点の車速を近似微分して基準モードの第2の傾斜を演算し、前記基準モードの第2の傾斜に、ブレーキからアクセルに切換えるときの時間のずれを設定した第2の切換え時間偏差設定値を乗算し、前記乗算値に、ブレーキからアクセルに切換えるときの車速のずれを設定した第2の切換え車速偏差設定値を加算することによって、前記判定基準点から、現在時刻におけるブレーキからアクセルへの切換え判定点までの第2の切換え車速偏差を算出する第2の算出処理、
のうち少なくともいずれか一方を実行することを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、基準モードの現在時刻の傾きに応じた、適切なアクセルとブレーキを切換えるための車速偏差(アクセルからブレーキへ切換える第1の切換え車速偏差、ブレーキからアクセルへ切換える第2の切換え車速偏差)のデータが得られる。このため、この切換え車速偏差データを用いてアクセル、ブレーキを操作することにより、車速追従制御の車速追従性能が向上する。
【0016】
また、請求項2に記載の車両試験装置は、請求項1において、
前記基準モードのある時刻における基準点から所定速度、所定時間外れた上限点を各時刻毎に結んだ線を上限許容線とし、
前記基準モードのある時刻における基準点から所定速度、所定時間外れた下限点を各時刻毎に結んだ線を下限許容線とし、
前記基準モード走行中の各時刻におけるアクセルからブレーキへの切換え判定点を結んだ線をアクセルからブレーキへの切換え線とし、
前記基準モード走行中の各時刻におけるブレーキからアクセルへの切換え判定点を結んだ線をブレーキからアクセルへの切換え線とし、
前記第1又は第2の切換え時間偏差設定値および第1又は第2の切換え車速偏差設定値の少なくともいずれか一方を、前記アクセルからブレーキへの切換え線又はブレーキからアクセルへの切換え線の少なくともいずれか一方が前記上限許容線又は下限許容線を超えることのない第3の設定値に各々設定したことを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、アクセルからブレーキへの切換え線、ブレーキからアクセルへの切換え線を基準モードに近くすることができるので、基準モードに沿った走行を実現することができる。
また、アクセルからブレーキへの切換え線、ブレーキからアクセルへの切換え線を基準モードから遠くすることができ、基準モードの上限、下限許容線を超えることなく、アクセルとブレーキの切換えの頻度を少なくすることができる。これによって、車速の許容範囲内で燃費・排出ガスの良い運転を行うことができる。
【0020】
また、
請求項3に記載の車両試験装置は、請求項
1又は2において、基準モード走行中の各時刻におけるアクセルからブレーキへの切換え判定点を結んだ、アクセルからブレーキへの切換え線を第1の切換え線と定義し、基準モード走行中の各時刻におけるブレーキからアクセルへの切換え判定点を結んだ、ブレーキからアクセルへの切換え線を第2の切換え線と定義し、
各判定基準点の時刻で検出した車速が前記第1の切換え線を上回ったときにアクセルからブレーキに切換え、各判定基準点の時刻で検出した車速が前記第2の切換え線を下回ったときにブレーキからアクセルに切換える切換え制御部を備えたことを特徴としている。
【0021】
上記構成によれば、基準モードに沿い且つ基準モードの上限、下限許容線を超えることなく運転制御することができる。
【発明の効果】
【0022】
(1)請求項
1〜4に記載の発明によれば、基準モードの現在時刻の傾きに応じた、適切なアクセルとブレーキを切換えるための車速偏差(アクセルからブレーキへ切換える第1の切換え車速偏差、ブレーキからアクセルへ切換える第2の切換え車速偏差)のデータが得られる。このため、この切換え車速偏差データを用いてアクセル、ブレーキを操作することにより、車速追従制御の車速追従性能が向上する。
(2)請求項2に記載の発明によれば、アクセルからブレーキへの切換え線、ブレーキからアクセルへの切換え線を基準モードに近くすることができるので、基準モードに沿った走行を実現することができる。
また、アクセルからブレーキへの切換え線、ブレーキからアクセルへの切換え線を基準モードから遠くすることができ、基準モードの上限、下限許容線を超えることなく、アクセルとブレーキの切換えの頻度を少なくすることができる。これによって、車速の許容範囲内で燃費・排出ガスの良い運転を行うことができる。
(3)請求項3に記載の発明によれば、基準モードに沿い且つ基準モードの上限、下限許容線を超えることなく運転制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。
図1は、本発明により求めた切換え車速偏差のデータを用いて、試験車両のアクセルとブレーキを切換え制御して走行させる運転パターンの一例を示している。
【0025】
図1の上限許容線、下限許容線は、
図10で述べた、基準モード上の基準点と±2.0km/h、±1.0秒の許容値からなる四角で定められた線であり、この上限許容線と下限許容線の内側を走行するよう日本の規格で定められている。
【0026】
本実施形態例では、以下の方針で上限許容線と下限許容線の内側を走行させる。
(1)アクセルで基準モードへ追従する場合
(1a)基準モードの上限許容線まで遠い場合は、アクセルを増減させながら(制御しながら)、基準モードに近づくよう走行する。
(1b)基準モードの上限許容線に近づいた場合は、アクセルを離しブレーキを踏む。
(2)ブレーキで基準モードへ追従する場合
(2a)基準モードの下限許容線まで遠い場合は、ブレーキを増減させながら(制御しながら)、基準モードに近づくよう走行する。
(2b)基準モードの下限許容線に近づいた場合は、ブレーキを離しアクセルを踏む。
【0027】
前記(1b)、(2b)においてアクセルとブレーキの切換え操作を行う場合、上限許容線・下限許容線の各々内側で実施する必要がある。このため
図2に示すように、実線の長方形の内側にアクセル・ブレーキ切換えに関する一点鎖線の長方形を設定する。
図2において
図10と同一部分は同一符号をもって示している。
【0028】
図2において、一点鎖線で示す切換えに関する長方形の長辺は、予め設定した、アクセルからブレーキへの切換え車速偏差(アクセルからブレーキに切換えるときの車速のずれを設定した第1の切換え車速偏差設定値)と、ブレーキからアクセルへの切換え車速偏差(ブレーキからアクセルに切換えるときの車速のずれを設定した第2の切換え車速偏差設定値)とから成る。
【0029】
一点鎖線で示す切換えに関する長方形の短辺は、予め設定した、アクセルからブレーキへの切換え時間偏差(アクセルからブレーキに切換えるときの時間のずれを設定した第1の切換え時間偏差設定値)と、ブレーキからアクセルへの切換え時間偏差(ブレーキからアクセルに切換えるときの時間のずれを設定した第2の切換え時間偏差設定値)とから成る。
【0030】
次に、アクセルからブレーキへ切換えるための切換え車速偏差(第1の切換え車速偏差)を算出し、その算出値に基づいてアクセルからブレーキへの切換え線を求める方法、およびブレーキからアクセルへ切換えるための切換え車速偏差(第2の切換え車速偏差)を算出し、その算出値に基づいてブレーキからアクセルへの切換え線を求める方法を
図3〜
図7を用いて説明する。尚、
図3〜
図6で表記した「AC」はアクセル、「BR」はブレーキを各々示している。
【0031】
本実施形態例では、前記第1の切換え車速偏差、第2の切換え車速偏差を算出する際に、基準モードの傾斜に対応するため、時間偏差を加味した。
(1)アクセルからブレーキへの切換え車速偏差の算出方法と切換え動作
図3の実線で示す運転目標車速は、
図2の運転パターンの基準モードと同様に、基準車速に対し、例えば
図1の折線部分を滑らかにしたり、運転パターンのかさ上げ等の加工を行った、車速制御器への参照入力である(基準車速そのものを使用する場合もある)。
【0032】
運転目標車速の点Aをある時刻における切換え判定の基準点とし、判定基準点Aから時間軸方向に、アクセルからブレーキに切換えるときの時間のずれをアクセル→ブレーキ切換え時間偏差Δt
-1として設定し、判定基準点Aから車速軸方向に、アクセルからブレーキに切換えるときの車速のずれをアクセル→ブレーキ切換え車速偏差Δv
-1として設定し、A点からΔt
-1且つΔv
-1離れた点をBとする。
【0033】
そして、判定基準点Aの運転目標車速を差分法等で近似微分して傾斜AB(第1の傾斜:加速度)を算出し、傾斜ABを車速軸の増速方向に同じ長さでΔv
-1平行移動した点をC、Dとする。
【0034】
次に傾斜CD(第1の傾斜ABと同義)に、前記アクセル→ブレーキ切換え時間偏差Δt
-1(=CB)を乗じて車速偏差CE(=Δvt
-1)を算出する。
【0035】
次にアクセル→ブレーキ切換え車速偏差(設定値)Δv
-1(AC)と前記乗算値である車速偏差Δvt
-1(CE)を合算してアクセルからブレーキへ切換えるための車速偏差(AEの長さ;第1の切換え車速偏差)とする。
【0036】
E点が、ある時刻におけるアクセルからブレーキへの切換え判定点となる。そして各時刻で算出した切換え判定点Eを接続する(結ぶ)ことでアクセルからブレーキへの切換え線(一点鎖線;
図2の実線の上限許容線よりも内側の一点鎖線)となる。
【0037】
実際の試験走行では、
図4のように、切換え判定の基準点Aの時刻で、太実線で示す車速検出(値)がアクセルからブレーキへの切換え線を上回った際に、アクセルからブレーキに切換える。尚、
図4において
図3と同一部分は同一符号をもって示している。
(2)ブレーキからアクセルへの切換え車速偏差の算出方法と切換え動作
図5の実線で示す運転目標車速は、
図2の運転パターンの基準モードと同様に、基準車速に対し、例えば
図1の折線部分を滑らかにしたり、運転パターンのかさ上げ等の加工を行った、車速制御器への参照入力である(基準車速そのものを使用する場合もある)。
【0038】
運転目標車速の点Aをある時刻における切換え判定の基準点とし、判定基準点Aから時間軸方向に、ブレーキからアクセルに切換えるときの時間のずれをブレーキ→アクセル切換え時間偏差Δt
-2として設定し、判定基準点Aから車速軸方向に、ブレーキからアクセルに切換えるときの車速のずれをブレーキ→アクセル切換え車速偏差Δv
-2として設定し、A点からΔt
-2且つΔv
-2離れた点をBとする。
【0039】
そして、判定基準点Aの運転目標車速を差分法等で近似微分して傾斜AB(第2の傾斜:減速度)を算出し、傾斜ABを車速軸の減速方向に同じ長さでΔv
-2平行移動した点をC、Dとする。
【0040】
次に傾斜CD(第2の傾斜ABと同義)に、前記ブレーキ→アクセル切換え時間偏差Δt
-2(=CB)を乗じて車速偏差CE(=Δvt
-2)を算出する。
【0041】
次にブレーキ→アクセル切換え車速偏差(設定値)Δv
-2(AC)と前記乗算値である車速偏差Δvt
-2(CE)を合算してブレーキからアクセルへ切換えるための車速偏差(AEの長さ;第2の切換え車速偏差)とする。
【0042】
E点が、ある時刻におけるブレーキからアクセルへの切換え判定点となる。そして各時刻で算出した切換え判定点Eを接続する(結ぶ)ことでブレーキからアクセルへの切換え線(一点鎖線;
図2の実線の下限許容線よりも内側の一点鎖線)となる。
【0043】
実際の試験走行では、
図6のように、切換え判定の基準点Aの時刻で、太実線で示す車速検出(値)がブレーキからアクセルへの切換え線を下回った際に、ブレーキからアクセルに切換える。尚、
図6において
図5と同一部分は同一符号をもって示している。
【0044】
アクセルからブレーキへの切換えもしくはブレーキからアクセルへの切換えは、走行時の現在の時点で判断する必要があり、その判断する点(切換え判定を行う点E)を
図7に示す。
【0045】
図7は
図2に
図3、
図5の点A〜点Eを重ねて表示したものであり、
図2、
図3、
図5と同一部分は同一符号をもって示しているが、前記車速偏差、時間偏差はアクセルからブレーキへ切換える側の偏差Δvt、Δv、Δtのみ表記している。
【0046】
前記設定パラメータである、アクセル→ブレーキ切換え車速偏差Δv
-1(第1の切換え車速偏差設定値)、ブレーキ→アクセル切換え車速偏差Δv
-2(第2の切換え車速偏差設定値)、アクセル→ブレーキ切換え時間偏差Δt
-1(第1の切換え時間偏差設定値)、ブレーキ→アクセル切換え時間偏差Δt
-2(第2の切換え時間偏差設定値)は、各々比較的小さな値に設定すれば、
図2、
図7の一点鎖線で示す切換えに関する長方形が小さくなって、アクセルからブレーキへの切換え線、ブレーキからアクセルへの切換え線が基準モードに近づく。このため、このように設定して算出したデータを基にアクセルとブレーキの切換え制御を行うと、基準モードにより近い(基準モードに沿った)走行となる。
【0047】
また、これとは逆に、前記各設定パラメータΔv
-1、Δv
-2、Δt
-1、Δt
-2を、各々規格で定められている±2.0km/h、±1.0秒未満のある程度大きな値に設定すれば、
図2、
図7の一点鎖線で示す切換えに関する長方形が大きくなって、アクセルからブレーキへの切換え線、ブレーキからアクセルへの切換え線が基準モードから遠くなる。このため、このように設定して算出したデータを基にアクセルとブレーキの切換え制御を行うと、基準モードの上限、下限許容線を超えることなく、アクセルとブレーキの切換え頻度を少なくすることができる。これによって、車速の許容範囲内で燃費・排出ガスの良い運転を行うことができる。
【0048】
上記のようにして基準モードの傾斜に応じた、アクセルとブレーキを切換えるための車速偏差を算出し、その算出した車速偏差データに基づいて試験車両のアクセルとブレーキの操作を切換える車両試験装置は、例えば
図8のように構成される。
【0049】
図8において、シャシーダイナモメータ100上には試験車両110が載置され、試験車両110の車速は、シャシーダイナモメータ100のローラに設けられたパルス検出器(図示省略)によって検出される。120は、例えば
図3、
図5に示す運転目標車速(基準モード)情報が与えられ、
図2〜
図7で述べた演算(Δvt
-1+Δv
-1、Δvt
-2+Δv
-2)を行って、アクセルからブレーキへ切換えるための第1の切換え車速偏差(
図3のAEの長さ)およびブレーキからアクセルへ切換えるための第2の切換え車速偏差(
図5のAEの長さ)を求める車速偏差算出部である。
【0050】
130は、車速偏差算出部120で求められた第1の切換え車速偏差に基づいて
図3で述べた方法によりアクセルからブレーキへの切換え線を定義し(作成し)、試験車両の検出車速が
図4のようにアクセルからブレーキへの切換え線を上回った際にアクセルからブレーキに切換え、前記第2の切換え車速偏差に基づいて
図5で述べた方法によりブレーキからアクセルへの切換え線を定義し(作成し)、試験車両の検出車速が
図6のようにブレーキからアクセルへの切換え線を下回った際にブレーキからアクセルに切換える制御を行う切換え制御部である。
【0051】
以上のように本実施形態例によれば、基準モードの現在時刻の傾きに応じた、適切なアクセルとブレーキを切換えるための車速偏差(アクセルからブレーキへ切換える第1の切換え車速偏差、ブレーキからアクセルへ切換える第2の切換え車速偏差)のデータが得られる。このため、この切換え車速偏差データを用いてアクセル、ブレーキを操作することにより、車速追従制御の車速追従性能が向上する。