(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明のデスミア処理装置の構成の一例における、当該デスミア処理装置を構成する紫外線ランプの管軸方向に垂直な方向の断面を示す説明用断面図である。
図2は、
図1のデスミア処理装置を構成する複数の紫外線ランプの配列状態を示す説明図である。
デスミア処理装置10は、絶縁層と導電層とが積層されてなる板状の配線基板材料1を被処理物として処理するものである。
配線基板材料1において、絶縁層は、無機物質よりなるフィラーが含有された樹脂によって構成されている。ここに、絶縁層を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂などを用いることができる。また、絶縁層を構成するフィラーを構成する材料としては、シリカ、アルミナ、マイカ、珪酸塩、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化チタンなどを用いることができる。
また、導電層を構成する材料としては、銅、ニッケル、金などを用いることができる。
この図の例において、配線基板材料1は、略矩形平板状の形状を有するものである。
【0013】
デスミア処理装置10は、略直方体状の外観形状を有する筺体11を備えている。この筺体11の内部には、上方側に複数(図の例においては5本)の棒状の紫外線ランプ21が配置され、下方側には、保持装置が配置されている。この保持装置は、配線基板材料1を配置する直方体状の被処理物支持台18を有している。そして、複数の紫外線ランプ21と被処理物支持台18との間には、筺体11の内部空間を上下に区画するように、矩形平板状の光透過性窓部材31が配設されている。この光透過性窓部材31は、筺体11の上壁部11Aおよび下壁部11Bと、被処理物支持台18の被処理物載置面18aとに対して平行に配置されている。このようにして、筺体11の内部には、光透過性窓部材31の上方側に位置する略直方体状の密閉された空間によってランプ室Rが形成され、また光透過性窓部材31の下方側に位置する略直方体状の密閉された空間によって処理室Sが形成されている。
この図の例において、筺体11には、4つの側壁部によって構成される内周面の全周にわたって内方に突出する窓部材支持部13が設けられている。そして、この窓部材支持部13によって光透過性窓部材31が気密に支持されることにより、光透過性窓部材31の気密構造が形成されている。
【0014】
被処理物支持台18は、被処理物載置面18aが平坦面とされており、配線基板材料1よりも大きな縦横寸法を有するものである。
この被処理物支持台18は、筺体11の下壁部11B上に配置されており、光透過性窓部材31と離間して対向した状態とされている。
そして、被処理物載置面18aには、配線基板材料1を、紫外線ランプ21からの紫外線および活性種(具体的には、例えばオゾンおよび酸素ラジカル)によって処理することのできる有効処理領域が形成されている。この有効処理領域に配置された配線基板材料1は、被処理面1aが光透過性窓部材31と離間して平行な状態とされると共に、光透過性窓部材31を介して複数の紫外線ランプ21と対向した状態とされる。
【0015】
また、保持装置には、被処理物支持台18を上下方向に駆動する駆動機構が設けられている。この駆動機構によって被処理物支持台18を上下動することより、配線基板材料1と光透過性窓部材31との離間距離hを調整することができる。すなわち、デスミア処理装置10においては、配線基板材料1の厚みによらず、配線基板材料1と光透過性窓部材31との離間距離hを所期の大きさにすることができる。
ここに、配線基板材料1と光透過性窓部材31との離間距離hは、1mm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜0.7mmである。
離間距離hが1mm以下であることにより、処理室Sにおいて、活性種を安定して生成することができると共に、被処理面1aに到達する紫外線ランプ21からの紫外線を十分な大きさの強度(光量)とすることができる。
【0016】
ランプ室Rにおいて、複数の紫外線ランプ21は、中心軸が被処理物載置面18aに平行な同一水平面内において互いに平行に伸びるよう、当該被処理物載置面18aに沿って一定の間隔で並列している。すなわち、複数の紫外線ランプ21は、被処理面1aに沿って一定の間隔で並列に配置されている。
【0017】
複数の紫外線ランプ21の配置間隔は、等間隔であることが好ましい。
また、互いに隣接する紫外線ランプの離間距離(以下、「ランプ間距離」ともいう。)Pは5〜50mmであることが好ましい。
この図の例において、複数の紫外線ランプ21は等間隔で並列配置されている。
【0018】
紫外線ランプ21としては、波長220nm以下の真空紫外線を放射するものであれば、配線基板材料1の種類に応じて、公知の種々のランプを用いることができる。具体的に、紫外線ランプ21としては、中心波長が172nmの真空紫外線を放射するキセノンエキシマランプなどを例示することができる。
この図の例において、紫外線ランプ21としては、特定方向(
図1における下方向)に光を照射する角型のエキシマランプが用いられている。
【0019】
光透過性窓部材31を構成する材料としては、紫外線ランプ21から放射される紫外線に対する透過性を有し、処理用ガス、紫外線により生成される活性種および被処理面1aが処理されることによって発生する反応生成ガスに対する耐性を有するものが用いられる。
光透過性窓部材31を構成する材料の具体例としては、例えば石英ガラスが挙げられる。
また、光透過性窓部材31の厚みは、2〜10mmであることが好ましい。
【0020】
そして、デスミア処理装置10には、処理室Sに処理用ガスを供給するガス供給機構が設けられている。ガス供給機構は、被処理面1aと光透過性窓部材31との間に形成される略矩形状の空間(以下、「被処理面上空間」ともいう。)に、複数の紫外線ランプ21が並ぶ方向(
図1における右方向、および
図2における一点鎖線の矢印方向)に向けて処理用ガスを供給することのできるものである。すなわち、ガス供給機構は、処理用ガスが、少なくとも被処理面上空間において複数の紫外線ランプ21が並ぶ方向に向かって略直線状に流動するようにガス供給を行うものである。そして、被処理面上空間においては、一方(
図1における左方)に上流側開口が形成され、他方(
図1における右方)に下流側開口が形成される。
【0021】
処理用ガス供給機構は、処理用ガス供給源(図示せず)を備えており、筺体11の下壁部11Bを貫通するガス供給用貫通孔15およびガス排出用貫通孔16を介して処理室Sに処理用ガスを流動させるものである。処理用ガス供給源は、ガス流路形成部材25を介してガス供給用貫通孔15に接続されており、そのガス流路形成部材25によってガス供給用ガス流路が形成されている。また、ガス排出用貫通孔16には、ガス流路形成部材26が接続されており、このガス流路形成部材26によって形成されるガス排出用ガス流路には、処理室Sを流動したガスが自発的に放出される。
ガス供給用貫通孔15は、下壁部11Bの内面における側壁部11Cと被処理物支持台18との間に、側壁部11Cの伸びる方向(
図1における紙面に垂直な方向)に沿って配設された横長のガス供給口15aを有するものである。一方、ガス排出用貫通孔16は、下壁部11Bの内面における側壁部11Eと被処理物支持台18との間に、側壁部11Eの伸びる方向(
図1における紙面に垂直な方向)に沿って配設された横長のガス排出口16aを有するものである。そして、ガス供給口15aとガス排出口16aとは、これらの間の位置に被処理物支持台18が配置されるよう、互いに面方向(紫外線ランプ21の並列方向)に離間した位置に形成されている。すなわち、被処理物支持台18に配置された配線基板材料1は、ガス供給口15aとガス排出口16aとの間に位置される。
ここに、ガス供給口15aおよびガス排出口16aは、各々、1つの横長スリットによって形成されていてもよく、また複数の穴により形成されていてもよい。
この図の例において、ガス供給口15aおよびガス排出口16aは、被処理物支持台18に沿って伸びる横長スリットよりなるものである。
【0022】
処理用ガスとしては、紫外線ランプ21から放射される紫外線により活性種を生成する活性種源を含有するものが用いられる。ここに、活性種源としては、例えば酸素ガスおよびオゾンガスが挙げられる。
処理用ガスの具体例としては、例えば酸素ガス、および酸素ガスとオゾンガスとの混合ガスなどが挙げられる。これらのうちでは、処理時間の短縮化を図る観点からは、酸素ガスとオゾンガスとの混合ガスが好ましい。また、処理用ガスは、水蒸気を含むものであってもよい。
【0023】
処理用ガスにおける活性種源の濃度は、50体積%以上とされるが、好ましくは88体積%以上である。
処理用ガスにおける活性種源の濃度が上記の範囲とされることにより、紫外線ランプ21からの紫外線(真空紫外線)により生成される活性種の量を多くすることができて所期の処理を確実に行うことができる。特に、処理用ガスが酸素ガスとオゾンガスとの混合ガスである場合には、酸素ガスの濃度が88体積%以上、すなわちオゾンガスの濃度が12体積%以下であることによって高い安全性が得られる。
【0024】
処理用ガス供給機構による処理用ガス供給条件は、被処理面上空間、すなわち被処理面1a上を流動する処理用ガスが、被処理面1aに沿って整流された層流状態となるように定められる。すなわち、処理用ガス供給条件は、被処理面上空間において、処理用ガスの層流が形成されるように定められる。
具体的に、処理用ガス供給条件は、配線基板材料1と光透過性窓部材31との離間距離hに応じ、被処理面1aの大きさ、紫外線ランプ21の種類、処理用ガスの種類および組成などを考慮して適宜に定められる。
【0025】
ここに、配線基板材料1と光透過性窓部材31との離間距離hが1mm以下である場合には、被処理面上空間を流動する処理用ガスのガス流速が1〜500mm/secであることが好ましい。
このように、被処理面上空間においてガス流速を1〜500mm/secとすることによれば、被処理面上空間を流動する処理用ガスを確実に層流状態とすることができる。
しかも、被処理面上空間において、紫外線ランプ21の直下に位置する領域(以下、「ランプ直下空間」ともいう。)にて生成された活性種の一部を、処理用ガスの流れによって当該ランプ直下空間の近傍に移動させ、当該近傍において被処理面1aの処理に有効に利用することができる。具体的に説明すると、ランプ直下空間において生成された一部の活性種は、当該ランプ直下空間に隣接する、互いに隣接する紫外線ランプ21の間の間隙の直下に位置する領域(以下、「ランプ間直下空間」ともいう。)に移動される。そして、そのランプ間直下空間において、被処理面1aにおける当該ランプ間直下空間を臨む領域の処理に供される。
【0026】
また、デスミア処理装置10においては、被処理面上空間とガス供給口15aとの間の位置、具体的には、被処理面上空間の上流側開口とガス供給口15aとの間の位置に、圧力緩和空間Aが設けられていることが好ましい。
ここに、圧力緩和空間Aとは、ガス供給口15aから処理室Sに導入される処理用ガスのガス圧を緩和し、被処理面上空間に対して一定の圧力で処理用ガスを供給するためのリザーバー機能を有するものである。そして、この圧力緩和空間Aは、被処理面上空間に比して処理用ガスが流動しやすい大きさを有している。
圧力緩和空間Aが設けられていることにより、被処理面上空間が厚み(
図1における上下方向の寸法)が小さいものであっても、当該被処理面上空間に対して一定の圧力で処理用ガスを供給することができる。そのため、被処理面上空間における処理用ガスのガス流速を所期の範囲とすることができる。
【0027】
また、デスミア処理装置10には、被処理物支持台18に、配線基板材料1を加熱する加熱手段(図示せず)が設けられていることが好ましい。
この加熱手段が設けられていることにより、被処理面1aの温度が上昇されることに伴って活性種による作用を促進させることができるので、効率よく処理を行うことができる。
また、被処理物支持台18においては、被処理物載置面18aの縦横寸法が配線基板材料1の縦横寸法より大きいため、被処理面1aを均一に加熱することができる。
加熱手段による加熱条件は、被処理物載置面18aの温度が、例えば100〜150℃となる条件である。
【0028】
また、デスミア処理装置10には、ランプ室Rに、例えば窒素ガスなどの不活性ガスをパージする不活性ガスパージ手段(図示省略)が設けられていることが好ましい。
この不活性ガスパージ手段が設けられていることにより、紫外線ランプ21からの紫外線(真空紫外線)を高い効率で光透過性窓部材31から出射させることができる。すなわち、ランプ室Rにおいて、紫外線ランプ21からの紫外線がランプ室Rの雰囲気を構成するガスによって吸収されることを防止することができる。
【0029】
このような構成のデスミア処理装置10においては、紫外線ランプ21からの紫外線を、処理用ガスの雰囲気下に配置された配線基板材料1の被処理面1aに対して、光透過性窓部材31を介して照射することにより、配線基板材料1の表面処理が行われる。
具体的に説明すると、配線基板材料1が配置された処理室Sに、処理用ガス(具体的には、酸素ガス)が、ガス供給口15aから所期のガス供給条件で供給される。このようにして、処理室Sには処理用ガスが絶え間なく供給され、これにより、処理室Sは処理用ガス雰囲気とされる。そして、ランプ室Rに並列配置された複数の紫外線ランプ21が一斉に点灯されることにより、当該複数の紫外線ランプ21からの紫外線が光透過性窓部材31を介して被処理面1aに向かって放射される。これにより、被処理面1aに到達する紫外線、および紫外線により生成される活性種(具体的には、オゾンおよび酸素ラジカル)によって、被処理面1aの処理が行われる。また、処理室Sにおいては、ガス供給口15aから供給された処理用ガスに、当該処理用ガスが処理室Sを流動する過程において、被処理面1aが処理されることによって発生する反応生成ガス(具体的には、例えば二酸化炭素ガス)が混入される。そして、この反応生成ガスが混入されたガスは、ガス排出口16aから処理室Sの外部に排出される。
図1においては、デスミア処理装置10内におけるガスの流動方向が矢印で示されている。
【0030】
而して、デスミア処理装置10においては、被処理面上空間において、処理用ガスが複数の紫外線ランプ21が並ぶ方向に流動され、当該処理用ガスの層流が形成される。そのため、被処理面上空間においては、処理用ガスのガス流速分布に高い均一性が得られる。しかも、紫外線によって生成された活性種は、処理用ガスの流れによって処理用ガスの流動方向下流側、すなわち紫外線ランプ21の管軸に垂直な一方向に向かって移動される。その結果、ランプ間距離Pが大きいことに起因して、被処理面1aにおいて、紫外線ランプ21からの紫外線の照度分布にむらが生じた場合であっても、紫外線照度の大きいランプ直下空間を臨む領域における処理効率と、紫外線照度の小さいランプ間直下空間を臨む領域における処理効率とに差が生じることが抑制される。すなわち、被処理面1aを効率よく短時間で処理することができる。
具体的に説明すると、デスミア処理装置10において、ランプ間距離Pが大きいことに起因して被処理面1aに紫外線の照度分布にむらが生じた場合には、勿論、被処理面1aにおいて、ランプ間直下空間を臨む領域に到達する紫外線の照射量は、ランプ直下空間を臨む領域に到達する紫外線の照射量に比して小さくなる。また、被処理面上空間においては、ランプ間直下空間で生成される活性種の生成量が、ランプ直下空間で生成される活性種の生成量に比して小さくなる。然るに、被処理面上空間においては、高いガス流速分布均一性を有する処理用ガスの流れによって、ランプ直下空間で生成された活性種の一部を、当該ランプ直下空間の処理用ガスの流動方向下流側に位置するランプ間直下空間に移動することができる。そのため、ランプ直下空間とランプ間直下空間とに活性種の濃度の差が生じることが抑制され、よって被処理面上空間における活性種の濃度の均一化を図ることができる。その結果、被処理面1aにおいて、ランプ間直下空間を臨む領域の処理に供される活性種の量が、ランプ直下空間を臨む領域の処理に供される活性種の量に比して少なくなることが抑制されることから、ランプ間直下空間を臨む領域の処理に長い時間を要することが抑制される。
従って、デスミア処理装置10によれば、複数の紫外線ランプ21におけるランプ間距離Pが大きい場合には、被処理面1aにおけるランプ間直下領域を臨む領域に到達する紫外線の照射量が小さくなるものの、ランプ間距離Pが大きいことに起因して、当該領域に供される活性種の量が少なくなることが抑制される。その結果、配線基板材料1を高い処理効率で均一に処理することができる。
【0031】
また、デスミア処理装置10においては、配線基板材料1と光透過性窓部材31との離間距離hを1mm以下とすると共に、被処理面上空間におけるガス流速を1〜500mm/secとすることによって、当該被処理面上空間に処理用ガスの層流が形成されている。そのため、配線基板材料1をより一層高い処理効率で均一に処理することができる。
具体的に説明すると、配線基板材料1と光透過性窓部材31との離間距離hが1mm以下と比較的小さいことから、被処理面1aに到達する紫外線が十分な大きさの強度(光量)となると共に、被処理面上空間において、活性種が安定して生成される。
また、被処理面上空間におけるガス流速が1〜500mm/secと比較的小さいことから、当該被処理面上空間において、処理用ガスの流動方向上流側(
図1における左側)において生成された活性種が、下流側(
図1における右側)に大きく移動することがない。そのため、被処理面1aにおいては、処理用ガスの流動方向上流側に位置されていた部分が、下流側に位置されていた部分に比して処理が不十分となることが十分に抑制される。しかも、ランプ直下空間において生成された活性種の一部を、当該ランプ直下空間に隣接するランプ間直下空間に移動させて、被処理面1aにおける当該ランプ間直下空間を臨む領域の処理に有効に利用することができる。
【0032】
本発明の光源装置およびデスミア処理装置は、上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、デスミア処理装置は、
図1に示されているように被処理物支持台が上下方向に動くものでなくてもよい。
また、デスミア処理装置は、
図1に示されているように配線基板材料を水平(横)にして搬送する構成のものに限定されず、配線基板材料を垂直(縦)にして搬送する構成のものであってもよい。
また、デスミア処理装置は、
図1に示されているように配線基板材料の一面に紫外線が照射される構成のものに限定されず、配線基板材料の両面に紫外線が照射される構成のものであってもよい。
また、処理用ガス供給機構は、被処理面上空間において、処理用ガスが複数の紫外線ランプが並ぶ方向に流動し、当該処理用ガスの層流を形成するように処理用ガスを供給することのできるものであればよい。具体的には、例えば
図1に係るデスミア処理装置において、ガス供給口およびガス排出口が、互いに対向する側壁部に設けられたものであってもよい。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1〕
図1の構成に従って、5本の紫外線ランプ(21)を備えたデスミア処理装置(以下、「デスミア処理装置(A1)」ともいう。)を作製した。このデスミア処理装置(A1)において、処理用ガスは、複数の紫外線ランプ(21)が並ぶ方向、すなわち紫外線ランプ(21)の管軸方向に垂直な方向(以下、「ランプ垂直方向」ともいう。)に流動する。
また、デスミア処理装置(A1)において、紫外線ランプ(21)としては、ランプ幅が70mmであって、中心波長が172nmの真空紫外線を放射するキセノンエキシマランプを用いた。そして、5本の紫外線ランプ(21)を、ランプ間距離(P)が14mmとなるように等間隔で配置した。また、処理用ガスとしては、酸素ガスを用いた。そして、処理用ガスは、光透過性窓部材(31)と配線基板材料(1)との間の空間のガス流速が5mm/secとなるように供給した。
【0035】
先ず、作製したデスミア処理装置(A1)の処理室(S)に、光透過性窓部材(31)との離間距離(h)が0.5mmとなるように、縦横寸法が600mm×500mmであって絶縁層と導電層とが積層されてなる矩形板状の配線基板材料(1)を配置した。その後、処理室(S)に対してガス供給口(15a)から酸素ガスを供給した。そして、配線基板材料(1)と光透過性窓部材(31)との間の空間においては処理用ガスの層流が形成された。
次いで、処理室(S)が酸素ガス雰囲気とされた後、ガス供給口(15a)からの酸素ガスの供給を継続しつつ、5本の紫外線ランプ(21)を一斉に点灯することにより、配線基板材料(1)に対してデスミア処理を行った。
このデスミア処理中において、光透過性窓部材(31)の光出射面(
図1における下面)における、紫外線ランプ(21)の直下に位置する領域の照度(以下、「ランプ直下照度」ともいう。)、および互いに隣接する紫外線ランプ(21)の間の間隙(以下、「ランプ間隙」ともいう。)の直下に位置する領域の照度(以下、「ランプ間直下照度」ともいう。)を測定した。また、配線基板材料(1)の被処理面(1a)におけるランプ間隙の直下に位置する領域を処理するために要する時間を測定した。結果を表1に示す。
【0036】
〔比較例1〕
処理用ガスが、複数の紫外線ランプ(21)が並ぶ方向に垂直な方向、すなわち紫外線ランプ(21)の管軸方向(以下、「ランプ平行方向」ともいう。)に流動すること以外はデスミア処理装置(A1)と同様の構成の比較用のデスミア処理装置(以下、「比較用デスミア処理装置(B1)」ともいう。)を作製した。
作製した比較用デスミア処理装置(B1)により、実施例1と同様の条件によってデスミア処理を行った。そして、光透過性窓部材(31)の光出射面におけるランプ直下照度およびランプ間直下照度を測定した。また、配線基板材料(1)の被処理面(1a)におけるランプ間隙の直下に位置する領域を処理するために要する時間を測定した。結果を表1に示す。
【0037】
〔実施例2〕
ランプ間距離(P)を表1に従って変更したこと以外はデスミア処理装置(A1)と同様の構成のデスミア処理装置(以下、「デスミア処理装置(A2)」ともいう。)を作製した。
作製したデスミア処理装置(A2)により、実施例1と同様の条件によってデスミア処理を行った。このデスミア処理中において、配線基板材料(1)と光透過性窓部材(31)との間の空間には、処理用ガスの層流が形成された。そして、光透過性窓部材(31)の光出射面におけるランプ直下照度およびランプ間直下照度を測定した。また、配線基板材料(1)の被処理面(1a)におけるランプ間隙の直下に位置する領域を処理するために要する時間を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
〔比較例2〕
処理用ガスが、ランプ平行方向に流動すること以外はデスミア処理装置(A2)と同様の構成の比較用のデスミア処理装置(以下、「比較用デスミア処理装置(B2)」ともいう。)を作製した。
作製した比較用デスミア処理装置(B2)により、実施例2と同様の条件によってデスミア処理を行った。そして、光透過性窓部材(31)の光出射面におけるランプ直下照度およびランプ間直下照度を測定した。また、配線基板材料(1)の被処理面(1a)におけるランプ間隙の直下に位置する領域を処理するために要する時間を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1の結果から、実施例1および実施例2に係るデスミア処理装置によれば、被処理面におけるランプ間直下空間を臨む領域の処理に要する時間を短くできることが明らかである。また、実施例2に係るデスミア処理装置は、実施例1に係るデスミア処理装置に比してランプ間距離(P)が大きいものであるが、ランプ間直下空間を臨む領域の処理に要する時間は、実施例1に係るデスミア処理装置と略同じであることが明らかである。
一方、比較例1および比較例2に係るデスミア処理装置においては、被処理面におけるランプ間直下空間を臨む領域を処理するために長い時間を要している。また、比較例2に係るデスミア処理装置は、比較例1に係るデスミア処理装置に比してランプ間距離(P)が大きいものであることから、ランプ間直下空間を臨む領域の処理に要する時間が、比較例1に係るデスミア処理装置よりもかなり長くなっている。
従って、本発明のデスミア処理装置によれば、配線基板材料を高い処理効率で均一に処理することができることが確認された。
【0041】
〔実施例3〕
光透過性窓部材(31)と配線基板材料(1)との間の空間の処理用ガスのガス流速が表2に示すガス流速となるようにしたこと以外はデスミア処理装置(A1)と同様の構成のデスミア処理装置(以下、「デスミア処理装置(A3)」ともいう。)を作製した。
【0042】
先ず、作製したデスミア処理装置(A3)の処理室(S)に、光透過性窓部材(31)との離間距離(h)が0.5mmとなるように、縦横寸法が600mm×500mmであって絶縁層と導電層とが積層されてなる板状の配線基板材料(1)を配置した。その後、処理室(S)に対してガス供給口(15a)から酸素ガスを供給した。そして、配線基板材料(1)と光透過性窓部材(31)との間の空間においては処理用ガスの層流が形成された。
次いで、処理室(S)が酸素ガス雰囲気とされた後、ガス供給口(15a)からの酸素ガスの供給を継続しつつ、5本の紫外線ランプ(21)を一斉に点灯することにより、配線基板材料(1)に対してデスミア処理を行った。
このデスミア処理中において、光透過性窓部材(31)の光出射面におけるランプ直下照度およびランプ間直下照度を測定した。また、配線基板材料(1)の被処理面(1a)におけるランプ間隙の直下に位置する領域を処理するために要する時間を測定した。結果を表2に示す。
【0043】
〔比較例3〕
処理用ガスが、ランプ平行方向に流動すること以外はデスミア処理装置(A3)と同様の構成の比較用のデスミア処理装置(以下、「比較用デスミア処理装置(B3)」ともいう。)を作製した。
作製した比較用デスミア処理装置(B3)により、実施例3と同様の条件によってデスミア処理を行った。そして、光透過性窓部材(31)の光出射面におけるランプ直下照度およびランプ間直下照度を測定した。また、配線基板材料(1)の被処理面(1a)におけるランプ間隙の直下に位置する領域を処理するために要する時間を測定した。結果を表2に示す。
【0044】
〔実施例4〕
光透過性窓部材(31)と配線基板材料(1)との間の空間のガス流速が表2に示すガス流速となるようにしたこと以外はデスミア処理装置(A3)と同様の構成のデスミア処理装置(以下、「デスミア処理装置(A4)」ともいう。)を作製した。
作製したデスミア処理装置(A4)により、実施例3と同様の条件によってデスミア処理を行った。このデスミア処理中において、配線基板材料(1)と光透過性窓部材(31)との間の空間には、処理用ガスの層流が形成された。そして、光透過性窓部材(31)の光出射面におけるランプ直下照度およびランプ間直下照度を測定した。また、配線基板材料(1)の被処理面(1a)におけるランプ間隙の直下に位置する領域を処理するために要する時間を測定した。結果を表2に示す。
【0045】
〔比較例4〕
処理用ガスが、ランプ平行方向に流動すること以外はデスミア処理装置(A4)と同様の構成の比較用のデスミア処理装置(以下、「比較用デスミア処理装置(B4)」ともいう。)を作製した。
作製した比較用デスミア処理装置(B4)により、実施例4と同様の条件によってデスミア処理を行った。そして、光透過性窓部材(31)の光出射面におけるランプ直下照度およびランプ間直下照度を測定した。また、配線基板材料(1)の被処理面(1a)におけるランプ間隙の直下に位置する領域を処理するために要する時間を測定した。結果を表2に示す。
【0046】
〔実施例5〕
光透過性窓部材(31)と配線基板材料(1)との間の空間のガス流速が表2に示すガス流速となるようにしたこと以外はデスミア処理装置(A3)と同様の構成のデスミア処理装置(以下、「デスミア処理装置(A5)」ともいう。)を作製した。
作製したデスミア処理装置(A5)により、実施例3と同様の条件によってデスミア処理を行った。このデスミア処理中において、配線基板材料(1)と光透過性窓部材(31)との間の空間には、処理用ガスの層流が形成された。そして、光透過性窓部材(31)の光出射面におけるランプ直下照度およびランプ間直下照度を測定した。また、配線基板材料(1)の被処理面(1a)におけるランプ間隙の直下に位置する領域を処理するために要する時間を測定した。結果を表2に示す。
【0047】
〔比較例5〕
処理用ガスが、ランプ平行方向に流動すること以外はデスミア処理装置(A5)と同様の構成の比較用のデスミア処理装置(以下、「比較用デスミア処理装置(B5)」ともいう。)を作製した。
作製した比較用デスミア処理装置(B5)により、実施例5と同様の条件によってデスミア処理を行った。そして、光透過性窓部材(31)の光出射面におけるランプ直下照度およびランプ間直下照度を測定した。また、配線基板材料(1)の被処理面(1a)におけるランプ間隙の直下に位置する領域を処理するために要する時間を測定した。結果を表2に示す。
【0048】
〔参考例1〕
光透過性窓部材(31)と配線基板材料(1)との間の空間のガス流速が表2に示すガス流速となるようにしたこと以外はデスミア処理装置(A3)と同様の構成の参考用のデスミア処理装置(以下、「参考用デスミア処理装置(A6)」ともいう。)を作製した。
作製した参考用デスミア処理装置(A6)により、実施例3と同様の条件によってデスミア処理を行った。このデスミア処理中において、配線基板材料(1)と光透過性窓部材(31)との間の空間には、処理用ガスの乱流が形成された。そして、光透過性窓部材(31)の光出射面におけるランプ直下照度およびランプ間直下照度を測定した。また、配線基板材料(1)の被処理面(1a)におけるランプ間隙の直下に位置する領域を処理するために要する時間を測定した。結果を表2に示す。
【0049】
〔比較例6〕
処理用ガスが、ランプ平行方向に流動すること以外は参考用デスミア処理装置(A6)と同様の構成の比較用のデスミア処理装置(以下、「比較用デスミア処理装置(B6)」ともいう。)を作製した。
作製した比較用デスミア処理装置(B6)により、参考例1と同様の条件によってデスミア処理を行った。そして、光透過性窓部材(31)の光出射面におけるランプ直下照度およびランプ間直下照度を測定した。また、配線基板材料(1)の被処理面(1a)におけるランプ間隙の直下に位置する領域を処理するために要する時間を測定した。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2の結果から、実施例3〜実施例5に係るデスミア処理装置によれば、被処理面におけるランプ間直下空間を臨む領域の処理に要する時間を短くできることが明らかである。
一方、比較例3〜比較例5に係るデスミア処理装置においては、被処理面におけるランプ間直下空間を臨む領域を処理するために長い時間を要している。
また、参考例1に係るデスミア処理装置は、被処理面におけるランプ間直下空間を臨む領域の処理に要する時間が、比較例6に係るデスミア処理装置と殆ど差がないものであり、また処理用ガスのガス流速が1/2倍である実施例5に係るデスミア処理装置と同等である。ここに、参考例1に係るデスミア処理装置において、処理に要する時間が比較例6に係るデスミア処理装置と殆ど差がない理由は、処理用ガスの乱流によって活性種が分散されることにより、被処理面において照度分布むらが生じることに起因する処理効率の差が緩和されるためである。すなわち、参考例1に係るデスミア処理装置においては、処理用ガスの流動方向によって活性種の挙動(移動)を制御することができないためである。
従って、本発明のデスミア処理装置によれば、配線基板材料を高い処理効率で均一に処理することができることが確認された。
【0052】
〔比較例7〜11〕
実施例1〜実施例5において作製したデスミア処理装置(A1)〜デスミア処理装置(A5)の各々を用い、デスミア処理中において、光透過性窓部材(31)と配線基板材料(1)との間の空間の処理用ガスのガス流速が0mm/secとなるようにしたこと(具体的には、ガス供給口(15a)から酸素ガスの供給をしなかったこと)以外は各実施例と同様の条件によってデスミア処理を行った。その結果、いずれのデスミア処理装置においても、デスミア処理を完了することができなかった。その理由は、デスミア処理を完了するために必要とされる酸素が供給されなかったためである。