(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロータは前記磁石埋め込み穴の間にセンタブリッジが形成され、前記磁石埋め込み穴は前記センタブリッジと反対側において前記ロータの外周に連通し、前記永久磁石は、前記一方の非着磁面が前記ロータの外周に連通する側に位置するように前記磁石埋め込み穴に埋め込まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の永久磁石埋め込み式回転電機。
前記磁石埋め込み穴の内周壁における前記ロータ回転中心軸側の領域は、隣接する極間の中心から離れて前記センタブリッジに近づくに従って前記ロータ回転中心軸から離れる方向に傾いていることを特徴とする請求項3に記載の永久磁石埋め込み式回転電機。
前記永久磁石の着磁方向に垂直な着磁面に付着した前記補強用シートを多く削り、前記着磁面以外の非着磁面に付着した前記補強用シートを多く残したことを特徴とする請求項7に記載の永久磁石埋め込み式回転電機。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
【0010】
<本発明の適用対象>
図1は本発明の適用対象である永久磁石埋め込み式回転電機の構成例を示す縦断面図である。
図1において、フレーム1は、永久磁石埋め込み式回転電機全体を覆う筐体であり、鉄、アルミ、ステンレスなどにより構成されている。フレーム1の内側には、中空円筒状の固定側鉄心2が設けられている。この固定側鉄心2は、けい素鋼板を積層してなるものである。この固定側鉄心2には、複数のティースが形成されており、各ティースには銅線などによるステータ巻線が巻装されている(図示略)。固定側鉄心2の内側には、固定側鉄心2との間に所定の隙間を挟んだ状態で、回転側鉄心であるロータ3が挿通されている。このロータ3は、けい素鋼板を積層してなるものである。なお、単純な鉄ブロックを切削加工することによりロータ3が構成される場合もある。ロータ3は、その中心を鉄などによるシャフト4が貫通している。理想的には、シャフト4の中心軸がロータ3の回転中心軸4aとなる。そして、シャフト4は、ベアリング鋼などからなる転がり軸受け5を介して、フレーム1の前後両端に設けられたシールド6に支持されている。
【0011】
ここでは、永久磁石埋め込み式回転電機としてモータを例に挙げて説明するが、発電機の場合も同様である。このモータにおいてロータ3は、ステータ巻線(図示せず)によって作られる回転磁界によってエネルギを与えられ、回転中心軸4a廻りに回転する。
【0012】
図2はロータ3の1極分の構成を示す斜視図である。また、
図3は回転中心軸4a方向からロータ3の1極分を見た正面図である。なお、
図3では、ロータ3の構成の理解を容易にするため、1極分の構成に加えて、その回転方向両隣の極の構成を破線により示した。
【0013】
ロータ3は、回転中心軸4a寄りの芯部31と、極毎に設けられた2個の永久磁石34aおよび34bと、回転中心軸4aからみて永久磁石34aおよび34bの外側のロータ鋼材からなる各極の外周縁部33と、磁石埋め込み穴35aおよび35bの間に形成され、芯部31と外周縁部33とを各々繋ぐ各極のセンタブリッジ32と、極間に設けられたq軸突起37とに大別することができる。
【0014】
1極分の外周縁部33は、略円弧状の断面形状を有しており、ロータ回転方向中央において、センタブリッジ32を介して芯部31と繋がっている。この外周縁部33の外周面は、回転中心軸4aからロータ最外周部までの距離よりも小さい曲率半径を有している。なお、このように外周縁部33の全部ではなく、外周縁部33の一部の曲率半径を回転中心軸4aからロータ最外周部までの距離より小さくしてもよい。また、外周縁部33の外周面は曲面である必要はなく、ロータ回転中心からみてセンタブリッジ32を通る延長線上に位置する外周縁部33の外周面がその他の位置の外周面に対し、ロータ回転中心からの距離が長ければよい。このようにして、センタブリッジ32は磁気抵抗を高くし、ロータの外周に配置されたステータと外周縁部33との磁気抵抗を低くすることで永久磁石埋め込み式回転電機のトルクを増大することができる。外周縁部33をこのような形状とすることで、トルクの高調波成分が削減され、その削減された分だけロータ3に発生するトルクの基本波成分を増加させることができる。
【0015】
外周縁部33の内側には、永久磁石34aを保持するための磁石埋め込み穴35aと、永久磁石34bを保持するための磁石埋め込み穴35bが設けられている。この磁石埋め込み穴35aおよび35bは、外周縁部33、センタブリッジ32および芯部31により3方向から囲まれている。外周縁部33は、ロータ3の回転時に永久磁石34aおよび34bに働く遠心力に対抗して永久磁石34aおよび3
4bを回転中心軸4a側に支持する。各極に対応した各外周縁部33は、隣のものとの間に隙間を挟んでロータ回転方向に並んでいる。2個の外周縁部33間の隙間は、センタブリッジ32と反対側、すなわち、極間の中央に位置している。磁石埋め込み穴35aおよび35bは、この2個の外周縁部33間の隙間を介してロータ外周に連通している。なお、従来公知の一般的なロータには、2個の外周縁部33間に隙間がなく、2個の外周縁部33間を接続するサイドブリッジを有するものが多い。このサイドブリッジをなくしたところに
図2および
図3に示すロータ3の1つの特徴がある。
【0016】
磁石埋め込み穴35aおよび35bは、逆V字状に配列されている。そして、磁石埋め込み穴35aおよび35bの内周壁における回転中心軸4a側の領域(芯部31)は、隣接する極間の中心から離れて2個の磁石埋め込み穴の間(すなわち、センタブリッジ32)に近づくに従って回転中心軸4aから離れる方向に傾いている。このため、センタブリッジ32は、ロータ3の全ての磁石埋め込み穴35a、35bの内接円36からロータ半径方向外側に離れた位置にある。
【0017】
q軸突起37は、芯部31の極間の中央の位置において2個の外周縁部33間の隙間を通過して遠心方向(回転中心軸4aから離れる方向)に突き出している。磁石埋め込み穴35aおよび35bには、このq軸突起37側への永久磁石34aおよび34bの移動を規制する位置決め突起38aおよび38bが設けられている。この位置決め突起38aおよび38bは、磁石埋め込み穴35aおよび35bの内壁のうち永久磁石34aおよび34bからみてロータ半径方向外側にある領域、すなわち、外周縁部33の内側のq軸突起37側の端部において、回転中心軸4aに向けて突出している。永久磁石34aおよび34bは、この位置決め突起38aおよび38bに押し当てられ、磁石埋め込み穴35aおよび35b内に固定される。なお、ロータ3の軸方向両端には一対の端板(図示せず)が設けられ、永久磁石34aおよび34bが軸方向に抜け落ちないようにしている。
以上がロータ3の構成である。
【0018】
ロータ3において、磁石埋め込み穴35aおよび35bをロータ外周に連通させている理由は次の通りである。モータの製造では、焼き嵌めなどの締り嵌めによって、シャフトとロータ鋼材を組み立てる方法が一般的である。この締り嵌めの工程において、ロータ鋼材には周方向に引張応力が残留する。この残留応力は、ロータ鋼材に穴や窪みなどのある部分と同じ半径を持つ円周上には殆ど発生しない(すなわち、穴も窪みもなく、リング状につながっている部分でないと応力は残存しない)。
【0019】
一方、ロータ3の高速回転時には、ロータの各部分に強大な遠心力が発生する。その際、ロータがセンタブリッジとサイドブリッジを持つ場合には、このセンタブリッジとサイドブリッジに大きな応力が発生する。この場合、ロータの回転により発生する遠心力により、センタブリッジに引っ張り応力が働くのに対し、サイドブリッジにはせん断応力が発生する。このため、高速回転によるロータの破損を防止するためには、センタブリッジよりはむしろサイドブリッジの強度を十分に高くする必要があり、この点がロータの強度設計を難しくしていた。そこで、この例では、ロータの構成として、磁石埋め込み穴35aおよび35bがロータ外周に連通した構成、すなわち、サイドブリッジのない構成を採用した。この構成によれば、ロータが最外周にサイドブリッジを有していないため、ロータの最外周には組み立て残留応力が残存しない。ロータの回転時の遠心力により発生する応力はセンタブリッジに集中するが、このセンタブリッジに働く応力は引っ張り応力であるため、センタブリッジの幅の調整等によりセンタブリッジが破損に至らないように対処することが容易である。
【0020】
しかしながら、以上説明した永久磁石埋め込み式回転電機は、サイドブリッジを有しておらず、磁石埋め込み穴35aおよび35bがロータ外周に連通しているため、永久磁石34aまたは34bに割れが発生した場合に、永久磁石の破片が磁石埋め込み穴35aおよび35bからロータ外周に排出され、最悪の場合、この破片を噛み込んでロータが回転不能になる問題が発生し得る。そこで、この発明の各実施形態では、外周面に補強用シートの付着した永久磁石34aおよび34bを磁石埋め込み穴35aおよび35bに挿入する。ここで、磁石埋め込み穴35aおよび35bに挿入された状態において、永久磁石34aおよび34bの補強用シートは、磁石埋め込み穴35aおよび35bの内壁と非接着状態であり、内壁に対して互いに摺動可能である。この点にこの発明の最大の特徴がある。
【0021】
<第1実施形態>
図4はこの発明の第1実施形態においてロータ3の磁石埋め込み穴35aおよび35b(
図2、
図3参照)に挿入される永久磁石341および補強用シート342の構成を示す正面図である。この例では、永久磁石341の着磁面(永久磁石のN極またはS極がある面)を含む4面に、補強用シート342としてFRP(繊維強化樹脂)が5ターン巻かれている。ここで、1ターン分の補強用シート342の厚さは80μm程度である。この補強用シート342を巻き付けた状態で補強用シート342および永久磁石341を加熱し、補強用シート342を熱硬化させて永久磁石341の表面に付着させる。FRPとしては樹脂としてエポキシを、繊維としてガラス繊維を用いたものを適用する。このエポキシは、樹脂の硬化温度が永久磁石のキュリー温度を越えない硬化条件のものを用いることにより、熱硬化の際に永久磁石の磁気特性が変化するのを防止することができる。熱硬化後、温度が下がると、補強用シート342の表面は乾燥し、接着作用を生じない状態となる。この状態において、補強用シート342の付着した永久磁石341をロータ3の磁石埋め込み穴35aおよび35bに挿入し、永久磁石341の着磁を行う。
【0022】
本実施形態によれば、補強用シート342の付着した永久磁石341をロータ3の磁石埋め込み穴35aおよび35bに挿入するので、挿入時に永久磁石341を割れ難くすることができる。また、本実施形態において、永久磁石341に付着した補強用シート342の表面は、磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁に対して非接着状態であり、摺動可能である。従って、永久磁石埋め込み式回転電機の稼働時、例えばロータ3の温度が上昇したとしても、ロータ3と永久磁石341の線膨張係数の差異に起因した応力が永久磁石341に加わるのを回避し、永久磁石341の割れを防止することができる。また、この構成では、たとえ永久磁石341が割れたとしても破片が分離し難く、永久磁石341が磁石埋め込み穴35aまたは35b内を移動するような事態にはなりにくい。
【0023】
<第2実施形態>
図5はこの発明の第2実施形態においてロータ3の磁石埋め込み穴35aおよび35bに挿入される永久磁石341および補強用シート342の構成を示す正面図である。上記第1実施形態では、永久磁石341の着磁面を含む4面に補強用シート342を5ターン分巻いたが、本実施形態では2つの着磁面と1つの非着磁面からなる3面に補強用シート342を5ターン分巻いている。すなわち、本実施形態では、永久磁石341の周囲の4面のうち1つの非着磁面には、補強用シート342が付着していない。
【0024】
本実施形態では、ロータ3への永久磁石341の埋め込み時、永久磁石341において補強用シート342の付着してない非着磁面がセンタブリッジ32側となるようにして永久磁石341を磁石埋め込み穴35aまたは35bに挿入する。このようにすると、永久磁石341の周囲の4面のうち補強用シート342により覆われた非着磁面が、磁石埋め込み穴35aまたは35bをロータ3の外周に連通させる隙間に臨むこととなる。従って、この非着磁面における永久磁石341の割れを防止し、永久磁石341の破片がロータ3の外周に向けて飛散するのを防止することができる。また、この構成によれば、たとえ補強用シート342の付着してない非着磁面において永久磁石341の割れが発生したとしても、永久磁石341の破片が磁石埋め込み穴35aまたは35bからロータ3の外周に向けて出ようとするのを永久磁石341の本体が妨げる。従って、ロータ3の外周への永久磁石341の破片の飛散を防止することができる。従って、本実施形態においても上記第1実施形態と同様な効果が得られる。また、本実施形態では、補強用シート342を永久磁石341の3面にしか巻かないので、4面に巻く第1実施形態に比べて、補強用シート342の永久磁石341への巻き付け処理を簡単に行うことができる。
【0025】
<第3実施形態>
図6はこの発明の第3実施形態においてロータ3の磁石埋め込み穴35aおよび35bに挿入される永久磁石341および補強用シート342の構成を示す正面図である。上記第2実施形態(
図5)では、5ターン分の補強用シート34
2を永久磁石341の2つの着磁面および1つの非着磁面に巻いたが、本実施形態では1ターン分の補強用シート34
2を永久磁石341の2つの着磁面および1つの非着磁面に巻いている。また、本実施形態において、補強用シート34
2の端部は永久磁石341の2つの着磁面から僅かにはみ出して折れ曲がり、非着磁面に付着している。
【0026】
ここで、補強用シート34
2として用いるFRPは、複数ターンを巻き付けた場合のFRP間の接着強度は高いが、FRPと永久磁石341との接着強度は低い。そこで、本実施形態では、例えば強い巻き締め力でFRPを永久磁石341の表面に押し当て、熱硬化させることによりFRPを永久磁石341の表面に接着させることによりFRPの永久磁石341への接着強度を高めている。
【0027】
本実施形態においても、ロータ3への永久磁石341の埋め込み時、永久磁石341において補強用シート342の付着してない非着磁面がセンタブリッジ32側となるようにして永久磁石341を磁石埋め込み穴35aまたは35bに挿入する。
【0028】
本実施形態においても、上記第1および第2実施形態と同様な効果が得られる。また、本実施形態において、永久磁石341の着磁面と磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁面との間に挟まっている補強用シート342は1ターン分の厚さしか有しない。従って、永久磁石341の着磁面と磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁面との間の磁束密度を高めることができ、小規模の永久磁石341により大きなトルクをロータ3に発生させることができる。また、本実施形態では、補強用シート34
2の端部が永久磁石341の2つの着磁面から僅かにはみ出して折れ曲がり、非着磁面に付着している。このように本実施形態では、補強用シート342が永久磁石341の着磁面と非着磁面との境界の角部を覆っている。従って、永久磁石341における着磁面と非着磁面の境界の角部が磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁に直接衝突するのを防止して、永久磁石341の割れを防止することができる。
【0029】
<第4実施形態>
図7はこの発明の第4実施形態においてロータ3の磁石埋め込み穴35aおよび35bに挿入される永久磁石341および補強用シート342の構成を示す正面図である。本実施形態では、5ターン分の補強用シート34
2を永久磁石341の2つの着磁面を含む4面に巻いて熱硬化させた後、磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁の形状に合わせて左面に面取り加工を加える。
【0030】
本実施形態では、ロータ3への永久磁石341の埋め込み時、永久磁石341において面取りされた補強用シート342の付着している非着磁面がセンタブリッジ32側となるようにして永久磁石341を磁石埋め込み穴35aまたは35bに挿入する。これにより
図3に例示するような丸みを帯びた磁石埋め込み穴35aまたは35bに永久磁石341および補強用シート342を挿入する場合に、面取りされて丸みを帯びた補強用シート342が磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁に当接する。ここで、
図7における補強用シート342の左側端部の曲率半径が小さければ磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁との接触部が痛み易い。しかし、
図7における補強用シート342の左側端部は、十分に大きな曲率半径を有しているので、磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁との接触の衝撃を緩和し、破損を避けることができる。
【0031】
また、本実施形態では、
図7において補強用シート342の上下2面に4ターン分の除去加工を加え、永久磁石341の着磁面と磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁との間の補強用シート342の厚さを1ターン分としている。従って、上記第3実施形態と同様、永久磁石341の着磁面と磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁面との間の磁束密度を高めることができ、小規模の永久磁石341により大きなトルクをロータ3に発生させることができる。
【0032】
<第5実施形態>
図8はこの発明の第5実施形態においてロータ3の磁石埋め込み穴35aおよび35bに挿入される永久磁石341、補強用シート342およびスペーサ343の構成を示す正面図である。本実施形態では、上記第4実施形態と同様な形態の補強用シート342を永久磁石341に付着させるが、この補強用シート342の1ターン目の内側にナイロン等からなる非磁性かつ非導電性のスペーサ343を設けている。具体的には、本実施形態では、予め永久磁石341の左面にナイロンのスペーサ343を接着固定した後、FRPからなる補強用シート34
2を巻いて熱硬化させ、上記第4実施形態と同様なFRPの面取りおよび除去処理を行っている。スペーサ343は、接着剤により永久磁石341に接着固定する他、ネジ等の固定具に永久磁石341に固定してもよい。
【0033】
本実施形態では、ロータ3への永久磁石341の埋め込み時、永久磁石341においてスペーサ343の固定されている非着磁面がセンタブリッジ32側となるようにして永久磁石341を磁石埋め込み穴35aまたは35bに挿入する。本実施形態によれば、永久磁石341に対して磁石埋め込み穴35aまたは35bが大幅に大きい場合にも、スペーサ343により補強用シート342を磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁に押し当てることができる。従って、補強用シート342のターン数・除去加工量をともに減らすことができ、経済的である。
【0034】
また、本実施形態においても、上記第4実施形態と同様、永久磁石341の着磁面と磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁との間の補強用シート342の厚さを1ターン分としている。従って、永久磁石341の着磁面と磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁面との間の磁束密度を高めることができ、小規模の永久磁石341により大きなトルクをロータ3に発生させることができる。なお、スペーサ343の材料として、予め積層されたFRPを用いてもよい。
【0035】
<第6実施形態>
図9はこの発明の第6実施形態においてロータ3の磁石埋め込み穴35aおよび35bに挿入される永久磁石341、補強用シート342およびスペーサ343の構成を示す正面図である。
【0036】
本実施形態において、永久磁石341および補強用シート342の構成は上記第3実施形態(
図6)と同様である。本実施形態では、補強用シート342の付着していない永久磁石341の非着磁面にナイロン等によるスペーサ343が固定されている。スペーサ343は接着剤により永久磁石341に固定してもよく、ネジ等の固定具により永久磁石341に固定してもよい。また、スペーサ343の材料として、予め積層されたFRPを用いてもよい。
【0037】
本実施形態では、ロータ3への永久磁石341の埋め込み時、永久磁石341においてスペーサ343の固定されている非着磁面がセンタブリッジ32側となるようにして永久磁石341を磁石埋め込み穴35aまたは35bに挿入する。本実施形態においても上記第5実施形態と同様な効果が得られる。
【0038】
<第7実施形態>
図10はこの発明の第7実施形態である永久磁石埋め込み式回転電機の製造工程の一部を示すものである。本実施形態は、永久磁石埋め込み式回転電機の製造工程の各工程のうち、特にFRPからなる補強用シート342を永久磁石341に固定する工程に関するものである。本実施形態は、例えば上記第1実施形態(
図4)、第4実施形態(
図7)、第5実施形態(
図8)のように補強用シート342を永久磁石341の4面に固定するのに好適である。
【0039】
本実施形態では、まず、
図10(a)に示すように、永久磁石341の周囲の1つの面(
図10(a)に示す例では左側の非着磁面)に補強用シート342の端部を固定した状態において、この端部を局所的に加熱して熱硬化させ、永久磁石341に固定する。次に
図10(b)に示すように、補強用シート342にテンションを与えつつ、補強用シート342を永久磁石341の周囲に巻き付ける。必要なターン数だけ補強用シート342を永久磁石341の周囲に巻き付けると、
図10(c)に示すように、補強用シート342の一部を局所的に加熱して熱硬化させ、その部分を内側のターンの補強用シート342に接着させる。そして、この接着箇所以降の余った補強用シート342を切り離す。このようにして永久磁石341の周囲に必要なターン数の補強用シート342を巻き付けて固定したものが得られる。この永久磁石341の周囲に必要なターン数の補強用シート342を巻き付けて固定したものを炉に入れて加熱し、永久磁石341に巻き付けられた補強用シート342全体を熱硬化させ、永久磁石341の周囲に固定するのである。
【0040】
本実施形態によれば、永久磁石341に巻き付けるときに補強用シート342に与えるテンションを十分な大きさにすることにより、補強用シート342の永久磁石341に対する接着強度、各ターンの補強用シート342間の接着強度を高めることができる。
【0041】
<第8実施形態>
図11はこの発明の第8実施形態である永久磁石埋め込み式回転電機の製造工程の一部を示すものである。上記第7実施形態と同様、本実施形態は、FRPからなる補強用シート342を永久磁石341に固定する工程に関するものである。本実施形態は、例えば上記第2実施形態(
図5)、第3実施形態(
図6)、第6実施形態(
図9)のように補強用シート342を永久磁石341に固定するのに好適である。
【0042】
本実施形態では、
図11に示すように、所望のターン数(
図11に示す例では1ターン)の補強用シート342を永久磁石341における所望の面(
図11に示す例では上下右の3面)に接触させた状態において、補強用シート342を永久磁石341に向けて押し当て、この状態において補強用シート342および永久磁石341を加熱し、補強用シート342を熱硬化させる。
【0043】
本実施形態によれば、補強用シート342を永久磁石341に押し当てる圧力を十分な大きさにすることにより、補強用シート342の永久磁石341に対する接着強度、各ターンの補強用シート342間の接着強度(複数ターンの補強用シート342を永久磁石341に固定する場合)を高めることができる。
【0044】
以上説明したように、この発明の各実施形態によれば、補強用シート342を永久磁石341に付着させて磁石埋め込み穴35aまたは35bに埋め込むので永久磁石341を割れ難くすることができる。また、たとえ永久磁石341が割れても、磁石と破片との分離を防ぐことができる。また、この発明の各実施形態によれば、磁石埋め込み穴35aまたは35bに埋め込まれた状態において、永久磁石341に付着した補強用シート342の表面と磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁は非接着状態となっている。従って、永久磁石埋め込み式回転電機の稼働時、ロータ3の温度上昇により永久磁石341とロータ3の線膨張係数の差異に起因した応力が永久磁石341に加わるのを回避し、永久磁石341の割れを防止することができる。なお、上記では補強用シート342の表面と磁石埋め込み穴35aまたは35bの内壁を非接着状態としているが、ロータ3と永久磁石341の線膨張率の差異に起因した熱応力により磁石が割れない低弾性接着状態としてもよい。従って、この発明の各実施形態によれば、元来割れ易い性質を持つ永久磁石を長期間に亘って安定的に使用することができる永久磁石埋め込み式回転電機を実現することができる。さらに、補強用シート342を熱硬化させて永久磁石341の素材に付着させた後、その素材の着磁を行うことにより、補強用シート342の熱硬化時の高温により減磁することがなくなる。また、この発明の各実施形態によれば、そのような永久磁石埋め込み式回転電機として、小型であり、低コストであり、かつ、メンテナンスの容易なものを提供することができる。
【0045】
<他の実施形態>
以上、この発明の各実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0046】
(1)上記各実施形態では、補強用シート342を永久磁石341の3面または4面に巻き付けたが、永久磁石341の1面、2面や5面以上に巻き付けてもよい。
【0047】
(2)上記各実施形態では、永久磁石341の形状として概6面体のものを用いたが、その他の形状の永久磁石を用いてもよい。
【0048】
(3)上記第4実施形態(
図7)、第5実施形態(
図8)では、補強用シート342の面取り方法としてR面取りを行ったが、C面取りを行ってもよい。
【0049】
(4)上記各実施形態では、FRPからなる熱硬化性の補強用シート342を用いたが、他の素材からなる補強用シートを用いてもよい。例えば
図12(a)に例示するように熱収縮性の素材からなるチューブ状の補強用シート342内に永久磁石341を収容し、補強用シート342を加熱して収縮させ、
図12(b)に示すように永久磁石341の周囲に固定してもよい。
【0050】
(5)上記各実施形態では、サイドブリッジのないロータに本発明を適用したが、サイドブリッジのあるロータに本発明を適用してもよい。
【0051】
(6)上記各実施形態では、補強用シート342を熱硬化させて磁石の素材に付着させた後、その素材の着磁を行って永久磁石341としているが、着磁された永久磁石341に補強用シート342を付着させるようにしてもよい。