特許第6135817号(P6135817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6135817熱伝導性絶縁シート、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6135817
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】熱伝導性絶縁シート、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20170522BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H01L23/36 D
   H05K7/20 F
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-230822(P2016-230822)
(22)【出願日】2016年11月29日
【審査請求日】2016年11月29日
(31)【優先権主張番号】特願2016-45514(P2016-45514)
(32)【優先日】2016年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤口 壽一
(72)【発明者】
【氏名】柏村 岳
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 豪
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/178416(WO,A1)
【文献】 特開2013−229534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と、窒化ホウ素と、バインダー樹脂とを含む熱伝導性絶縁シートであって、
下記条件(1)〜(7)の全てを満たす熱伝導性絶縁シート。
(1)前記熱伝導性絶縁シートは、空隙率が0.2以下である。
(2)前記熱伝導性絶縁シートは、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を含有し、窒化ホウ素を含有し得る層(A)と、窒化ホウ素を含有し、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を含有し得る層(B)とを有する。
(3)前記層(A)と前記層(B)とは、前記層(B)が最外層には位置しないように交互に積層されている。
(4)最も外側に位置する前記層(Aout)に含まれ得る熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)の質量が、前記層(B)に含まれ得る熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)の質量よりも相対的に多い。
(5)前記層(Aout)中の熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素を合わせた占有体積率が、層(Aout)中における熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)、窒化ホウ素、及びバインダー樹脂の合計体積100%中、50%よりも多い。
(6)前記窒化ホウ素が、鱗片状、および鱗片状の一次粒子を造粒した造粒体からなる群より選ばれる。
(7)前記層(B)は、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素とバインダー樹脂との合計100質量%中、窒化ホウ素を30〜90質量%含む。
【請求項2】
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)がアルミナまたは窒化アルミニウムの少なくとも一方である請求項1記載の熱伝導性絶縁シート。
【請求項3】
最外層(Aout)中に占める、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素を合わせた占有体積率が50%よりも多く90%以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の熱伝導性絶縁シート。
【請求項4】
窒化ホウ素が、平均一次粒子径が0.1〜15μmの窒化ホウ素を造粒してなる、平均粒子径が2〜100μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が5mN以下の窒化ホウ素の易変形性凝集体を含む、請求項1〜3いずれか1項に記載の熱伝導性絶縁シート。
【請求項5】
下記シート(A’)と下記シート(B’)とを、
下記シート(B’)が最外層とはならないように交互に積層し、加圧することを特徴とする、
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と、鱗片状、および鱗片状の一次粒子を造粒した造粒体からなる群より選ばれる窒化ホウ素と、バインダー樹脂を含み、空隙率が0.2以下の熱伝導性絶縁シートの製造方法。
シート(A’)は、
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素とバインダー樹脂との合計100質量%中、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を30〜90質量%、窒化ホウ素を0〜30質量%含み、
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)、窒化ホウ素、及びバインダー樹脂の合計体積100%中、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素を合わせた占有体積率が50%よりも多い。
シート(B’)は、
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素とバインダー樹脂との合計100質量%中、窒化ホウ素を30〜90質量%含み、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を0〜30質量%含む。
前記シート(A’)に含まれる熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)の量が、前記シート(B’)に含まれる熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)の量よりも相対的に多い。
【請求項6】
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)がアルミナまたは窒化アルミニウムの少なくとも一方である請求項5記載の熱伝導性絶縁シートの製造方法。
【請求項7】
シート(A’)中の熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)、窒化ホウ素、及びバインダー樹脂の合計体積100%中、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素を合わせた占有体積率が50%よりも多く90%以下であることを特徴とする、請求項5または6記載の熱伝導性絶縁シートの製造方法。
【請求項8】
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と、鱗片状、および鱗片状の一次粒子を造粒した造粒体からなる群より選ばれる窒化ホウ素と、バインダー樹脂とを含む、空隙率が0.2以下の熱伝導性絶縁シートであって、
下記シート(A’)と下記シート(B’)とが、
下記シート(B’)が最外層とはならないように交互に積層され、加圧されてなる、熱伝導性絶縁シート。
シート(A’)は、
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素とバインダー樹脂との合計100質量%中、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を30〜90質量%、窒化ホウ素を0〜30質量%含み、
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)、窒化ホウ素、及びバインダー樹脂の合計体積100%中、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素を合わせた占有体積率が50%よりも多い。
シート(B’)は、
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素とバインダー樹脂との合計100質量%中、窒化ホウ素を30〜90質量%含み、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を0〜30質量%含む。
前記シート(A’)に含まれる熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)の量が、前記シート(B’)に含まれる熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)の量よりも相対的に多い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性と絶縁性とを高レベルで満足する熱伝導性絶縁シートとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の発熱を逃す放熱シートにおいては、高い熱伝導性と絶縁性の両立が求められる。絶縁性を有する高熱伝導性物質として窒化ホウ素があるが、窒化ホウ素は鱗片状であり、鱗片の面に並行な方向、即ち放熱シートの面方向では熱伝導性は高いが、鱗片の面に直行する方向、即ち放熱シートの厚み方向には熱伝導性は低いという特徴がある。
【0003】
そのため、放熱シートの膜厚方向への熱伝導性を向上させるには窒化ホウ素をシート内で「立てる」必要がある。
【0004】
窒化ホウ素を「立てる」手段のひとつとして、窒化ホウ素の1次粒子を造粒した造粒物を用いる方法がある。しかし、放熱シートを熱発生源と放熱部材との間に挟む際に、圧力がかかった場合、造粒物が崩れ、窒化ホウ素の一次粒子が寝てしまい熱伝導性が低下する場合がある。
【0005】
特許文献1には、気孔率が低く硬い窒化ホウ素の造粒体を使うことで、圧力による窒化ホウ素の造粒体の崩壊を防止し、熱伝導性の低下を抑制しようとする技術が開示されている。
【0006】
特許文献2には、柔らかく変形しやすい窒化ホウ素の造粒体を用い、造粒体が完全に崩壊しない程度に変形することで圧力を緩和し、熱伝導性の低下を抑制しようとする技術が開示されている。
【0007】
特許文献3には、窒化ホウ素等の熱伝導性フィラーを含む層に平滑な接着層を貼り合せ、熱伝導性フィラーを含む層表面の凹凸を埋めて接着力の向上を図ろうとする技術が開示されている。
【0008】
特許文献4には、大きさの異なる3種類の熱伝導性フィラーを含む樹脂層と、前記樹脂層の少なくとも一方の面上に配置された接着剤層とを備えた多層樹脂シートが記載され、接着剤層にも酸化アルミウム等のフィラーを含有し得る旨開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−157563号公報
【特許文献2】特開2015−34269号公報
【特許文献3】特開2013−39834号公報
【特許文献4】WO2012/046814
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、エレクトロニクス分野において、特に電子機器の小型化、軽量化、高密度化、及び高出力化が著しく進み、それに伴い要求される信頼性、性能のレベルも高くなっている。中でも、電子回路の高密度化、高出力化に伴う絶縁信頼性や、発熱から電子部材の劣化を防ぐための放熱性(熱伝導性)の性能向上が強く求められている。
また、部材の軽量化を狙い、上記課題を高分子材料を用いて克服しようとする試みも始まり、絶縁性を高めた高分子材料に熱伝導性粒子を混合した熱伝導性絶縁シート、更に、接着性を有する熱伝導性絶縁接着シートあるいは熱伝導性絶縁粘着シート等の開発が進んでいる。
【0011】
前記熱伝導性部材に使用する熱伝導粒子の開発も精力的に行われているが、価格、信頼性、熱伝導性を鑑み、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などを用いたものが主流になりつつあり、特にパワー半導体などの高出力デバイスを狙った熱伝導性接着シートなどでは窒化ホウ素を用いた開発事例も数多く報告されている。
【0012】
ところで、電気は物質間の界面を伝搬する性質があるため、窒化ホウ素が「立っている」ほど、窒化ホウ素とバインダー樹脂の界面を電気が伝わり、絶縁性は低下傾向を示す。同様に放熱シート中に空隙があると空気界面を電気が伝搬し絶縁性が低下する。
【0013】
空隙は放熱シートに圧力を加えることで低減することが出来るが、前述した通り圧力により窒化ホウ素が寝てしまうので熱伝導性が低下してしまう。
従って、熱伝導性と絶縁性の両立のためには、窒化ホウ素を「立てた」状態で、放熱シート内の空隙を出来るだけ少なくして絶縁性を向上する必要がある。
【0014】
特許文献1は、内部の空隙の少ない造粒体の利用を開示するが、放熱シートを形成する際に生じる空隙を考慮しておらず、また変形しにくい硬いフィラーでは圧力をかけても空隙が減少しきらないため絶縁性に劣る。
特許文献2に開示される造粒体は圧力をかけた際に変形しやすいため、空隙は減少しやすいが、変形に伴い、窒化ホウ素造粒体が寝てしまい熱伝導率は低下する。
【0015】
また、高い熱伝導性を求めると窒化ホウ素濃度を上げていく必要がある。しかし、窒化ホウ素は、濡れ性が悪くまた形状が不揃いなので、バインダー樹脂溶液に高濃度で分散した場合、塗液流動性のコントロールが難しい。その結果、そのような高濃度分散液を塗布すると塗膜表面が凹凸になると共に、塗膜内部にも空隙が出来やすい。これは造粒された窒化ホウ素で特に顕著である。
【0016】
特許文献3に記載される方法は、あくまで熱伝導性フィラーを含む層の表面の凹凸を埋めることがポイントのため、熱伝導性フィラーを含む層内部の空隙が考慮されていない。そのため、とくに膜厚が厚くなると、絶縁性向上は限界がある。
【0017】
一方、窒化ホウ素の造粒体より真球度の高い熱伝導性フィラーを用いた場合、バインダー樹脂に比較的高濃度で分散しても流動性が高く、塗膜に空隙は生じにくい。しかし、真球度の高い熱伝導性フィラーは、熱伝導率が窒化ホウ素に比べ低かったり、加湿状態での安定性が劣ったりするといった欠点を持つ。
【0018】
特許文献4は、前述の通り接着剤層にも酸化アルミウム等のフィラーを含有し得る旨開示し、前記フィラーの量は50体積%以下であることが好適であると記載されている([0101]、[0103]参照)。
しかし、多層シートの最外層を成す接着剤層に含まれる前記フィラーの量が少ないので、多層シート全体として十分な熱伝導性能を発揮することができない。さらに、特許文献3の場合と同様に、熱伝導性フィラーを含む樹脂層内部の空隙が大きいため、絶縁性の向上に限界がある。
【0019】
本発明の目的は、従来よりも高い熱伝導性と絶縁性を両立した熱伝導性絶縁シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と、窒化ホウ素と、バインダー樹脂とを含む熱伝導性絶縁シートであって、
下記条件(1)〜(5)の全てを満たす熱伝導性絶縁シート。
(1)前記熱伝導性絶縁シートは、空隙率が0.2以下である。
(2)前記熱伝導性絶縁シートは、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を含有し、窒化ホウ素を含有し得る層(A)と、窒化ホウ素を含有し、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を含有し得る層(B)とを有する。
(3)前記層(A)と前記層(B)とは、前記層(B)が最外層には位置しないように交互に積層されている。
(4)最も外側に位置する前記層(Aout)に含まれ得る熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)の質量が、前記層(B)に含まれ得る熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)の質量よりも相対的に多い。
(5)前記層(Aout)中の熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素を合わせた占有体積率が、層(Aout)中における熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)、窒化ホウ素、及びバインダー樹脂の合計体積100%中、50%よりも多い。
【0021】
上記本発明において、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)は、アルミナまたは窒化アルミニウムの少なくとも一方であることが好ましい。
最外層(Aout)中に占める、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素を合わせた占有体積率は50%よりも多く90%以下であることが好ましい。
また、窒化ホウ素は、平均一次粒子径が0.1〜15μmの窒化ホウ素を造粒してなる、平均粒子径が2〜100μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が5mN以下の窒化ホウ素の易変形性凝集体を含むことが好ましい。
【0022】
また、本発明は、下記シート(A’)と下記シート(B’)とを、
下記シート(B’)が最外層とはならないように交互に積層し、加圧することを特徴とする、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素とバインダー樹脂を含み、空隙率が0.2以下の熱伝導性絶縁シートの製造方法に関する。
シート(A’)は、
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素とバインダー樹脂との合計100質量%中、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を30〜90質量%、窒化ホウ素を0〜30質量%含み、
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)、窒化ホウ素、及びバインダー樹脂の合計体積100%中、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素を合わせた占有体積率が50%よりも多い。
シート(B’)は、
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素とバインダー樹脂との合計100質量%中、窒化ホウ素を30〜90質量%含み、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を0〜30質量%含む。
前記シート(A’)に含まれる熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)の量が、前記シート(B’)に含まれる熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)の量よりも相対的に多い。
【0023】
上記本発明において、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)がアルミナまたは窒化アルミニウムの少なくとも一方であることが好ましい。
また、シート(A’)中の熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)、窒化ホウ素、及びバインダー樹脂の合計体積100%中、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素を合わせた占有体積率が50%よりも多く90%以下であることが好ましい。
【0024】
さらに本発明は、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と、窒化ホウ素と、バインダー樹脂とを含む、空隙率が0.2以下の熱伝導性絶縁シートであって、
下記シート(A’)と下記シート(B’)とが、
下記シート(B’)が最外層とはならないように交互に積層され、加圧されてなる、熱伝導性絶縁シートに関する。
シート(A’)は、
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素とバインダー樹脂との合計100質量%中、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を30〜90質量%、窒化ホウ素を0〜30質量%含み、
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)、窒化ホウ素、及びバインダー樹脂の合計体積100%中、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素を合わせた占有体積率が50%よりも多い。
シート(B’)は、
熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素とバインダー樹脂との合計100質量%中、窒化ホウ素を30〜90質量%含み、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を0〜30質量%含む。
前記シート(A’)に含まれる熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)の量が、前記シート(B’)に含まれる熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)の量よりも相対的に多い。
【発明の効果】
【0025】
本発明の熱伝導性絶縁シートは、窒化ホウ素をシート内で「立て」つつ、シート内の空隙を出来るだけ少なくし、最外層がシート内部の熱伝導性能を活かすことにより、高い熱伝導性と絶縁性を両立できた。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の熱伝導性絶縁シートは、主に熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を含有する層(A)と主に窒化ホウ素を含有する層(B)を有し、前記層(B)が最外層とはならないように両層が交互に積層されている。従って、本発明の熱伝導性絶縁シートは、層(A)/層(B)/層(A)を最小単位とし、奇数の層より成る。層(A)のうち外部に位置する層を最外層(Aout)という。
また、本発明の熱伝導性絶縁シートは、主に熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を含有する最外層(Aout)の外側を、剥離性シートで覆うこともできる。
なお、「熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)」は、以下、熱伝導性球状フィラーと略記する。
【0027】
[熱伝導性球状フィラー]
本発明において球状であるとは、例えば、「円形度」であらわすことができ、この円形度とは、粒子をSEM等で撮影した写真をから任意の数の粒子を選び、粒子の面積をS、周囲長をLとしたとき、(円形度)=4πS/L2として表すことができる。円形度を測定するには、各種画像処理ソフト、または画像処理ソフトを搭載した装置を使用することができるが、本発明では、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて粒子の平均円形度を測定した際の平均円形度が0.9〜1のものをいう。好ましくは、平均円形度が0.96〜1である。
【0028】
熱伝導性球状フィラーは、窒化ホウ素以外のものであって、熱伝導性を有していればよく、例えば、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物、窒化アルミニウム等の金属窒化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸金属塩、ケイ酸カルシウム等のケイ酸金属塩、水和金属化合物、結晶性シリカ、非結晶性シリカ、炭化ケイ素またはこれらの複合物等が挙げられる。これらは、1種類でもよいし複数の種類を併用することもできる。
球形度、熱伝導性、絶縁性の観点からアルミナまたは窒化アルミニウムの少なくとも一方であることが望ましい。
【0029】
熱伝導性球状フィラーの大きさは、特に制限されないが、熱伝導性の観点から、平均粒子径10μm〜100μmの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、平均粒子径10μm〜50μmの範囲であると良い。フィラーの平均粒子径が10μmよりも小さいと熱伝導性を発現するために必要な充填量が増えるが、その際、比表面積が大きいために空隙ができやすくなり、絶縁性を損なう恐れがある。また、平均粒子径が100μmを超えると、熱伝導性は有利になるが、塗液中で沈降するなど塗工の際の不具合を生じる可能性がある。
【0030】
[窒化ホウ素]
本発明では種々の窒化ホウ素を用いることができ、例えば、鱗片状、凝集体、造粒体等を使用することができる。窒化ホウ素は熱伝導性に異方性を有するため、鱗片状の一次粒子を造粒した造粒窒化ホウ素が好適に用いられる。しかし、変形しにくい造粒窒化ホウ素では圧力をかけても空隙が残りやすいため、特に、易変形性造粒窒化ホウ素を用いることが好ましい。
【0031】
本発明でいう易変形性造粒窒化ホウ素とは、平均一次粒子径が0.1〜15μmの窒化ホウ素を造粒してなる、平均粒子径が2〜100μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が5mN以下の窒化ホウ素の凝集体である。
易変形性造粒窒化ホウ素は、熱伝導性絶縁シートを形成する際の圧力を調整し、変形を適度な範囲に調整することで、空隙率の低下と熱伝導性を両立することが容易であるため好適に用いられる。
【0032】
本発明において「一次粒子」とは、単独で存在することができる最小粒子を表し、「平均一次粒子径」とは、走査型電子顕微鏡で観察される一次粒子径の長径を意味する。「一次粒子径の長径」とは、球状粒子については一次粒子の最大直径を意味し、六角板状または円板状粒子については、それぞれ厚み方向から観察した粒子の投影像における最大直径または最大対角線長を意味する。具体的に「平均一次粒子径」は、300個の粒子の長径を上記方法により測定し、その個数平均として算出する。
圧縮変形率10%に要する平均圧縮力は、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCT−210)を用い、測定領域内で無作為に選んだ10個の粒子について、粒子を10%変形させるための荷重を測定し、求めることができる。
【0033】
[バインダー樹脂]
本発明で使用されるバインダー樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、ゼラチン、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、および塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂は、1種または2種以上を用いることができる。
【0034】
上記の中でも、柔軟性の観点からはウレタン系樹脂もしくはポリアミド樹脂が好適に用いられ、電子部品として用いる際の絶縁性および耐熱性等の観点からはエポキシ系樹脂が好適に用いられる。
【0035】
バインダー樹脂としては、バインダー樹脂自体硬化するか、もしくは適当な硬化剤との反応により硬化するものを用いることができる。
【0036】
バインダー樹脂に反応基としてカルボキシル基、アミノ基、フェノール性水酸基等を有する場合、これと反応し得る硬化剤として2官能以上の、エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、金属キレート、金属アルコキシドおよび金属アシレート等を含んでもよい。
【0037】
本発明の熱伝導性絶縁シートは、熱発生源と放熱部材との間に挟まれ使用される。そのため、熱発生源から生じた熱を効率的に放熱部材に伝え、さらに十分な絶縁性を確保するために空隙率は0.2以下であることが必要であり、さらに0.15以下であることが望ましい。空隙率が0.2を超えると十分な絶縁性が得られなかったり、シートの凝集力が低下し機械的強度や接着力が低下したり、空気・水分がシート内部に侵入したりしやすくなり耐久性が低下する恐れがある。
【0038】
<空隙率>
本発明でいう空隙率は以下の式にて求められる。
空隙率=1−(熱伝導性絶縁シートの実測密度/熱伝導性絶縁シートの理論密度)
熱伝導性絶縁シートの実測密度=熱伝導性絶縁シート質量(g)/熱伝導性絶縁シート体積(cm
熱伝導性絶縁シートの理論密度=シート(A’)およびシート(B’)の質量の和(g)/同体積の和(cm
シート(A’)およびシート(B’)の体積=同質量(g)/同密度(g/cm
窒化ホウ素、熱伝導性球状フィラー等の密度は一般的なものを用いる。
バインダー樹脂その他の有機成分の密度は仮に1とする。
【0039】
熱伝導性絶縁シートに空隙がない場合、実測密度と理論密度が等しくなり、空隙率=0となる。
仮に熱伝導性絶縁シートの実測重量に対し体積が無限大に大きい場合、実測密度≒0となり、空隙率≒1となる。
熱伝導性絶縁シートが空隙を含み実測密度が理論密度を下回る場合、空隙率は0〜1の値となる。
【0040】
なお、熱発生源と放熱部材との間に挟まれた状態での空隙率が測定困難な場合は、熱伝導性絶縁性シートに剥離シートを貼った状態で、挟んで使用する場合と同様の条件で加圧プレスした後、空隙率を測定する。
熱発生源と放熱部材との間に挟まれた状態での空隙率を予測することにより、熱伝導性絶縁シートの使用条件を設定することができる。
【0041】
本発明の熱伝導性絶縁シートは、主に窒化ホウ素を含有し、空隙の多いシート(B’)の両面を、主に熱伝導性球状フィラーを含有するシート(A’)で挟み、加圧することより得られる。主に熱伝導性球状フィラーを含有するシート(A’)は、含まれるフィラーが球状なので、無溶剤状態でもシート(A’)が加圧・加熱により容易に変形しやすい。その結果、シート(A’)中に含まれ、シート(B’)との積層界面近傍に位置していた熱伝導性球状フィラーやバインダーおよび含まれ得る窒化ホウ素の一部が、加圧・加熱により、空隙の多いシート(B’)内の空隙を埋め、熱伝導性絶縁シート全体の空隙率を低減できたものと考察している。
そして、熱伝導性球状フィラーを含有し、変形しやすい層(A)が最外層に位置することにより、発熱源や放熱部材の凹凸への追従性・接着性が向上でき、その点からも熱伝導性が向上できたものと考察する。
なお、加圧・加熱により、シート(A’)中に含まれていた熱伝導性球状フィラー、バインダー樹脂および含まれ得る窒化ホウ素がどの程度シート(B’)に移行し、シート(B’)の空隙率を埋めたのかを特定する手段がないこと(若しくは特定には非現実的な多大な労力を要すこと)、そして本発明で用いるバインダー樹脂、熱伝導性球状フィラー、及び窒化ホウ素は不揮発性成分であることから、シート(A’)やシート(B’)を加圧、加熱した前後で、後述する占有体積率は変化しないとみなし、便宜上シート(A’)中に含まれていた各成分の量をもって、層(Aout)中の量とし占有体積率とする。
【0042】
<熱伝導性球状フィラーを含有するシート(A’)>
熱伝導性球状フィラーを含有するシート(A’)は、熱伝導性球状フィラーと窒化ホウ素とバインダー樹脂との合計100質量%中、熱伝導性球状フィラーを30〜90質量%、窒化ホウ素を0〜30質量%含む。そして、後述する主に窒化ホウ素を含有するシート(B’)よりも、相対的に熱伝導性球状フィラーを多く含む。
前記シート(A’)中の熱伝導性球状フィラー濃度は、熱伝導性の点から30質量%以上、塗膜形成性の点から90質量%以下であり、望ましくは50〜80質量%の範囲である。
本発明の熱伝導性絶縁シートを形成する際、後述するシート(B’)よりも、相対的に熱伝導性球状フィラーを多く含むシート(A’)を、最外層になるように交互に積層することにより、前述の通り、発熱源や放熱部材の凹凸への追従性・接着性が向上する。
【0043】
前記シート(A’)は、30質量%以下の範囲で窒化ホウ素を含み得る。窒化ホウ素を併用することで熱伝導性が向上するが、30質量%よりも多いとシート(B’)に積層しても空隙の減少が不十分となったりする。
前記シート(A’)用いる窒化ホウ素は、窒化ホウ素を含有する層(B)で用いられる窒化ホウ素と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0044】
前記シート(A’)は、熱伝導性絶縁シートにおいて最外層(Aout)となり、熱発生源や冷却器と直接接触する層であるため、接着性と共に高い熱伝導性が必要とされる。そのため、最外層(Aout)もしくはシート(A’)中における熱伝導性球状フィラー、窒化ホウ素、及びバインダー樹脂の合計体積100%中、含まれる熱伝導性球状フィラーと窒化ホウ素を合わせた占有体積は50%より多いことが重要であり、接着性等の実用物性を鑑みると、更に好ましくは、50%より多く、90%以下であることが好ましい。
【0045】
このとき、占有体積率(vol%と呼ぶ)は次のようにして算出することができる。
熱伝導性球状フィラーの重量(g)÷フィラー比重(g/cm)・・・(1) 窒化ホウ素の重量(g)÷窒化ホウ素比重(g/cm)・・・(2)
シート中の不揮発性成分(g)÷1(g/cm)・・・(3)
体積%=100×{((1)+(2))/((1)+(2)+(3))
※シート中の不揮発性成分は、計算を容易にするため比重を1g/cmとした。
なお、本発明では、前述の通り、用いるバインダー樹脂、熱伝導性球状フィラー、及び窒化ホウ素は不揮発性成分であるため、例えば、シート(A’)やシート(B’)を加圧、加熱した前後で上記占有体積率は変化しないとみなす。
【0046】
<窒化ホウ素を含有するシート(B’)>
窒化ホウ素を含有するシート(B’)は、窒化ホウ素を含有する層(B)を形成するためのものであり、高い熱伝導率を有し、熱伝導性絶縁シート全体の熱伝導性を高める機能を担う。
前記シート(B’)は、熱伝導性球状フィラーと窒化ホウ素とバインダー樹脂との合計100質量%中、窒化ホウ素を30〜90質量%含み、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を0〜30質量%含む。
前記シート(B’)中の窒化ホウ素濃度は、熱伝導性の点から30質量%以上、膜形成性の点から90質量%以下であり、望ましくは40〜80質量%の範囲である。
【0047】
前記シート(B’)は、30質量%以下の範囲で熱伝導性球状フィラーを併用してもよい。
鱗片状の窒化ホウ素に対しては、熱伝導性球状フィラーがジャマ板の機能を担い、鱗片状の窒化ホウ素が前記シート(B’)および窒化ホウ素を含有する層(B)中で「立ち」やすくなる。
造粒窒化ホウ素に対し、熱伝導性球状フィラーを併用すると、造粒窒化ホウ素圧力をかけても崩れにくくなるが、熱伝導性球状フィラーが30質量%を超えると、相対的に前記シート(B’)等中の窒化ホウ素が少なくなり熱伝導性が低下したり、バインダー樹脂量が不足し、膜形成性が低下したりする。
併用する熱伝導性球状フィラーは、前記シート(A’)で用いられているものと同じである必要はない。
【0048】
前記シート(A’)、(B’)は、それぞれさらに必要に応じて、難燃剤、充填剤、その他各種添加剤を含むことができる。
難燃剤としては例えば、水酸化アルミニウム、および水酸化マグネシウム、リン酸化合物等が挙げられる。
添加剤として例えば、基材密着性を高めるためのカップリング剤、吸湿時・高温時の信頼性を高めるためのイオン捕捉剤・酸化防止剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
【0049】
本発明の熱伝導性絶縁シートは、例えば以下のような方法で得ることができる。
熱伝導性球状フィラーと窒化ホウ素とバインダー樹脂との合計100質量%中、熱伝導性球状フィラーを30〜90質量%、窒化ホウ素を0〜30質量%、液状分散媒、および必要に応じて他の任意成分を含有する塗液(A‘’)を調製し、これを剥離性シートに塗工後、液状分散媒を揮発乾燥し、剥離性シート付きのシート(A’)を作成する。
【0050】
別途、同様にして熱伝導性球状フィラーと窒化ホウ素とバインダー樹脂との合計100質量%中、窒化ホウ素を30〜90質量%含み、熱伝導性球状フィラーを0〜30質量%、液状分散媒、および必要に応じて他の任意成分を含有する塗液(B‘’)を調製し、これを離形性シートに塗工後、溶剤を揮発乾燥し、剥離性シート付きのシート(B’)を作成する。
【0051】
しかる後、剥離性シート付きのシート(B’)の剥離性シートとは反対側と、剥離性シート付きのシート(A’)の剥離性シートとは反対側とを重ね合せる。重ね合せる際、加圧することもできる。
次いでシート(B’)の表面を覆っていた剥離性シートを剥がし、露出したシート(B’)の表面に、他の剥離性シート付きのシート(A’)の剥離性シートとは反対側を重ね合せ、[剥離性シート/シート(A’)/シート(B’)/シート(A’)/剥離性シート]という状態の積層体を得る。
そして、前記積層体を加圧することにより、シート(A’)/シート(B’)/シート(A’)を一体化し、「層(Aout)/層(B)/層(Aout)]という状態の熱伝導性絶縁シートを得る。
両面の剥離性シートを剥がしてから加圧することもできる。
加圧圧着方法は特に限定されず、公知のラミネーターまたはプレス処理機を使用することができる。加圧する際には加熱することが好ましい。
【0052】
熱伝導性絶縁シートは、最も基本的な「層(Aout)/層(B)/層(Aout)]という積層構成の他、「層(Aout)/層(B)/層(A)/層(B)/層(Aout)]や「層(Aout)/層(B)/層(A)/層(B)/層(A)/層(B)/層(Aout)]とすることもできる。
【0053】
シート(A’)形成用の前記塗液(A‘’)、シート(B’)形成用の前記塗液(B‘’)は、熱伝導性フィラー、窒化ホウ素、バインダー樹脂、溶剤、および必要に応じて他の任意成分を撹拌混合することで製造することができる。
撹拌混合には一般的な撹拌方法を用いることができる。撹拌混合機としては特に限定されないが、例えば、ディスパー、スキャンデックス、ペイントコンディショナー、サンドミル、らいかい機、メディアレス分散機、三本ロール、およびビーズミル等が挙げられる。
【0054】
撹拌混合後は、塗液(A‘’)および塗液(B‘’)から気泡を除去するために、脱泡工程を経ることが好ましい。脱泡方法としては、特に制限されないが、例えば、真空脱泡、および超音波脱泡等が挙げられる。
【0055】
剥離性シートとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、およびポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムに離型処理したものが挙げられる。
【0056】
剥離性シートへの塗液(A‘’)および塗液(B‘’)の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ナイフコート、ブレードコオート、コンマコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビアコート、フレキソコート、ディップコート、スプレーコート、スクリーンコート、ディスペンサー、インクジェットおよびスピンコート等が挙げられる。
【0057】
シート(A’)およびシート(B’)の膜厚、単位面積当たりの塗布質量は特に規定しないが、シート(B’)の膜厚に対し、シート(A’)の膜厚が相対的に十分厚い場合、積層により効果的に空隙を減少できる。例えば、[層(A)/層(B)/層(A)]の熱伝導性絶縁シートの場合、層(A)形成用のシート(A’)の膜厚は層(B)形成用のシート(B’)の半分程度であることが好ましいが、各シートの厚みは、最終的に得られる[層(A)/層(B)/層(A)]の空隙率と熱伝導率を見ながら、積層時の加圧・加熱条件を勘案し決定することができる。
加圧圧着時の温度および圧力は適宜選択することが出来るが、高圧にしすぎると窒化ホウ素が「寝て」しまい熱伝導性が低下し、低すぎるとシート内に空隙が残り、熱発生源と放熱部材との間に挟み使用する際の熱伝導性が低下する。
【0058】
加圧プレス処理方法は特に限定されず、公知のプレス処理機やラミネーターを使用することができる。加圧プレス時の温度は適宜選択することが出来るが、熱硬化性接着シートとして使用するのであれば、バインダー樹脂の熱硬化が起こる温度以上で加熱することが望ましい。必要に応じて、減圧することにより大気圧との差で加圧プレスすることができる。
【0059】
本発明の熱伝導性絶縁シートは、主に熱発生源としての電子部材と冷却器との間をつなぎ、熱を効率良く逃がす用途に用いられる。放熱対象の物品としては特に制限はないが、例えば、集積回路、ICチップ、ハイブリッドパッケージ、マルチモジュール、パワートランジスタ、パワー半導体パッケージ、面抵抗器、及びLED(発光ダイオード)用基板等の種々の電子部品や、建材、車両、航空機、および船舶等に用いられ、熱を帯びやすく、性能劣化を防ぐためにその熱を外部に逃がす必要がある物品等が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例において、「部」および「%」は特に明記しない限り、それぞれ「質量部」、「質量%」を表す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0061】
<樹脂合成例1>
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、多塩基酸化合物としてプリポール1009(クローダジャパン社製)を86.8質量部、5−ヒドロキシイソフタル酸を27.3質量部、ポリアミン化合物としてプリアミン1074(クローダジャパン社製)を146.4質量部、イオン交換水を100質量部仕込み、発熱の温度が一定になるまで撹拌した。温度が安定したら110℃まで昇温し、水の流出を確認してから、30分後に温度を120℃に昇温し、その後、30分後とに10℃ずつ昇温しながら脱水反応を続けた。温度が230℃になったら、そのままの温度で3時間反応を続け、約2kPaの真空下で、1時間保持し、温度を低下させた。
最後に、酸化防止剤を添加し、温度が100℃以下になったらトルエンと2−プロパノールの質量比1/1の混合溶剤で固形分40%に希釈し、Mw=19,000、酸価=14.5mgKOH/g、フェノール性水酸基価=32.3mgKOH/gのフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂(樹脂1)の溶液を得た。
【0062】
<樹脂合成例2>
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、および窒素導入管を備えた反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとから得られたポリエステルポリオール((株)クラレ製「クラレポリオールP−1011」、Mn=1006)401.9質量部、ジメチロールブタン酸12.7質量部、イソホロンジイソシアネート151.0質量部、およびトルエン40質量部を仕込み、窒素雰囲気下90℃3時間反応させ、これにトルエン300質量部を加えてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。
次に、イソホロンジアミン27.8質量部、ジ−n−ブチルアミン3.2質量部、2−プロパノール342.0質量部、トルエン396.0質量部を混合したものに、得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液815.1質量部を添加し、70℃3時間反応させ、トルエン144.0質量部および2−プロパノール72.0質量部で希釈し、固形分30%、Mw=54,000、酸価=8mgKOH/gのポリウレタンポリウレア樹脂(樹脂2)の溶液を得た。
【0063】
<硬化剤>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート1001)の50%トルエン溶液を、以下硬化剤とする。
【0064】
<溶剤>
トルエンと2−プロパノールをあらかじめ質量比で1対1で混合したものを、以下混合溶剤とする。
【0065】
<平均粒子径>
熱伝導性球状フィラーの平均粒子径は、Malvern Instruments社製粒度分布計マスターサイザー2000を用いて測定した。測定の際には乾式ユニットを用い、空気圧は2.5バールとした。フィード速度はサンプルにより最適化した。
【0066】
<円形度>
熱伝導性球状フィラーの円形度は、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて平均円形度を測定した。トルエン10mlに測定したい粒子約5mgを分散させて分散液を調製し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5,000〜2万個/μlとした。この分散液を用い、上記装置により測定を行い、円相当径粒子群の円形度を測定し、平均円形度を求めた。
【0067】
<圧縮変形率10%に要する平均圧縮力>
易変形性凝集体の圧縮変形率10%に要する平均圧縮力は微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCT−210)を用い、測定領域内で無作為に選んだ10個の粒子について、粒子を10%変形させるための荷重を測定した。その平均値を圧縮変形率10%に要する平均圧縮力とした。
【0068】
<シート1A’>製造例
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を8.6質量部、硬化剤2.7質量部、混合溶剤13.5質量部を混ぜ合わせた中に、
平均円形度0.99、平均粒子径10μmである球状アルミナ((株)アドマテックス製アドマファインAO−509、以下「熱伝導性球状フィラー1」という)21質量部と、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が1.32mNであり、平均粒子径が65〜85μmである造粒窒化ホウ素(スリーエムジャパン株式会社製、Agglomerates100、以下、「窒化ホウ素1」という)4.2質量部を加え、
ディスパー撹拌したのち、超音波攪拌機に2分かけて脱泡して得られた塗液を、6MILのブレードコーターを用いて、剥離性シート(厚さ75μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)に塗布し、100℃で2分間、乾燥して、単位面積当たりの塗布量と下記で計算した理論密度から導かれる理論膜厚が34μmのシート1A’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体1A’を得た。
【0069】
組成から計算したシート1A’に含まれる、球状アルミナの質量%、窒化ホウ素の質量%は以下の通り。
球状アルミナの質量%=(球状アルミナの質量/シート1A’各成分の乾燥質量の和)×100
=[21.0/(8.6×0.4+2.7×0.5+21.0+4.2)]×100
=70
窒化ホウ素の質量%=(窒化ホウ素の質量/シート1A’各成分の乾燥質量の和)×100
=[4.2/(8.6×0.4+2.7×0.5+21.0+4.2)]×100
=14
【0070】
組成から計算したシート1A’の理論密度は
(シート1A’各成分の乾燥質量の和)/(シート1A’各成分の乾燥体積の和)
=(樹脂1の乾燥質量+硬化剤の乾燥質量+球状アルミナの質量+窒化ホウ素の質量)/[(樹脂1の乾燥質量/樹脂1の密度)+(硬化剤の乾燥質量/硬化剤の密度)+(球状アルミナの質量/球状アルミナの密度)+(窒化ホウ素の質量/窒化ホウ素の密度)]
=(8.6×0.4+2.7×0.5+21.0+4.2)/[(8.6×0.4/1)+(2.7×0.5/1)+(21.0/3.9)+(4.2/2.3)]
=2.50である。
【0071】
組成から計算したシート1A’中の熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素を合わせた占有体積率は、
(1)熱伝導性球状フィラーの重量(g)÷フィラー比重(g/cm
=21/3.9
=5.38(cm

(2)窒化ホウ素の重量(g)÷窒化ホウ素比重(g/cm
=4.2/2.3
=1.83(cm

(3)シート中の不揮発性成分(g)÷1(g/cm
=((8.6×0.4)+(2.7×0.5))+(21.0/3.9)+(4.2/2.3))/1
=(3.44+1.35+5.38+1.83)/1
=12

体積%=100×{((1)+(2))/((1)+(2)+(3))
=100×{(5.38+1.83)/(3.44+1.35+5.83+1.83+4.79)}
=60(vol%)
【0072】
<シート3A’>製造例
樹脂合成例2で得られた樹脂2の溶液を15質量部、硬化剤0.6質量部、混合溶剤9.2質量部を混ぜ合わせた中に、
熱伝導性球状フィラー1:21質量部と窒化ホウ素1:4.2質量部を加え、
ディスパー撹拌したのち超音波攪拌機に2分かけて脱泡して得られた塗液を用い、シート1A’と同様にして、シート3’Aの一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体3A’を得た。
【0073】
<シート4A’>製造例
熱伝導性球状フィラー1の代わりに、平均円形度0.97、平均粒子径が1μmである球状窒化アルミニウム(株式会社トクヤマ製Hグレード、以下、「熱伝導性球状フィラー2」という)21質量部を用いた以外は、シート1A’と同様にして、シート4A’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体4A’を得た。
【0074】
<シート5A’>製造例
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を6.5質量部、硬化剤を2質量部、混合溶剤を15.1質量部とし、熱伝導性球状フィラー1を26.4質量部とし、窒化ホウ素1を用いなかった以外は、シート1A’と同様にして、シート5A’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体5A’を得た。
【0075】
<シート6A’>製造例
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を12.4質量部、硬化剤3.9質量部、混合溶剤10.6質量部を混ぜ合わせた中に、
平均円形度0.98、平均粒子径が21μmである球状アルミナ(昭和電光株式会社製CB−A20S、以下、「熱伝導性球状フィラー3」という)16.5質量部と、窒化ホウ素1:6.6質量部を加え、
ディスパー撹拌したのち超音波攪拌機に2分かけて脱泡して得られた塗液を用い、シート1A’と同様にして、シート6A’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体6A’を得た。
【0076】
<シート7A’>製造例
窒化ホウ素1の代わりに、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が3.6mNであり、平均粒子径が55〜65μmである造粒窒化ホウ素(モメンティブ製PTX−60、以下、「窒化ホウ素2」という)4.2質量部を用いた以外は、シート1A’と同様にして、シート7A’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体7A’を得た。
【0077】
<シート9A’>製造例
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を4.5質量部、硬化剤1.4質量部、混合溶剤21.6質量部、熱伝導性球状フィラー1を17.5質量部、窒化ホウ素1を5質量部とした以外は、シート1A’と同様にして、シート9A’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体9A’を得た。
【0078】
<シート10A’>製造例
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を8.6質量部、硬化剤2.7質量部、混合溶剤13.5質量部、平均円形度0.98であり、平均粒子径が41μmである球状アルミナ(デンカ株式会社製DAW−45、以下、「熱伝導性球状フィラー4」という)を21質量部、窒化ホウ素2を4.2質量部とした以外は、シート1A’と同様にして、シート10A’の 一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体10A’を得た。
【0079】
<シート11A’>製造例
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を8.6質量部、硬化剤2.7質量部、混合溶剤13.5質量部、熱伝導性球状フィラー3を21質量部、平均粒子径が13〜16μmの鱗片状窒化ホウ素(スリーエムジャパン株式会社製「Platelets015」、以下、「窒化ホウ素3」という)を4.2質量部とした以外は、シート1A’と同様にして、シート11A’の 一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体11A’を得た。
【0080】
<シート1B’>製造例
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を8.1質量部、硬化剤2.5質量部、混合溶剤21.4質量部、熱伝導性球状アルミナ1を6.5質量部、窒化ホウ素1を11.5質量部とした以外は、シート1A’と同様にして、理論膜厚51μmのシート1B’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体1B’を得た。
シート1A’と同様の計算をして得たシート1B’の理論密度は2.02であった。
【0081】
<シート3B’>製造例
樹脂合成例2で得られた樹脂2の溶液を14.1質量部、硬化剤0.6質量部、混合溶剤17.4質量部、熱伝導性球状フィラー1を6.5質量部、窒化ホウ素1を11.5質量部とした以外は、シート1B’と同様にして、シート3B’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体3B’を得た。
【0082】
<シート4B’>製造例
熱伝導性球状フィラー1の代わりに、熱伝導性球状フィラー2:6.5質量部と造粒窒化ホウ素1を11.5質量部を用いた以外は、シート1B’と同様にして、シート4B’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体4B’を得た。
【0083】
<シート5B’>製造例
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を9.3質量部、硬化剤2.9質量部、混合溶剤22.9質量部、窒化ホウ素1を14.8質量部とし、球状フィラー1を用いなかった以外は、シート1B’と同様にして、シート5B’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体5B’を得た。
【0084】
<シート6B’>製造例
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を8.1質量部、硬化剤2.5質量部、混合溶剤21.4質量部、熱伝導性球状フィラー3:6.5質量部、窒化ホウ素1を11.5質量部とした以外は、シート1B’と同様にして、シート6B’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体6Bを得た。
【0085】
<シート7B’>製造例
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を12.9質量部、硬化剤4.1質量部、混合溶剤17.7質量部、熱伝導性球状フィラー1を5質量部、窒化ホウ素2を10.4質量部用いた以外は、シート1B’と同様にして、シート7B’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体7B’を得た。
【0086】
<シート8B’>製造例
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を5.7質量部、硬化剤1.8質量部、混合溶剤23.2質量部、熱伝導性球状フィラー1を6.1質量部、粒子径が8〜11μmの鱗片状窒化ホウ素(スリーエムジャパン株式会社製Platelets009、以下、「窒化ホウ素4」という)を13.3質量部用いた以外は、シート1B’と同様にして、シート8B’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体8Bを得た。
【0087】
<シート9B’>製造例
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を22.9質量部、硬化剤7.2質量部、混合溶剤7.7質量部、熱伝導性球状フィラー1を6.5質量部、窒化ホウ素1を5.8質量部とした以外は、シート1B’と同様にして、シート9B’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体9B’を得た。
【0088】
<シート10B’>製造例
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を8.1質量部、硬化剤2.5質量部、混合溶剤21.4質量部、熱伝導性球状フィラー4を6.5質量部、窒化ホウ素2を11.5質量部とした以外は、シート1B’と同様にして、シート10B’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体10B'を得た。
【0089】
<シート11B’>製造例
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を8.1質量部、硬化剤2.5質量部、混合溶剤21.4質量部、熱伝導性球状フィラー3を6.5質量部、窒化ホウ素3を11.5質量部とした以外は、シート1B’と同様にして、シート11B’の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体11B’を得た。
【0090】
[実施例1]
中間積層体1A’から10cm×10cmの大きさで2枚、中間積層体1B’から10cm×10cmの大きさで1枚を切出した。剥離性シートを除いた、シート1A’の質量は0.876gと0.849g、シート1B’の質量は1.039gであった。
【0091】
中間積層体1A’の剥離性シートとは反対側と、中間積層体1B’の剥離性シートとは反対側とを合わせ、ロールラミネーターにて貼り合せた。
次に中間積層体1B’側の剥離性シートを剥離し、露出したシート1B’の表面に、他の中間積層体1A’の剥離性シートとは反対側を同様に貼り合せ、熱伝導性絶縁シート1の両面が剥離性シートで覆われた積層体を得た。
なお、ラミネート条件は、ロール温度上下80℃、ラミネート圧0.6MPa、速度0.5m/分とした。
【0092】
熱伝導性絶縁シート1の理論密度は、以下の通り。
理論密度=シート(A’)およびシート(B’)の質量の和(g)/同体積の和(cm
=(シート1A’の質量(g)+シート1B’の質量(g))/(シート1A’の体積(cm)+シート1B’の体積(cm))
=(シート1A’の質量(g)+シート1B’の質量(g))/[(シート1A’の質量/シート1Aの理論密度)+(シート1Bの質量/シート1Bの理論密度)]
=((0.876+0.849)+1.039)/((0.876+0.849)/2.50+1.039/2.02)
=2.29となる。
【0093】
次いで、10cm×10cmの大きさの熱伝導性絶縁シート1の両面が剥離性シートで覆われた積層体を5cm×5cmの大きさに4分割する。
そのうちの1片の積層体を剥離性シートのついた状態で1MPaの圧力で180℃、1時間熱プレスを行った後、両面の基材を剥離し4隅および中央の膜厚を株式不会社ニコン製DIGIMICROSTANDMS−5Cで測定した平均値は138μmであった。
また、前記積層体から、両面を覆っていた剥離性シートを除いた熱伝導性絶縁シート1の質量は0.688gであった。
【0094】
熱プレス後の熱伝導性絶縁シート1の実測密度は以下の通り。
実測密度=熱伝導性絶縁シート質量(g)/熱伝導性絶縁シート体積(cm
=熱プレス後の熱伝導性絶縁シート1の単位面積当たりの質量(g/cm)/熱プレス後の熱伝導性絶縁シート1の厚さ(cm)
=[0.688/(5×5)]/(138/10000)=1.99となる。
【0095】
ここから熱プレス後の熱伝導性絶縁シート1の空隙率は、
空隙率=1−(実測密度/理論密度)
=1−1.99/2.29=0.13となる。
【0096】
<熱伝導率>
次に、熱プレス後の熱伝導性絶縁シート1を15mm角に切り出し、サンプル表面に金を蒸着し、カーボンスプレーによりカーボンを被覆した後、キセノンフラッシュアナライザーLFA447NanoFlash(NETZSCH社製)にて、試料環境25℃での熱拡散率を測定した。比熱容量はエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の高感度型示差走査熱量計DSC220Cを用いて測定した。密度は組成からの計算値を用いた。これらパラメータから、熱伝導率を求めた。
熱プレス後の熱伝導性絶縁シート1の熱伝導率を求めたところ、5.1W/m・Kであった。
【0097】
<耐電圧>
また、残りの前記積層体3枚について、片側の剥離性シートを剥離し、アルミウム板と重ね合わせ、1MPaの圧力で180℃1時間熱プレスを行った後、残った剥離性シートを剥がし、25℃、50%RHで一晩放置後、同条件下でTM650耐電圧試験器(鶴賀電気株式会社製)を用いて、耐電圧を測定した。3枚の平均は9.5kVであった。
【0098】
<実施例2>
中間積層体1A’から10cm×10cmの大きさで3枚、中間積層体1B’から10cm×10cmの大きさで2枚を切出し、実施例1と同様にして5層構成の熱伝導性絶縁シート2の両面が剥離性シートで覆われた積層体を得た。
熱伝導性絶縁シート2の理論密度は、2.31、プレス後の実測密度は1.96であった。空隙率、熱伝導率、耐電圧を表1に示す。
【0099】
<実施例3〜10>
中間積層体1A’、中間積層体1B’の代わりに、それぞれ中間積層体3A’〜7A ’、10A’、11A’、中間積層体3B’〜8B ’、10B’、11B’を用いた以外は、実施例1と同様にして、3層構成の熱伝導性絶縁シートの両面が剥離性シートで覆われた積層体を得た。熱伝導性絶縁シート2の理論密度、プレス後の実測密度、空隙率、熱伝導率、耐電圧を表1に示す。
【0100】
<比較例1>
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を6.5質量部、硬化剤2質量部、混合溶剤15.1質量部、熱伝導性球状フィラー1を26.4質量部用いた以外は、シート1A’と同様にして、比較シート1A’の一方の面が剥離性シートで覆われた比較中間積層体1A’を得た。
比較中間積層体1A’から10cm×10cmの大きさで2枚を切出し、剥離性シートの反対側どうしを合わせ、実施例1と同条件でロールラミネーターにて貼り合せて、熱伝導性絶縁シートの両面が剥離性シートで覆われた積層体を得、同様にして、プレス前の熱伝導性絶縁シートの理論密度、プレス後の実測密度、空隙率、熱伝導率、耐電圧を表1に示す。
【0101】
<比較例2>
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を9.2質量部、硬化剤2.9質量部、混合溶剤13.1質量部、熱伝導性球状フィラー1を15.6質量部、窒化ホウ素1を9.3質量部とした以外は、比較例1と同様にして比較シート2A’、比較中間積層体2A’を得、同様に評価した。
【0102】
<比較例3>
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を15.8質量部、硬化剤4.9質量部、混合溶剤15.6質量部、窒化ホウ素1を13.7質量部とした以外は、比較例1と同様にして比較シート3B’、比較中間積層体3B’を得、同様に評価した。
【0103】
<比較例4>
樹脂合成例1で得られた樹脂の溶液1を12.1質量部、硬化剤3.8質量部、混合溶剤18.3質量部、窒化ホウ素1を15.8質量部とした以外は、比較例1と同様にして比較シート4B’、比較中間積層体4B’を得、同様に評価した。
【0104】
<比較例5>
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を8.9質量部、硬化剤2.8質量部、混合溶剤20.8質量部、窒化ホウ素1を17.6質量部とした以外は、比較例1と同様にして比較シート5B’、比較中間積層体5B’を得、同様に評価した。
【0105】
<比較例6>
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を35.9質量部、硬化剤11.3質量部、混合溶剤2.8質量部とし、いずれの熱伝導性球状フィラーも窒化ホウ素も用いず、1MILのブレードコーターを用いて、剥離性シートに塗布した以外は、シート1A’と同様にして比較シート6A’の一方の面が剥離性シートで覆われた比較中間積層体6A’を得た。
また、樹脂合成例1で得られた樹脂の溶液1を4.4質量部、硬化剤1.4質量部、混合溶剤24.1質量部、平均粒子径が2μmの球状アルミナ(昭和電工株式会社製 アルナビーズCB−P02、以下、「熱伝導性球状フィラー5」という)を6.8部、平均粒径0.7μm球状アルミナ((株)アドマテックス製アドマファインAO−502、以下、「熱伝導性球状フィラー6」という)2.3部、平均粒子径25μmの造粒窒化ホウ素(モメンティブ製PTX−25、以下、「窒化ホウ素5」という)を11質量部とした以外は、比較例1と同様にして比較シート6B’、比較中間積層体6B’を得た。
比較中間積層体6B’の剥離性シートを取り除き、両面に比較中間積層体6A’を貼り合せて比較中間積層体6を得、比較例1と同様に評価した。
【0106】
<比較例7>
樹脂合成例1で得られた樹脂1の溶液を17.2質量部、硬化剤5.4質量部、混合溶剤7質量部とし、熱伝導性球状フィラー6を20.4質量部用いた以外は、比較シート6A’と同様にして比較シート6A’の一方の面が剥離性シートで覆われた比較中間積層体7A’を得た。
比較中間積層体6B’の剥離性シートを取り除き、両面に比較中間積層体7A’を貼り合せて比較中間積層体7を得、比較例1と同様に評価した。
【0107】
<比較例9>
中間積層体1A’、中間積層体1B’の代わりに、それぞれ中間積層体9A’、中間積層体9B’を用いた以外は、実施例1と同様にして、3層構成の熱伝導性絶縁シートの両面が剥離性シートで覆われた積層体を得た。熱伝導性絶縁シート2の理論密度、プレス後の実測密度、空隙率、熱伝導率、耐電圧を表1に示す。
【0108】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の熱伝導性絶縁シートは電子部材の熱制御用途に好適に利用できる。
【要約】
【課題】 本発明の目的は、従来よりも高い熱伝導性と絶縁性を両立した熱伝導性絶縁シートを提供することである。
【解決手段】 熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と、窒化ホウ素と、バインダー樹脂とを含む熱伝導性絶縁シートであって、主に熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を含有する層(A)と主に窒化ホウ素を含有する層(B)を有し、前記層(A)が最外層となるように両層が交互に積層されている、熱伝導性絶縁シート。
【選択図】 なし