(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水性媒体100質量部に対して2質量部以上の下記一般式(1)で表される含フッ素界面活性剤の存在下に、パーフルオロモノマーを水性媒体中で乳化重合してパーフルオロエラストマー粒子を含む水性分散液を得る工程を含み、前記パーフルオロエラストマー粒子を構成するパーフルオロエラストマーは、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するか又は融解ピークを有しないフルオロポリマーであることを特徴とするパーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法。
X−(CF2)m1−Y (1)
(式中、XはH又はFを表し、m1は3〜6の整数を表し、Yは−SO3M、−SO4M、−SO3R、−SO4R、−COOM、−PO3M2、−PO4M2(MはH、NH4又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を表す。)
パーフルオロエラストマー粒子を構成するパーフルオロエラストマーは、テトラフルオロエチレン/下記一般式(3)で表されるフルオロモノマー共重合体、及び、テトラフルオロエチレン/下記一般式(3)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の製造方法。
一般式(3):CF2=CF(O(CF2)n31)m31(OCF2)x31(OCF2CF(CF3))y31ORf31
(式中、n31は1〜6の整数を表し、m31は0〜4の整数を表し、x31は0〜6の整数を表し、y31は0〜4の整数を表し、Rf31は炭素数1〜8の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環式パーフルオロアルキル基、1〜3個の酸素原子を含む炭素数2〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である。)
パーフルオロエラストマー粒子を構成するパーフルオロエラストマーは、テトラフルオロエチレン/下記一般式(8)、(10)又は(11)で表されるフルオロモノマー共重合体、及び、テトラフルオロエチレン/下記一般式(8)、(10)又は(11)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の製造方法。
一般式(8):CF2=CF−ORf81
(式中、Rf81は、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)
一般式(10):CF2=CFOCF2ORf101
(式中、Rf101は炭素数1〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環式パーフルオロアルキル基、1〜3個の酸素原子を含む炭素数2〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である)
一般式(11):CF2=CFO(CF2CF(Y11)O)m(CF2)nF
(式中、Y11はフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは1〜4の整数である。nは1〜4の整数である。)
請求項1、2、3又は4記載の製造方法により得られたパーフルオロエラストマー粒子を含む水性分散液から水性媒体を除去することによりパーフルオロエラストマーを得る工程
を含むことを特徴とするパーフルオロエラストマーの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のパーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法は、水性媒体100質量部に対して2質量部以上の特定の含フッ素界面活性剤の存在下に、パーフルオロモノマーを水性媒体中で乳化重合してパーフルオロエラストマー粒子を含む水性分散液を得る工程を含む。
【0018】
上記工程で使用される含フッ素界面活性剤は、下記一般式(1):
X−(CF
2)
m1−Y (1)
(式中、XはH又はFを表し、m1は3〜6の整数を表し、Yは−SO
3M、−SO
4M、−SO
3R、−SO
4R、−COOM、−PO
3M
2、−PO
4M
2(MはH、NH
4又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素界面活性剤である。
【0019】
上記一般式(1)におけるYとしては、中でも、−COOMが好ましい。
【0020】
上記一般式(1)におけるMは、得られるパーフルオロエラストマーからの除去が容易である点で、NH
4又はHであることが好ましく、NH
4であることが更に好ましい。
【0021】
上記一般式(1)におけるm1は3〜5の整数であることが好ましい。
【0022】
上記含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(1−1):
C
5F
11COOM (1−1)
(式中、Mは、H、NH
4又はアルカリ金属を表す。)で表される化合物、すなわち、パーフルオロヘキサン酸又はその塩が好ましい。上記Mは、得られるパーフルオロエラストマーからの除去が容易である点で、NH
4又はHであることが好ましく、NH
4であることが更に好ましい。
【0023】
上記一般式(1)で表される含フッ素界面活性剤(以下、含フッ素界面活性剤(1)ともいう。)は、他の含フッ素界面活性剤と比較して、パーフルオロエラストマーからの除去が容易であるという利点がある。フッ素樹脂から含フッ素界面活性剤を除去する場合は、洗浄により容易に除去することができる。これに対して、フルオロエラストマーは凝析物が塊状で得られるため、含フッ素界面活性剤が塊に取り込まれてしまう。従って、フルオロエラストマーから含フッ素界面活性剤を除去する場合は、洗浄により除去することは困難であることから、加熱、特に真空下における加熱による乾燥により除去することが一般的である。驚くべきことに、含フッ素界面活性剤(1)は、従来パーフルオロエラストマー水性分散液の製造に用いられてきたパーフルオロオクタン酸又はその塩等と比較して、加熱により容易にパーフルオロエラストマーから除去できることが見出された。含フッ素界面活性剤(1)が、他の含フッ素界面活性剤と比較して加熱により除去され易いという知見は、本発明者らによって初めて見出されたものである。
【0024】
本発明の製造方法における乳化重合では、水性媒体100質量部に対して2質量部以上の含フッ素界面活性剤(1)を使用する。含フッ素界面活性剤(1)を上記範囲内の濃度で使用することにより、パーフルオロオクタン酸又はその塩等の従来の含フッ素界面活性剤を使用しなくとも、充分な粒子数及び重合速度を実現することができる。また、得られるパーフルオロエラストマーの粘度を高くすることもできる。含フッ素界面活性剤(1)の使用量が少なすぎると、充分な粒子数及び重合速度が実現できないおそれがあり、また、得られるパーフルオロエラストマーの粘度が低くなりすぎるおそれもある。なお、パーフルオロオクタン酸又はその塩等の従来の含フッ素界面活性剤は、多量に使用しても重合速度や粒子数に変化が見られないか、又は、ごく僅かな変化に留まる。上記乳化重合における含フッ素界面活性剤(1)の使用量の下限は、水性媒体100質量部に対して4質量部が好ましく、6質量部がより好ましく、9質量部が更に好ましい。上限は、特に限定されないが、使用量が多すぎると、使用量に見合った効果が得られず経済的に不利であることから、水性媒体100質量部に対して100質量部が好ましく、70質量部がより好ましく、50質量部が更に好ましく、25質量部が特に好ましい。
【0025】
本発明の製造方法では、パーフルオロモノマーを乳化重合することにより、パーフルオロエラストマー粒子を含む水性分散液を製造する。
【0026】
本明細書において、パーフルオロモノマーとは、分子中に炭素原子−水素原子結合を含まないモノマーである。上記パーフルオロモノマーは、炭素原子及びフッ素原子の他、炭素原子に結合しているフッ素原子のいくつかが塩素原子で置換されたモノマーであってもよく、炭素原子の他、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子を有するものであってもよい。上記パーフルオロモノマーとしては、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたモノマーであることが好ましい。上記パーフルオロモノマーとしては、酸素原子を有するものも好ましい。上記パーフルオロモノマーとしては、炭素原子とフッ素原子とのみからなるモノマー、及び/又は、炭素原子とフッ素原子と酸素原子とのみからなるモノマーが特に好ましい。上記パーフルオロモノマーには、架橋部位を与えるモノマーは含まれない。
【0027】
本明細書において、パーフルオロエラストマーとは、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%以上のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するか又は融解ピークを有しないフルオロポリマーであり、更に、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度が71質量%以上であるポリマーである。本明細書において、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度は、フルオロポリマーを構成する各モノマーの種類と含有量より、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度(質量%)を計算により求めるものである。
【0028】
パーフルオロモノマーとしては、
テトラフルオロエチレン〔TFE〕、
へキサフルオロプロピレン〔HFP〕、及び、
一般式(3):CF
2=CF(O(CF
2)
n31)
m31(OCF
2)
x31(OCF
2CF(CF
3))
y31ORf
31
(式中、n31は1〜6の整数を表し、m31は0〜4の整数を表し、x31は0〜6の整数を表し、y31は0〜4の整数を表し、Rf
31は炭素数1〜8の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環式パーフルオロアルキル基、1〜3個の酸素原子を含む炭素数2〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である。)で表されるフルオロモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0029】
一般式(3)で表されるフルオロモノマーとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、CF
2=CFOCF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2OCF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2OCF
2CF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
3F、CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
2(CF
2)
3F、CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
3(CF
2)
2F、CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
2OCF
3、CF
2=CFO(CF
2CF
2CF
2O)
2CF
3、CF
2=CFO(CF
2CF
2CF
2O)
3CF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
3、CF
2=CFO(CF
2CF
2CF
2O)
2CF
2CF
2CF
3、CF
2=CFO(CF
2CF
2CF
2O)
3CF
2CF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
2CF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
2OCF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2(OCF
2)
3OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2(OCF
2)
4OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
2OCF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
2CF
2CF
3、及び、CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2CF
3からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0030】
パーフルオロモノマーとしては、
テトラフルオロエチレン〔TFE〕、
へキサフルオロプロピレン〔HFP〕、
一般式(8):CF
2=CF−ORf
81
(式中、Rf
81は、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(10):CF
2=CFOCF
2ORf
101
(式中、Rf
101は炭素数1〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環式パーフルオロアルキル基、1〜3個の酸素原子を含む炭素数2〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(11):CF
2=CFO(CF
2CF(Y
11)O)
m(CF
2)
nF
(式中、Y
11はフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは1〜4の整数である。nは1〜4の整数である。)で表されるフルオロモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0031】
一般式(8)で表されるフルオロモノマーとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)がより好ましい。
【0032】
一般式(10)で表されるフルオロモノマーとしては、CF
2=CFOCF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2OCF
2CF
3、及び、CF
2=CFOCF
2OCF
2CF
2OCF
3からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0033】
一般式(11)で表されるフルオロモノマーとしては、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
3F、CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
2(CF
2)
3F、及び、CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
3(CF
2)
2Fからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0034】
上記パーフルオロエラストマー粒子は、パーフルオロモノマーと架橋部位を与えるモノマーとを重合することによっても、製造することができる。架橋部位を与えるモノマーとは、硬化剤により架橋を形成するための架橋部位をフルオロポリマーに与える架橋性基を有するモノマー(キュアサイトモノマー)である。
【0035】
架橋部位を与えるモノマーとしては、
一般式(12):CX
32=CX
3−R
f121CHR
121X
4
(式中、X
3は、水素原子、フッ素原子又はCH
3、R
f121は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基又はパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、R
121は、水素原子又はCH
3、X
4は、ヨウ素原子又は臭素原子である)で表されるフルオロモノマー、
一般式(13):CX
32=CX
3−Rf
131X
4
(式中、X
3は、水素原子、フッ素原子又はCH
3、Rf
131は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基又はパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、X
4は、ヨウ素原子又は臭素原子である)で表されるフルオロモノマー、
一般式(14):CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
m(CF
2)
n−X
5
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜5の整数、X
5は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は、−CH
2Iである)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(15):CH
2=CFCF
2O(CF(CF
3)CF
2O)
m(CF(CF
3))
n−X
6
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X
6は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は−CH
2OHである)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(16):CR
162R
163=CR
164−Z−CR
165=CR
166R
167
(式中、R
162、R
163、R
164、R
165、R
166及びR
167、は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。Zは、直鎖又は分岐状で酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数3〜18のシクロアルキレン基、少なくとも部分的にフッ素化している炭素数1〜10のアルキレン基若しくはオキシアルキレン基、又は、
−(Q)
p−CF
2O−(CF
2CF
2O)
m(CF
2O)
n−CF
2−(Q)
p−
(式中、Qはアルキレン基またはオキシアルキレン基である。pは0または1である。m/nが0.2〜5である。)で表され、分子量が500〜10000である(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である。)で表されるモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0036】
X
3は、フッ素原子であることが好ましい。R
f121及びR
f131は炭素数が1〜5のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。R
121は、水素原子であることが好ましい。
【0037】
架橋部位を与えるモノマーとしては、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CN、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2COOH、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CH
2I、CF
2=CFOCF
2CF
2CH
2I、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CN、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOH、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CH
2OH、CH
2=CHCF
2CF
2I、CH
2=CH(CF
2)
2CH=CH
2、CH
2=CH(CF
2)
4CH=CH
2、CH
2=CH(CF
2)
6CH=CH
2、及び、CF
2=CFO(CF
2)
5CNからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CN及びCF
2=CFOCF
2CF
2CH
2Iからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0038】
本発明の製造方法においては、パーフルオロモノマーのみ、又は、パーフルオロモノマー及び架橋部位を与えるモノマーのみの乳化重合を行うことが好ましい。パーフルオロモノマーのみ、又は、パーフルオロモノマー及び架橋部位を与えるモノマーのみの乳化重合を行うことにより、パーフルオロエラストマー粒子を含む水性分散液を製造することができる。
【0039】
上記パーフルオロエラストマー粒子を構成するパーフルオロエラストマーとしては、TFE/一般式(3)で表されるフルオロモノマー共重合体、及び、TFE/一般式(3)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0040】
上記パーフルオロエラストマー粒子を構成するパーフルオロエラストマーとしては、TFEを含むパーフルオロエラストマー、例えばTFE/一般式(8)、(10)又は(11)で表されるフルオロモノマー共重合体及びTFE/一般式(8)、(10)又は(11)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
その組成は、TFE/PMVE共重合体の場合、好ましくは、45〜90/10〜55(モル%)であり、より好ましくは、55〜80/20〜45であり、更に好ましくは、55〜70/30〜45である。
TFE/PMVE/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、45〜89.9/10〜54.9/0.01〜4(モル%)であり、より好ましくは、55〜79.9/20〜44.9/0.1〜3.5であり、更に好ましくは、55〜69.8/30〜44.8/0.2〜3である。
TFE/炭素数が4〜12の一般式(8)、(10)又は(11)で表されるフルオロモノマー共重合体の場合、好ましくは、50〜90/10〜50(モル%)であり、より好ましくは、60〜88/12〜40であり、更に好ましくは、65〜85/15〜35である。
TFE/炭素数が4〜12の一般式(8)、(10)又は(11)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、50〜89.9/10〜49.9/0.01〜4(モル%)であり、より好ましくは、60〜87.9/12〜39.9/0.1〜3.5であり、更に好ましくは、65〜84.8/15〜34.8/0.2〜3である。
これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
【0041】
上記パーフルオロエラストマーとしては、TFE/一般式(11)で表されるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(11)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体、TFE/一般式(8)で表されるフルオロモノマー共重合体、及び、TFE/一般式(8)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。
【0042】
上記パーフルオロエラストマーとしては、国際公開第97/24381号パンフレット、特公昭61−57324号公報、特公平4−81608号公報、特公平5−13961号公報等に記載されているパーフルオロエラストマーも挙げることができる。
【0043】
パーフルオロエラストマーのモノマー単位組成は、NMR、IR、UV、元素分析、蛍光X線分析をモノマーの種類によって適宜組み合わせて測定することができる。
【0044】
上記乳化重合で使用する水性媒体は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が200℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
【0045】
上記乳化重合は、通常、重合開始剤の存在下に行う。上記重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、又は水溶性ラジカル開始剤を使用できる。
【0046】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカーボネート等のジアルキルパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類、ジt−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類等が、また、ジ(ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル−ω−ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル−パーオキサイド、ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル−ω−クロ−デカフルオロヘキサノイル−パーオキサイド、ω−ハイドロドデカフルオロヘプタノイル−パーフルオロブチリル−パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフルオロ(又はフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類等が代表的なものとして挙げられる。
【0047】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、例えば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸等のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t−ブチルパーマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤も併せて含んでもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1〜20倍であってよい。
【0048】
45℃以下の低温で乳化重合を実施する場合、重合開始剤として、酸化剤と還元剤を組み合わせるレドックス開始剤を用いるのが好ましい。酸化剤としては、過硫酸塩が好ましく、還元剤としては、亜硫酸塩が好ましい。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤の分解速度を上げるため、レドックス開始剤の組み合わせには、銅塩、鉄塩を加えることも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
【0049】
重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(例えば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、又は逐次的に、又は連続して添加すればよい。上限は、製造装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。
【0050】
上記乳化重合を連鎖移動剤の存在下に行ってもよい。上記連鎖移動剤としては、例えばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチル等のエステル類のほか、イソペンタン、メタン、エタン、プロパン、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0051】
連鎖移動剤として臭素化合物又はヨウ素化合物を使用してもよい。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用して行う重合方法としては、例えば、実質的に無酸素状態で、臭素化合物又はヨウ素化合物の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーの重合を行う方法が挙げられる(ヨウ素移動重合法)。使用する臭素化合物又はヨウ素化合物の代表例としては、例えば、一般式:
R
2I
xBr
y
(式中、x及びyはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R
2は炭素数1〜16の飽和若しくは不飽和のフルオロ炭化水素基又はクロロフルオロ炭化水素基、又は炭素数1〜3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物が挙げられる。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用することによって、ヨウ素又は臭素が重合体に導入され、架橋点として機能する。
【0052】
ヨウ素化合物としては、例えば1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、2−ヨードパーフルオロプロパン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカン、1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨード−n−プロパン、CF
2Br
2、BrCF
2CF
2Br、CF
3CFBrCF
2Br、CFClBr
2、BrCF
2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF
2CF
2CF
2Br、BrCF
2CFBrOCF
3、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン、1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン、1−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブタン、2−ブロモ−3−ヨードパーフルオロブタン、3−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、2−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、並びに(2−ヨードエチル)及び(2−ブロモエチル)置換体等が挙げられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0053】
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性等の点から、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、2−ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
【0054】
上記連鎖移動剤の使用量は、通常、供給されるモノマー全量に対して、1〜100000ppmであり、好ましい下限が10ppmであり、好ましい上限が50000ppmである。
【0055】
重合温度、重合圧力及び重合時間は、溶媒や重合開始剤の種類によって異なるが、−15〜150℃、大気圧〜6.5MPa、1〜96時間であってよい。フッ素原子を含有する油溶性ラジカル重合開始剤を使用する場合、重合温度が15〜95℃であることが好ましい。重合開始剤として水溶性ラジカル重合開始剤を使用する場合、重合温度が0〜100℃であることが好ましく、10〜95℃であることがより好ましい。
【0056】
上記乳化重合は、0.1〜3.9MPaGで行うことが好ましく、0.6MPaG以上で行うことがより好ましく、3.0MPaG以下で行うことがより好ましい。
【0057】
本発明の製造方法における乳化重合は、重合反応器に、水性媒体、含フッ素界面活性剤(1)及びモノマーを仕込み、反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行う。あるいは、重合反応器に水性媒体及び含フッ素界面活性剤(1)を仕込み、攪拌し、所定の重合温度に保持した後、モノマーを仕込み、次に重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行なっても良い。重合反応開始前に、必要に応じて、添加剤等を反応器に仕込んでもよい。重合反応開始後に、目的に応じて、モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤等を追加添加してもよい。
【0058】
本発明の製造方法における乳化重合は、下記一般式(2)
X−(CF
2)
m2−Y (2)
(式中、XはH又はFを表し、m2は7以上の整数を表し、Yは−SO
3M、−SO
4M、−SO
3R、−SO
4R、−COOM、−PO
3M
2、−PO
4M
2(MはH、NH
4又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素化合物の非存在下に行うことが好ましい。本発明の製造方法によれば、このような従来の含フッ素界面活性剤を使用しなくても、充分な粒子数及び重合速度を実現することができる。更に、上記乳化重合は、含フッ素界面活性剤(1)以外の含フッ素界面活性剤の非存在下に行うことが好ましい。
【0059】
上記乳化重合は、ラジカル重合であることが好ましい。
【0060】
上記乳化重合を行うことにより、パーフルオロエラストマー粒子を含む水性分散液を製造することができる。
【0061】
上記パーフルオロエラストマー粒子を含む水性分散液は、パーフルオロエラストマー粒子の粒子数が5×10
14個/cc以上であることが好ましい。このように粒子数が多いと、重合速度が速くなりパーフルオロエラストマーの生産性が向上する点で有利である。粒子数は、含フッ素界面活性剤(1)の使用量、撹拌速度、モノマーの投入量等を調整することにより調整することができる。粒子数の下限は1×10
15個/ccであることがより好ましく、7×10
15個/ccであることが更に好ましい。上限は特に限定されないが、5×10
17個/ccであることが好ましい。上記粒子数の測定方法は、後述の実施例における測定方法として説明するとおりである。
【0062】
上記パーフルオロエラストマー粒子は、体積平均粒子径が0.1〜100nmであることが好ましい。体積平均粒子径が上記範囲内にあると、単位水性媒体量に対する粒子数が多くなり、重合速度が速くなる。その結果、パーフルオロエラストマー粒子の合成の生産性が向上する。パーフルオロエラストマー粒子の体積平均粒子径は、0.5nm以上であることがより好ましく、1.0nm以上であることが更に好ましく、70nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましく、30nm以下であることが特に好ましい。上記体積平均粒子径の測定方法は、後述の実施例における測定方法として説明するとおりである。
【0063】
上記パーフルオロエラストマー粒子を含む水性分散液は、固形分濃度が1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、18質量%以上であることが更に好ましい。このように固形分濃度が高いと、パーフルオロエラストマー粒子の粒子径が同じであれば、単位水性媒体量に対する粒子数が多くなり、重合速度が速くなる。その結果、パーフルオロエラストマー粒子の合成の生産性が向上する。上限は特に限定されないが、30質量%であることが好ましい。上記固形分濃度の測定方法は、後述の実施例における測定方法として説明するとおりである。
【0064】
上記パーフルオロエラストマー粒子を含む水性分散液を、多段重合に供してもよい。すなわち、上記パーフルオロエラストマー粒子及び重合開始剤の存在下、更に、フルオロモノマーの重合を水性媒体中で行ってもよい。
【0065】
上記パーフルオロエラストマーは、高温における圧縮永久歪みに優れる点から、ガラス転移温度が−70℃以上であることが好ましく、−50℃以上であることがより好ましく、−30℃以上であることが更に好ましい。また、耐寒性が良好であるという点から、5℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−3℃以下であることが更に好ましい。
【0066】
上記ガラス転移温度は、次のように求めることができる。示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、JIS K6240に規定される微分曲線のピークトップ温度をガラス転移温度とする。
【0067】
上記パーフルオロエラストマーは、耐熱性が良好な点で、100℃におけるムーニー粘度ML(1+10)が10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、120以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、80以下であることが更に好ましい。
【0068】
上記パーフルオロエラストマーは、耐熱性が良好な点で、170℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、150以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましく、110以下であることが更に好ましい。
【0069】
上記ムーニー粘度は、ALPHA TECHNOLOGIES製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、100℃又は170℃において、JIS K6300に従い測定することができる。
【0070】
上記フルオロモノマーとしてヨウ素原子を有するフルオロモノマーを使用する場合、及び/又は、連鎖移動剤としてヨウ素化合物を使用する場合、パーフルオロエラストマーをパーオキサイド架橋させることができ、機械特性に優れたパーフルオロエラストマーの架橋された弾性体が得られる点で、得られるパーフルオロエラストマーにおけるヨウ素含量が0.02〜5.0質量%であることが好ましい。ヨウ素含量は0.05〜3.0質量%であることがより好ましく、0.1〜2.0質量%であることが更に好ましい。
【0071】
本発明は、上記パーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法により得られたパーフルオロエラストマー粒子を含む水性分散液から水性媒体を除去することによりパーフルオロエラストマーを得る工程を含むことを特徴とするパーフルオロエラストマーの製造方法でもある。
【0072】
パーフルオロエラストマー粒子を含む水性分散液から水性媒体を除去する方法としては、例えば、(i)上記水性分散液に対して加熱、真空引き又はその両方を行う方法や、(ii)上記水性分散液を凝析することにより凝析物を得た後、該凝析物に対して加熱、真空引き又はその両方を行う方法が挙げられる。上記パーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法により得られた水性分散液は、含フッ素界面活性剤(1)を含んでいる。含フッ素界面活性剤(1)は、パーフルオロオクタン酸又はその塩等の従来の含フッ素界面活性剤と比較して加熱や真空引きにより除去しやすいため、本発明のパーフルオロエラストマーの製造方法においては、水性媒体を除去すると同時に、含フッ素界面活性剤(1)も充分に除去することができる。
【0073】
上記(i)の方法における加熱は、パーフルオロエラストマー自体を劣化させることなく水性媒体及び含フッ素界面活性剤(1)を除去するために、50℃〜200℃で2〜100時間かけて行なわれることが好ましい。また、上記(i)の方法における真空引きは、水性分散液を真空下に2〜100時間置くことにより行われることが好ましい。上記(i)の方法においては、加熱を行うことが好ましく、水性媒体及び含フッ素界面活性剤(1)をより確実に除去するために、加熱及び真空引きの両方を行う(例えば、上述した加熱を真空下で行う)ことがより好ましい。
【0074】
上記(ii)の方法における凝析は、水性分散液に硫酸アルミニウム等の無機塩又は無機酸を添加するか、水性分散液に機械的な剪断力を与えるか、水性分散液を凍結させることによって行うことができる。上記(ii)の方法における加熱は、パーフルオロエラストマー自体を劣化させることなく水性媒体及び含フッ素界面活性剤(1)を除去するために、50℃〜200℃で2〜100時間かけて行なわれることが好ましい。また、上記(ii)の方法における真空引きは、凝析物を真空下に2〜100時間置くことにより行われることが好ましい。上記(ii)の方法においては、加熱を行うことが好ましく、水性媒体及び含フッ素界面活性剤(1)をより確実に除去するために、加熱及び真空引きの両方を行う(例えば、上述した加熱を真空下で行う)ことがより好ましい。
【0075】
上記(ii)の方法においては、必要に応じて、上記水性分散液を凝析することにより得られた凝析物の洗浄を行ってもよい。上記洗浄は常法を採用してよい。
【0076】
パーフルオロエラストマー粒子を含む水性分散液から水性媒体を除去する方法としては、以下の効果が得られる点で、上記(ii)の方法が好ましい。パーフルオロエラストマー粒子を含む水性分散液を凝析すると、塊状の凝析物が得られる。乳化重合で使用した含フッ素界面活性剤は該凝析物中に取り込まれるので、洗浄だけでは含フッ素界面活性剤を充分に除去することができない。このため、加熱及び/又は真空引きにより含フッ素界面活性剤を除去する必要がある。上記パーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法により得られた水性分散液に含まれる含フッ素界面活性剤は含フッ素界面活性剤(1)であるため、パーフルオロオクタン酸又はその塩等の従来の含フッ素界面活性剤を使用した場合に比べて加熱及び/又は真空引きによる除去が容易である。含フッ素界面活性剤(1)は、真空下の加熱乾燥により一層容易に除去することができる。
【0077】
上記の方法により、パーフルオロエラストマーを製造することができる。パーフルオロエラストマーの形態としては、クラムやシート状等が挙げられる。
【0078】
本発明の製造方法により得られるパーフルオロエラストマー水性分散液及びパーフルオロエラストマーは、従来公知のパーフルオロエラストマー水性分散液及びパーフルオロエラストマーと比べても何ら劣ることのない優れた物性を有し、従来公知のパーフルオロエラストマー水性分散液及びパーフルオロエラストマーと同じ方法で使用でき、同じ用途に使用することができる。
【0079】
パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく重合単位を含むパーフルオロエラストマーであって、PAVEに基づく重合単位の含有量が全重合単位に対して42.0〜55.0モル%であり、170℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30〜120であるパーフルオロエラストマーも有用である。当該パーフルオロエラストマーは、新規なパーフルオロエラストマーである。上述した製造方法によれば、このようなパーフルオロエラストマーを容易に製造することができる。
【0080】
上記パーフルオロエラストマーは、PAVEに基づく重合単位の含有量が全重合単位に対して42.0〜55.0モル%であることにより、耐低温性に優れる。PAVEに基づく重合単位の含有量の下限は、全重合単位に対して42.5モル%であることが好ましく、43.0モル%であることがより好ましく、43.5モル%であることが更に好ましい。上限は、全重合単位に対して54.0モル%であることが好ましく、53.0モル%であることがより好ましく、52.0モル%であることが更に好ましい。
【0081】
上記PAVEとしては、下記一般式(8):
CF
2=CF−ORf
81
(式中、Rf
81は、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるものが好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)が更に好ましい。
【0082】
上記パーフルオロエラストマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく重合単位を含むことが好ましい。TFEに基づく重合単位の含有量は、全重合単位に対して45.0〜58.0モル%であることが好ましい。TFEに基づく重合単位の含有量の下限は、全重合単位に対して46.0モル%であることがより好ましく、47.0モル%であることが更に好ましく、48.0モル%であることが特に好ましい。上限は、全重合単位に対して57.5モル%であることがより好ましく、57.0モル%であることが更に好ましく、56.5モル%であることが特に好ましい。
TFEに基づく重合単位の含有量の下限は、全重合単位に対して44.99モル%であってもよく、44.9モル%であってもよく、44.8モル%であってもよい。TFEに基づく重合単位の含有量の上限は、全重合単位に対して57.99モル%であってもよく、57.9モル%であってもよく、57.8モル%であってもよい。
【0083】
上記パーフルオロエラストマーは、TFE及びPAVE以外のパーフルオロモノマーに基づく重合単位や、架橋部位を与えるモノマーに基づく重合単位を更に含んでもよい。
【0084】
TFE及びPAVE以外のパーフルオロモノマーとしては、上述したパーフルオロモノマーのうち、TFE及びPAVE以外のものが例示できる。
【0085】
架橋部位を与えるモノマーとしては、上述したものが例示できる。中でも、シアノ基を有するモノマーが好ましく、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CN、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CN、及び、CF
2=CFO(CF
2)
5CNからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CN及びCF
2=CFO(CF
2)
5CNからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CNが更に好ましい。
【0086】
架橋部位を与えるモノマーに基づく重合単位の含有量は、全重合単位に対して10モル%以下であればよく、0.01〜4.00モル%であることが好ましい。下限は0.1モル%がより好ましく、0.2モル%が更に好ましい。上限は3.5モル%がより好ましく、3モル%が更に好ましい。
【0087】
上記パーフルオロエラストマーは、シアノ基を有することが好ましい。これにより、耐熱性に優れた硬化物を与えることができる。シアノ基は、例えば、上記シアノ基を有するモノマーの共重合により導入することができる。
【0088】
上記パーフルオロエラストマーは、170℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30〜120であることにより、加硫性や、得られる加硫物の引張強度及び耐圧縮永久ひずみ性に優れる。170℃におけるムーニー粘度ML(1+20)の下限は35であることが好ましく、40であることがより好ましく、45であることが更に好ましい。上限は115であることが好ましく、110であることがより好ましく、105であることが更に好ましい。
【0089】
本発明のパーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法により得られるパーフルオロエラストマー水性分散液、及び、本発明のパーフルオロエラストマーの製造方法により得られるパーフルオロエラストマー、並びに、上述の新規なパーフルオロエラストマーは、必要な成分とともにパーフルオロエラストマー組成物を構成することもできる。このようなパーフルオロエラストマー組成物も有用である。上記パーフルオロエラストマー組成物は、パーフルオロエラストマー及び架橋剤を含むことが好ましく、用途に応じて更に水及び/又は有機溶剤を含んでもよい。パーフルオロエラストマー水性分散液に必要な成分を加えてパーフルオロエラストマー組成物を得てもよく、パーフルオロエラストマーに必要な成分を加えてパーフルオロエラストマー組成物を得てもよい。
【0090】
上記パーフルオロエラストマー組成物は、架橋及び成形を行うことにより、成形品として種々の用途に適用することができる。このような成形品も有用である。
上記成形品は、上記パーフルオロエラストマー組成物を成形し、得られた成形品を架橋することにより製造することもできるし、成形と架橋とを同時に行うことによって製造することもできる。成形方法は、特に限定されず、例えば、圧縮成形、押出し成形、トランスファー成形、射出成形等が挙げられる。上記成形品はまた、上記パーフルオロエラストマー組成物を塗装し、架橋することによって、塗膜として得ることもできる。
【0091】
上記成形品が用いられる分野としては例えば、半導体関連分野、自動車分野、航空機分野、宇宙・ロケット分野、船舶分野、化学プラント等の化学品分野、医薬品等の薬品分野、現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野、塗装設備等の塗装分野、分析機器、計器等の分析・理化学機械分野、食品プラント機器及び家庭用品を含む食品機器分野、飲料食品製造装置分野、医薬品製造装置分野、医療部品分野、化学薬品輸送用機器分野、原子力プラント機器分野、鉄板加工設備等の鉄鋼分野、一般工業分野、電気分野、燃料電池分野、電子部品分野、光学機器部品分野、宇宙用機器部品分野、石油化学プラント機器分野、石油、ガス等のエネルギー資源探索採掘機器部品分野、石油精製分野、石油輸送機器部品分野等が挙げられる。
【0092】
上記成形品の使用形態としては、例えば、リング、パッキン、ガスケット、ダイアフラム、オイルシール、ベアリングシール、リップシール、プランジャーシール、ドアシール、リップ及びフェースシール、ガスデリバリープレートシール、ウエハサポートシール、バレルシール等の各種シール材やパッキン等が挙げられる。シール材としては、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性、非粘着性が要求される用途に用いることができる。
また、チューブ、ホース、ロール、各種ゴムロール、フレキシブルジョイント、ゴム板、コーティング、ベルト、ダンパー、バルブ、バルブシート、バルブの弁体、耐薬品用コーティング材料、ラミネート用材料、ライニング用材料等としても使用できる。
なお、上記リング、パッキン、シールの断面形状は、種々の形状のものであってよく、具体的には、例えば、四角、O字、へルール等の形状であってもよいし、D字、L字、T字、V字、X字、Y字等の異形状であってもよい。
【0093】
上記半導体関連分野においては、例えば、半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマディスプレイパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル製造装置、有機ELパネル製造装置、フィールドエミッションディスプレイパネル製造装置、太陽電池基板製造装置、半導体搬送装置等に用いることができる。そのような装置としては、例えば、CVD装置、半導体用ガス制御装置等のガス制御装置、ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置、プラズマエッチング装置、反応性イオンエッチング装置、反応性イオンビームエッチング装置、スパッタエッチング装置、イオンビームエッチング装置、酸化拡散装置、スパッタリング装置、アッシング装置、プラズマアッシング装置、洗浄装置、イオン注入装置、プラズマCVD装置、排気装置、露光装置、研磨装置、成膜装置、乾式エッチング洗浄装置、UV/O
3洗浄装置、イオンビーム洗浄装置、レーザービーム洗浄装置、プラズマ洗浄装置、ガスエッチング洗浄装置、抽出洗浄装置、ソックスレー抽出洗浄装置、高温高圧抽出洗浄装置、マイクロウェーブ抽出洗浄装置、超臨界抽出洗浄装置、フッ酸、塩酸、硫酸、オゾン水等を用いる洗浄装置、ステッパー、コータ・デベロッパー、CMP装置、エキシマレーザー露光機、薬液配管、ガス配管、NF
3プラズマ処理、O
2プラズマ処理、フッ素プラズマ処理等のプラズマ処理が行われる装置、熱処理成膜装置、ウエハ搬送機器、ウエハ洗浄装置、シリコンウエハ洗浄装置、シリコンウエハ処理装置、LP−CVD工程に用いられる装置、ランプアニーリング工程に用いられる装置、リフロー工程に用いられる装置等が挙げられる。
【0094】
半導体関連分野における具体的な使用形態としては、例えば、ゲートバルブ、クォーツウィンドウ、チャンバー、チャンバーリット、ゲート、ベルジャー、カップリング、ポンプのO−リングやガスケット等の各種シール材;レジスト現像液や剥離液用のO−リング等の各種シール材、ホースやチューブ;レジスト現像液槽、剥離液槽、ウエハ洗浄液槽、ウェットエッチング槽のライニングやコーティング;ポンプのダイアフラム;ウエハ搬送用のロール;ウエハ洗浄液用のホースチューブ;クリーンルーム等のクリーン設備用シーラントといったクリーン設備用シール材;半導体製造装置やウエハ等のデバイスを保管する保管庫用のシーリング材;半導体を製造する工程で用いられる薬液移送用ダイアフラム等が挙げられる。
【0095】
上記自動車分野においては、エンジン本体、主運動系、動弁系、潤滑・冷却系、燃料系、吸気・排気系、駆動系のトランスミッション系、シャーシのステアリング系、ブレーキ系や、基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品等の電装部品等に用いることができる。なお、上記自動車分野には、自動二輪車も含まれる。
上述のようなエンジン本体やその周辺装置では、耐熱性、耐油性、燃料油耐性、エンジン冷却用不凍液耐性、耐スチーム性が要求される各種シール材に上記成形品を用いることができ、そのようなシール材としては、例えば、ガスケット、シャフトシール、バルブステムシール等のシールや、セルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシール等の非接触型又は接触型のパッキン類、ベローズ、ダイアフラム、ホース、チューブの他、電線、緩衝材、防振材、ベルトAT装置に用いられる各種シール材等が挙げられる。
【0096】
上記燃料系における具体的な使用形態としては、燃料インジェクター、コールドスタートインジェクター、燃料ラインのクイックコネクター、センダー・フランジ・クイックコネクター、燃料ポンプ、燃料タンク・クイック・コネクター、ガソリン混合ポンプ、ガソリンポンプ、燃料チューブのチューブ本体、燃料チューブのコネクター、インジェクター等に用いられるO−リング;呼気系マニフォールド、燃料フィルター、圧力調整弁、キャニスター、燃料タンクのキャップ、燃料ポンプ、燃料タンク、燃料タンクのセンダーユニット、燃料噴射装置、燃料高圧ポンプ、燃料ラインコネクターシステム、ポンプタイミングコントロールバルブ、サクションコントロールバルブ、ソレノイドサブアッシー、フューエルカットバルブ等に用いられるシール;キャニスタ・パージ・ソレノイド・バルブシール、オンボード・リフューエリング・ベイパー・リカバリー(ORVR)バルブシール、燃料ポンプ用のオイルシール、フューエルセンダーシール、燃料タンクロールオーバー・バルブシール、フィラーシール、インジェクターシール、フィラーキャップシール、フィラーキャップバルブのシール;燃料ホース、燃料供給ホース、燃料リターンホース、ベーパー(エバポ)ホース、ベント(ブリーザー)ホース、フィラーホース、フィラーネックホース、燃料タンク内のホース(インタンクホース)、キャブレターのコントロールホース、フューエルインレットホース、フューエルブリーザホース等のホース;燃料フィルター、燃料ラインコネクターシステム等に用いられるガスケットや、キャブレター等に用いられるフランジガスケット;蒸気回収ライン、フューエルフィードライン、ベーパー・ORVRライン等のライン材;キャニスター、ORVR、燃料ポンプ、燃料タンク圧力センサー、ガソリンポンプ、キャブレターのセンサー、複合空気制御装置(CAC)、パルセーションダンパー、キャニスター用、オートコック等に用いられるダイアフラムや、燃料噴射装置のプレッシャーレギュレーターダイアフラム;燃料ポンプ用のバルブ、キャブレーターニードルバルブ、ロールオーバーチェックバルブ、チェックバルブ類;ベント(ブリーザー)、燃料タンク内に用いられるチューブ;燃料タンク等のタンクパッキン、キャブレターの加速ポンプピストンのパッキン;燃料タンク用のフューエルセンダー防振部品;燃料圧力を制御するためのO−リングや、ダイアフラム;アクセレレータ・ポンプ・カップ;インタンクフューエルポンプマウント;燃料噴射装置のインジェクタークッションリング;インジェクターシールリング;キャブレターのニードルバルブ芯弁;キャブレターの加速ポンプピストン;複合空気制御装置(CAC)のバルブシート;フューエルタンク本体;ソレノイドバルブ用シール部品等が挙げられる。
【0097】
上記ブレーキ系における具体的な使用形態としては、マスターバック、油圧ブレーキホースエアーブレーキ、エアーブレーキのブレーキチャンバー等に用いられるダイアフラム;ブレーキホース、ブレーキオイルホース、バキュームブレーキホース等に用いられるホース;オイルシール、O−リング、パッキン、ブレーキピストンシール等の各種シール材;マスターバック用の大気弁や真空弁、ブレーキバルブ用のチェック弁;マスターシリンダー用のピストンカップ(ゴムカップ)や、ブレーキカップ;油圧ブレーキのマスターシリンダーやバキュームブースター、油圧ブレーキのホイールシリンダー用のブーツ、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)用のO−リングやグロメット等が挙げられる。
【0098】
上記基本電装部品における具体的な使用形態としては、電線(ハーネス)の絶縁体やシース、ハーネス外装部品のチューブ、コネクター用のグロメット等が挙げられる。
制御系電装部品における具体的な使用形態としては、各種センサー線の被覆材料等が挙げられる。
上記装備電装部品における具体的な使用形態としては、カーエアコンのO−リング、パッキンや、クーラーホース、高圧エアコンホース、エアコンホース、電子スロットルユニット用ガスケット、ダイレクトイグニッション用プラグブーツ、ディストリビューター用ダイアフラム等が挙げられる。また、電装部品の接着にも用いることができる。
【0099】
上記吸気・排気系における具体的な使用形態としては、吸気マニホールド、排気マニホールド等に用いられるパッキンや、スロットルのスロットルボディパッキン;EGR(排気再循環)、押圧コントロール(BPT)、ウエストゲート、ターボウエストゲート、アクチュエーター、バリアブル・タービン・ジオメトリー(VTG)ターボのアクチュエーター、排気浄化バルブ等に用いられるダイアフラム;EGR(排気再循環)のコントロールホース、エミッションコントロールホース、ターボチャージャーのターボオイルホース(供給)、ターボオイルホース(リターン)、ターボエアホース、インタークーラーホース、ターボチャージャーホース、インタークーラーを備えたターボエンジンのコンプレッサーと接続されるホース、排気ガスホース、エアインテークホース、ターボホース、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)センサーホース等のホース;エアダクトやターボエアダクト;インテークマニホールドガスケット;EGRのシール材、ABバルブのアフターバーン防止バルブシート、(ターボチャージャー等の)タービンシャフトシールや、自動車のエンジンにおいて使用されるロッカーカバーや空気吸い込みマニホールド等の溝部品に用いられるシール部材等が挙げられる。
【0100】
その他、排出ガス制御部品において、蒸気回収キャニスター、触媒式転化装置、排出ガスセンサー、酸素センサー等に用いられるシールや、蒸気回収及び蒸気キャニスターのソレノイド・アーマチュアのシール;吸気系マニフォールドガスケット等として用いることができる。
また、ディーゼルエンジンに関する部品において、直噴インジェクター用のO−リングシール、回転ポンプシール、制御ダイアフラム、燃料ホース、EGR,プライミングポンプ,ブーストコンペンセーターのダイアフラム等として用いることができる。また、尿素SCRシステムに用いられるO−リング、シール材、ホース、チューブ、ダイアフラムや、尿素SCRシステムの尿素水タンク本体、及び尿素水タンクのシール材等にも用いることができる。
【0101】
上記トランスミッション系における具体的な使用形態としては、トランスミッション関連のベアリングシール、オイルシール、O−リング、パッキン、トルコンホース等が挙げられる。
ミッションオイルシールや、ATのミッションオイルホース、ATFホース、O−リング、パッキン類等も挙げられる。
なお、トランスミッションには、AT(オートマチック・トランスミッション)、MT(マニュアル・トランスミッション)、CVT(連続可変トランスミッション)、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)等がある。
また、手動又は自動変速機用のオイルシール、ガスケット、O−リング、パッキンや、無段変速機(ベルト式又はトロイダル式)用のオイルシール、ガスケット、O−リング、パッキンの他、ATFリニアソレノイド用パッキング、手動変速機用オイルホース、自動変速機用ATFホース、無断変速機(ベルト式又はトロイダル式)用CVTFホース等も挙げられる。
ステアリング系における具体的な使用形態としては、パワーステアリングオイルホースや高圧パワーステアリングホース等が挙げられる。
【0102】
自動車エンジンのエンジン本体において用いられる形態としては、例えば、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケット等のガスケット、O−リング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケット等のシール、コントロールホース等のホース、エンジンマウントの防振ゴム、コントロールバルブダイアフラム、カムシャフトオイルシール等が挙げられる。
自動車エンジンの主運動系においては、クランクシャフトシール、カムシャフトシール等のシャフトシール等に用いることができる。
自動車エンジンの動弁系においては、エンジンバルブのバルブステムオイルシール、バタフライバルブのバルブシート等に用いることができる。
自動車エンジンの潤滑・冷却系においては、エンジンオイルクーラーのエンジンオイルクーラーホース、オイルリターンホース、シールガスケットや、ラジエータ周辺のウォーターホース、ラジエータのシール、ラジエータのガスケット、ラジエータのO−リング、バキュームポンプのバキュームポンプオイルホース等の他、ラジエーターホース、ラジエータータンク、オイルプレッシャー用ダイアフラム、ファンカップリングシール等に用いることができる。
【0103】
このように、自動車分野における使用の具体例の一例としては、エンジンヘッドガスケット、オイルパンガスケット、マニフォールドパッキン、酸素センサー用シール、酸素センサーブッシュ、酸化窒素(NOx)センサー用シール、酸化窒素(NOx)センサーブッシュ、酸化硫黄センサー用シール、温度センサー用シール、温度センサーブッシュ、ディーゼルパーティクルフィルターセンサー用シール、ディーゼルパーティクルフィルターセンサーブッシュ、インジェクターO−リング、インジェクターパッキン、燃料ポンプのO−リングやダイアフラム、ギアボックスシール、パワーピストンパッキン、シリンダーライナーのシール、バルブステムのシール、スタティックバルブステムシール、ダイナミックバルブステムシール、自動変速機のフロントポンプシール、リアーアクスルピニオンシール、ユニバーサルジョイントのガスケット、スピードメーターのピニオンシール、フートブレーキのピストンカップ、トルク伝達装置のO−リングやオイルシール、排ガス再燃焼装置のシールやベアリングシール、再燃焼装置用ホース、キャブレターのセンサー用ダイアフラム、防振ゴム(エンジンマウント、排気部、マフラーハンガー、サスペンションブッシュ、センターベアリング、ストラットバンパーラバー等)、サスペンション用防振ゴム(ストラットマウント、ブッシュ等)、駆動系防振ゴム(ダンパー等)、燃料ホース、EGRのチューブやホース、ツインキャブチューブ、キャブレターのニードルバルブの芯弁、キャブレターのフランジガスケット、オイルホース、オイルクーラーホース、ATFホース、シリンダーヘッドガスケット、水ポンプシール、ギアボックスシール、ニードルバルブチップ、オートバイ用リードバルブのリード、自動車エンジンのオイルシール、ガソリンホースガンのシール、カーエアコン用シール、エンジンのインタークーラー用ゴムホース、送油経路コネクター装置(fuel line connector systems)のシール、CACバルブ、ニードルチップ、エンジン回り電線、フィラーホース、カーエアコンO−リング、インテークガスケット、燃料タンク材料、ディストリビューター用ダイアフラム、ウォーターホース、クラッチホース、PSホース、ATホース、マスターバックホース、ヒーターホース、エアコンホース、ベンチレーションホース、オイルフィラーキャップ、PSラックシール、ラック&ピニオンブーツ、CVJブーツ、ボールジョイントダストカバー、ストラットダストカバー、ウェザーストリップ、グラスラン、センターユニットパッキン、ボディーサイトウェルト、バンパーラバー、ドアラッチ、ダッシュインシュレーター、ハイテンションコード、平ベルト、ポリVベルト、タイミングベルト、歯付きベルト、Vリブドベルト、タイヤ、ワイパーブレード、LPG車レギュレータ用ダイアフラムやプランジャー、CNG車レギュレータ用ダイアフラムやバルブ、DME対応ゴム部品、オートテンショナのダイアフラムやブーツ、アイドルスピードコントロールのダイアフラムやバルブ、オートスピードコントロールのアクチュエーター,負圧ポンプのダイアフラムやチェックバルブやプランジャー、O.P.S.のダイアフラムやO−リング、ガソリン圧抜きバルブ、エンジンシリンダースリーブのO−リングやガスケット、ウェットシリンダースリーブのO−リングやガスケット、ディファレンシャルギヤのシールやガスケット(ギヤ油のシールやガスケット)、パワーステアリング装置のシールやガスケット(PSFのシールやガスケット)、ショックアブソーバのシールやガスケット(SAFのシールやガスケット)、等速ジョイントのシールやガスケット、ホイール軸受のシールやガスケット、メタルガスケットのコーティング剤、キャリパーシール、ブーツ類、ホイールベアリングシール、タイヤの加硫成形に使用されるブラダー等が挙げられる。
【0104】
上記航空機分野、宇宙・ロケット分野、船舶分野においては、特に燃料系統や潤滑油系統に用いることができる。
上記航空機分野においては、例えば、航空機用各種シール部品、航空機用エンジンオイル用途の航空機用各種部品、ジェットエンジンバルブステムシールやガスケットやO−リング、ローテーティングシャフトシール、油圧機器のガスケット、防火壁シール、燃料供給用ホースやガスケットやO−リング、航空機用ケーブルやオイルシールやシャフトシール等として用いることが可能である。
【0105】
上記宇宙・ロケット分野においては、例えば、宇宙船、ジェットエンジン、ミサイル等のリップシール、ダイアフラム、O−リングや、耐ガスタービンエンジン用オイルのO−リング、ミサイル地上制御用防振台パッド等として用いることができる。
また、船舶分野においては、例えば、スクリューのプロペラシャフト船尾シール、ディーゼルエンジンの吸排気用バルブステムシール、バタフライバルブのバルブシール、バタフライバルブのバルブシートや軸シール、バタフライ弁の軸シール、船尾管シール、燃料ホース、ガスケット、エンジン用のO−リング、船舶用ケーブル、船舶用オイルシール、船舶用シャフトシール等として使用することができる。
【0106】
上記化学プラント等の化学品分野、医薬品等の薬品分野においては、高度の耐薬品性が要求されるような工程、例えば、医薬品、農薬、塗料、樹脂等の化学品を製造する工程に用いることができる。
上記化学品分野及び薬品分野における具体的な使用形態としては、化学装置、化学薬品用ポンプや流量計、化学薬品用配管、熱交換器、農薬散布機、農薬移送ポンプ、ガス配管、燃料電池、分析機器や理化学機器(例えば、分析機器や計器類のカラム・フィッティング等)、排煙脱硫装置の収縮継ぎ手、硝酸プラント、発電所タービン等に用いられるシールや、医療用滅菌プロセスに用いられるシール、メッキ液用シール、製紙用ベルトのコロシール、風洞のジョイントシール;反応機、攪拌機等の化学装置、分析機器や計器類、ケミカルポンプ、ポンプハウジング、バルブ、回転計等に用いられるO−リングや、メカニカルシール用O−リング、コンプレッサーシーリング用のO−リング;高温真空乾燥機、ガスクロマトグラフィーやpHメーターのチューブ結合部等に用いられるパッキンや、硫酸製造装置のガラス冷却器パッキン;ダイアフラムポンプ、分析機器や理化学機器等に用いられるダイアフラム;分析機器、計器類に用いられるガスケット;分析機器や計器類に用いられるはめ輪(フェルール);バルブシート;Uカップ;化学装置、ガソリンタンク、風洞等に用いられるライニングや、アルマイト加工槽の耐食ライニング;メッキ用マスキング冶具のコーティング;分析機器や理化学機器の弁部品;排煙脱硫プラントのエキスパンジョンジョイント;濃硫酸等に対する耐酸ホース、塩素ガス移送ホース、耐油ホース、ベンゼンやトルエン貯槽の雨水ドレンホース;分析機器や理化学機器等に用いられる耐薬品性チューブや医療用チューブ;繊維染色用の耐トリクレン用ロールや染色用ロール;医薬品の薬栓;医療用のゴム栓;薬液ボトル、薬液タンク、バッグ、薬品容器;耐強酸、耐溶剤の手袋や長靴等の保護具等が挙げられる。
【0107】
上記現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野、塗装設備等の塗装分野においては、乾式複写機のロール、ベルト、シール、弁部品等として用いることができる。
上記写真分野、印刷分野及び塗装分野における具体的な使用形態としては、複写機の転写ロールの表面層、複写機のクリーニングブレード、複写機のベルト;複写機、プリンター、ファクシミリ等のOA機器用のロール(例えば、定着ロール、圧着ロール、加圧ロール等が挙げられる。)、ベルト;PPC複写機のロール、ロールブレード、ベルト;フィルム現像機、X線フィルム現像機のロール;印刷機械の印刷ロール、スクレーパー、チューブ、弁部品、ベルト;プリンターのインキチューブ、ロール、ベルト;塗布、塗装設備の塗装ロール、スクレーパー、チューブ、弁部品;現像ロール、グラビアロール、ガイドロール、磁気テープ製造塗工ラインのガイドロール、磁気テープ製造塗工ラインのグラビアロール、コーティングロール等が挙げられる。
【0108】
上記食品プラント機器及び家庭用品を含む食品機器分野においては、食品製造工程や、食品移送器用又は食品貯蔵器用に用いることができる。
上記食品機器分野における具体的な使用形態としては、プレート式熱交換器のシール、自動販売機の電磁弁シール、ジャーポットのパッキン、サニタリーパイプパッキン、圧力鍋のパッキン、湯沸器シール、熱交換器用ガスケット、食品加工処理装置用のダイアフラムやパッキン、食品加工処理機用ゴム材料(例えば、熱交換器ガスケット、ダイアフラム、O−リング等の各種シール、配管、ホース、サニタリーパッキン、バルブパッキン、充填時にビン等の口と充填剤との間のジョイントとして使用される充填用パッキン)等が挙げられる。また、酒類、清涼飲料水等の製品、充填装置、食品殺菌装置、醸造装置、湯沸し器、各種自動食品販売機等に用いられるパッキン、ガスケット、チューブ、ダイアフラム、ホース、ジョイントスリーブ等も挙げられる。
【0109】
上記原子力プラント機器分野においては、原子炉周辺の逆止弁や減圧弁、六フッ化ウランの濃縮装置のシール等に用いることができる。
【0110】
上記一般工業分野における具体的な使用形態としては、工作機械、建設機械、油圧機械等の油圧機器用シール材;油圧、潤滑機械のシールやベアリングシール;マンドレル等に用いられるシール材;ドライクリーニング機器の窓等に用いられるシール;サイクロトロンのシールや(真空)バルブシール、プロトン加速器のシール、自動包装機のシール、空気中の亜硫酸ガスや塩素ガス分析装置(公害測定器)用ポンプのダイアフラム、スネークポンプライニング、印刷機のロールやベルト、搬送用のベルト(コンベアベルト)、鉄板等の酸洗い用絞りロール、ロボットのケーブル、アルミ圧延ライン等の溶剤絞りロール、カプラーのO−リング、耐酸クッション材、切削加工機械の摺動部分のダストシールやリップゴム、生ごみ焼却処理機のガスケット、摩擦材、金属又はゴムの表面改質剤、被覆材等が挙げられる。また、製紙プロセスで用いられる装置のガスケットやシール材、クリーンルーム用フィルターユニットのシーリング剤、建築用シーリング剤、コンクリートやセメント等の保護コーティング剤、ガラスクロス含浸材料、ポリオレフィンの加工助剤、ポリエチレンの成形性改良添加剤、小型発電機や芝刈機等の燃料容器、金属板にプライマー処理を施すことによって得られるプレコートメタル等としても使用することができる。その他、織布に含浸させて焼付けてシート及びベルトとして使用することもできる。
【0111】
上記鉄鋼分野における具体的な使用形態としては、鉄板加工設備の鉄板加工ロール等が挙げられる。
【0112】
上記電気分野における具体的な使用形態としては、新幹線の絶縁油キャップ、液封型トランスのベンチングシール、変圧器のシール、油井ケーブルのジャケット、電気炉等のオーブンのシール、電子レンジの窓枠シール、CRTのウェッジとネックとを接着させる際に用いられるシール材、ハロゲンランプのシール材、電気部品の固定剤、シーズヒーターの末端処理用シール材、電気機器リード線端子の絶縁防湿処理に用いられるシール材等が挙げられる。また、耐油・耐熱電線、高耐熱性電線、耐薬品性電線、高絶縁性電線、高圧送電線、ケーブル、地熱発電装置に用いられる電線、自動車エンジン周辺に用いられる電線等の被覆材に用いることもできる。車両用ケーブルのオイルシールやシャフトシールに用いることもできる。更には、電気絶縁材料(例えば、各種電気機器の絶縁用スペーサ、ケーブルのジョイントや末端部等に用いる絶縁テープ、熱収縮性のチューブ等に使用される材料)や、高温雰囲気で用いられる電気及び電子機器材料(例えば、モータ用口出線材料、高熱炉まわりの電線材料)にも使用可能である。また、太陽電池の封止層や保護フィルム(バックシート)にも使用できる。
【0113】
上記燃料電池分野においては、固体高分子形燃料電池、リン酸塩型燃料電池等における、電極間、電極−セパレーター間のシール材や、水素、酸素、生成水等の配管のシールやパッキン、セパレーター等として用いることができる。
【0114】
上記電子部品分野においては、放熱材原料、電磁波シールド材原料、コンピュータのハードディスクドライブ(磁気記録装置)用のガスケット等に用いることができる。また、ハードディスクドライブの緩衝ゴム(クラッシュストッパー)、ニッケル水素二次電池の電極活物質のバインダー、リチウムイオン電池の活物質のバインダー、リチウム二次電池のポリマー電解質、アルカリ蓄電池の正極の結着剤、EL素子(エレクトロルミネセンス素子)のバインダー、コンデンサーの電極活物質のバインダー、封止剤、シーリング剤、光ファイバーの石英の被覆材、光ファイバー被覆材等のフィルムやシート類、電子部品、回路基板のポッティングやコーティングや接着シール、電子部品の固定剤、エポキシ等の封止剤の変性剤、プリント基板のコーティング剤、エポキシ等のプリント配線板プリプレグ樹脂の変性材、電球等の飛散防止材、コンピュータ用ガスケット、大型コンピュータ冷却ホース、二次電池、特にリチウム二次電池用のガスケットやO−リング等のパッキン、有機EL構造体の外表面の片面又は両面を覆う封止層、コネクター、ダンパー等としても用いられる。
【0115】
上記化学薬品輸送用機器分野においては、トラック、トレーラー、タンクローリー、船舶等の安全弁や積出しバルブ等に用いることができる。
【0116】
上記石油、ガス等のエネルギー資源探索採掘機器部品分野においては、石油、天然ガス等の採掘の際に用いられる各種シール材、油井に使われる電気コネクターのブーツ等として用いられる。
上記エネルギー資源探索採掘機器部品分野における具体的な使用形態としては、ドリルビットシール、圧力調整ダイアフラム、水平掘削モーター(ステーター)のシール、ステーターベアリング(シャフト)シール、暴噴防止装置(BOP)に用いられるシール材、回転暴噴防止装置(パイプワイパー)に用いられるシール材、MWD(リアルタイム掘削情報探知システム)に用いられるシール材や気液コネクター、検層装置(ロギングエクイップメント)に用いられる検層ツールシール(例えば、O−リング、シール、パッキン、気液コネクター、ブーツ等)、膨張型パッカーやコンプリーションパッカー及びそれらに用いるパッカーシール、セメンチング装置に用いられるシールやパッキン、パーフォレーター(穿孔装置)に用いられるシール、マッドポンプに用いられるシールやパッキンやモーターライニング、地中聴検器カバー、Uカップ、コンポジションシーティングカップ、回転シール、ラミネートエラストメリックベアリング、流量制御のシール、砂量制御のシール、安全弁のシール、水圧破砕装置(フラクチャリングエクイップメント)のシール、リニアーパッカーやリニアーハンガーのシールやパッキン、ウェルヘッドのシールやパッキン、チョークやバルブのシールやパッキン、LWD(掘削中検層)用シール材、石油探索・石油掘削用途で用いられるダイアフラム(例えば、石油掘削ピット等の潤滑油供給用ダイアフラム)、ゲートバルブ、電子ブーツ、穿孔ガンのシールエレメント等が挙げられる。
【0117】
その他、厨房、浴室、洗面所等の目地シール;屋外テントの引き布;印材用のシール;ガスヒートポンプ用ゴムホース、耐フロン性ゴムホース;農業用のフィルム、ライニング、耐候性カバー;建築や家電分野等で使用されるラミネート鋼板等のタンク類等にも用いることができる。
【0118】
更には、アルミ等の金属と結合させた物品として使用することも可能である。そのような使用形態としては、例えば、ドアシール、ゲートバルブ、振り子バルブ、ソレノイド先端の他、金属と結合されたピストンシールやダイアフラム、金属ガスケット等の金属と結合された金属ゴム部品等が挙げられる。
また、自転車におけるゴム部品、ブレーキシュー、ブレーキパッド等にも用いることができる。
【0119】
また、上記成形品の形態の1つとしてベルトが挙げられる。このようなベルトも有用である。
上記ベルトとしては、次のものが例示される。動力伝達ベルト(平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、歯付きベルト等を含む)、搬送用ベルト(コンベアベルト)として、農業用機械、工作機械、工業用機械等のエンジン周り等各種高温となる部位に使用される平ベルト;石炭、砕石、土砂、鉱石、木材チップ等のバラ物や粒状物を高温環境下で搬送するためのコンベアベルト;高炉等の製鉄所等で使用されるコンベアベルト;精密機器組立工場、食品工場等において、高温環境下に曝される用途におけるコンベアベルト;農業用機械、一般機器(例えば、OA機器、印刷機械、業務用乾燥機等)、自動車用等のVベルトやVリブドベルト;搬送ロボットの伝動ベルト;食品機械、工作機械の伝動ベルト等の歯付きベルト;自動車用、OA機器、医療用、印刷機械等で使用される歯付きベルト等が挙げられる。
特に、自動車用歯付きベルトとしては、タイミングベルトが代表的である。
【0120】
上記ベルトは、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
多層構造である場合、上記ベルトは、上記架橋性組成物を架橋して得られる層及び他の材料からなる層からなるものであってもよい。
多層構造のベルトにおいて、他の材料からなる層としては、他のゴムからなる層や熱可塑性樹脂からなる層、各種繊維補強層、帆布、金属箔層等が挙げられる。
【0121】
上記成形品はまた、産業用防振パッド、防振マット、鉄道用スラブマット、パッド類、自動車用防振ゴム等に使用できる。自動車用防振ゴムとしては、エンジンマウント用、モーターマウント用、メンバマウント用、ストラットマウント用、ブッシュ用、ダンパー用、マフラーハンガー用、センターベアリング用等の防振ゴムが挙げられる。
【0122】
また、他の使用形態として、フレキシブルジョイント、エキスパンションジョイント等のジョイント部材、ブーツ、グロメット等が挙げられる。船舶分野であれば、例えばマリンポンプ等が挙げられる。
ジョイント部材とは、配管及び配管設備に用いられる継ぎ手のことであり、配管系統から発生する振動、騒音の防止、温度変化、圧力変化による伸縮や変位の吸収、寸法変動の吸収や地震、地盤沈下による影響の緩和、防止等の用途に用いられる。
フレキシブルジョイント、エキスパンションジョイントは、例えば、造船配管用、ポンプやコンプレッサー等の機械配管用、化学プラント配管用、電気配管用、土木・水道配管用、自動車用等の複雑形状成形体として好ましく用いることができる。
ブーツは、例えば、等速ジョイントブーツ、ダストカバー、ラックアンドピニオンステアリングブーツ、ピンブーツ、ピストンブーツ等の自動車用ブーツ、農業機械用ブーツ、産業車両用ブーツ、建築機械用ブーツ、油圧機械用ブーツ、空圧機械用ブーツ、集中潤滑機用ブーツ、液体移送用ブーツ、消防用ブーツ、各種液化ガス移送用ブーツ等の各種産業用ブーツ等の複雑形状成形体として好ましく用いることができる。
【0123】
上記成形品は、フィルタープレス用ダイアフラム、ブロワー用ダイアフラム、給水用ダイアフラム、液体貯蔵タンク用ダイアフラム、圧力スイッチ用ダイアフラム、アキュムレーター用ダイアフラム、サスペンション等の空気ばね用ダイアフラム等にも使用できる。
【0124】
上記成形品をゴムや樹脂に添加することにより、雨、雪、氷や汗等の水に濡れる環境下において滑りにくい成形品やコーティング被膜を得る滑り防止剤が得られる。
【0125】
また、上記成形品は、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等による化粧合板、プリント基板、電気絶縁板、硬質ポリ塩化ビニル積層板等を製造する際の熱プレス成形用クッション材としても用いることができる。
【0126】
上記成形品は、その他、兵器関連の封止ガスケット、侵襲性化学剤との接触に対する保護衣服のような各種支持体の不浸透性化に寄与することもできる。
【0127】
また、自動車、船舶等の輸送機関等に使われるアミン系添加剤(特に酸化防止剤、清浄分散剤として用いられるアミン系添加剤)が含まれる潤滑油(エンジンオイル、ミッションオイル、ギヤーオイル等)や燃料油、グリース(特にウレア系グリース)をシール、封止するために使われるO(角)−リング、V−リング、X−リング、パッキン、ガスケット、ダイアフラム、オイルシール、ベアリングシール、リップシール、プランジャーシール、ドアシール、リップ及びフェースシール、ガスデリバリープレートシール、ウエハサポートシール、バレルシールその他の各種シール材等に用いることができ、チューブ、ホース、各種ゴムロール、コーティング、ベルト、バルブの弁体等としても使用できる。また、ラミネート用材料、ライニング用材料としても使用できる。
【0128】
自動車等の内燃機関のトランスミッション油及び/又はエンジン油に接触しその油温及び/又は油圧を検出するセンサーのリード電線等に使用される耐熱耐油性電線の被覆材料や、オートマチック・トランスミッションやエンジンのオイルパン内等の高温油雰囲気中においても使用することが可能である。
【0129】
その他、上記成形品に加硫被膜を形成させて使用する場合がある。具体的には、複写機用非粘着耐油ロール、耐候結氷防止用ウェザーストリップ、輸液用ゴム栓、バイアルゴム栓、離型剤、非粘着軽搬送ベルト、自動車エンジンマウントのプレーガスケットの粘着防止被膜、合成繊維の被覆加工、パッキング被覆薄層をもつボルト部材又は継ぎ手等の用途が挙げられる。
【0130】
なお、上記成形品の自動車関連部品用途については、同様の構造の自動二輪車の部品用途も含まれる。
また、上記自動車関連における燃料としては、軽油、ガソリン、ディーゼルエンジン用燃料(バイオディーゼルフューエルを含む)等が挙げられる。
【0131】
また、上記パーフルオロエラストマー組成物は、成形品用途に適用する以外にも、種々の工業分野において各種用途に使用することもできる。
【0132】
上記パーフルオロエラストマー組成物は、金属、ゴム、プラスチック、ガラス等の表面改質材;メタルガスケット、オイルシール等、耐熱性、耐薬品性、耐油性、非粘着性が要求されるシール材及び被覆材;OA機器用ロール、OA機器用ベルト等の非粘着被覆材、又はブリードバリヤー;織布製シート及びベルトへの含浸、焼付による塗布等に用いることができる。
上記パーフルオロエラストマー組成物は、高粘度、高濃度にすることによって、通常の用法により複雑な形状のシール材、ライニング、シーラントとして用いることができ、低粘度にすることによって、数ミクロンの薄膜フィルムの形成に用いることができ、また中粘度にすることによりプレコートメタル、O−リング、ダイアフラム、リードバルブの塗布に用いることができる。
さらに、織布や紙葉の搬送ロール又はベルト、印刷用ベルト、耐薬品性チューブ、薬栓、ヒューエルホース等の塗布にも用いることができる。
【0133】
上記パーフルオロエラストマー組成物により被覆する物品基材としては、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、真鍮等の金属類;ガラス板、ガラス繊維の織布及び不織布等のガラス製品;ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン等の汎用及び耐熱性樹脂の成形品及び被覆物;SBR、ブチルゴム、NBR、EPDM等の汎用ゴム、及びシリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性ゴムの成形品及び被覆物;天然繊維及び合成繊維の織布及び不織布;等を使用することができる。
上記パーフルオロエラストマー組成物から形成される被覆物は、耐熱性、耐溶剤性、潤滑性、非粘着性が要求される分野で使用でき、具体的な用途としては、複写機、プリンター、ファクシミリ等のOA機器用のロール(例えば、定着ロール、圧着ロール)及び搬送ベルト;シート及びベルト;O−リング、ダイアフラム、耐薬品性チューブ、燃料ホース、バルブシール、化学プラント用ガスケット、エンジンガスケット等が挙げられる。
【0134】
上記パーフルオロエラストマー組成物はまた、溶剤に溶解し、塗料、接着剤として使用できる。また、乳化分散液(ラテックス)として、塗料としても使用できる。
上記組成物は、各種装置、配管等のシール材やライニング、金属、セラミックス、ガラス、石、コンクリート、プラスチック、ゴム、木材、紙、繊維等の無機及び有機基材からなる構造物の表面処理剤等として使用される。
上記組成物は、ディスペンサー方式塗装やスクリーン印刷塗装により基材等に塗布することができる。
【0135】
上記パーフルオロエラストマー組成物は、フィルムを流延するため、又はファブリック、プラスチック、金属、又はエラストマーのような基材を浸漬するための塗料組成物として使用されてもよい。
特に、上記パーフルオロエラストマー組成物は、ラテックスの形態として、被覆ファブリック、保護手袋、含浸繊維、O−リング被覆、燃料系クイック連結O−リング用被覆、燃料系シール用被覆、燃料タンクロールオーバーバルブダイヤフラム用被覆、燃料タンク圧力センサーダイヤフラム用被覆、オイルフィルター及び燃料フィルターシール用被覆、燃料タンクセンダーシール及びセンダーヘッドフィッテングシール用被覆、複写機定着機構ロール用被覆、並びにポリマー塗料組成物を製造するために使用されてもよい。
それらはシリコーンラバー、ニトリルラバー、及び他のエラストマーの被覆に有用である。その熱安定性と同様に基材エラストマーの耐透過性及び耐薬品性の両方を高める目的のために、それらはそのようなエラストマーから製造される部品の被覆にも有用である。他の用途は、熱交換器、エキスパンジョンジョイント、バット、タンク、ファン、煙道ダクト及び他の管路、並びに収納構造体、例えばコンクリート収納構造体用の被覆を含む。上記組成物は、多層部品構造の露出した断面に、例えばホース構造及びダイアフラムの製造方法において塗布されてもよい。接続部及び結合部におけるシーリング部材は、硬質材料からしばしば成り、そして上記パーフルオロエラストマー組成物は、改良された摩擦性界面、シーリング面に沿って低減された微量の漏れを伴う高められた寸法締りばめを提供する。そのラテックスは、種々の自動車システム用途におけるシール耐久性を高める。
それらは、パワーステアリング系統、燃料系統、エアーコンディショニング系統、並びに、ホース及びチューブが別の部品に接続されるいかなる結合部の製造においても使用されることもできる。上記組成物の更なる有用性は、3層燃料ホースのような多層ラバー構造における、製造欠陥(及び使用に起因する損傷)の補修においてである。上記組成物は、塗料が塗布される前又は後に、形成され、又はエンボス加工され得る薄鋼板の塗布にも有用である。例えば、被覆された鋼の多数の層は組み立てられて、2つの剛性金属部材の間にガスケットを作ることもできる。シーリング効果は、その層の間に上記パーフルオロエラストマー組成物を塗布することにより得られる。このプロセスは、組み立てられた部品のボルト力及びひずみを低下させ、一方、低い亀裂、たわみ、及び穴ひずみにより良好な燃料節約及び低放出を提供する目的のために、エンジンヘッドガスケット及び排気マニフォールドガスケットを製造するために使用され得る。
【0136】
上記パーフルオロエラストマー組成物は、その他、コーティング剤;金属、セラミック等の無機材料を含む基材にディスペンサー成形してなる基材一体型ガスケット、パッキン類;金属、セラミック等の無機材料を含む基材にコーティングしてなる複層品等としても使用することができる。
【実施例】
【0137】
次に本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0138】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0139】
(水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数)
下記式により算出した。
【0140】
【数1】
【0141】
式中、ポリマー粒子の個数(パーフルオロエラストマー粒子の個数)は水1ccあたりであり、比重は、合成されるパーフルオロエラストマーの比重の実測値を用いた。
【0142】
(比重)
自動比重計DMA−220H(新光電子株式会社製)を用いて測定した。
【0143】
(重合速度)
下記式により算出した。
重合速度={水性分散液重量×固形分濃度/100}/{(重合に使用した純水量+重合に使用した含フッ素界面活性剤水溶液に含まれる水の量)×重合時間}
式中の各量の単位は、下記の通りである。
水性分散液重量 :g
固形分濃度 :質量%
重合に使用した純水量 :kg
重合に使用した含フッ素界面活性剤水溶液に含まれる水の量 :kg
重合時間 :時間
重合速度 :g/(時間×kg)
【0144】
(体積平均粒子径)
動的光散乱法により測定する。重合により得られた水性分散液を、純水で10倍希釈し、粒子径測定用の水性分散液を作成し、ELSZ−1000S(大塚電子株式会社製)を使用して25℃、積算70回にて測定した。溶媒:水の屈折率1.3328、溶媒の粘度は0.8878とした。体積分布の平均値を粒子径とした。
【0145】
(パーフルオロエラストマーのガラス転移温度)
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、JIS K6240に規定される微分曲線のピークトップ温度をガラス転移温度とした。
【0146】
(固形分濃度)
水性分散液1gを、送風乾燥機中で150℃、12時間の条件で乾燥し、水性分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表した値を採用した。
【0147】
(パーフルオロエラストマーのモノマー単位組成)
19F−NMRによって測定した。なお、数値を四捨五入したため、各モノマー単位量の合計は必ずしも100モル%になっていない。
【0148】
(ムーニー粘度)
上記ムーニー粘度は、ALPHA TECHNOLOGIES社製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、JIS K6300に従い測定した。
【0149】
実施例1(水100質量部に対してF(CF
2)
5COONH
4 5質量部)
(重合)
純水2221g、F(CF
2)
5COONH
4の50質量%水溶液234g、及び、炭酸アンモニウム0.21gを混合した水溶液を、着火源をもたない内容積6リットルのステンレススチール製オートクレーブ(マックスブレンドタイプの攪拌翼と邪魔板1枚が付属)に入れた後、系内を窒素ガスで充分に置換した後、脱気し、400rpmで撹拌しながら、52℃に昇温し、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)の混合ガス(TFE/PMVE=35/65モル%比)を、内圧が0.757MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CN(CNVE)を0.90g窒素で圧入した後、過硫酸アンモニウム(APS)12.3gを水30gに溶解し、窒素で圧入して反応を開始した。
【0150】
重合の進行に伴い、槽内圧力が低下するので、圧力が0.662MPa・Gとなった時に、TFE7gおよびPMVE8gをオートクレーブに導入し、昇圧した。反応の進行にともない槽内圧力が低下するので、TFE及びPMVEを60/40モル%の比率で圧入し、0.662MPa・G〜0.76MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返し、重合終了までに前記のTFE7gと、PMVE8gを含めて、TFEを326gとPMVEを361g圧入した。重合中にCNVEを17回、0.90gずつ途中添加で水2gとともに重合槽内に圧入した。CNVEのx回目(1≦x≦17)の途中添加は、TFEの仕込み量が{(326/18)×x}gを超えた時に行った。
【0151】
上記のようにTFE、PMVE、CNVEを重合槽に仕込んだ後、重合槽内圧力が0.76MPa・Gとなった時点で、オートクレーブ及び槽内反応液を直ちに冷却しつつ、未反応モノマーを放出して、固形分濃度21.7質量%の水性分散液3251gを得た。重合時間(過硫酸アンモニウムを仕込んだ時点から、未反応モノマーを放出し始めるまでの時間)は14.0時間であった。水性分散液を取り出した後のオートクレーブの攪拌翼、槽内壁、邪魔板等の槽内には付着ポリマーは全く無かった。
【0152】
(パーフルオロエラストマー水性分散液の後処理)
得られた水性分散液900gに純水900gを加え、混合希釈した。この混合希釈液を3.5%塩酸水溶液7500gに滴下した。滴下は、塩酸水溶液を攪拌しながら行なった。塩酸水溶液中に、ポリマーが凝析されるので、凝析されたポリマーをろ別し、純水10000g中に移し、10分間攪拌しながら、洗浄した。10分後、再びポリマーをろ別し、純水10000g中に移し、10分間攪拌しながら洗浄した。この純水10000gでの洗浄操作を6回繰り返した後、ポリマーをろ別した。ろ別されたポリマーは、70℃で60時間、真空乾燥させた。白色のポリマーが得られた。
【0153】
(パーフルオロエラストマーの分析)
19F−NMR(固体NMR)分析の結果、乾燥後のポリマーのモノマー単位組成は、TFE/PMVE/CNVE=54.5/45.1/0.43モル%であった。170℃でのムーニー粘度は、ML(1+20)が59であった。
ガラス転移温度は、−3.4℃であった。
室温から600℃までのDTA測定と、−50℃から100℃までのDSC測定の結果、融解ピークは観察されなかった。
【0154】
重合速度を上記式により算出したところ、21.6g/(時間×kg)であった。
水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子の体積平均粒子径は67.4nmであった。
水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数を上記式により算出したところ、8.5×10
14個/ccであった。ポリマーの比重は2.038であった。
【0155】
実施例2(水100質量部に対してF(CF
2)
5COONH
4 10質量部)
最初に仕込む純水の量を2104gに、F(CF
2)
5COONH
4の50質量%水溶液の量を468gに、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、固形分濃度21.2質量%の水性分散液3389gを得た。重合時間は7.10時間であった。水性分散液を取り出した後のオートクレーブの攪拌翼、槽内壁、邪魔板等の槽内には付着ポリマーは全く無かった。
【0156】
得られた水性分散液について、実施例1と同様に後処理を行い、白色のポリマーを得た。得られたポリマーを実施例1と同様に分析したところ、以下の結果が得られた。
ポリマーのモノマー単位組成:TFE/PMVE/CNVE=54.7/44.8/0.45モル%
170℃でのムーニー粘度 ML(1+20):99.5
ガラス転移温度:−2.7℃
室温から600℃までのDTA測定と、−50℃から100℃までのDSC測定の結果、融解ピークは観察されなかった。
【0157】
重合速度は43.2g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子の体積平均粒子径は23.8nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は1.9×10
16個/ccであった。ポリマーの比重は2.038であった。
【0158】
実施例3(水100質量部に対してF(CF
2)
5COONH
4 20質量部)
最初に仕込む純水の量を1871gに、F(CF
2)
5COONH
4の50質量%水溶液の量を935gに、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、固形分濃度20.63質量%の水性分散液3651gを得た。重合時間は5.93時間であった。水性分散液を取り出した後のオートクレーブの攪拌翼、槽内壁、邪魔板等の槽内には付着ポリマーは全く無かった。
【0159】
得られた水性分散液について、実施例1と同様に後処理を行い、白色のポリマーを得た。得られたポリマーを実施例1と同様に分析したところ、以下の結果が得られた。
ポリマーのモノマー単位組成:TFE/PMVE/CNVE=55.0/44.6/0.40モル%
170℃でのムーニー粘度 ML(1+20):89.4
ガラス転移温度:−3.4℃
室温から600℃までのDTA測定と、−50℃から100℃までのDSC測定の結果、融解ピークは観察されなかった。
【0160】
重合速度は54.3g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子の体積平均粒子径は19.3nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は3.4×10
16個/ccであった。ポリマーの比重は2.038であった。
【0161】
比較例1(水100質量部に対してF(CF
2)
5COONH
4 1質量部)
最初に仕込む純水の量を2315gに、F(CF
2)
5COONH
4の50質量%水溶液の量を46.8gに、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に重合を進めたが、重合がほとんど進行せず、6時間18分(6.3時間)の重合時間で、TFEは12g、PMVEは13g仕込んだだけで、実施例1と同じ量のTFE、PMVE、CNVEを仕込むことができなかった。固形分濃度1.90質量%の水性分散液2421gを得た。水性分散液を取り出した後のオートクレーブの攪拌翼、槽内壁、邪魔板等の槽内には付着ポリマーは全く無かった。
重合速度は3.1g/(時間×kg)であった。
【0162】
比較例2(水100質量部に対してC
3F
7OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4 5質量部)
最初に仕込む純水の量を2338gに、F(CF
2)
5COONH
4の50質量%水溶液をC
3F
7OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4 100%純品の116.9gに、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、固形分濃度22.0質量%の水性分散液3257gを得た。重合時間は5.35時間であった。水性分散液を取り出した後のオートクレーブの攪拌翼、槽内壁、邪魔板等の槽内には付着ポリマーは全く無かった。
重合速度は57.4g/(時間×kg)であった。
【0163】
得られた水性分散液について、実施例1と同様に後処理を行い、白色のポリマーを得た。得られたポリマーを実施例1と同様に分析したところ、以下の結果が得られた。
ポリマーのモノマー単位組成:TFE/PMVE/CNVE=57.1/42.5/0.42モル%
【0164】
比較例3(水100質量部に対してC
3F
7OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4 1質量部)
最初に仕込む純水の量を2338gに、F(CF
2)
5COONH
4の50質量%水溶液をC
3F
7OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4 100%純品の23.4gに、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、固形分濃度22.4質量%の水性分散液3128gを得た。重合時間は7.53時間であった。水性分散液を取り出した後のオートクレーブの攪拌翼、槽内壁、邪魔板等の槽内には付着ポリマーがあり、それらを採取し、加熱により水分を除去すると、11.8gであった。
【0165】
得られた水性分散液について、実施例1と同様に後処理を行い、白色のポリマーを得た。得られたポリマーを実施例1と同様に分析したところ、以下の結果が得られた。
ポリマーのモノマー単位組成:TFE/PMVE/CNVE=56.0/43.7/0.38モル%
170℃でのムーニー粘度 ML(1+20):107.0
ガラス転移温度:−2.1℃
室温から600℃までのDTA測定と、−50℃から100℃までのDSC測定の結果、融解ピークは観察されなかった。
【0166】
重合速度は39.9g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子の体積平均粒子径は27.0nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は1.38×10
16個/ccであった。ポリマーの比重は2.038であった。
【0167】
比較例4(水100質量部に対してF(CF
2)
7COONH
4 5質量部)
最初に仕込む純水の量を1870gに、F(CF
2)
5COONH
4の50質量%水溶液をF(CF
2)
7COONH
4の20質量%水溶液の584.5gに、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、固形分濃度22.2質量%の水性分散液3280gを得た。重合時間は4.55時間であった。水性分散液を取り出した後のオートクレーブの攪拌翼、槽内壁、邪魔板等の槽内には付着ポリマーは全く無かった。
【0168】
得られた水性分散液について、実施例1と同様に後処理を行い、白色のポリマーを得た。得られたポリマーを実施例1と同様に分析したところ、以下の結果が得られた。
ポリマーのモノマー単位組成:TFE/PMVE/CNVE=57.1/42.5/0.38モル%
【0169】
重合速度は68.4g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子の体積平均粒子径は17.0nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は5.4×10
16個/ccであった。ポリマーの比重は2.038であった。
【0170】
比較例5(水100質量部に対してF(CF
2)
7COONH
4 1質量部)
最初に仕込む純水の量を2242.8gに、F(CF
2)
5COONH
4の50質量%水溶液をF(CF
2)
7COONH
4の20質量%水溶液の119gに、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、固形分濃度22.3質量%の水性分散液3130gを得た。重合時間は7.40時間であった。水性分散液を取り出した後のオートクレーブの攪拌翼、槽内壁、邪魔板等の槽内には付着ポリマーがあり、それらを採取し、加熱により水分を除去すると、9.8gであった。
【0171】
得られた水性分散液について、実施例1と同様に後処理を行い、白色のポリマーを得た。得られたポリマーを実施例1と同様に分析したところ、以下の結果が得られた。
ポリマーのモノマー単位組成:TFE/PMVE/CNVE=56.5/43.1/0.40モル%
170℃でのムーニー粘度 ML(1+20):102.5
【0172】
重合速度は40.3g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子の体積平均粒子径は26.8nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は1.40×10
16個/ccであった。ポリマーの比重は2.038であった。
【0173】
C
3F
7OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4を水100質量部に対して1質量部から5質量部に増やした場合、重合速度は1.4倍程度にしか増えなかった。またF(CF
2)
7COONH
4を水100質量部に対して1質量部から5質量部に増やした場合、重合速度は1.7倍程度にしか増えなかったが、F(CF
2)
5COONH
4を水100質量部に対して1質量部から5質量部に増やした場合、重合速度を7倍程度に大きく増やすことが可能であった。