(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の軸心に沿った取付孔が一端に形成された回転軸と、第2の軸心に沿って貫通孔が形成されたインペラと、前記貫通孔に挿通され、一端が前記取付孔に螺合するスタットボルトと、前記スタットボルトの他端に螺合するナットとを備えるインペラ締結構造であって、
前記スタットボルトは、前記スタットボルトの軸心である第3の軸心方向の途中部位に半径方向に突出する突設部を備え、
前記回転軸は、前記取付孔の開口周縁に前記突設部に当接する受け部を備え、
前記スタットボルトの前記一端は、前記スタットボルトの前記他端よりも軸径が大きいインペラ締結構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来技術には以下のような特性がある。
(1)回転軸に形成されたメネジにテンションボルトの第二オネジをねじ込む際に、テンションボルトが回転軸に対して傾いて取り付けられるため、ロータのアンバランスが過大となる可能性がある。これは、オネジとメネジよりなるネジ部に同軸度を出すことが難しいためである。
(2)メネジの終端部(最奥部)にてテンションボルトをトルク締めしているため、回転軸に対するテンションボルトの止まり位置(軸方向の位置)が安定せず、よってロータ組立の再現性を確保できない可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上記2つの可能性を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、第1の軸心(回転軸軸心)に沿った取付孔が一端に形成された回転軸と、第2の軸心(インペラ軸心)に沿って貫通孔が形成されたインペラと、貫通孔に挿通され、一端が取付孔に螺合するスタットボルトと、上記スタットボルトの他端に螺合するナットとを備えるインペラ締結構造であって、上記スタットボルトは、軸心方向の途中部位に半径方向に突出する突設部を備え、上記回転軸は、上記取付孔の開口周縁に上記突設部に当接する受け部を備えるインペラ締結構造である。
【0007】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、上記突設部は上記スタットボルトの軸心である第3の軸心に対して傾斜する傾斜面を備え、上記受け部は上記傾斜面に当接する受け面を備える。
【0008】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様において、第2の軸心と第1の軸心とを揃える第1の芯出し部をさらに備え、上記突設部は、上記第3の軸心(ボルト軸心)に直交する直交面を備え、上記受け部は、上記直交面に当接する受け面を備える。
【0009】
本発明の第4の態様は、上記第1〜第3のいずれかの態様において、上記スタットボルトの上記一端は上記スタットボルトの上記他端よりも軸径が大きい。
【0010】
本発明の第5の態様は、上記第1〜第4のいずれかの態様において、前記第2の軸心と前記第3の軸心とを揃える第2の芯出し部をさらに備える。
【0011】
本発明の第6の態様は、上記第3〜第5のいずれかの態様において、上記第1の軸心と上記第3の軸心とを揃える第3の芯出し部をさらに備える。
本発明の第7の態様は、上記第1〜第6のいずれかの態様のインペラ締結構造によって回転軸とインペラとが締結されたロータを備えるターボ圧縮機である。
本発明の第8の態様は、第1の軸心に沿った取付孔が一端に形成された回転軸と、第2の軸心に沿って貫通孔が形成されたインペラと、上記貫通孔に挿通され、一端が上記取付孔に螺合するスタットボルトと、上記スタットボルトの他端に螺合するナットとを備えるインペラ締結構造であって、上記スタットボルトは、上記一端側の先端に上記スタッドボルトの軸心である第3の軸心に直交する直交面を備え、上記回転軸は、上記取付孔の最奥部に上記第1の軸心に直交し上記直交面に当接する受け部を備えるインペラ締結構造である。
本発明の第9の態様は、上記第8の態様において、上記スタットボルトの上記一端は、上記スタットボルトの上記他端よりも軸径が大きい。
本発明の第10の態様は、上記8又は9の態様において、上記第2の軸心と上記第1の軸心とを揃える第1の芯出し部をさらに備える。
本発明の第11の態様は、上記第8〜第10のいずれかの態様において、上記第2の軸心と上記第3の軸心とを揃える第2の芯出し部をさらに備える。
本発明の第12の態様は、上記第8〜11のいずれかの態様において、上記第1の軸心と上記第3の軸心とを揃える第3の芯出し部をさらに備える。
本発明の第13の態様は、上記第12の態様において、上記第1の軸心と上記第3の軸心とを揃える補助的な第3の芯出し部をさらに備える。
本発明の第14の態様は、上記第8〜13のいずれかの態様に記載のインペラ締結構造によって回転軸とインペラとが締結されたロータを備えるターボ圧縮機である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上述した従来技術の特性を解決することが可能である。
すなわち、本発明によれば、スタットボルト(テンションボルト)が回転軸に対して傾いて取り付けられることを防止することができるので、ロータのアンバランスが過大となる可能性がない。
また、本発明によれば、回転軸に対するスタットボルト(テンションボルト)の止まり位置が安定するので、ロータ組立の再現性を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の第1、第2実施形態について説明する。最初に第1、第2実施形態に共通なターボ圧縮機1の全体構成について説明する。
【0015】
本実施形態に係るターボ圧縮機1は、
図1に示すように、駆動モータ2、連結軸3、歯車装置4、第1段圧縮部5、第2段圧縮部6、第3段圧縮部7、第4段圧縮部8、第1インタクーラ9、第2インタクーラ10及びアフタクーラ11を備えている。
【0016】
駆動モータ2は、ターボ圧縮機1の動力源であり、回転軸が連結軸3の一端に接続されている。連結軸3は、一端が駆動モータ2の回転軸に連結され、他端が歯車装置4の駆動軸4a(
図2参照)に連結されている。歯車装置4は、駆動モータ2(つまり連結軸3)の回転を増速して第1段圧縮部5、第2段圧縮部6、第3段圧縮部7及び第4段圧縮部8に伝達する動力伝達装置である。
【0017】
第1段圧縮部5、第2段圧縮部6、第3段圧縮部7、第4段圧縮部8、第1インタクーラ9、第2インタクーラ10及びアフタクーラ11は、
図1に破線矢印で示すように、流体流路によって第1段圧縮部5→第1インタクーラ9→第2段圧縮部6→第2インタクーラ10→第3段圧縮部7→アフタクーラ11→第4段圧縮部8の順で連結されている。
【0018】
第1段圧縮部5は、流体の通過経路の最上流に位置し、流体を第1段圧縮して第1インタクーラ9に供給する。第1インタクーラ9は、第1段圧縮部5から供給された流体(圧縮流体)を冷却して第2段圧縮部6に供給する。第2段圧縮部6は、第1インタクーラ9から供給された圧縮流体を第2段圧縮して第2インタクーラ10に供給する。第2インタクーラ10は、第2段圧縮部6から供給された圧縮流体を冷却して第3段圧縮部7に供給する。
【0019】
第3段圧縮部7は、第2インタクーラ10から供給された圧縮流体を第3段圧縮してアフタクーラ11に供給する。アフタクーラ11は、第3段圧縮部7から供給された圧縮流体を冷却して第4段圧縮部8に供給する。第4段圧縮部8は、アフタクーラ11から供給された圧縮流体を第4段圧縮して外部に供給する。
【0020】
続いて、歯車装置4、第1段圧縮部5、第2段圧縮部6、第3段圧縮部7及び第4段圧縮部8の機械的な構造について、
図2を参照してさらに詳しく説明する。歯車装置4の駆動軸4aには、筐体4bに回転自在に支持されており、比較的大径の駆動歯車4cが取り付けられている。この駆動歯車4cは、第1従動軸(回転軸)4dの略中間位置に設けられた駆動歯車4cよりも小径な第1従動歯車4eと、第2従動軸4fの略中間位置に設けられた駆動歯車4cよりも小径な第2従動歯車4gとがそれぞれ噛合している。
【0021】
第1従動軸4dは、駆動軸4aに平行な状態で筐体4bに回転自在に軸支されると共に、一端に第1インペラ(インペラ)5aが取り付けられ、また他端には第2インペラ6aが取り付けられている。第2従動軸4fは、上記第1従動軸4dと同様に駆動軸4aに平行な状態で筐体4bに回転自在に軸支されると共に、一端に第3インペラ7aが取り付けられ、また他端には第4インペラ8aが取り付けられている。
【0022】
第1インペラ5aは、歯車装置4の筐体4bの側部に設けられた第1インペラケーシング5b内に収容され、第2インペラ6aは、歯車装置4の筐体4bを挟んで第1インペラケーシング5bの反対側の側部に設けられた第2インペラケーシング6b内に収容され、第3インペラ7aは、歯車装置4の筐体4bの側部に設けられた第3インペラケーシング7b内に収容され、第4インペラ8aは、歯車装置4の筐体4bを挟んで第3インペラケーシング7bの反対側の側部に設けられた第4インペラケーシング8b内に収容されている。
【0023】
これら第1インペラケーシング5b、第2インペラケーシング6b、第3インペラケーシング7b及び第4インペラケーシング8bの内部には、流体の吸気通路、ディフューザ流路、スクロール流路(排気流路)がそれぞれ形成されている。なお、第1従動軸4d、第1従動歯車4e、第1インペラ5a及び第2インペラ6aからなる回転体を第1ロータR1と言い、また第2従動軸4f、第2従動歯車4g、第3インペラ7a及び第4インペラ8aからなる回転体を第2ロータR2と言う。
【0024】
このようなターボ圧縮機1では、第1従動歯車4eの歯数が駆動歯車4cの歯数よりも少なく設定されており、駆動モータ2(つまり連結軸3)の回転は、駆動歯車4cの歯数と第1従動歯車4eの歯数との比(第1歯数比)に応じた増速比(第1増速比)で増速されて第1従動軸4dに伝達される。また、このターボ圧縮機1では、第2従動歯車4gの歯数が駆動歯車4cの歯数よりも少なく設定されており、駆動モータ2(つまり連結軸3)の回転は、駆動歯車4cの歯数と第2従動歯車4gの歯数との比(第2歯数比)に応じた増速比(第2増速比)で増速されて第2従動軸4fに伝達される。
【0025】
次に、本発明の第1実施形態に係るインペラ締結構造、つまり第1インペラ5a及び第2インペラ6aの第1従動軸4dに対する締結構造及び第3インペラ7a及び第4インペラ8aの第2従動軸4fに対する締結構造について、
図3A、
図3Bを参照して説明する。なお、これら4つの締結構造はすべて同一なので、以下では代表として第1インペラ5aの第1従動軸4dに対する締結構造を説明する。
【0026】
第1従動軸4dの一端面Eの中心近傍には、
図3Aに示すように、第1の軸心(回転軸軸心L1)に沿った方向に延在する取付孔Hが形成されている。また、一端面Eの外周には、回転軸軸心L1と同心かつ回転軸軸心L1の方向に所定幅を有する多角形の嵌め合い面(軸嵌め合い面M)が形成されている。なお、上記一端面Eは、回転軸軸心L1に直交する直交面である。
【0027】
一方、第1インペラ5aには、
図3Bに示すように、第2の軸心(インペラ軸心L2)に沿って貫通孔Kが形成されている。この第1インペラ5aは、テンションボルトB(スタットボルト)とナットNとによって、第1従動軸4dの一端に締結される。
【0028】
また、貫通孔Kにおいて、第1従動軸4d側には、インペラ軸心L2と同心かつインペラ軸心L2の方向に所定幅を有する多角形の嵌め合い面(第1のインペラ嵌め合い面J1)が形成されている。この第1のインペラ嵌め合い面J1は、上述した軸嵌め合い面Mと嵌合することにより、インペラ軸心L2と回転軸軸心L1とを同心とする。このような第1のインペラ嵌め合い面J1及び軸嵌め合い面Mは、第1の芯出し部F1を構成している。また、貫通孔Kにおいて、ナットN側には、インペラ軸心L2と同心かつインペラ軸心L2の方向に所定幅を有する円筒状の嵌め合い面(第2のインペラ嵌め合い面J2)が形成されている。なお、この第1の芯出し部F1は、第1インペラ5aの倒れを防止する。
【0029】
なお、第1の芯出し部F1は、多角形の軸嵌め合い面M及び第1のインペラ嵌め合い面J1を嵌め合させるポリゴンフィットを採用しているが、これに代えて軸嵌め合い面M及び第1のインペラ嵌め合い面J1を円柱状に形成するインロー(円柱インロー)を採用してもよい。
【0030】
テンションボルトBは、
図3Aに示すように、所定長さを有する丸棒状の部材であって、一端には所定長の第1雄ネジ部b1が、また他端には所定長の第2雄ネジ部b2が形成されたスタットボルトである。第1雄ネジ部b1の軸径は、図示するように第2雄ネジ部b2の軸径よりも若干大きい。例えば、第1雄ネジ部b1の軸径は、第2雄ネジ部b2の軸径の1.2〜2.0倍である。
【0031】
また、テンションボルトBにおいて、第2雄ネジ部b2の内側(つまり第1雄ネジ部b1側)には、第2雄ネジ部b2に隣接するように円筒状の嵌め合い面(ボルト嵌め合い面b5)が設けられている。このボルト嵌め合い面b5は、第3の軸心(ボルト軸心L3)と同心かつボルト軸心L3の方向に所定幅を有する円筒状面であり、上述した第2のインペラ嵌め合い面J2と嵌合する。なお、このようなボルト嵌め合い面b5と第2のインペラ嵌め合い面J2とは、インペラ軸心L2とテンションボルトBの軸心(ボルト軸心L3)とを揃える(同心化する)第2の芯出し部F2(インロー)を構成している。なお、この第2の芯出し部F2は、第1インペラ5aの倒れを補助的に防止する。
【0032】
また、テンションボルトBは、第3の軸心(ボルト軸心L3)の方向(軸心方向)の途中部位、例えば図示するように第1雄ネジ部b1の隣接位置に半径方向(ボルト軸心L3に直交する方向)に突出する突設部b3を備える。ここで、後述するようにテンションボルトBの第1雄ネジ部b1を第1従動軸4dの雌ネジ部h2に螺合させる際に、レンチ等の工具からの締付力が突設部b3を介してテンションボルトBに伝達される。この突設部b3は、
図3Aに示すように、ボルト軸心L3に対して直線状に傾斜するテーパ面b4(傾斜面)を備える。このテーパ面b4の傾斜角は、例えば30〜45°である。
【0033】
すなわち、テーパ面b4は、ボルト軸心L3を中心としてボルト軸心L3周りに連続して延在し、かつ、第1雄ネジ部b1に近づくに従って縮径する円環面である。また、このテーパ面b4において、第1雄ネジ部b1に最も近い部位の軸径は、第1雄ネジ部b1の軸径と同等である。なお、第1雄ネジ部b1と突設部b3のテーパ面b4との間には、図示するように若干の隙間が設けられている。
【0034】
一方、第1従動軸4dの取付孔Hには、
図3Aに示すように、開口周縁(入口周縁)に上記テーパ面b4に当接する受け面h1(受け部)が設けられている。この受け面h1は、回転軸軸心L1に対して直線状に傾斜するテーパ面である。また、この受け面h1は、回転軸軸心L1を中心として回転軸軸心L1周りに連続して延在し、かつ、一端面Eから離れるに従って縮径する円環面である。このような受け面h1の傾斜角は、テンションボルトBのテーパ面b4の傾斜角と同等である。
【0035】
また、上記受け面h1の奥側には、若干の隙間(第1緩衝部位)を挟んで所定長の雌ネジ部h2が設けられ、さらに雌ネジ部h2の奥(最奥部)には不完全ネジ部h3(第2緩衝部位)が形成されている。なお、上記第1緩衝部位及び第2緩衝部位は、雌ネジ部h2の軸径よりも若干大きな軸径を有する部位である。
【0036】
このようなインペラ締結構造では、テンションボルトBの第1雄ネジ部b1を第1従動軸4dの雌ネジ部h2に螺合させることによってテンションボルトBが第1従動軸4dに取り付けられる。ここで、第1雄ネジ部b1と雌ネジ部h2との間には若干のクリアランス(遊び)が存在するので、第1雄ネジ部b1を雌ネジ部h2に螺合させただけでは、テンションボルトBのボルト軸心L3は、第1従動軸4dの回転軸軸心L1と同軸にはならない。
【0037】
しかしながら、テンションボルトBにはテーパ面b4が設けられ、かつ、第1従動軸4dには受け面h1が設けられているので、第1雄ネジ部b1を雌ネジ部h2に螺合させることによってテーパ面b4と受け面h1とが当接し、テンションボルトBのボルト軸心L3は、第1従動軸4dの回転軸軸心L1と同軸となる。即ち、テンションボルトBのテーパ面b4と受け面h1とは、回転軸軸心L1とテンションボルトBの軸心(ボルト軸心L3)とを揃える(同心化する)第3の芯出し部F3を構成している。なお、この第3の芯出し部F3は、テンションボルトBの倒れを防止する。
【0038】
そして、このようにして第1従動軸4dに同軸状態で取り付けられたテンションボルトBを貫通孔Kに挿通させてテンションボルトBの第2雄ネジ部b2が第1インペラ5aから露出する状態とし、さらに第2雄ネジ部b2にナットNを螺合させることによって、第1インペラ5aは、第1従動軸4dに取り付けられる。
【0039】
ここで、上述した第1の芯出し部F1によって、第1従動軸4dの回転軸軸心L1と第1インペラ5aの軸心L2(インペラ軸心L2)とが同心化され、第2の芯出し部F2によって第1インペラ5aの倒れを防止し、テンションボルトBのボルト軸心L3と第1インペラ5aのインペラ軸心L2とが同心化され、第3の芯出し部F3によってテンションボルトBの倒れを防止し、回転軸軸心L1とテンションボルトBのボルト軸心L3とが同心化される。そして、このように3部材が同心化された状態で第2雄ネジ部b2にナットNが螺合することにより、第1インペラ5aがテンションボルトBを介して第1従動軸4dに固定される。なお、上記ナットNは、テンションボルトBに所定の軸力を発生させるように締め付けトルクが管理される。
【0040】
このようなインペラ締結構造によれば、第1従動軸4dの取付孔Hに対するテンションボルトBの第1雄ネジ部b1の締め込み深さ、つまり回転軸軸心L1(ボルト軸心L3)の方向におけるテンションボルトBと第1雄ネジ部b1との位置関係は、
図3Bに示すように、テンションボルトBのテーパ面b4と第1従動軸4dの受け面h1とが当接することによって、第1雄ネジ部b1が不完全ネジ部h3に到達しない状態に規制される。
【0041】
これによってテンションボルトBのボルト軸心L3が第1従動軸4dの回転軸軸心L1に対して傾斜することを防止することができ、この結果として第1ロータR1のアンバランスが過大となることを防止することができると共に、第1ロータR1の組立の再現性を十分に確保することができる。
【0042】
また、このインペラ締結構造によれば、第1雄ネジ部b1の軸径が第2雄ネジ部b2の軸径よりも大きいので、第1雄ネジ部b1を雌ネジ部h2に締め付ける際の締め付けトルクがナットNを第2雄ネジ部b2に締め付ける際の締め付けトルクよりも大きくなる。これによって、ナットNを第2雄ネジ部b2に締め付ける際にテンションボルトBがナットNと共に連れ回ることを防止することができる。なお、テンションボルトBの締め付けトルクは、この締め付けトルクによって発生する軸力がナットNの締め付けトルクによって発生する軸力より大きくなるように設定され、テンションボルトBと第1従動軸4dとの当接面、即ち、テーパ面b4と受け面h1とが離れないようにする必要がある。
【0043】
なお、本第1実施形態に係るインペラ締結構造では、ボルト軸心L3に対して直線状に傾斜するテーパ面b4を傾斜面として設けたが、傾斜面は、このようなテーパ面b4に限定されず、例えば所定の曲率半径を有する曲面であってもよい。なお、曲面としてはボルト軸心L3に対して膨らむ状態の曲面とへこむ状態の曲面とが考えられるが、好ましいのは膨らむ状態の曲面である。
【0044】
続いて、本発明の第2実施形態に係るインペラ締結構造について
図2、
図4A、
図4Bを参照して説明する。この第2実施形態についても、代表として
図2における第1インペラ5a及び第2インペラ6aからなる回転体である第1ロータR1’の第1インペラ5aの第1従動軸(回転軸)4d’に対する締結構造を説明する。なお、
図4A、
図4Bでは、
図3A、
図3Bと同一な構成要素には同一符合を付している。
【0045】
図4A、
図4Bに示すように、本第2実施形態に係るインペラ締結構造では、上述した第1実施形態の突設部b3を備えたテンションボルトBに代えて、突設部b3’を備えるテンションボルトB’ (スタットボルト)を採用する。突設部b3’は、突設部b3のテーパ面b4に代えて、テンションボルトB’のボルト軸心L3’に対して直交する直交面b6を備える。すなわち、この直交面b6は、ボルト軸心L3’を中心としてボルト軸心L3’周りに連続して延在する円環面である。
【0046】
また、テンションボルトB’は、ボルト軸心L3’の方向において突設部b3’よりもテンションボルトB’の一端側に隣接するように第2のボルト嵌め合い面b7が設けられている。この第2のボルト嵌め合い面b7は、ボルト軸心L3’と同心かつボルト軸心L3’の方向に所定幅を有する円筒状の嵌め合い面である。
【0047】
また、本第2実施形態に係るインペラ締結構造では、第1実施形態の第1従動軸4dに代えて第1従動軸4d’を採用する。この第1従動軸4d’は、第1実施形態の取付孔Hに代えて取付孔H’を備える。この取付孔H’においては、
図4Aに示すように、一端面E(回転軸軸心L1’に直交する直交面)が直交面b6に当接する受け面(受け部)となる。
【0048】
また、この取付孔H’は、一端面E(受け面)に近い位置に所定長の雌ネジ部h2が設けられ、さらに雌ネジ部h2の奥(最奥部)には不完全ネジ部h3が形成されている。さらに、雌ネジ部h2よりもテンションボルトB’の他端側であって、取付孔H’の開口周縁(入口周縁)には、回転軸軸心L1’と同心かつ回転軸軸心L1’の方向に所定幅を有する円筒状の嵌め合い面(第2の軸嵌め合い面M2)が形成されている。この第2の軸嵌め合い面M2は、上述した第2のボルト嵌め合い面b7と嵌合することにより、回転軸軸心L1’とボルト軸心L3’とを同心化する。このような第2の軸嵌め合い面M2と第2のボルト嵌め合い面b7とは、第3の芯出し部F3(インロー)を構成している。なお、この第3の芯出し部F3は、テンションボルトB’の倒れを防止する。
【0049】
このようなインペラ締結構造では、回転軸軸心L1’(ボルト軸心L3’)の方向におけるテンションボルトB’と第1従動軸4d’との位置関係は、
図4Aに示すように、テンションボルトB’の直交面b6と第1従動軸4d’の一端面E(受け面)とが当接することによって、第1雄ネジ部b1が不完全ネジ部h3に到達しない状態に規制される。
【0050】
これによってテンションボルトB’のボルト軸心L3’が第1従動軸4d’の回転軸軸心L1’に対して傾斜することを防止することができ、この結果として第1ロータR1’のアンバランスが過大となることを防止することができると共に、第1ロータR1’の組立の再現性を十分に確保することができる。
【0051】
また、このインペラ締結構造によれば、第1雄ネジ部b1の軸径が第2雄ネジ部b2の軸径よりも大きいので、第1雄ネジ部b1を雌ネジ部h2に締め付ける際の締め付けトルクがナットNを第2雄ネジ部b2に締め付ける際の締め付けトルクよりも大きく設定することができる。したがって、ナットNを第2雄ネジ部b2に締め付ける際にテンションボルトB’がナットNと共に連れ回ることを防止することができる。なお、テンションボルトB’の締め付けトルクは、この締め付けトルクによって発生する軸力がナットNの締め付けトルクによって発生する軸力より大きくなるように設定され、テンションボルトB’と第1従動軸4d’との当接面、即ち、直交面b6と一端面Eとが離れないようにすることが好ましい。
【0052】
なお、本第2実施形態の変形例に係るインペラ締結構造として、
図5A、
図5Bに示す構造が考えられる。この第2実施形態の変形例についても、代表として
図2における第1インペラ5a及び第2インペラ6aからなる回転体である第1ロータR1”の第1インペラ5aの第1従動軸(回転軸)4d”に対する締結構造を説明する。なお、
図5A、
図5Bでは、
図3A、
図3Bと同一な構成要素には同一符合を付している。
すなわち、本変形例に係るインペラ締結構造は、上述した突設部b3’に代えて、突設部b3”を備えるテンションボルトB” (スタットボルト)を採用する。突設部b3”は、外周部がボルト軸心L3”の方向において第1雄ネジ部b1側に突出する突出部b8を備え、かつ、突出部b8の先端にボルト軸心L3”に対して直交する直交面b9を備える。
【0053】
この直交面b9は、ボルト軸心L3”を中心としてボルト軸心L3”周りに連続して延在する円環面である。すなわち、本変形例における直交面b9は、突出部b8が存在する位置、つまり上述した第2実施形態の直交面b6よりもボルト軸心L3”(ボルト軸心L3’)から離れた位置で第1従動軸4d”の一端面E(受け面)と当接する。
【0054】
第1従動軸4d”は、機械加工(ドリル加工)によって一端面E(受け面)に取付孔H”を形成するので、一端面E(受け面)において取付孔H”の近傍は上記機械加工が原因で平面度に若干の歪が発生する可能性がある。そして、このような歪は、ボルト軸心L3”が回転軸軸心L1”に対して傾く要因となり得る。このような事情に対して、本変形例では、取付孔H”から若干離れた位置で第1従動軸4d”の一端面E(受け面)にテンションボルトB”の直交面b9を当接させるので、ボルト軸心L3”が回転軸軸心L1”に対して傾くことを第2実施形態よりも確実に防止することができる。
なお、テンションボルトB”には、ボルト軸心L3”の方向において突設部b3”に隣接するように第2のボルト嵌め合い面b10が設けられている。この第2のボルト嵌め合い面b10は、ボルト軸心L3”と同心かつボルト軸心L3”の方向に所定幅を有する円筒状の嵌め合い面である。
第2実施形態と同様の第2の軸嵌め合い面M2は、上述した第2のボルト嵌め合い面b10と嵌合することにより、回転軸軸心L1”とボルト軸心L3”とを同心化する。このような第2の軸嵌め合い面M2と第2のボルト嵌め合い面b10とは、第3の芯出し部F3(インロー)を構成し、この第3の芯出し部F3は、テンションボルトB”の倒れを防止する。
また、第2実施形態と同様に、第1雄ネジ部b1の軸径が第2雄ネジ部b2の軸径よりも大きいので、第1雄ネジ部b1を雌ネジ部h2に締め付ける際の締め付けトルクがナットNを第2雄ネジ部b2に締め付ける際の締め付けトルクよりも大きく設定することができる。したがって、ナットNを第2雄ネジ部b2に締め付ける際にテンションボルトB”がナットNと共に連れ回ることを防止することができる。なお、テンションボルトB”の締め付けトルクは、この締め付けトルクによって発生する軸力がナットNの締め付けトルクによって発生する軸力より大きくなるように設定され、テンションボルトB”と第1従動軸4d”との当接面、即ち、直交面b9と一端面Eとが離れないようにすることが好ましい。
【0055】
続いて、本発明の第3実施形態に係るインペラ締結構造について
図6A、
図6Bを参照して説明する。この第3実施形態についても、代表として
図2における第1インペラ5a及び第2インペラ6aからなる回転体である第1ロータR1’’’の第1インペラ5aの第1従動軸(回転軸)4d’’’に対する締結構造を説明する。なお、
図6A、
図6Bでは、
図3A、
図3Bと同一な構成要素には同一符合を付している。
【0056】
図6A、
図6Bに示すように、本第3実施形態に係るインペラ締結構造では、上述した第1実施形態の突設部b3を備えたテンションボルトBに代えて、突設部b3’’’を備えるテンションボルトB’’’(スタットボルト)を採用する。突設部b3’’’は、第1実施形態の突設部b3のテーパ面b4や第2実施形態の突設部b3’の直交面b6のような加工精度が要求される面は備えず、テンションボルトB’’’の第1雄ネジ部b1を第1従動軸4d’’’の雌ネジ部h2に螺合させる際に、レンチ等の工具からの締付力が突設部b3’’’を介してテンションボルトB’’’に伝達される構成であれば良い。
【0057】
また、テンションボルトB’’’は、ボルト軸心L3’’’の方向において突設部b3’’’よりもテンションボルトB’’’の一端側に、第2のボルト嵌め合い面b11を備えている。この第2のボルト嵌め合い面b11は、ボルト軸心L3’’’と同心かつボルト軸心L3’’’の方向に所定幅を有する円筒状の嵌め合い面である。
【0058】
また、第2のボルト嵌め合い面b11よりもテンションボルトB’’’の一端側には、テンションボルトB’’’の第1雄ネジ部b1が設けられ、第1雄ネジ部b1よりもさらにテンションボルトB’’’の一端側には、第3のボルト嵌め合い面b12を備えている。この第3のボルト嵌め合い面b12もまた、ボルト軸心L3’’’と同心かつボルト軸心L3’’’の方向に所定幅を有する円筒状の嵌め合い面である。
【0059】
さらに、第3のボルト嵌め合い面b12よりもテンションボルトB’’’の一端側には、ボルト軸心L3’’’と同心かつボルト軸心L3’’’の方向に所定幅を有する円筒部b13が設けられ、円筒部b13のテンションボルトB’’’の一端側の先端にはボルト軸心L3’’’と直交する直交面b14が設けられている。
【0060】
また、本第3実施形態に係るインペラ締結構造では、第1実施形態の第1従動軸4dに代えて第1従動軸4d’’’を採用する。この第1従動軸4d’’’は、第1実施形態の取付孔Hに代えて取付孔H’’’を備える。
この取付孔H’’’においては、
図6Aに示すように、取付孔H’’’の一端面Eよりも取付孔H’’’の奥側に所定距離進んだ箇所に、回転軸軸心L1’’’と同心かつ回転軸軸心L1’’’の方向に所定幅を有する円筒状の嵌め合い面(第2の軸嵌め合い面M3)が形成されている。この第2の軸嵌め合い面M3は、上述した第2のボルト嵌め合い面b11と嵌合することにより、回転軸軸心L1’’’とボルト軸心L3’’’とを同心化する。このような第2の軸嵌め合い面M3と第2のボルト嵌め合い面b11とは、第3の芯出し部F3(インロー)を構成し、この第3の芯出し部F3は、テンションボルトB’’’の倒れを防止する。
【0061】
また、第2の軸嵌め合い面M3よりも取付孔H’’’の奥側に隣接して、第1雄ネジ部b1に螺合する所定長の雌ネジ部h2が設けられ、雌ネジ部h2よりも取付孔H’’’のさらに奥側には、回転軸軸心L1’’’と同心かつ回転軸軸心L1’’’の方向に所定幅を有する円筒状の嵌め合い面(第3の軸嵌め合い面M4)が形成されている。この第3の軸嵌め合い面M4は、上述した第3のボルト嵌め合い面b12と嵌合することにより、回転軸軸心L1’’’とボルト軸心L3’’’とを同心化する。このような第3の軸嵌め合い面M4と第3のボルト嵌め合い面b12とは、補助的な第3の芯出し部F3’(インロー)を構成し、この補助的な第3の芯出し部F3’は、テンションボルトB’’’の倒れを補助的に防止する。
【0062】
さらに、第3の軸嵌め合い面M4よりも取付孔H’’’の奥側に隣接して、回転軸軸心L1’’’と同心かつ回転軸軸心L1’’’の方向に所定幅を有する円筒面M5が形成され、円筒面M5の最奥部は、回転軸軸心L1’’’に直交する一端面E’’’が形成されている。一端面E’’’は直交面b14に当接する受け面(受け部)となる。
【0063】
このようなインペラ締結構造では、回転軸軸心L1’’’(ボルト軸心L3’’’)の方向におけるテンションボルトB’’’と第1従動軸4d’’’との位置関係は、
図6Aに示すように、テンションボルトB’’’の直交面b14と第1従動軸4d’’’の一端面E’’’(受け面)とが当接することによって、テンションボルトB’’’のボルト軸心L3’’’の方向における位置が規制され、第1雄ネジ部b1が不完全ネジ部h3に到達しない。
【0064】
これによってテンションボルトB’’’のボルト軸心L3’’’が第1従動軸4d’’’の回転軸軸心L1’’’に対して傾斜することを防止することができ、この結果として第1ロータR1’’’のアンバランスが過大となることを防止することができると共に、第1ロータR1’’’の組立の再現性を十分に確保することができる。
また、一般的に、第1インペラ5aの第1従動軸4d’’’側の中空円柱部Tの肉厚が小さい場合、第1インペラ5aが高速で回転した際に、遠心力により中空円柱部Tが第1インペラ5aの半径方向に拡径する方向に変形する可能性がある。中空円柱部Tが第1インペラ5aの半径方向に拡径する方向に変形すると、結果として第1ロータR1’’’のアンバランスが増す可能性がある。本第3実施形態によれば、テンションボルトB’’’の直交面b14と第1従動軸4d’’’の一端面E’’’(受け面)とが当接することによって、テンションボルトB’’’のボルト軸心L3’’’の方向における位置を規制しているため、突設部b3’’’はボルト軸心L3’’’の方向における位置の規制に関与しない。その結果、突設部b3’’’を小径に形成することができ、
図6Bに示すように、突設部b3’’’の周囲における中空円柱部Tの肉厚を大きくすることができ、結果として、遠心力による中空円柱部Tの変形を抑えることができる。従って、第1インペラ5aの中空円柱部Tの遠心力による変形を抑えたい場合には、本第3実施形態は適しているといえる。
また、このインペラ締結構造によれば、直交面b14が一端面E’’’に当接することで、直交面b14と一端面E’’’との間に静止摩擦力が発生する。したがって、ナットNを第2雄ネジ部b2に締め付ける際にテンションボルトB’’’がナットNと共に連れ回ることを防止することができる。そのため、第1ロータR1’’’の組立の再現性を確保できる。
【0065】
ここで、本第3実施形態においては、第2の軸嵌め合い面M3と第2のボルト嵌め合い面b11とが第3の芯出し部F3(インロー)を構成し、第3の軸嵌め合い面M4と第3のボルト嵌め合い面b12とが補助的な第3の芯出し部F3’(インロー)を構成する。しかしながら、第3の芯出し部F3のみが設けられていても良い。但し、第3の芯出し部F3と補助的な第3の芯出し部F3’の両方が設けられている場合には、テンションボルトB’’’が長い場合であっても、回転軸軸心L1’’’とボルト軸心L3’’’とを同心化することができる。ここで、補助的な第3の芯出し部F3’の数を例えばテンションボルトB’’’の長さに応じて複数設けても良い。
また、テンションボルトB’’’において、隣接する第1雄ネジ部b1、第3のボルト嵌め合い面b12、円筒部b13の間には、
図6Aに示すような若干の隙間S3,S4が形成されていても良い。
ここで、本第3実施形態においては、第1従動軸4d’’’の取付孔H’’’の開口周縁の形状は、
図6Bに示すように、テンションボルトB’’’が第1従動軸4d’’’に螺合した際にテンションボルトB’’’の突設部b3’’’に干渉しない限りは特に制限はないが、
図6A、
図6Bに示すようなテーパ状が好ましい。
【0066】
なお、上記各実施形態及び変形例は、本願発明に係るインペラ締結構造を4段構成のターボ圧縮機におけるインペラと回転軸との締結に適用したが、本願発明はこれに限定されない。本願発明に係るインペラ締結構造は、4段構成以外の各種ターボ圧縮機あるいはターボ圧縮機以外の回転機械、例えば過給機にも適用可能である。